(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】対基板作業機
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20221108BHJP
H05K 13/02 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
H05K3/34 503B
H05K13/02 U
(21)【出願番号】P 2021541398
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2019032525
(87)【国際公開番号】W WO2021033279
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】土谷 祐介
(72)【発明者】
【氏名】太田 桂資
(72)【発明者】
【氏名】神藤 高広
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183147(JP,A)
【文献】特開2004-363152(JP,A)
【文献】特開2005-116950(JP,A)
【文献】特開2007-260706(JP,A)
【文献】特開2002-118351(JP,A)
【文献】特開2008-98059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/20
H05K 3/34
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の作業を行う対基板作業機であって、
プラズマを発生するプラズマユニットと、
条件データが記憶された記憶装置と、
前記基板に転写剤を転写するための転写ピンと、
前記プラズマユニットで前記基板に照射するプラズマの照射量を前記条件データに基づいて調整する制御装置と、を備え
、
前記条件データは、前記転写ピンの照射条件と前記基板の照射条件とが表面自由エネルギーに関連付けられたデータテーブルであり、
前記制御装置は、
前記転写剤の表面自由エネルギーを介して前記転写ピンの照射条件と前記基板の照射条件とを前記データテーブルから検索する検索処理と、
前記検索処理で検索された前記転写ピンの照射条件で、前記プラズマユニットからのプラズマを前記転写ピンに照射して、前記転写ピンの表面自由エネルギーを前記転写剤の表面自由エネルギーに近似させる転写ピン照射処理と、
前記検索処理で検索された前記基板の照射条件で、前記プラズマユニットからのプラズマを前記基板に照射して、前記基板の表面自由エネルギーを前記転写剤の表面自由エネルギーに近似させる基板照射処理と、を実行する対基板作業機。
【請求項2】
基板に所定の作業を行う対基板作業機であって、
プラズマを発生するプラズマユニットと、
条件データが記憶された外部機器との通信を可能にする通信回路と、
前記基板に転写剤を転写するための転写ピンと、
前記プラズマユニットで前記基板に照射するプラズマの照射量を前記条件データに基づいて調整する制御装置と、を備え
、
前記条件データは、前記転写ピンの照射条件と前記基板の照射条件とが表面自由エネルギーに関連付けられたデータテーブルであり、
前記制御装置は、
前記転写剤の表面自由エネルギーを介して前記転写ピンの照射条件と前記基板の照射条件とを前記データテーブルから検索する検索処理と、
前記検索処理で検索された前記転写ピンの照射条件で、前記プラズマユニットからのプラズマを前記転写ピンに照射して、前記転写ピンの表面自由エネルギーを前記転写剤の表面自由エネルギーに近似させる転写ピン照射処理と、
前記検索処理で検索された前記基板の照射条件で、前記プラズマユニットからのプラズマを前記基板に照射して、前記基板の表面自由エネルギーを前記転写剤の表面自由エネルギーに近似させる基板照射処理と、を実行する対基板作業機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記基板に対するプラズマの照射時間によって、前記照射量を調整する請求項1又は請求項2に記載の対基板作業機。
【請求項4】
前記基板を搬送する搬送装置を備え、
前記制御装置は、前記搬送装置で前記基板を搬送する速度によって、前記照射時間を変化させる請求項3に記載の対基板作業機。
【請求項5】
前記プラズマユニットを移動させる移動装置を備え、
前記制御装置は、前記移動装置で前記プラズマユニットを移動させる速度によって、前記照射時間を変化させる請求項3に記載の対基板作業機。
【請求項6】
前記データテーブルは、
前記転写ピンと前記基板のそれぞれの種類毎に、前記転写ピンの照射条件と前記基板の照射条件とが表面自由エネルギーに関連付けられた第1データテーブルと、
