IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エレベータの乗場装置 図1
  • 特許-エレベータの乗場装置 図2
  • 特許-エレベータの乗場装置 図3
  • 特許-エレベータの乗場装置 図4
  • 特許-エレベータの乗場装置 図5
  • 特許-エレベータの乗場装置 図6
  • 特許-エレベータの乗場装置 図7
  • 特許-エレベータの乗場装置 図8
  • 特許-エレベータの乗場装置 図9
  • 特許-エレベータの乗場装置 図10
  • 特許-エレベータの乗場装置 図11
  • 特許-エレベータの乗場装置 図12
  • 特許-エレベータの乗場装置 図13
  • 特許-エレベータの乗場装置 図14
  • 特許-エレベータの乗場装置 図15
  • 特許-エレベータの乗場装置 図16
  • 特許-エレベータの乗場装置 図17
  • 特許-エレベータの乗場装置 図18
  • 特許-エレベータの乗場装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】エレベータの乗場装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/30 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
B66B13/30 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021127709
(22)【出願日】2021-08-03
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 暁
(72)【発明者】
【氏名】首藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】上村 晃正
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隼人
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-152996(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202250(WO,A1)
【文献】特開2014-001065(JP,A)
【文献】特開2009-046239(JP,A)
【文献】特開2005-035788(JP,A)
【文献】特開平04-153191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗場出入口を画定する三方枠であって、前記乗場出入口の上方に設けられた上枠を有する三方枠と、
前記乗場出入口を開閉し、前記上枠との間に狭隘部を形成する乗場ドアパネルと、
前記乗場ドアパネルの上方に設けられたヘッダーケースであって、昇降路壁との間に、昇降路に開放した背後空間を形成するとともに、前記乗場ドアパネルの上方にヘッダー空間を形成するヘッダーケースと、
前記ヘッダーケースに設けられたドアレールと、
前記乗場ドアパネルを前記ドアレールから吊り下げるドアハンガーと、
記ヘッダーケースに設けられた第1開口と、を備え、
前記狭隘部は、前記ヘッダー空間および前記第1開口を介して前記背後空間と連通し
前記第1開口は、前記ヘッダーケースに、閉じた形状で形成され、
前記第1開口は、前記ドアレールよりも低い位置に位置している、エレベータの乗場装置。
【請求項2】
前記第1開口は、前記ドアレールよりも低い位置のみに形成されている、請求項に記載のエレベータの乗場装置。
【請求項3】
エレベータの乗場出入口を画定する三方枠であって、前記乗場出入口の上方に設けられた上枠を有する三方枠と、
前記乗場出入口を開閉し、前記上枠との間に狭隘部を形成する乗場ドアパネルと、
前記乗場ドアパネルの上方に設けられたヘッダーケースであって、昇降路壁との間に、昇降路に開放した背後空間を形成するとともに、前記乗場ドアパネルの上方にヘッダー空間を形成するヘッダーケースと、
前記ヘッダーケースに設けられたドアレールと、
前記乗場ドアパネルを前記ドアレールから吊り下げるドアハンガーと、
前記ヘッダーケースに設けられた第1開口と、を備え、
前記狭隘部は、前記ヘッダー空間および前記第1開口を介して前記背後空間と連通し、
前記第1開口は、前記ヘッダーケースに、閉じた形状で形成され、
前記ヘッダーケースに2つの前記第1開口が形成され、
一方の前記第1開口は、前記ドアレールよりも低い位置に位置し、他方の前記第1開口は、前記ドアレールよりも高い位置に位置している、エレベータの乗場装置。
【請求項4】
エレベータの乗場出入口を画定する三方枠であって、前記乗場出入口の上方に設けられた上枠を有する三方枠と、
前記乗場出入口を開閉し、前記上枠との間に狭隘部を形成する乗場ドアパネルと、
前記乗場ドアパネルの上方に設けられたヘッダーケースであって、昇降路壁との間に、昇降路に開放した背後空間を形成するとともに、前記乗場ドアパネルの上方にヘッダー空間を形成するヘッダーケースと、
前記ヘッダーケースに設けられたドアレールと、
前記乗場ドアパネルを前記ドアレールから吊り下げるドアハンガーと、
前記上枠に設けられた第1開口と、を備え、
前記狭隘部は、前記ヘッダー空間および前記第1開口を介して前記背後空間と連通し、
前記第1開口は、前記上枠に、閉じた形状で形成されている、エレベータの乗場装置。
【請求項5】
エレベータの乗場出入口を画定する三方枠であって、前記乗場出入口の上方に設けられた上枠を有する三方枠と、
前記乗場出入口を開閉し、前記上枠との間に狭隘部を形成する乗場ドアパネルと、
前記乗場ドアパネルの上方に設けられたヘッダーケースであって、昇降路壁との間に、昇降路に開放した背後空間を形成するとともに、前記乗場ドアパネルの上方にヘッダー空間を形成するヘッダーケースと、
前記ヘッダーケースに設けられたドアレールと、
前記乗場ドアパネルを前記ドアレールから吊り下げるドアハンガーと、
前記上枠および前記ヘッダーケースに設けられた第1開口と、を備え、
