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特許7171908エアロゾルディスペンサのためのテンショニング装置およびエアロゾルディスペンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】エアロゾルディスペンサのためのテンショニング装置およびエアロゾルディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   B05B 9/04 20060101AFI20221108BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20221108BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20221108BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20221108BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B05B9/04
B05B11/00 101D
B05B11/00 101E
B05B11/00 101G
A61M11/00 D
B65D83/00 G
F04B9/14 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021517458
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019074313
(87)【国際公開番号】W WO2020064341
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】18197289.4
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・セール
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-512649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0209238(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00-3/18
7/00-9/08
B65D83/00
83/08-83/76
F04B9/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾルディスペンサ(10)のためのテンショニング装置(12)であって、
- 液体を、容器(54)から投与チャンバ(66)へと搬送するための搬送管(52)と、
- 初期位置(30)からテンショニング位置(86)への前記搬送管(52)の実質的に軸方向のテンショニング動作(32)からの機械的エネルギーを蓄積するように配置された弾性部材(84)と、
- 回転可能な部材(16)と、
- 前記回転可能な部材(16)のテンショニング回転(18)を、前記搬送管(52)の前記テンショニング動作(32)へと伝達するように構成された伝達機構(40)と、を備え、
前記伝達機構(40)は、カム輪郭(42)、および前記カム輪郭(42)に追従するように配置されたカム従動子(44)を備え、
前記カム輪郭(42)は、少なくとも1つのプライミング構造(46)を備え、
前記テンショニング装置(12)は、前記回転可能な部材(16)の前記テンショニング回転(18)を利用した前記搬送管(52)の前記テンショニング動作(32)中に、前記カム従動子(44)が各プライミング構造(46)を通るとき、前記搬送管(52)が前記初期位置(30)に向けて一時的なプライミング動作(34)を行うように構成され
前記少なくとも1つのプライミング構造(46)は、前記初期位置(30)に対応する位置から、前記テンショニング位置(86)に対応する位置までの前記カム輪郭(42)に沿ったカム輪郭長さ(92)にわたって実質的に均等に配分された複数のプライミング構造(46)により構成され、
前記複数のプライミング構造(46)が、互いに離間している、テンショニング装置(12)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプライミング構造(46)の1つは、前記初期位置(30)に対応する位置から、前記カム輪郭(42)に沿って、カム輪郭長さ(92)の10%未満など、5%未満など、20%未満に位置する、請求項1に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプライミング構造(46)は、前記回転可能な部材(16)が、前記テンショニング回転(18)とは反対の方向に回転するのを阻止するように配置される、請求項1または2に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項4】
