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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20221108BHJP
   B05B 1/06 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B41J2/165
B05B1/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021553991
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2019042816
(87)【国際公開番号】W WO2021084692
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】中川 友喜
(72)【発明者】
【氏名】川尻 明宏
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140501(JP,A)
【文献】特開2007-276394(JP,A)
【文献】特開2017-206914(JP,A)
【文献】国際公開第2010/023810(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B05B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出穴から流体を吐出する装置本体と、
前記装置本体をスライド可能に保持するホルダと、
前記装置本体を所定の方向に向って付勢することで前記装置本体をスライドさせる第1弾性体と、
前記第1弾性体の弾性力に抗して前記装置本体を所定の位置においてロックするロック機構と、
前記装置本体が前記ロック機構により前記所定の位置にロックされた状態で前記装置本体の前記吐出穴を開放し、前記ロック機構の解除により前記装置本体が前記第1弾性体の弾性力によりスライドすることで、前記装置本体のスライドに連動して前記装置本体の前記吐出穴を遮蔽するシャッタと
を備える吐出装置。
【請求項2】
前記ホルダは、
前記装置本体を上下方向にスライド可能に保持し、
前記第1弾性体は、
前記装置本体を上方に向って付勢することで前記装置本体を上昇させる請求項1に記載の吐出装置。
【請求項3】
前記吐出装置は、
前記シャッタを、前記装置本体の前記吐出穴を遮蔽する方向に付勢する第2弾性体を備え、
前記シャッタは、
前記装置本体のスライドと連動して、前記第2弾性体の弾性力により前記装置本体の前記吐出穴を遮蔽する請求項1または請求項2に記載の吐出装置。
【請求項4】
前記吐出装置は、
前記装置本体の側面に固定的に配設されたサイドカバーを備え、
前記ホルダは、
前記サイドカバーを介して、前記装置本体を保持する請求項3に記載の吐出装置。
【請求項5】
前記シャッタは、
前記シャッタに形成されたシャッタ側テーパ面と、前記サイドカバーに形成されたカバー側テーパ面とを密着させた状態で配設され、前記装置本体のスライドに伴って前記吐出穴を開閉する請求項4に記載の吐出装置。
【請求項6】
前記ロック機構は、
エア圧により前記装置本体を前記第1弾性体の弾性力に抗して前記所定の位置においてロックする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出穴から流体を吐出する吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、吐出穴から流体を吐出する吐出装置の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-361881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、吐出穴からの適切な流体の吐出を担保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本明細書は、吐出穴から流体を吐出する装置本体と、前記装置本体をスライド可能に保持するホルダと、前記装置本体を所定の方向に向って付勢することで前記装置本体をスライドさせる第1弾性体と、前記第1弾性体の弾性力に抗して前記装置本体を所定の位置においてロックするロック機構と、前記装置本体が前記ロック機構により前記所定の位置にロックされた状態で前記装置本体の前記吐出穴を開放し、前記ロック機構の解除により前記装置本体が前記第1弾性体の弾性力によりスライドすることで、前記装置本体のスライドに連動して前記装置本体の前記吐出穴を遮蔽するシャッタとを備える吐出装置を開示する。
【発明の効果】
【0006】
本開示では、流体を吐出する装置本体がホルダによりスライド可能に保持されており、その装置本体が所定の方向に向って弾性体により付勢されている。そして、装置本体がロック機構により所定の位置にロックされた状態で、装置本体の吐出穴が開放され、ロック機構の解除により装置本体が弾性体の弾性力によりスライドすることで、装置本体のスライドに連動してシャッタが、装置本体の吐出穴を遮蔽する。これにより、流体の乾燥等による吐出穴の詰まりを防止することが可能となり、吐出穴からの適切な流体の吐出を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】回路形成装置を示す図である。
図2】回路形成装置の制御装置を示すブロック図である。
図3】樹脂積層体が形成された状態の回路を示す断面図である。
図4】樹脂積層体の上に配線が形成された状態の回路を示す断面図である。
図5】ヘッドユニットを示す断面図である。
