(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】負圧湿式予作動スプリンクラー設備
(51)【国際特許分類】
A62C 35/60 20060101AFI20221108BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20221108BHJP
A62C 37/00 20060101ALI20221108BHJP
F16K 17/30 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A62C35/60
A62C35/68
A62C37/00
F16K17/30 A
(21)【出願番号】P 2021210391
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2017220211の分割
【原出願日】2017-11-15
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 徹
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特許第5601988(JP,B2)
【文献】特開2014-188298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
F16K 17/18-17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火水槽から一次側配管の減圧センサが減圧を検出すると起動する送水ポンプを介して上方に立ち上がって配管された一次側配管と、各階において前記一次側配管に接続され、スプリンクラーヘッドまで配管された二次側配管と、
前記一次側配管と前記二次側配管との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置と、
前記二次側配管に一端側を接続すると共に、他端側を、下端が前記消火水槽まで垂下した排水管に接続した吸引管と、
前記吸引管の途中部に設置された、前記二次側配管内の負圧の状態の正常時には少量の、異常時には多量の流通量とするオリフィス自動弁と、
前記吸引管の途中部における前記オリフィス自動弁より前記二次側配管側の位置に設置された、前記二次側配管内の圧力を検出する真空スイッチと、
更に、最下層の吸引管より下側に、内部に水位検出器を設けた気水分離タンクを配置して該気水分離タンクの下側を弁を設けた導管を介して前記排水管に連通すると共に、該気水分離タンクの上部を吸気管を介して空気を吸引する真空ポンプに連通し、前記排水管の末端に逆止弁を設けて、消火水槽の水が排水管側に流れ込まないようにした負圧湿式予作動スプリンクラー設備において、
前記気水分離タンクの上部と前記真空ポンプとを連通する前記吸気管の途中部にリミットスイッチ付オリフィス弁を設け、更に、前記気水分離タンクの上部に、吸気用自動弁を備えた、大気を取り入れる吸気管を設ける一方、気水分離タンクの下部に、気水分離タンク内の水を排出する水抜き管を設け、
更に、前記吸気管の途中部に設けたリミットスイッチ付オリフィス弁の作動によって水の流通を遮断すると共にリミットスイッチが作動して、気水分離タンクの上部に設けた吸気管の吸気用自動弁を開放すると共に、気水分離タンクの下部において排水管に連通させる導管と水抜き管とを分岐状に接続して該分岐部分に設けた三方自動弁を、導管の気水分離タンクへの分岐管への接続ポートと、水抜き管への接続ポートとが連通するように作動し、気水分離タンク内の水を自然流下させて排出するようになしたことを特徴とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備。
【請求項2】
気水分離タンク内の水位が充分に低下したときには、吸気用自動弁を閉止すると共に、三方自動弁を導管への接続ポートと、導管の分岐管への接続ポートとが連通するように作動させ、真空ポンプによる吸引を再開するようになした請求項1記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とすると共に、最下層でも上層階と同様の監視圧力を得ることができるようになした負圧湿式予作動スプリンクラー設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における消火設備として、スプリンクラーヘッドの破損等が生じた場合に漏水を防止し、且つ火災発生時に速やかに放水する機能を有する、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備がある。
【0003】
図7は斯かる負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。該図において100は負圧湿式予作動スプリンクラー設備である。
【0004】