前記転写剤の種類と表面自由エネルギーとが関連付けられた第2データテーブルと、で構成され、
前記制御装置は、
前記転写ピン、前記基板、及び前記転写剤のそれぞれの種類が設定されることによって、前記検索処理で使用される表面自由エネルギーを決定する決定処理を実行する
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の対基板作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板に所定の作業を行う対基板作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の対基板作業機に関し、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載の技術は、導電性金属からなる所定の配線パターンを有する基板を供給する基板供給手段と、前記配線パターンの所定の領域にはんだ層を形成するはんだ層形成手段と、前記はんだ層を利用して、はんだ付けにより所定の電気部品を前記基板に実装させるべく前記基板に対して電気部品をマウントするマウント手段とを少なくとも含み、前記電気部品の基板への実装ラインを構成する部品実装装置であって、少なくとも前記配線パターンのはんだ層が形成される領域に大気圧下でプラズマを照射するプラズマ照射装置が組み入れられていることを特徴とする。
【0004】
この構成によれば、少なくとも基板へのはんだ層の形成、電気部品の基板へのマウント及びはんだ付けを行う部品実装ラインを構成する部品実装装置において、大気圧下でプラズマを照射するプラズマ照射装置が組み入れられるので、基板に対して一連の処理を行う一段階で、配線パターンのはんだ層が形成される領域にプラズマを照射して表面改質を行うことができる。かかるプラズマ照射により、はんだ被着面の清浄化並びに濡れ性改善が図られることから、フラックスを用いることなくはんだ付けを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、更に好適に、基板にプラズマを照射することが望まれていた。
【0007】
本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、基板にプラズマを照射するのに好適な対基板作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、基板に所定の作業を行う対基板作業機であって、プラズマを発生するプラズマユニットと、条件データが記憶された記憶装置と、前記基板に転写剤を転写するための転写ピンと、プラズマユニットで基板に照射するプラズマの照射量を条件データに基づいて調整する制御装置と、を備え、前記条件データは、前記転写ピンの照射条件と前記基板の照射条件とが表面自由エネルギーに関連付けられたデータテーブルであり、前記制御装置は、前記転写剤の表面自由エネルギーを介して前記転写ピンの照射条件と前記基板の照射条件とを前記データテーブルから検索する検索処理と、前記検索処理で検索された前記転写ピンの照射条件で、前記プラズマユニットからのプラズマを前記転写ピンに照射して、前記転写ピンの表面自由エネルギーを前記転写剤の表面自由エネルギーに近似させる転写ピン照射処理と、前記検索処理で検索された前記基板の照射条件で、前記プラズマユニットからのプラズマを前記基板に照射して、前記基板の表面自由エネルギーを前記転写剤の表面自由エネルギーに近似させる基板照射処理と、を実行する対基板作業機を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、対基板作業機は、基板にプラズマを照射するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】電子部品装着装置における制御装置のブロック図である。
【
図6】貯留トレイにおける転写作業の説明図である。
【
図7】貯留トレイにおける転写作業の説明図である。
【
図8】貯留トレイにおける転写作業の説明図である。
【
図10】回路基板における転写作業の説明図である。
【
図11】回路基板における転写作業の説明図である。
【
図13】照射作業の流れを示すフローチャートである。
【
図15】電子部品装着装置における制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る対基板作業装置を、電子部品装着装置10に具体化した一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る電子部品装着装置10は、回路基板に電子部品を実装するための装置である。電子部品装着装置10は、1つのシステムベース14と、そのシステムベース14の上に並んで配設された2つの装着機16とを有している。尚、以下の説明では、装着機16の並ぶ方向をX軸方向と称し、その方向に直角な水平の方向をY軸方向と称する。
