(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20221108BHJP
G06F 3/046 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/03 400A
G06F3/046 B
G06F3/046 G
(21)【出願番号】P 2021148555
(22)【出願日】2021-09-13
(62)【分割の表示】P 2020073789の分割
【原出願日】2016-07-25
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健一
(72)【発明者】
【氏名】新井 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 航平
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-216512(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122280(WO,A1)
【文献】特開2013-222268(JP,A)
【文献】特開2010-198193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空空間を有する筐体と、
前記筐体の軸心方向の一方側に形成されている開口部と、
前記筐体の外部に前記開口部から外部に突出するように設けられる芯体と、
前記芯体が挿入される空間部を有する芯体挿入部と、
を備え、
前記空間部は、前記開口部を通じて前記筐体の外部の第1の空間と連通すると共に、前記中空空間においてペンモジュール部品が存在する第2の空間と分離される
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記芯体挿入部の前記空間部と前記第2の空間とを分離する第1のシーリング部材を更
に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記第1の空間と前記第2の空間とを分離する第1のシーリング部材を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記芯体を収容する磁性体コアと、
前記筐体の前記開口部側に位置する前記磁性体コアに設けられる第1のシーリング部材
と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記磁性体コアは前記芯体を挿入するための第2の開口部を有し、
前記第1のシーリング部材は、前記磁性体コアの前記第2の開口部を塞ぐことなく被せられるキャップ状の弾性部材で構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記芯体に印加される筆圧を検出する筆圧検出部をさらに有し、
前記芯体挿入部は障壁を有し、
前記障壁は前記芯体挿入部の前記空間部と前記筆圧検出部が存在する空間とを分離する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記芯体に印加された前記筆圧に応じて前記芯体が移動することで前記障壁が弾性変位することで、前記筆圧が前記筆圧検出部に伝達される
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記障壁は弾性部材である
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記筆圧検出部は前記芯体挿入部と結合される
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記芯体の前記外部に突出する側と反対側の前記芯体に嵌合される押圧部材を更に有し、
前記芯体は、印加された前記筆圧に応じて、前記押圧部材を介して前記障壁を押圧する
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。
【請求項11】
前記芯体に印加される筆圧を検出する筆圧検出部をさらに有し、
前記筆圧検出部の前記芯体挿入部とは反対側には、回路基板が配設されていると共に、前記回路基板と前記筆圧検出部との結合部には、当該結合部と前記筐体の内壁との間の隙間を塞ぐ第2のシーリング部材が設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記回路基板は、基板ホルダーに設けられていると共に、前記基板ホルダーには、前記筆圧検出部と嵌合する嵌合部が設けられており、前記第2のシーリング部材は、前記基板ホルダーの前記筆圧検出部との嵌合部に形成されている
ことを特徴とする請求項11に記載の電子ペン。
【請求項13】
前記芯体に印加される筆圧を検出する筆圧検出部をさらに有し、
前記筆圧検出部の前記芯体挿入部とは反対側には、前記筐体に設けられている開口から外部に露呈するように設けられている押圧部材により押下されるスイッチ部材が配設されている回路基板が配設されており、
前記回路基板と前記筆圧検出部との結合部には、当該結合部と前記筐体の内壁との間の隙間を塞ぐ第2のシーリング部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項14】
前記芯体に印加される筆圧を検出する筆圧検出部をさらに有し、
前記筆圧検出部の前記芯体挿入部とは反対側には、回路基板が配設されており、前記回路基板の電子部品の載置面は、モールド部材により覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出装置と共に使用され、筆圧検出機能を有する電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型のタブレットやパーソナルコンピュータ等の入力装置として、位置指示器を構成する電子ペン(スタイラスペン)と、この電子ペンによるポインティング操作や文字及び図形入力を受け付ける入力面を有する位置検出装置とからなる構成されるものが賞用されている。
【0003】
電子ペンとしては、電磁誘導方式や静電結合方式など、種々の方式のものがあるが、一般的に、筆圧検出機能を有する構成とされている。この種の電子ペンにおいては、電子ペンの筐体の軸心方向の一方に開口部が設けられ、この開口部から棒状の芯体の先端が突出するようにされると共に、筐体の内部に配設されている筆圧検出部に、芯体に印加される筆圧を伝達することができるようにするために、芯体が軸心方向に移動可能となるようにされる空間を有する構成を有するようにされている。
【0004】
ところで、最近は、タブレット等の屋外での使用シーンが増加している。しかし、電子ペンは、上述のように、芯体の先端を外部に突出させるために筐体に開口部が設けられていると共に、筆圧検出機能を備える場合には、芯体を軸心方向に移動可能とするために、前記開口部に連通する空間を有する構成を有している。このため、この開口部及び空間から筐体内に水や塵等が侵入して、電子ペンの筐体内に収納されている電気部品や接続部に影響を与え、電子ペンの故障の原因になる恐れがあった。
【0005】
そのため、最近は、電子ペンの防水性及び防塵性が求められており、従来から種々の提案がある。例えば、特許文献1(特開2010-198193号公報)には、例えば頂部に芯体と密接に嵌合するような貫通孔を形成した円錐形状のゴムキャップを電子ペンの筐体の開口部を覆うように被せる構成が開示されている。この構成においては、芯体は、ゴムキャップの貫通孔を通して、かつ、先端は突出させた状態で取り付けるようにする。
【0006】
この構成によれば、ゴムキャップにより筐体の開口部は覆われて外部に露呈せず、また、芯体とゴムキャップとの間は貫通孔と芯体の側周面部との密着により、空隙が生じないようにされるので、防水性及び防塵性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の場合、電子ペンの筐体の開口部を外部に露呈させないようにゴムキャップを、電子ペンの開口部側に被せるものであるので、当該ゴムキャップ自身が外部に露呈していて外れる恐れがある。また、特許文献1のゴムキャップは、頂部に貫通孔が存在しているので、その貫通孔の部分と芯体との密着性が低下すると、防水性及び防塵性の効果が低下する恐れがある。特に、特許文献1の構成では、筆圧の印加に応じた芯体の軸心方向の移動に応じて頂部の貫通孔と芯体との接触部分が弾性的に変移するので、経年変化により頂部の貫通孔が変形して、芯体との密着性が甘くなり易く、防水性及び防塵性の効果が低下する恐れがある。
【0009】
この発明は、以上の問題点を解決して、防水性及び防塵性を確保することができるようにした電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、
中空空間を有する筐体と、
前記筐体の軸心方向の一方側に形成されている開口部と、
前記筐体の外部に前記開口部から外部に突出するように設けられる芯体と、
前記芯体が挿入される空間部を有する芯体挿入部と、
を備え、
前記空間部は、前記開口部を通じて前記筐体の外部の第1の空間と連通すると共に、前記中空空間においてペンモジュール部品が存在する第2の空間と分離される
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明による電子ペンの実施形態が用いられる電子機器の例を説明するための図である。
