(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】ビスベンゾシクロブテン配合物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/42 20060101AFI20221108BHJP
C09D 123/20 20060101ALI20221108BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20221108BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221108BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C08G59/42
C09D123/20
C09D163/00
C08J5/18 CFC
G02B6/12 371
(21)【出願番号】P 2021107683
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2021-06-29
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ケー.・ギャラガー
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェイク・ジウ
(72)【発明者】
【氏名】イ・ション
(72)【発明者】
【氏名】ゼビン・チャン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122212(JP,A)
【文献】特開2005-062293(JP,A)
【文献】特開2005-062409(JP,A)
【文献】特表2008-516295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
G02B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸官能性ペンダント基を含む1種以上の硬化性
ベンゾシクロブテンベースのポリマー又はオリゴマー、(b)芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ化合物、(c)1種以上の脂肪族エポキシ化合物、及び(d)1種以上の光活性化合物を含む組成物。
【請求項2】
前記1種以上の硬化性
ベンゾシクロブテンベースのポリマー又はオリゴマーは、重合単位として、1種以上の
ベンゾシクロブテン系の第1のモノマーと、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する1種以上の第2のモノマーとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1種以上の
ベンゾシクロブテン系の第1のモノマーは、式(1):
【化1】
(式中、B
1は、n価の連結基であり、Arは、任意選択的にDを含有する多価
フェニル基であり、mは、1以上の整数であり、nは、1以上の整数であり、且つR
1及びR
2のそれぞれは、独立して、一価の基である)
を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する前記1種以上の第2のモノマーは、式(4):
【化2】
(式中、各R
12及びR
13は、H、D、C
1~6アルキル、C
1~6アルケニル、C
1~6アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化C
1~6アルケニル、重水素化C
1~6アルコキシ、ハロ、カルボキシ、C
2~6カルボキシ含有部位、C
2~6ケト含有部位、C
1~6アミド含有部位、C
2~6アルコキシアルカノール、C
2~6アルコキシエステル、-O-C
1~20アルキル、-(C=O)-C
1~20アルキル、-O-(C=O)-C
1~20アルキル、-(C=O)-O-C
1~20アルキル、-O-C
6~20アリール、-(C=O)-C
6~20アリール、-O-(C=O)-C
6~20アリール及び-(C=O)-O-C
6~20アリール又はその重水素化形態から独立して選択され、R
14は、H、D、C
1~6アルキル、トリ-C
1~6-アルキルシリル、C
1~6アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化トリ-C
1~6-アルキルシリル、重水素化C
1~6アルコキシ及びハロから独立して選択され、Yは、-SO
3R
15又は3~15個の炭素原子を有し、且つ少なくとも1つの-OH部位若しくは保護されたカルボキシル部位を有する一価のラジカルであり、R
15は、H、D又は1~20個の炭素原子を有する一価のラジカルであり、且つfは、3の整数である)
を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記1種以上の脂肪族エポキシ化合物は、シクロヘキサンジメタノールエポキシ樹脂、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、脂肪族エステルエポキシ樹脂及び一官能性反応性希釈剤タイプからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む前記1種以上の芳香族エポキシ化合物と、前記1種以上の脂肪族エポキシ化合物との総重量%に対する前記1種以上の脂肪族エポキシ化合物の相対重量%は、10~80%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物を重合及び硬化させることから作製される硬化膜。
【請求項8】
1.5~1.6の屈折率及び0.4μm以下の表面粗さを有する、請求項7に記載の硬化膜。
【請求項9】
基材上に膜を製造する方法であって、基材を提供し、且つ請求項1に記載の組成物のコーティング層を前記基材の表面上に配置することと、前記コーティング層を硬化させることとを含む方法。
【請求項10】
(a)酸官能性ペンダント基を含む1種以上の硬化性
ベンゾシクロブテンベースのポリマー又はオリゴマー、(b)芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ化合物、(c)1種以上の脂肪族エポキシ化合物、及び(d)1種以上の光活性化合物を含む組成物を重合及び硬化させることから作製される硬化膜を含む光導波路。
【請求項11】
(a)酸官能性ペンダント基を含む1種以上の硬化性
ベンゾシクロブテンベースのポリマー又はオリゴマー、(b)芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ化合物、(c)1種以上の脂肪族エポキシ化合物、及び(d)1種以上の光活性化合物を含む組成物を重合及び硬化させることから作製される硬化膜を含むコアと、各存在において同じであるか又は異なり得るクラッドとを含み、前記クラッドは、(a)酸官能性ペンダント基を含む1種以上の硬化性
ベンゾシクロブテンベースのポリマー又はオリゴマー、(b)芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ化合物、(c)1種以上の脂肪族エポキシ化合物、及び(d)1種以上の光活性化合物を含む組成物を重合及び硬化させることから作製される硬化膜を含む上部クラッド及び下部クラッドを含む、請求項10に記載の光導波路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物並びにこの組成物を重合及び硬化させることから製造されるポリマー膜に関する。ポリマー膜は、光学及び電子デバイス、より具体的には光導波路で使用され得る。
【背景技術】
【0002】
光は、データ送信及び通信において一層重要になっている。例えば、光ファイバーケーブルは、多くの用途において従来の電気ケーブルから置き換えられている。そのような送信を運ぶ光を捕捉し、運び、且つ分配するためにガイド及びスイッチが必要とされる。光導波路は、典型的には、コア材料とクラッド層とを含む。これらは、透過光がコア材料内を長手方向に伝播し、且つコア材料よりも小さい屈折率を概して有するクラッド層によって含有される場合、最も効率的に機能する。次世代の高性能情報処理(バンド幅>1Tb/s及び速度>10Gb/s)では、銅ベースのインターコネクトを使用することは、非常に困難であることから、ポリマーは、導波路などの光学デバイスにおいて一層使用されている。
【0003】
ポリマー系材料は、より従来型の材料と比較した場合、光導波路の製造のための多くの興味深い特徴を提供する。有機ポリマーは、その製造の容易さ及び構造の柔軟性のため、多くの注目を集めてきた。これらは、パッケージング及び光インターコネクトとしての使用に関する重要な要素である。しかしながら、ポリマー系材料が一定の欠点を有し得ることも事実である。光導波路は、高温多湿などの様々な環境条件下でその光学的及び物理的特性を保持しなければならない。また、これは、特定の用途で経済的に実用的であることに加えて、適切な光学特性及び表面特性も有していなければならない。樹脂を用いて光導波路を作製しようとする場合、必要とされる膜形成プロセスは、大気圧下でのコーティング及び加熱工程により行うことができるため、使用する装置及びプロセスが概ね単純であるという点において、この方法は、非常に有利である。光導波路の構成に有用な樹脂として様々な種類の樹脂が公知である。
【0004】