【0013】
各装着機16は、主に、装着機本体20、第1搬送装置22、装着ヘッド移動装置24(以下、移動装置24と略す場合がある)、装着ヘッド26、供給装置28、フラックスユニット30、操作装置200、第1プラズマユニット202、及び転写ピントレイ204を備えている。装着機本体20は、フレーム部32と、そのフレーム部32に上架されたビーム部34とによって構成されている。
【0014】
第1搬送装置22は、2つのコンベア装置(コンベア装置40、コンベア装置42)を備えている。コンベア装置40及びコンベア装置42は、互いに平行で、且つ、X軸方向に延びるようにフレーム部32に配設されている。コンベア装置40、コンベア装置42は、電磁モータ46(
図5参照)によって、それぞれに支持される回路基板をX軸方向に搬送する。又、回路基板は、所定の作業位置において、基板保持装置48(
図5参照)によって固定的に保持される。
【0015】
移動装置24は、XYロボット型の移動装置であり、スライダ50をX軸方向にスライドさせる電磁モータ52(
図5参照)と、Y軸方向にスライドさせる電磁モータ54(
図5参照)とを備えている。スライダ50には、装着ヘッド26が取り付けられており、その装着ヘッド26は、電磁モータ52と電磁モータ54の作動によって、フレーム部32上の任意の位置に移動する。
【0016】
装着ヘッド26は、回路基板に対して電子部品を装着するものである。
図3に示すように、装着ヘッド26は、スライダ50に設けられ、複数の棒状の装着ユニット60を備えており、複数の装着ユニット60の各々の先端部には、吸着ノズル62が装着されている。吸着ノズル62は、負圧エア通路及び正圧エア通路を介して、正負圧供給装置66(
図5参照)に通じている。吸着ノズル62は、負圧によって電子部品を吸着保持し、保持した電子部品を正圧によって離脱する。又、複数の棒状の装着ユニット60は、ユニット保持体68の外周部において、等角度ピッチで配設されており、軸方向が垂直となる状態で保持されている。吸着ノズル62は、ユニット保持体68の下面から下方に向かって延び出している。尚、各装着ユニット60に対する吸着ノズル62の装着・交換等は、ワンタッチで自動的に行われるが、公知技術のため、その詳細な説明は省略する。
【0017】
又、当該装着ヘッド26において、ユニット保持体68は、保持体回転装置70の電磁モータ72(
図5参照)によって、装着ユニット60の配設角度毎に間欠回転する。これにより、複数の装着ユニット60の停止位置のうちの1つの停止位置である昇降ステーションに、装着ユニット60が順次停止する。そして、当該昇降ステーションに位置する装着ユニット60は、ユニット昇降装置74の電磁モータ76(
図5参照)によって昇降する。これにより、吸着ノズル62に吸着保持された電子部品の上下方向の位置が変更される。又、当該装着ヘッド26においては、昇降ステーションとは別の停止位置が自転ステーションとされており、当該自転ステーションに位置する装着ユニット60は、自転装置78の電磁モータ80(
図5参照)によって自転する。これにより、吸着ノズル62によって吸着保持された電子部品の保持姿勢が変更される。
【0018】
供給装置28は、フィーダ型の供給装置であり、フレーム部32におけるY軸方向の一方の端部に配設されている。供給装置28は、テープフィーダ81を有している。テープフィーダ81は、電子部品をテーピング化して構成したテープ化部品を巻回させた状態で収容している。そして、テープフィーダ81は、送出装置82(
図5参照)によって、テープ化部品を送り出す。これにより、フィーダ型の供給装置28は、テープ化部品の送り出しによって、電子部品を供給位置において供給する。尚、テープフィーダ81は、フレーム部32に対して着脱可能であり、電子部品の交換等に対応することが可能である。
【0019】
そして、フラックスユニット30は、供給装置28の隣において、Y軸方向に摺動可能に配設されており、電子部品に塗布されるフラックスを貯留する貯留トレイ93等を有している。貯留トレイ93は、上方から見た外形形状が円形をなす浅底のトレイであり、フラックスを貯留し、トレイ回転装置90(
図5参照)によって、所定方向に回転させられる。これにより、貯留トレイ93上では、スキージ(図示省略)によって、フラックスが均一に押し広げられ、フラックス膜が形成される。
【0020】