【
図2】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例を説明するための分解斜視図である。
【
図3】この発明による電子ペンの実施形態における筆圧検出モジュールの構成例を説明するための分解斜視図である。
【
図4】この発明による電子ペンの実施形態における筆圧検出モジュールで用いる感圧部の部品群を説明するための図である。
【
図5】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例における要部を説明するための図である。
【
図6】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例における要部を説明するための図である。
【
図7】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例における要部を説明するための図である。
【
図8】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例における要部を説明するための図である。
【
図9】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例における要部を説明するための図である。
【
図10】この発明による電子ペンの実施形態と共に使用される位置検出装置の回路構成例を示す図である。
【
図11】この発明による電子ペンの他の実施形態の構成例を説明するための図である。
【
図12】この発明による電子ペンの他の実施形態と共に使用される位置検出装置の回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明による電子ペンの実施形態を、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態の電子ペンは、位置検出装置に対して電磁誘導方式で指示位置を伝達するタイプの場合である。
【0013】
図1は、この実施形態の電子ペン1を用いる電子機器200の一例を示すものである。この例では、電子機器200は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置の表示画面200Dを備える高機能携帯電話端末であり、表示画面200Dの下部(裏側)に、電磁誘導方式の位置検出装置202を備えている。
【0014】
この例の電子機器200の筐体は、電子ペン1を収納する収納凹穴201を備えている。使用者は、必要に応じて、収納凹穴201に収納されている電子ペン1を、電子機器200から取り出して、表示画面200Dを入力面として位置指示操作を行う。
【0015】
電子機器200においては、表示画面200D上で、電子ペン1により位置指示操作がされると、表示画面200Dの裏側に設けられた位置検出装置202が、電子ペン1で操作された位置及び筆圧を検出し、電子機器200の位置検出装置202が備えるマイクロコンピュータが、表示画面200Dでの操作位置及び筆圧に応じた表示処理を施す。
【0016】
この実施形態の電子ペン1においては、例えば樹脂からなる筒状のケース(筐体)2の中空部内に、電子ペン1の複数個の部品が軸心方向に並べられて収納されている。そして、筒状のケースの一端側は先細形状にされると共に、その端部に開口(
図1では図示を省略)が設けられ、その開口を通じて後述する棒状の芯体3の先端部32がペン先として露出するようにされている。そして、ケース2のペン先側とは反対側は、ケースキャップ21が嵌合されて、防水性及び防塵性を考慮したシーリングが確保される状態で閉塞されている。
【0017】
そして、この例では、電子ペン1は、サイドスイッチを備える構成とされている。すなわち、ケース2の内部の中空部には、後述するようにプリント基板が設けられ、このプリント基板上にサイドスイッチが載置されている。そして、電子ペン1のケース2の側周面の、サイドスイッチに対応する位置には貫通孔(
図2では図示は省略)が穿かれており、この貫通孔部分に、サイドスイッチ用の押下操作子22が、貫通孔を通じてプリント基板に載置されているサイドスイッチを押下することができるように露呈するようにされている。この場合、押下操作子22によるサイドスイッチの押下操作に対しては、位置検出装置202を備える電子機器200側で所定の機能が割り当て設定される。例えば、この例の電子機器200においては、押下操作子22によるサイドスイッチの押下操作は、マウスなどのポインティングデバイスにおけるクリック操作と同様の操作として割り当て設定が可能である。
【0018】
図2は、電子ペン1のケース2内に収納される部品群を、部品毎に並べた分解斜視図である。この実施形態では、ケース2の中心軸に直交する方向の外形形状(ケース2の横断面の輪郭形状に等しい)は、扁平形状とされている。そして、このケース2の内部の中空部も、その横断面形状がケース2の外形形状に応じた扁平形状とされており、ケース2内に収納される部品も中空部の扁平形状に対応した形状とされている。
【0019】
図2に示すように、ケース2の中空部内には、ペン先側から順に、ケース2の軸心方向に、第1のシーリング部材を構成するキャップ部材4と、コイル部材5と、コイル部材ホルダー6と、押圧部材7と、筆圧検出モジュール8と、基板ホルダー9とが配置される。基板ホルダー9の基板収納部91には、プリント基板10が収納されて係止される。プリント基板10は、回路基板の一例である。
【0020】
芯体3は、芯体本体部31と、ペン先となる先端部32とからなり、ケース2の中空部内に上記の部品の全てが収納されている状態で、ケース2のペン先側の開口から芯体本体部31が挿入されて、後述するように筆圧検出モジュール8に設けられる押圧部材7と係合することで取り付けられる。芯体3は、先端部32に印加される圧力(筆圧)を、筆圧検出部81の感圧部83に伝達することができるように、硬質の非導電性材料の例としての樹脂、例えばポリカーボネート、合成樹脂やABS(acrylonitrile-butadiene-styrene)樹脂等からなる。この芯体3は、電子ペン1に対して、挿脱可能とされている。
【0021】
コイル部材5は、コイル51と、このコイル51が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア52とからなる。コイル部材5のフェライトコア52は、この例では、中心軸位置に、棒状の芯体3の芯体本体部31を挿通するために、この芯体本体部31の径よりも若干大きい径の貫通孔52aを有する柱状形状を備える。このフェライトコア52は、この実施形態では、ケース2の中空部の横断面形状に対応した扁平の横断面形状を有し、ペン先側は、先細となるテーパー部52bの構成されている。なお、芯体3の先端部32は、この例では、芯体本体部31の径よりも若干大きい径を有するように構成されている。
【0022】
キャップ部材4は、フェライトコア52の電子ペンのペン先側となるテーパー部52b側に設けられる。このキャップ部材4は、弾性を有する材料、例えば弾性ゴムで構成されており、フェライトコア52のペン先側を覆うようなキャップ形状を備えると共に、芯体3の芯体本体部31を挿通するための開口(貫通孔)4aを有している。開口4aの径は、この例では、フェライトコア52の貫通孔52aの径よりも大きく形成されている。そして、この例では、キャップ部材4の外観は、図示のように、裾広がりのスカート形状とされている。
【0023】
コイル部材ホルダー6は、フェライトコア52の電子ペンのペン先側となるテーパー部52bとは反対側の端部側に設けられる。このコイル部材ホルダー6は、弾性を有する材料、例えば弾性ゴムで構成されている。フェライトコア52の電子ペンのペン先側となるテーパー部52bとは反対側の端部は、コイル51が巻回されていないコイル非巻回部52cとされている。コイル部材ホルダー6は、このフェライトコア52のコイル非巻回部52cを嵌合収納する嵌合部61を備えると共に、筆圧検出モジュール8の後述する筆圧伝達部材82の中空部821aに圧入嵌合される突部62を備える。
【0024】
コイル部材ホルダー6の嵌合部61には、コイル非巻回部52cの外形形状に対応した凹孔61aが設けられている。そして、突部62には、芯体3の芯体本体部31が挿通される貫通孔62a(後述の
図5(A)及び(B)参照)が形成されている。この突部62の貫通孔62aは、嵌合部61の凹孔61aと連通している。したがって、コイル部材ホルダー6には、嵌合部61及び突部62を通して、芯体3の芯体本体部31を挿通する中空空間が形成されている。
【0025】
そして、コイル部材5のフェライトコア52のコイル非巻回部52cがコイル部材ホルダー6の嵌合部61に嵌合された状態では、フェライトコア52には、芯体3の芯体本体部31が挿通される貫通孔52aが形成されていることから、コイル部材5と、コイル部材ホルダー6と通じて、芯体3の芯体本体部31を挿通する中空空間が形成されることになる。
【0026】
コイル部材ホルダー6の突部62側に設けられる押圧部材7は、芯体3の芯体本体部31の端部31aが圧入嵌合される嵌合凹穴7a(後述の
