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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】無線伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20221108BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20221108BHJP
【FI】
H04B1/04 F
H04B7/0413
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021548392
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020029036
(87)【国際公開番号】W WO2021059733
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2019175225
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直敏
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-210299(JP,A)
【文献】特開2017-050614(JP,A)
【文献】特開2016-058999(JP,A)
【文献】特開2002-009639(JP,A)
【文献】特開2010-213352(JP,A)
【文献】国際公開第2003/073628(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
H04B 7/0413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統間で同一周波数のベースバンド信号と系統ごとに異なる中間周波数信号との間の周
波数変換をそれぞれ行う制御部と、系統ごとに異なる前記中間周波数信号と系統間で同一
周波数の高周波信号との間の周波数変換をそれぞれ行う高周波部とを備え、前記制御部と
前記高周波部との間は、系統ごとの前記中間周波数信号が合成された合成中間周波数信号
として単一の中間周波数ケーブルを経由して伝送する無線伝送装置であって、
前記制御部での周波数変換に第1基準信号を用いる共に、前記高周波部での周波数変換
に前記第1基準信号と同期させた第2基準信号及び第3基準信号を用い、
前記第3基準信号は、前記第1基準信号及び第2基準信号に基づいて生成されたもので
あることを特徴とする無線伝送装置。
【請求項2】
前記制御部は、1系統目の前記ベースバンド信号を前記第1基準信号の周波数から上側
に周波数変換して1系統目の前記中間周波数信号を生成させると共に、2系統目の前記ベ
ースバンド信号を前記第1基準信号の周波数から下側に周波数変換して2系統目の前記中
間周波数信号を生成させ、
前記高周波部は、1系統目の前記中間周波数信号を前記第2基準信号の周波数から上側
に周波数変換させると共に、2系統目の前記中間周波数信号を前記第3基準信号の周波数
から下側に周波数変換させ、
前記第3基準信号の周波数は、前記第2基準信号に前記第1基準信号の周波数を2倍に
した逓倍信号を乗算することで、前記第2基準信号の周波数と前記第1基準信号の周波数
の2倍とを加算した値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の無線伝送装置
【請求項3】
前記第1基準信号は、前記合成中間周波数信号に合成された状態で前記制御部から前記
高周波部に伝送されることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御部と高周波部とが分離した2ピースタイプの無線伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御部と高周波部とが分離した2ピースタイプのFPU(Field Pickup Unit:可搬型無線伝送装置)において、制御部と高周波部との間は、同軸ケーブル等で構成された中間周波数ケーブルにて接続される。従って、MIMO(Multiple Input Multiple Output)方式の場合は、信号を偶数波に分割し送受信することから、制御部と高周波部間には偶数本の同軸ケーブルを接続することが必要となる。
【0003】