前記搬送管(52)を保持する可動の保持部材(48)をさらに備え、前記カム従動子(44)は、前記保持部材(48)に対して固定される、請求項1からのいずれか一項に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項5】
前記カム従動子(44)は、前記保持部材(48)と一体化される、請求項に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項6】
前記カム輪郭(42)は、螺旋面である、請求項1からのいずれか一項に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプライミング構造(46)のそれぞれは、突起部により構成される、請求項1からのいずれか一項に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプライミング構造(46)のそれぞれは、くさび形をしている、請求項に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプライミング構造(46)は、前記カム輪郭(42)の隣接面(96)に対して、5°から15°など、5°から30°の角度のプライミング構造面(94)を備える、請求項に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプライミング構造(46)のそれぞれは、凹部により構成される、請求項1からのいずれか一項に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項11】
静止部分(82)をさらに備え、前記カム輪郭(42)は、前記静止部分(82)上に設けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項12】
前記カム輪郭(42)は、前記静止部分(82)と一体化される、請求項11に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項13】
前記搬送管(52)の各プライミング動作(34)の距離の合計は、前記初期位置(30)から、前記テンショニング位置(86)までの前記搬送管(52)のテンショニング距離(98)の15~35%など、15~25%など、約20%など、10~50%である、請求項1から12のいずれか一項に記載のテンショニング装置(12)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のテンショニング装置(12)を備えるエアロゾルディスペンサ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、エアロゾルディスペンサのためのテンショニング装置に関する。詳細には、エアロゾルディスペンサのためのテンショニング装置、およびテンショニング装置を備えるエアロゾルディスペンサが提供される。
【背景技術】
【0002】
エアロゾルディスペンサは、エアロゾル、すなわち液体粒子のミストを生成するために使用される。いくつかのエアロゾルディスペンサは、液体を推進するためにガスを使用するが、液体を吐出するために、推進ガスを用いない機械的な解決策を使用するエアロゾルディスペンサもある。
【0003】
エアロゾルディスペンサの1つのタイプは、ベース、ピストン、搬送管、ばね、投与チャンバ、スプレーノズル、および、例えば薬物を含む容器を備える。ユーザが、ベースを、例えば180°回転させたとき、ピストンおよび搬送管は、移動してばねを圧縮する。搬送管が移動すると、投与チャンバが拡大し、その中に加圧状態が確立される。加圧状態は、搬送管により、容器内の液体を投与チャンバの中に吸引させる。ユーザは次いで、ボタンを押し、搬送管を保持するピストンを解放して、用量を、投与チャンバからスプレーノズルを通して、エアロゾルとして吐出することができる。
【0004】
