(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】エレベータ群管理システム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
B66B1/18 F
B66B1/18 D
(21)【出願番号】P 2021150275
(22)【出願日】2021-09-15
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槇岡 良祐
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-259126(JP,A)
【文献】特開2007-084242(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に連結された2つの乗りかごを有するエレベータの運転を制御するエレベータ群管理システムにおいて、
各階の乗場において、特定の利用者の行先階と出発階を含んだ第1の行先呼びを登録する第1の登録手段と、
上記各階の乗場において、一般の利用者の行先階と出発階を含んだ第2の行先呼びを登録する第2の登録手段と、
上記第1の登録手段によって登録された上記第1の行先呼びを上記エレベータの一方の乗りかごに割り当てる第1の割当制御手段と、
上記第2の登録手段によって登録された上記第2の行先呼びの行先階と出発階と、上記第1の行先呼びの行先階と出発階とを比較し、上記第2の行先呼びが上記第1の行先呼びの応答に影響を与えない場合に、上記エレベータの他方の乗りかごを上記第2の行先呼びの割当対象とする第2の割当制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータ群管理システム。
【請求項2】
上記第2の割当制御手段は、
上記第2の行先呼びの出発階が上記第1の行先呼びの出発階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階または上記第1の行先呼びの行先階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階であり、
上記第2の行先呼びの行先階が上記第1の行先呼びの行先階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階である場合に、
上記他方の乗りかごを上記第2の行先呼びの割当対象とすることを特徴とする請求項1記載のエレベータ群管理システム。
【請求項3】
上記第2の割当制御手段は、
上記第2の行先呼びの出発階が上記第1の行先呼びの出発階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階または上記第1の行先呼びの行先階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階であり、
上記第2の行先呼びの行先階が上記第1の行先呼びの行先階と同じか、または、上記第1の行先呼びの行先階よりも後に応答する階である場合に、
上記他方の乗りかごを上記第2の行先呼びの割当対象とすることを特徴とする請求項1記載のエレベータ群管理システム。
【請求項4】
上記第1の割当制御手段は、
上記エレベータの他方の乗りかごに上記第2の行先呼びが既に登録されている場合に、上記第2の行先呼びの行先階と出発階と、上記第1の行先呼びの行先階と出発階とを比較し、上記第2の行先呼びが上記第1の行先呼びの応答に影響を与えない場合に、上記第2の行先呼びを割当変更せずに応答させることを特徴とする請求項1記載のエレベータ群管理システム。
【請求項5】
上記第1の割当制御手段は、
上記第2の行先呼びの出発階が上記第1の行先呼びの出発階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階または上記第1の行先呼びの行先階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階であり、
上記第2の行先呼びの行先階が上記第1の行先呼びの行先階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階である場合に、
上記第2の行先呼びを割当変更せずに応答させることを特徴とする請求項4記載のエレベータ群管理システム。
【請求項6】
上記第1の割当制御手段は、
上記第2の行先呼びの出発階が上記第1の行先呼びの出発階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階または上記第1の行先呼びの行先階によって決まる上記他方の乗りかごの停止階であり、