しかし、制御部と高周波部との間に接続される同軸ケーブルは、最大で400mなど長い距離を配線することもあるため、複数本を接続することは好ましくない。そこで、単一の同軸ケーブルでMIMO方式を実現する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の技術は、UHF帯周波数(例えば、1.2GHz帯や2.3GHz帯)の周波数帯が低く変調多値数が少ない(例えば64QAM)、変調キャリア数が2000本以下の場合において、採用可能である。すなわち、1.2GHz帯や2.3GHz帯にてMIMO方式を採用したFPUの規格ARIB-STD B57では、系統間の周波数偏差は50Hz以下にすることが安定的な伝送を行う上で目標とすべき値であることが記載され、特許文献1の技術は、この条件を満たすことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-58999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、制御部と高周波部との間の周波数同期が取れないこと、高周波部における系統間の周波数偏差の差が大きく出てきてしまうことで、最終的な送信出力での系統間の周波数偏差が大きくなり、マイクロ波帯のFPUに適用できないという問題点があった。ARIB-STD B71では、変調多値数も最大で4096QAM、変調キャリア数は約8000本となり、送信出力系統間の周波数偏差を10Hz以下にすることが安定的な伝送をする上で必要であると記載され、従来技術では、この条件を満たすことができない。
【0007】
図2には、従来技術をマイクロ波帯に適用したFPU10の構成例を示す。
FPU10は、図2を参照すると、制御部20と、高周波部30との2ピースで構成され、制御部20の中間周波数出力端子Xと、高周波部30の中間周波数入力端子Yとの間に同軸ケーブル等で構成された単一の中間周波数ケーブル40が接続されている。
【0008】
制御部20は、デジタル変調ユニット211と、デジタル変調ユニット212と、局部発振器220と、ミキサ231と、ミキサ232と、バンドパスフィルタ241と、バンドパスフィルタ242と、合成器250とを備えている。
【0009】
デジタル変調ユニット211で生成されたベースバンド信号である1系統目の周波数f帯の変調波(例えば、f=30MHz)は、局部発振器220で生成された周波数fの基準信号(例えば、f=100MHz)とミキサ231で乗算され、(f+f )帯のバンドパスフィルタ241でフィルタリングされ、周波数fから上側に周波数変換された(f+f)帯の中間周波数信号(以下、1系1次IF信号と称す。例えば、130MHz)に変換される。
【0010】
デジタル変調ユニット212で生成されたベースバンド信号である2系統目の周波数f帯の変調波(例えば、f=30MHz)は、局部発振器220で生成された周波数fの基準信号(例えば、f=100MHz)とミキサ232で乗算され、(f-f )帯のバンドパスフィルタ242でフィルタリングされ、周波数fから下側に周波数変換された(f-f)帯の中間周波数信号(以下、2系1次IF信号と称す。例えば、70MHz)に変換される。
【0011】
異なる周波数帯の1系1次IF信号と2系1次IF信号とは、合成器250によって合成IF信号として合成され、単一の中間周波数ケーブル40を介して高周波部30に出力される。
【0012】
ここで、局部発振器220の精度による周波数偏差をαとすると、1系1次IF信号は、(f+α)+f=f+f+α、2系1次IF信号は、(f+α)-f=f-f+αとなり、それぞれα分の偏差を持った信号となる。
【0013】
高周波部30は、分配器310と、バンドパスフィルタ321と、バンドパスフィルタ322と、局部発振器331と、局部発振器332と、ミキサ341と、ミキサ342と、バンドパスフィルタ351と、バンドパスフィルタ352と、可変局部発振器333と、ミキサ361と、ミキサ362と、バンドパスフィルタ371と、バンドパスフィルタ372と、増幅器381と、増幅器382とを備えている。なお、局部発振器331、局部発振器332及び可変局部発振器333は、基準となる水晶振動子334と共にシンセサイザー330を構成している。
【0014】
制御部20からの合成IF信号は、分配器310によって(f+f)帯のバンドパスフィルタ321と、(f-f)帯のバンドパスフィルタ322とに分配される。
【0015】
