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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】鋳物砂再生方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 5/00 20060101AFI20221108BHJP
   B22C 1/18 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B22C5/00 C
B22C1/18 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021557251
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2021005539
(87)【国際公開番号】W WO2021220585
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2020078221
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(72)【発明者】
【氏名】横山 吉明
(72)【発明者】
【氏名】須藤 篤
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-051446(JP,A)
【文献】特開2019-107676(JP,A)
【文献】特開平06-344076(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109396328(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/10
B22C 1/18
B22C 5/00
B22C 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に無機バインダが付着した使用済みの鋳物砂を再生する鋳物砂再生方法であって、
鋳造に使用された砂型を粉砕して鋳物砂を回収する粉砕工程と、
前記粉砕工程の後に、前記鋳物砂を80℃以上100℃以下の水中で攪拌しながら洗う水洗工程と、
前記水洗工程の後に、前記鋳物砂を550℃以上900℃以下に加熱する熱処理工程と、
を包含する、鋳物砂再生方法。
【請求項2】
前記熱処理工程は、前記鋳物砂を動かしながら行われる請求項1に記載の鋳物砂再生方法。
【請求項3】
前記水洗工程と前記熱処理工程との間に、前記鋳物砂を攪拌しながら100℃以上300℃以下に加熱して乾燥させる乾燥工程をさらに包含する請求項1または2に記載の鋳物砂再生方法。
【請求項4】
前記水洗工程と前記乾燥工程とが同一の設備で行われる請求項に記載の鋳物砂再生方法。
【請求項5】
前記水洗工程と前記乾燥工程とが異なる設備で行われる請求項に記載の鋳物砂再生方法。
【請求項6】
前記乾燥工程と前記熱処理工程との間に、換気しながら前記鋳物砂を冷却する冷却工程をさらに包含する請求項からのいずれかに記載の鋳物砂再生方法。
【請求項7】
前記無機バインダは、珪酸ソーダを含む請求項1からのいずれかに記載の鋳物砂再生方法。
【請求項8】
前記珪酸ソーダは、一般式:NaO・nSiO(nは0.5以上4.0以下)で表される請求項に記載の鋳物砂再生方法。
【請求項9】
前記無機バインダは、一般式:xSiO・yMO・zHO(MはLi、KまたはNa)で表されるアルカリ珪酸塩水溶液から形成されており、
前記無機バインダには吸湿剤としてナトリウム含有物が、ナトリウム含有物と前記アルカリ珪酸塩水溶液との質量比が1:4から1:6の範囲内となるように加えられており、
前記無機バインダにはさらに250℃以上の沸点を有するシリコンオイルが界面活性剤としてエマルションの形で添加されており、前記エマルション中におけるシリコンオイルの含有量は、前記無機バインダの質量の8%以上10%以下である請求項1からのいずれかに記載の鋳物砂再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物砂再生方法に関し、特に、表面に無機バインダが付着した使用済みの鋳物砂を再生する鋳物砂再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造に使用された砂型から鋳物砂を回収し、鋳物砂の表面に付着したバインダを除去する再生処理を行った上で、再生鋳物砂として再度鋳造に使用することが行われている。砂型の形成に使用されるバインダは、フェノール樹脂やフラン樹脂のような有機バインダと、珪酸ソーダ(水ガラス)のような無機バインダとに大別される。
【0003】