図5(A)参照)を備える。この押圧部材7の外径は、コイル部材ホルダー6の突部62の貫通孔62aよりも大きく選定されている。したがって、芯体3の芯体本体部31が、コイル部材5のフェライトコア52の貫通孔52a及びコイル部材ホルダー6の嵌合部61の凹孔61a及び突部62の貫通孔62aを挿通されて、その端部31aが押圧部材7側に突出するようにされた状態において、当該端部31aが押圧部材7に嵌合されると、芯体3は、押圧部材7の存在により、抜け落ちない状態となる。ただし、芯体3を先端部32側に強く引けば、芯体本体部31の端部31aと、押圧部材7の嵌合凹穴7aとの嵌合が解除されて、芯体3は、引き抜くことができる。つまり、芯体3は交換可能である。
【0027】
筆圧検出モジュール8は、この実施形態では、筆圧検出部81と筆圧伝達部材82とが係合されて結合されることで構成されている。
【0028】
筆圧検出部81は、この実施形態では、複数個の感圧用部品からなる感圧部83と、当該感圧部83を保持すると共に、電気的な接続を行う機能を備えるホルダー84とからなる。ホルダー84は、絶縁性材料例えば樹脂からなり、感圧部83を保持する保持部841と、この保持部841に保持されている感圧部83が備える2個の電極を基板ホルダー9に収納されているプリント基板10と電気的に接続するための接続部842とを一体として備える。
【0029】
筆圧伝達部材82は、筆圧検出部81のホルダー84の保持部841と係合することで、感圧部83の複数個の感圧用部品を、ホルダー84の保持部841に保持させるようにする。筆圧伝達部材82は、また、前述したように、コイル部材ホルダー6の突部62が圧入嵌合される中空部821aを備える。筆圧検出部81と係合して結合した筆圧伝達部材82の中空部821aに、コイル部材ホルダー6の突部62が圧入嵌合されることで、筆圧検出モジュール8と、コイル部材5とが結合される。
【0030】
図3は、筆圧検出モジュール8の構成例をより詳細に説明するための分解斜視図である。また、
図4は、感圧部83を構成する感圧用部品群を説明するための図である。また、
図5(A)は、ケース2内に収納された状態における筆圧検出モジュール8の近傍の断面図である。そして、
図5(B)は、コイル部材ホルダー6を、その突部62側から見たときの外観斜視図であり、
図5(C)は、筆圧伝達部材82を、筆圧検出部81との結合部側からみたときの外観斜視図である。
【0031】
筆圧検出部81の感圧部83は、この実施形態では、
図3及び
図4に示すように、誘電体831と、スペーサ832と、導電性弾性体833とで構成されている。
【0032】
誘電体831は、
図4(A)に示すように、例えば略円板状をなしており、互いに対向する円形の一方の面831a及び他方の面831bを有し、誘電体831の一方の面831a上に円形の導体層834が形成されている。この導体層834は、この例の感圧部83としての容量可変キャパシタの第1の電極を構成する。
【0033】
スペーサ832は絶縁性材料からなり、
図4(B)に示すように、外径が誘電体831の径と同一とされているリング形状の薄い板状体の構成とされている。
【0034】
導電性弾性体833は、この例では、導電性を有する弾性ゴムで構成されている。この例の導電性弾性体833は、
図4(C)に示すように、外径が誘電体831の径と同一とされている円板状の薄い板状体833aの互いに180角間隔離れた周縁から、2個の突出部833b,833cが形成された形状とされている。スペーサ832は、この導電性弾性体833の円板状板状体833aに、例えば接着されている。
【0035】
そして、誘電体831の他方の面831b側に、スペーサ832を介して導電性弾性体833を重ねることで、この例の感圧部83としての容量可変キャパシタが構成される。この例の感圧部83としての容量可変キャパシタは、誘電体831の一方の面831aに形成されている導体層834からなる第1の電極と、導電性弾性体833で構成される第2の電極とを備える。
【0036】
筆圧検出部81のホルダー84は、樹脂を用いた例えば射出成型品として、保持部841と接続部842とを一体に備える構成とされている。筆圧検出部81のホルダー84の接続部842は、プリント基板10の基板面10aに対して平行な方向であって軸心方向(筆圧の印加方向と同方向)に突出する板状の突出部8421を備える。突出部8421は、プリント基板10の基板面10aと平行となる平面を備える。この突出部8421の平面は、筆圧検出モジュール8が基板ホルダー9と嵌合してプリント基板10と係合したときに、基板面10aと丁度接するように設けられている。
【0037】
この実施形態では、ホルダー84には、導電性の立体微細パターンとして、保持部841から接続部842にまでに亘って、2個の端子部材843及び844(理解を容易にするために、
図2及び
図3では、斜線を付して示す)が、筆圧が印加される方向に沿って、すなわち、電子ペン1の軸心方向に形成されている。この結果、端子部材843及び844は、ホルダー84に一体的に形成されている状態となる。
【0038】
ここで、2個の端子部材843及び844を、ホルダー84の表面に立体微細パターンとして形成する方法としては、例えばパナソニック社により開発されたMIPTEC(Microscopic Integrated Processing Technology)を用いることができる。立体微細パターンとして形成された端子部材843及び844の表面には、接触により電気的な接続を容易にするために、ニッケルメッキ層が形成され、更に、その上に金メッキ層が形成されている。
【0039】
2個の端子部材843及び844は、
図2及び
図3に示すように、突出部8421において、筆圧が印加される方向に直交する方向の両端縁に、筆圧が印加される方向の長辺に沿って、互いに離間する状態で形成されている。そして、2個の端子部材843及び844は、少なくとも突出部8421の両端縁において露出するように形成されている。
【0040】
筆圧検出部81のホルダー84の保持部841は、誘電体831とスペーサ832と導電性弾性体833とが結合された感圧部83を収納する凹部841aを備えると共に、この凹部841aから、軸心方向に筆圧伝達部材82側(芯体3側)に向かって突出する係合突部841b、841c、841d,841eを備える。凹部841aの底部には、端子部材844の一方の端部844aが露出して形成されている(
図3の斜線部参照)。誘電体831は、一方の面831aに形成されている導体層834が凹部841aの底部の端子部材844の一方の端部844aに当接するように収納される。したがって、凹部841a内に誘電体831が収納保持される状態では、感圧部83の第1の電極としての導体層834と、端子部材844の一方の端部844aとが接触して電気的に接続される状態となる。
【0041】
また、筆圧検出部81のホルダー84の保持部841の係合突部841bと841cとの間、及び係合突部841dと841eとの間には、導電性弾性体833の突出部833b及び833cが衝合する端面が形成されている。そして、この実施形態では、係合突部841bと841cとの間の端面には、端子部材843の一方の端部843aが露出して形成されている(
図3の斜線部参照)。したがって、ホルダー84の凹部841a内に、導電性弾性体833が、誘電体831及びスペーサ832と共に収納保持される状態では、導電性弾性体833の突出部833bが、端子部材843の一方の端部843aと衝合することで、導電性弾性体833と端子部材843とが接触して電気的に接続される。
【0042】
こうして、この実施形態では、筆圧検出部81のホルダー84の保持部841に感圧部83を収納保持することにより、感圧部83の第1の電極及び第2の電極は、接続部842の2個の端子部材843及び844に自動的に電気的に接続される状態となる。
【0043】
そして、この実施形態では、筆圧検出部81のホルダー84の接続部842の2個の端子部材843及び844は、基板ホルダー9に収納されているプリント基板10に形成されている導電パターンと、電気的に接続されるように構成される。
【0044】
基板ホルダー9は、絶縁性材料例えば樹脂からなり、基板収納部91と、筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81のホルダー84との嵌合部92とを備える。
【0045】
基板ホルダー9の基板収納部91は、蓋を有しない箱型形状に形成されており、この基板収納部91の凹部91a内に、細長の矩形形状のプリント基板10の長辺方向を電子ペン1の軸心方向として収納するようにする。この例の場合、基板収納部91の凹部91aの深さは、プリント基板10の厚さとほぼ等しくされている。
【0046】
また、基板ホルダー9の嵌合部92は、この実施形態では、筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81のホルダー84の接続部842が挿入される中空部を有する筒状形状を有する。プリント基板10には、筆圧検出部81のホルダー84の接続部842の、感圧部83の2個の電極に接続されている2個の端子部材843,844と電気的に接続されるように位置合わせされて形成されている導体パターン101,102が形成されている(
図2参照)。
【0047】
そして、筆圧検出モジュール8のホルダー84の接続部842は、基板ホルダー9の嵌合部92に挿入されると、