(f+f)帯のバンドパスフィルタ321に入力された合成IF信号は、(f+f)帯の1系1次IF信号のみが抽出される。そして、1系1次IF信号は、局部発振器331で生成された周波数fの基準信号(例えば、f=1370MHz)とミキサ341で乗算され、(f+f+f)帯のバンドパスフィルタ242でフィルタリングされる。これにより、1系1次IF信号は、周波数fから上側に周波数変換された(f+f+f)帯の中間周波数信号(以下、1系2次IF信号と称す。例えば、f +f+f=1500MHz)に変換される。
【0016】
(f-f)帯のバンドパスフィルタ321に入力された合成IF信号は、(f-f)帯の2系1次IF信号のみが抽出される。そして、2系1次IF信号は、局部発振器332で生成された周波数fの基準信号(例えば、f=1430MHz)とミキサ342で乗算され、(f+f-f)帯のバンドパスフィルタ242でフィルタリングされる。ここで、2系1次IF信号と乗算される周波数fは、1系1次IF信号と乗算される周波数fにベースバンド信号の周波数fの2倍を加算した値に設定され、(f+f+f)=(f+f-f)となっている。これにより、2系1次IF信号は、周波数fから上側に周波数変換された(f+f-f)帯、すなわち1系2次IF信号と同じ周波数帯の中間周波数信号(以下、2系2次IF信号と称す。例えば、f+f-f=1500MHz)に変換される。
【0017】
1系2次IF信号と2系2次IF信号とは、可変局部発振器333で生成された周波数fの基準信号(例えば、f=5538MHz)とミキサ361とミキサ362とでそれぞれ乗算され、(f+f+f+f)帯のバンドパスフィルタ371とバンドパスフィルタ372とでフィルタリングされる。これにより、1系2次IF信号と2系2次IF信号は、周波数fから上側に周波数変換された(f+f+f+f)帯の高周波信号(以下、1系RF信号と2系RF信号とそれぞれ称す。例えば、f+f+f+f=7038MHz=略7GHz)に変換される。1系RF信号と2系RF信号とは、増幅器381と増幅器382とによりそれぞれ増幅されてマイクロ波出力端子Z1、Z2から図示しないアンテナに出力され、無線により送信される。
【0018】
ここで、局部発振器331の精度による周波数偏差をβ、局部発振器331の精度による周波数偏差をθ、局部発振器331の精度による周波数偏差をηとそれぞれすると、1系2次IF信号は、(f+β)+(f+f+α)=f+f+f+α+β、2系2次IF信号は、(f+θ)+(f-f+α)=f+f-f+α+θ、1系RF信号は、(f+η)+(f+f+f+α+β)=f+f+f+f+α+β+η、2系RF信号は、(f+η)+(f+f-f+α+θ)=f+f+f-f+α+θ+ηとなる。
【0019】
そして、(f+f+f)=(f+f-f)であるため、1系2次IF信号と2系2次IF信号との差分と、1系RF信号と2系RF信号との差分とは、いずれもβ-θとなる。
【0020】
さらに、(f+f+f)=(f+f-f)=1500MHz、f=1370MHz、f=1430MHzとそれぞれし、水晶振動子334の最大精度を仮に1ppmとした場合、1系統目と2系統目の偏差は、(1430MHz-1370MHz)×1ppm=60Hzがβ‐θの最大値となる。このため、10Hz以下が求められるマイクロ波帯のFPUでは、大きな問題(系統間偏差)となり安定した伝送ができないという問題が発生する。
【0021】
この対策として、周波数精度の高い0.1ppmの周波数精度を持った局部発振器を使用することも考えられるが、コスト面、大きさにおいてFPUに実装することは困難である。
【0022】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので上記課題を解決し、送信出力での系統間の周波数偏差を解消することができる無線伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の無線伝送装置は、系統間で同一周波数のベースバンド信号と系統ごとに異なる
中間周波数信号との間の周波数変換をそれぞれ行う制御部と、系統ごとに異なる前記中間
周波数信号と系統間で同一周波数の高周波信号との間の周波数変換をそれぞれ行う高周波
部とを備え、前記制御部と前記高周波部との間は、系統ごとの前記中間周波数信号が合成
された合成中間周波数信号として単一の中間周波数ケーブルを経由して伝送する無線伝送
装置であって、前記制御部での周波数変換に第1基準信号を用いると共に、前記高周波部