上記第2の行先呼びの行先階が上記第1の行先呼びの行先階と同じか、または、上記第1の行先呼びの行先階よりも後に応答する階である場合に、
上記第2の行先呼びを割当変更せずに応答させることを特徴とする請求項4記載のエレベータ群管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、上下に連結された乗りかごを有するエレベータ(ダブルデッキエレベータ)の運転を制御するエレベータ群管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、特定の利用者を一般の利用者よりも優先して運転サービスを行う「VIP(very important person)運転」と呼ばれるオペレーションがある。VIP運転は、特定の利用者だけを乗りかごに乗せて、その利用者の行先階に直行する運転である。VIP運転中は、一般の利用者の乗車を避けるために、通常の乗場呼びの割当が禁止されている。一方、超高層ビル等では、ビルのスペース効率を向上させるために、かご室を上下2段に構成したダブルデッキエレベータが用いられる。このようなダブルデッキエレベータにVIP運転を適用した場合、上かごまたは下かごに特定の利用者を乗せて運転することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダブルデッキエレベータの一方の乗りかごに特定の利用者を乗せてVIP運転を行っているとき、通常の乗場呼びの割当が禁止されるため、他方の乗りかごは空き状態にある。このため、ダブルデッキエレベータとしての輸送力が発揮できず、運行効率が著しく低下する。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、VIP呼びの運転サービスを損なわずに、ダブルデッキエレベータの一方の乗りかごに特定の利用者、他方の乗りかごに一般の利用者を乗せて効率的に運転することのできるエレベータ群管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るエレベータ群管理システムは、上下に連結された2つの乗りかごを有するエレベータの運転を制御する。上記エレベータ群管理システムは、第1の登録手段と、第2の登録手段と、第1の割当制御手段と、第2の割当制御手段とを具備する。上記第1の登録手段は、各階の乗場において、特定の利用者の行先階と出発階を含んだ第1の行先呼びを登録する。上記第2の登録手段は、上記各階の乗場において、一般の利用者の行先階と出発階を含んだ第2の行先呼びを登録する。上記第1の割当制御手段は、上記第1の登録手段によって登録された上記第1の行先呼びを上記エレベータの一方の乗りかごに割り当てる。上記第2の割当制御手段は、上記第2の登録手段によって登録された上記第2の行先呼びの行先階と出発階と、上記第1の行先呼びの行先階と出発階とを比較し、上記第2の行先呼びが上記第1の行先呼びの応答に影響を与えない場合に、上記エレベータの他方の乗りかごを上記第2の行先呼びの割当対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は一実施形態に係るエレベータ群管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は同実施形態における登録装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は同実施形態における表示装置の一例を示す図である。
【
図4】
図4は同実施形態における通常呼びの割当処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は上記通常呼びの割当処理を説明するための具体例である。
【
図6】
図6は同実施形態におけるVIP呼びの割当処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は上記VIP呼びの割当処理を説明するための具体例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
図1は一実施形態に係るエレベータ群管理システムの構成を示すブロック図であり、複数台のエレベータ12a,12b,12c…が群管理された構成が示されている。なお、エレベータの台数は任意であり、少なくとも2台以上あれば良い。
【0010】
エレベータ12a,12b,12c…は、上下に2つの乗りかごが連結されたダブルデッキエレベータである。A号機のエレベータ12aは、1つのかご枠内に上下に配置された上かご13aと下かご14aを有する。上かご13aと下かご14aは、1台のエレベータとして昇降路内を同一方向に昇降動作する。この場合、例えば下かご14aが1階に停止したときに、上かご13aは2階に停止する。B号機のエレベータ12b,C号機のエレベータ12cについても同様である。B号機のエレベータ12bは上かご13bと下かご14bを有し、C号機のエレベータ12cは上かご13cと下かご14cを有する。