前記狭隘部は、前記ヘッダー空間および前記第1開口を介して前記背後空間と連通し、
前記ヘッダーケースの下端部は、前記上枠の上端部に当接しており、
前記第1開口は、前記ヘッダーケースおよび前記上枠に跨がって形成されている、エレベータの乗場装置。
【請求項6】
前記第1開口の開口面積は、前記狭隘部の流路面積よりも大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載のエレベータの乗場装置。
【請求項7】
前記第1開口は、横方向において前記乗場出入口の左縁の上方位置から前記乗場出入口の右縁の上方位置にわたって形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のエレベータの乗場装置。
【請求項8】
前記ヘッダーケースの前記昇降路の内側に位置し、前記ヘッダーケースとの間に前記ヘッダー空間を形成するヘッダーカバーを更に備え、
前記ヘッダーカバーと前記乗場ドアパネルとの間に、前記昇降路と前記ヘッダー空間とを連通する第2開口が設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載のエレベータの乗場装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの乗場装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗場ドア装置には、各階床で発生する火災に対する耐火性能が要求されている。乗場ドアを防火区画として機能させて、昇降路を介して他の階床への延焼や煙の蔓延を防止している。また、火災が発生した場合であっても、乗場ドア装置を構成する部材の表面温度が規定値以上に上昇しないように要求する規格もある。乗場ドア構成部材が損傷することを防止するとともに、避難時および救助時の安全性を確保するためである。火災に対する対策の一例としては、断熱材を収容した乗場ドアパネルが知られている。この場合、乗場ドアパネルの昇降路に面する表面の温度の上昇を抑制することができる。
【0003】
ところで、乗場ドアパネルは開閉動作するため、乗場ドアパネルと乗場出入口を画定する三方枠との間に、隙間が設けられている。しかしながら、ある階床で火災が発生した場合には、その階床の乗場の気圧が上昇する。火災によって発生した高温ガス(または高温空気)は、乗場からこの隙間を通って昇降路に漏出する。このことにより、乗場ドア構成部材の温度が上昇する。乗場出入口の上部では、高温ガスの圧力が相対的に高くなり、高温ガスの漏出量が多くなり得る。このことにより、乗場ドアパネルの上方に位置する乗場ドア構成部材の温度が高くなりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5217440号公報
【文献】特許第5937256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ある階床での火災発生時に乗場ドア構成部材の温度上昇を防止することができるエレベータの乗場装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態によるエレベータの乗場装置は、エレベータの乗場出入口を画定する三方枠であって、乗場出入口の上方に設けられた上枠を有する三方枠と、乗場出入口を開閉し、上枠との間に狭隘部を形成する乗場ドアパネルと、乗場ドアパネルの上方に設けられたヘッダーケースであって、昇降路壁との間に、昇降路に開放した背後空間を形成するとともに、乗場ドアパネルの上方にヘッダー空間を形成するヘッダーケースと、ヘッダーケースに設けられたドアレールと、乗場ドアパネルをドアレールから吊り下げるドアハンガーと、上枠またはヘッダーケースに設けられた第1開口と、を備えている。狭隘部は、ヘッダー空間および第1開口を介して背後空間と連通している。
【0007】
また、実施の形態によるエレベータの乗場装置は、エレベータの乗場出入口を画定する三方枠であって、乗場出入口の上方に設けられた上枠を有する三方枠と、乗場出入口を開閉し、上枠との間に狭隘部を形成する乗場ドアパネルと、乗場ドアパネルの上方に設けられたヘッダーケースと、ヘッダーケースに設けられたドアレールと、乗場ドアパネルをドアレールから吊り下げるドアハンガーと、ヘッダーケースに設けられた第1開口と、を備えている。ヘッダーケースは、ドアハンガーの上方に位置する天板を含んでいる。第1開口は、天板に形成されている。狭隘部は、第1開口を介して天板の上方の空間と連通している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態におけるエレベータ装置の全体概略構成を示す図である。
図2図2は、図1の乗場を示す正面斜視図である。
図3図3は、昇降路から見た乗場装置を示す図である。
図4図4は、図3の乗場装置の上部を示す断面図である。
図5図5は、図3の乗場装置の上部を昇降路から見た斜視図である。
図6図6は、図5の乗場装置の上部を昇降路から見た図である。
図7図7は、一般的な乗場装置において火災発生時の気流を示す図である。
図8図8(a)は、火災発生時における一般的な乗場装置の温度分布を示す斜視図であり、図8(b) は、図8(a)の温度分布を、ヘッダーカバーを省略して示す斜視図である。
図9図9は、図4の乗場装置において火災発生時の気流を示す図である。
図10図10(a)は、火災発生時における図5の乗場装置の温度分布を示す斜視図であり、図10(b) は、図10(a)の温度分布を、ヘッダーカバーを省略して示す斜視図である。
図11図11は、図5の変形例を示す斜視図である。
図12図12は、図5の他の変形例を示す斜視図である。
図13図13は、図5の他の変形例を示す斜視図である。
図14図14は、第2の実施の形態における乗場装置の上部を示す断面図である。
図15図15は、図14の乗場装置の上部を昇降路から見た斜視図である。
図16図16は、第3の実施の形態における乗場装置の上部を示す断面図である。
図17図17は、図16の乗場装置の上部を昇降路から見た斜視図である。
図18図18は、第4の実施の形態における乗場装置の上部を示す断面図である。