での間の周波数変換に前記第1基準信号と同期させた第2基準信号及び第3基準信号を用
い、前記第3基準信号は、前記第1基準信号及び第2基準信号に基づいて生成されたもの
であることを特徴とする。
また、本発明の無線伝送装置において、前記制御部は、1系統目の前記ベースバンド信
号を前記第1基準信号の周波数から上側に周波数変換して1系統目の前記中間周波数信号
を生成させると共に、2系統目の前記ベースバンド信号を前記第1基準信号の周波数から
下側に周波数変換して2系統目の前記中間周波数信号を生成させ、前記高周波部は、1系
統目の前記中間周波数信号を前記第2基準信号の周波数から上側に周波数変換させると共
に、2系統目の前記中間周波数信号を前記第3基準信号の周波数から下側に周波数変換さ
せ、前記第3基準信号の周波数は、前記第2基準信号に前記第1基準信号の周波数を2倍
にした逓倍信号を乗算することで、前記第2基準信号の周波数と前記第1基準信号の周波
数の2倍とを加算した値に設定しても良い。
また、本発明の無線伝送装置において、前記第1基準信号は、前記合成中間周波数信号
に合成された状態で前記制御部から前記高周波部に伝送してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、制御部と高周波部との間の伝送を単一の中間周波数ケーブル経由で行っても、送信出力での系統間の周波数偏差を解消することができるため、無線伝送の周波数をマイクロ波帯としたMIMO方式のFPUに適用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る無線伝送装置の実施の形態の構成を示すブロック図である。
図2】従来の無線伝送装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態は、無線伝送の周波数をマイクロ波帯としたMIMO方式のFPU10aであり、図1を参照すると、制御部20aと、高周波部30aとの2ピースで構成され、制御部20aと、高周波部30aとが同軸ケーブル等で構成された単一の中間周波数ケーブル40で接続されている。
【0027】
制御部20aは、デジタル変調ユニット211と、デジタル変調ユニット212と、局部発振器220aと、ミキサ231と、ミキサ232と、バンドパスフィルタ241と、バンドパスフィルタ242と、合成器250aとを備えている。
【0028】
デジタル変調ユニット211で生成されたベースバンド信号である1系統目の周波数f帯の変調波(例えば、f=30MHz)は、局部発振器220aで生成された周波数fの基準信号(例えば、f=100MHz)とミキサ231で乗算され、(f+f)帯のバンドパスフィルタ241でフィルタリングされ、周波数fから上側に周波数変換された(f+f)帯の中間周波数信号(以下、1系1次IF信号と称す。例えば、130MHz)に変換される。
【0029】
デジタル変調ユニット212で生成されたベースバンド信号である2系統目の周波数f帯の変調波(例えば、f=30MHz)は、局部発振器220aで生成された周波数fの基準信号(例えば、f=100MHz)とミキサ232で乗算され、(f-f)帯のバンドパスフィルタ242でフィルタリングされ、周波数fから下側に周波数変換された(f-f)帯の中間周波数信号(以下、2系1次IF信号と称す。例えば、70MHz)に変換される。
【0030】
異なる周波数帯の1系1次IF信号と2系1次IF信号は、局部発振器220aで生成された周波数fの基準信号と共に、合成器250によって合成IF信号として合成され、単一の中間周波数ケーブル40を介して高周波部30aに出力される。
【0031】
ここで、局部発振器220aの精度による周波数偏差をαとすると、1系1次IF信号は、(f+α)+f=f+f+α、2系1次IF信号は、(f+α)-f=f-f+αとなり、それぞれα分の偏差を持った信号となる。
【0032】
高周波部30は、分配器310aと、バンドパスフィルタ321と、バンドパスフィルタ322と、バンドパスフィルタ323と、局部発振器331aと、局部発振器332aと、ミキサ341と、ミキサ342と、バンドパスフィルタ351と、バンドパスフィルタ352と、可変局部発振器333と、ミキサ361と、ミキサ362と、バンドパスフィルタ371と、バンドパスフィルタ372と、増幅器381と、増幅器382とを備えている。なお、局部発振器331a、局部発振器332a及び可変局部発振器333は、基準となる水晶振動子334と共にシンセサイザー330aを構成している。
