(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】配線基板、電子装置及び電子モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20221108BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20221108BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20221108BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H01L23/12 Z
H01L23/12 C
H05K3/38 A
H05K3/38 C
H05K3/18 E
(21)【出願番号】P 2021509499
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013314
(87)【国際公開番号】W WO2020196616
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2019056788
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 祐城
(72)【発明者】
【氏名】細井 義博
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-053619(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056203(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/126641(WO,A1)
【文献】特開平11-135900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12-23/14、23/48-23/50
H01L 25/00-25/18
H05K 3/18、3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有し、AlNを含む絶縁基板と、
前記第1面上に位置し、Cuを含む導体と、
前記導体の上面、側面及び前記第1面に渡って位置するNi膜と、
を備え、
さらに、前記第1面上に複数点在するTi酸化物を有
し、
前記Ni膜は、前記Ti酸化物と接触している部分を有する、
配線基板。
【請求項2】
前記Ni膜は、前記第1面に沿って前記導体とは反対側へ突出した突出部を有し、
前記突出部が前記第1面と接触している、
請求項
1記載の配線基板。
【請求項3】
前記突出部は、前記Ni膜と接触している少なくとも1つの前記Ti酸化物を超えて突出している、
請求項
2記載の配線基板。
【請求項4】
前記突出部の突出側の外縁が、前記第1面に垂直な方向から見て、複数の山と複数の谷とを有する、
請求項
2又は請求項
3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記Ni膜と接触している複数の前記Ti酸化物が、前記導体の側面に沿って並んでいる、
請求項
1から請求項
4のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記Ni膜と接触している複数の前記Ti酸化物が、前記導体の周囲を囲んでいる、
請求項
1から請求項
5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記第1面と前記側面とに垂直な少なくとも1つの断面において、前記Ni膜が2つ以上の前記Ti酸化物に接触している、
請求項
1から請求項
6のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記第1面は、複数の凹部を有し、
該複数の前記凹部は、2つ以上の粒が重なった形状の凹部を含む、
請求項
1から請求項
7のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項9】
前記絶縁基板と前記導体との間に、前記導体に近いほどCuの濃度が高く、前記導体に近いほどAl及びNの濃度が低い濃度勾配を有する中間層が含まれる、
請求項
1から請求項
8のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項10】
前記Ni膜と前記第1面との間に、前記Ni膜に近いほどCuの濃度が高く、前記Ni膜に近いほどAl及びNの濃度が低い濃度勾配を有する中間層が含まれる、
請求項
1から請求項
9のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の配線基板と、
前記配線基板に搭載された電子部品と、
を備える電子装置。
【請求項12】
請求項
11記載の電子装置と、
前記電子装置を搭載したモジュール用基板と、
