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特許7171888心筋酸素消費量を最小化するように心臓ポンプを制御するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】心筋酸素消費量を最小化するように心臓ポンプを制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/515 20210101AFI20221108BHJP
   A61M 60/174 20210101ALI20221108BHJP
   A61M 60/216 20210101ALI20221108BHJP
   A61M 60/411 20210101ALI20221108BHJP
【FI】
A61M60/515
A61M60/174
A61M60/216
A61M60/411
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021505319
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019044032
(87)【国際公開番号】W WO2020028295
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】16/050,542
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】砂川 賢二
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-519034(JP,A)
【文献】特表2019-535357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0038567(US,A1)
【文献】国際公開第2017/149083(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/515
A61M 60/174
A61M 60/216
A61M 60/411
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓ポンプを含む、心臓支援のためのシステムであって、
該心臓ポンプは、
患者の心臓内に配置されるように構成された、第1の部分と;
該患者の左室内の左室収縮期圧(LVSP)を計測または計算するために使用される出力を生成するように構成された、該心臓ポンプの該第1の部分内に配置された、第1のセンサと;
心臓ポンプに結合され、該第1のセンサの該出力に基づいて該LVSPを計測または計算し、計測または計算されたLVSPに基づいて該左室機械的減負荷するべく該心臓ポンプの動作を制御するように構成された制御装置と
を含み、
該心臓ポンプは、ポンプ速度および流量を有し、
該制御装置は、左室内のLVSPが目標基準圧に維持されるよう該心臓ポンプの該ポンプ速度および該流量の1つまたは複数を制御するように構成されており、
該制御装置は、該目標基準圧を、正常な拍出における収縮末期圧の比率に設定するように構成されており、
該収縮末期圧は、該第1のセンサによって計測され、
該比率は約0.2~約0.4である、
心臓支援のためのシステム。
【請求項2】
心臓ポンプを含む、心臓支援のためのシステムであって、
該心臓ポンプは、
患者の心臓内に配置されるように構成された、第1の部分と;
該患者の左室内の左室収縮期圧(LVSP)を計測または計算するために使用される出力を生成するように構成された、該心臓ポンプの該第1の部分内に配置された、第1のセンサと;
該心臓ポンプに結合され、該第1のセンサの該出力に基づいて該LVSPを計測または計算し、計測または計算されたLVSPに基づいて該左室を機械的に減負荷するべく該心臓ポンプの動作を制御するように構成された制御装置と
を含み、
該心臓ポンプは、ポンプ速度および流量を有し、
該制御装置は、左室内のLVSPが目標基準圧に維持されるよう該心臓ポンプの該ポンプ速度および該流量の1つまたは複数を制御するように構成されており、
該システムは、平均大動脈圧を計測または計算するために使用される出力を生成するように構成された、該心臓ポンプの第2の部分内に配置された、第2のセンサをさらに含み、
該制御装置は、該目標基準圧を、該平均大動脈圧の比率に設定するように構成されており、
該比率は約0.2~約0.4である、
心臓支援のためのシステム。
【請求項3】
心臓ポンプを含む、心臓支援のためのシステムであって、
該心臓ポンプは、
患者の心臓内に配置されるように構成された、第1の部分と;
該患者の左室内の左室収縮期圧(LVSP)を計測または計算するために使用される出力を生成するように構成された、該心臓ポンプの該第1の部分内に配置された、第1のセンサと;
該心臓ポンプに結合され、該第1のセンサの該出力に基づいて該LVSPを計測または計算し、計測または計算されたLVSPに基づいて該左室を機械的に減負荷するべく該心臓ポンプの動作を制御するように構成された制御装置と
を含み、
該心臓ポンプは、ポンプ速度および流量を有し、
該制御装置は、左室内のLVSPが目標基準圧に維持されるよう該心臓ポンプの該ポンプ速度および該流量の1つまたは複数を制御するように構成されており、
該制御装置は、該目標基準圧を、該左室の圧・容積面積(PVA)を減らすよう設定するように構成されており、
該制御装置は、該計測または計算されたLVSPと左室容積の1つまたは複数の計測値とに基づいてPVAを推定する、
心臓支援のためのシステム。
【請求項4】
制御装置が、目標基準圧、左室のPVAを約90%~約97%減らすよう設定するように構成されている、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
制御装置が、目標基準圧、左室の心筋酸素消費量(MVO2)を減らすよう設定するように構成されており、該制御装置が、MVO 2 とPVAとの間の直線関係に基づいて該MVO 2 を推定する、請求項3記載のシステム。
【請求項6】
制御装置が、目標基準圧、左室のMVO2を約45%~約48.5%減らすよう設定するように構成されている、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
心臓ポンプを含む、心臓支援のためのシステムであって、
該心臓ポンプは、
患者の心臓内に配置されるように構成された、第1の部分と;
該患者の左室内の左室収縮期圧(LVSP)を計測または計算するために使用される出力を生成するように構成された、該心臓ポンプの該第1の部分内に配置された、第1のセンサと;
該心臓ポンプに結合され、該第1のセンサの該出力に基づいて該LVSPを計測または計算し、計測または計算されたLVSPに基づいて該左室を機械的に減負荷するべく該心臓ポンプの動作を制御するように構成された制御装置と
を含み、
該心臓ポンプは、ポンプ速度および流量を有し、
該制御装置は、左室内のLVSPが目標基準圧に維持されるよう該心臓ポンプの該ポンプ速度および該流量の1つまたは複数を制御するように構成されており、
該制御装置は、ポンプ速度の変化に応答するLVSPの変化をモデル化するプラント伝達関数に基づいて該LVSPを該目標基準圧に維持するよう該心臓ポンプの該ポンプ速度および該流量の1つまたは複数を制御するように構成されており、
該システムは、該プラント伝達関数を1つまたは複数の命令またはコードとして記憶するよう構成された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体または非一時的なプロセッサ読み取り可能な記憶媒体をさらに含み、
該プラント伝達関数は二次遅れ系である、