101は消火水槽102から送水ポンプ103を介して立ち上がって配管された一次側配管である。104は各階において前記一次側配管101に接続され、スプリンクラーヘッド105まで配管された二次側配管である。
【0005】
106は前記一次側配管101と二次側配管104との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置である。107は各階の天井部に設置された、火災を感知して火災信号を送出する火災感知器である。
【0006】
108は前記二次側配管104に一端側108Aを接続すると共に、他端側108Bを、下端が前記消火水槽102まで垂下した排水管109に接続した吸引管である。
【0007】
110は前記排水管109の最上階における上端部に下部を接続した気水分離器である。111は真空ポンプ、112は一端側を前記気水分離器110の上部に接続すると共に他端側を前記真空ポンプ111に接続した吸気管である。
【0008】
113は前記吸引管108の途中部に設置された、前記二次側配管104内の負圧の状態の正常時には少量の、異常時には多量の流通量とするオリフィス自動弁である。また、114は前記吸引管108の途中部における前記オリフィス自動弁113より二次側配管104側の位置に設置された二次側配管104内の圧力を検出する真空スイッチである。
【0009】
115は火災発生時に前記火災感知器107からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤である。
【0010】
116は各階に配置され、前記信号受信盤115からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置106を開状態として前記一次側配管101と二次側配管104とを連通状態とする制御盤である。また、送水ポンプ103は、例えば、一次側配管101の図示しない減圧センサが減圧を検出すると起動される。
【0011】
そして、火災発生時以外のときには一次側配管101と二次側配管104のいずれにも水が充填されており、且つ二次側配管104内を、吸引管108及び吸気管112を介して真空ポンプ111で負圧状態とするものである。
【0012】
また、火災発生時には、火災発生部付近の火災感知器107が火災を感知して火災信号を信号受信盤115に送信し、そして該信号受信盤115から該信号を制御盤116に送信する。該信号を受信した制御盤116は予作動式流水検知装置106を開状態とする。火災による熱で開放されたスプリンクラーヘッドより二次側配管104内圧力が減じ、送水ポンプが起動され、これにより、二次側配管は加圧状態となり、前記開放されたスプリンクラーヘッドより放水が開始される。尚、斯かる際には、オリフィス自動弁113は正常時の状態であって、真空ポンプ111の作動は停止される。
【0013】
上記の通り、火災発生時以外のときにおける二次側配管104の温度変化による体積膨張や流量制御管等からの微少な空気流入等による緩慢な圧力上昇(正常時)については、前記オリフィス自動弁113のオリフィス(小孔)を経由して少量の流通量での吸引を行い、そしてこれにより通電して弁体を開くことなく二次側配管104内の圧力を適正に保持することができる。
【0014】
また一方、スプリンクラーヘッド等が破損して二次側配管104内の圧力が急速に上昇(異常時)したときには、吸引管108に設置された真空スイッチ114によってこれが検知され、オリフィス自動弁113は通電されてその弁体が開き、開放された本来の流路を経て多量の流通量での吸引が行われる。そして、これにより漏水は防止されるものである。
【0015】
気水分離器110で空気と分離された水は、排水管109を経て消火水槽102へ排水されるが、排水管109内は負圧状態であるため、図に示すように、真空ポンプ111の吸引力に応じた高さまで水が引き上げられており、その高さを超えた水が排水管109に溜まることになる。このとき、排水管109の各部には高さに応じた水頭圧が生じることになる。
【0016】
例えば、真空ポンプ111の吸引圧力が-0.08[MPa]であった場合、水は消火水槽102の水面から高さ約8[m]まで引き上げられる。なお、WLは水位を示す。このような状態で排水管109の水位WLより5[m]低い位置に真空スイッチ114を設置した場合、真空スイッチ114の付近には5[m]の水頭圧が生じることになる。よって、配管内における水位WLよりも上層階に設置した真空スイッチ114の監視圧力は-0.08[MPa]であったとしても、排水管109内の水の水位よりも下層階に設置した真空スイッチ114にあっては、その監視圧力が-0.03[MPa]にしかならないことになる。
【0017】