図19図19は、図18の乗場装置の上部を昇降路から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態におけるエレベータの乗場装置について説明する。まず、本実施の形態におけるエレベータの乗場装置が適用されるエレベータ装置について説明する。
【0010】
図1に示すように、エレベータ装置1は、昇降路2内に配置された乗りかご3および釣合錘4を備えている。乗りかご3と釣合錘4は、主ロープ5を介して接続されている。主ロープ5は、巻上機6に設けられたトラクションシーブ6aに巻き掛けられており、巻上機6によって巻き上げられるようになっている。このようにして、乗りかご3および釣合錘4が、巻上機6によって主ロープ5を介して昇降するようになっている。巻上機6は、昇降路2の上方に設けられた機械室7内に設置されている。機械室7には、制御装置8が設置されている。制御装置8は、巻上機6を含むエレベータ装置1の全体を制御する装置である。例えば、制御装置8は、乗場呼び、およびかご呼びに応じて巻上機6を運転制御し、乗りかご3を呼びのあった階床の乗場9へ着床させる。
【0011】
本実施の形態におけるエレベータ装置1は、図1に示す形態に限られることはない。例えば、いわゆる機械室レスのエレベータ装置であってもよい。すなわち、機械室7を設けることなく、巻上機6および制御装置8を昇降路2の上部に設けるようにしてもよい。
【0012】
図1に示すエレベータ装置1は、エレベータの乗場装置(以下、単に乗場装置20と記す)を備えている。乗場装置20は、三方枠21と、乗場ドア装置30と、を備えている。乗場装置20は、建屋の各階床の乗場9に設けられている。
【0013】
図2に示すように、三方枠21は、乗場出入口22を画定している。三方枠21は、乗場出入口22の左右両側に設けられた一対の縦枠23と、乗場出入口22の上方に設けられた上枠24と、を有している。上枠24は、一対の縦枠23の上端部に連結されており、三方枠21は門形に形成されている。上枠24は、図4に示すように、上枠本体24aと、上枠本体24aの上端部から上方に突出する突出板24bと、を含んでいる。上枠本体24aは、図4に示す断面において枠状に形成されている部分である。突出板24bは、上枠本体24aの昇降路2の側の端部に位置している。突出板24bは、ヘッダーケース34の壁板34a(後述)の下端部に当接して、重なっていていてもよい。
【0014】
図3および図4に示すように、乗場ドア装置30は、乗場ドアパネル31と、乗場敷居33と、ヘッダーケース34と、ドアレール36と、ドアハンガー37と、ハンガーローラ38と、ヘッダーカバー39と、を備えている。
【0015】
乗場ドアパネル31は、建屋の各階床に設けられた乗場9に設けられており、乗場出入口22を開閉する。この乗場ドアパネル31は、乗りかご3の着床時、乗りかご3に設けられたかごドアパネル10と、図示しない係合板を介して係合し、連動する。乗りかご3には、かごドアパネル10を駆動する駆動装置(図示せず)が設けられており、この駆動装置によってかごドアパネル10が、乗場ドアパネル31と共に開閉する。乗場ドアパネル31には、断熱材が収容されていてもよい。
【0016】
図4に示すように、乗場ドアパネル31と三方枠21の上枠24との間に、狭隘部32が形成されている。狭隘部32は、乗場ドアパネル31と上枠24との間に位置する微小な隙間である。狭隘部32は、乗場ドアパネル31が開閉時に上枠24と干渉することを防止している。同様の隙間は、乗場ドアパネル31と縦枠23との間にも形成されている。
【0017】
本実施の形態においては、図3に示すように、乗場ドア装置30は、2つの乗場ドアパネル31を有している。乗場ドア装置30は、図2に示すように両開き構造を有していてもよいが、片開き構造を有していてもよい。
【0018】
乗場敷居33は、乗場出入口22の床に固定されている。乗場敷居33は、乗場ドアパネル31の下方に位置し、乗場ドアパネル31の開閉を案内するように構成されている。
【0019】
図4に示すように、ヘッダーケース34は、乗場ドアパネル31の上方に設けられている。ヘッダーケース34は、乗場ドアパネル31の上方に位置する乗場ドア構成部材を覆うケースである。より具体的には、ヘッダーケース34は、昇降路壁2aに対向する壁板34aと、壁板34aの上端部から昇降路2の内側に延びる天板34bと、フランジ板34cと、を含んでいる。壁板34aの下端部は、上述した上枠24の突出板24bに当接している。天板34bは、ドアハンガー37の上方に位置し、ドアハンガー37を上方から覆っている。フランジ板34cは、天板34bの昇降路2の内側の端部から上方に延びている。壁板34a、天板34b、フランジ板34cは、一体に形成されていてもよい。例えば、ヘッダーケース34は、板金部品として一体に形成されていてもよい。ヘッダーケース34は、昇降路壁2aに固定されていてもよい。
【0020】
ヘッダーケース34と昇降路壁2aとの間に背後空間35が形成されている。より具体的には、壁板34aは、昇降路壁2aから離間しており、壁板34aと昇降路壁2aとの間に、背後空間35が形成されている。背後空間35は昇降路2に開放されている。図4に示すように、背後空間35は、背後空間35の上部から昇降路2に開放されていてもよい。あるいは、背後空間35は、背後空間35の上部に加えて、背後空間35の側部(左右の少なくとも一方)からも昇降路2に開放されていてもよく、または背後空間35の側部(左右の少なくとも一方)のみから昇降路2に開放されていてもよい。また、ヘッダーケース34は、乗場ドアパネル31の上方に、後述するヘッダー空間40を形成している。
【0021】
ドアレール36は、ヘッダーケース34の壁板34aに設けられている。より具体的には、ドアレール36は、壁板34aの昇降路2の内側の面に固定されている。ドアレール36は、昇降路2から見たときに、横方向に水平に延びている。ここで、横方向とは、昇降路2から乗場出入口22に向かって見たときの水平方向を意味する用語として用いている。ドアレール36は、ヘッダーケース34と別部品で形成されて、壁板34aに取り付けられていてもよい。あるいは、ドアレール36は、ヘッダーケース34と一体に形成されていてもよく、例えば、1つの板材を折り曲げることによって、ヘッダーケース34とドアレール36とが一体に形成されていてもよい。