操作装置200は、タッチパネル等で構成されるものであって、装着機16の前側上方に配設されており、装着機16の動作情報等を表示し、オペレータ等からの指示を受付ける。
【0021】
第1プラズマユニット202は、供給装置28とコンベア装置40との間に配設され、立方体形状をなし、プラズマが照射される内部空間を有している。第1プラズマユニット202の上面には、内部空間に連なる穴部Hが設けられている。これにより、第1プラズマユニット202は、穴部Hから内部空間に差し入れられた物に対して、所定強度のプラズマを照射することが可能である。尚、プラズマの照射量は、第1プラズマユニット202の穴部Hに差し入れられた時間で調整される。
【0022】
転写ピントレイ204は、フラックスユニット30とコンベア装置40との間に配設されており、3つの転写ピンPが収容されている。各転写ピンPは、それぞれの材質が異なる棒状のものであり、その軸方向が垂直となる状態で転写ピントレイ204に収容されている。各転写ピンPは、フラックスユニット30のフラックスを回路基板に転写する際に使用される。その際、各転写ピンPは、吸着ノズル62に代わって、装着ヘッド26の装着ユニット60に装着される。尚、装着ユニット60に対する転写ピンPの着脱等は、吸着ノズル62と同様にして、ワンタッチで自動的に行われるが、公知技術のため、その詳細な説明は省略する。
【0023】
図4に示すように、電子部品装着装置10は、第2搬送装置210と第2プラズマユニット220とを有している。第2搬送装置210は、2つのコンベア装置(コンベア装置214、コンベア装置216)を備えている。コンベア装置214及びコンベア装置216は、互いに平行で、且つ、X軸方向に延び、各装着機16が有する第1搬送装置22のコンベア装置40及びコンベア装置42と接続するように配設されている。コンベア装置214及びコンベア装置216は、電磁モータ212(
図5参照)によって、それぞれに支持される回路基板Cを、X軸方向と平行な進行方向X1に搬送する。これにより、回路基板Cは、第2搬送装置210から第1搬送装置22に移送される。
【0024】
第2プラズマユニット220は、その下方に向けてプラズマを照射する装置である。第2プラズマユニット220は、Y軸に沿って設けられており、第2搬送装置210とはその上方において立体交差することによって、第2搬送装置210のコンベア装置214及びコンベア装置216と直交している。これにより、第2プラズマユニット220は、その下方を第2搬送装置210によって通過する回路基板Cに対して、所定強度のプラズマを照射することが可能である。尚、プラズマの照射量は、第2プラズマユニット220の下方を通過する速度、つまり第2搬送装置210における進行方向X1への搬送速度で調整される。
【0025】
電子部品装着装置10は、更に、
図5に示すように、制御装置100を備えている。制御装置100は、コントローラ102を有しており、コントローラ102は、CPU、ROM、RAM等を備え、コンピュータを主体とするものである。コントローラ102は、複数の駆動回路106に接続されており、それら複数の駆動回路106は、電磁モータ46、電磁モータ52、電磁モータ54、電磁モータ72、電磁モータ76、電磁モータ80、基板保持装置48、正負圧供給装置66、送出装置82、トレイ回転装置90に接続されている。これにより、第1搬送装置22、移動装置24、装着ヘッド26、テープフィーダ81、及びフラックスユニット30等の作動が、コントローラ102によって制御される。
【0026】
コントローラ102は、制御回路107に接続され、メモリ230を備えている。制御回路107は、コントローラ102のCPUの命令に応じた画像を操作装置200のタッチパネルに表示させ、操作装置200のタッチパネル等が受け付けた情報を信号としてコントローラ102のCPUに出力する。メモリ230は、フラッシュメモリである。メモリ230には、後述するデータベース232が設けられている。
【0027】
更に、複数の駆動回路106は、第1プラズマユニット202、第2プラズマユニット220、及び電磁モータ212に接続されている。これにより、第1プラズマユニット202、第2プラズマユニット220、及び第2搬送装置210等の作動が、コントローラ102によって制御される。
【0028】
電子部品装着装置10では、上記の構成によって、第1搬送装置22に保持された回路基板Cに対して、装着ヘッド26による装着作業が行われる。具体的には、コントローラ102の指令により、回路基板Cが、第1搬送装置22で作業位置まで搬送され、その位置において、基板保持装置48によって保持される。また、テープフィーダ81は、コントローラ102の指令により、送出装置82でテープ化部品を送り出し、電子部品を供給位置において供給する。そして、装着ヘッド26が、移動装置24等によって、電子部品の供給位置の上方に移動し、吸着ノズル62によって電子部品を吸着保持する。続いて、装着ヘッド26は、回路基板Cの上方に移動し、保持している電子部品を回路基板C上に装着する。