図6図5のAA線における断面図である。
図7】シャッタを示す斜視図である。
図8】ヘッドユニットを示す断面図である。
図9図8のBB線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0009】
図1に回路形成装置10を示す。回路形成装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、制御装置(図2参照)26とを備える。それら搬送装置20と第1造形ユニット22と第2造形ユニット24とは、回路形成装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0010】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34とX軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ(図2参照)38を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36がX軸方向の任意の位置に移動する。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50とステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されており、X軸方向に移動可能とされている。そして、Y軸スライドレール50の一端部が、X軸スライダ36に連結されている。そのY軸スライドレール50には、ステージ52が、Y軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、Y軸スライド機構32は、電磁モータ(図2参照)56を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52がY軸方向の任意の位置に移動する。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動する。
【0011】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置(図2参照)64と、冷却装置66とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面に基板が載置される。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置された基板のX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、基板が固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60を昇降させる。さらに、冷却装置66は、基台60の内部に配設されており、基台60を任意の温度に冷却する。
【0012】
第1造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載置された基板(図3参照)70の上に配線を造形するユニットであり、第1印刷部72と、乾燥部74とを有している。第1印刷部72は、ヘッドユニット(図2参照)75を有している。ヘッドユニット75については、後程、詳しく説明するが、ヘッドユニット75は、図5及び、図5のAA線における断面図である図6に示すように、インクジェットヘッド76とオートキャッピング機構77とを有している。インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によってノズル穴78から金属インクを吐出するものであり、基台60に載置された基板70の上に金属インクを線状に吐出する。なお、金属インクは、金属の微粒子が溶剤中に分散されたものである。また、オートキャッピング機構77は、ポンプ(図2参照)79の作動時において、インクジェットヘッド76のノズル穴78を開放し、ポンプ79の停止時において、インクジェットヘッド76のノズル穴78を遮蔽する機構である。
【0013】
乾燥部74は、赤外線照射装置(図2参照)80を有している。赤外線照射装置80は、基板70の上に吐出された金属インクに赤外線を照射する装置であり、赤外線の照射により金属インクが乾燥する。この際、金属インクの乾燥により、溶剤が気化し、金属微粒子が互いに接触または凝集することで、金属製の配線が形成される。
【0014】
また、第2造形ユニット24は、ステージ52の基台60に載置された基板70の上に樹脂層を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド(図2参照)88を有しており、基台60に載置された基板70の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。なお、インクジェットヘッド88は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させノズルから吐出するサーマル方式でもよい。
【0015】
硬化部86は、平坦化装置(図2参照)90と照射装置(図2参照)92とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一させる。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層が造形される。
【0016】