特許文献1は、流体を加圧するための小型化したデバイスを開示する。デバイスは、流路および弁部材を提供する中空のピストンを含む。弁部材は、弁軸が、ピストン軸に平行な状態のままで軸方向運動を行うように構成される。弁部材は、中空のピストンの一端に配置される。弁部材は、中空のピストン内に部分的に、または完全に配設され得る。デバイスは特に、推進ガスを使用することなく、液体薬剤の吸入可能なエアロゾルを生成するために機械的に動作される噴霧器で使用するのに適合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5964416A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸入器デバイスなどの従来技術のエアロゾルディスペンサに伴う1つの問題は、細菌増殖である。細菌を除去するために、細菌を様々な空洞部から洗い流すように、専用のプライミングショットを、エアロゾルディスペンサを用いて行うことができる。すなわち、ユーザは、ベースを回してばねに完全にテンションをかけ、空気中へのプライミングショットを行うことができる。しかし、様々な理由で(細菌の危険に気付かない、不注意など)、ユーザは、プライミングショットをスキップするおそれがある。その結果、細菌増殖を伴う問題が残る。
【0007】
従来技術のエアロゾルディスペンサに伴うさらなる問題は、液体が乾いたときである。エアロゾルディスペンサが、例えば1週間など、しばらくの間動作していない場合、性能は悪化するおそれがある。例えば、吐出されるエアロゾル用量が、液体の蒸発に起因して少なすぎるおそれがあり、あるいはエアロゾルディスペンサの前回の使用からの残留物を洗い流す必要があり得る。この問題はまた、上記で述べた専用のプライミングショットを用いて解決することができる。しかし、この場合もまた、ユーザは、プライミングショットをスキップしてしまうことが多い。
【0008】
ユーザが、エアロゾルディスペンサを使用する前に毎回、プライミングショットを行う場合であっても、これは、ユーザにとって負担になり、かつ時間のかかることである。少なくともこの理由で、従来技術のエアロゾルディスペンサに伴うさらなる他の問題は、有用性を低下させる。
【0009】
従来技術のエアロゾルディスペンサに伴うさらに他の問題は、プライミングショットが、液体を多く使用しすぎるおそれのあることである。エアロゾルディスペンサで使用される医療用の液体は低価格のものもあるが、そうではないものもある。
【0010】
従来技術のエアロゾルディスペンサに伴う他の問題は、患者が、ベースを、回転させている間につかみ損ねた場合、動力ばねは、その機構を最初まで(すなわち、初期位置に)巻き戻して、用量を空中に吐出することになる。
【0011】
従来技術のエアロゾルディスペンサに伴うさらなる他の問題は、ユーザは、テンショニング装置がテンションのかかった位置に設定されるまで、例えば、180°などの比較的大きな角度距離にわたり、連続してベースを回転させる必要のあることである。
【0012】
従来技術のディスペンサに伴うさらなる他の問題は、ユーザは、テンショニング装置をテンションのかかった位置に設定するために、比較的高い力を用いてベースを回転させる必要のあることである。
【0013】
本開示の一目的は、エアロゾルディスペンサの向上させたその衛生状態に寄与する、エアロゾルディスペンサのための装置を提供することである。
【0014】
本開示の他の目的は、エアロゾルディスペンサの向上させた性能に寄与する、エアロゾルディスペンサのための装置を提供することである。
【0015】
本開示のさらに他の目的は、エアロゾルディスペンサの有用性を向上させる、エアロゾルディスペンサのためのテンショニング装置を提供することである。
【0016】
本開示のさらに他の目的は、いくつかの、またはすべての前述の目的を、組み合わせて解決する、エアロゾルディスペンサのためのテンショニング装置を提供することである。
【0017】
本開示のさらに他の目的は、前述の目的のうちの1つ、いくつか、またはすべてのものを解決するエアロゾルディスペンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一態様によれば、エアロゾルディスペンサのためのテンショニング装置が提供され、テンショニング装置は、液体を、容器から投与チャンバへと搬送するための搬送管と、初期位置からテンショニング位置への搬送管の実質的に軸方向の、または軸方向のテンショニング動作からの機械的エネルギーを蓄積するように配置された弾性部材と、回転可能な部材と、回転可能な部材のテンショニング回転を、搬送管のテンショニング動作へと伝達するように構成された伝達機構と、を備え、ここで、伝達機構は、カム輪郭、およびカム輪郭に追従するように配置されたカム従動子を備え、カム輪郭は、少なくとも1つのプライミング構造を備え、テンショニング装置は、回転可能な部材のテンショニング回転による搬送管のテンショニング動作中に、カム従動子が各プライミング構造を通るとき、搬送管が初期位置に向けて一時的なプライミング動作を行うように構成される。
【0019】