また、一次側配管101と二次側配管104とからなる建築物への給水配管にあっては、建築物の梁や空調設備のダクト等があるため、特に二次側配管104は、これらを迂回するように下側にU字状に折曲しなければならず、このような場合にあっては、折曲部に空気が溜まり、それにより水頭圧が生じるため、二次側配管104の末端に位置するスプリンクラーヘッド105付近の監視圧力はさらに上昇する。
【0018】
これによりスプリンクラーヘッド105の破損や誤作動あるいは配管等の破損があっても、スプリンクラーヘッド105の誤放水を防止できない恐れがあった。このような理由から、排水管109内の水の水位よりも下層階に真空スイッチ114を設置する場合にあっては、負圧湿式予作動スプリンクラー設備を配置しても該当階では効果が得られないという不都合があった。
【0019】
そこで、このような不都合を解消し、最下層でも上層階と同様の監視圧力を得ることができるようにするため、本発明者は先に
図8及び
図9に示す負圧湿式予作動スプリンクラー設備を案出した(特許文献1)。
【0020】
図8は、本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における第1の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′を示し、基本的な構成は前記従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備100と同様である。よって、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
而して、該第1の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備100′における従来の設備との相違点は、最下層階の吸引管108より下側位置の排水管109に水位検出器117を設けると共に、該水位検出器117より下方に排水管109内の水を排出する排水ポンプ118を設け、排水管109内の水位が所定の水位以上に達したと水位検出器117により検出されたときに排水ポンプ118を運転し、排水管109内の水位が所定位置まで低下したと水位検出器117により検出されたときに排水ポンプ118を停止する手段を設けると共に排水管109の末端109bに逆止弁119を設けた点にある。尚、118aは前記排水ポンプ118の吐出管である。
【0022】
斯かる構成により、真空ポンプ111で吸引し、二次側配管104内を負圧化したときに、余分な水は排水管109内に流れ込み排水管109内の水位が上昇するが、水位検出器117による検出によって所定の水位以上に達したときには排水ポンプ118によって排水することができると共に、排水管109の末端109bには逆止弁119が設けられているから、真空ポンプ111が運転されても消火水槽102の水を吸引することがない。
【0023】
このようにして、排水管109内において最下層の吸引管108(符号P)より下側に水が溜まらないようにしたから、最下層に設置した負圧湿式予作動スプリンクラー設備の監視圧力を上層階と同等とすることができ、負圧湿式予作動スプリンクラー設備の特徴であるスプリンクラーヘッドの誤作動時や配管の破損時の誤り放水防止効果を階層によらず安定して得ることができるものである。
【0024】
また、
図9は、本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における第2の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備100″を示し、
図8に示した第1の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
該第2の実施形態では、排水管109の最上部に配置していた気水分離器110は廃止し、排水管109の最上部は、最上階の吸引管108に直結するものである。
【0026】
而して、この第2の実施形態では、最下層の吸引管108(符号P)より下側に、気水分離タンク120が配置されるようにし、該気水分離タンク120の下側を弁121を設けた導管122(分岐管122)を介して排水管109に連通し、該気水分離タンク120の内部には水位検出器(図示せず。)を設け、かつ空気を吸引する真空ポンプ123を設けて、気水分離タンク120の上部を吸気管124を介して真空ポンプ123に連通し、気水分離タンク120の下部に水を排出する排水ポンプ125を設け、この排水ポンプ125の吐出管125aを消火水槽102の水の中にまで延長し、排水管109の末端109bに逆止弁126を設けて、消火水槽102の水が排水管109側に流れ込まないようにし、気水分離タンク120内の水位検出器からの信号に応じて排水ポンプ125を運転・停止するようにしたものである。
【0027】
これらにより、負圧の確保と、水位を一定に確保できる負圧状態及び水位確保手段が構成されるものである。なお、排水ポンプ125は、気水分離タンク120、排水管109の方向に水が流入しない構造のポンプである。
【0028】