を備える電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板、電子装置及び電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Si基板上に絶縁膜及びチタン系の金属膜を介してAl系の配線導体が設けられた配線基板が知られている(例えば、特開平5-182926号公報を参照)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示に係る配線基板は、
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有し、AlNを含む絶縁基板と、
前記第1面上に位置し、Cuを含む導体と、
前記導体の上面、側面及び前記第1面に渡って位置するNi膜と、
を備え、
さらに、前記第1面上に複数点在するTi酸化物を有し、
前記Ni膜は、前記Ti酸化物と接触している部分を有する。
【0004】
本開示に係る電子装置は、
上述の配線基板と、
前記配線基板に搭載された電子部品と、
を備える。
【0005】
本開示に係る電子モジュールは、
上述の電子装置と、
前記電子装置を搭載したモジュール用基板と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】実施形態の配線基板の一部を示す縦断面図である。
【
図1B】実施形態の配線基板の一部を示す平面図である。
【
図1C】実施形態の配線基板からNi膜を除いた平面図である。
【
図2】実施形態の配線基板の全体を示す平面図である。
【
図3A】配線導体と絶縁基板との間の中間層における構成元素の濃度分布を示す図である。
【
図3B】Ni膜下の中間層における構成元素の濃度分布を示す図である。
【
図4A】実施形態の配線基板における配線導体の一下端部の電子顕微鏡画像を示す図である。
【
図4B】実施形態の配線基板における配線導体の一下端部の電子顕微鏡画像を示す図である。
【
図4C】実施形態の配線基板における配線導体の一下端部の電子顕微鏡画像を示す図である。
【
図5】実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る電子装置及び電子モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0008】
図1Aから
図1Cは、実施形態の配線基板の一部を示す図で、
図1Aは縦断面図、
図1Bは平面図、
図1CはNi(ニッケル)膜を除いた平面図である。
図2は、実施形態の配線基板の全体を示す平面図である。本明細書では、絶縁基板10において第2面12から第1面11へ向かう方向を上方として説明する。しかし、本明細書で説明する各方向は、配線基板1が実装又は使用される際の方向と異なってもよい。
【0009】
本実施形態の配線基板1は、例えば、電子部品をモジュール基板又はパッケージに実装するために、電子部品と実装先との間に介在されるサブマウントである。配線基板1は、AlN(窒化アルミニウム)を含むセラミック材料の絶縁基板10と、絶縁基板10上に形成された配線導体20と、配線導体20の上面及び側面を覆うNi膜30とを備える。配線導体20は、本開示に係る導体の一例に相当する。
【0010】
絶縁基板10は、構成元素としてAlNを含むセラミック材料である。絶縁基板10は、第1面(第1主面)11とその反対側の第2面(第2主面)12とを有し、第1面11側に配線導体20が形成される。なお、絶縁基板10には、第1面11側と第2面12側との両方に配線導体20が形成されてもよい。第2面12の配線導体20を本開示に係る導体とみなす場合、第2面12が本開示に係る第1面に相当し、第1面11が本開示に係る第2面に相当する。
【0011】
絶縁基板10の第1面11上には、
図1A~
図1Cに示すように、複数のTi酸化物13が点在している。すなわち、Ti酸化物13が、第1面11の面方向においてあちこちに散らばって存在する。Ti酸化物13は、例えばTiO
2(酸化チタン)であってもよい。Ti酸化物13は、後述の第1面11の凹部11Dに位置していてもよい。
【0012】
絶縁基板10は、第1面11に微細な複数の凹部11Dを有する。凹部11Dは、例えば開口部の最大幅が1μm~20μmであってもよい。第1面11には、面積比10%~60%の割合で複数の凹部11Dを有していてもよい。凹部11Dは、第1面11の全体に形成されているが、Ni膜30が接触する部位にのみ形成されていてもよい。以下、凹部11Dが第1面11上においてTi酸化物13が点在する箇所として説明する。
【0013】
複数の凹部11Dには、個々の凹部11Dの平面形状を粒状と見なしたときに、2つ以上の凹部が重なった形状を有する複合凹部11DW(
図1Cを参照)が含まれる。
【0014】
配線導体20は、Cuを(銅)主成分とする導体で、絶縁基板10上に、Ti酸化物13の層を介して形成されている。後述するシンター工程によって、Ti酸化物13は凹部11D内に集まり、絶縁基板10と配線導体20と界面は、Ti酸化物13の層が残っている部分と、Ti酸化物13の層が消失した部分とを含んでいてもよい。配線導体20下の凹部11DにTi酸化物13が集まった部分には、Ti酸化物13以外の原子が相互拡散された中間層16a(
図1A)が形成されている。さらに、Ni膜30が接する凹部11D内において同様の中間層16b(
図1A)が残存していてもよい。
【0015】