搬送管がテンショニング動作を行うと、加圧状態が投与チャンバに生成される。この加圧状態は、液体を容器から吸引させ、搬送管により投与チャンバへと送達させる。加えて、カム従動子が、カム輪郭上の少なくとも1つのプライミング構造の上を移動したとき、搬送管は、付加的にわずかな後方または遠位動作、および付加的にわずかな前方または近位動作を行う。わずかな近位動作は、テンショニング動作のテンショニング方向とは反対の解放方向である。搬送管のわずかな前方動作は、エアロゾルディスペンサにおける乾燥空洞部(例えば、エアロゾルディスペンサのスプレーノズルユニットなど)を満たしている液体のわずかな量を吐出させて、細菌もしくは残留物などの異物を押し出す。
【0020】
それにより、回転可能な部材が回転されたとき、搬送管により行われる少なくとも1つのプライミング動作に起因して、搬送管が容器と液体連通状態にあるとき、少なくとも1つのプライミング機能が実施される。本開示によるテンショニング装置は、したがって、プライミング機構と呼ぶことができる。したがって、テンショニング動作が行われる(すなわち、搬送管が初期位置からテンショニング位置へと移動するように回転可能部材が回転する)と毎回、少なくとも1つのプライミング機能が実施される。したがって、専用のプライミングショットは、回避することができる。
【0021】
本開示の全体を通して、テンショニング装置は、代替的に、巻取り機構と呼ぶこともできる。少なくとも1つのプライミング構造は、例えば、カム輪郭と一体に形成され得る突き出たプライミング構造など、カム輪郭と一体化することができ、また凹んだプライミング構造を、カム輪郭における切欠きにより形成することができる。
【0022】
本開示の全体を通して、回転可能な部材は、エアロゾルディスペンサの回転可能なベースによって構成され得る。本開示によるテンショニング装置は、カム輪郭と、カム輪郭に関連付けられたカム従動子と、の1つまたはいくつかの対を備えることができる。代替的に、テンショニング装置は、1つのカム輪郭だけと、カム輪郭に追従するためのいくつかのカム従動子を備えることができる。さらなる代替形態として、テンショニング装置は、いくつかのカム輪郭と、カム輪郭に追従するための1つだけのカム従動子とを備えることができる。少なくとも1つのカム輪郭は、1つまたは複数の傾斜により構成され得る。
【0023】
少なくとも1つのプライミング構造の1つは、初期位置に対応する位置から、カム輪郭に沿って、カム輪郭長さの10%未満など、5%未満など、20%未満に位置することができる。代替的には、または加えて、少なくとも1つのプライミング構造は、初期位置に対応する位置から、テンショニング位置に対応する位置まで、カム輪郭に沿ったカム輪郭長さにわたって実質的に均等に配分された複数のプライミング構造により構成することができる。この場合、テンショニング装置は、回転可能な部材の単一のテンショニング回転中に、複数のわずかなプライミング用量を吐出することができる。
【0024】
少なくとも1つのプライミング構造は、回転可能な部材が、テンショニング回転とは反対の方向に回転しないように配置することができる。言い換えると、例えば、ユーザが回転可能な部材を手から放した場合など、回転可能な部材を巻き戻すこと、すなわち、テンショニング回転とは反対の方向に回転可能な部材を回転させることは阻止される。ユーザは、それにより、断続的に、すなわち、回転可能な部材の複数の一連のテンショニング回転を用いて、テンショニング装置にテンションを加えることができる。こうすることは、例えば、年配の、かつ/または弱ったユーザを助けることになる。
【0025】
少なくとも1つのプライミング構造が、回転可能な部材を、テンショニング回転とは反対の方向に回転しないように配置されたとき、テンショニング装置は、プライミングおよび巻戻し阻止機構、または巻戻しを阻止するプライミング巻取り機構と呼ぶことができる。したがって、本開示による少なくとも1つのプライミング構造は、2つの機能を組み合わせて、すなわち、プライミング機能と巻戻し阻止機能を生成することができる。
【0026】
さらに、少なくとも1つのプライミング構造が、回転可能な部材を、テンショニング回転とは反対方向に回転しないように配置される変形形態は、ラチェット機構により構成することができる。この場合、少なくとも1つのプライミング構造は、ラチェット機構の1つまたは複数の歯を構成することができ、カム従動子は、ラチェット機構の歯止めを構成することができる。したがって、本開示は、テンショニング装置の伝達機構に一体化されたラチェット機構を提供する。
【0027】
テンショニング装置は、搬送管を保持する可動の保持部材をさらに備えることができ、カム従動子は、保持部材に対して固定され得る。本開示の全体を通して、保持部材は、ピストンと呼ぶことができる。
【0028】
カム従動子は、保持部材と一体化することができる。カム従動子および保持部材は、例えば、射出成形することができる。
【0029】
カム輪郭は、螺旋面とすることができる。螺旋面は、例えば、エアロゾルディスペンサの長手方向軸回りで140°から175°延びることができる。