心臓支援のためのシステム。
【請求項8】
プラント伝達関数が、
(式中、Kはゲインであり、ζは減衰係数であり、fNは固有周波数であり、Lはタイムラグである)
と定義される、タイムラグを持つ二次遅れ系である、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
ゲインKが約0.013mmHg/rpmに等しく、減衰係数ζが約1.9に等しく、固有周波数fNが約0.41Hzに等しく、タイムラグLが約0.03秒に等しい、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
制御装置が、臨床的に決定された応答時間未満で、かつ目標基準圧の10%未満のオーバシュートでLVSPが目標基準圧に達するように心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御するように構成されている、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
制御装置が、プラント伝達関数の開ループゲインが16倍以下だけ変化するときLVSPを目標基準圧に維持するように心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御するように構成されている、請求項9記載のシステム。
【請求項12】
制御装置が、
約40に等しい比例ゲイン、約20に等しい積分ゲイン、および約0に等しい微分ゲインで構成された比例・積分制御装置
を含む、請求項9記載のシステム。
【請求項13】
制御装置が、
プラント伝達関数を更新し、該プラント伝達関数の変化に応答して心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御するように該制御装置を再構成するように構成された適応制御機構
を含む、請求項9記載のシステム。
【請求項14】
心臓ポンプを含む、心臓支援のためのシステムであって、
該心臓ポンプは、
患者の心臓内に配置されるように構成された、第1の部分と;
該患者の左室内の左室収縮期圧(LVSP)を計測または計算するために使用される出力を生成するように構成された、該心臓ポンプの該第1の部分内に配置された、第1のセンサと;
該心臓ポンプに結合され、該第1のセンサの該出力に基づいて該LVSPを計測または計算し、計測または計算されたLVSPに基づいて該左室を機械的に減負荷するべく該心臓ポンプの動作を制御するように構成された制御装置と
を含み、
該心臓ポンプは、ポンプ速度および流量を有し、
該制御装置は、左室内のLVSPが目標基準圧に維持されるよう該心臓ポンプの該ポンプ速度および該流量の1つまたは複数を制御するように構成されており、
該システムは、プラント伝達関数を記憶するよう構成された記憶媒体をさらに含み、
該制御装置は、ポンプ速度の変化に応答するLVSPの変化をモデル化する該プラント伝達関数に基づいて該LVSPを目標基準圧に維持するよう該心臓ポンプを制御するように構成されており、
該プラント伝達関数は二次遅れ系である、
心臓支援のためのシステム。
【請求項15】
遅れが、指数関数と二次関数との間の比に基づくものである、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
二次関数が、該二次関数の一次成分の係数である減衰係数ζを含む、請求項15記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月31日に出願された「Systems and Methods for Controlling a Heart Pump to Minimize Myocardial Oxygen Consumption」と題する米国特許出願第16/050,542号の優先権および恩典を主張する。上記出願の内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本開示は、心臓ポンプを制御するためのシステムおよび急性心筋梗塞(AMI)患者を治療するための関連する方法に関し、具体的には、AMI患者の治療中、左室(LV)の機械的減負荷を最大化し、心筋酸素消費量(MVO2)および結果的に梗塞サイズを最小化して、長期的心不全の発症を予防するように心臓ポンプの動作を制御するための閉フィードバック制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
一般的に心臓発作として知られるAMIは、心筋への血流が突然遮断されて組織損傷を生じさせるとき生じる、命を脅かす状態であるといえる。患部への不十分な血液供給のせいで、心臓中に壊死組織、すなわち梗塞が形成し得る。AMIは通常、冠動脈の1つまたは複数における閉塞の結果である。冠動脈は、酸素を豊富に含む血液を心筋に運ぶ。これらの動脈が閉塞または狭窄すると、心臓への血流は有意に減る、または完全に停止する。
【0004】
AMIは、閉塞した動脈を通過する血流を回復させる早急な医療処置(再灌流療法とも呼ばれる)を必要とすることがある。再灌流療法は、閉塞を取り除く、または回避するための外科的処置、たとえば、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、冠動脈形成術およびバイパス手術を含むことができる。再灌流療法は、代替的または追加的に、血栓溶解薬、線維素溶解薬、ベータ遮断薬およびニトログリセリンをはじめとする様々な薬物の投与を含むこともできる。
【0005】
一部のAMI患者においては、心臓ポンプを使用して血行動態を安定させ、患部虚血性心筋層を救済するための安全かつ効果的な再灌流療法を実行することを可能にすることができる。たとえば、最近の臨床試験および基本的調査により、LV補助装置(LVAD)を使用して、LVから血液を抜き取り、抜き取った血液を大動脈に注入することにより、LVを機械的に減負荷し得ることが実証された。機械的減負荷は、LVによって実行される仕事量を著しく減らし、ひいてはMVO2を減らすことができる。MV02の減少が梗塞サイズ、すなわち心臓発作に起因する壊死組織の面積を減らし得ることが認められている。梗塞サイズ縮小の程度は一般にMVO2の減少と平行する。
【0006】
AMIに対するLVの機械的減負荷のこのような有益な影響にもかかわらず、その臨床応用はまだ確立されていない。慢性心不全の患者においては、LVAD流量(たとえば毎分リットル数)の手動制御が安定な血行動態を達成することができる。しかし、AMI患者においては、AMIが心筋収縮力、血管抵抗、血圧、有効血液量、心拍数および/または交感および副交感自律神経系の活動を秒単位、分単位または時単位で大きく変化させることがあるため、心臓および血行力学的状態は本質的に不安定である。これらの変動性が血行動態に大きく影響することが知られている。薬物療法および再灌流などの治療的介入が、これらの変動要素に対する複雑な動的変調をさらにもたらし、複雑な血行動態をもたらし得る。
【0007】
AMIにおけるこのような心臓血管不安定性の存在下では、LVAD流量の絶え間ないモニタリングまたは連続的な手作業の精密調節をもってさえ、LVの機械的減負荷の過多または不足を防ぐことは、非現実的ではないにしても困難である。肺静脈系から来る充満量よりも少し高い流量でのLVの機械的減負荷は、LV容積を累積的に減らし、最終的には吸引を誘発し、それが心臓をつぶし、命を脅かす不整脈を引き起こし、心筋層を重度に損傷するおそれがある。逆に、充満量よりも少し低い流量でのLVの機械的減負荷は、LV容積およびMVO2を増大させ、それにより、LVの梗塞サイズを縮小することを困難にする。したがって、LVを最適に減負荷するための心臓ポンプの手動制御は、非現実的であり、実効性がなく、潜在的に命を脅かすものである。
【0008】