【0011】
各号機の制御装置11a,11b,11c…は、エレベータ12a,12b,12c…に対応して設けられている。A号機制御装置11aは、A号機のエレベータ12aの運転制御を行う。具体的には、A号機制御装置11aは、上かご13aと下かご14aを昇降動作させるための図示せぬモータ(巻上機)の制御やドアの開閉制御などを行う。B号機制御装置11b、C号機制御装置11cについても同様である。各号機の制御装置11a,11b,11c…は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータによって構成される。
【0012】
各階の乗場には、DCS(Destination Control System)に用いられる第1の登録装置21と第2の登録装置22が設置されている。登録装置21,22は、乗場にて利用者の行先階を登録可能な乗場行先階登録装置である。各階の乗場に、乗場行先階登録装置が設置されているDCSをフルDCSと呼ぶ。DCSは、利用者が乗場で登録した行先階を有する呼び(行先呼び)に基づいて、複数台のエレベータの中から最適なエレベータを応答させる方式である。
【0013】
ここで、第1の登録装置21は、VIP運転の対象となる特定の利用者の行先呼びを登録する。第2の登録装置22は、一般の利用者の行先呼びを登録する。「VIP運転」とは、特定の利用者を優先的に運転サービスするオペレーションのことであり、「専用運転」とも言う。「特定の利用者」は、予めVIP運転の対象者として指定されている。VIP運転中は、一般の利用者が同じ乗りかごに乗り合わせないように配慮される。
【0014】
以下では、第1の登録装置21の操作によって登録される行先呼び(第1の行先呼び)のことを「VIP呼び」、第2の登録装置22の操作によって登録される行先呼び(第1の行先呼び)のことを「通常呼び」と称して区別する。VIP呼びは、特定の利用者が入力した行先階と、その利用者が待機している出発階の情報を含む。通常呼びは、一般の利用者が入力した行先階と、その利用者が待機している出発階の情報を含む。
【0015】
図2に示すように、第1の登録装置21は、行先階を入力するための入力部21aと、入力部21aによって入力された行先階に向かうエレベータを利用者に知らせるための表示部21bとを有する。なお、行先階の入力方法としては、テンキーの操作によるものが一般的であるが、例えばICカードなどを用いた方法であっても良い。
図2の例では、利用者が入力した行先階が13階であり、A号機のエレベータが割当号機として応答することが表示されている。
【0016】
第2の登録装置22についても同様の構成であり、行先階を入力するための入力部22aと、入力部22aによって入力された行先階に向かうエレベータを利用者に知らせるための表示部21bとを有する。なお、
図1の例では、VIP呼び登録用の第1の登録装置21と通常呼び登録用の第2の登録装置22とを個別に設けたが、例えば1台の登録装置を用いて、VIP呼びと通常呼びを選択的に登録できるような構成としても良い。
【0017】
利用者が円滑に割当号機に乗車できるように、
図3に示すように、A号機の乗場24には乗場ドア25の近傍に表示装置23が設置される。表示装置23は、A号機の行先階を所定の時間、表示するための装置である。
図3の例では、A号機の行先階として8階が表示されている。このような表示により、利用者は行先階を確認した上で乗車できる。
図3の例では、A号機の表示装置23だけが示されているが、実際には各号機毎に表示装置23が設置されており、それぞれに対応した行先階が表示される。
【0018】
群管理制御装置30は、エレベータ12a,12b,12c…の運転を統括的に制御する装置である。群管理制御装置30は、各号機の制御装置11a,11b,11c…と同様に、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータによって構成される。本実施形態において、この群管理制御装置30には、第1の割当制御部31、第2の割当制御部32、割当変更部33、割当指令出力部34が備えられている。なお、これらは、ソフトウェアによって実現しても良いし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現しても良いし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現しても良い。
【0019】