図5(A)に示すように、基板ホルダー9の基板収納部91に収納されているプリント基板10の上面(基板面)10aと接触するように係合する。これにより、筆圧検出部81に保持されている感圧部83の2個の電極と、プリント基板10の基板面10aに形成されている導体パターン101及び102とが、接続部842の2個の端子部材843,844を通じて、電気的に接続される。筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81のホルダー84の接続部842の2個の端子部材843,844と、プリント基板10の導体パターン101,102とは、筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81と基板ホルダー9及びプリント基板10との嵌合結合により接触して電気的に接続される状態となるが、この実施形態では、電気的な接続をより強固にするために半田付けされる。
【0048】
なお、基板ホルダー9は、ケースキャップ21により、芯体3に印加される筆圧の印加方向には移動不可とされている。このため、筆圧検出モジュール8を基板ホルダー9と嵌合させたときには、電子ペン1のケース2内においては、筆圧検出モジュール8は、軸心方向には移動しないようにされる。したがって、筆圧検出部81は、芯体に印加される筆圧を確実に検出することが可能である。
【0049】
そして、この実施形態では、基板ホルダー9の嵌合部92には、
図5(A)に示すように、ケース2内に収納したときに、ケース2の中空部の内壁との間の隙間を塞ぐシーリング部材93が設けられている。すなわち、
図6は、このシーリング部材93の外観を示すもので、弾性体、例えばゴム製のリング状部材で構成されている。そして、基板ホルダー9の嵌合部92には、
図5(A)に示すように、その周側部にリング状凹溝92aが形成されており、このリング状凹溝92a内にシーリング部材93が固定収納されている。なお、この実施形態では、シーリング部材93が嵌合部92の周方向に回転してしまわないように、シーリング部材93には、突起93aが形成されていると共に、嵌合部92のリング状凹溝の一部には、シーリング部材93の突起93aを収納する切欠き92b(
図5(A)参照)が形成されている。
【0050】
このシーリング部材93により、ケース2内の中空部のプリント基板10が配置される空間は、筆圧検出モジュール8が存在する芯体3を突出させる開口部2a側の空間とは分離される。したがって、シーリング部材93は、第2のシーリング部材に対応するものである。
【0051】
この実施形態の電子ペン1は、その指示位置を位置検出装置に伝達するために、コイル部材5のフェライトコア52に巻回されているコイル51とキャパシタとからなる共振回路を用いるが、その共振回路を構成するキャパシタ103が、
図2に示すように、プリント基板10の基板面10aに形成されている。また、プリント基板10の基板面10aには、押下されることによりオン、オフされる押下スイッチからなるサイドスイッチ104が設けられている。更に、プリント基板10の基板面10aには、サイドスイッチ104と直列に接続されるキャパシタ105やその他の電子部品が設けられている。
【0052】
なお、サイドスイッチとキャパシタ105との直列回路は、コイル51とキャパシタ103とからなる共振回路に並列に接続されて、共振回路の共振周波数を、サイドスイッチ104のオン、オフに応じて変化させることで、サイドスイッチ104がオンされたか、あるいはオフのままであるかを位置検出装置202に伝達するようにする。
【0053】
そして、この実施形態の筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81は、前述したように、感圧部83として、筆圧に応じた静電容量を呈する容量可変キャパシタを用いる。電子ペン1は、この筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81の感圧部83の容量可変キャパシタを、前記共振回路に接続することで、共振回路の共振周波数を筆圧に応じたものとするようにする。
【0054】
電子ペン1に対応する位置検出装置202は、電子ペン1からの電磁結合信号の共振周波数の変化を検出することで、電子ペン1のペン先に印加されている筆圧を検出する機能を有する。上述の導体パターン101及び102は、筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81の感圧部83により構成される容量可変キャパシタを、共振回路に接続するための端子部となっている。
【0055】
筆圧検出モジュール8の筆圧伝達部材82は、
図5(A)及び(C)に示すように、内部に中空部821aを備える筒状体部821と、筒状体部821の中空部821aの中空空間を閉塞する障壁822とが一体的に形成されて構成されている。
【0056】
障壁822は、この例では、薄い板状体で構成されているが、
図5(A)及び(C)に示すように、その薄い板状体には凹部822a,822bが形成されることにより、当該凹部822a,822bの部分の厚さを薄くした薄肉部とすることで、その板厚方向に弾性的に変移可能なように構成されている。そして、この実施形態では、障壁822は、弾性部材、例えばエラストマーにより構成されており、前記凹部822a,822bの部分の薄肉部と相まって、その板厚方向の弾性的な変移がより可能なように構成されている。
【0057】
筒状体部821は、弾性を有しない材料、例えば樹脂により構成されていてもよいし、障壁822と同様に、エラストマーにより構成されていてもよい。筒状体部821を弾性を有しない材料で構成し、障壁822を弾性を有するエラストマーで構成する場合には、二色成形の方法により、筆圧伝達部材82を製造するようにしてもよい。
【0058】
そして、筒状体部821の中空部821aの障壁822が設けられていない側は開口部とされ、この開口部側から、中空部821a内にコイル部材ホルダー6の突部62が圧入嵌合される。この例の場合、コイル部材ホルダー6の突部62の側周面には、
図5(A)、(B)に示すような2個のリング状突部621,622が設けられており、このリング状突部621,622により筆圧伝達部材82の内壁との間に隙間が生じることなく、コイル部材ホルダー6が、筆圧伝達部材82に嵌合される。なお、この例では、2個のリング状突部621,622を突部62に形成しているが、リング状突部は1個でもよい。
【0059】
コイル部材ホルダー6の圧入嵌合に先立ち、筆圧伝達部材82の中空部821a内には、押圧部材7が嵌合凹穴7aが筒状体部821の開口側に向き、当該押圧部材7の嵌合凹穴7aとは反対側が筆圧伝達部材82の障壁822と衝合するように収納される。押圧部材7の外径はコイル部材ホルダー6の突部62の貫通孔62aよりも大きいので、コイル部材ホルダー6が筆圧伝達部材82の中空部821aに圧入嵌合されると、押圧部材7は、筆圧伝達部材82の中空部821aから脱落することなく、当該中空部821a内に収納される。
【0060】
そして、芯体3の芯体本体部31が、コイル部材5のフェライトコア52の貫通孔52a、コイル部材ホルダー6の嵌合部61の凹孔61a及び突部62の貫通孔62aを挿通されて押し込まれると、芯体3の芯体本体部31の端部31aは、
図5(A)に示すように、筆圧伝達部材82の中空部821aの押圧部材7の嵌合凹穴7aに圧入嵌合される。
【0061】
したがって、芯体3に筆圧が印加されると、その筆圧が押圧部材7に伝達されて、当該押圧部材7が筆圧伝達部材82の障壁822を押圧し、障壁822は、その印加された筆圧に応じて軸心方向に弾性的に変移する。
【0062】
以上のようにして、筆圧伝達部材82に、コイル部材ホルダー6を介して、コイル部材5が嵌合されたときには、コイル部材5のフェライトコア52の貫通孔52aと、コイル部材ホルダー6の嵌合部61の凹孔61aと、突部62の貫通孔62aとが連通して芯体3の芯体本体部31を挿通させる中空空間が生成されている。この中空空間は、筆圧伝達部材82の障壁822により閉塞されている。すなわち、この例においては、コイル部材5と、コイル部材ホルダー6と、筆圧伝達部材82とが嵌合して結合することにより、芯体挿入部材が構成されている。
【0063】
筆圧伝達部材82の筒状体部821には、また、筆圧検出部81のホルダー84の保持部841の係合突部841b及び係合突部841cと係合する係合突起823aと、係合突部841d及び係合突部841eと係合する係合突起823bとが形成されている。ホルダー84の保持部841の係合突部841b及び係合爪部841cの先端には係合突起823aと係合する係合爪部841bt及び係合爪部841ctが形成されており、また、係合突部841d及び係合爪部841e先端には、係合突起823bと係合する係合爪部841dt及び係合爪部841etが形成されている。
【0064】
そして、ホルダー84の保持部841に感圧部83を収納している状態において、ホルダー84に対して、筆圧伝達部材82を軸心方向に結合させると、
図2に示すように、両者が結合して、これにより、感圧部83がホルダー84の保持部841に保持されるようになる。このとき、ホルダー84の保持部841の係合突部841b及び係合突部841cの先端の係合爪部841bt及び係合突部841ctが筆圧伝達部材82の係合突起823aと係合すると共に、係合突部841d及び係合突部841e先端の係合爪部841dt及び係合突部841etが係合突起823bと係合して、ホルダー84の保持部841に対して筆圧伝達部材82が係合する。これにより、ホルダー84に対して筆圧伝達部材82が係止して、両者が結合する状態となる。