また、制御装置26は、図2に示すように、コントローラ120と、複数の駆動回路122とを備えている。複数の駆動回路122は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、冷却装置66、インクジェットヘッド76、ポンプ79、赤外線照射装置80、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92に接続されている。コントローラ120は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路122に接続されている。これにより、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24の作動が、コントローラ120によって制御される。
【0017】
回路形成装置10では、上述した構成によって、基板70の上に回路パターンが形成される。具体的には、ステージ52の基台60に基板70がセットされ、そのステージ52が、第2造形ユニット24の下方に移動される。そして、第2造形ユニット24において、図3に示すように、基板70の上に樹脂積層体130が形成される。樹脂積層体130は、インクジェットヘッド88からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への照射装置92による紫外線の照射とが繰り返されることにより形成される。
【0018】
詳しくは、第2造形ユニット24の第2印刷部84において、インクジェットヘッド88が、基板70の上面に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。続いて、紫外線硬化樹脂が薄膜状に吐出されると、硬化部86において、紫外線硬化樹脂の膜厚が均一となるように、紫外線硬化樹脂が平坦化装置90によって平坦化される。そして、照射装置92が、その薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、基板70の上に薄膜状の樹脂層132が形成される。
【0019】
続いて、インクジェットヘッド88が、その薄膜状の樹脂層132の上に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。そして、平坦化装置90によって薄膜状の紫外線硬化樹脂が平坦化され、照射装置92が、その薄膜状に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することで、薄膜状の樹脂層132の上に薄膜状の樹脂層132が積層される。このように、薄膜状の樹脂層132の上への紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射とが繰り返され、複数の樹脂層132が積層されることで、樹脂積層体130が形成される。
【0020】
上述した手順により樹脂積層体130が形成されると、ステージ52が第1造形ユニット22の下方に移動される。そして、第1印刷部72において、図4に示すように、インクジェットヘッド76が、樹脂積層体130の上面に金属インク134を、回路パターンに応じて線状に吐出する。次に、第1造形ユニット22の乾燥部74において、赤外線照射装置80が、金属インク134に赤外線を照射する。これにより、金属インク134が乾燥し、樹脂積層体130の上に配線136が形成される。
【0021】
このように、回路形成装置10では、紫外線硬化樹脂の硬化によって樹脂積層体130が形成され、金属インクの乾燥によって配線136が形成されることで、基板70の上に回路パターンが形成される。ただし、金属インクは、上述したように、溶剤を含んでおり、その溶剤が気化すると、金属微粒子が互いに接触または凝集する。このため、金属インクを吐出するインクジェットヘッド76が作動していない状態で放置されると、ノズル穴78において、金属インクの溶剤が気化し、金属微粒子が凝集する虞がある。このような場合には、ノズル詰まりにより、金属インクの吐出不良が生じる。このため、ベース28の所定の位置に、インクジェットヘッド76のノズル穴78を覆うための装置を配設することが考えられる。このような装置を配設すれば、インクジェットヘッド76が作動していない状態において、その装置によりノズル穴78を覆うことで、ノズル詰まりを防止することができる。ただし、搬送装置20に異常等が発生した場合には、インクジェットヘッド76を、その装置まで移動させることができず、ノズル穴78を覆うことができない。このため、このような場合には、搬送装置20のリカバリー後において、ノズル詰まりにより吐出不良が生じる可能性が高くなる。また、インクジェットヘッド76を、その装置まで移動させた後であっても、その装置への電力供給が途絶えた場合には、その装置によりノズル穴78を覆うことができない。このような場合にも、電力供給が回復した後において、ノズル詰まりにより吐出不良が生じる可能性が高くなる。
【0022】
そこで、回路形成装置10では、インクジェットヘッド76とオートキャッピング機構77とにより構成されるヘッドユニット75が用いられている。そして、オートキャッピング機構77により、電力供給が可能であるか否かに関わらず、インクジェットヘッド76のノズル穴78が自動で塞がれる。具体的には、オートキャッピング機構77は、図5及び図6に示すように、スライダ150と、ハウジング152と、1対のシャッタ154とを有している。
【0023】
スライダ150は、本体部160とフランジ部162とにより構成されている。本体部160は、上下方向に貫通する角筒形状をなし、角筒形状の本体部160の内寸は、インクジェットヘッド76の周方向の外寸と略同じとされている。そして、本体部160の内部にインクジェットヘッド76が固定的に嵌合されている。なお、本体部160の内部に嵌合されたインクジェットヘッド76の下端面は、本体部160の下端面と同じ高さとなり、インクジェットヘッド76の上端面は、本体部160の上端面と同じ高さとなる。また、フランジ部162は、本体部160の上端部から外部に向って延び出している。