【0029】
電子部品装着装置10では、上記の装着作業が最適に行われることを目的として、上記の装着作業が行われる前に、転写作業が行われる。転写作業では、装着ヘッド26及び転写ピンPによって、フラックスFが回路基板Cに転写される。具体的には、
図6に示すように、転写ピンPの上端部が、装着ヘッド26に取り付けられる。これにより、転写ピンPは、その軸方向が垂直となった状態で、装着ヘッド26に装着される。更に、装着ヘッド26が、移動装置24等によって、貯留トレイ93の上方に移動する。これにより、転写ピンPは、フラックスFが貯留されている貯留トレイ93において、フラックス膜300の上方に位置する。次に、
図7及び
図8に示すように、装着ヘッド26が、移動装置24等によって、下降及び上昇する。これにより、転写ピンPの下端部がフラックス膜300にディップするので、転写ピンPの下端部には、フラックスFが転写される。
【0030】
そして、
図9に示すように、装着ヘッド26が、移動装置24等によって、回路基板Cの上方に移動する。これにより、転写ピンPは、その下端部にフラックスFが転写されている状態で、回路基板Cの上方に移動する。次に、
図10及び
図11に示すように、装着ヘッド26が、移動装置24等によって、下降及び上昇する。これにより、転写ピンPの下端部が回路基板Cに近接するので、回路基板Cには、フラックスFが転写される。
【0031】
更に、電子部品装着装置10では、転写ピンPに転写されるフラックスFの量と、回路基板Cに転写されるフラックスFの量とを安定させるため、上記の転写作業が行われる前に、照射作業が行われる。照射作業では、第1プラズマユニット202によって転写ピンPがプラズマ照射され、第2プラズマユニット220によって回路基板Cがプラズマ照射される。プラズマが照射される際は、データベース232に格納された情報に基づいて、プラズマの照射量が調整される。これにより、転写ピンPと回路基板Cのそれそれの表面自由エネルギーが、フラックスFの表面自由エネルギーに近似させられる。
【0032】
データベース232に格納された情報には、例えば、
図12に示されたデータテーブル234がある。データテーブル234は、第1データテーブル236と第2データテーブル238とを有している。第1データテーブル236は、回路基板用テーブル240と、転写ピン用テーブル242とで構成されている。
【0033】
回路基板用テーブル240は、表面自由エネルギーの値が、回路基板Cの種類及びプラズマ照射条件に関連付けて記憶されている。回路基板Cの符号に添付された数字は、回路基板Cの種類を表す。従って、回路基板用テーブル240では、回路基板Cの種類として、回路基板C1,C2,C3が存在する。回路基板用テーブル240におけるプラズマ照射条件は、第2プラズマユニット220によるプラズマ照射を対象にするものであって、第2搬送装置210における進行方向X1への搬送速度(つまり、回路基板Cが第2プラズマユニット220の下方を通過する速度)で表されている。これによれば、或るプラズマ照射条件で回路基板Cが第2プラズマユニット220の下方を通過すると、回路基板Cの表面自由エネルギーが、当該プラズマ照射条件に関連付けられた値になる。
【0034】
例えば、各回路基板C1,C2,C3が100mm/s(プラズマ照射条件)で第2プラズマユニット220の下方を通過した場合には、各回路基板C1,C2,C3の表面自由エネルギーは、おおよそ、80,85,90になる。プラズマ照射条件(第2搬送装置210における進行方向X1への搬送速度)が速くなると、第2プラズマユニット220の下方を回路基板Cが通過する時間が短くなり、第2プラズマユニット220によるプラズマの照射量は少なくなることから、表面自由エネルギーの値は小さくなる。
【0035】
転写ピン用テーブル242は、表面自由エネルギーの値が、転写ピンPの種類及びプラズマ照射条件に関連付けて記憶されている。転写ピンPの符号に添付された数字は、転写ピンPの種類を表す。従って、転写ピン用テーブル242では、転写ピンPの種類として、転写ピンP1,P2,P3が存在する。転写ピン用テーブル242におけるプラズマ照射条件は、第1プラズマユニット202によるプラズマ照射を対象にするものであって、第1プラズマユニット202の穴部Hに転写ピンPが差し入れられる時間(秒)で表されている。これによれば、或るプラズマ照射条件で転写ピンPが第1プラズマユニット202の穴部Hに差し入れられると、転写ピンPの表面自由エネルギーが、当該プラズマ照射条件に関連付けられた値になる。