【0065】
このようにして、筆圧伝達部材82がホルダー84に係合して結合する状態では、
図3に示すように、筆圧検出部81のホルダー84の保持部841において、前述したように、感圧部83の誘電体831の一方の端面の導体層834(第1の電極)が、端子部材844の一方の端部844aに電気的に接続されると共に、導電性弾性体833(第2の電極)の突出部833bが、端子部材843の一方の端部843aに電気的に接続されている。
【0066】
そして、この筆圧伝達部材82がホルダー84に係合して結合する状態では、
図5(A)に示すように、筆圧伝達部材82の障壁822は、感圧部83の導電性弾性体833を押圧することが可能な状態になる。なお、この実施形態では、
図5(C)に示すように、筆圧伝達部材82の係合突起823aの障壁822側の先端823at及び係合突起823bの障壁822側の先端823btは、軸心方向において、障壁822の面よりも若干突出するように、斜めに形成されている。このため、この筆圧伝達部材82の係合突起823aの障壁822側の先端823at及び係合突起823bの障壁822側の先端823btの存在により、筆圧が印加されていないときには、
図5(A)に示すように、障壁822が、感圧部83の導電性弾性体833とは、僅かの空間を介して対向するようにされている。
【0067】
そして、前述したように、芯体3に筆圧が印加されると、その印加された筆圧に応じて押圧部材7により筆圧伝達部材82の障壁822が押圧され、障壁822は、その印加された筆圧に応じて軸心方向に弾性的に変移し、この障壁822の弾性的な変移により、感圧部83の導電性弾性体833が押圧される。このため、スペーサ832を介して離間されている導電性弾性体833と誘電体831とが接触し、その接触面積が筆圧に応じて変化する。この導電性弾性体833と誘電体831との接触面積に応じた静電容量が、感圧部83の第1の電極と第2の電極との間に得られる。すなわち、感圧部83としての容量可変キャパシタの静電容量から、筆圧を検出することができる。
【0068】
以上のようにして、コイル部材5が、コイル部材ホルダー6を介して筆圧検出モジュール8の筆圧伝達部材82に嵌合されて結合され、そして、筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81のホルダー84の接続部842が基板ホルダー9の嵌合部92を介してプリント基板10と結合される。これにより、コイル51が巻回されているフェライトコア52からなるコイル部材5と、筆圧検出モジュール8と、プリント基板10が保持される基板ホルダー9とは、互いに結合されて、一つのモジュール(ペンモジュール部品)の構成となる。
【0069】
そして、筆圧検出モジュール8と、プリント基板10が収納されている基板ホルダー9とが嵌合されて結合された後、
図7に示すように、コイル部材5のコイル51の一方及び他方の端部51a及び51bが、筆圧検出部81のホルダー84の接続部842の、基板ホルダー9の嵌合部92と嵌合する部分において、端子部材843及び端子部材844に、例えば半田付けされて接続されている。
図7における黒く塗りつぶした部分は、その半田付け部分を示している。
【0070】
そして、この実施形態では、
図2及び
図7に示すように、基板ホルダー9の嵌合部92には、このコイル51の一方及び他方の端部51a及び51bと端子部材843及び端子部材844との接続部分(半田付け部分)が、筆圧検出モジュール8との嵌合を妨げないようするために、切欠き92a及び切欠き92bが形成されている。
【0071】
また、この実施形態では、筆圧検出モジュール8の筆圧伝達部材82には、軸心方向の凹溝824a,凹溝824bが形成されていると共に、筆圧検出部81のホルダー84の周側面にも、筆圧伝達部材82の凹溝824a,凹溝824bと連なるようにされた軸心方向の凹溝845a,凹溝845bが形成されている。
図7に示すように、コイル部材5のコイル51の一方及び他方の端部51a及び51bは、この凹溝824a,凹溝824b及び凹溝845a,凹溝845b内を通って、筆圧検出部81のホルダー84の接続部842の端子部材843及び端子部材844に半田付けされて接続されている。
【0072】
これにより、コイル部材5のコイル51の一方及び他方の端部51a及び51bは、ペンモジュール部品において、軸心方向に直交する方向に食み出さないようにされる。さらに、この例では、
図5(B)に示すように、コイル部材ホルダー6の嵌合部61の外周部には、コイルの一方及び他方の端部51a及び51bが、ペンモジュール部品から食み出さないようにするための段差部61b及び段差部61cが形成されている。
【0073】
なお、端子部材843及び端子部材844において、コイル51の一方及び他方の端部51aおよび51bを単に半田付けするのではなく、当該端子部材843及び端子部材844の位置に、V字型の金属端子等を形成しておき、そのV字型の金属端子に、コイル51の一方及び他方の端部51aおよび51bを係合させるようにしてもよい。その場合にも、より確実に電気的に接続するために、半田付けするようにしてもよい。
【0074】
このようにしてコイル51の一方及び他方の端部51a及び51bを端子部材843及び端子部材844に電気的に接続することで、端子部材843及び端子部材844がプリント基板10のキャパシタ103に接続されていることから、共振回路が構成されると共に、当該共振回路に並列に、感圧部83により構成される容量可変キャパシタが接続されることになる。これにより、コイル51の一方及び他方の端部51a及び51bを、プリント基板10にまで延長して、プリント基板10の基板面10aにおいて、半田付けすることが不要になる。
【0075】
以上のようにして、筆圧検出モジュール8と、プリント基板10が保持される基板ホルダー9とが互いに結合された後には、筆圧検出部81の接続部842の端子部材843及び端子部材844と、プリント基板10の基板面10aの導体パターン101及び導体パターン102との接続部分を、必要に応じて半田付けする。その後、基板ホルダー9の基板収納部91に収納されているプリント基板10の基板面10a上を、
図5(A)及び
図9(A)に示すように、サイドスイッチ104の押圧を可能にするために、このサイドスイッチ104の部分を除いて、樹脂モールド部材110により覆うようにする。
【0076】
そして、上述したコイル部材5と、筆圧検出モジュール8と、プリント基板10が保持される基板ホルダー9とが互いに結合されて一つのモジュールの構成とされたペンモジュール部品が、電子ペン1のケース2の中空部内に収納される。このペンモジュール部品のケース2の中空部内への収納時に、サイドスイッチ104を押下する押下操作子22の取付がなされる。
【0077】
図9(A)は、ケース2内に基板ホルダー9が収納された部分の断面図である。また、
図9(B)は、サイドスイッチ104の取付用部材23を、プリント基板10に対向する面側から見た図である。また、
図9(C)は、サイドスイッチ104用の押下操作子22を、プリント基板10に対向する面側から見た図である。
【0078】
図9(A)に示すように、ケース2には、押下操作子22を配設するための貫通孔2bが形成されている。押下操作子22は、例えば樹脂からなり、
図9(C)に示すように、ケース2の貫通孔2bに丁度嵌合する形状に形成されている。押下操作子22のプリント基板10に対向する面には、
図9(A)及び(C)に示すように、取付用部材23と係合する円柱状の突部221及び222が形成されている。
【0079】
取付用部材23は、弾性を有する材料、この例では樹脂により構成されており、この取付用部材23には、押下操作子22の突部221及び222が係合する透孔231及び232と、サイドスイッチ104を押下するための突部233が形成されている。取付用部材23の透孔231及び232は、押下操作子22の突部221及び222の径と同じ径の円形部分231a及び232aと、突部221及び222の径よりも短い幅の直線状孔231b及び232bを備える。
【0080】
押下操作子22の円柱状の突部221及び222の付け根位置には、取付用部材23の透孔231及び232の直線状孔231b及び232bに係合して、押下操作子22が取付用部材23から外れないようにする切りこみ部221a及び222a(
図9(C)の点線参照)が形成されている。なお、取付用部材23の透孔231及び232の直線状孔231b及び232bは、押下操作子22の円柱状の突部221及び222の付け根位置の切り込み部221a及び222bに応じて、取付用部材23の他の部分よりも若干薄く形成されている。
【0081】
そして、
図9(A)及び
図2に示すように、基板ホルダー9のケースキャップ21側の端部には、取付用部材23を係止させるための凹穴91bが設けられている。一方、取付用部材23の長手方向の端部には、
図9(A)及び(B)に示すように、この凹穴91bに嵌合する折り曲げ突部234が形成されている。
【0082】
ペンモジュール部品をケース2内に収納するに先立ち、
図9(A)に示すように、取付用部材23の突部233がサイドスイッチ104を押下可能の状態となるようにして、基板ホルダー9の凹穴91bに、取付用部材23の折り曲げ突部234が嵌合されて、取付用部材23が基板ホルダー9の樹脂モールド部材110で覆われているプリント基板10の上に取り付けられる。