【0022】
ドアハンガー37は、乗場ドアパネル31をドアレール36から吊り下げるように構成されている。乗場ドアパネル31の各々に、ドアハンガー37が設けられている(図3参照)。ドアハンガー37は、乗場ドアパネル31の上端部に固定されており、ヘッダーケース34の壁板34aよりも昇降路2の内側に位置している。昇降路2から見たときに、ドアハンガー37の横寸法は、乗場ドアパネル31の横寸法よりも小さくなっていてもよい。
【0023】
ハンガーローラ38は、ドアハンガー37に設けられている。ハンガーローラ38は、ドアハンガー37に対して回転可能に固定されており、ドアレール36上を転動可能になっている。本実施の形態においては、図3に示すように、1つの乗場ドアパネル31に、1つのドアハンガー37が固定されており、各ドアハンガー37に2つのハンガーローラ38が固定されている。しかしながら、1つの乗場ドアパネル31に、2つのドアハンガー37が固定されて、各ドアハンガー37に、1つのハンガーローラ38が固定されていてもよい。
【0024】
図4に示すように、ヘッダーカバー39は、ヘッダーケース34に固定されている。より具体的には、ヘッダーカバー39は、ヘッダーケース34よりも昇降路2の内側に位置し、ヘッダーケース34のフランジ板34cに固定されている。ヘッダーカバー39は、フランジ板34cよりも下方に延びており、ヘッダーケース34の壁板34aとの間に、ドアハンガー37およびハンガーローラ38等の乗場ドア構成部材が収容されるヘッダー空間40を形成している。ヘッダー空間40は、乗場ドアパネル31と、ヘッダーケース34と、ヘッダーカバー39とによって画定された空間を意味している。ヘッダーカバー39は、昇降路2の内側からドアハンガー37を覆っている。なお、本実施の形態においては、ヘッダーカバー39が存在していなくてもよい。この場合であっても、ヘッダー空間40は、乗場ドアパネル31と、ヘッダーケース34とによって画定された同様の空間として定義することができる。
【0025】
図4に示すように、ヘッダーケース34の壁板34aに、第1開口41が設けられている。第1開口41は、上述した狭隘部32と背後空間35とを連通している。このことにより、狭隘部32は、ヘッダー空間40および第1開口41を介して背後空間35と連通し、狭隘部32から、ヘッダー空間40および第1開口41を通る背後空間35への気流の経路が形成されている。
【0026】
第1開口41の開口面積は、狭隘部32の流路面積よりも大きくてもよい。狭隘部32の流路面積とは、火災発生時に乗場9において発生した高温ガス(後述)が狭隘部32を流れる際の流路面積に相当する。例えば、狭隘部32の流路面積は、乗場ドアパネル31と上枠24との間の隙間g(図4参照)と、乗場出入口22の横寸法w(図6参照)との積で定義されてもよい。乗場出入口22の横寸法は、三方枠21の一対の縦枠23の間の距離に相当する。
【0027】
図4図6に示すように、本実施の形態による第1開口41は、ヘッダーケース34の壁板34aに形成されている。第1開口41は、ドアレール36よりも低い位置に位置している。本実施の形態においては、第1開口41は、ドアレール36よりも低い位置のみに形成されており、ドアレール36よりも高い位置には形成されていない。
【0028】
図5および図6に示すように、第1開口41は、横方向に連続状に延びている。第1開口41は、壁板34aに閉じた形状で形成されていてもよい。閉じた形状とは、開口の全周にわたって母材(壁板34aの材料)が残存し、開口の縁が閉じていることを意味している。本実施の形態による第1開口41は、横方向に細長の矩形状に形成されている。第1開口41は、横方向において乗場出入口22の左縁22aの上方位置から乗場出入口22の右縁22bの上方位置にわたって形成されている。本実施の形態においては、第1開口41は、左縁22aの上方位置から右縁22bの上方位置まで延びている。より具体的には、昇降路2から見たときに、第1開口41の左端41aは、乗場出入口22の左縁22aの上方に位置し、第1開口41の右端41bは、乗場出入口22の右縁22bの上方に位置している。この場合、第1開口41の横寸法は、乗場出入口22の横寸法と等しくなる。なお、第1開口41は、横方向において乗場出入口22の左縁22aよりも左側に延び出していてもよく、乗場出入口22の右縁22bよりも右側に延び出していてもよい。この場合、第1開口41の横寸法は、ドアハンガー37の横寸法よりも大きくなる。
【0029】
ところで、ヘッダーカバー39と乗場ドアパネル31との間に、第2開口42が形成されている。第2開口42は、ヘッダー空間40と昇降路2とを連通している。より具体的には、ヘッダーカバー39の下端部と、乗場ドアパネル31の上端部とが、上下方向に離間しており、ヘッダーカバー39の下端部と乗場ドアパネル31の上端部との間に第2開口42が形成されている。
【0030】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について、図7図10を用いて説明する。
【0031】
エレベータ装置1が設置された建物のある階床で火災が発生した場合、火災現場で空気を主成分とする高温ガスが発生する。発生した高温ガスは、エレベータの乗場9に到達し、乗場の気圧が上昇する。特に、乗場出入口22の上部では、高温ガスの圧力が相対的に高くなる。そして、乗場9内の高温ガスは、図7および図9に示すように、乗場ドアパネル31と上枠24との間の狭隘部32を通って、乗場ドアパネル31の上方に位置するヘッダー空間40に漏出する。
【0032】
ここで、火災発生時の一般的な乗場装置20における高温ガスの流れについて、図7を用いて説明する。ここでは、便宜上、本実施の形態における乗場装置20と同一の符号を用いて説明する。
【0033】