【0036】
例えば、各転写ピンP1,P2,P3が第1プラズマユニット202の穴部Hに差し入れられた状態が50s(プラズマ照射条件)間維持された場合には、各転写ピンP1,P2,P3の表面自由エネルギーは、おおよそ、80,85,90になる。プラズマ照射条件(第1プラズマユニット202の穴部Hに転写ピンPが差し入れられる時間)が短くなると、プラズマが照射される第1プラズマユニット202の内部空間に転写ピンPが存在する時間が短くなることから、表面自由エネルギーの値は小さくなる。
【0037】
第2データテーブル238には、フラックスFが持つ表面自由エネルギーの値が、フラックスFの種類に関連付けて記憶されている。フラックスFの符号に添付された数字は、フラックスFの種類を表す。従って、第2データテーブル238では、フラックスFの種類として、フラックスF1,F2,F3が存在する。
【0038】
次に、電子部品装着装置10で行われる照射作業を、データテーブル234に加えて、
図13に示されたフローチャートを参照して説明する。
図13のフローチャートで示された制御プログラムは、S10乃至S16の各処理で構成され、コントローラ102のROMに記憶されており、照射作業が行われる際に、コントローラ102のCPUによって実行される。また、
図13のフローチャートで示された制御プログラムで使用される各種データは、メモリ230に記憶されたデータベース232(つまり、データテーブル234)を除いて、コントローラ102のROM又はRAM等に記憶されている。
【0039】
決定処理S10では、転写ピンP、回路基板C、及びフラックスFのそれぞれの種類が設定される。その設定は、例えば、オペレータ等からの指示を操作装置200が受付けることによって行われる。オペレータ等は、照射作業後の転写作業で使用される、転写ピンP、回路基板C、及びフラックスFのそれぞれの種類を指示する。
【0040】
尚、以下において、具体例を用いて説明する場合には、この決定処理S10により、転写ピンP、回路基板C、及びフラックスFのそれぞれの種類として、転写ピンP2、回路基板C3、及びフラックスF1が設定されたものとする。
【0041】
更に、決定処理S10では、その設定されたフラックスFの種類とデータテーブル234とに基づいて、後述する検索処理S12で使用される表面自由エネルギーが決定される。具体例では、データテーブル234の第2データテーブル238において、フラックスF1に関連付けられた80の値が、表面自由エネルギーとして決定される。
【0042】
検索処理S12では、上記の決定処理S10で設定された転写ピンP及び回路基板Cのそれぞれの種類と、上記の決定処理S10で決定された表面自由エネルギーとを介して、転写ピンPの照射条件と、回路基板Cの照射条件とが、データテーブル234の第1データテーブル236から検索される。
【0043】
具体例では、第1データテーブル236の転写ピン用テーブル242において、上記の決定処理S10で設定された転写ピンP2と、上記の決定処理S10で決定された表面自由エネルギーの値である80とに関連付けられた、40sが転写ピンPの照射条件として探し出される。また、第1データテーブル236の回路基板用テーブル240において、上記の決定処理S10で設定された回路基板C3と、及び上記の決定処理S10で決定された表面自由エネルギーの値である80とに関連付けられた、300mm/sが回路基板Cの照射条件として探し出される。
【0044】
転写ピン照射処理S14では、上記の検索処理S12で検索された転写ピンPの照射条件で、第1プラズマユニット202からのプラズマが転写ピンPに照射されることによって、転写ピンPの表面自由エネルギーが、フラックスFの表面自由エネルギーに近似させられる。
【0045】
具体例では、装着ヘッド26が、転写ピントレイ204から転写ピンP2を装着し、転写ピンP2を第1プラズマユニット202の穴部Hに差し入れ、その差し入れた状態を40s間維持する。これにより、装着ヘッド26に装着された転写ピンP2の表面自由エネルギーの値が、フラックスF1の表面自由エネルギーの値である、80に近似する。
【0046】
基板照射処理S16では、上記の検索処理S12で検索された回路基板Cの照射条件で、第2プラズマユニット220からのプラズマが回路基板Cに照射されることによって、回路基板Cの表面自由エネルギーが、フラックスFの表面自由エネルギーに近似させられる。
【0047】