ベンゾシクロブテン含有モノマー(シクロブタレンとも呼ばれる)から製造された熱硬化性ポリマー及びオリゴマーは、電子デバイスにおいて有用であることが知られている。1,3-ビス(2-ビシクロ[4.2.0]オクタ1,3,5-トリエン-3-イルエテニル)-1,1,3,3テトラメチルシロキサン(本明細書ではDVS-bisBCBという)モノマーは、DuPontからCYCLOTENE(商標)という商品名で入手可能である。典型的には、これらの材料は、標準的なコーティング技術(スピンコーティングなど)によって基板に塗布される。これらは、加熱によって硬化又は架橋され、エッチングによってパターン化される。標準的なリソグラフィーエッチングで使用される追加のコーティング工程を必要としない樹脂を有することの望ましさが認識されることにより、活性化照射にさらされない材料の部分が現像中に溶剤によって除去されるネガティブトーン感光性組成物であるCYCLOTENE4000樹脂が開発された。パターニング後、残った樹脂が硬化される。CYCLOTENE製品ラインのもう1つである6000シリーズは、0.26NのTMAHなどの水性の塩基性現像剤を使用した高解像度用途向けの光描画スピンオン材料としての有効性が実証されている。
【0005】
しかしながら、例えば、導波路などの光学用途における最適な性能に必要とされる表面粗さと、未露光部膜厚減少(UFTL)とのバランスを可能にするこれらのような材料における理想的な処理条件を特定することは、ときに困難であり得る。通常、これらのデバイスは、単一の材料で同時に低い表面粗さ及び低いUFTLを実現する必要がある。これは、既存の材料及び配合物では、実際に達成するのが難しい場合がある。複数のアプローチの1つ以上が一般的に試みられる。樹脂組成若しくは固形分を調整することができるか、又はソフトベーク温度、スピン速度、現像時間及びその他などの処理パラメータを変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,540,763号明細書
【文献】米国特許第4,724,260号明細書
【文献】米国特許第4,783,514号明細書
【文献】米国特許第4,812,588号号明細書
【文献】米国特許第4,826,997号明細書
【文献】米国特許第4,999,499号明細書
【文献】米国特許第5,136,069号明細書
【文献】米国特許第5,185,391号明細書
【文献】米国特許第5,243,068号明細書
【文献】米国特許第5,277,536号明細書
【文献】米国特許第7,198,878号明細書
【文献】米国特許第8,143,360号明細書
【文献】米国特許第6,361,926号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Kirchoff and Bruza,Progress in Polymer Science,18,p.85 and following(1993)
【文献】Farona,Benzocyclocutenes in Polymer Chemistry,Progress in Polymer Science,21,p.505 and following(1996)
【文献】Marks et al.,BCB Homopolymerization Chemistry and Applications,The Polymeric Materials Encyclopedia,Salamone,ed.,CRC Press,June 1996
【文献】Hahn et al.,Thermal Polymerization of Bis(benzocyclobutene)Monomers containing alpha,beta-disubstituted Ethenes,Macromolecules,26,15,pp.3870-3877,1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、導波路などの光学デバイスにおける使用に適した新規なポリマー系材料、組成物及び関連するプロセスが継続的に必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書に開示の組成物から作製された膜のエポキシ含有量の関数としての膜表面粗さ(R
a、▲)及び未露光膜厚減少(UFTL、■)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の全体を通して使用される以下の略語は、文脈から別の意味が明確に示されない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;g=グラム;nm=ナノメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル;mm=ミリメートル;sec.=秒;min.=分;hr.=時間;L=リットル;mL=ミリリットル;MPa=メガパスカル;Mw=重量平均分子量;Mn=数平均分子量;及びAMU=原子質量単位。特に明記しない限り、全ての量は、重量パーセント(「重量%」)であり、全ての比は、モル比である。全ての数値範囲は、そのような数値範囲が合計100%になるように制約されることが明らかである場合を除いて、包含的であり、且つ任意の順で組み合わせ可能である。特に明記しない限り、全てのポリマー及びオリゴマー分子量は、重量平均分子量(「Mw」)であり、ポリスチレン標準と比較してゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される。
【0011】
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、そうではないことを文脈が明確に示さない限り、単数形及び複数形を指す。本明細書で用いるとき、用語「及び/又は」は、関連する項目の1つ以上のあらゆる組み合わせを包含する。用語「アルキル」には、直鎖、分岐及び環状のアルキルが含まれる。同様に、「アルケニル」は、直鎖、分岐及び環状のアルケニルを指す。「アリール」は、芳香族炭素環及び芳香族複素環を意味する。本明細書で用いるとき、用語「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル及びアルキニル部位などの開鎖炭素含有部位を指し、これらは、直鎖又は分岐であり得る。また、本明細書で用いるとき、「脂環式」という用語は、シクロアルキル及びシクロアルケニルなどの環状脂肪族部位を指す。そのような脂環式部位は、非芳香族であるが、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含み得る。本明細書で用いるとき、用語「重水素化」は、少なくとも1つの水素(「H」)が重水素(「D」)で置換されていることを意味することを意図する。用語「重水素化類似体」は、1つ以上の利用可能な水素が重水素で置換されている化合物又は基の構造類似体を指す。重水素化化合物又は重水素化類似体において、重水素は、天然存在度レベルの少なくとも100倍存在する。「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレートとアクリレートとの両方を指し、同様に、(メタ)アクリルアミドという用語は、メタクリルアミドとアクリルアミドとの両方を指す。文脈から別段の明確な指示がない限り、「置換」アルキル、アルケニル又はアルキニルは、アルキル、アルケニル又はアルキニル上の1つ以上の水素が、重水素、ハロ、ヒドロキシ、C1~10アルコキシ、アミノ、モノ-又はジ-C1~10ヒドロカルビル置換アミノ、C5~20アリール及び置換C5~20アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されていることを意味する。文脈から別段の明確な指示がない限り、「置換」アリールは、アリール上の1つ以上の水素が、重水素、ハロ、ヒドロキシ、C1~10アルキル、C2~10アルケニル、C2~10アルキニル、C1~10アルコキシ、アミノ、モノ-又はジ-C1~10ヒドロカルビル置換アミノ、C5~20アリール及び置換C5~20アリールから選択される1つ以上の置換基で置換されていることを意味する。「アルキル」は、アルカンラジカルを指し、アルカンジラジカル(アルキレン)及びそれより多価のラジカルを含む。同様に、「アルケニル」、「アルキニル」及び「アリール」という用語は、それぞれアルケン、アルキン及びアレーンの対応するモノ-、ジ-又はそれより多価のラジカルを指す。
【0012】
用語「硬化」とは、材料又は組成物の分子量を大きくする重合又は縮合などの任意のプロセスを意味する。「硬化性」は、特定の条件下で硬化させることができる任意の材料を意味する。用語「ポリマー」には、オリゴマーも含まれる。用語「オリゴマー」は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体などの比較的低分子量の材料を指し、更に硬化させることができるB-ステージ化材料を含む。本明細書で用いるとき、「芳香族有機残基」は、フェニルなどの芳香族特性のみを有する有機残基及び芳香族部位と脂肪族部位との組み合わせを含有する有機残基を包含する。特に明記しない限り、全ての量は、重量パーセントであり、全ての比は、モル比である。
【0013】
第1、第2、第3等の用語は、様々な要素、成分、領域、層及び/又は区域を記述するために本明細書において使用され得るが、これらの要素、成分、領域、層及び/又は区域は、これらの用語によって限定されるべきでないことも理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、層又は区域を別の要素、成分、領域、層又は区域から区別するために用いられるにすぎない。従って、第1の要素、成分、領域、層又は区域は、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、成分、領域、層又は区域と称され得る。同様に、用語「トップ」及び「ボトム」は、互いに対するものであるにすぎない。要素、成分、層等が逆にされる場合、逆にされる前に「ボトム」であったものは、逆にされた後に「トップ」であろうこと及び逆も同様であることが十分に理解されるであろう。要素が別の要素の「上にある」又は「上に配置されている」と言われる場合、それは、他の要素上に直接にあり得るか、又は介在要素がそれらの間に存在し得る。対照的に、要素が別の要素「上に直接にある」又は「上に直接配置されている」と言われる場合、介在要素は、存在しない。