一般に、無機バインダは、有機バインダに比べ、鋳物砂の表面から除去することが難しい。例えば、鋳物砂の表面に付着した有機バインダは、焙焼により除去することができるが、無機バインダは、焙焼によっても除去することはできない。また、鋳物砂を加熱した後に研磨することにより、表面に付着している無機バインダをある程度除去することができるが、その場合、砂表面が凹凸になってしまったり、砂自体が破砕されたりする。そのため、無機バインダを用いる場合、有機バインダを用いる場合よりも鋳物砂のリサイクル性が悪い。さらに、無機バインダは、薬品等を用いた化学的な除去も困難である。
【0004】
このように、砂型を形成する際のバインダとして無機バインダを用いる場合、有機バインダを用いる場合よりも鋳物砂の再生が困難である。そこで、本願出願人は、表面に無機バインダが付着した鋳物砂を好適に再生し得る再生方法を、特許文献1に提案している。特許文献1に開示されている再生方法は、以下の工程(1)~(4)を含んでいる。
(1)回収された鋳物砂型を細かく砕いて、鋳物砂の粉砕物とする粉砕工程。
(2)得られた鋳物砂の粉砕物を5℃~70℃の水中において混合撹拌することにより、鋳物砂から表面に付着した無機バインダを分離する混合工程。
(3)無機バインダが分離された鋳物砂を回収し、鋳物砂を攪拌しながら加熱乾燥する工程。
(4)加熱乾燥させた鋳物砂から微粉を除去する工程。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6188502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本願発明者が詳細な検討を行ったところ、特許文献1の再生方法で鋳物砂の再生を繰り返すと、鋳造品の表面への砂の付着量が増加し、鋳造品表面に砂が残ってしまうおそれがあることがわかった。また、シリンダヘッドのウォータージャケットのような細く入り組んだ形状では、砂が流路を閉塞した状態となり、その砂をノックアウトマシンや超音波水洗機等では除去できないという問題が生じた。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面に無機バインダが付着した鋳物砂の再生を繰り返しても鋳造品への砂付着量が増加しにくい鋳物砂再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によると、以下の項目に記載の鋳物砂再生方法が提供される。
【0009】
[項目1]
表面に無機バインダが付着した使用済みの鋳物砂を再生する鋳物砂再生方法であって、
鋳造に使用された砂型を粉砕して鋳物砂を回収する粉砕工程と、
前記粉砕工程の後に、前記鋳物砂を5℃以上100℃以下の水中で攪拌しながら洗う水洗工程と、
前記水洗工程の後に、前記鋳物砂を550℃以上900℃以下に加熱する熱処理工程と、
を包含する、鋳物砂再生方法。
【0010】
本発明の実施形態による鋳物砂再生方法は、水洗工程の後に、鋳物砂を550℃以上900℃以下に加熱する熱処理工程を包含するので、この熱処理工程により、鋳物砂とその表面に残留している無機バインダとの間に存在する水分や無機バインダに含まれる結晶水を無くす(つまり無水化する)ことができる。そのため、本発明の実施形態による鋳物砂再生方法によって再生された鋳物砂で形成した砂型を用いて鋳造を行う場合、水分に起因した、鋳造品への鋳物砂の貼り付きを防止することができる。
【0011】
[項目2]
前記熱処理工程は、前記鋳物砂を動かしながら行われる項目1に記載の鋳物砂再生方法。
【0012】
熱処理工程を、鋳物砂を動かしながら行うと、軟化した無機バインダによって隣接する砂同士が結合することを防止できる。
【0013】
[項目3]
前記水洗工程における水温は、20℃以上100℃以下である項目1または2に記載の鋳物砂再生方法。
【0014】
水洗工程における水温が20℃以上であると、無機バインダの溶解度を十分に高くすることができる。また、後の工程における予熱時間を短くできる。
【0015】
[項目4]
前記水洗工程における水温は、80℃以上100℃以下である項目1または2に記載の鋳物砂再生方法。
【0016】
水洗工程における水温が80℃以上であると、後の工程における予熱時間をいっそう短くできる。
【0017】
[項目5]
前記水洗工程と前記熱処理工程との間に、前記鋳物砂を攪拌しながら100℃以上300℃以下に加熱して乾燥させる乾燥工程をさらに包含する項目1から4のいずれかに記載の鋳物砂再生方法。
【0018】
水洗工程と熱処理工程との間に、鋳物砂を攪拌しながら100℃以上300℃以下に加熱して乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。乾燥工程を行うことにより、砂表面に残留バインダによる被膜を形成しながら平滑な表面を有する乾燥砂を容易に得ることができる。
【0019】
[項目6]
前記水洗工程と前記乾燥工程との間に、前記水洗工程で用いられた水の大部分を前記鋳物砂から分離および除去する脱水工程をさらに包含する項目5に記載の鋳物砂再生方法。
【0020】