【0033】
制御部20aからの合成IF信号は、分配器310aによって(f+f)帯のバンドパスフィルタ321と、(f-f)帯のバンドパスフィルタ322と、(f)帯のバンドパスフィルタ323とに分配される。
【0034】
(f)帯のバンドパスフィルタ323に入力された合成IF信号は、局部発振器220aで生成された周波数fの基準信号のみが抽出され、局部発振器331aと、局部発振器332aとに入力される。これにより、制御部20aの局部発振器220aと、局部発振器331a及び局部発振器332aとの同期を取る。
【0035】
(f+f)帯のバンドパスフィルタ321に入力された合成IF信号は、(f+f)帯の1系1次IF信号のみが抽出される。そして、1系1次IF信号は、局部発振器331aで生成された周波数fの基準信号(例えば、f=1370MHz)とミキサ341で乗算され、(f+f+f)帯のバンドパスフィルタ242でフィルタリングされる。これにより、1系1次IF信号は、周波数fから上側に周波数変換された(f+f+f)帯の中間周波数信号(以下、1系2次IF信号と称す。例えば、f+f+f=1500MHz)に変換される。
【0036】
(f-f)帯のバンドパスフィルタ321に入力された合成IF信号は、(f-f)帯の2系1次IF信号のみが抽出される。そして、2系1次IF信号は、局部発振器332aで生成された周波数fの基準信号(例えば、f=1430MHz)とミキサ342で乗算され、(f-(f-f))帯のバンドパスフィルタ242でフィルタリングされる。
【0037】
局部発振器332aは、局部発振器332aで生成される周波数fの基準信号に、局部発振器220aで生成された基準信号の周波数fを2倍にした逓倍信号を乗算することで、周波数f=f+2fの基準信号を生成する。例えば、局部発振器332aは、局部発振器220aで生成された周波数fを2倍の周波数2fに変換する逓倍回路、局部発振器332aで生成される周波数fの基準信号と周波数2fの逓倍回路から出力される逓倍信号とを乗算するミキサと、当該ミキサからの出力信号をフィルタリングする(f+2f)帯のバンドパスフィルタとで構成することができる。
【0038】
従って、(f-(f-f))=((f+2f)-(f-f))=(f +f+f)=となる。これにより、2系1次IF信号は、周波数fから下側に周波数変換された(f-(f-f))帯、すなわち1系2次IF信号と同じ周波数帯の中間周波数信号(以下、2系2次IF信号と称す。例えば、f+f-f=1500MHz)に変換される。
【0039】
1系2次IF信号と2系2次IF信号とは、可変局部発振器333で生成された周波数fの基準信号(例えば、f=5538MHz)とミキサ361とミキサ362とでそれぞれ乗算され、(f+f+f+f)帯のバンドパスフィルタ371とバンドパスフィルタ372とでフィルタリングされる。これにより、1系2次IF信号と2系2次IF信号は、周波数fから上側に周波数変換された(f+f+f+f)帯の高周波信号(以下、1系RF信号と2系RF信号とそれぞれ称す。例えば、f+f+f+f=7038MHz=略7GHz)に変換される。1系RF信号と2系RF信号とは、増幅器381と増幅器382とによりそれぞれ増幅されてマイクロ波出力端子Z1、Z2から図示しないアンテナに出力され、無線により送信される。
【0040】
ここで、局部発振器331aの精度による周波数偏差をβとすると、局部発振器332aの周波数偏差は、β+2αとなる(αは、局部発振器220aの精度による周波数偏差)。従って、1系2次IF信号は、(f+β)+(f+f+α)=f+f+f+α+β、2系2次IF信号は、(f+β+2α)-(f-f+α)=f-(f-f)+α+βとなり、(f+f+f)=(f-(f-f))であるため、1系2次IF信号と2系2次IF信号との差分は、ゼロになる。そして、局部発振器220a、局部発振器331a及び局部発振器332aとの同期により、系統間の周波数偏差を無くすことが可能となる。
【0041】
そして、局部発振器331の精度による周波数偏差をηとそれぞれすると、1系RF信号は、(f+η)+(f+f+f+α+β)=f+f+f+f+α+β+η、2系RF信号は、(f+η)+(f+f-f+α+β)=f+f-(f-f)+α+β+ηとなり、同様に1系RF信号と2系RF信号との差分は、ゼロになる。すなわち、マイクロ波帯などに周波数変換する場合は、同じ可変局部発振器333を分配し、マイクロ波帯周波数変換器として機能するミキサ361とミキサ362とによってそれぞれ周波数変換し、上側または下側と各系統で同じ周波数変換を選択することで系統間の偏差なくマイクロ波帯へ周波数変換することが可能となる。