【0024】
ハウジング152は、概して箱形状をなし、ハウジング152の周方向の内寸は、スライダ150のフランジ部162の周方向の外寸より、僅かに大きくされている。そして、スライダ150は、フランジ部162がハウジング152の周方向での内壁面と摺接するように、フランジ部162の内部に配設されている。これにより、スライダ150は、ハウジング152の内部において上下方向にスライド可能とされている。つまり、インクジェットヘッド76が、スライダ150を介して、ハウジング152の内部に保持されており、上下方向にスライド可能とされている。なお、ハウジング152の下面には、スライダ150の本体部160の全体が露出可能な大きさの開口166が形成されている。
【0025】
また、ハウジング152の内部は、スライダ150のフランジ部162により2つの空間に区画されている。そして、下方の空間に、2個のコイルスプリング168が、X方向での両端部において、上下方向に延びるように、フランジ部162とハウジング152の底面との間に圧縮された状態で配設されている。これにより、スライダ150が、ハウジング152の内部において、コイルスプリング168の弾性力により上方に向って付勢され、図8及び図9に示すように、上昇する。なお、図9は、図8のBB線における断面図である。また、フランジ部162の上方には、ストッパ170が配設されており、そのストッパ170により、スライダ150の上昇が規制される。
【0026】
また、ハウジング152の内部のフランジ部162により区画された2つの空間の上方の空間には、ポンプ(図2参照)79が接続されており、その空間がエア室176として機能する。ポンプ79は、作動時において、エア室176に圧縮エアを供給し、スライダ150を、コイルスプリング168の弾性力に抗して、図5及び図6に示すように、下降させる。なお、フランジ部162の下方には、ストッパ178が配設されており、そのストッパ178により、スライダ150の下降が規制される。また、スライダ150がストッパ178により規制されるまで下降した状態、つまり、スライダ150がハウジング152の内部において最も下降した状態において、スライダ150の本体部160の下端面、つまり、インクジェットヘッド76の下端面と、ハウジング152の下端面とは同じ高さとなる。
【0027】
また、1対のシャッタ154の各々は、図7に示すように、底板180と側板182と1対のリブ板184とにより構成されている。底板180と側板182とは、概して同寸法の板形状とされており、底板180のY方向における縁部に側板182が立設された状態で固定されている。また、底板180のX方向における両縁部に、1対のリブ板184が立設された状態で固定されており、各リブ板184のY方向における端面が側板182に固定されている。また、各リブ板184の上端面は、側板182から離れるほど下降するテーパ面188とされている。
【0028】
上記構造の1対のシャッタ154は、図5に示すように、ハウジング152の底面の開口166において、底板180の側板182と反対側の縁部を対向させた状態で、スライダ150の本体部160の下端面をY方向において挟むように配設されている。なお、シャッタ154の下端面とハウジング152の下端面とは同じ高さとされている。また、スライダ150の本体部160の下端面には、シャッタ154のリブ板184のテーパ面188と同じ傾斜のテーパ面190が形成されており、リブ板184のテーパ面188と本体部160のテーパ面190とが密着している。
【0029】
さらに、シャッタ154の側板182とハウジング152の内壁面との間に、Y方向に延びるように、コイルスプリング200が圧縮された状態で配設されている。これにより、シャッタ154が、ハウジング152の底面の開口166において、 コイルスプリング200の弾性力により、スライダ150の本体部160に向って付勢されている。
【0030】
このような構造により、ヘッドユニット75では、オートキャッピング機構77の作動により、電力供給が可能であるか否かに関わらず、インクジェットヘッド76のノズル穴78が自動で塞がれる。具体的には、インクジェットヘッド76の作動時、つまり、インクジェットヘッド76から金属インクが吐出される際には、ポンプ79が作動し、エア室176に圧縮エアが供給される。このため、エア室176に供給された圧縮エアにより、スライダ150が、図5及び図6に示すように、コイルスプリング168の弾性力に抗して、ハウジング152の内部において下降する。この際、スライダ150の本体部160のテーパ面190により、シャッタ154のテーパ面188が下方に向って付勢されるが、シャッタ154は、テーパ面188の傾斜により、本体部160から離れる方向に向って付勢される。これにより、シャッタ154は、コイルスプリング200の弾性力に抗して、本体部160から離れる方向に向ってスライドする。これにより、本体部160の内部に嵌合されたインクジェットヘッド76の下端面が、ハウジング152の底面の開口166において露出し、ノズル穴78から金属インクが吐出される。
【0031】