水洗工程と乾燥工程との間に、脱水工程を行うことにより、乾燥工程に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0021】
[項目7]
前記水洗工程と前記脱水工程と前記乾燥工程とが同一の設備で行われる項目6に記載の鋳物砂再生方法。
【0022】
水洗工程と脱水工程と乾燥工程とを同一の設備で行うと、鋳物砂の再生に要する設備全体の設置面積を小さくすることができる。
【0023】
[項目8]
前記水洗工程と前記脱水工程と前記乾燥工程とが異なる設備で行われる項目6に記載の鋳物砂再生方法。
【0024】
水洗工程と脱水工程と乾燥工程とを異なる設備で行うと、単位時間当たりの再生量を多くすることができる。
【0025】
[項目9]
前記乾燥工程と前記熱処理工程との間に、換気しながら前記鋳物砂を冷却する冷却工程をさらに包含する項目5から8のいずれかに記載の鋳物砂再生方法。
【0026】
乾燥工程と熱処理工程との間に、換気しながら鋳物砂を冷却する冷却工程を行うと、鋳物砂の結露を防止することができる。
【0027】
[項目10]
前記無機バインダは、珪酸ソーダを含む、項目1から9のいずれかに記載の鋳物砂再生方法。
【0028】
無機バインダとしては、珪酸ソーダ(水ガラス)を含むものを好適に用いることができる。
【0029】
[項目11]
前記珪酸ソーダは、一般式:Na2O・nSiO2(nは0.5以上4.0以下)で表される項目10に記載の鋳物砂再生方法。
【0030】
珪酸ソーダとしては、一般式:Na2O・nSiO2(nは0.5以上4.0以下)で表されるものを好適に用いることができる。
【0031】
[項目12]
前記無機バインダは、一般式:xSiO2・yM2O・zH2O(MはLi+、K+またはNa+)で表されるアルカリ珪酸塩水溶液から形成されており、
前記無機バインダには吸湿剤としてナトリウム含有物が、ナトリウム含有物と前記アルカリ珪酸塩水溶液との質量比が1:4から1:6の範囲内となるように加えられており、
前記無機バインダにはさらに250℃以上の沸点を有するシリコンオイルが界面活性剤としてエマルションの形で添加されており、前記エマルション中におけるシリコンオイルの含有量は、前記無機バインダの質量の8%以上10%以下である請求項1から9のいずれかに記載の鋳物砂再生方法。
【0032】
無機バインダは、一般式:xSiO2・yM2O・zH2O(MはLi+、K+またはNa+)で表されるアルカリ珪酸塩水溶液から形成された、水ガラスベースのバインダであってもよい。その場合、無機バインダには、吸湿剤が加えられていることが好ましい。吸湿剤としては、具体的には、ナトリウム含有物を用いることができる。ナトリウム含有物とアルカリ珪酸塩水溶液との質量比は、1:4~1:6の範囲内であることが好ましい。ナトリウム含有物とアルカリ珪酸塩水溶液との質量比が1:4~1:6の範囲内であると、例えばアルカリ珪酸塩水溶液中のNa2OとSiO2との質量比(Na2O/SiO2)が2.5以上3.5以下(固形分が20%以上40%以下)であるときに、無機バインダが早期に硬化するのを防止し得る。また、この無機バインダには、吸湿性を好適に制御するために、界面活性剤が添加されていることが好ましい。具体的には、250℃以上の沸点を有するシリコンオイルが界面活性剤としてエマルションの形で添加されていることが好ましく、エマルションにおけるシリコンオイルの含有量がバインダの質量の8%以上10%以下であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明の実施形態によると、表面に無機バインダが付着した鋳物砂の再生を繰り返しても鋳造品への砂付着量が増加しにくい鋳物砂再生方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態による鋳物砂再生方法の一態様を示すフローチャートである。
図2】熱処理工程s6において用いられるキルン10を示す図である。
図3】本発明の実施形態による鋳物砂再生方法の別の態様を示すフローチャートである。
図4】実施例、比較例および参考例について、鋳造品表面への砂付着量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本願発明者は、鋳造品の表面に砂が付着するメカニズムを詳細に検討した結果、砂の付着が、鋳物砂の表面に付着した無機バインダ(残留バインダ)と砂との間に存在する水分や、残留バインダに含まれる結晶水に起因していることを見出した。本願発明は、上記知見に基づいてなされたものである。以下、砂付着のメカニズムおよび本発明の実施形態による鋳物砂再生方法を説明する。
【0036】
[鋳造品表面への砂付着のメカニズム]
特許文献1の再生方法で鋳物砂の再生を20回以上繰り返すと、アルミニウム合金製の鋳造品の表面に砂が付着する現象が生じた。
【0037】