Ni膜30は、Niを主成分とする膜であり、配線導体20の上面21から側面22を介して絶縁基板10の第1面11の一部まで覆う。Ni膜30は、絶縁基板10の第1面11に近い裾部において、配線導体20とは反対側へ突出した突出部31を有する。さらに、突出部31の外縁は、絶縁基板10の第1面11に垂直な方向から見て、複数の山h1~h4と複数の谷c1~c3とを有する(
図1B)。
【0016】
Ni膜30は、絶縁基板10の第1面11において複数の凹部11DのいずれかとTi酸化物13を介して接触している。以下、Ti酸化物13を介したNi膜30と凹部11Dとの接触を、単に、Ni膜30と凹部11Dとの接触とも呼ぶ。以下では、複数の凹部11DのうちNi膜30が接触しているものについて、接触凹部11Daとも記す。複数の接触凹部11Daには、複合凹部11DWが含まれていてもよい。
【0017】
複数の接触凹部11Daは、
図1Cに示すように、配線導体20の側面22(具体的には側面22の下辺22e)に沿って並んでいる。さらに、
図2に示すように、絶縁基板10に接触しているNi膜30の突出部31は、配線導体20の全周に渡って存在し、接触凹部11Daは全周に渡って
図1Cのように突出部31の下方に存在する。したがって、複数の接触凹部11Daは、配線導体20の周囲を囲み、配線導体20の周囲の少なくとも四方に存在する。複数の接触凹部11Daには、一部がNi膜30に覆われずに露出しているものと、露出なく全部がNi膜30に覆われているものとが存在する。接触凹部11Daの全部がNi膜30に覆われているということは
、突出部31がこの接触凹部11Daを超える位置まで突出していることを意味する。
【0018】
配線基板1は、第1面11と配線導体20の側面22とに垂直な、いずれか1つの断面において、Ni膜30下に2つ以上の接触凹部11Daが存在する箇所を含んでいてもよい。Ni膜30の突出部31があることで、Ni膜30と絶縁基板10との接触面積が増加し、より多くの凹部11Dと接触することが可能となる。
【0019】
図3Aは、配線導体と絶縁基板との間の中間層における構成元素の濃度分布を示す図である。
図3Bは、Ni膜下の中間層における構成元素の濃度分布を示す図である。以下に示す中間層16a、16bの構成元素及び濃度分布は、電子エネルギー損失分光法(TEM-EELS:Electron Energy-Loss Spectroscopy)の測定結果を示す。濃度はat%(アトミックパーセント)により表される。
【0020】
配線導体20と凹部11Dとの界面に存在する中間層16aは、20nm~80nm等の厚みを有し、
図3Aに示すように、Al(アルミニウム)、N(窒素)、Cu(銅)、Ti(チタン)、O(酸素)を含む。さらに、中間層16aは、Al、N、Cuの濃度が徐々に変化する濃度勾配を有する。Al、Nの濃度勾配は、配線導体
20に近いほど濃度が低い勾配であり、Cuの濃度勾配は、配線導体20に近いほど濃度が高い勾配である。これらの濃度勾配は、中間層16aの配線導体20側から絶縁基板10側にかけて存在してもよい。
【0021】
Ni膜30と接触凹部11Daとの界面に存在する中間層16bは、20nm~80nm等の厚みを有し、
図3Bに示すように、Al、N、Cu、Ti、Oを含み、加えて、Al、N、Cuの濃度が徐々に変化する濃度勾配を有する。Al、Nの濃度勾配は、Ni膜30に近いほど濃度が低い勾配であり、Cuの濃度勾配は、Ni膜30に近いほど濃度が高い勾配である。これらの濃度勾配は、中間層16bのNi膜30側から絶縁基板10側にかけて存在してもよい。
【0022】
中間層16a、16bは、10at%以下のC(炭素)を含んでもよい。中間層16a、16bのCの濃度(10at%以下)は、配線導体20におけるCの濃度とほぼ同じであってもよい。
【0023】
図4A~
図4Cは、実施形態の配線基板における配線導体の下端部の電子顕微鏡画像をそれぞれ示す。
図4A~
図4Cに示すように、実際には、配線導体20の下端角部E1~E3には、内方に引っ込んだ形状(アンダーカット)が生じるが、Ni膜30は、配線導体20の下端角部E1~E3まで、配線導体20の側面に沿って延在する。さらに、Ni膜30の一部が、配線導体20の下端角部E1~E3から絶縁基板10の第1面11に沿って配線導体20とは逆方に突出するように形成され、この部分が突出部31を構成している。突出部31を含めてNi膜30と絶縁基板10との境界には、接触凹部11Daが含まれる。接触凹部11Da内の界面をエネルギー分散型X線分光法(EDS:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)又は電子エネルギー損失分光法により測定すると、Ti及びOが観測される。
【0024】
<製造方法>
図5は、実施形態の配線基板の製造方法を示す説明図である。
【0025】
本実施形態の配線基板1の製造方法は、時系列順に、前処理工程J1、Ti成膜工程J2、無電解めっき及びシンター工程J3、レジスト加工工程J4、電解めっき工程J5、レジスト除去及びエッチング工程J6及びめっき工程J7を含む。
【0026】