第1の割当制御部31は、第1の登録装置21の入力部21aの操作によって登録されたVIP呼びをVIP号機に割り当てるための割当処理を行う。第1の割当制御部31は、新規に登録されたVIP呼びとそのVIP呼びを割り当てた号機とを関連付けて記憶する記憶部31aを有する。
【0020】
「VIP号機」とは、特定の利用者を乗せてVIP運転(専用運転)を行うエレベータのことである。複数台のエレベータの中の少なくとも1台がVIP号機として予め設定されている。例えば、
図1に示すエレベータ12aがVIP号機として設定されている場合、第1の割当制御部31は、エレベータ12aの上かご13aまたは下かご14aにVIP呼びを割り当て、第1の登録装置21の表示部21bに割当号機の情報として「A号機」を表示する。
【0021】
なお、2台以上のVIP号機が存在する場合には、第1の割当制御部31は、これらのVIP号機の中から運行効率的に最適なVIP号機を選出し、その選出されたVIP号機の上かごまたは下かごにVIP呼びを割り当てる。VIP呼びが割り当てられたVIP号機のことを「VIP割当号機」と称す。
【0022】
第2の割当制御部32は、第2の登録装置22の入力部22aの操作によって登録された通常呼びをエレベータ12a,12b,12c…のいずれかに割り当てるための割当処理を行う。第2の割当制御部32は、新規に登録された通常呼びとその通常呼びを割り当てた号機とを関連付けて記憶する記憶部32aを有する。第2の割当制御部32は、エレベータ12a,12b,12c…の中から運行効率的に最適な号機を割当号機として選出し、その号機の上かごまたは下かごに通常呼びを割り当て、第2の登録装置22の表示部22bに割当号機の情報を表示する。
【0023】
割当変更部33は、第1の割当制御部31からの割当変更の指示を受けたときに、第2の割当制御部32との協働により、VIP号機に割り当てられていた通常呼びを他の号機に割当変更する。
【0024】
割当指令出力部34は、第1の割当制御部31または第2の割当制御部32から割当号機の情報を受けて、各号機の制御装置11a,11b,11c…の中の割当号機に対応したエレベータ制御装置に割当指令を出力して、その割当号機を乗場で行先呼び(VIP呼びまたは通常呼び)が登録された階に応答させる。また、割当号機の乗場に設置された表示装置23に当該割当号機の行先階を表示する。
【0025】
ここで、VIP号機は、通常呼びの割当対象にもなる。ただし、VIP呼びと通常呼びをVIP号機に割り当てると、特定の利用者と一般の利用者とが同じ乗りかご内に乗り合わせる可能性がある。また、特定の利用者と一般の利用者とが別々の乗りかごに分けられたとしても、特定の利用者よりも手前の階で一般の利用者が降りる場合には、VIP運転にならない(特定の利用者を行先階まで直接運べない)。このため、VIP呼びがVIP号機に割当済みの場合には、通常呼びをVIP号機に割り当てないか、あるいは、通常呼びがVIP号機に割当済みであった場合には、無条件で通常呼びを他号機に割当変更して、VIP号機の一方の乗りかごに特定の利用者を乗せ、他方の乗りかごは空き状態で運行することが一般的である。
【0026】
これに対し、本実施形態では、DCSを採用しているため、利用者の行先階が事前にわかる。したがって、通常呼びの行先階と出発階と、VIP呼びの行先階と出発階との位置関係から「通常呼びがVIP呼びの応答に影響を与えない」と判断される場合には、VIP号機の一方の乗りかごにVIP呼び、他方の乗りかごに通常呼びを割り当てることにより、特定の利用者と一般の利用者を同じVIP号機に乗せて効率的に運転することができる。
【0027】
「通常呼びがVIP呼びの応答に影響を与えない」とは、「VIP呼びの運転サービス(VIP運転)を実施できる」ことを言う。つまり、VIP呼びの割当号機が通常呼びの応答によって途中階に停止することなく、特定の利用者の出発階に応答し、その出発階から特定の利用者の行先階に直行できることを言う。
【0028】
以下に、本システムの処理動作として、(a)通常呼びの割当処理と、(b)VIP呼びの割当処理に分けて説明する。
【0029】
(a)通常呼びの割当処理
図4は本システムの通常呼びの割当処理を示すフローチャートである。ここでは、VIP呼びが割り当てられたVIP号機に、新規に登録された通常呼びを割り当てる場合の処理について説明する。このフローチャートで示される処理は、コンピュータである群管理制御装置30が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0030】
第2の登録装置22の操作によって通常呼びが登録されると(ステップS1-1のYes)、群管理制御装置30に備えられた第2の割当制御部32に上記通常呼びの情報(行先階と出発階)が与えられる。
【0031】