【0014】
本発明は、(a)酸官能性ペンダント基を含む1種以上の硬化性シクロブタレンベースのポリマー又はオリゴマー、(b)芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ化合物、(c)1種以上の脂肪族エポキシ化合物、及び(d)1種以上の光活性化合物を含む組成物を提供する。
【0015】
非限定的な一実施形態では、酸官能性ペンダント基は、約100~約400g/モルの酸官能基、非限定的な一実施形態では約150~約375g/モルの酸官能性基、非限定的な一実施形態では約200~約350g/モルの酸官能基の当量で存在する。
【0016】
非限定的な一実施形態では、1種以上の硬化性シクロブタレンベースのポリマー又はオリゴマーは、重合単位として、1種以上のアリールシクロブテン系の第1のモノマーと、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する1種以上の第2のモノマーとを含む。
【0017】
非限定的な一実施形態では、1種以上のアリールシクロブテン系の第1のモノマーは、式(1):
【化1】
(式中、B
1は、n価の連結基であり、Arは、多価アリール基であり、シクロブテン環の炭素原子は、Arの同じ芳香環上の隣接する炭素原子に結合されており、mは、1以上の整数であり、nは、1以上の整数であり、R
1及びR
2のそれぞれは、独立して、一価の基であり、2つのR
1部位は、それらが結合されている炭素と一緒にカルボニル又はチオカルボニルを形成し得、且つ2つのR
2部位は、それらが結合されている炭素と一緒にカルボニル又はチオカルボニルを形成し得る)
を有する。非限定的な一実施形態では、多価アリール基であるArは、1~3個の芳香族炭素環、ヘテロ芳香族環、重水素化芳香族炭素環又は重水素化ヘテロ芳香族環から構成され得る。いくつかの非限定的な実施形態では、Arは、重水素化されている。非限定的な一実施形態では、アリール基は、単一の芳香環を含み、非限定的な一実施形態ではフェニル環を含む。Arがフェニル環である場合、モノマーは、ベンゾシクロブテン(BCB)モノマーである。アリール基は、C
1~6アルキル、トリ-C
1~6-アルキルシリル、C
1~6アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化トリ-C
1~6-アルキルシリル、重水素化C
1~6アルコキシ、ハロ及びカルボキシルから選択される1~3個の基で任意選択的に置換され得る。非限定的な一実施形態では、アリール基は、D、C
1~6アルキル、トリ-C
1~3-アルキルシリル、C
1~3アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化トリ-C
1~3-アルキルシリル、重水素化C
1~3アルコキシ、クロロ、ブロモ、フルオロ及びカルボキシルの1つ以上で任意選択的に置換され得る。非限定的な一実施形態では、アリール基は、D、C
1~6アルキル、トリ-C
1~3-アルキルシリル、C
1~3アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化トリ-C
1~3-アルキルシリル、重水素化C
1~3アルコキシ、クロロ、ブロモ、フルオロ及びカルボキシルの1つ以上で任意選択的に置換され得る。非限定的な一実施形態では、アリール基は、無置換であるか、又はカルボキシルで置換されている。非限定的な一実施形態では、n=1又は2であり、非限定的な一実施形態ではn=1である。非限定的な一実施形態では、m=1~4であり、別の非限定的な実施形態ではm=2~4であり、非限定的な一実施形態ではm=2である。
【0018】
各R1及びR2は、H、D、C1~6アルキル、C1~6アルケニル、C1~6アルコキシ、カルボキシ、C2~6カルボキシ含有部位、C2~6ケト含有部位、C1~6アミド含有部位、C2~6アルコキシアルカノール、C2~6アルコキシエステル、重水素化C1~6アルキル、重水素化C1~6アルケニル、重水素化C1~6アルコキシ、重水素化C2~6カルボキシ含有部位、重水素化C2~6ケト含有部位、重水素化C1~6アミド含有部位、重水素化C2~6アルコキシアルカノール、重水素化C2~6アルコキシエステル及びハロから独立して選択され得る。いくつかの非限定的な一実施形態では、各R1及びR2は、H、D、C1~3アルキル、C1~3アルコキシ、重水素化C1~3アルキル、重水素化C1~3アルコキシ及びハロから独立して選択され得る。非限定的な一実施形態では、適切な一価のB1基は、式-[C(R3)2-C(R4)2]xZ1又は-[C(R3)=CR4]xZ1(式中、各R3及びR4は、水素、重水素、C1~6アルキル及びアリール、重水素化C1~6アルキル及びアリールから独立して選択され、Zは、水素、重水素、C1~6アルキル、C6~10アリール、シロキシアリール、シロキシアルキル、重水素化C1~6アルキル、重水素化C6~10アリール、重水素化シロキシアリール、重水素化シロキシアルキル及び-CO2R5から選択され、各R5は、H、D、C1~6アルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C6~10アリール、C6~10ヒドロキシアリール、C7~20アラルキル、C7~20ヒドロキシアラルキル、C7~20アルカリール、重水素化C1~6アルキル、重水素化C1~6ヒドロキシアルキル、重水素化C6~10アリール、重水素化C6~10ヒドロキシアリール、重水素化C7~20アラルキル、重水素化C7~20ヒドロキシアラルキル及び重水素化C7~20アルカリールから独立して選択され、且つx=1又は2である)を有する。非限定的な一実施形態では、R3及びR4は、H、D、C1~3アルキル、アリール、重水素化C1~3アルキル、重水素化アリールから独立して選択され、非限定的な一実施形態ではH、D、C1~3アルキル及び重水素化C1~3アルキルから独立して選択される。非限定的な一実施形態では、R5は、H、D、C1~3アルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C6~10アリール、C6~10ヒドロキシアリール、C7~20ヒドロキシアラルキル、重水素化C1~3アルキル、重水素化C1~6ヒドロキシアルキル、重水素化C6~10アリール、重水素化C6~10ヒドロキシアリール及び重水素化C7~20ヒドロキシアラルキルからなる群から独立して選択される。非限定的な一実施形態では、Z1は、シロキシル、重水素化シロキシル又は-CO2R5である。シロキシル基は、通常、式-[Si(R6)2-O]p-Si(R6)2-(式中、各R6は、H、D、C1~6アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、重水素化C1~6アルキル、重水素化アリール、重水素化アラルキル及び重水素化アルカリールから独立して選択され、且つpは1以上の整数である)を有する。非限定的な一実施形態では、R6は、C1~3アルキル、C6~10アリール、C7~20アラルキル、重水素化C1~3アルキル、重水素化C6~10アリール及び重水素化C7~20アラルキルから選択される。適切なアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル及びフェニルプロピル並びにそれらの重水素化形態が挙げられる。いくつかの非限定的な実施形態では、B1は、1つ以上の炭素-炭素二重結合(エチレン性不飽和)を含む。
【0019】
これらのシクロブタレンの合成及び特性並びにこれらを説明するために使用される用語は、例えば、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)に見ることができ、これらは、全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のアリールシクロブテン系の第1のモノマーは、重合単位として、式(2):
【化2】
(式中、各R
7及びR
8は、H、D、C
1~6アルキル、C
1~6アルケニル、C
1~6アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化C
1~6アルケニル、重水素化C
1~6アルコキシ、ハロ、カルボキシ、C
2~6カルボキシ含有部位、重水素化C
2~6カルボキシ含有部位、C
2~6ケト含有部位、重水素化C
2~6ケト含有部位、C
1~6アミド含有部位、重水素化C
1~6アミド含有部位、C
2~6アルコキシアルカノール、重水素化C
2~6アルコキシアルカノール、C
2~6アルコキシエステル、重水素化C
2~6アルコキシエステル、-O-C
1~20アルキル、-(C=O)-C
1~20アルキル、-O-(C=O)-C
1~20アルキル、-(C=O)-O-C
1~20アルキル、-O-C
6~20アリール、-(C=O)-C
6~20アリール、-O-(C=O)-C
6~20アリール、-(C=O)-O-C
6~20アリール、重水素化-O-C
1~20アルキル、重水素化-(C=O)-C
1~20アルキル、重水素化-O-(C=O)-C
1~20アルキル、重水素化-(C=O)-O-C
1~20アルキル、重水素化-O-C
6~20アリール、重水素化-(C=O)-C