【0083】
次に、当該取付用部材23が取り付けられたペンモジュール部品が、ペン先側の開口部2aとは反対側から、ケース2内に収納に収納される。そして、ペンモジュール部品に取り付けられた取付用部材23の透孔231及び232の部分が、ケース2の貫通孔2bから臨める状態になったら、当該ケース2の貫通孔2b内に押下操作子22を挿入し、押下操作子22の突部221及び222を、取付用部材23の透孔231及び232の円形部分231a及び232aに挿入して係合させるようにする。
【0084】
そして、ペンモジュール部品を更にケース2内の押し込む。すると、取付用部材23の透孔231及び232の円形部分231a及び232aに挿入されている押下操作子22の突部221及び222は、取付用部材23の透孔231及び232の直線状孔231b及び232bに係合し、押下操作子22は、取付用部材23と係合して外れなくなる。以上のようにして、押下操作子22は、ペンモジュール部品をケース2内に収納する際に取付用部材23に係合することで取り付けられる。
【0085】
この場合に、ペンモジュール部品の、ケース2の中空部のペン先側の開口部近傍には、前述したように、フェライトコア52のテーパー部52bを覆うようにキャップ部材4が配されている。このキャップ部材4は、前述したように、弾性ゴムで構成されており、コイル部材5のフェライトコア52の先端側と、ケース2の中空部の内壁面との間の隙間を無くすようにシーリングする第1のシーリング部材となる。
【0086】
図8は、ケース2内の中空部に、ペンモジュール部品を収納したときの、電子ペン1のケース2の開口部2a側における断面図である。この場合、ペンモジュール部品は、ケースキャップ21がケース2に嵌合されたときに、当該ケースキャップ21によりケース2の開口部2a側に押圧された状態となる。このため、コイル部材5のフェライトコア52のテーパー部52bが、キャップ部材4をケース2の内壁側に押圧し、これによりケース2の内壁との隙間を無くすようにシーリングがされる。この例では、キャップ部材4は、上述したように、裾広がりのスカート形状を備えているので、
図8に示すように、キャップ部材4とケース2の内壁面とは2か所で密着し、シーリングによる防塵効果及び防水効果が向上する。
【0087】
そして、このキャップ部材4によるケース2の開口部2a側でのシーリングにより、フェライトコア52の貫通孔52aの空間と、ケース2の内部のペンモジュール部品が収納される中空部の空間とが分離される。
【0088】
すなわち、前述したように、この例においては、コイル部材5と、コイル部材ホルダー6と、筆圧伝達部材82とが嵌合して結合することにより、芯体挿入部材が構成されている。そして、この芯体挿入部材の中空空間は、コイル部材5のフェライトコア52の貫通孔52a、コイル部材ホルダー6の凹孔61a及び貫通孔62a、筆圧伝達部材82の中空部821aからなり、筆圧伝達部材82の障壁822により閉塞されている。
【0089】
この場合に、コイル部材ホルダー6の突部62と筆圧伝達部材82との嵌合部においては、コイル部材ホルダー6のリング状突部621及び622がコイル部材ホルダー6と筆圧伝達部材82の中空部821aの内壁と隙間なく密着することで、シーリングが確保されている。これにより、芯体挿入部材の中空空間は、フェライトコア52の貫通孔52aの開口側以外は、他とは隔絶されている独立の空間となっている。そして、この芯体挿入部材の中空空間内には、電気的な部品は存在せず、また、電気的な接続部分も存在しないので、この芯体挿入部材の中空空間においては防水性及び防塵性の確保は、不要である。
【0090】
そして、芯体挿入部材の芯体3側の端部となるフェライトコア52のテーパー部52b側においては、上述の
図8で説明したように、キャップ部材4によるケース2の内壁との間でのシーリングにより、芯体挿入部材の中空空間と、ケース2の内部のペンモジュール部品が収納される中空部の空間とが分離されている。
【0091】
したがって、芯体挿入部材の中空空間に塵や水分が侵入したとしても、ケース2の内部のペンモジュール部品が収納される中空部の空間には、塵や水分が侵入することはない。このため、芯体3と、芯体挿入部材の中空空間とを間をシール必要がなくなり、芯体3を自由に軸心方向に移動させるようにしても、電子ペン1の防水性及び防塵性を確保することができる。
【0092】
そして、ペンモジュール部品がケース2内に収納された状態では、
図5(A)及び
図9(A)に示すように、基板ホルダー9の、筆圧検出モジュール8との嵌合部92に設けられているシーリング部材93がケース2の内壁面に密着して、ケース2の中空部を、嵌合部92よりもペン先側と、ケースキャップ21側とに分離するようにシーリングする。
【0093】
前述したように、ペン先側においては、外部空間に対してケース2の中空部の空間がキャップ部材4によりシーリングされている。したがって、ケース2内の中空部の嵌合部92よりもペン先側の空間は、キャップ部材4による第1のシーリングと、嵌合部92のシーリング部材93による第2のシーリングとにより、防水性及び防塵性が確保された密閉された空間となる。
【0094】
したがって、ケース2内の中空部の嵌合部92よりもペン先側の空間は、電子ペン1のペン先側の開口部2a側の外部空間からの水分の侵入及び塵の侵入が防止されると共に、サイドスイッチ104の押下操作子22が設けられている部分の貫通孔2bを通した水分の侵入及び塵の侵入が防止される。上述したように、このケース2内の中空部の嵌合部92よりもペン先側の空間には、感圧部83が配置されていると共に、コイル51と感圧部53との接続部及びプリント基板10のキャパシタ103やサイドスイッチ104、キャパシタ105との接続部が配置されているが、これらについての防水性及び防塵性を確保することができる。
【0095】
そして、ケース2内の中空部の嵌合部92よりもケースキャップ21側においては、プリント基板10の基板面10aが樹脂モールド部材110により覆われているので、サイドスイッチ104の押下操作子22が設けられている部分の貫通孔2bを通した水分の侵入及び塵の侵入があっても、プリント基板10の基板面10a上の電子部品についての防水性及び防塵性は確保されている。
【0096】
なお、この実施形態では、筆圧検出モジュール8の筆圧伝達部材82に、コイル部材ホルダー6を介してコイル部材5が嵌合されることにより、筆圧検出モジュール8の軸心方向の中心線位置と、コイル部材5のフェライトコア52の軸心方向の中心線位置とが一致するようになる。そして、基板ホルダー9の嵌合部92に筆圧検出モジュール8が嵌合されてプリント基板10に対して、筆圧検出モジュール8が結合されることにより、筆圧検出モジュール8は、基板ホルダー9及びプリント基板10に対して既定の位置で結合するようになる。また、ペンモジュール部品を、ケース2の中空部内に収納した状態では、筆圧検出モジュール8の軸心方向の中心線位置及びフェライトコア52の軸心方向の中心線位置が、当該ケース2の中空部の軸心方向の中心線位置と一致するように、基板ホルダー9がケースキャップ21に結合されている。
【0097】
そして、芯体3の芯体本体部31は、ケース2の開口部2a(
図8参照)及びキャップ部材4の開口4a、更に、フェライトコア52の貫通孔52aを挿通されて、筆圧検出モジュール8の筆圧伝達部材82内の押圧部材7に嵌合される。
【0098】
以上のようにして、この実施形態によれば、ペンモジュール部品をケース2内に収納するだけで、電子ペン1の防水性及び防塵性のための第1のシーリング及び第2のシーリングができる。そして、この実施形態によれば、コイル部材5と、コイル部材ホルダー6と、筆圧検出モジュール8の筆圧伝達部材82とで構成される芯体挿入部材の中空空間は、外部に対するシーリングは施さないので、芯体3が軸心方向に自由に移動可能になる。
【0099】
そして、上述の実施形態によれば、筆圧検出モジュール8を、プリント基板10が係止された基板ホルダー9に対して嵌合するだけで、筆圧検出モジュール8の2個の端子部材843および844が、プリント基板10の基板面10aに形成されている導体パターン101及び102と接触して電気的な接続がされる。すなわち、筆圧検出モジュール8の2個の端子部材843および844と、プリント基板10の導体パターン101及び102との電気的な接続についての位置合わせは、筆圧検出モジュール8を基板ホルダー9の嵌合部92に嵌合するだけで自動的になされる。
【0100】
[位置検出装置202における電子ペン1の位置検出及び筆圧検出のための回路構成]
次に、上述の実施形態の電子ペン1を用いて指示位置の検出および筆圧の検出を行う位置検出装置202における回路構成例について、
図10を参照して説明する。
図10は、この例の位置検出装置202の回路構成例を示すブロック図である。
【0101】
電子ペン1は、コイル51と、キャパシタ103と、筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81の感圧部83で構成される容量可変キャパシタ83Cと、サイドスイッチ104及びキャパシタ105の直列回路との並列回路からなる共振回路1Rを備える。この場合、筆圧検出部81の感圧部83で構成される容量可変キャパシタ83Cの静電容量が、印加される筆圧に応じて変化するので、共振回路1Rの共振周波数が筆圧に応じて変化する。また、サイドスイッチ104のオンのときと、オフのときとで、キャパシタ105が共振回路1Rに接続されるか否かが制御されて、共振回路1Rの共振周波数が変化する。