【0030】
少なくとも1つのプライミング構造のそれぞれは、突起部により構成され得る。各プライミング構造は、カム輪郭の隣接面から0.2~0.6mmなど、約0.4mmなど、0.1~0.8mm突き出すことができる。
【0031】
少なくとも1つのプライミング構造のそれぞれは、くさび形のものとすることができる。代替的には、少なくとも1つのプライミング構造のそれぞれは、突き出たノブにより構成され得る。カム輪郭が複数のプライミング構造を備える場合、プライミング構造は、例えば、くさびとノブの組合せを含めて異なることができる。
【0032】
少なくとも1つのプライミング構造は、カム輪郭の隣接面に対して、5°から15°など、5°から30°の角度でプライミング構造面を備えることができる。少なくとも1つのプライミング構造は、例えば、エアロゾルディスペンサの横方向に、カム輪郭の幅にわたって部分的に、または完全に延びることができる。
【0033】
少なくとも1つのプライミング構造のそれぞれは、凹部により構成され得る。この場合、各凹部は、カム輪郭の隣接面から0.2~0.6mmなど、約0.4mmなど、0.1mm~0.8mmの深さを有することができる。
【0034】
本開示によるテンショニング装置は、静止部分をさらに備えることができる。この場合、カム輪郭は、静止部分に設けることができる。
【0035】
カム輪郭は、静止部分と一体化することができる。カム輪郭は、例えば、回転可能な部材に面する静止部分の遠位端に設けることができる。
【0036】
搬送管の各プライミング動作の距離の合計は、初期位置から、テンショニング位置までの搬送管のテンショニング距離の15~35%など、15~25%など、20%など、10~50%とすることができる。テンショニング距離は、例えば、8~10mmとすることができる。本開示の全体を通して、各プライミング動作の距離の合計は、全体のプライミング距離と呼ぶことができる。
【0037】
さらなる態様によれば、本開示によるテンショニング装置を備えるエアロゾルディスペンサが提供される。エアロゾルディスペンサは、例えば、吸入器デバイスにより構成され得る。
【0038】
エアロゾルディスペンサは、投与チャンバを備えることができる。投与チャンバの容積は、搬送管の位置により画定され得る。投与チャンバの容積は、搬送管が、テンショニング動作を行ったとき、拡大することができ、また搬送管がプライミング動作を行ったとき、圧縮され得る。
【0039】
本開示のさらなる詳細、利点、および態様は、図面と併せて以下の実施形態を読めば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】テンショニング装置を備えるエアロゾルディスペンサの側面図である。
図2】エアロゾルディスペンサの上面図である。
図3】エアロゾルディスペンサの部分的な切欠き斜視図である。
図4図2の線A-Aに沿ったエアロゾルディスペンサの横断面図である。
図5】エアロゾルディスペンサのハウジングの部分的な斜視図である。
図6図5のセクションBの拡大図である。
図7】エアロゾルディスペンサの搬送管の例示的な動作の図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下では、エアロゾルディスペンサのためのテンショニング装置と、テンショニング装置を備えるエアロゾルディスペンサとが述べられる。同じ参照数字は、同じ、または同様の構造的特徴を示すために使用される。
【0042】
図1は、テンショニング装置12を備えるエアロゾルディスペンサ10の一例の側面図である。エアロゾルディスペンサ10は、ハウジング14と、テンショニング回転18を行うためにハウジング14に対して回転できる回転可能な部材16と、を備える。図1では、回転可能な部材16は、エアロゾルディスペンサ10の外側ベースにより構成される。しかし、回転可能な部材16は、代替的に、例えばエアロゾルディスペンサ10の中間的な外側部分により構成することもできる。
【0043】
図1のエアロゾルディスペンサ10は、ヒンジ22を介してハウジング14に接続された開くことのできる蓋20と、用量ショットをトリガするためのボタン24とをさらに備える。この例のエアロゾルディスペンサ10は、エアロゾルディスペンサ10に残されている用量の数を示す用量インジケータ26と、エアロゾルディスペンサ10の搭載状態を示す状態インジケータ28(例えば、容器が未搭載、または搭載済みなど)と、をさらに備える。
【0044】
図1では、エアロゾルディスペンサ10内の針または搬送管(図示略)は、初期位置30にある。図1は、搬送管に対する軸方向のテンショニング動作32および軸方向のプライミング動作34をさらに示している。テンショニング動作32は、エアロゾルディスペンサ10の長手方向軸38に沿ったテンショニング方向36において行われる。テンショニング方向36は遠位方向に、すなわち、回転可能な部材16の方向にあるということができる。図1は、参考のために直交座標系をさらに示す。エアロゾルディスペンサ10は、しかし、空間において任意に方向付けることができる。