したがって、心臓血管不安定性の存在にかかわらずLVの機械的減負荷を最適化し、それにより、MVO2および梗塞サイズを最適に減らすやり方で制御される心臓ポンプを使用してAMI患者を治療するための改善されたシステムおよび関連する方法が必要である。
【発明の概要】
【0009】
概要
本開示は、心臓血管不安定性の存在下で、LVの機械的減負荷を最大化し、MVO2および結果的に梗塞サイズを最小化して、引き続く心不全の発症を予防するやり方で制御される心臓ポンプを使用してAMI患者を治療するための、様々なシステム、装置および方法に関する。
【0010】
心臓ポンプを制御するためのシステムの1つの例示的な態様において、システムは、心臓の左室内の左室収縮期圧(LVSP)を計測または計算するために使用される出力を生成するように構成されたセンサと、心臓ポンプに結合され、センサの出力に基づいてLVSPを計測または計算し、計測または計算されたLVSPに基づいて左室の機械的減負荷を最大化するように心臓ポンプの動作を制御するように構成された制御装置とを含む。
【0011】
いくつかの態様において、制御装置は、左室内のLVSPが目標基準圧に維持されるように心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御するように構成されることができる。目標基準圧は、正常な拍出における収縮末期圧の比率に設定されることができ、比率は約0.2~約0.4である。目標基準圧は、平均大動脈圧の比率に設定されることができ、比率は約0.2~約0.4である。目標基準圧は、左室の圧・容積面積(PVA)を最小化するように設定されることができる。たとえば、いくつかの態様において、目標基準圧は、左室のPVAを約90%~約97%最小化するように設定されることができる。目標基準圧は、左室の心筋酸素消費量(MVO2)を最小化するように設定されることができる。たとえば、いくつかの態様において、目標基準圧は、左室のMVO2を約45%~約48.5%最小化するように設定されることができる。
【0012】
いくつかの態様において、制御装置は、ポンプ速度の変化に応答するLVSPの変化をモデル化するプラント伝達関数に基づいてLVSPを目標基準圧に維持するように心臓ポンプのポンプ速度および/または流量を制御するように構成されることができる。たとえば、いくつかの態様において、プラント伝達関数は、
(式中、Kはゲインであり、ζは減衰係数であり、fNは固有周波数であり、Lはタイムラグである)
と定義される、タイムラグを持つ二次遅れ系であることができる。いくつかの態様において、ゲインKは約0.013mmHg/rpmに等しくあることができ、減衰係数ζは約1.9に等しくあることができ、固有周波数fNは約0.41Hzに等しくあることができ、タイムラグLは約0.03秒に等しくあることができる。
【0013】
いくつかの態様において、制御装置は、臨床的に決定された応答時間未満で、かつ目標基準圧の10%未満のオーバシュートでLVSPが目標基準圧に達するように心臓ポンプのポンプ速度および/または流量を制御するように構成されることができる。制御装置は、プラント伝達関数の開ループループゲインが16倍以下だけ変化するときLVSPを目標基準圧に維持するように心臓ポンプのポンプ速度および/または流量を制御するように構成されることができる。いくつかの態様において、制御装置は、約40に等しい比例ゲイン、約20に等しい積分ゲインおよび約0に等しい微分ゲインで構成された比例・積分制御装置を含むことができる。いくつかの態様において、制御装置は、プラント伝達関数を更新し、プラント伝達関数の変化に応答して心臓ポンプのポンプ速度および/または流量を制御するように制御装置を再構成するように構成された適応制御機構を含むことができる。
【0014】
急性心筋梗塞(AMI)患者を治療する方法の1つの例示的な態様において、方法は、患者の心臓のLV内のLVSPを計測または計算する工程と、計測または計算されたLVSPに基づいてLVの機械的減負荷を最大化するように心臓ポンプの動作を制御する工程とを含む。心臓ポンプは、LVから大動脈への血液の機械的減負荷を実行するために心臓に植え込まれている。
【0015】
いくつかの態様において、心臓ポンプの動作を制御する工程は、左室内のLVSPが目標基準圧に維持されるように心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御することを含むことができる。目標基準圧は、正常な拍出における収縮末期圧の比率に設定されることができ、比率は約0.2~約0.4である。目標基準圧は、平均大動脈圧の比率に設定されることができ、比率は約0.2~約0.4である。目標基準圧は、左室の圧・容積面積(PVA)を約90%~約97%最小化するように設定されることができる。目標基準圧は、左室の心筋酸素消費量(MVO2)を約45%~約48.5%最小化するように設定されることができる。
[本発明1001]
心臓の左室内の左室収縮期圧(LVSP)を計測または計算するために使用される出力を生成するように構成されたセンサと;
心臓ポンプに結合され、該センサの該出力に基づいて該LVSPを計測または計算し、計測または計算されたLVSPに基づいて該左室の機械的減負荷を最大化するように該心臓ポンプの動作を制御するように構成された制御装置と
を含む、心臓ポンプを制御するためのシステム。
[本発明1002]
制御装置が、左室内のLVSPが目標基準圧に維持されるように心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御するように構成されている、本発明1001のシステム。
[本発明1003]
目標基準圧が、正常な拍出における収縮末期圧の比率に設定され、該比率が約0.2~約0.4である、本発明1002のシステム。
[本発明1004]
目標基準圧が、平均大動脈圧の比率に設定され、該比率が約0.2~約0.4である、本発明1002のシステム。
[本発明1005]
目標基準圧が、左室の圧・容積面積(PVA)を最小化するように設定されている、本発明1002のシステム。
[本発明1006]
目標基準圧が、左室のPVAを約90%~約97%最小化するように設定されている、本発明1005のシステム。
[本発明1007]
目標基準圧が、左室の心筋酸素消費量(MVO 2 )を最小化するように設定されている、本発明1002のシステム。
[本発明1008]
目標基準圧が、左室のMVO 2 を約45%~約48.5%最小化するように設定されている、本発明1007のシステム。
[本発明1009]
制御装置が、ポンプ速度の変化に応答するLVSPの変化をモデル化するプラント伝達関数に基づいて該LVSPを目標基準圧に維持するように心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御するように構成されている、本発明1002~1008のいずれかのシステム。
[本発明1010]
プラント伝達関数が、
(式中、Kはゲインであり、ζは減衰係数であり、f N は固有周波数であり、Lはタイムラグである)
と定義される、タイムラグを持つ二次遅れ系である、本発明1009のシステム。
[本発明1011]
ゲインKが約0.013mmHg/rpmに等しく、減衰係数ζが約1.9に等しく、固有周波数f N が約0.41Hzに等しく、タイムラグLが約0.03秒に等しい、本発明1010のシステム。
[本発明1012]
制御装置が、臨床的に決定された応答時間未満で、かつ目標基準圧の10%未満のオーバシュートでLVSPが目標基準圧に達するように心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御するように構成されている、本発明1011のシステム。
[本発明1013]