【0102】
位置検出装置202では、電子ペン1の共振回路1Rから電磁結合により受信する信号が検出されるセンサ上の位置から、電子ペン1により指示されたセンサ上の位置を検出すると共に、電子ペン1の共振回路1Rから電磁結合により受信する信号の位相変化を検出することより共振周波数の変化を検出して、電子ペン1の芯体3に印加された筆圧を検出するようにする。
【0103】
位置検出装置202には、X軸方向ループコイル群241と、Y軸方向ループコイル群242とが積層されて位置検出コイル240が形成されている。また、位置検出装置202には、X軸方向ループコイル群241及びY軸方向ループコイル群242が接続される選択回路243が設けられている。この選択回路243は、2つのループコイル群241,242のうちの一のループコイルを順次選択する。
【0104】
さらに、位置検出装置202には、発振器251と、電流ドライバ252と、切り替え接続回路253と、受信アンプ254と、検波器255と、ローパスフィルタ256と、サンプルホールド回路257と、A/D変換回路258と、同期検波器259と、ローパスフィルタ260と、サンプルホールド回路261と、A/D変換回路262と、処理制御部263とが設けられている。処理制御部263は、マイクロコンピュータにより構成されている。
【0105】
発振器251は、周波数f0の交流信号を発生する。そして、発振器251は、発生した交流信号を、電流ドライバ252と同期検波器259に供給する。電流ドライバ252は、発振器251から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路253へ送出する。切り替え接続回路253は、処理制御部243からの制御により、選択回路213によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ252が、受信側端子Rには受信アンプ254が、それぞれ接続されている。
【0106】
選択回路243により選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路243及び切り替え接続回路253を介して受信アンプ254に送られる。受信アンプ254は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器255及び同期検波器259へ送出する。
【0107】
検波器255は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、ローパスフィルタ256へ送出する。ローパスフィルタ256は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器255の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路257へ送出する。サンプルホールド回路257は、ローパスフィルタ256の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路258へ送出する。A/D変換回路258は、サンプルホールド回路257のアナログ出力をディジタル信号に変換し、処理制御部263に出力する。
【0108】
一方、同期検波器259は、受信アンプ254の出力信号を発振器251からの交流信号で同期検波し、それらの間の位相差に応じたレベルの信号をローパスフィルタ260に送出する。このローパスフィルタ260は、周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、同期検波器259の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路241に送出する。このサンプルホールド回路261は、ローパスフィルタ260の出力信号の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路262へ送出する。A/D変換回路262は、サンプルホールド回路261のアナログ出力をディジタル信号に変換し、処理制御部263に出力する。
【0109】
処理制御部263は、位置検出装置202の各部を制御する。すなわち、処理制御部263は、選択回路243におけるループコイルの選択、切り替え接続回路253の切り替え、サンプルホールド回路257、261のタイミングを制御する。処理制御部263は、A/D変換回路258、262からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群241及びY軸方向ループコイル群242から一定の送信継続時間をもって電波を送信させる。
【0110】
X軸方向ループコイル群241及びY軸方向ループコイル群242の各ループコイルには、電子ペン1から送信される電波によって誘導電圧が発生する。処理制御部263は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン1のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。また、処理制御部263は、送信した電波と受信した電波との位相差(周波数偏移)に応じた信号のレベルに基づいて筆圧を検出する。さらに、処理制御部263は、送信した電波と受信した電波との位相差(周波数差)に応じた信号のレベルに基づいてサイドスイッチ104がオン状態であるか、オフ状態であるかを検出する。
【0111】
[他の実施形態]
以上は、電磁誘導方式の電子ペンの場合にこの発明を適用した場合である。しかし、この発明は、静電容量方式の電子ペンの例であるアクティブ静電ペンにも適用できる。以下に説明するアクティブ静電ペンの例の電子ペンにおいては、フェライトコアに巻回されたコイルは、アクティブ静電ペンが備える信号発信回路の電源を充電する充電回路の一部とされる。
【0112】
図11は、この例のアクティブ静電ペンの構成の電子ペン1Bの回路構成例を示すものである。このアクティブ静電ペンの構成の電子ペン1Bにおいては、芯体3Bは、導体、例えば導電性金属や導電性粉末を混入した硬質樹脂からなる電極芯の構成とされる。以下の説明では、芯体3Bを、電極芯3Bと称する。
【0113】
なお、図示は省略するが、この電子ペン1Bにおいては、筆圧伝達部材82の障壁822は、導電性の部材で構成されると共に、押圧部材7も導電性を有する部材で構成される。そして、感圧部83の導電性弾性体833の障壁822との対応面には、筆圧伝達部材82との絶縁のための絶縁膜が形成される。そして、筆圧検出部81のホルダー84には、障壁822と電気的に接続するように、端子部材843や844と同様に、立体微細パターンとして構成された端子部材が形成される。障壁822は、筆圧伝達部材82と筆圧検出部81とが係合されたときに、この端子部材と電気的に接続するように構成される。
【0114】
そして、プリント基板10の基板面10a上には、電極芯3Bに供給する信号発信回路(IC)が設けられており、障壁822と電気的に接続されている端子部材が、この信号発信回路と電気的に接続されるように、筆圧検出部81のホルダー84の接続部842が形成される。
【0115】
この例では、プリント基板10に形成されている電子回路は、
図11に示すように、上述の信号発信回路301と、この信号発信回路301を駆動するための駆動電圧(電源電圧)を発生する蓄電素子の例としての電気二重層キャパシタ302と、整流用ダイオード303と、電圧変換回路304とを含む回路構成を有する。信号発信回路301は、この例では発振回路で構成されている。
【0116】
電極芯3Bは、上述の実施形態の場合と同様にして、コイル部材5のフェライトコア52の貫通孔52aを挿通して、筆圧検出モジュール8の筆圧伝達部材82内の導電性を有する押圧部材7に嵌合され、この導電性を有する押圧部材7を介して導電性を有する障壁822を押圧する。そして、電極芯3Bは、前述したようにして、プリント基板の信号発信回路301と電気的に接続されている。
【0117】
そして、筆圧検出モジュール8の2個の端子部材843及び844は、
図11に示すように、プリント基板に形成されている信号発信回路301に電気的に接続されている。信号発信回路301を構成する発振回路は、筆圧検出部81の感圧部83の容量可変キャパシタ83BCの容量に応じて周波数が変化する信号を発生し、その発生した信号を電極芯3Bに供給する。また、信号発信回路301は、サイドスイッチ104のオン、オフに応じて周波数が変化する信号を発生し、その発生した信号を電極芯3Bに供給する。
【0118】
この例の電子ペン1Bは、図示しない充電器に装着したときに、充電器が発生する交番磁界によりコイル51には誘導起電力が発生して、ダイオード303を介して電気二重層キャパシタ302を充電する。電圧変換回路304は、電気二重層キャパシタ302に蓄えられた電圧を一定の電圧に変換して信号発信回路301の電源として供給する。
【0119】