【0045】
図2は、エアロゾルディスペンサ10の上面図を示す。図1および図2で分かるように、この例のエアロゾルディスペンサ10は、概して円筒形を有する。
【0046】
図3は、エアロゾルディスペンサ10の部分的な切欠き斜視図を示す。図3の切欠き断面において、テンショニング装置12は、伝達機構40を備えることが分かる。伝達機構40は、回転可能な部材16のテンショニング回転18を、エアロゾルディスペンサ10の長手方向軸38に沿って、搬送管(図示略)のテンショニング動作32へと伝達するように構成される。
【0047】
この例のテンショニング装置12は、2つのカム輪郭42(図3において、1つだけが見える)と、2つのカム従動子44(図3において、1つだけが見える)と、を備え、それぞれが、各カム輪郭42に追従するように配置される。この例の各カム輪郭42は、エアロゾルディスペンサ10の長手方向軸38と同心の螺旋面である。テンショニング装置12は、代替的に、カム輪郭42とカム従動子44の1対のものだけを、または2対を超えるものを備えることができる。さらなる代替形態として、テンショニング装置12は、1つだけのカム輪郭42と、2つ以上のカム従動子44とを備えることもできる。他の代替形態として、テンショニング装置12は、2つ以上のカム輪郭42と、1つだけのカム従動子44とを備えることができる。
【0048】
複数のプライミング構造46が、各カム輪郭42上に設けられる。各プライミング構造46は、回転可能な部材16が、テンショニング回転18とは反対の方向に回転するのを阻止するように配置される。これは、例えば患者が、テンショニング回転18を行っているとき、回転可能な部材16から手を放した場合に有用である。図3の例では、各プライミング構造46は、突起部により構成される。
【0049】
図3の切欠き断面において、テンショニング装置12のピストンすなわち保持部材48をさらに見ることができる。保持部材48は、搬送管(図示略)を保持する。図3の例では、2つのカム従動子44は、保持部材48に対して固定される。より具体的には、各カム従動子44は、保持部材48と一体に形成され、カム輪郭42の方向に、すなわち近位方向に、長手方向38と平行に突き出ている。
【0050】
さらに図3の切欠き断面では、ここでは作動器リングとして実施される、エアロゾルディスペンサ10の作動器部材50を見ることができる。作動器部材50は、作動器部材50が保持部材48および搬送管52が解放されないように妨げるブロック位置と、非ブロック位置と、の間で移動可能である。図3では、作動器部材50は、非ブロック位置にある。作動器部材50は、回転可能な部材16のテンショニング回転18により、非ブロック位置からブロック位置へと移動することができる。ボタン24は、作動器部材50に動作可能に結合される。ボタン24を押すことにより、作動器部材50は、ブロック位置から非ブロック位置へと移動することができる、すなわち、作動器部材50が解放されて、エアロゾルを吐出することができる。
【0051】
図4は、図2の線A-Aに沿ったエアロゾルディスペンサ10の横断面図を表す。図4では、テンショニング装置12の搬送管52を見ることができる。エアロゾルディスペンサ10は、エアロゾルとして投与される、薬物などの液体を含む容器54を搭載する。
【0052】
搬送管52は、容器54の閉鎖部56を穿孔しており、それにより、容器54の液体と連通されている。搬送管52は、搬送管52の近位端に、すなわち容器54に対して反対側の端部に、任意選択の搬送管逆止め弁58を備える。この例では、容器54の首部は、保持部材48のロック構造60により保持される。ロック構造60は、ここでは、回転可能な部材16に向けて保持部材48から突き出た複数の弾力のあるアームとして例示されている。容器54は、容器54の底部を閉じるストッパ62を備える。
【0053】
この例のエアロゾルディスペンサ10は、静止した、すなわち、ハウジング14に対して静止したポンプシリンダ64を備える。投与チャンバ66が、ポンプシリンダ64内に設けられる。搬送管52は、投与チャンバ66の容積を拡大および圧縮するように、前後に移動可能である。ここではXリングとして例示されている封止68が、搬送管52とポンプシリンダ64の間で封止のために設けられている。封止68は、代替的にはOリング、または当技術分野で知られた他のタイプの封止により構成することもできる。
【0054】