前処理工程J1では、焼結前のセラミックスであるセラミックグリーンシート70が、打ち抜き加工又は金型加工などにより基板形状に成形される。セラミックグリーンシート70には、基板内部に導体を通すためのビアvが設けられてもよい。セラミックグリーンシート70が焼結されることで絶縁基板10が構成される。前処理工程J1では、焼結前又は焼結後のセラミックグリーンシート70に、薬剤又は反応性イオンを用いた異方性エッチングを行ってもよく、上記の異方性エッチングにより、絶縁基板10の第1面11上及び第2面12上の凹部11Dのサイズ及び密度を制御できる。
【0027】
Ti成膜工程J2は、焼結前又は焼結後のセラミックグリーンシート70に有機Ti液を塗布し、焼結する工程である。焼結は、例えば400℃以上、30分以上の条件で実行されてもよい。焼結により、有機Ti液71は、固化された酸化チタン層71Aへと変化する。酸化チタン層71Aの焼結と、セラミックグリーンシート70との焼結とを、同時並行して行ってもよい。
【0028】
無電解めっき及びシンター工程J3では、酸化チタン層71Aを有する絶縁基板10に無電解Cuめっきを施した後、界面の元素を拡散させるシンター処理が行われる。シンター処理の条件は、不活性ガスの雰囲気中、300℃以上、30分以上としてもよい。無電解CuめっきによりCuめっき層74が形成される。シンター処理により、上述した中間層16a、16bが形成される。シンター処理を経た酸化チタン層71A及びCuめっき層74がシード層として機能する。このようにシード層がウエットプロセスにより形成されるため、製造コストの低減が図られる。
【0029】
レジスト加工工程J4では、例えばDFR(Dry Film Resist)81によりCuめっき層74上に配線導体20(
図2を参照)用のパターンが形成される。電解Cuめっき工程J5では、DFR81のパターンに従って、Cuめっき層74上に電解Cuめっきが施され、所定の厚みのCu導体75が形成される。絶縁基板10にビアvが形成されている場合には、電解Cuめっき工程J5で、ビアv内にCu導体75が充填される。
【0030】
レジスト除去及びエッチング工程J6では、先ず、DFR81が除去される。DFRが除去されると、シード層(Cuめっき層74及び酸化チタン層71A)が露出する。その後、薬剤を用いたエッチングにより、露出したシード層をエッチングする。このとき、酸化チタン層71Aの成分が、絶縁基板10の凹部11Dに残る程度に、エッチング量が制御される。工程J6、J7において、
図5では単純化して描かれているが、酸化チタン層71Aは層状でなく、凹部11D内に点在する形態となる。
【0031】
めっき工程J7では、Cu導体75が形成された面に、Niの無電解めっきが行われる。このとき、Ni膜30は、Cu導体75、並びに、Cu導体75の下方のCuめっき層74の残留体74aの周囲を覆う。さらに、絶縁基板10上の複数の凹部11D内に酸化チタン層71Aの成分が残っていることで、Ni膜30は、Cu導体75及び残留体74aの近傍の凹部11Dに接触するように、絶縁基板10上で僅かに延伸して形成される。めっき工程J7においては、Ni膜30の形成に加えて、Ni膜30上に重ねて他の金属(例えばPd(パラジウム)及びAu(金))のめっきが行われてもよい。
【0032】
以上のような製造方法により、本実施形態に係る配線基板1を製造することができる。
【0033】
<電子装置及び電子モジュール>
図6は、本開示の実施形態に係る電子装置及び電子モジュールを示す断面図である。
【0034】
本実施形態に係る電子装置60は、配線基板1に電子部品50が実装されて構成される。電子部品50は、配線導体20及びNi膜30上に接合材を介して接合されてもよい。電子部品50の電極と、配線導体20及びNi膜30とが、ボンディングワイヤーを介して接続されてもよい。Ni膜30上には、Pd膜及びAu膜などの他の金属膜が形成されてもよい。電子装置60は、さらに、配線基板1と電子部品50とを収容するパッケージを有する構成であってもよい。
【0035】
電子部品50としては、LD(Laser Diode)、PD(Photo Diode)、LED(Light Emitting Diode)等の光素子、CCD(Charge Coupled Device)型、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の撮像素子、水晶振動子等の圧電振動子、弾性表面波素子、半導体集積回路素子(IC:Integrated Circuit)等の半導体素子、電気容量素子、インダクタ素子又は抵抗器等の種々の電子部品を適用できる。
【0036】
本実施形態に係る電子モジュール100は、モジュール用基板110に電子装置60を実装して構成される。モジュール用基板110には、電子装置60に加えて、他の電子装置、電子素子及び電気素子などが実装されていてもよい。モジュール用基板110には電極パッド111が設けられ、電子装置60は、電極パッド111に半田等の接合材113を介して接合されてもよい。なお、電子装置60の接合材113が接合される部分には、配線導体20及びNi膜30が設けられていてもよい。また、電子装置60がパッケージを有する場合、モジュール用基板110の電極パッド111にはパッケージの配線導体が接合されてもよい。
【0037】