6~20アリール、重水素化-O-(C=O)-C
6~20アリール及び重水素化-(C=O)-O-C
6~20アリールから独立して選択される)
の1種以上のビス-ベンゾシクロブテンモノマーを含む。非限定的な一実施形態では、各R
7及びR
8は、H、D、C
1~3アルキル、C
1~3アルコキシ、重水素化C
1~3アルキル、重水素化C
1~3アルコキシ及びハロから独立して選択され、2つのR
7部位は、それらが結合されている炭素と一緒にカルボニル、チオカルボニル又はこれらの重水素化形態を形成し得、2つのR
8部位は、それらが結合されている炭素と一緒にカルボニル、チオカルボニル又はこれらの重水素化形態を形成し得、各R
9は、H、D、C
1~6アルキル、トリ-C
1~6-アルキルシリル、C
1~6アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化トリ-C
1~6-アルキルシリル、重水素化C
1~6アルコキシ及びハロから独立して選択され、各R
10は、独立して、飽和又はエチレン性不飽和であり得る二価の有機基であり、各R
11は、H、D、C
1~6アルキル、C
7~20アラルキル、フェニル、重水素化C
1~6アルキル、重水素化C
7~20アラルキル及び重水素化フェニルから独立して選択され、pは1以上の整数であり、且つqは0~3の整数である。非限定的な一実施形態では、各R
7及びR
8は、H、D、C
1~3アルキル、C
1~3アルコキシ、重水素化C
1~3アルキル及び重水素化C
1~3アルコキシから独立して選択され、非限定的な一実施形態では、各R
7及びR
8は、Hである。非限定的な一実施形態では、各R
9は、C
1~6アルキル、トリ-C
1~3-アルキルシリル、C
1~3アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化トリ-C
1~3-アルキルシリル、重水素化C
1~3アルコキシ及びクロロから独立して選択され、非限定的な一実施形態ではC
1~3アルキル、トリ-C
1~3-アルキルシリル、C
1~
3アルコキシ、重水素化C
1~3アルキル、重水素化トリ-C
1~3-アルキルシリル及び重水素化C
1~
3アルコキシから独立して選択される。非限定的な一実施形態では、各R
10は、C
2~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル及びこれらの重水素化形態から独立して選択され、非限定的な一実施形態では、各R
10は、-CH
2CH
2-、-CH=CH-及び-C≡C-から独立して選択され、ここで、1つ以上のHは、Dで置換され得る。非限定的な一実施形態では、各R
11は、C
1~3アルキル及び重水素化C
1~3アルキルから選択され、非限定的な一実施形態では、各R
11は、メチル又は重水素化メチルである。非限定的な一実施形態では、p=1~5であり、別の非限定的な一実施形態ではp=1~3であり、別の非限定的な実施形態ではp=1である。非限定的な一実施形態では、q=3である。非限定的な一実施形態では、式(2)のアリールシクロブテンモノマーは、1,3-ビス(2-ビシクロ[4.2.0]オクタ-1,3,5-トリエン-3-イル-エテニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(DVS-bisBCB)であり、これは、式(3):
【化3】
を有する。
【0021】
いくつかの非限定的な実施形態では、本発明のアリールシクロブテンポリマーは、重合単位として、1種以上のアリールシクロブテン系の第1のモノマーと、式(4):
【化4】
(式中、R
12及びR
13は、H、D、C
1~6アルキル、C
1~6アルケニル、C
1~6アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化C
1~6アルケニル、重水素化C
1~6アルコキシ、ハロ、カルボキシ、C
2~6カルボキシ含有部位、C
2~6ケト含有部位、C
1~6アミド含有部位、C
2~6アルコキシアルカノール、C
2~6アルコキシエステル、-O-C
1~20アルキル、-(C=O)-C
1~20アルキル、-O-(C=O)-C
1~20アルキル、-(C=O)-O-C
1~20アルキル、-O-C
6~20アリール、-(C=O)-C
6~20アリール、-O-(C=O)-C
6~20アリール、-(C=O)-O-C
6~20アリール、重水素化C
2~6カルボキシ含有部位、重水素化C
2~6ケト含有部位、重水素化C
1~6アミド含有部位、重水素化C
2~6アルコキシアルカノール、重水素化C
2~6アルコキシエステル、重水素化-O-C
1~20アルキル、重水素化-(C=O)-C
1~20アルキル、重水素化-O-(C=O)-C
1~20アルキル、重水素化-(C=O)-O-C
1~20アルキル、重水素化-O-C
6~20アリール、重水素化-(C=O)-C
6~20アリール、重水素化-O-(C=O)-C
6~20アリール及び重水素化-(C=O)-O-C
6~20アリールから独立して選択される)
の、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する1種以上の第2のポリマーとを含む。いくつかの非限定的な実施形態では、各R
12及びR
13は、H、D、C
1~3アルキル、C
1~3アルコキシ重水素化C
1~3アルキル及び重水素化C
1~3アルコキシから独立して選択され、2つのR
12部位は、それらが結合されている炭素と一緒にカルボニル、チオカルボニル又はこれらの重水素化形態を形成し得、2つのR
13部位は、それらが結合されている炭素と一緒にカルボニル、チオカルボニル又はこれらの重水素化形態を形成し得、各R
14は、H、D、C
1~6アルキル、トリ-C
1~6-アルキルシリル、C
1~6アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化トリ-C
1~6-アルキルシリル、重水素化C
1~6アルコキシ及びハロから独立して選択され、Yは、-SO
3R
15又は3~15個の炭素原子を有し、且つ少なくとも1つの-OH部位若しくは保護されたカルボキシル部位を有する一価のラジカルであり、R
15は、H、D又は1~20個の炭素原子を有する一価のラジカルであり、且つfは、0~2の整数である。いくつかの非限定的な実施形態では、各R
12及びR
13は、H、D、C
1~3アルキル、C
1~3アルコキシ、重水素化C
1~3アルキル、重水素化C
1~3アルコキシ及びハロから独立して選択され、いくつかの非限定的な一実施形態では、各R
12及びR
13は、H又はDである。いくつかの非限定的な実施形態では、R
14は、C
1~6アルキル、トリ-C
1~3-アルキルシリル、C
1~3アルコキシ、重水素化C
1~6アルキル、重水素化トリ-C
1~3-アルキルシリル、重水素化C
1~3アルコキシ及びクロロから独立して選択され、いくつかの非限定的な実施形態ではC
1~3アルキル、トリ-C
1~3-アルキルシリル、C
1~3アルコキシ、重水素化C
1~3アルキル、重水素化トリ-C
1~3-アルキルシリル及び重水素化C
1~3アルコキシから独立して選択される。Yの一価ラジカルは、脂肪族及び/又は芳香族であり得る。典型的には、Yは、1~5個の-OH部位、いくつかの非限定的な実施形態では1~3個、いくつかの非限定的な実施形態では1個又は2個、いくつかの非限定的な実施形態では1個の-OH部位を有する。Yは、3~15個の炭素原子を有し、且つ少なくとも1つの-OH部位を有する飽和又は不飽和の一価ラジカルであり得、好ましくはエチレン性不飽和である。いくつかの非限定的な実施形態では、Yの少なくとも1つの-OH部位は、-CO
2H又は-SO
3Hである。いくつかの非限定的な実施形態では、R
15は、H、D、C
1~10アルキル、C
7~16アラルキル、C
6~12アリール又はこれらの重水素化形態である。式(4)のいくつかの非限定的な実施形態では、Yは、-CH=CHC(=O)OR
16、-CH=CH-CH
2OH、-CH
2-CH=CHC
6H
4OH、-CH=CHCH
2C
6H
4OH及びこれらの重水素化形態から選択され、R
16は、H、D、C
2~8ヒドロキシアルキル、C
4~8アルキル、重水素化C
2~8ヒドロキシアルキル及びカルボキシル部位の酸素に直接結合されている1つ以上の四級炭素を有する重水素化C
4~8アルキルから選択される。いくつかの非限定的な実施形態では、式(4)の化合物は、Yが-CH=CHC(=O)OR
16であるものであり、いくつかの非限定的な実施形態では-CH=CHC(=O)OHであるものである。いくつかの非限定的な実施形態では、f=3である。
【0022】
本発明のアリールシクロブテンポリマーは、重合単位として、1種のアリールシクロブテンモノマー又は2種以上のアリールシクロブテンモノマーを含み得る。いくつかの非限定的な実施形態では、本発明のポリマーは、重合単位として2種の別個のアリールシクロブテンモノマーを含む。いくつかの非限定的な実施形態では、本発明のアリールシクロブテンポリマーは、重合単位として、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の部位を含む1種以上のアリールシクロブテンモノマーを含む。いくつかの非限定的な実施形態では、本発明のアリールシクロブテンポリマーは、重合単位として、式(2)の1種以上のビスベンゾシクロブテンモノマー及び式(4)の1種以上のモノマー並びにいくつかの非限定的な実施形態では式(3)のモノマー及び式(4)の1種以上のモノマーを含む。
【0023】
非限定的な一実施形態では、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する1種以上の第2のモノマーは、式(5):