図7に示す乗場装置20においては、ヘッダーケース34に、図4等に示すような第1開口41は形成されていない。この場合、ヘッダー空間40に漏出した高温ガスの一部は、図7の実線矢印に示すように、ドアハンガー37の側方を通り、第2開口42を通って昇降路2に流出する。ヘッダー空間40に漏出した高温ガスの他の一部は、ドアハンガー37に沿ってヘッダー空間40内で上昇し、ドアハンガー37を迂回して下降する。その後、高温ガスは、第2開口42を通って昇降路2に流出する。
【0034】
ところで、高温ガスが乗場9に到達することにより、乗場ドアパネル31の温度が上昇する。この場合、乗場ドアパネル31の昇降路2に面する昇降路側面31aの温度も上昇する。このことにより、乗場ドアパネル31の昇降路側面31aの近傍において、上昇気流が発生する。この上昇気流は、昇降路2内の空気(以下、昇降路ガスと記す)が上昇する流れである。昇降路ガスは、図7に破線矢印で示すように、乗場ドアパネル31からヘッダーカバー39に沿って上昇し、ヘッダー空間40には流入し難い。
【0035】
このようにして、一般的な乗場装置20においては、ヘッダー空間40内を高温ガスが流れる。このことにより、ヘッダー空間40に位置する乗場ドア構成部材の温度が上昇し得る。このことが、図8(a)および図8(b)に示されている。図8(a)および図8(b)は、一般的な乗場装置20において火災発生時の熱流体数値解析を行って得られた温度分布を示している。図8(a)には、主としてヘッダーカバー39の表面温度分布が示されており、図8(b)には、主としてドアハンガー37およびヘッダーケース34の壁板34aの表面温度分布が示されている。このように、ヘッダーカバー39、ドアハンガー37およびヘッダーケース34の温度が上昇していることがわかる。この場合、ドアレール36の温度およびハンガーローラ38の温度も上昇し得る。
【0036】
これに対して本実施の形態による乗場装置20においては、ヘッダーケース34に、図4等に示すように第1開口41が形成されている。この第1開口41によって、図9に示すように、狭隘部32からヘッダー空間40を通る背後空間35への気流の経路が形成される。
【0037】
より具体的には、ヘッダー空間40に漏出した高温ガスの一部は、図9の実線矢印に示すように、第1開口41を通って背後空間35に流出する。
【0038】
一方、乗場ドアパネル31の温度上昇に伴い、乗場ドアパネル31の昇降路側面31aの近傍において上昇気流が発生する。上昇気流となった昇降路ガスの一部は、図9に破線矢印で示すように、ヘッダーカバー39と乗場ドアパネル31との間に形成された第2開口42からヘッダー空間40に流入する。流入した昇降路ガスの一部は、ドアハンガー37の側方を通って第1開口41に向かう。このことにより、ヘッダー空間40において、高温ガスと昇降路ガスとが混合して高温ガスの温度が低下し、ヘッダー空間40の温度が低下する。混合ガスは、第1開口41を通って背後空間35に流出する。
【0039】
ヘッダー空間40に流入した昇降路ガスの他の一部は、ドアハンガー37に沿ってヘッダー空間40内で上昇し、ドアハンガー37を迂回して下降する。その後、昇降路ガスは、第1開口41において高温ガスと混合して背後空間35に流出する。
【0040】
背後空間35では、高温ガスと昇降路ガスとの混合ガスは上昇し、背後空間35の上部から、昇降路2に流出する。
【0041】
このようにヘッダー空間40内で、高温ガスと昇降路ガスとが混合するため、ヘッダー空間40に位置する乗場ドア構成部材の温度の上昇を抑制し得る。このことが、図10(a)および図10(b)に示されている。図10(a)および図10(b)は、本実施の形態による乗場装置20において火災発生時の熱流体数値解析を行って得られた温度分布を示している。図10の温度スケールは、図8の温度スケールと同じとしている。図10(a)には、主としてヘッダーカバー39の表面温度分布が示されており、図10(b)には、主としてドアハンガー37およびヘッダーケース34の壁板34aの表面温度分布が示されている。このように、ヘッダーカバー39、ドアハンガー37およびヘッダーケース34の温度が、図8に示す温度よりも低くなっていることがわかる。この場合、ドアレール36の温度およびハンガーローラ38の温度も低くなる。なお、ヘッダーカバー39の温度は、ドアハンガー37などのヘッダー空間40内の構成部材の温度よりも低くなっている。このことにより、ヘッダーカバー39を設けることにより、高温になり得る構成部材が露出されることを防止でき、安全性を向上させることができる。
【0042】
このように本実施の形態によれば、三方枠21と乗場ドアパネル31との間に形成された狭隘部32が、ヘッダー空間40および第1開口41を介して、昇降路壁2aとヘッダーケース34との間に形成された背後空間35と連通している。このことにより、第1開口41が、狭隘部32からヘッダー空間40を通る背後空間35に向かう気流の経路を形成することができる。このため、ある階床で火災が発生した場合に、乗場9に到達した高温ガスが、狭隘部32、ヘッダー空間40および第1開口41を通って背後空間35に流出することができ、高温ガスがヘッダーケース34内に滞留することを抑制できる。この結果、ある階床での火災発生時に乗場ドア構成部材の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、第1開口41の開口面積は、狭隘部32の流路面積よりも大きくなっている。このことにより、第1開口41における気流の圧力損失を低減することができる。このため、高温ガスを背後空間35にスムースに流出させることができ、高温ガスがヘッダーケース34内に滞留することをより一層抑制できる。また、昇降路2から流入した昇降路ガスも、第1開口41を通って背後空間35にスムースに流出させることができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、第1開口41は、横方向において乗場出入口22の左縁22aの上方位置から乗場出入口22の右縁22bの上方位置にわたって形成されている。このことにより、第1開口41を、乗場出入口22の横方向全体にわたって形成することができる。このため、狭隘部32の横方向全体にわたって、狭隘部32から漏出して上昇する高温ガスを第1開口41に導くことができる。