すなわち、気水分離タンク120に水が流入し、気水分離タンク120内の水位検出器が所定の上位置に水が達したことを検出したときに排水ポンプ125を運転し、気水分離タンク120内の水が所定の下位置に低下したと水位検出器が検出したとき排水ポンプ125の運転を停止するようにしたものである。
【0029】
これらにより、最下層階であっても、負圧の確保と、水位を一定に確保できるので、最下層に設置した負圧湿式予作動スプリンクラー設備の監視圧力を上層階と同等とすることができ、負圧湿式予作動スプリンクラー設備の特徴であるスプリンクラーヘッドの誤作動時や配管の破損時の誤り放水防止効果を階層によらず安定して得ることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明者が先に案出した上記負圧湿式予作動スプリンクラー設備によれば、従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備の問題点を解消し、最下層でも上層階と同様の監視圧力を得ることができるようになった。そして、特に第2の実施形態の場合においては、第1の実施形態と同様の効果を奏することに加えて、気水分離器と吸気管を廃止したことにより、負圧の縦配管が2本から1本に減少するため工事コストを削減できる利点があり、よって斯かる第2の実施形態がより好ましい形態である。
【0032】
しかし、該第2の実施形態の場合には、排水ポンプ125や水位検出器が故障した場合において、気水分離タンク120内の水位が上昇しても排水ポンプ125が運転しないため水位が上昇し続け、真空ポンプ123に水が流入してしまうことになる。そして、その結果として真空ポンプ123も故障し、被害が拡大する問題があった。
【0033】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における第2の実施形態において、排水ポンプや水位検出器が故障した場合においても、水が真空ポンプに流入することを阻止することができるようになした構成の負圧湿式予作動スプリンクラー設備を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
而して、本発明の要旨とするところは、
消火水槽から一次側配管の減圧センサが減圧を検出すると起動する送水ポンプを介して上方に立ち上がって配管された一次側配管と、各階において前記一次側配管に接続され、スプリンクラーヘッドまで配管された二次側配管と、
前記一次側配管と前記二次側配管との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置と、
前記二次側配管に一端側を接続すると共に、他端側を、下端が前記消火水槽まで垂下した排水管に接続した吸引管と、
前記吸引管の途中部に設置された、前記二次側配管内の負圧の状態の正常時には少量の、異常時には多量の流通量とするオリフィス自動弁と、
前記吸引管の途中部における前記オリフィス自動弁より前記二次側配管側の位置に設置された、前記二次側配管内の圧力を検出する真空スイッチと、
更に、最下層の吸引管より下側に、内部に水位検出器を設けた気水分離タンクを配置して該気水分離タンクの下側を弁を設けた導管を介して前記排水管に連通すると共に、該気水分離タンクの上部を吸気管を介して空気を吸引する真空ポンプに連通し、前記排水管の末端に逆止弁を設けて、消火水槽の水が排水管側に流れ込まないようにした負圧湿式予作動スプリンクラー設備において、
前記気水分離タンクの上部と前記真空ポンプとを連通する前記吸気管の途中部にリミットスイッチ付オリフィス弁を設け、更に、前記気水分離タンクの上部に、吸気用自動弁を備えた、大気を取り入れる吸気管を設ける一方、気水分離タンクの下部に、気水分離タンク内の水を排出する水抜き管を設け、
更に、前記吸気管の途中部に設けたリミットスイッチ付オリフィス弁の作動によって水の流通を遮断すると共にリミットスイッチが作動して、気水分離タンクの上部に設けた吸気管の吸気用自動弁を開放すると共に、気水分離タンクの下部において排水管に連通させる導管と水抜き管とを分岐状に接続して該分岐部分に設けた三方自動弁を、導管の気水分離タンクへの分岐管への接続ポートと、水抜き管への接続ポートとが連通するように作動し、気水分離タンク内の水を自然流下させて排出するようになしたことを特徴とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備
にある。
【0035】
また、上記構成において、気水分離タンク内の水位が充分に低下したときには、吸気用自動弁を閉止すると共に、三方自動弁を導管への接続ポートと、導管の分岐管への接続ポートとが連通するように作動させ、真空ポンプによる吸引を再開するようになしてもよい。
【0036】
また、前記リミットスイッチ付オリフィス弁を、気水分離タンクから吸気管に流入する空気が通過する本体部と、該本体部内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部と、該ピストン部を後退移動方向に付勢するコイルバネとによって構成され、