制御装置が、プラント伝達関数の開ループゲインが16倍以下だけ変化するときLVSPを目標基準圧に維持するように心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御するように構成されている、本発明1011のシステム。
[本発明1014]
制御装置が、
約40に等しい比例ゲイン、約20に等しい積分ゲイン、および約0に等しい微分ゲインで構成された比例・積分制御装置
を含む、本発明1011のシステム。
[本発明1015]
制御装置が、
プラント伝達関数を更新し、該プラント伝達関数の変化に応答して心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御するように該制御装置を再構成するように構成された適応制御機構
を含む、本発明1011のシステム。
[本発明1016]
本発明1001~1015のいずれかのシステムを使用して急性心筋梗塞(AMI)患者を治療するための方法。
[本発明1017]
患者の心臓の左室(LV)内の左室収縮期圧(LVSP)を計測または計算する工程であって、心臓ポンプが、該LVから大動脈への血液の機械的減負荷を実行するために該心臓に植え込まれている、計測または計算する工程と、
計測または計算されたLVSPに基づいて該LVの該機械的減負荷を最大化するように該心臓ポンプの動作を制御する工程と
を含む、急性心筋梗塞(AMI)患者を治療するための方法。
[本発明1018]
心臓ポンプの動作を制御する工程が、LV内のLVSPが目標基準圧に維持されるように該心臓ポンプのポンプ速度および流量の1つまたは複数を制御することを含む、本発明1016の方法。
[本発明1019]
目標基準圧が、正常な拍出における収縮末期圧の比率に設定され、該比率が約0.2~約0.4である、本発明1017の方法。
[本発明1020]
目標基準圧が、平均大動脈圧の比率に設定され、該比率が約0.2~約0.4である、本発明1017の方法。
[本発明1021]
目標基準圧が、左室の圧・容積面積(PVA)を約90%~約97%最小化するように設定されている、本発明1017の方法。
[本発明1022]
目標基準圧が、LVの心筋酸素消費量(MVO 2 )を約45%~約48.5%最小化するように設定されている、本発明1017の方法。
【0016】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、例示的な態様を説明し、上記の概要および下記の詳細な説明とともに、様々な態様の特徴を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1Aは、例示的な圧・容積ループを使用して、心周期中のLVの圧・容積関係を示す。図1Bは、LVの例示的な圧・容積面積(PVA)を示し、一回の収縮におけるLVの全機械的仕事量を表す。
図2】一回の収縮における(たとえば1拍動あたりの)PVAとMVO2との間の直線関係を示す。
図3-1】血行動態に対する、心臓ポンプによるLVの機械的減負荷の効果を示す。
図3-2】圧・容積ループ、PVAおよびLVSPに対する、心臓ポンプによるLVの機械的減負荷の効果を示す。
図4】LVの機械的減負荷に適した心臓ポンプの例示的な態様のイラストである。
図5】心臓血管不安定性の存在にかかわらずLVの機械的減負荷を最大化するように心臓ポンプを制御するための閉フィードバック心臓ポンプ制御システムの1つの例示的な態様の模式図である。
図6図5のフィードバック心臓ポンプ制御システムの制御下でのLVSPの例示的なステップ応答を示す。
図7A】目標基準圧力値の変化に応答する図5のフィードバック心臓ポンプ制御システムの例示的な性能を示す。
図7B】大きなLV容積変動の存在下でのMVO2を表す関連指標の安定化における、図5のフィードバック心臓ポンプ制御システムの例示的な性能を示す。
図8】目標基準圧を決定するためのPVAリクルートメント率とLVSP率との間の関係を示す。
図9】適応フィードバック心臓ポンプ制御システムの1つの例示的な態様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
以下、本明細書に開示されるシステム、装置および方法の構造、機能、製造および使用の原理の全体的理解を提供するために、特定の例示的な態様を説明する。これらの態様の1つまたは複数の例が添付図面に示されている。当業者は、本明細書に具体的に記載され、添付図面に示されるシステム、装置および方法が例示的な非限定的態様であること、ならびに本開示の範囲が特許請求の範囲のみによって画定されることを理解するであろう。1つの例示的な態様に関連して図示または記載された特徴が他の態様の特徴と組み合わされてもよい。そのような改変および変更は本開示の範囲に含まれると考えられる。本開示において、様々な態様の類似の番号を付された構成要素は一般に、それらの構成要素が類似の性質を有する、および/または類似の目的を果たす場合、類似の特徴を有する。当業者は、本開示を考慮して、異なる図面の間で類似の番号を付された構成要素どうしが同種である様々な例を理解するであろう。
【0019】
本開示は、心臓血管不安定性の存在下で、LVの機械的減負荷を最大化し、MVO2および結果的に梗塞サイズを最小化して、引き続く心不全の発症を予防するやり方で制御される心臓ポンプを使用してAMI患者を治療するための、様々なシステム、装置および方法に関する。
【0020】
図1Aは、心周期中のLVの圧・容積関係を示す。圧・容積ループ110および120のそれぞれは、1つの完全な心周期中の近似LV圧およびLV容積計測値を表す。心周期、すなわち拍動は、4つの基本段階:心室充満110a、等容性収縮110b、収縮駆出110cおよび等容性弛緩110dに分けることができる。収縮末期圧が収縮末期容積と線形に相関することは十分に確立されており、収縮末期圧・容積関係(ESVPR、線130)として示されている。ESPVRは、負荷条件の変化に実質的に無反応であり、その傾きは心室収縮性をよく表す。
【0021】
図1Bは、LVの例示的な圧・容積面積(PVA)を示し、一回の収縮におけるLVの全機械的仕事量を表す。PVAは、ESPVRおよび拡張末期圧・容積曲線(EDPVR)ならびに収縮における圧・容積軌道の収縮期セグメント(SS)によって画定される比表面積である。幾何学的には、圧・容積面において、PVAは外部仕事量(EW)と位置エネルギー(PE)との和、すなわちPVA=PE+EWである。図1Aに示すように、心周期のPVA、ひいては心室の全機械的仕事量は、LV収縮末期圧(LVSP)を減らすことによって減らすことができる。たとえば、LVSPをLVSP 112からLVSP 122に減らすと、PVAは減る(たとえば、PVA 115からPVA 125へ)。本明細書に詳述するように、心臓ポンプを使用して、LV容積を減らすことによってLVSPを減らすことができる。
【0022】
図2は、一回の収縮における(たとえば1拍動あたりの)PVAとMV02との間の直線関係を示す。PVAがMVO2と線形に相関する(線210)ことは十分に確立されている。したがって、PVAの減少(たとえば、PVA 220からPVA 222へ)はMV02を減らす(たとえば、MVO2 230からMVO2 232へ)。MVO2の減少が梗塞サイズ、すなわち心臓発作に起因する壊死組織の面積を減らし得ることが認められている。
【0023】