まず、第2の割当制御部32は、第1の割当制御部31からVIP呼びの割当情報を取得し、その割当情報に基づいてVIP割当号機が存在するかどうかを判断する(ステップS1-2)。「VIP割当号機」とは、VIP呼びが割当済みのVIP号機のことである。例えば、A号機のエレベータ12aがVIP号機であるとすると、エレベータ12aの上かご13aまたは下かご14aにVIP呼びが割り当てられているか否かを判断することになる。
【0032】
VIP割当号機が存在しなければ(ステップS1-2のNo)、第2の割当制御部32は、VIP号機の上かご/下かご共に割当対象とする(ステップS1-9)。つまり、A号機のエレベータ12aの上かご13aにも下かご14aにもVIP呼びが割り当てられていない場合には、一般の利用者をエレベータ12aに乗せても、特定の利用者と乗り合わせることはないので、エレベータ12aを当該通常呼びの割当対象に含めることができる。
【0033】
ここで、VIP割当号機が存在する場合には(ステップS1-2のYes)、第2の割当制御部32は、VIP割当号機に割り当てられているVIP呼びの情報(出発階と行先階)と、新規に登録された通常呼びの情報(出発階と行先階)とに基づいて、以下のような処理を行う。
【0034】
すなわち、まず、第2の割当制御部32は、VIP呼びの方向性と通常呼びの方向性とを比較する(ステップS1-3)。「方向性」とは、出発階から行先階に向けた運転方向のことである。VIP呼びの方向性は、VIP呼びの出発階と行先階によって決まる。通常呼びの方向性は、通常呼びの出発階と行先階によって決まる。通常呼びの方向性とVIP呼びの方向性と異なる場合に、通常呼びをVIP割当号機に割り当ててしまうと、VIP割当号機が通常呼びに応答することで、VIP呼びに応答するまでの時間が長くなり、VIP呼びを登録したVIP呼びの運転サービスが低下する可能性がある。したがって、通常呼びの方向性とVIP呼びの方向性とが異なる場合には(ステップS1-3のNo)、第2の割当制御部32は、VIP割当号機の上かご/下かご共に割当対象外とする(ステップS1-8)。
【0035】
一方、通常呼びの方向性とVIP呼びの方向性の方向性が同じ場合は(ステップS1-3のYes)、第2の割当制御部32は、VIP呼びの「行先階と出発階」と通常呼びの「行先階と出発階」との位置関係に基づいて、通常呼びをVIP割当号機の上かごまたは下かごに割当可能であるか否かを判断する(ステップS1-4~S1-6)。
【0036】
いま、VIP割当号機の上かごにVIP呼びが割り当てられている場合を想定し、
図5に具体例を示して説明する。
まず、第2の割当制御部32は、通常呼びの出発階とVIP呼びの出発階・行先階との位置関係を判断する(ステップS1-4)。
図5の例では、2階→8階のVIP呼びがVIP割当号機の上かごに割り当てられている。ここで、通常呼びの割当対象はVIP割当号機の下かごになるので、通常呼びの出発階と下かごの停止階とを比較する。下かごの停止階は上かごの停止階の1つ下の階になるので、1階と7階である。
【0037】
ここで、通常呼びの出発階が下かごの停止階の1階でもなく、また、7階でもなかった場合には(ステップS1-4のNo)、通常呼びがVIP呼びの応答に影響を与えるため、第2の割当制御部32は、VIP割当号機の上かご/下かご共に割当対象外とする(ステップS1-8)。「通常呼びがVIP呼びの応答に影響を与える」とは、「VIP呼びの運転サービス(VIP運転)を実施できない」ことを言う。つまり、VIP呼びが割り当てられたエレベータが通常呼びの応答によって途中階に停止してしまい、特定の利用者を一般の利用者よりも優先して運転サービスできないことを言う。
【0038】
続いて、第2の割当制御部32は、通常呼びの行先階とVIP呼びの行先階との位置関係を判断する(ステップS1-5,S1-6)。
図5に示すように、通常呼びの行先階がVIP呼びの行先階の1つ下の階である7階であれば(ステップS1-5のYes)、VIP割当号機の下かごに割当を実施しても、上かごのVIP呼びに影響は与えない。したがって、第2の割当制御部32は、VIP割当号機の上かごを割当対象外、下かごを割当対象とする(ステップS1-7)。
【0039】
また、通常呼びの行先階がVIP呼びの行先階と同じ階である8階、あるいは、VIP呼びの行先階の1つ上の階である9階であれば(ステップS1-6のYes)、VIP割当号機の下かごに通常呼びの割当を実施しても、上かごのVIP呼びに影響は与えない。したがって、第2の割当制御部32は、VIP割当号機の上かごを割当対象外、下かごを割当対象とする(ステップS1-7)。
【0040】
なお、通常呼びの行先階が行先呼びの行先階よりも後に応答する階であれば、9階よりも上の階であっても、下かごを割当対象に含めことができる。ただし、