具体例では、回路基板C3が、第2プラズマユニット220の下方を通過するように、第2搬送装置210のコンベア装置214又はコンベア装置216に支持される。更に、第2搬送装置210における進行方向X1への搬送速度、つまり第2プラズマユニット220の下方を回路基板C3が通過する速度が、300mm/sにされる。これにより、第2搬送装置210で搬送される回路基板C3の表面自由エネルギーの値が、フラックスF1の表面自由エネルギーの値である、80に近似する。
【0048】
尚、基板照射処理S16は、転写ピン照射処理S14と同時に行われもよいし、転写ピン照射処理S14よりも先に行われてもよい。
【0049】
その後は、上記の転写作業が行われる。具体例では、第2搬送装置210から第1搬送装置22に移送される回路基板C3と、装着ヘッド26に装着されている転写ピンP2とを用いて、上記の転写作業が行われ、その際、フラックスF1が貯留トレイ93に貯留される。
【0050】
以上詳細に説明したように、本実施形態の電子部品装着装置10は、回路基板Cにプラズマを照射するのに好適である。
【0051】
ちなみに、本実施形態において、電子部品装着装置10は、対基板作業機の一例である。第1プラズマユニット202と第2プラズマユニット220は、プラズマユニットの一例である。第2搬送装置210は、搬送装置の一例である。メモリ230は、記憶装置の一例である。データベース232に格納された情報は、条件データの一例である。回路基板Cは、基板の一例である。フラックスFは、転写剤の一例である。
【0052】
尚、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0053】
例えば、
図14に示すように、第2プラズマユニット220は、プラズマユニット移動装置400に設けられてもよい。以下、プラズマユニット移動装置400について、
図14を参照にして説明する。但し、上記実施形態と実質的に共通する部分には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0054】
プラズマユニット移動装置400は、XYロボット型の移動装置であって、X軸スライド機構410と、Y軸スライド機構420とを備えている。X軸スライド機構410は、X軸スライドレール412とX軸スライダ414とを有している。X軸スライドレール412は、X軸方向に延びるように、第2搬送装置210のコンベア装置214及びコンベア装置216に沿って設けられている。X軸スライダ414は、X軸スライドレール412によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。更に、X軸スライド機構410は、電磁モータ(図示省略)を有しており、その電磁モータの駆動により、X軸スライダ414がX軸方向の任意の位置に移動する。
【0055】
また、Y軸スライド機構420は、Y軸スライドレール422を有している。Y軸スライドレール422は、Y軸に沿って設けられており、第2搬送装置210とはその上方において立体交差することによって、第2搬送装置210のコンベア装置214及びコンベア装置216と直交している。Y軸スライドレール422の一端部が、X軸スライダ414に連結されている。そのため、Y軸スライドレール422は、X軸方向に移動可能とされている。そして、Y軸スライドレール422の下側には、第2プラズマユニット220が、Y軸方向にスライド可能に保持されている。更に、Y軸スライド機構420は、電磁モータ(図示省略)を有しており、その電磁モータの駆動により、第2プラズマユニット220が、Y軸方向の任意の位置に移動する。よって、第2プラズマユニット220は、X軸スライド機構410及びY軸スライド機構420の駆動により、第2搬送装置210上の任意の位置に移動することが可能であると共に、第2搬送装置210上を通り過ぎることが可能である。
【0056】
これにより、第2プラズマユニット220は、第2搬送装置210上の回路基板Cに対して、プラズマを照射することが可能である。プラズマの照射量は、第2プラズマユニット220の移動速度によって調整される。
【0057】
例えば、第2搬送装置210が停止した状態では、X軸スライダ414がX軸スライドレール412をスライドする速度と、第2プラズマユニット220がY軸スライドレール422をスライドする速度とによって、第2搬送装置210上の回路基板Cに対するプラズマの照射量が調整される。また、第2搬送装置210が停止した状態において、Y軸スライドレール422が回路基板Cの上方に位置するようにX軸スライダ414の位置を固定させた場合には、第2プラズマユニット220がY軸スライドレール422をスライドする速度によって、当該回路基板Cに対するプラズマの照射量が調整される。
【0058】