図3A~3Fは、血行動態、圧・容積ループ、PVAおよびLVSPに対する、心臓ポンプによるLVの機械的減負荷の効果を示す。たとえば、図3A、3Bおよび3Cは、異なるレベルのLV機械的減負荷の場合のLV圧(LVP)および大動脈圧(AP)の例示的な変化を時系列で示す。図3Dは、LVPのそれぞれの変化に対応する例示的な圧・容積ループLo(機械的減負荷なし)、Lp(部分的機械的減負荷)およびLMAX(最大機械的減負荷)を示す。図3Aは、心臓ポンプによる機械的減負荷なしでの例示的なLV圧(LVP)および大動脈圧(AP)を示す。図3Bに示すように、部分的機械的減負荷は大動脈の脈圧を減らすことができるが、図3Dの圧・容積ループLpによって証明されるように、LVは駆出し続ける。図3Dの圧・容積ループLmaxによって示すように、機械的減負荷が最大になるとLVはもはや駆出せず、図3Cに示すように、LV圧LVPは大動脈圧APよりも低くなる。図3Eは、最大減負荷がPVA(PVAMAX)、ひいてはMV02を非常に小さくし得ることを示す。AMIにおいて、最大減負荷とは、梗塞サイズが最小になるところの状態である。しかし、機械的減負荷は、図3FにLVSPoおよびLVSP AMIに関して正常およびAMIイヌモデルで示すように、相対的に安定な血行力学的状態下でさえ、LVSPをほとんど突然かつ急激に低下させ得る。AMI状態において、心臓および血行力学的状態はきわめて動的であり、大きく変化し得るため、心臓ポンプを手動で制御することによって最大減負荷を維持することは、不可能ではないにしても非現実的であるといえる。したがって、機械的減負荷中、AMI状態に固有の血行力学的不安定性の存在下で所定の目標LVSPを維持するように構成されることができる心臓ポンプのための閉フィードバック制御システムの態様が本明細書に開示される。
【0024】
図4Aおよび4Bは、LVの機械的減負荷に適した心臓ポンプ400の例示的な態様のイラストである。図示される態様において、心臓ポンプ400は、インペラポンプ410、ポンプモータ412、血液入口414および血液出口416を含むことができる。いくつかの態様において、ポンプ400は、標準的なカテーテル挿入処置によって挿入することができるよう、カテーテル420中に配置されることができる。たとえば、心臓ポンプ400は、大腿動脈に挿入し、上行大動脈10に入れ、大動脈弁15を通過させ、左室20に入れることができる。ポンプの作動中のLVSPを計測するために、圧力センサ430がカテーテル420内に配置されることができる。いくつかの態様においては、大動脈圧を計測するために、もう1つの圧力センサ432がカテーテル420内に配置されることもできる。いくつかの態様において、大動脈圧および/または差圧を計測するために使用される圧力センサ432は、ポンプの作動中、左室中の圧力センサ430の非存在下で、LVSPを計算するために使用されることもできる。カテーテル420はまた、遠隔制御装置またはコンソール(たとえば、図5のポンプ制御装置510)からポンプモータ412および圧力センサ430、432の一方または両方への有線接続を容易にするための導管として働くこともできる。
【0025】
図示するように、ポンプ400は、血液を、LV20から血液入口414を通してインペラポンプ410に引き込み、血液出口416を通して上行大動脈10の中へ駆出することができる。心臓ポンプ400の流量は、ポンプモータ412の速度に基づいて制御することができる。以下さらに詳細に説明するように、ポンプモータ412の速度は、LVSPセンサ430および任意選択で大動脈圧センサ432から得られる計測値に基づいて制御することができる。いくつかの態様において、心臓ポンプ400は、毎分5.0リットルまでの血液をLVから大動脈にポンピングすることができる。いくつかの態様において、心臓ポンプ400は、毎分5.0リットルよりも多い、または少ない流量でポンピングすることもできる。様々な態様との使用に適した心臓ポンプの例は、米マサチューセッツ州ダンバースに本拠を有するAbiomed, Inc.のImpella(登録商標)心臓ポンプのファミリー、たとえばImpella 5.0(登録商標)、Impella LD(登録商標)、Impella CP(登録商標)およびImpella 2.5(登録商標)を含むことができる。当業者は、他の左室補助装置または心臓ポンプをも使用し得ることを容易に理解するであろう。
【0026】
様々な心臓ポンプがLVを減負荷することができるが、AMI患者の全身を支援する(すなわち灌流する)のに十分な心拍出量を生成することができるポンプが有用であるといえる。理由は、PVAを最小化するためには、LVは駆出を規則的に停止する必要があるからである。この状態は、機械的減負荷のための心臓ポンプが、全身を灌流するための流量を生成するとき、達成することができる。LVが駆出を規則的に停止するならば、心臓ポンプ流量を制御することによってPVA、ひいてはMVO2を最小化することができる。本明細書に開示される心臓ポンプ制御システムの様々な態様を、全身を支援するための心拍出量を生成することができる心臓ポンプとともに使用することができる。
【0027】
図5は、心臓血管不安定性の存在にかかわらず左室の機械的減負荷を最大化するように心臓ポンプを制御するための閉フィードバック心臓ポンプ制御システム4500の1つの例示的な態様の模式図である。図示される態様において、システム500は、心臓ポンプ400、ポンプ制御装置510、LVSP圧力センサ430および任意選択で大動脈圧センサ432を含むことができる。図4Bに関して上述したように、心臓ポンプ400は、血液を左室から大動脈へと機械的に減負荷するために、心臓内に配置されることができる。
【0028】
ポンプ制御装置510は、ポンプモータ412の速度(たとえば毎分回転数、すなわちRPM)を調節することによってポンプ410の流量を制御するように構成されることができる。ポンプ制御装置510は、ポンプ410が、目標圧によって設定される目標流量(たとえば毎分リットル数)で左室を機械的に減負荷するよう、ポンプモータ412の速度を調節するためのコマンドまたは信号を有線または無線接続を介して送出することができる。
【0029】
いくつかの態様において、圧力センサ430および/または432は、心臓のLV内のLVSPを計測または計算するためにポンプ制御装置510によって使用される出力を生成するように構成されることができる。たとえば、いくつかの態様において、圧力センサ430は、LVSPを計測し、フィードバック信号としてポンプ制御装置510へ出力するように構成されることができる。ポンプ制御装置510は、ポンプの流量がLVSPを正常なLVSPよりも低い、ひいては平均大動脈圧よりもずっと低い目標基準圧またはその近くに維持することができるよう、LVSPを、ポンプモータ412に速度調節を加えるためのフィードバック情報として使用することができる。いくつかの態様において、目標基準圧は、ポンプ制御装置510への手動入力によって設定することができる。いくつかの態様において、目標基準圧は、ポンプ制御装置510によって取得または決定された計算値に設定することができる。
【0030】
PVA、ひいてはMVO2を最小化するように心臓ポンプを自動的に制御するために、本明細書においてはフィードバック制御装置と呼ばれることもあるポンプ制御装置510は、心臓または血行力学的状態の大きな変化にかかわらずLVSPを低い基準圧レベルに維持するように心臓ポンプの速度、流量または他の動作特性を制御するように構成されることができる。これは、フィードバック制御装置の開ループゲインが、AMI関連の大きな心臓および血行力学的不安定性から生じるLVSP変動を安定させるのに十分な大きさであるとき、達成することができる。いくつかの態様において、心臓ポンプのフィードバック制御装置は、大きな心臓および血行力学的不安定性の存在下でも安定であり、動揺はない(または実質的に動揺はない)。制御論理は、開ループゲインが高ければ高いほど、閉ループフィードバックシステムの安定性が低くなることを示す。したがって、いくつかの態様において、ポンプ制御装置510は、開ループゲインをシステム安定性とで均衡させるように構成されることができる。
【0031】