【化5】
(式中、いくつかの非限定的な実施形態では、ベンゾシクロブテンは、1つ以上の重水素原子を含み、R’及びR’’は、水素、重水素、アルキル、1~6個の炭素原子の重水素化アルキル基、アリール基若しくは重水素化アリール基から独立して選択されるか、又はR’及びR’’は、一緒に4~8個の炭素原子の環状基を形成し、Zは、炭素-炭素結合又はアリール基であり、且つxは、0~3の整数である)
によって示される。いくつかの非限定的な実施形態では、xは、1である。
【0024】
非限定的な一実施形態では、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する1種以上の第2のモノマーは、式(6):
【化6】
(式中、いくつかの非限定的な実施形態では、ベンゾシクロブテンは、1つ以上の重水素原子を含み、R’及びR’’は、上で定義した通りであり、xは、1であり、yは、0又は1であり、且つZ
2は、アリール基である)
によって示される。
【0025】
非限定的な一実施形態では、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する1種以上の第2のモノマーは、周知のヘック化学、すなわちパラジウムによって触媒されるハロゲン化シクロブタレンとビニル官能性ヒドロキシ含有化合物とのカップリングによって合成することができる。例えば、(特許文献9)を参照されたい。ただし、x=0の場合、第2のモノマーは、ベンゾシクロブテンと二酸化炭素とのグリニャール反応又はベンゾシクロブテンのカルボニル化とそれに続く加水分解とによって合成することができる。例えば、(特許文献10)を参照されたい。y=0の場合、ハロゲン化シクロブテンを水酸化ナトリウムと一緒に加熱することにより、第2のモノマーを合成することができる。
【0026】
非限定的な一実施形態では、1種以上のアリールシクロブテン系の第1のモノマーと、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する1種以上の第2のモノマーとを重合単位として含む1種以上の硬化性シクロブタレン系ポリマー又はオリゴマーは、溶媒中又は任意選択的に無溶媒で部分的に重合されて、オリゴマー又はプレポリマーを形成することができ、これは、その後、ウェットエッチング及び感光性システムなどの水性塩基現像イメージングシステムで使用することができる。非限定的な一実施形態では、重合は、約125~約300℃、非限定的な一実施形態では約130~約250℃の範囲の温度で生じる。重合は、所望の最終的に硬化した膜特性を与える、部分的に重合された樹脂が得られるように決定された時間にわたって行うことができる。非限定的な一実施形態では、硬化性生成物は、ガス浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される約1000~約50,000g/mol、非限定的な一実施形態では約1500~約25,000g/mol、非限定的な一実施形態では約2000~約15,000g/molの範囲の見かけ重量平均分子量(Mw)を有する。
【0027】
1種以上のアリールシクロブテン系の第1のモノマーと、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する1種以上の第2のモノマーとを重合単位として含む1種以上の硬化性シクロブタレン系ポリマー又はオリゴマーに関する非限定的な一実施形態では、シクロブタレン成分対ジエノフィル成分のモル比は、約20:80~約70:30、非限定的な一実施形態では約25:75~約50:50、非限定的な一実施形態では約25:75~約40:60である。
【0028】
1種以上のアリールシクロブテン系の第1のモノマーと、カルボン酸、保護されたカルボン酸及びスルホン酸から選択される1つ以上の酸部位を有する1種以上の第2のモノマーとを重合単位として含む1種以上の硬化性シクロブタレン系ポリマー又はオリゴマーに適した溶媒には、関連する処理温度で反応するモノマーを溶解するものが含まれる。非限定的な一実施形態では、溶媒は、部分的に重合された樹脂も溶解する。そのような溶媒の例としては、トルエン、キシレン及びメシチレンなどの芳香族炭化水素、C3~C6アルコール、メチルシクロヘキサノン、N-メチルピロリジノン、ブチロラクトン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル異性体(The Dow Chemical CompanyからProglyde(商標)DMMとして市販)及びDowanol(商標)DPMA(The Dow Chemical Companyから入手可能な(ジ(プロピレングリコール)メチルエーテルアセテート異性体)が挙げられる。
【0029】
理論に拘束されることを望むものではないが、部分的に重合された材料は、(非特許文献1)、(非特許文献2)、(非特許文献3)及び(非特許文献4)に開示のものなどの反応によって形成することができる。
【0030】
本明細書に開示の組成物の非限定的な一実施形態では、組成物は、芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ樹脂を更に含む。理論に拘束されることを望むものではないが、芳香族エポキシ樹脂は、通常、剛性がより大きく、軟化点がより大きく、これにより現像段階でテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の溶解度を低下させる可能性がある。典型的な芳香族エポキシ樹脂としては、三菱化学株式会社のjER1032-S50/H60、日本化薬株式会社のEPPN-501/502H、Huntsman Tactixの742/743及びDIC N-540/541などのトリヒドロキシフェニルメタン型のエポキシ樹脂、DIC Corporation Epiclon HP-7200L(多官能性固体エポキシ樹脂を含むジシクロペンタジエン骨格)などのジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社NC-3000/NC-3000L/NC3500(多官能性固体エポキシ樹脂を含むビフェニル骨格)、DIC株式会社Epiclon N660、Epiclon N690及び日本化薬株式会社EOCN-104Sなどのノボラック型エポキシ樹脂株式会社、三菱化学株式会社YX-4000HK及びYL-6121Hなどのビフェニル型エポキシ樹脂、DIC株式会社HP-4700/HP-4710(四官能性ナフタレン型エポキシ樹脂)、DIC株式会社HP-6000(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社のNC-7000L/NC7300L、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社のESN-475V/ESN-375/ESN-170/ESN-480(ナフトール型エポキシ樹脂)などのナフタレン型エポキシ樹脂、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、新日鉄住金化学株式会社のTX0712、日産化学工業株式会社のTEPICなどのリン含有エポキシ樹脂及び三菱化学株式会社YL6810の固体ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。他の適切な芳香族エポキシ樹脂は、この非限定的なリストに基づいて当業者に広く知られているであろう。
【0031】
本明細書に開示の組成物の非限定的な一実施形態では、組成物は、常温(例えば、20℃)でより一般的に液体エポキシ樹脂である1種以上の脂肪族エポキシ化合物を更に含む。これらは、芳香族エポキシ樹脂よりも柔軟性を有する傾向があるため、現像中のTMAHの溶解度を高めることができる。いくつかの非限定的な実施形態では、これらの脂肪族樹脂は、1つ以上のエポキシ基を有する。いくつかの非限定的な実施形態では、これらの脂肪族樹脂は、2つ以上のエポキシ基を有する。いくつかの非限定的な実施形態では、これらの脂肪族樹脂は、3つ以上のエポキシ基を有する。最大3つのエポキシ基を含む脂肪族樹脂の具体的な非限定的な実施形態としては、Lanxess RD111などのシクロヘキサンジメタノールエポキシ樹脂、Lanxess RD114LEなどのネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂、三菱化学株式会社のYX8000/8034/8040/6753/6800などの水素化エポキシ樹脂、三菱化学株式会社のE171D又はDaicel ChemTech Incの2021P/2000/2081/3000/8000/8010などの脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、Daicel ChemTech IncのEpolead GT301/GT401又は日本化薬株式会社のAK-601などの脂肪族エーテルエポキシ樹脂及びADEKA、Lanxess、Nagase、Olin、Rachig又はSakamoto Yukahinから市販されているものなどの一官能性反応性希釈剤型が挙げられる。他の適切な脂肪族エポキシ樹脂は、この非限定的なリストに基づいて当業者に広く知られているであろう。
【0032】