これに対して、第2搬送装置210が駆動している状態では、X軸スライダ414がX軸スライドレール412をスライドする速度と、第2プラズマユニット220がY軸スライドレール422をスライドする速度と、第2搬送装置210における進行方向X1への搬送速度とによって、第2搬送装置210上の回路基板Cに対するプラズマの照射量が調整される。また、第2搬送装置210が駆動している状態において、X軸スライダ414の位置を固定させた場合には、第2プラズマユニット220がY軸スライドレール422をスライドする速度と、第2搬送装置210における進行方向X1への搬送速度とによって、第2搬送装置210上の回路基板Cに対するプラズマの照射量が調整される。
【0059】
ちなみに、上記変更例において、プラズマユニット移動装置400は、移動装置の一例である。
【0060】
また、
図15に示すように、データベース232(つまり、データテーブル234)は、サーバ244に設けられてもよい。以下、サーバ244に関して、
図15等を参照にして説明する。但し、上記実施形態と実質的に共通する部分には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0061】
サーバ244は、通信回路108を介して、コントローラ102に接続されている。これにより、コントローラ102のCPUは、サーバ244と通信可能である。更に、コントローラ102のCPUは、決定処理S10及び検索処理S12を、以下のように変容して行う。
【0062】
決定処理S10では、コントローラ102のCPUは、本決定処理S10で設定されたフラックスF、転写ピンP、及び回路基板Cのそれぞれの種類を含んだ第1情報を、サーバ244に送信する。サーバ244は、第1情報に含まれるフラックスFの種類と、データテーブル234の第2データテーブル238とに基づいて、表面自由エネルギーを決定する。
【0063】
検索処理S12では、サーバ244は、サーバ244自身が決定した表面自由エネルギーと、第1情報に含まれる転写ピンP及び回路基板Cのそれぞれの種類とを介して、転写ピンPの照射条件と、回路基板Cの照射条件とを、データテーブル234の第1データテーブル236から検索する。更に、サーバ244は、サーバ244自身が検索した転写ピンP及び回路基板Cのそれぞれの照射条件を含んだ第2情報を、コントローラ102に送信する。
【0064】
その後、コントローラ102のCPUは、第2情報に含まれる転写ピンPの照射条件で転写ピン照射処理S14を実行し、第2情報に含まれる回路基板Cの照射条件で基板照射処理S16を実行する。
【0065】
ちなみに、上記変更例において、サーバ244は、外部機器の一例である。
【0066】
尚、サーバ244は、電子部品装着装置10を制御する上位コンピュータであってもよいし、クラウドコンピューティングで提供されるものであってもよい。
【0067】
また、サーバ244に代えて、上記のメモリ230が、外部機器として、ローカル・エリア・ネットワークや、クラウドコンピューティング等で提供されてもよい。そのような場合、コントローラ102のCPUは、決定処理S10及び検索処理S12において、通信回路108を介して、メモリ230のデータベース232にアクセスする。
【0068】
また、転写ピンPは、上記実施形態とは異なり、第2搬送装置210によって各装着機16に搬送される場合には、その搬送中に、第2プラズマユニット220によってプラズマ照射されてもよい。
【0069】
また、回路基板Cは、上記実施形態とは異なり、第1搬送装置22上でプラズマ照射されてもよい。但し、そのような場合には、装着ヘッド26に着脱可能に装着されたプラズマユニットによって、第1搬送装置22上の回路基板Cに対してプラズマが照射される。尚、そのプラズマユニットは、転写ピントレイ204に収容されている各転写ピンPに対しても、プラズマを照射してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、転写剤として、フラックスFが用いられているが、フラックスFに代えて、銀ペースト又は溶融はんだ等が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10:電子部品装着装置、100:制御装置、108:通信回路、202:第1プラズマユニット、210:第2搬送装置、220:第2プラズマユニット、230:メモリ、232:データベース、234:データテーブル、236:第1データテーブル、238:第2データテーブル、244:サーバ、400:プラズマユニット移動装置、C:回路基板、F:フラックス、P:転写ピン、S10:決定処理、S12:検索処理、S14:転写ピン照射処理、S16:基板照射処理