安定性を損なうことなく高開ループゲインフィードバック制御装置を展開するために、制御されるプラントに関して開ループ伝達関数を決定することができる。プラントは、心臓ポンプで補強された心臓を表すことができる。たとえば、いくつかの態様において、プラントは、機械的減負荷に使用される心臓ポンプのポンプ速度の変化に応答するLVSPの動的変化をモデル化することができる。たとえば、プラントは、入力がポンプ速度制御コマンド(たとえばrpm)であり、出力がLVSP(たとえばmmHg)である単入力単出力(SISO)システムと定義することができる。心臓血管生理学において、ポンプ速度の変化がどのようにLVSPに動的に影響するかの伝達関数は研究されたことがない。いくつかの態様において、プラントの伝達関数は、他の入力、たとえば心臓ポンプの流量(たとえば毎秒ミリリットル数)または他の動作特性を使用して決定することもできる。いくつかの態様において、プラントの伝達関数は、他の出力、たとえば、センサ(たとえばセンサ430、432)を使用して計測または推定することができる心臓血管系(たとえば心臓)のLV拡張期圧、大動脈圧または他の性質を使用して決定することもできる。
【0032】
いくつかの態様においては、心臓血管系のコンピュータモデル化を用いて、ポンプ速度からLVSPへの近似伝達関数を推定することもできる。いくつかの態様においては、伝達関数を近似し、以下の二次遅れ系へと簡約することもできる。
式中、4つのパラメータは、ゲインK、減衰係数ζ、固有周波数fNおよび遅延時間Lである。項jは虚数単位を表す(j2=-1)。二次伝達関数H(f)は心臓血管系の解剖学的基本構造から生じるため、伝達関数は、ヒト心臓血管系に類似する解剖学的構造を有する多くの種に適用されることができる。伝達関数H(f)はまた、疾患状態下で心臓ポンプで補強された心臓をモデル化するためのプラントとしても使用することもできる。理由は、そのような状態は、心臓血管系の大きな解剖学的変化を伴う可能性が低いからである。
【0033】
いくつかの態様において、プラント伝達関数H(f)の4つのパラメータは、約0.013mmHg/rpmに等しいゲインK、約1.9に等しい減衰係数ζ、約0.41Hzに等しい固有周波数fNおよび約0.03秒に等しい遅延時間Lを含むことができる。以下、図9に関して詳述するように、いくつかの態様において、プラント伝達関数H(f)の1つまたは複数のパラメータの値は、AMIおよび容積負荷状態の変化に応答して変化させることができる。前記パラメータの近似値は動物実験およびAMI状態のイヌモデルに基づくが、当業者は、ヒト心臓血管系と関連する任意の変動を受け入れるようにこれらのパラメータを調節し得ることを理解するであろう。
【0034】
特定されたプラント伝達関数H(f)に基づき、ポンプ制御装置510は、心臓および血行力学的状態の変化にかかわらずLVSPを一定の値に維持するように構成されることができる。たとえば、図5に示すように、いくつかの態様において、ポンプ制御装置510は、コンパレータ512および比例・積分(PI)制御装置または比例・積分・微分(PID)制御装置514を含むことができる。コンパレータ512は、圧力センサ430に結合され、圧力センサから出力されたLVSPの計測値を受けるように構成されることができる。コンパレータ512は、目標基準圧を、左室内で計測されたLVSPに比較し、圧力差またはエラー信号e(t)をPID制御装置514に出力するように構成されることができる。
【0035】
PID制御装置は、以下の式を実現するように構成されることができる。
式中、Kpは比例ゲインであり、Kiは積分ゲインであり、Kdは微分ゲインであり、tは時間または瞬間であり、τは時間0から現在時tまでの値をとる積分の変数である。積分項は、制御装置のdeゲイン無限大を実質的に無限大に等しくするように構成されることができる。式u(t)は、ラプラスドメインにおいてU(s)=Kp+Ki/s and Kdsと書き換えることができる。
【0036】
Kp、KiおよびKdの値は、閉ループ系のLVSPの時間または周波数応答をポンプ速度または対応する流量のステップ変化に関して最適化することができるようにシステム500をチューニングするように選択することができる。たとえば、いくつかの態様において、Kp、KiおよびKdの値は、計測されるLVSPが、ポンプ速度の対応する調節に応答して、最小限のオーバシュートおよび時間遅延で目標基準圧に達することができるように選択することができる。たとえば、いくつかの態様において、(i)閉ループ条件下のLVSPのステップ応答のオーバシュートは約10%未満であることができる、(ii)LVSPの定常応答に達するための時間は所定の臨床的に関連する応答時間(たとえば約60秒)よりも短くあることができる、および/または(iii)目標圧からの定常偏差は平均でゼロであることができる。いくつかの態様において、PID制御装置514は、フィードバック制御システム500が安定であり、プラントの開ループゲインの変化(たとえば16倍まで、または16倍を超える)の存在下でそのような制約の1つまたは複数を満たすことができるように実現されることができる。
【0037】
いくつかの態様において、特定されたプラントの伝達関数H(f)に基づき、制御装置の最小実現は、約40に等しい比例ゲインKp、約20に等しい積分ゲインKiおよび約0に等しい微分ゲインKJを有する比例・積分(PI)制御装置であることができる。ゲインKpおよびKiのためのこれらの値の組み合わせが、システムが、プラントの開ループゲインの変化(たとえば約16倍まで、または16倍を超える)を含むAMI誘発性の心臓および血行力学的状態の大きな不安定性の存在下でLVSPを一定の値に維持することを許すことができる。いくつかの態様において、それぞれのゲインパラメータKp、KiおよびKdの1つまたは複数は、プラントの設計要件および/または開ループゲインの変化に応じて調節することができる。
【0038】
図6は、上記制御装置パラメータを使用する図5の閉フィードバック心臓ポンプ制御システム500の制御下でのLVSPの例示的なステップ応答を示す。たとえば、図示するように、制御システム500は、LVSPに関して、オーバシュートを示さず、AMI状態下、約20秒で定常状態に達するステップ応答610を提供することができる。プラントが、通常の4倍の大きさである開ループゲインを示すとき、制御システム500は、LVSPに関して、約5%未満のオーバシュートしか示さず、約20秒未満で定常状態に達するステップ応答620を提供することができる。プラントが、通常よりも1/4少ない開ループゲインを示すとき、制御システムは、LVSPに関して、オーバシュートを示さず、約40秒で定常状態に達するステップ応答630を提供することができる。
【0039】
極度のAMI状態下で徹底的に実施された数多くの動物実験に基づき、プラントの開ループゲインは、4~1/4の倍率の範囲内で変動することが認められた。臨床応用において、ヒト患者と関連する開ループゲインは、16倍よりも大きく変化すべきではない。定常状態に達するのに約20秒~約40秒を要するステップ応答が、心室減負荷療法に関連する転帰における有害作用を回避するのに十分であるはずである。しかし、当業者は、制御システムが、他の臨床的に関連する応答時間で定常状態に達するように構成されてもよいことを理解するであろう。
【0040】
図7Aおよび7Bは、ポンプ速度を使用してLVSPを制御する、図5の閉フィードバック心臓ポンプ制御システムの例示的な性能を示す。たとえば、図7Aは、入力目標基準圧LVSPINが40、70および40mmHgと段階的に変化するとき、制御システム500が、命令ポンプ速度Sを調節して、目標圧をたどる出力LVSPoutを提供し得ることを示す。図7Aはまた、制御された出力LVSPと対応する出力大動脈圧APOUTおよび出力LV容積LVVOUTの変化を示す。