この結果、高温ガスがヘッダーケース34内に滞留することをより一層抑制できる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、第1開口41は、ヘッダーケース34に形成されている。このことにより、狭隘部32と背後空間35とを容易に連通させることができ、狭隘部32から背後空間35への気流の経路を容易に形成することができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、第1開口41は、ドアレール36よりも低い位置に位置している。このことにより、狭隘部32から漏出した高温ガスを、速やかに背後空間35に流出させることができる。このため、高温ガスがヘッダーケース34内に滞留することをより一層抑制できる。ここで、本実施の形態のように、第1開口41が、ドアレール36よりも低い位置のみに形成されている場合には、第1開口41がドアレール36よりも高い位置に形成されない。このため、狭隘部32から漏出した高温ガスが、ヘッダーケース34内に滞留することを効果的に抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、ヘッダーカバー39と乗場ドアパネル31との間に、第2開口42が設けられ、第2開口42によって、昇降路2と、ヘッダーカバー39とヘッダーケース34との間に形成されたヘッダー空間40とが連通している。このことにより、ある階床で火災が発生した場合に、乗場ドアパネル31の温度上昇によって上昇気流となった昇降路ガスの一部を、第2開口42を通ってヘッダー空間40に流入させることができる。このため、ヘッダー空間40内において、昇降路ガスと高温ガスとを混合させることができ、高温ガスの温度を低下させることができる。この場合、ヘッダー空間40の温度上昇を抑制することができる。また、ヘッダー空間40に流入した昇降路ガスの他の一部は、ドアハンガー37を迂回するようにヘッダー空間40内を流れて、第1開口41から背後空間35に流出する。このことにより、ヘッダー空間40に、比較的低温の昇降路ガスを流すことができ、ヘッダー空間40の温度上昇を抑制することができる。
【0048】
なお、上述した本実施の形態においては、第1開口41が、横方向に連続状に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、図11に示すように、第1開口41は、断続的に形成されていてもよい。より具体的には、第1開口41は、複数の分割開口41cを含み、分割開口41cが所定の間隔を置いて横方向に配列されていてもよい。このことにより、壁板34aの強度低下を抑制することができる。各分割開口41cは、閉じた形状で形成されていてもよく、矩形状に形成されていてもよい。この場合の第1開口41の開口面積は、複数の分割開口41cの合計開口面積になる。分割開口41cの間隔および各分割開口41cの横寸法は、第1開口41としての開口面積、壁板34aの強度および背後空間35に向かう気流の経路の形成のしやすさなどを加味して適宜設定されてもよい。図11に示す第1開口41も、横方向において乗場出入口22の左縁22aの上方位置から乗場出入口22の右縁22bの上方位置にわたって形成されている。より具体的には、最も左側に位置する分割開口41cが、第1開口41の左端41a(図6参照)を有し、この左端41aは、左縁22aの上方位置に位置している。最も右側に位置する分割開口41cが、第1開口41の右端41b(図6参照)を有し、この右端41bは、右縁22bの上方位置に位置している。
【0049】
また、上述した本実施の形態においては、第1開口41が、ドアレール36よりも低い位置に位置している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。
【0050】
例えば、図12に示すように、第1開口41は、ドアレール36よりも高い位置に位置していてもよい。この場合、第1開口41は、ハンガーローラ38よりも高い位置に位置していてもよい。この場合においても、狭隘部32から漏出した高温ガスを背後空間35にスムースに流出させることができる。
【0051】
あるいは、図13に示すように、ヘッダーケース34の壁板34aに2つの第1開口41が形成されて、一方の第1開口41がドアレール36よりも低い位置に位置し、他方の第1開口41がドアレール36よりも高い位置に位置していてもよい。このことにより、2つの第1開口41によって背後空間35に流出する気流の流路面積を増大させることができ、背後空間35に向かう気流の圧力損失を低減することができる。
【0052】
また、上述した本実施の形態においては、ヘッダーケース34に、ヘッダーカバー39が固定されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、ヘッダーカバー39は設けられていなくてもよい。この場合においても、狭隘部32からヘッダー空間40および第1開口41を通って背後空間35に高温ガスを流出させることができる。
【0053】
また、上述した本実施の形態においては、例えば特許文献2に示すような遮炎部材が狭隘部32の上部に設けられていてもよい。この場合であっても、狭隘部32からヘッダー空間40に高温ガスが漏出し得るが、この高温ガスを、第1開口41を通って背後空間35に流出させることができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
次に、図14および図15を用いて、第2の実施の形態によるエレベータの乗場装置について説明する。
【0055】
図14および図15に示す第2の実施の形態においては、第1開口が、三方枠の上枠に閉じた形状で形成されている点が主に異なり、他の構成は、図1図13に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図14および図15において、図1図13に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