本体部は、シリンダ部と、該シリンダ部の一端側に装着されるカバー部からなり、該シリンダ部は、該シリンダ部の一端側が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分の中心部に、流出口と、該流出口の内側に連成された該流出口より小径の開口を設けてなり、
カバー部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、閉塞部分の中心部に、前記流出口と同径の流入口を設けてなり、
ピストン部は、一端部が閉塞された円筒状をなし、他端部に外径が前記シリンダ部の内径と等しいフランジ部を形成し、円筒状部分に前記シリンダ部における閉塞部分の開口より小径の開口を設けると共に、流入する水の圧力によって前記コイルバネの付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその閉塞部分が前記シリンダ部の内側面に密接するようになされ、
さらに、前記ピストン部におけるフランジ部の外周部に、前部が低い傾斜面を形成する一方、シリンダ部における前記ピストン部のフランジ部の傾斜面に対応する位置に孔を貫設し、該孔内に、下端部が前記ピストン部のフランジ部の傾斜面に摺接し、コイルバネをもって内方に移動するように付勢された円柱状のプッシュロッドを出没自在に挿入してなると共に、前記シリンダ部における前記プッシュロッドの出没位置にリミットスイッチを設けてなるリミットスイッチ付オリフィス弁
としてもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明は上記の如き構成であり、気水分離タンクの上部と真空ポンプとを連通する吸気管の途中部にリミットスイッチ付オリフィス弁を設け、更に、気水分離タンクの上部に吸気用自動弁を備えた、大気を取り入れる吸気管を設ける一方、気水分離タンクの下部に、気水分離タンク内の水を排出する水抜き管を設け、更に、吸気管の途中部に設けたリミットスイッチ付オリフィス弁の作動によって水の流通を遮断すると共にリミットスイッチが作動して、気水分離タンクの上部に設けた吸気管の吸気用自動弁を開放すると共に、気水分離タンクの下部において排水管に連通させる導管と水抜き管とを分岐状に接続して該分岐部分に設けた三方自動弁を、導管の気水分離タンクへの分岐管への接続ポートと、水抜き管への接続ポートとが連通するように作動し、気水分離タンク内の水を自然流下させて排出するものである。また、気水分離タンク内の水位が充分に低下したときには、吸気用自動弁を閉止すると共に、三方自動弁を導管への接続ポートと、導管の分岐管への接続ポートとが連通するように作動させ、真空ポンプによる吸引を再開するようになしたものであるから、排水ポンプや水位検出器が故障したときにおいて、気水分離タンク内の水位が上昇し続けたときにおいて、水が真空ポンプに流入することを確実に阻止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。
【
図2】同三方自動弁の作用説明図であり、Aは気水分離タンク内の水を排出する場合、Bは吸引を再開する場合を示すものである。
【
図3】同リミットスイッチ付オリフィス弁の縦断正面図であり、リミットスイッチの作動前の状態を示すものである。
【
図5】同リミットスイッチ付オリフィス弁の縦断面図であり、リミットスイッチの作動時の状態を示すものである。
【
図7】従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。
【
図8】本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備の第1の実施形態の概略構成図である。
【
図9】本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備の第2の実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0040】
先ず、
図1に示した本発明の実施形態について説明する。
【0041】
基本的な構成においては、
図9に示した本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備の第2の実施形態と同様である。したがって、同一の部材には同一の符号を付して説明する。
【0042】