【0042】
なお、上述した実施の形態では、無線伝送装置として送信装置を例にして説明したが、上記した動作とは逆の動作を行うことにより、受信装置にも適用することができる。
【0043】
以上のように本実施形態では、系統間で同一周波数のベースバンド信号と系統ごとに異
なる中間周波数信号との間の周波数変換をそれぞれ行う制御部20aと、系統ごとに異な
る中間周波数信号と系統間で同一周波数の高周波信号との間の周波数変換をそれぞれ行う
高周波部30aとを備え、制御部20aと高周波部30aとの間は、系統ごとの中間周波
数信号が合成された合成中間周波数信号として単一の中間周波数ケーブル40を経由して
伝送する無線伝送装置であって、制御部20aでの周波数変換に第1基準信号(局部発振
器220aで生成された周波数fの基準信号)を用いる共に、高周波部30aでの周波
数変換に第1基準信号と同期させた第2基準信号(局部発振器331aで生成された周波
数fの基準信号)及び第3基準信号(局部発振器332aで生成された周波数fの基
準信号)を用い、第3基準信号は、第1基準信号及び第2基準信号に基づいて生成する。
この構成により、制御部20aと高周波部30aとの間の伝送を単一の中間周波数ケー
ブル40経由で行っても、送信出力での系統間の周波数偏差を解消することができるため
、無線伝送の周波数をマイクロ波帯としたMIMO方式のFPU10aに適用することが
できる。
【0044】
以上のように本実施形態では、制御部20aは、1系統目のベースバンド信号を第1基準信号の周波数f1から上側に周波数変換して1系統目の中間周波数信号(1系1次IF信号)を生成させると共に、2系統目のベースバンド信号を第1基準信号の周波数から下側に周波数変換して2系統目の中間周波数信号(2系1次IF信号)を生成させ、高周波部は、1系1次IF信号を第2基準信号の周波数から上側に周波数変換させて1系2次IF信号を生成すると共に、2系1次IF信号を第3基準信号の周波数から下側に周波数変換させて2系2次IF信号を生成し、第3基準信号の周波数f3は、第2基準信号に第1基準信号の周波数f1を2倍にした逓倍信号を乗算することで、第2基準信号の周波数f2と第2基準信号の周波数f1の2倍とを加算した値に設定されている。
この構成により、1系2次IF信号と2系2次IF信号との差分は、ゼロになり、局部発振器220a、局部発振器331a及び局部発振器332aとの同期により、系統間の周波数偏差を無くすことが可能となる。
【0045】
以上のように本実施形態において、第1基準信号は、合成中間周波数信号に合成された状態で制御部20aから高周波部30aに伝送される。
この構成により、余分な配線を行うことなく、制御部20aから高周波部30aに第1基準信号を伝送することができる。
【0046】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。この実の施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の実施の形態は、FPU、放送用中継伝送装置に利用することができる。また、制御部と高周波部とより構成させる2ピースタイプの中継伝送装置に利用できる。また、制御部と高周波部が同軸ケーブル等で接続された放送用中継伝送装置や、MIMO方式のFPU、放送用伝送装置等に利用することができる。この出願は、2019年9月26日に出願された日本出願特願2019-175225を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【符号の説明】
【0048】
10、10a FPU20、20a 制御部30、30a 高周波部40 中間周波数ケーブル211、212 デジタル変調ユニット220、220a 局部発振器231、232 ミキサ241、242 バンドパスフィルタ250、250a 合成器310、310a 分配器321、322、323 バンドパスフィルタ330、330a シンセサイザー331、331a、332、332a 局部発振器333、可変局部発振器334 水晶振動子341、342 ミキサ351、352 バンドパスフィルタ361、362 ミキサ371、372 バンドパスフィルタ381、382 増幅器
図1
図2