一方、インクジェットヘッド76の非作動時、つまり、インクジェットヘッド76から金属インクが吐出されない際には、ポンプ79の作動が停止され、エア室176への圧縮エアの供給が遮断される。このため、スライダ150は、図8及び図9に示すように、コイルスプリング168の弾性力により、ハウジング152の内部において上昇する。そして、スライダ150の上昇に伴って、1対のシャッタ154の各々が、コイルスプリング200の弾性力により、スライダ150の本体部160に接近する方向にスライドする。この際、1対のシャッタ154の側板182と反対側の端部が、スライダ150の本体部160の下方において、互いに接触するまで、各シャッタ154がスライドする。これにより、本体部160に嵌合されたインクジェットヘッド76の下端面が、1対のシャッタ154の底板180により覆われる。つまり、インクジェットヘッド76のノズル穴78が、1対のシャッタ154の底板180により遮蔽される。このように、電力供給が可能である状態において、ポンプ79の作動を停止することで、コイルスプリング168とコイルスプリング200との弾性力に依拠してオートキャッピング機構77が作動し、インクジェットヘッド76のノズル穴78を自動で塞ぐことができる。
【0032】
また、ポンプ79への電力供給が遮断された場合には、ポンプ79を作動させることができないため、エア室176に圧縮エアが供給されない。このため、ポンプ79への電力供給が遮断された場合においても、オートキャッピング機構77がコイルスプリング168とコイルスプリング200との弾性力に依拠して作動することで、ノズル穴78を自動で塞ぐことができる。このように、ヘッドユニット75では、電力供給が可能であるか否かに関わらず、インクジェットヘッド76のノズル穴78を自動で塞ぐことができる。また、オートキャッピング機構77は、インクジェットヘッド76とともに、ヘッドユニット75に内蔵されているため、搬送装置20の作動に依拠することなく、インクジェットヘッド76のノズル穴78を塞ぐことができる。これにより、搬送装置20に異常等が発生した場合,電力供給が遮断された場合等の種々の状況下においても、インクジェットヘッド76のノズル穴78を塞ぐことが可能となり、金属インクの乾燥によるノズル詰まりを適切に防止することができる。
【0033】
ちなみに、上記実施例において、ヘッドユニット75は、吐出装置の一例である。インクジェットヘッド76は、装置本体の一例である。ノズル穴78は、吐出穴の一例である。ポンプ79は、ロック機構の一例である。スライダ150は、サイドカバーの一例である。ハウジング152は、ホルダの一例である。シャッタ154は、シャッタの一例である。コイルスプリング168は、第1弾性体の一例である。テーパ面188は、シャッタ側テーパ面の一例である。テーパ面190は、カバー側テーパ面の一例である。コイルスプリング200は、第2弾性体の一例である。
【0034】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記実施例では、シャッタ154がコイルスプリング200の弾性力によりスライドしているが、シャッタ154とスライダ150とをリンク,ボールねじ等の変換機構を介して連結し、スライダ150の上下動作をシャッタ154のスライドに変換してもよい。
【0035】
また、上記実施例では、シャッタ154の左右方向へのスライドにより、ノズル穴78が開閉されているが、スライドに限定されず、シャッタの回動,揺動等の種々の移動により、ノズル穴78が開閉されてもよい。さらに言えば、上記実施例では、スライダ150の上下方向へのスライドにより、シャッタ154が連動して、ノズル穴78が開閉されているが、スライダ150の左右方向などの種々の方向へのスライドにより、シャッタ154が連動して、ノズル穴78が開閉されてもよい。
【0036】
また、上記実施例では、ポンプ79からエア室176に供給される圧縮エアにより、インクジェットヘッド76が所定の位置でロックされているが、電磁モータ等の種々の駆動源の駆動力により、インクジェットヘッド76が所定の位置でロックされてもよい。さらに言えば、ノッチ機構,ラチェット機構等を利用し、駆動源を用いることなく、インクジェットヘッド76が所定の位置でロックされてもよい。
【0037】
また、上記実施例では、インクジェットヘッド76がスライダ150を介してハウジング152によりスライド可能に保持されているが、インクジェットヘッド76がハウジング152により直接的にスライド可能に保持されてもよい。
【0038】
また、上記実施例では、弾性体としてコイルスプリング168,200が採用されているが、弾性力を発揮可能なものであれば、バネ,ゴムなどの種々の物を採用することができる。
【0039】
また、上記実施例では、金属インクを吐出するインクジェットヘッド76に本発明が適用されているが、紫外線硬化樹脂を吐出するインクジェットヘッド88に本発明が適用されてもよい。さらに言えば、インクジェットヘッドに限定されず、ディスペンサなどの種々の吐出装置に本発明が適用されてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、回路を形成する回路形成装置10に本発明が適用されているが、フィギアなどの3次元造形物の形成装置,印刷用紙等への印刷処理を行うプリンタ等に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
75:ヘッドユニット(吐出装置) 76:インクジェットヘッド(装置本体) 78:ノズル穴(吐出穴) 79:ポンプ(ロック機構) 150:スライダ(サイドカバー) 152:ハウジング(ホルダ) 154:シャッタ 168:コイルスプリング(第1弾性体) 188:テーパ面(シャッタ側テーパ面) 190:テーパ面(カバー側テーパ面) 200:コイルスプリング(第2弾性体)
図1
図2
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図9