エアロゾルディスペンサ10は、投与チャンバ66の近位側にスプレーノズル71を有するスプレーノズルユニット70をさらに備える。スプレーノズルユニット70は、例えばスプレーノズル逆止め弁72、および薄膜もしくはフィルタ74を備えることができる。エアロゾルディスペンサ10は、蓋20を開くことによってユーザに露出されるマウスピース76をさらに備える。
【0055】
図4で見ることができるように、この例の伝達機構40は、内側スリーブ78をさらに備える。内側スリーブ78は、回転可能な部材16に固定的に接続される。内側スリーブ78および保持部材48は、回転可能に結合される。しかし、保持部材48は、内側スリーブ78および回転可能な部材16に対して軸方向に移動可能である。内側スリーブ78と保持部材48の間のこのタイプの結合は、例えば、長手方向軸38と平行なスロットに係合されたピンもしくはリブにより実現することができる。この例の回転可能な部材16は、容器54のストッパ62に接触するための近位方向に突き出たカラー80を備える。
【0056】
図4の例では、カム輪郭42は、ここでは、ハウジング14の中心部分により構成される静止部分82上に設けられる。カム輪郭42は、静止部分82と一体に形成され、遠位方向に、すなわち、回転可能な部材16に面している。
【0057】
カム輪郭42およびカム従動子44の構成は、代替的に反対にすることができる。すなわち、カム輪郭42が保持部材48上に設けられ、かつカム従動子44が、静止部分82上の設けられ得る。
【0058】
テンショニング装置12は、ここでは、容器54を囲む圧縮コイルばねにより構成される、弾性部材84をさらに備える。弾性部材84は、図3における初期位置30から、図4によるテンショニング位置86まで、保持部材48および搬送管52のテンショニング動作32からの機械的エネルギーを蓄積するように配置される。
【0059】
図4は、ハウジング14から遠位方向に突き出ているハウジング停止部88と、保持部材48から近位方向に突き出ている保持部材停止部90と、をさらに示す。弾性部材84の拡大は、保持部材停止部90が、ハウジング停止部88に接触したとき制限される。
【0060】
回転可能な部材16が、手動で回転されたとき、任意選択の内側スリーブ78は、回転可能な部材16と共に回転する。回転可能な部材16および内側スリーブ78のテンショニング回転18は、保持部材48の回転へと伝達される。保持部材48の回転は、カム従動子44を、関連するカム輪郭42に沿って移動させる。カム従動子44とカム輪郭42の間の協動に起因して、回転可能な部材16のテンショニング回転18は、搬送管52が初期位置30から図4によるテンショニング位置86に移動するまで、弾性部材84の力に抗する、遠位のテンショニング方向36への搬送管52および保持部材48のテンショニング動作32へと伝達される。
【0061】
図4では、作動器部材50はブロック位置にあり、保持部材48と搬送管52とをテンショニング位置86に保持する。この状態において、テンショニング装置12には、テンションが加えられている。作動器部材50のブロック位置において、弾性部材84からの力は、ハウジング14に対して保持部材48および作動器部材50を押す。作動器部材50は、それにより、保持部材48とハウジング14との間に締め付けられる。
【0062】
搬送管52が、テンショニング方向36に移動すると、投与チャンバ66の容積は拡大して、投与チャンバ66内に加圧状態が確立される。その結果、搬送管52により、容器54内の液体が投与チャンバ66の中に吸引される。保持部材48および搬送管52は、そのとき、作動器部材50によって、テンショニング位置86に保持されている。搬送管52が、テンショニング位置86にあるとき、投与チャンバ66の容積は、1回の用量に相当する。
【0063】
ユーザがボタン24を押したとき、作動器部材50は、作動器部材50がもはや保持部材48をブロックしないように、その非ブロック位置へと移動する。その結果、弾性部材84からの力全体が、保持部材48、搬送管52、および搬送管逆止め弁58を介して投与チャンバ66内の液体に作用する。弾性部材84における力は、例えば、5~50Nとすることができる。投与チャンバ66における高圧は、液体に圧力を加えてスプレーノズル逆止め弁72、およびスプレーノズルユニット70のフィルタ74を通す。液体は、それにより、エアロゾルとして吐出される。投与チャンバ66における圧力は、約15~75バールとすることができる。従来技術を考慮すると、これは、弾性部材84として、比較的弱いばねの使用を可能にする。
【0064】
図5は、エアロゾルディスペンサ10のハウジング14の部分的な斜視図を示す。図5では、カム輪郭42は、カム輪郭長さ92を備えることが分かる。この例のカム輪郭長さ92は、長手方向軸38回りの約150°の角度距離にわたって延びる。
【0065】