本明細書に開示の本発明は、1種以上の硬化剤も含み、様々なそのような硬化剤を使用することができる。非限定的な一実施形態では、硬化剤は、光によって活性化される光活性化合物である。非限定的な一実施形態では、硬化剤は、熱によって活性化される熱活性化合物である。例示的な硬化剤としては、熱生成開始剤及び光活性化合物(光生成開始剤)を挙げることができるが、それらに限定されない。そのような硬化剤の選択は、当業者の能力内にある。非限定的な一実施形態では、熱生成開始剤は、限定するものではないが、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンゾイルペルオキシド及びジクミルペルオキシドなどのフリーラジカル開始剤である。非限定的な一実施形態では、光活性硬化剤は、IrgacureブランドでBASFから入手可能なフリーラジカル光開始剤及びDNQ化合物のスルホネートエステルを含むジアゾナフトキノン(DNQ)化合物である。好適なDNQ化合物は、DNQスルホネートエステル部分などのDNQ部分を有し、且つ本組成物において光活性化合物として機能する任意の化合物であり、すなわち、それらは、適切な放射線への露光時に溶解開始剤として機能する。好適なDNQ化合物は、(特許文献11)及び(特許文献12)に記載されている。
【0033】
(a)酸官能性ペンダント基を含む1種以上の硬化性シクロブタレンベースのポリマー又はオリゴマー、(b)芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ化合物、(c)1種以上の脂肪族エポキシ化合物、及び(d)1種以上の光活性化合物を含む組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、酸官能性ペンダント基を含む1種以上のシクロブタレンベースのポリマー又はオリゴマーは、配合物の総固形分組成を基準として20~80重量%、いくつかの非限定的実施形態では30~75重量%、いくつかの非限定的実施形態では5~40重量%、いくつかの非限定的実施形態では40~70重量%、いくつかの非限定的実施形態では60重量%の量で存在する。
【0034】
(a)酸官能性ペンダント基を含む1種以上の硬化性シクロブタレンベースのポリマー又はオリゴマー、(b)芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ化合物、(c)1種以上の脂肪族エポキシ化合物、及び(d)1種以上の光活性化合物を含む組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、エポキシ化合物の合計量は、配合物の総固形分組成を基準として10~40重量%、いくつかの非限定的実施形態では15~35重量%、いくつかの非限定的実施形態では20~25重量%の量で存在する。
【0035】
(a)酸官能性ペンダント基を含む1種以上の硬化性シクロブタレンベースのポリマー又はオリゴマー、(b)芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ化合物、(c)1種以上の脂肪族エポキシ化合物、及び(d)1種以上の光活性化合物を含む組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、総エポキシ添加量に対する脂肪族エポキシ化合物の相対的な重量%は、1~99%、いくつかの非限定的実施形態では5~80%、いくつかの非限定的実施形態では10~60%、いくつかの非限定的実施形態では11~40%である。
【0036】
(a)酸官能性ペンダント基を含む1種以上の硬化性シクロブタレンベースのポリマー又はオリゴマー、(b)芳香族フェノールのグリシジルエーテルの混合物を含む1種以上の芳香族エポキシ化合物、(c)1種以上の脂肪族エポキシ化合物、及び(d)1種以上の光活性化合物を含む組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の光活性化合物は、配合物の総固形分組成を基準として1~25重量%、いくつかの非限定的実施形態では2~20重量%、いくつかの非限定的実施形態では4~18重量%、いくつかの非限定的実施形態では6~16重量%、いくつかの非限定的実施形態では約15重量%の量で存在する。
【0037】
本発明は、本明細書に開示の組成物と1種以上の有機溶媒とを含む組成物を更に提供する。適切な有機溶媒は、本発明のポリマー及び組成物が可溶性であるものである。特に有用な有機溶媒は、アリールシクロブテンポリマーの製造又は配合に有用な任意の溶媒である。例示的な有機溶媒としては、限定するものではないが、アニソール(メトキシベンゼン)、トルエン、キシレン及びメシチレンなどの芳香族炭化水素、2-メチル-1-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール及びメチルイソブチルカルビノールなどのアルコール、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA、Dow Chemical CompanyからDowanol(商標)PMAとして市販)、メチル2-ヒドロキシイソブチレート、メチル3-メトキシプロピオネート及び3-メトキシ-1-ブチルアセテートなどのエステル、ガンマブチロラクトンなどのラクトン、N-メチルピロリジノンなどのラクタム、プロピレングリコールメチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテル異性体などのエーテル(The Dow Chemical CompanyからProglyde(商標)DMMとして市販)、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンなどのケトン並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
本明細書に開示の組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、溶媒は、配合物の全組成を基準として0~80重量%、いくつかの非限定的実施形態では20~70重量%、いくつかの非限定的実施形態では30~65重量%、いくつかの非限定的実施形態では45~60重量%の量で存在する。本明細書に開示の組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、組成物は、単一の有機溶媒を含む。本明細書に開示の組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、組成物は、2種の有機溶媒を含む。本明細書に開示の組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、組成物は、3種の有機溶媒を含む。本明細書に開示の組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、組成物は、4種以上の有機溶媒を含む。2種以上の有機溶媒を含む、本明細書に開示の組成物では、各溶媒の相対量は、互いにほぼ等しいことができるか、又は1種の溶媒は、より多い量で存在し得る。3種以上の有機溶媒を含む、本明細書に開示の組成物では、各溶媒の相対量は、互いにほぼ等しいことができるか、又は1種の溶媒は、他の2種よりも多い量で存在し得る。4種以上の有機溶媒を含む、本明細書に開示の組成物では、各溶媒の相対量は、互いにほぼ等しいことができるか、又は1種の溶媒は、他の3種よりも多い量で存在し得る。当業者は、選択される具体的な1種以上の溶媒及びそれらのそれぞれの相対量が、本明細書に開示の配合物の所定の実施形態における目的の反応及び最終特性に基づいて選択され得ることを理解するであろう。
【0039】
本発明は、本明細書に開示の組成物と1種以上の任意選択的な添加剤とを含む組成物を更に提供する。本組成物に有用な適切な任意選択的な添加剤としては、限定するものではないが、硬化剤、界面活性剤、本モノマーと異なる架橋剤、無機フィラー、有機フィラー、可塑剤、接着促進剤、金属不動態化材料、レベリング剤などのそれぞれの1種以上及び前述したもののいずれかの組み合わせが挙げられる。適切な界面活性剤は、当業者に周知であり、いくつかの非限定的な実施形態では、界面活性剤は、非イオン性である。そのような界面活性剤は、配合物の総固形分組成を基準として0~10重量%の量で存在することができ、いくつかの非限定的な実施形態では0~5重量%、いくつかの非限定的な実施形態では0~2重量%、いくつかの非限定的な実施形態では0~1重量%である。本組成物において利用され得る界面活性剤の非限定的な例としては、3-[3-(トリエトキシシリル)-プロピルカルバモイル]アクリル酸などのシランカップリング剤、SH6040、Dow Corning Toray、OFS-6075シラン、Dow Corning及び09324、Flukaからなる群から選択される接着促進剤が挙げられる。本組成物において利用され得るレベリング剤の非限定的な例としては、L-7604、Dow Corning Toray、Niax シリコーンL-5420、Momentive Performance Materials及びPOLYFOX PF-656(2234AM)、OMNOVA Solutions Incが挙げられる。そのようなレベリング剤は、0~10重量%の量、いくつかの非限定的な実施形態では0~5重量%の量、いくつかの非限定的な実施形態では0~2重量%の量、いくつかの非限定的な実施形態では0~1重量%の量で存在し得る。
【0040】