図14および図15に示すように、第1開口50は、三方枠21の上枠24に形成されている。より具体的には、第1開口50は、突出板24bに形成されている。第1開口50は、閉じた形状で形成されている。上記以外の点では、第1開口50は、図4等に示す第1開口41と同様に形成することができるため、詳細な説明は省略する。なお、第1開口50は、横方向に連続状に形成されていてもよく、断続的に形成されていてもよい。
【0057】
このように本実施の形態によれば、第1開口50は、三方枠21の上枠24に形成されている。このことにより、狭隘部32をヘッダー空間40および第1開口50を介して背後空間35と容易に連通させることができ、狭隘部32から、ヘッダー空間40および第1開口50を通る背後空間35への気流の経路を容易に形成することができる。また、第1開口50が上枠24に形成されていることにより、狭隘部32から漏出した高温ガスを、速やかに背後空間35に流出させることができる。このため、高温ガスがヘッダーケース34内に滞留することをより一層抑制できる。
【0058】
なお、上述した本実施の形態においては、第1開口50が、横方向に連続状に延びている例について説明したが、第1開口50は、図11に示すように断続的に形成されていてもよい。
【0059】
(第3の実施の形態)
次に、図16および図17を用いて、第3の実施の形態によるエレベータの乗場装置について説明する。
【0060】
図16および図17に示す第3の実施の形態においては、第1開口が、ヘッダーケースおよび三方枠に跨がって形成されている点が主に異なり、他の構成は、図1図13に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図14および図15において、図1図13に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
図16および図17に示すように、本実施の形態による第1開口60は、ヘッダーケース34および三方枠21に跨がって形成されている。第1開口60は、ケース側開口61と、枠側開口62と、を含んでいる。枠側開口62は、ケース側開口61に連続して、開口を形成している。
【0062】
ケース側開口61は、ヘッダーケース34の壁板34aの下端部に形成されている。ケース側開口61は、昇降路2から見たときに凹状に形成されている。すなわち、ケース側開口61は、下方に開放された凹状の開口となっている。
【0063】
枠側開口62は、三方枠21の上枠24の上端部に形成されている。より具体的には、枠側開口62は、上枠24の突出板24bに形成されている。枠側開口62は、昇降路2から見たときに凹状に形成されている。すなわち、枠側開口62は、上方に開放された凹状の開口となっている。
【0064】
ケース側開口61と、枠側開口62は、部分的に重ね合わされている。このようにして、ケース側開口61と枠側開口62は連続状に形成され、第1開口60を形成している。
【0065】
上記以外の点では、第1開口60は、図4等に示す第1開口41と同様に形成することができるため、詳細な説明は省略する。なお、第1開口60は、横方向に連続状に形成されていてもよく、断続的に形成されていてもよい。
【0066】
このように本実施の形態によれば、ヘッダーケース34の下端部が、三方枠21の上端部に当接し、第1開口60は、ヘッダーケース34および三方枠21に跨がって形成されている。このことにより、狭隘部32を、ヘッダー空間40および第1開口60を介して背後空間35と容易に連通させることができ、狭隘部32から背後空間35への気流の経路を容易に形成することができる。また、第1開口60がヘッダーケース34および三方枠21に跨がって形成されていることにより、狭隘部32から漏出した高温ガスを、速やかに背後空間35に流出させることができる。このため、高温ガスがヘッダーケース34内に滞留することをより一層抑制できる。
【0067】
なお、上述した本実施の形態においては、第1開口60が、ケース側開口61と、枠側開口62と、を含んでいる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、第1開口60は、ケース側開口61で構成されて、枠側開口62が形成されていなくてもよい。あるいは、第1開口60は、枠側開口62で構成されて、ケース側開口61が形成されていなくてもよい。このような場合であっても、狭隘部32からヘッダー空間40および第1開口60を通って背後空間35に高温ガスを流出させることができる。さらには、ヘッダーケース34の壁板34aの下端部と、三方枠21の上枠24の上端部とが、上下方向に離間していてもよい。この場合、壁板34aの下端部と上枠24の上端部との間に形成された開口を、第1開口60として機能させることもできる。
【0068】
(第4の実施の形態)
次に、図18および図19を用いて、第4の実施の形態によるエレベータの乗場装置について説明する。
【0069】
図18および図19に示す第4の実施の形態においては、第1開口が、ヘッダーケースの天板に形成されている点が主に異なり、他の構成は、図1図13に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図18および図19において、図1図13に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0070】
図18に示すように、本実施の形態においては、ヘッダーケース34の天板34bに、第1開口70が形成されている。第1開口70は、狭隘部32と天板34bの上方に位置するケース上方空間71とを連通し、狭隘部32からケース上方空間71への高温ガスの流路を形成している。第1開口70は、天板34bに閉じた形状で形成されていてもよい。
【0071】
図19には、第1開口70が、断続的に形成されている例が示されている。この場合、第1開口70は、図11に示す第1開口41と同様に、複数の分割開口70cを含んでおり、天板34bの強度低下を抑制することができる。第1開口70の開口面積は、狭隘部32の流路面積よりも大きくてもよい。第1開口70の開口面積は、複数の分割開口70cの合計開口面積になる。上記以外の点では、第1開口70は、図4等に示す第1開口41と同様に形成することができるため、詳細な説明は省略する。