この例の静電方式スタイラスペンとしての電子ペン1Bが通常動作するとき(充電動作を行わないとき)は、コイル51は固定電位(この例では接地電位(GND))となるため、電極芯3Bの周囲に設けたシールド電極として作用する。なお、静電方式スタイラスペンが通常動作するときのコイル51の固定電位は、接地電位に限らず、電源のプラス側電位であっても良いし、電源のプラス側電位と接地電位との中間の電位であっても良い。
【0120】
信号発信回路(発振回路)301は、筆圧検出部81の感圧部83で構成される容量可変キャパシタ83BCの容量に応じて周波数が変化する信号やサイドスイッチ104のオン、オフに応じて周波数が変化する信号を発生し、その発生した信号を電極芯3Bに供給する。信号発信回路301からの信号は、電極芯3Bよりその信号に基づく電界として放射される。信号発信回路301を構成する発振回路は、例えばコイルとキャパシタによる共振を利用したLC発振回路により構成される。この実施形態の電子ペン1Bの例の静電方式スタイラスペンの座標位置を検出する位置検出装置では、この信号の周波数より電極芯3Bに加えられた筆圧を求めることができる。
【0121】
図12は、静電方式スタイラスペンの構成である電子ペン1Bからの信号を受け、センサ上の位置を検出すると共に、筆圧を検出するようにする位置検出装置400を説明するためのブロック図である。
【0122】
この実施形態の位置検出装置400は、
図12に示すように、センサ410と、このセンサ410に接続されるペン検出回路420とからなる。センサ410は、この例では、断面図は省略するが、下層側から順に、第1の導体群411、絶縁層(図示は省略)、第2の導体群412を積層して形成されたものである。第1の導体群411は、例えば、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体411Y
1、411Y
2、…、411Y
m(mは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置したものである。
【0123】
また、第2の導体群412は、第1の導体411Y1、411Y2、…、411Ymの延在方向に対して交差する方向、この例では直交する縦方向(Y軸方向)に延在した複数の第2の導体412X1、412X2、…、412Xn(nは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置したものである。
【0124】
このように、位置検出装置400のセンサ410では、第1の導体群411と第2の導体群412を交差させて形成したセンサパターンを用いて、電子ペン1Bが指示する位置を検出する構成を備えている。
【0125】
なお、以下の説明において、第1の導体411Y1、411Y2、…、411Ymについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第1の導体411Yと称する。同様に、第2の導体412X1、412X2、…、412Xnについて、それぞれの導体を区別する必要がないときには、その導体を、第2の導体412Xと称することとする。
【0126】
ペン検出回路420は、センサ410との入出力インターフェースとされる選択回路421と、増幅回路422と、バンドパスフィルタ423と、検波回路424と、サンプルホールド回路425と、AD(Analog to Digital)変換回路426と、制御回路427とからなる。
【0127】
選択回路421は、制御回路427からの制御信号に基づいて、第1の導体群411および第2の導体群412の中から1本の導体411Yまたは412Xを選択する。選択回路421により選択された導体は増幅回路422に接続され、電子ペン1Bからの信号が、選択された導体により検出されて増幅回路422により増幅される。この増幅回路422の出力はバンドパスフィルタ423に供給されて、電子ペン1Bから送信される信号の周波数の成分のみが抽出される。
【0128】
バンドパスフィルタ423の出力信号は検波回路424によって検波される。この検波回路424の出力信号はサンプルホールド回路425に供給されて、制御回路427からのサンプリング信号により、所定のタイミングでサンプルホールドされた後、AD変換回路426によってデジタル値に変換される。AD変換回路426からのデジタルデータは制御回路427によって読み取られ、処理される。
【0129】
制御回路427は、内部のROMに格納されたプログラムによって、サンプルホールド回路425、AD変換回路426、および選択回路421に、それぞれ制御信号を送出するように動作する。そして、制御回路427は、AD変換回路426からのデジタルデータから、電子ペン1Bによって指示されたセンサ410上の位置座標を算出すると共に、電子ペン1Bの筆圧検出モジュールで検出された筆圧を検出するようにする。
【0130】
動作の流れとしては、制御回路427は、選択信号を選択回路421に供給し、第2の導体412Xのそれぞれを選択し、AD変換回路426から出力されるデータを信号レベルとして読み取る。
【0131】
第2の導体412Xのいずれかから所定値以上のレベルの信号が検出された場合には、制御回路427は、最も高い信号レベルが検出された第2の導体412Xの番号とその周辺の複数個の第2の導体412Xを記憶する。同様にして、制御回路427は、選択回路421を制御して、第1の導体411Yのうちの最も大きい信号レベルが検出された第1の導体411Yとその周辺の複数個の第1の導体411Yの番号を記憶する。
【0132】
そして、制御回路427は、以上のようにして記憶した、第2の導体412Xの番号及び第1の導体411Yの番号から、電子ペン1Bにより指示されたセンサ410上の位置を検出する。
【0133】
制御回路427は、また、AD変換回路426からの信号の周波数を検出し、その検出した周波数から、電子ペン1Bの筆圧検出部81で検出された筆圧値を検出する。すなわち、前述したように、電子ペン1Bの信号発信回路301を構成する発振回路の発振周波数は、筆圧検出部81の感圧部83で構成される容量可変キャパシタ83BCの静電容量に応じた周波数となっている。制御回路427は、例えば、電子ペン1Bの信号発信回路301を構成する発振回路の発振周波数と筆圧値との対応テーブルの情報を備えており、この対応テーブルの情報から、筆圧値を検出する。
【0134】
なお、上述の例では、電子ペン1Bは、筆圧検出部81の感圧部83で検出した筆圧を周波数に変換して電極芯3Bに供給するようにしたが、筆圧を対応させる信号属性としては周波数に限られるものではなく、信号の位相や信号の断続回数などに筆圧を対応させるようにしても良い。
【0135】
また、上述の例のアクティブ静電ペンの構成の電子ペン1Bにおいては、フェライトコアに巻回されたコイル51を、充電用のコイルとしたが、信号発信回路301の電源電圧の供給源として電池(バッテリー)を内蔵するように構成してもよい。その場合には、コイルを巻回したフェライトコアは不要となる。そして、その場合には、コイル部材の代わりに、電極芯3Bに対するシールド電極を構成する中空の筒状体が設けられ、この筒状体が当該筒状体用のホールド部材を介して筆圧伝達部材82と嵌合される構成とすることができる。
【0136】
また、上述の例のアクティブ静電ペンの構成の電子ペン1Bにおいては、信号発信回路301は、発振回路のみの構成とし、筆圧をその発振周波数の変化として位置検出装置に伝送するようにしたが、信号発信回路を、発振回路と、その発振信号に対して所定の変調を行う回路とで構成し、筆圧情報を、例えば上述したASK信号などとして位置検出装置に伝送するようにしてもよい。
【0137】
[その他の実施形態又は変形例]
上述の実施形態では、ケース2は、電子ペンの外部筐体であったが、上述のケース2を、電子ペンの外部筐体内に収納する電子ペンカートリッジのケース(筐体)とするようにしてもよい。その場合には、電子ペンカートリッジは、防水性及び防塵性が確保されたものとなり、電子ペンの外部筐体についての防水性及び防塵性に関するシーリング構成は不要となる。そして、電子ペンカートリッジの構成とする場合には、当該電子ペンカートリッジをノック式の替え芯の構成とすることができ、その場合には、電子ペンカートリッジのケース(筐体)のペン先側とは反対側の端部は、ノック機構に嵌合する嵌合部の構成とされる。
【0138】
上述の実施形態では、筆圧検出部の感圧部で構成される容量可変キャパシタは、上述の例のような複数の部品を組み合わせた機構的な構成を有するものに限られるものではなく、例えば特開2013-161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた1部品の構成とすることもできる。
【0139】
また、筆圧検出部の感圧部は、上述の実施形態では、筆圧に応じて静電容量を可変する容量可変キャパシタを用いるようにしたが、共振回路の共振周波数を変化させる変化素子としてのインダクタンス値や抵抗値を可変するものであってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0140】
1…電子ペン、2…ケース(筐体)、21…ケースキャップ、3…芯体、4…キャップ部材、5…コイル部材、51…コイル51…フェライトコア、6…コイル部材ホルダー、7…押圧部材、8…筆圧検出モジュール、9…基板ホルダー、10…プリント基板、81…筆圧検出部、82…筆圧伝達部材、83…感圧部、84…ホルダー、822…障壁、93…シーリング部材、110…樹脂モールド部材