以上のように、本実施形態の配線基板1によれば、Cuを構成元素とする配線導体20の上面及び側面をNi膜30が覆う。さらに、Ni膜30の裾部分が、絶縁基板10上に達し、Ti酸化物13と接触している。したがって、Ni膜30の裾部分が、Ti酸化物13を介して絶縁基板10と高い強度で密着され、Ni膜30が裾部分から剥離してしまうことを抑制できる。よって、Ni膜30の剥離により配線導体20の一部が露出し、露出した部分に腐食が生じたり、あるいは、露出した部分から絶縁基板10上へのイオンマイグレーションが生じたりするといった不都合を抑制できる。
【0038】
さらに、本実施形態の配線基板1によれば、Ni膜30は、絶縁基板10の第1面11に沿って配線導体20とは反対側へ突出した突出部31を有する。したがって、突出部31により、Ni膜30と絶縁基板10との接触面積が増加し、Ni膜30が接触する接触凹部11Daの数が増す。よって、Ni膜30の裾部分と絶縁基板10との密着強度をより高めることができ、Ni膜30の剥離をより抑制することができる。
【0039】
さらに、突出部31は、少なくともいずれかの接触凹部11Daに対して、接触凹部11Daを超える範囲まで突出している。したがって、少なくともこの部分において、Ni膜30と接触凹部11DaとのTi酸化物13を介した接触が得られ、Ni膜30と絶縁基板10との高い密接強度が得られる。
【0040】
さらに、本実施形態の配線基板1によれば、突出部31の突出側の縁が、絶縁基板10の第1面11に垂直な方向から見て、複数の山h1~h4と谷c1~c3とを含んだ形状を有する(
図1B)。したがって、複数の凹部11Dが無作為に配置される絶縁基板10上において、突出部31の山h1~h4の部分で多くの凹部11Dとの接触を行って密着強度を高めることができる。一方、凹部11Dの数が少ない箇所では、谷c1~c3が配置されることで、密着強度の低い部分を短くできる。凹部11Dの配置が無作為である場合、多くの範囲でこのような突出部31の山谷の配置が実現される。これらの作用によって、突出部31の絶縁基板10への密着強度をより高め、かつ、より剥離しにくい特性を得ることができる。
【0041】
さらに、本実施形態の配線基板1によれば、Ni膜30と接触する接触凹部11Daは、配線導体20の縁に沿って並んで存在する。加えて、Ni膜30と接触する接触凹部11Daは、配線導体20の周囲を囲んで存在する。このような構成により、配線導体20の周囲の多くの箇所においてNi膜30の裾部の剥離を抑制できる。
【0042】
さらに、本実施形態の配線基板1によれば、絶縁基板10の第1面11と配線導体20の側面22とに垂直ないずれかの縦断面において、Ni膜30と2つ以上の凹部11Dとが接触している。2つ以上の凹部11Dが接触することで、Ni膜30と絶縁基板10との高い密着強度が得られ、Ni膜30が裾部分から剥離することをより抑制できる。
【0043】
さらに、本実施形態の配線基板1によれば、Ni膜30と接触している複数の凹部11Dには、個々の凹部11Dを粒状と見なしたときに、複数の凹部11Dが重なった形状の複合凹部11DWが含まれる。複合凹部11DWにより、Ni膜30とTi酸化物13を介した接触面積が増大し、したがって、Ni膜30と絶縁基板10との高い密着強度が得られ、Ni膜30が裾部分から剥離することをより抑制できる。
【0044】
さらに、本実施形態の配線基板1によれば、絶縁基板10と配線導体20との間の界面に、Cu、Al、Nの濃度勾配を有する中間層16aが含まれる。中間層16aがあることで、熱膨張に起因する界面の応力を緩やかになり、熱膨張に起因する絶縁基板10と配線導体20との界面破壊を抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施形態の配線基板1によれば、Ni膜30と凹部11Dと界面に、Cu、Al、Nの濃度勾配を有する中間層16bが含まれる。CuとNiとの線膨張係数は近いため、中間層16bがあることで、界面における熱膨張に起因する応力が緩やかになる。したがって、熱膨張に起因する絶縁基板10とNi膜30との界面破壊を抑制することができる。したがって、Ni膜30の裾部分の剥離をより抑制することができる。
【0046】
本実施形態の電子装置60及び電子モジュール100によれば、Ni膜30の剥離が抑制された配線基板1が搭載されることで、信頼性の向上を図ることができる。
【0047】
以上、本開示の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られるものでない。例えば、上記実施形態では、絶縁基板10上の凹部11Dのサイズ及び密度について一例を示したが、これらのサイズ及び密度に制限されるものではない。また、上記実施形態では、Ni膜30が配線導体20の上面と側面との全域を覆う構成を示したが、一部が覆われていなくてもよい。また、上記実施形態では、Ni膜30が突出部31を有する構成を示したが、突出部31に相当する形状が無くてもよい。また、上記実施形態において、配線基板1の製造方法について一例を示したが、別の製造方法によって配線基板1が製造されてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示は、配線基板、電子装置及び電子モジュールに利用可能である。