【0041】
図7Bは、大きなLV容積変動(たとえば、左室容積の増減)の存在下でのLVのMVO2消費量を表す関連の指標(たとえばLVSPおよびPVA)の安定化を示す。容量変動は、AMIに固有の血行力学的不安定性である。図7Bに示すように、容積の大きな変化(たとえば±8ml/kg)にかかわらず、本態様のフィードバック制御システム500を使用して心臓ポンプ(たとえば400)のポンプ速度を制御して目標LVSPを維持することにより、LVSPおよびPVAは実質的に一定にとどまることができる。それに比べ、固定速度の心臓ポンプを使用すると、LVSPおよびPVAは、LVの大きな容積変動に応答して有意に変化することができる。
【0042】
いくつかの態様において、目的に応じてより速やかな応答またはより安定な応答が求められる場合、当業者は、PID制御装置514のゲインパラメータKp、KiおよびKdの1つまたは複数を調節し得ることを理解するであろう。したがって、PID制御装置に関して具体的なゲインパラメータ値が本明細書に開示されるが、そのような値は例示的であり、限定的であることを意図しない。
【0043】
上述したように、本態様の心臓ポンプ制御システム500は、LVSPを、LVのMVO2を最小化するように決定された目標基準圧に維持するように構成されることができる。たとえば、図1および2に示すように、MVO2は、LVのPVAを最小化することによって最小化することができる。理論上、ゼロのPVAがMVO2を最小にすることができる。しかし、PVAをゼロに維持する(LVSPがゼロmmHgであることを意味する)ことは、安全かつ安定的に達成することが非常に困難である。理由は、ゼロ未満のLVSPのわずかな減少でさえ、LV内ではポンプによる大きな吸引を生じさせることができ、それが心臓を損傷するおそれがあるからである。したがって、いくつかの態様において、図5の閉フィードバック心臓ポンプ制御システム500は、LVSPを、ほぼ最小限のMV02を提供しながらもフィードバックシステムによって安全かつ安定的に制御可能である目標LVSPに維持するように構成されることができる。たとえば、いくつかの態様において、目標LVSPは、図8Aおよび8Bに示すような、LVSP率とリクルートされたPVA率との間の関係に基づいて決定することができる。
【0044】
図8Aは、LVSP率とLV容積率との間の関係を示す。図示するように、圧および容積は、正常な駆出収縮の収縮末期で1に正規化される。LVSP率「α」は、LV減負荷の動作状態を画定する、正常な駆出中の収縮末期圧に対する減負荷中のLVSPの比である。LVSP率αが低ければ低いほど、減負荷は強くなる。所与のLVSP率αの場合、LV容積が収縮末期容積によって正規化されるため、LV容積率は同じくaになる。LV拡張末期容積は1/(1-β)によって求められる(式中、βは、LV駆出率、すなわち、一回拍出量を拡張末期容積で割ったものである)。
【0045】
リクルートされたPVAとは、αの動作状態でのLV減負荷によってリクルートされたPVAである。残留PVAとは、αの動作状態での減負荷によって残るPVAである。PVAリクルートメント率は、リクルートされたPVAと残留PVAとの和に対する残留PVAの比によって画定され、全PVAのどれほどの割合がLV減負荷によってリクルートされるのかを示す。機械的減負荷は、LVSP率αを減らし、リクルートされたPVAを増し、結果的にLVの残留PVAの減少を招く。
【0046】
図8Bは、PVAリクルートメント率を、様々な駆出率「β」の下でのLVSP率「α」の関数として示す。図示するように、PVAリクルートメント率はLVSP率αとともに減少する。たとえば、α=1(すなわち、LV容積率=1)では、PVAリクルートメント率806、804および802は、0.6、0.4および0.2の駆出率βの場合、それぞれ0.75、0.57および0.33に等しい。これは、収縮が不十分なLVは、PVAを減らすためにより大きな減負荷を必要とし得ることを意味する。α=0.4の場合、PVAリクルートメント率806'、804'、802'は、駆出率βに関係なく、0.9以上であることができる。α=0.2の場合、PVAリクルートメント率806"、804"、802"は、駆出率βに関係なく、0.97以上であることができる。
【0047】
したがって、いくつかの態様において、LVのPVAを約90%~97%最小化するために、目標LVSPは、正常な拍出における収縮末期圧とLVSP率αとの積に等しく設定することができる(αは約0.2~約0.4の値である)。正常な拍出中の収縮末期圧は通常、70~110mmHgである。そのような範囲内の目標LVSPは、図5の本態様のフィードバックシステム500の制御下、心臓ポンプを用いる機械的減負荷によって安全かつ安定的に達成することができる。PVAの約90%~97%の減少は、MVO2の50%がPVA非依存性であると仮定すると、それぞれ、対応するMVO2の約45%~48.5%の減少に換算することができる。梗塞サイズを評価する際の有意なノイズの存在下で、MVO2の小さな差が梗塞サイズに影響する可能性は低い。そのようなMVO2の減少は、大きな酸素節約を達成し、それにより、梗塞サイズおよびそれに続く心不全を減らすことができる。
【0048】
いくつかの態様において、LVのPVAを約90%~97%最小化するために、目標LVSPは、平均大動脈圧とLVSP率aとの積に等しく設定することができる(aは約0.2~約0.4の値である)。上述したように、PVAの約90%~97%の減少は、MVO2の約50%がPVA非依存性であると仮定すると、MVO2の約45~約48.5%の減少に相当することができる。そのようなMVO2の減少は、大きな酸素節約を達成し、それにより、梗塞サイズおよびそれに続く心不全を減らすことができる。
【0049】
いくつかの態様において、AMI患者の血行動態が、大動脈圧を含め、比較的安定している場合、目標基準圧(たとえば目標LVSP)は、平均大動脈圧の一定の比率、たとえば非限定的に約0.2~約0.4の比率に設定することができる。いくつかの態様において、目標基準圧は、計測または推定することができる他の血行力学的パラメータの一定の比率に設定することができる。目標圧が設定されたならば、臨床的必要性が生じるまで、それは変更されない。これは、患者の血行力学的状態に依存する目標圧の設定を簡素化する。
【0050】
図9は、適応フィードバック心臓ポンプ制御システム900の1つの例示的な態様の模式図である。図示するように、制御システム900は、コンパレータ905、適応ポンプ制御装置910、心臓ポンプアクチュエータ920、プラントモデル930、1つまたは複数のセンサ940、システム識別モジュール950および制御装置設計モジュール960を含むことができる。以下に記載される場合を除き、または当業者によって容易に理解されるように、制御システム900は、図4および5に関して先に記載された制御システム500に実質的に類似することができる。したがって、簡潔さのために、その構造および機能の詳細な説明はここでは省略する。制御システム900は、上記制御システム500の特徴の任意の1つまたは複数を含むことができる。
【0051】
いくつかの態様において、適応フィードバック心臓ポンプ制御システム900は、より複雑な機械的減負荷の適用を必要とし得るAMI患者において目標LVSPまたはAPを維持するように心臓ポンプを制御するために使用することができる。たとえば、より複雑な機械的減負荷の適用は、右室不全、命を脅かす不整脈および他の機械的循環装置を有する患者において予想され得る。したがって、一定の伝達関数に関連するプラントを制御するように構成されているフィードバック心臓ポンプ制御システムは、LVSPおよびPVAを一定に維持することを保証し得ない。したがって、システム識別モジュール950および制御装置設計モジュール960を使用して、心臓ポンプ(たとえば400)で補強された心臓を表すプラントモデル930の連続的および/または定期的な識別および更新に基づいて心臓ポンプ920を制御するように制御システム900を適応的に構成することができる。このようにして、適応ポンプ制御装置910は、多種多様な病的状態下のAMI患者のPVAおよびMOV2を最小化するように適応的に構成されることができる。