任意の好適な無機フィラーが本組成物に任意選択的に使用され得、それらは、当業者に周知である。例示的な無機フィラーとしては、限定するものではないが、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコニアなど、及びそれらの混合物が挙げられる。無機フィラーは、粉末、棒状、球形又は他の任意の適切な形状の形態であり得る。そのような無機フィラーは、任意の好適な寸法を有し得る。無機フィラーは、組成物の総重量を基準として0~80重量%の量で使用することができる。本発明のモノマーと異なる任意の架橋モノマーは、組成物の硬化に使用される条件下でそれらが組成物中のアリールシクロブテンポリマーと共に架橋することを条件として、架橋剤として使用することができる。適切な架橋剤としては、限定するものではないが、ポリアミン、ポリチオール及び(メタ)アクリレート含有架橋剤が挙げられる。そのような架橋剤の選択は、当業者の能力内である。そのような架橋剤は、典型的には、組成物中の重合性成分の総重量を基準として0~20重量%又は0~10重量%の量で使用される。1種以上の非架橋性モノマーも本組成物に添加され得、典型的には、これらは、組成物中の重合性成分の総重量を基準として0~20重量%の量で存在する。そのような非架橋性モノマーは、本組成物中のベンゾシクロブテン系成分と重合可能な1つ又は2つの重合性部位を含有する。いくつかの非限定的な実施形態では、金属不動態化材料は、銅不動態化剤である。適切な銅不動態化剤は、当技術分野で周知であり、イミダゾール及びベンゾトリアゾールを含む。
【0041】
本発明は、本明細書に開示の組成物を重合及び硬化させることから作製される硬化膜を更に提供する。硬化膜の非限定的な特定の実施形態は、本明細書に開示の通りにそれを製造するための組成物に関連して特定されたものと同じである。硬化膜は、任意の好適な基材上の本組成物を重合及び硬化させ、次いで硬化膜を基材から剥離することによって作製することができる。平滑な表面を有する任意の硬い基材を使用することができる。基材の例としては、限定するものではないが、シリコン、FR-4ボード、BT樹脂、KAPTON(商標)ポリイミド膜、III-V半導体ウェハ(GaN、GaAs及びInPなど)、金属、プラスチック、ガラス(溶融石英、それぞれSchott及びCorningのBOROFLOAT(商標)及びEAGLE(商標)ガラスなど)、セラミック、木材などを挙げることができる。硬化膜は、それを作製するために使用される特定の組成及び処理工程(重合及び硬化)によって決定される屈折率を有し得る。いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示の硬化膜の屈折率は、1.3~2.0、いくつかの非限定的な実施形態では1.4~1.7、いくつかの非限定的な実施形態では1.5~1.6である。
【0042】
本明細書に開示の硬化膜の電子的及び光学的用途において興味深い他の特性としては、表面粗さ(Ra)、未露光膜厚さ減少(UFTL)などが含まれる。そのような競合する場合がある特性間のバランスは、本明細書に開示の組成物、膜、物品及び他のものの具体的な最終用途のための最適な組成及び他のパラメータを決定し得る。膜の表面粗さ、Raは、具体的な用途、特に光学用途についての特定の測定値を超えている場合、知覚されるヘイズをもたらす可能性がある。表面粗さは、例えば、レーザー走査型共焦点顕微鏡によって測定することができる。そのような装置の1つの非限定的な例は、Keyence VK-X200 3Dレーザー走査型共焦点顕微鏡である。本明細書に開示の硬化膜の表面粗さの値は、通常、μm単位スケール又は10分の1μmスケールで測定される。本明細書に開示の硬化膜のいくつかの非限定的な実施形態では、膜の表面粗さは、2μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では1.8μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では1.6μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では1.4μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では1.2μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では1.0μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.8μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.6μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.4μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.2μm未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.1μm未満である。いくつかの非限定的な実施形態では、表面粗さは、0~0.2μmであり、いくつかの非限定的な実施形態では0~0.18μmであり、いくつかの非限定的な実施形態では0~0.16μmであり、いくつかの非限定的な実施形態では0~0.14μmであり、いくつかの非限定的な実施形態では0~0.12μmであり、いくつかの非限定的な実施形態では0~0.10μmである。
【0043】
膜の未露光膜の厚さ減少、UFTLは、「ダークロス」とも呼ばれ、光放射のない領域における樹脂の除去を指す。UFTLが高いと深刻なトップロスが生じ、現像サイクル後の膜のアスペクト比が低下する可能性がある。除去された樹脂は、それを用いて製造された光学又は電子デバイスにおける膜の全体的な機能に寄与しないことから、これは、経済的に不利である。未露光膜の厚さ減少は、通常、膜厚を測定することが可能であると当業者に認識されている任意の数の顕微鏡技術によって測定することができる。そのような顕微鏡技術の非限定的な例としては、光学顕微鏡、電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡が挙げられる。そのような光学顕微鏡装置の1つの非限定的な例は、Filmetrics F50である。本明細書に開示の硬化膜の未露光膜の厚さ減少値は、対象の用途のための所望の光学的特性又は電子的特性を示さない膜厚全体のパーセント割合として測定することができる。これらは、適切な単位、例えばμmでの厚さ減少の生の値として測定及び報告することもできる。本明細書に開示の硬化膜のいくつかの非限定的な実施形態では、未露光膜の厚さの減少は、90%未満、いくつかの非限定的な実施形態では80%未満、いくつかの非限定的な実施形態では70%未満、いくつかの非限定的な実施形態では60%未満、いくつかの非限定的な実施形態では50%未満、いくつかの非限定的な実施形態では40%未満、いくつかの非限定的な実施形態では30%未満、いくつかの非限定的な実施形態では20%未満、いくつかの非限定的な実施形態では10%未満、いくつかの非限定的な実施形態では5%未満、いくつかの非限定的な実施形態では5%~20%、いくつかの非限定的な実施形態では8%~15%である。
【0044】
本発明は、基材上に膜を製造する方法であって、基材を提供し、且つ上述した組成物の層を基材の表面上にコーティングすることと、コーティング層を硬化させることとを含む方法を更に提供する。基材は、ガラス、有機ポリマー層又はそれらの組み合わせであり得る。有機ポリマー層は、ポリイミド層又は無色透明なポリイミド層であり得る。一実施形態において、ディスプレイ基材は、無色透明なポリイミド層である。方法の非限定的な特定の実施形態は、硬化膜及び本明細書に開示の通りにそれを製造するための組成物に関連して特定されたものと同じである。
【0045】
本組成物は、任意の適切な方法によって基材上にコーティングすることができる。本組成物を堆積させるための適切な方法としては、とりわけ、スピンコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ディップコーティング、蒸着及び真空ラミネートなどのラミネートが挙げられるが、これらに限定されない。半導体製造業界において、スピンコーティングは、既存の設備及びプロセスを活用するための好ましい方法である。スピンコーティングにおいて、塗布される表面上で組成物の所望の厚さを達成するために、組成物の固形分は、スピン速度と共に調整され得る。典型的には、本発明の組成物は、400~4000rpmのスピン速度でスピンコーティングされる。ウェハ又は基板上に分配される本組成物の量は、組成物中の合計固形分、結果として生じる層の所望の厚さ及び当業者に周知の他の因子に依存する。本組成物の膜又は層がスピンコーティングなどによってキャストされる場合、溶媒の多く(又は全て)は、膜の堆積中に蒸発する。好ましくは、表面上に堆積された後、組成物は、いかなる残留溶媒も除去するために加熱される(ベークされる)。典型的なベーキング温度は、90~160℃であるが、他の温度が好適に用いられ得る。残留溶媒を除去するためのそのようなベークは、典型的には約2分間行われるが、より長い時間又はより短い時間が適切に使用され得る。アリールシクロブテンオリゴマーは、典型的には、一定時間加熱することによって硬化される。適切な硬化温度は、180~250℃又はそれを超える範囲である。典型的には、硬化時間は、1~600分の範囲である。
【0046】
別の方法では、本組成物は、乾燥膜として形成されてから、積層によって基材の表面上に配置され得る。真空積層技術などの様々な好適な積層技術が用いられ得、これらは、当業者に周知である。乾燥膜の形成では、本組成物は、まず、スロットダイコーティング、グラビア印刷又は別の適切な方法を用いて、ポリエステルシート、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)シート又はKAPTON(商標)ポリイミドなどのポリイミドシートのような適切な膜支持シートの前面上にコートされるなどして配置される。次いで、組成物は、いかなる溶媒も除去するために、1~30分などの適切な時間にわたり、90~140℃などの好適な温度でソフトベークされる。次いで、ポリエチレンなどのポリマー膜カバーシートは、保管及び取り扱い中に組成物を保護するために、乾燥した組成物上に室温でロール積層される。乾燥した組成物を基板上に配置するために、カバーシートがまず除去される。次いで、支持シート上の乾燥した組成物は、ロール積層又は真空積層を用いて基板表面に積層される。積層温度は、20~120℃の範囲であり得る。次いで、支持シートが除去され(剥離され)、その表面上に乾燥した組成物が残る。