正面カム輪郭42の最も左の近位の位置は、搬送管52の初期位置30に対応する。正面カム輪郭42の最も右の遠位の位置は、搬送管52のテンショニング位置86に対応する。
【0066】
プライミング構造46は、初期位置30に対応する位置(この例では、最も左の近位位置)から、テンショニング位置86に対応する位置(この例では、最も右の遠位位置)まで、カム輪郭長さ92にわたって均等に配分されている。図5では、カム輪郭42は、6個のプライミング構造46を備える。第1のプライミング構造46、すなわち図5の正面カム輪郭42の最も左のプライミング構造46は、搬送管52の初期位置30に対応する位置(この例では、最も左の近位位置)から、カム輪郭長さ92の20%未満(約14%)に位置する。上記のことはまた、図5では十分に見ることのできない背部のカム輪郭42に対しても適用される。
【0067】
図6は、図5におけるセクションBの拡大図を表す。図6では、各プライミング構造46は、くさび形をしていることが分かる。より具体的には、各プライミング構造46は、カム輪郭42のその隣接面96に対して約10°の角度にあるプライミング構造面94を備える。
【0068】
回転可能な部材16が、手動で回転されて、テンショニング回転18を行い、またカム従動子44が、関連するカム輪郭42に沿って移動するとき、搬送管52は、概して、初期位置30からテンショニング位置86へとテンショニング方向36にテンショニング動作32を行う。しかし、カム従動子44が、関連するカム輪郭42上のプライミング構造46の上を移動するとき、搬送管52は、初期位置30に向けて、すなわちエアロゾルディスペンサ10の近位方向に、一時的なプライミング動作34を行う。各プライミング動作34は、テンショニング動作32よりも短い。搬送管52がプライミング動作34を行ったとき、投与チャンバ66は圧縮されて、エアロゾルディスペンサ10における乾燥空洞部(例えば、スプレーノズルユニット70)を満たしている液体のわずかな容積(プライミング動作34の長さに相当する)が吐出され、スプレーノズルユニット70から、細菌および/または残留物などの異物を押し出す。液体のわずかな容積は、プライミング用量と呼ぶことができる。
【0069】
図7は、エアロゾルディスペンサ10の搬送管52の例示的な動作の図を示す。より具体的には、図7は、搬送管52のテンショニング動作32およびプライミング動作34を、回転可能な部材16のテンショニング回転18の関数として示す。
【0070】
図7は、搬送管52のテンショニング動作32の軸方向長さであるテンショニング距離98をさらに示す。図7では、テンショニング距離98は、約9.2mmである。
【0071】
図7は、プライミング動作34の1つに対するプライミング距離100をさらに示す。プライミング距離100は、すべてのプライミング動作34に対して同じ、または異なることができる。図7では、すべてのプライミング距離100は、約0.4mmの同じ長さを有する。搬送管52のすべてのプライミング動作34の距離の合計は、テンショニング距離98の約24%である。
【0072】
図7の水平線Cは、搬送管52の最もテンションを受ける位置を示す。例えば、約150°から180°など、回転可能な部材16の最後のテンショニング回転18の間に、作動器部材50は、非ブロック位置からブロック位置へと横方向に押され、それにより、保持部材48がブロックされる。
【0073】
本開示が、例示的な実施形態を参照して述べられてきたが、本発明は、上記で述べられたものに限定されないことが理解されよう。例えば、部品の寸法は、必要に応じて変更できることが理解されよう。
【符号の説明】
【0074】
10 エアロゾルディスペンサ
12 テンショニング装置
14 ハウジング
16 回転可能な部材
18 テンショニング回転
20 蓋
22 ヒンジ
24 ボタン
26 用量インジケータ
28 状態インジケータ
30 初期位置
32 テンショニング動作
34 プライミング動作
36 テンショニング方向
38 長手方向軸
40 伝達機構
42 カム輪郭
44 カム従動子
46 プライミング構造
48 保持部材
50 作動器部材
52 搬送管
54 容器
56 閉鎖部
58 搬送管逆止め弁
60 ロック構造
62 ストッパ
64 ポンプシリンダ
66 投与チャンバ
68 封止
70 スプレーノズルユニット
71 スプレーノズル
72 スプレーノズル逆止め弁
74 フィルタ
76 マウスピース
78 内側スリーブ
80 カラー
82 静止部分
84 弾性部材
86 テンショニング位置
88 ハウジング停止部
90 保持部材停止部
92 カム輪郭長さ
94 プライミング構造面
96 隣接面
98 テンショニング距離
100 プライミング距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7