【0072】
図18および図19に示すように、本実施の形態によるヘッダーケース34は、庇部72を含んでいてもよい。庇部72は、第1開口50を上方から覆う。庇部72は、第1開口50の全体を上方から覆うようにしてもよい。より具体的には、庇部72は、横方向に連続状に延びて、横方向において第1開口70の左端の上方位置から第1開口70の右端の上方位置まで延びていてもよい。あるいは、庇部72は、横方向において第1開口70の左端よりも左側に延び出していてもよく、第1開口70の右端よりも右側に延び出していてもよい。また、庇部72は、フランジ板34cの上端から、第1開口70を越えて昇降路壁2aの側に延びていてもよい。
【0073】
建物のある階床で火災が発生した場合、乗場9内の高温ガスが、狭隘部32を通ってヘッダー空間40に漏出する。ヘッダーケース34の天板34bに形成された第1開口70によって、狭隘部32からヘッダー空間40を通るケース上方空間71への気流の経路が形成されている。このことにより、ヘッダー空間40に漏出した高温ガスは、第1開口70を通ってケース上方空間71に流出する。その後、高温ガスは、昇降路2に流出する。
【0074】
一方、乗場ドアパネル31の温度上昇に伴い、乗場ドアパネル31の昇降路側面31aの近傍において上昇気流が発生する。上昇気流となった昇降路ガスの一部は、ヘッダーカバー39と乗場ドアパネル31との間に形成された第2開口42からヘッダー空間40に流入する。ヘッダー空間40において、高温ガスと昇降路ガスとが混合する。このことにより、高温ガスの温度が低下し、ヘッダー空間40の温度が低下する。混合ガスは、第1開口70を通ってケース上方空間71に流出し、その後、昇降路2に流出する。
【0075】
このように本実施の形態によれば、三方枠21と乗場ドアパネル31との間に形成された狭隘部32と、ヘッダーケース34の天板34bの上方に形成されたケース上方空間71とが、第1開口70によって連通している。このことにより、第1開口70が、狭隘部32からケース上方空間71に向かう気流の経路を形成することができる。このため、ある階床で火災が発生した場合に、乗場9に到達した高温ガスが、狭隘部32、ヘッダー空間40および第1開口50を通ってケース上方空間71に流出することができ、高温ガスがヘッダーケース34内に滞留することを抑制できる。この結果、ある階床での火災発生時に乗場ドア構成部材の温度上昇を抑制することができる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、ヘッダーカバー39と乗場ドアパネル31との間に、第2開口42が設けられ、第2開口42によって、昇降路2と、ヘッダーカバー39とヘッダーケース34との間に形成されたヘッダー空間40とが連通している。このことにより、ある階床で火災が発生した場合に、乗場ドアパネル31の温度上昇によって上昇気流となった昇降路ガスの一部を、第2開口42を通ってヘッダー空間40に流入させることができる。このため、ヘッダー空間40内において、昇降路ガスと高温ガスとを混合させることができ、高温ガスの温度を低下させることができる。この場合、ヘッダー空間40の温度上昇を抑制することができる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、ヘッダーケース34が、第1開口70を上方から覆う庇部72を含んでいる。このことにより、上方からの落下物が、第1開口70を通ってヘッダー空間40に入ることを抑制できる。このため、乗場ドア構成部材の損傷を抑制することができ、乗場ドア装置30の動作に支障が生じることを抑制できる。
【0078】
なお、図18に示す例では、ヘッダーケース34の壁板34aと昇降路壁2aとの間に背後空間35が形成されている。しかしながら、このことに限られることはなく、ヘッダーケース34の壁板34aと昇降路壁2aとの間には、背後空間35は形成されていなくてもよい。言い換えると、ヘッダーケース34の壁板34aと背後空間35とは接していてもよい。この場合においても、高温ガスを、狭隘部32、ヘッダー空間40および第1開口50を通ってケース上方空間71に流出させることができる。言い換えると、構造的な制約などにより、背後空間35を形成することができない場合であっても、天板34bに第1開口70を形成することにより、高温ガスをヘッダー空間40から流出させることができる。
【0079】
以上述べた実施の形態によれば、ある階床での火災発生時に乗場ドア構成部材の温度上昇を防止することができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
2:昇降路、2a:昇降路壁、20:乗場装置、21:三方枠、22:乗場出入口、31:乗場ドアパネル、32:狭隘部、34:ヘッダーケース、34b:天板、35:背後空間、36:ドアレール、37:ドアハンガー、39:ヘッダーカバー、40:ヘッダー空間、41:第1開口、42:第2開口、50:第1開口、60:第1開口、70:第1開口、71:ケース上方空間、72:庇部
【要約】
【課題】ある階床での火災発生時に乗場ドア構成部材の温度上昇を防止することができるエレベータの乗場装置を提供する。
【解決手段】実施の形態によるエレベータの乗場装置は、エレベータの乗場出入口を画定する三方枠であって、乗場出入口の上方に設けられた上枠を有する三方枠と、乗場出入口を開閉し、上枠との間に狭隘部を形成する乗場ドアパネルと、乗場ドアパネルの上方に設けられたヘッダーケースであって、昇降路壁との間に、昇降路に開放した背後空間を形成するとともに、乗場ドアパネルの上方にヘッダー空間を形成するヘッダーケースと、ヘッダーケースに設けられたドアレールと、乗場ドアパネルをドアレールから吊り下げるドアハンガーと、上枠またはヘッダーケースに設けられた第1開口と、を備えている。狭隘部は、ヘッダー空間および第1開口を介して背後空間と連通している。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19