【0047】
本発明は、光導波路を更に提供し、光導波路は、上述した硬化膜を含む。光導波路の非限定的な特定の実施形態は、方法、硬化膜及び本明細書に開示の通りにそれを製造するための組成物に関連して特定されたものと同じである。様々な光導波路構造及び材料が当業者に公知である。これらは、通常、コア及びクラッドで構成され、クラッドは、典型的には、上部クラッドと下部クラッドとから構成される。動作中、光は、接続された光ファイバーからコアに入り、コアとクラッドとの間の各界面で全反射しながらコアを縦方向に伝わる。導波路コアは、当業者に公知の任意の数の形状を有することができる。これらの形状には、円形、正方形、三角形、台形などが含まれる。本発明の非限定的な一実施形態では、導波路コアは、本明細書に開示の組成物及び/又は膜を含む。本発明の非限定的な一実施形態では、導波路クラッドは、本明細書に開示の組成物及び/又は膜を含む。
【0048】
本発明は、光導波路と光伝送ファイバーとを含む光電子回路を更に提供し、光導波路は、クラッドによって囲まれたコアを含み、コア及びクラッドの一方又は両方は、本明細書に開示の組成物及び/又は膜を含む。非限定的な一実施形態では、光電子回路は、コアが本明細書に開示の組成物及び/又は膜から構成される光導波路を含む。非限定的な一実施形態では、光電子回路は、クラッドが本明細書に開示の組成物及び/又は膜から構成される光導波路を含む。光電子回路の非限定的な特定の実施形態は、光導波路、方法、硬化膜及び本明細書に開示の通りにそれらを製造するための組成物に関連して特定されたものと同じである。
【実施例】
【0049】
本明細書に記載する概念は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない以下の実施例において更に例示される。シクロブタレンベースのポリマーは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる(特許文献13)に見られる通りに例えば調製することができる。配合物は、DNQ溶液、エポキシ及び界面活性剤と、シクロブタレンベースのポリマーとを混合することによって調製した。DNQ溶液(22重量%)は、67重量%のPGMEAと、18重量%のProglyde DMMと、15重量%のアニソールとを含有する溶媒混合物にDNQを溶解することによって調製した。
【0050】
実施例1~12並びに比較例1及び2 - 様々な量の芳香族/脂肪族エポキシを含む配合物。
【0051】
比較例1 - 配合物は、アンバーバイアル中において、60.14gのシクロブタレンベースのポリマー(Proglyde DMM中41%)、29.22gのDNQ溶液、9.36gの芳香族エポキシ(DIC Epiclon N-541)、1.15gのシラン接着促進剤溶液(PGMEA中の50重量%の3-[3-(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]アクリル酸)及び0.13gのレベル剤(Dow Corning DCT L-7604)を添加し、均一な溶液になるまでよく混合することによって調製した。その後、溶液を、0.2μシリンジフィルターを通してろ過した。
【0052】
比較例2 - 配合物は、アンバーバイアル中において、60.14gのシクロブタレンベースのポリマー(Proglyde DMM中41%)、29.22gのDNQ溶液、9.36gの脂肪族エポキシ(Daicel Celloxide 2021P)、1.15gのシラン接着促進剤溶液(PGMEA中の50重量%の3-[3-(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]アクリル酸)及び0.13gのレベル剤(Dow Corning DCT L-7604)を添加し、均一な溶液になるまでよく混合することによって調製した。その後、溶液を、0.2μシリンジフィルターを通してろ過した。
【0053】
実施例1~実施例12 - 配合物は、比較実施例1及び比較実施例2からの配合物を様々な量で混合することによって調製した。芳香族エポキシと脂肪族エポキシとの相対量は、表1に記載の通りに変化させた。
【0054】
【0055】
膜実施例2~12並びに比較膜実施例1及び2 - 膜は、以下の方法を使用して、実施例1~12の組成物から且つ比較実施例1及び2から作製した。接着促進剤の溶液であるDuPont AP9000Cを2000rpmで8インチのシリコンウェハに塗布した後、150℃で90秒間ベークした。調製した配合物を0.1μmの膜でろ過した後、840rpmで30秒間ウェハ上にスピンコーティングした。ウェハをホットプレート上において100℃で90秒間ベークした。
【0056】
ソフトベーク後の膜厚は、約7~9μmであった。ソフトベーク後、ウェハを2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)パドル内に60秒間入れて膜を現像した。現像した膜を、酸素レベルを100ppm未満に保つための窒素パージを備えたBlue Mオーブン内において250℃で1時間硬化させた。
【0057】
膜品質を評価するために、膜の厚さを、Filmetrics F50を使用して測定し、表面粗さを、Keyence VK-X200 3Dレーザー走査型共焦点顕微鏡を使用して測定し、屈折率を、Metriconを使用して1320nmで測定した。表面粗さの測定は、実施例間の一貫した比較を可能にするために、各ウェハの中心から約3.5インチで行った。結果は、表2にまとめられており、
図1にプロットされている。
【0058】
【0059】
芳香族エポキシのみを含有する比較実施例1では、現像後にヘイズが観察される。芳香族エポキシの10%を脂肪族エポキシに置き換えると、ヘイズは、減少するものの、依然として観察される。実施例2において、12.5%の脂肪族エポキシでは、ヘイズは、完全に除去される。表面粗さの測定でも同様の結果が示され、算術平均粗さRaは、100%芳香族エポキシの1.3μm(比較例1)から約12.5%を超える脂肪族エポキシ添加量の約0.2μm(実施例2~9)まで減少する。逆に、配合物が100%の脂肪族エポキシを含有する場合(比較例2)、UFTLは、約82%である。これは、膜の配合に使用された樹脂の82%が無駄になることを示している。10%の芳香族エポキシが配合物に添加されると(実施例12)、その数は、54%に急激に低下し、芳香族エポキシ含有量が更に増加するのに伴い(実施例1~4)、更に<20%まで減少する。
【0060】
図1は、本明細書に開示され、表2に報告されている組成物から作製された膜のエポキシ含有量の関数としての膜表面粗さ(R
a)及び未露光膜の厚さ減少(UFTL)を示す。表面粗さとUFTLとは、共に脂肪族/芳香族エポキシ添加量との非線形相関を有する。
【0061】
概要又は実施例において上に記載された活動の全てが必要であるわけではないこと、特定の活動の一部が必要とされない場合があること及び1つ以上の更なる活動が、記載されているものに加えて行われ得ることに留意されたい。更にまた、活動が列挙される順番は、必ずしも活動が行われる順番ではない。
【0062】
上述の本明細書では、概念を特定の実施形態に関連して記載してきた。しかしながら、当業者であれば、様々な修正形態及び変更形態が、以下の特許請求の範囲に示した本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解するであろう。従って、本明細書及び図は、限定的な意味ではなく、例示に関連し、全てのこのような修飾形態は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0063】
利益、他の利点及び問題の解決策が特定の実施形態に関して前述された。しかしながら、利益、利点、問題の解決策及び任意の利益、利点又は解決策を生じさせ得るか又はより顕著にし得る任意の特徴は、任意の又は全ての請求項の、決定的に重要であるか、必要とされるか又は不可欠な特徴であると解釈するべきではない。
【0064】
明確にするために、特定の特徴は、別個の実施形態との関連で本明細書に記載され、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることも十分に理解されるべきである。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態との関連で記載した様々な特徴は、個別に又は任意の部分的な組み合わせでも提供され得る。本明細書で明記した様々な範囲の数値の使用は、記述される範囲内の最小値及び最大値が両方とも「約」という言葉によって先行されるかのように近似値として記述されている。この形式では、記述範囲の上下のわずかな変動は、範囲内の値と実質的に同じ結果を実質的に達成するために用いることができる。また、これらの範囲の開示は、1つの値の構成要素のいくつかが、異なる値の構成要素と混合されるときに生じ得る小数値を含む、最小平均値と最大平均値との間のあらゆる値を含む連続した範囲であることが意図されている。更に、より広い及びより狭い範囲が開示されるとき、1つの範囲からの最小値を別の範囲からの最大値と一致させることは、本発明の想定内にあり、その逆も同様である。