【0052】
いくつかの態様において、システム識別モジュール950は、プラント伝達関数を定期的または継続的にモニタし、更新するように構成されることができ、制御装置設計モジュール960は、プラント伝達関数の決定された変更に応じて適応ポンプ制御装置910の1つまたは複数のパラメータを更新するように構成されることができる。たとえば、いくつかの態様において、システム識別モジュール950は、ポンプ速度とLVSPとの間の相関関係の変化に応じて、プラントの二次伝達関数H(f)のパラメータの1つまたは複数、たとえばゲインK、減衰係数??、固有周波数fNおよび/または遅延時間Lを調節するように構成されることができる。いくつかの態様において、システム識別モジュール940は、二次伝達関数H(f)以外の伝達関数を使用してプラントをモデル化するように構成されることもできる。いくつかの態様において、システム識別モジュール950は、ポンプ速度の変化に応答して、LVSPのセンサ計測値に基づいてプラント伝達関数を変更するように構成されることができる。
【0053】
プラント伝達関数の決定された変化に基づいて、制御装置設計モジュール960は、適応ポンプ制御装置910の1つまたは複数のパラメータを調節することができる。たとえば、適応ポンプ制御装置がPIまたはPID制御装置である場合、制御装置設計モジュール960は、制御装置と関連する比例ゲインKp、積分ゲインKiおよび微分ゲインKdの1つまたは複数を調節することができる。Kp、KiおよびKdの調節値は、計測されたLVSPが、ポンプ速度の対応する調節に応じて、最小限のオーバシュートおよび時間遅延で目標基準圧に達することができるように選択することができる。
【0054】
本明細書に開示される態様と関連して記載される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路およびアルゴリズム演算は、電子的ハードウェア、コンピュータソフトウェアまたは両方の組み合わせとして実現され得る。ハードウェアおよびソフトウェアのこの互換性を明確に説明するために、様々な例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、回路および演算が一般にそれらの機能の観点で先に記載されている。このような機能がハードウェアとして実現されるのかソフトウェアとして実現されるのかは、システム全体に課せられる具体的な用途および設計制約に依存する。当業者は、記載された機能を具体的な用途ごとに異なる方法で実現し得るが、そのような実現決定が、特許請求の範囲からの逸脱を招くものと解釈されるべきではない。
【0055】
本明細書に開示される局面と関連して記載される様々な例示的な論理、論理ブロック、モジュールおよび回路を実現するために使用されるハードウェアは、汎用プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲートまたはトランジスタ論理、ディスクリートハードウェアコンポーネントまたは本明細書に記載される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせで実現または実行され得る。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであり得るが、代替として、任意の従来のプロセッサ、制御装置、マイクロコントローラまたは状態機械であってもよい。プロセッサはまた、レシーバスマートオブジェクトの組み合わせ、たとえば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、2つ以上のマイクロプロセッサ、1つまたは複数のマイクロプロセッサとDSPコアとの組み合わせまたは任意の他のそのような構成として実現されてもよい。あるいはまた、一部の演算またはメソッドが、所与の機能に専用である回路によって実行されてもよい。
【0056】
1つまたは複数の局面において、記載される機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはそれらの任意の組み合わせで実現され得る。ソフトウェアで実現される場合、機能は、1つまたは複数の命令またはコードとして、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体または非一時的なプロセッサ読み取り可能な記憶媒体に記憶され得る。本明細書に開示されるメソッドまたはアルゴリズムの演算は、非一時的なコンピュータ読み取り可能またはプロセッサ読み取り可能な記憶媒体上に存在し得るプロセッサ実行可能なソフトウェアモジュールまたはプロセッサ実行可能な命令に具現化され得る。非一時的なコンピュータ読み取り可能またはプロセッサ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータまたはプロセッサによってアクセスされ得る任意の記憶媒体であり得る。実例として、非限定的に、そのような非一時的なコンピュータ読み取り可能またはプロセッサ読み取り可能な記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、FLASHメモリ、CD-ROMもしくは他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置スマートオブジェクトまたは所望のプログラムコードを命令もしくはデータ構造の形態で記憶するために使用され得、かつコンピュータによってアクセスされ得る任意の他の媒体を含み得る。本明細書において使用されるディスク(disk)およびディスク(disc)としては、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光学ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピーディスクおよびBlu-rayディスクがある(diskは通常、データを磁気的に再生するが、discは、レーザを用いて光学的にデータを再生する)。上記の組み合わせもまた、非一時的なコンピュータ読み取り可能およびプロセッサ読み取り可能な媒体の範囲に含まれる。加えて、メソッドまたはアルゴリズムの演算は、コードおよび/または命令の1つまたは任意の組み合わせまたはセットとして、コンピュータプログラム製品に組み込まれ得る非一時的なプロセッサ読み取り可能な記憶媒体および/またはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体上に存在してもよい。
【0057】
開示された態様の前記説明は、任意の当業者が特許請求の範囲を達成または使用することを可能にするために提供される。これらの態様に対する様々な改変が当業者には容易に明らかであり、本明細書において定められる一般原理は、特許請求の範囲を逸脱することなく、他の態様にも適用され得る。したがって、本開示は、本明細書に示される態様に限定されることを意図せず、添付の特許請求の範囲ならびに本明細書に開示される原理および新規な特徴と合致するもっとも広い範囲を与えられるべきである。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9