図中、1は本実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備である。また、該負圧湿式予作動スプリンクラー設備1は、消火水槽102から一次側配管の減圧センサが減圧を検出すると起動する送水ポンプ103を介して上方に立ち上がって配管された一次側配管101と、各階において前記一次側配管101に接続され、スプリンクラーヘッド105まで配管された二次側配管104と、前記一次側配管101と前記二次側配管104との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置106と、各階の天井部に設置され、火災を感知して火災信号を送出する火災感知器107と、前記二次側配管104に一端側を接続すると共に、他端側を、下端が前記消火水槽102まで垂下した排水管109に接続した吸引管108と、前記吸引管108の途中部に設置された、前記二次側配管104内の負圧の状態の正常時には少量の、異常時には多量の流通量とするオリフィス自動弁113と、前記吸引管108の途中部における前記オリフィス自動弁113より前記二次側配管104側の位置に設置された、前記二次側配管104内の圧力を検出する真空スイッチ114と、火災発生時に前記火災感知器107からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤115と、前記信号受信盤115からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置106を開状態として前記一次側配管101と前記二次側配管104とを連通状態とする制御盤116とからなり、更に、最下層の吸引管108(符号P)より下側に、内部に水位検出器(図示せず。)を設けた気水分離タンク120を配置して、該気水分離タンク120の下側を弁121を設けた導管122(分岐管122)を介して前記排水管109に連通すると共に、該気水分離タンク120の上部を吸引管124を介して空気を吸引する真空ポンプ123に連通し、更に前記気水分離タンク120の下部に水を排出する排水ポンプ125を設け、この排水ポンプ125の吐出管125aを消火水槽102の水の中にまで延長すると共に、前記排水管109の末端109bに逆止弁126を設けて、消火水槽102の水が排水管109側に流れ込まないようにし、前記気水分離タンク120内の水位検出器からの信号に応じて前記排水ポンプ125を運転・停止するようにした負圧湿式予作動スプリンクラー設備において、前記気水分離タンク120の上部と前記真空ポンプ123とを連通する前記吸気管124の途中部に、後記構成のリミットスイッチ付オリフィス弁2を設け、更に、前記気水分離タンク120の上部に、吸気用自動弁17を備えた、大気を取り入れる吸気管18を設ける一方、前記気水分離タンク120の下部に、気水分離タンク120内の水を排出する水抜き管20を設け、更に、前記吸気管124の途中部に設けたリミットスイッチ付オリフィス弁2の作動によって水の流通を遮断すると共にリミットスイッチ16が作動して、気水分離タンク120の上部に設けた吸気管18の吸気用自動弁17を開放すると共に、気水分離タンク120の下部において排水管109に連通させる導管122と水抜き管20とを分岐状に接続して該分岐部分に設けた三方自動弁22を、導管122の気水分離タンク120への分岐管122Aへの接続ポート22bと、水抜き管20への接続ポート22cとが連通するように作動し、気水分離タンク120内の水を自然流下させて排出するものである。そしてまた、気水分離タンク120内の水位が充分に低下したときには、吸気用自動弁17を閉止すると共に、三方自動弁22を導管122への接続ポート22aと、導管の分岐管122Aへの接続ポート22bとが連通するように作動させ、真空ポンプ123による吸引を再開するようになしたものである。
【0043】
また、前記リミットスイッチ付オリフィス弁2は、
図3乃至
図6に示す如く、気水分離タンク120から吸気管124に流入する空気が通過する本体部3と、該本体部3内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部と、該ピストン部を後退移動方向に付勢するコイルバネとによって構成される。
【0044】
また、前記本体部3は、シリンダ部3Aと、該シリンダ部3Aの一端側に装着されるカバー部3Bとからなる。
【0045】
前記シリンダ部3Aは、その一端部(
図3における右端部)が閉塞された円筒状に形成されており、閉塞部分3A′の中心部には、流出口4と、該流出口4の内側に連成された該流出口4より小径の円形の開口5を設けている。また、該流出口4は、吸気管124の下流側に接続されている。
【0046】
また、前記シリンダ部3Aの他端側の外周面には雄ネジ6が刻設され、これに対応して内周面に雌ネジ7が刻設されたカバー部3Bを螺合装着するようになされている。
【0047】
また、前記カバー部3Bは、一端部(
図3における左端部)が閉塞された円筒状に形成されており、閉塞部分3B′の中心部には、前記流出口4と同径の流入口8が形成されている。
【0048】
また、前記シリンダ部3Aの他端側の端面と前記カバー部3Bの閉塞部分3B′との間にはOリング9が介装され、シリンダ部3Aとカバー部3Bとの間の水密性が保たれている。
【0049】