図5の例では、10階までしかないため、下かごに対しては9階までが運行可能な最上階となる。
【0041】
上記ステップS1-5,S1-6の条件を満たさない場合には、通常呼びがVIP呼びの応答に影響を与えるため、第2の割当制御部32は、VIP割当号機の上かご/下かご共に割当対象外とする(ステップS1-8)。
【0042】
このように、一方の乗りかごにVIP呼びが割り当てられている場合であっても、VIP呼びの運転サービスに影響を与えない場合には、他方の乗りかごに通常呼びを割り当ることで、上かごと下かごの両方を使って効率的な運転を行うことができる。
【0043】
なお、
図4のフローチャートでは、上かごにVIP呼びが割り当てられる場合を想定したが、下かごにVIP呼びが割り当てられる場合でも同様であり、通常呼びが登録された際に、VIP呼びの出発階・行先階と通常呼びの出発階・行先階との位置関係を比較し、通常呼びがVIP呼びの運転サービスに影響を与えないと判断される場合には、上かごを割当対象に含めるように制御すれば良い。
【0044】
(b)VIP呼びの割当処理
図6は本システムのVIP呼びの割当処理を示すフローチャートである。ここでは、通常呼びが割り当てられた号機であって、VIP呼び割当可能な号機に、新規に登録されたVIP呼びを割り当てる場合の処理について説明する。なお、このフローチャートで示される処理は、コンピュータである群管理制御装置30が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0045】
第1の登録装置21の操作によってVIP呼びが登録されると(ステップS2-1のYes)、群管理制御装置30に備えられた第1の割当制御部31に上記VIP呼びの情報(行先階と出発階)が与えられる。
【0046】
まず、第1の割当制御部31は、VIP呼びの行先階と出発階に基づいて、VIP号機(VIP運転用のエレベータ)に当該VIP呼びに割り当てる(ステップS2-1)。この場合、第1の割当制御部31は、VIP号機の上かごと下かごのうち、運行効率的に最適な乗りかご(最も早く出発階に応答可能な乗りかご)にVIP呼びの割り当てを行う。ただし、VIP呼びは通常呼びよりも優先されるため、VIP呼びの割当対象となった乗りかごに既に通常呼びが割り当てられていれば、第1の割当制御部31は、割当変更部33を通じて当該通常呼びを他の号機に割当変更する(ステップS2-3)。これにより、VIP呼びに対する運転サービスを通常呼びよりも優先させることができる。なお、割当変更は、一般の利用者がVIP号機に乗車していない場合を前提として行われる。割当変更が実施された場合に、割当変更後の号機の情報が乗場の表示装置23など通じて通知される。
【0047】
上記ステップS2-1,S-2の処理は、VIP号機の一方の乗りかごにVIP呼びを割り当てるための基本的な処理である。ここで、VIP号機の他方の乗りかごに通常呼びが割り当てられていた場合には、以下のような処理が実行される(ステップS2-4~S2-9)。なお、複数の通常呼びがVIP号機の他方の乗りかごに割り当てられていた場合には、その通常呼びの割当数分だけ、以下の処理が繰り返し実行される。
【0048】
いま、VIP号機の上かごに新規のVIP呼びを割り当てた場合を想定し、
図7に具体例を示して説明する。
まず、第1の割当制御部31は、第2の割当制御部32からVIP号機の下かごに登録されている通常呼びの情報(出発階と行先階)を取得し、その通常呼びの方向性がVIP呼びの方向性と同じか否かを判断する(ステップS2-4)。上述したように、「方向性」とは、出発階から行先階に向けた運転方向のことである。VIP呼びの方向性は、VIP呼びの出発階と行先階によって決まる。通常呼びの方向性は、通常呼びの出発階と行先階によって決まる。
【0049】
VIP呼びの方向性と通常呼びの方向性が異なる場合には(ステップS2-4のNo)、通常呼びを下かごに割り当てたままにしてしまうと、上かごに割り当てたVIP呼びの出発階に応答するまでの時間が長くなってしまう。したがって、第1の割当制御部31は、割当変更部33に割当変更指令を出して、当該通常呼びを他の号機に割当変更する(ステップS2-9)。
【0050】
一方、VIP呼びの方向性と通常呼びの方向性が同じであった場合には(ステップS2-4のYes)、VIP呼びの出発階・行先階と通常呼びの出発階・行先階との位置関係によっては、通常呼びがVIP号機の下かごに割り当てられた状態にあっても、その通常呼びがVIP呼びの応答に影響を与えないケースがある。
【0051】
第1の割当制御部31は、下かごに割当済みの通常呼びの出発階とVIP呼びの出発階・行先階との位置関係を判断する(ステップS2-5)。
図7の例では、2階→8階のVIP呼びがVIP割当号機の上かごに割り当てられている。したがって、VIP呼びの出発階・行先階は上かごの停止階である2階と8階である。