また、前記ピストン部10は、前記シリンダ部3Aの内部に水の圧力により前進移動可能に設けられている。また、該ピストン部10は円筒状であって、一端部(
図3における右端部)が閉塞10′されており、他端部(
図3における左端部)にはフランジ部11が形成されている。
【0050】
該フランジ部11は、その外径がシリンダ部3Aの内径と略等しく設定され、該フランジ部11の外周面がシリンダ部3Aの内周面に沿って移動することで、ピストン部10の中心線方向に沿った進退移動をガイドしている。
【0051】
また、前記ピストン部10の円筒状部分には、前記シリンダ部3Aの開口5より小さい開口(オリフィス)12が形成されている。
【0052】
また、ピストン部10は、シリンダ部3A内において、互いに中心線が同一軸上になるように配設され、且つピストン部10はその中心線方向に沿って進退移動自在とされている。そして、ピストン部10は最前進位置まで移動(
図5)することにより、その閉塞部分10′がシリンダ部3Aの内側面に密接することが可能となっている。
【0053】
このとき、ピストン部10の円筒状部分に形成された開口12は、ピストン部10の閉塞部分10′とシリンダ部3Aの内側面の密接により流路が閉塞された状態となる。
【0054】
つまり、ピストン部10は、最前進位置に位置していないとき(
図3)には、該ピストン部10内に流入した空気を開口12に通過させることができ、最前進位置に位置するとき(
図5)には、該ピストン部10内に流入した水を遮断させることができる。
【0055】
これは、空気は水より密度が低いため、ピストン部10の閉塞部分10′にぶつかった際、該ピストン10に設けた開口12を通りやすく、ピストン部10を押すことなく通過する一方、水は空気より密度が高いため、ピストン部10の閉塞部分10′にぶつかった際に、ピストン部10に設けた開口12を通りにくい。そのため多量の水を流入した場合、ピストン部10を押し、流路を遮断することができることによるものである。
【0056】
また、前記コイルバネ13は、前記シリンダ部3A内において、ピストン部10を挿入させた状態でそのフランジ部11に当接し、該ピストン部10を流入口8側に押圧付勢している。したがって、流入口8から水が流入し、その圧力が該コイルバネ13の付勢力を超えている状態でピストン部10は前進移動が行われることになる。
【0057】
さらにまた、前記ピストン部10におけるフランジ部11の外周部に、前部が低い傾斜面11Aを形成する一方、シリンダ部3Aにおける前記ピストン部10のフランジ部11の傾斜面11Aに対応する位置に孔3A″を貫設し、該孔3A″内に、下端部が前記ピストン部10のフランジ部11の傾斜面11Aに摺接し、コイルバネ14をもって内方に移動するよう付勢された円柱状のプッシュロッド15を出没自在に挿入してなると共に、前記シリンダ部3Aにおける前記プッシュロッド15の出没位置にリミットスイッチ16を設けてなるものである。
尚、プッシュロッド15とシリンダ部3Aの孔3A″との間にはOリング16′が介装され、プッシュロッド15とシリンダ部3Aとの間の水密性が保たれている。また、シリンダ部3Aの孔3A″の開口端には、プッシュロッド15を摺動自在に嵌合した環状バネ受け17が取着されている。
【0058】
而して、
図3に示す如くピストン部10が後退位置にあるときにおいてはプッシュロッド15の上端部はシリンダ部3Aの孔3A″内に没入しており、また、
図5に示す如く、ピストン部10が最前進位置に移動したときには、プッシュロッド15がピストン部10のフランジ部11の傾斜面11Aによって突き上げられ、その上端部がシリンダ部3Aの孔3A″から突出するものである。そして、この突出したプッシュロッド15の上端部の押し出しによってリミットスイッチ16がONとなるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 負圧湿式予作動スプリンクラー設備
2 リミットスイッチ付オリフィス弁
3 本体部
3A シリンダ部
3A′閉塞部分
3B カバー部
3B′閉塞部分
4 流出口
5 開口
8 流入口
10 ピストン部
10′ 閉塞部分
11 フランジ
11A 傾斜面
12 開口(オリフィス)
13 コイルバネ
14 コイルバネ
15 プッシュロッド
16 リミットスイッチ
17 吸気用自動弁
18 吸気管
20 水抜き管
21 逆止弁
22 三方自動弁
100′ 負圧湿式予作動スプリンクラー設備
100″ 負圧湿式予作動スプリンクラー設備
101 一次側配管
102 消火水槽
103 送水ポンプ
104 二次側配管
105 スプリンクラーヘッド
106 予作動流水検知装置
107 火災感知器
108 吸引管
109 排水管
113 オリフィス自動弁
114 真空スイッチ
115 信号受信盤
116 制御盤
120 気水分離タンク
121 弁
122 導管
123 真空ポンプ
124 吸気管
125 排水ポンプ