【0052】
ここで、通常呼びは下かごに割り当てられているので、通常呼びの出発階と下かごの停止階とを比較する。下かごの停止階は上かごの停止階の1つ下の階になるので、1階と7階である。通常呼びの出発階が1階でもなく、7階でもなかった場合には(ステップS1-4のNo)、通常呼びがVIP呼びの応答に影響を与える。したがって、第1の割当制御部31は、割当変更部33に割当変更指令を出して、当該通常呼びを他の号機に割当変更する(ステップS2-9)。
【0053】
続いて、第1の割当制御部31は、下かごに割当済みの通常呼びの行先階とVIP呼びの行先階との位置関係を判断する(ステップS2-6,S2-7)。
図7に示すように、通常呼びの行先階がVIP呼びの行先階の1つ下の階である7階であれば(ステップS1-5のYes)、通常呼びがVIP号機の下かごに割り当てたままであっても、上かごのVIP呼びに影響は与えない。したがって、第1の割当制御部31は、通常呼びを割当変更せずに、VIP号機の上かごをVIP呼びの出発階に応答させる(ステップS2-8)。
【0054】
また、通常呼びの行先階がVIP呼びの行先階と同じ階である8階、あるいは、VIP呼びの行先階の1つ上の階である9階である場合であれば(ステップS2-7のYes)、通常呼びがVIP号機の下かごに割り当てたままであっても、上かごのVIP呼びに影響は与えない。したがって、第1の割当制御部31は、通常呼びを割当変更せずに、VIP号機の上かごをVIP呼びの出発階に応答させる(ステップS2-8)。
【0055】
なお、通常呼びの行先階が行先呼びの行先階よりも後に応答する階であれば、9階よりも上の階であっても、通常呼びを割当変更しないで良い。ただし、
図7の例では、10階までしかないため、下かごに対しては9階までが運行可能な最上階となる。
【0056】
上記ステップS2-6,S2-7の条件を満たさない場合には、通常呼びがVIP呼びの応答に影響を与えるため、第1の割当制御部31は、割当変更部33に割当変更指令を出して、当該通常呼びを他の号機に割当変更する(ステップS2-9)。
【0057】
このように、一方の乗りかごに通常呼びが割り当てられている場合に、VIP呼びの運転サービスに影響を与えない場合には、その通常呼びを割当変更せずに応答させることで、上かごと下かごの両方を使って効率的な運転を行うことができる。
【0058】
なお、
図6のフローチャートでは、下かごに通常呼びが割り当てられている場合を想定したが、上かごに通常呼びが割り当てられている場合でも同様であり、VIP呼びの出発階・行先階と通常呼びの出発階・行先階との位置関係を比較し、VIP呼びの運転サービスに影響を与えないと判断される場合には、通常呼びの割当変更を実施しないように制御すれば良い。
【0059】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、VIP呼びの運転サービスを損なわずに、ダブルデッキエレベータの一方の乗りかごに特定の利用者、他方の乗りかごに一般の利用者を乗せて効率的に運転することのできるエレベータ群管理システムを提供することができる。
【0060】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
11a,11b,11c…各号機の制御装置、12a,12b,12c…エレベータ(ダブルデッキエレベータ)、13a,13b,13c…上かご、14a,14b,14c…下かご、21…第1の登録装置、21a…入力部、21b…表示部、22…第2の登録装置、22a…入力部、22b…表示部、23…表示装置、24…乗場、25…乗場ドア、30…群管理制御装置、31…第1の割当制御部、31a…記憶部、32…第2の割当制御部、32a…記憶部、34…割当指令出力部。
【要約】
【課題】VIP呼びの運転サービスを損なわずに、ダブルデッキエレベータの一方の乗りかごに特定の利用者、他方の乗りかごに一般の利用者を乗せて効率的に運転する。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータ群管理システムは、第1の登録手段と、第2の登録手段と、第1の割当制御手段と、第2の割当制御手段とを具備する。上記第1の割当制御手段は、上記第1の登録手段によって登録された第1の行先呼びをエレベータの一方の乗りかごに割り当てる。上記第2の割当制御手段は、上記第2の登録手段によって登録された第2の行先呼びの行先階と出発階と、上記第1の行先呼びの行先階と出発階とを比較し、上記第2の行先呼びが上記第1の行先呼びの応答に影響を与えない場合に、上記エレベータの他方の乗りかごを上記第2の行先呼びの割当対象とする。
【選択図】
図1