鋳造品表面に付着した砂、および、砂と鋳造品表面との界面を観察したところ、砂表面に白い物質が付着していることがわかった。この白い物質は、X線回折法による同定の結果、炭酸ナトリウムの一水和物を主成分として含んでいることが特定された。
【0038】
また、砂と鋳造品表面との界面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、接着剤のような膜が存在することがわかった。この膜をEDS(エネルギー分散型X線分析)で定性分析したところ、ケイ素(Si)や酸素(O)が検出され、膜の成分が無機バインダの成分に似ていることがわかった。
【0039】
再生砂のみをステンレス製のカップに入れて740℃まで加熱すると、カップ内で再生砂どうしが結合する現象が見られた。加熱した再生砂を観察すると、再生砂表層の残留バインダ層が600℃程度で軟化してブリスターが発生し、さらに740℃まで加熱すると平滑化することがわかった。また、ガス分析により、ブリスターから排出されるガスは、水、水素、一酸化炭素、二酸化炭素であることが特定された。
【0040】
これらの事実から、砂の付着は以下のようなメカニズムで発生すると推測される。まず、溶湯に触れる砂型表面では、バインダ成分が600℃以上に加熱されて軟化し、砂と残留バインダとの間に残存する水分、および、残留バインダに含まれる結晶水が、軟化したバインダ成分と反応して水ガラス化する。そして、砂と残留バインダとの間から発生する二酸化炭素や砂型内の二酸化炭素を水ガラス化したバインダが吸収してゲル化する(このとき炭酸ナトリウムが生成される)。その後、アルミニウム合金に付着した状態でバインダが硬化することにより、鋳造品の表面に砂が付着すると考えられる。
【0041】
このように、砂の付着は、鋳物砂の表面に付着した無機バインダ(残留バインダ)と砂との間に存在する水分や、残留バインダに含まれる結晶水に起因していると推測される。
【0042】
[鋳物砂再生方法]
図1を参照しながら、本発明の実施形態による鋳物砂再生方法を説明する。図1は、本発明の実施形態による鋳物砂再生方法の一態様を示すフローチャートである。本発明の実施形態による鋳物砂再生方法は、表面に無機バインダが付着した使用済みの鋳物砂を再生する方法である。
【0043】
<鋳物砂>
鋳物砂としては、公知の種々の耐火性粒状材料を特に制限なく用いることができる。例えば、ケイ砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、合成ムライト砂およびアルミナ系骨材粒子を用いることができる。これらの粒状材料を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで例示した粒状材料のうち、成形型への充填性および鋳造後の砂型崩壊性の観点からは、アルミナ系骨材粒子が好ましい。
【0044】
鋳物砂は、新砂であってもよいし、1回または複数回再生された再生砂であってもよいし、新砂と再生砂との混合物であってもよい。混合物を用いる場合、新砂の質量は、例えば再生砂の質量の0.01倍以上10倍以下であり、好ましくは0.1倍以上10倍以下であり、より好ましくは1倍以上10倍以下である。
【0045】
<無機バインダ>
砂型形成用の無機バインダとしては、例えば、珪酸ソーダ(水ガラス)、粘土、シリカゾル、硫酸塩、リン酸塩および硝酸塩を用いることができる。ここで例示したような無機バインダを単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
例示した無機バインダの中では、珪酸ソーダが好ましく、一般式:Na2O・nSiO2(nは0.5以上4.0以下)で表される珪酸ソーダがより好ましい。このような珪酸ソーダは、ナトリウム酸化物と二酸化ケイ素とのモル比(上記一般式におけるnの値)によって分類され、具体的には、オルト珪酸ソーダ[Na4SiO4(Na2O・0.5SiO2:n=0.5)]、メタ珪酸ソーダ[Na2SiO3(Na2O・SiO2:n=1)]などが挙げられる。また、珪酸ソーダとしては、珪酸ソーダ1号[Na2Si25(Na2O・2SiO2:n=2)]、珪酸ソーダ2号[Na4Si512(Na2O・2.5SiO2:n=2.5)]、珪酸ソーダ3号[Na2Si37(Na2O・3SiO2:n=3)]および珪酸ソーダ4号[Na2Si49(Na2O・4SiO2:n=4)]なども挙げられる。
【0047】
また、無機バインダは、一般式:xSiO2・yM2O・zH2O(MはLi+、K+またはNa+)で表されるアルカリ珪酸塩水溶液から形成された、水ガラスベースのバインダであってもよい。その場合、無機バインダには、吸湿剤(または湿気付与剤)が加えられていることが好ましい。吸湿剤としては、具体的には、ナトリウム含有物を用いることができる。ナトリウム含有物とアルカリ珪酸塩水溶液との質量比は、1:4~1:6の範囲内であることが好ましい。ナトリウム含有物とアルカリ珪酸塩水溶液との質量比が1:4~1:6の範囲内であると、例えばアルカリ珪酸塩水溶液中のNa2OとSiO2との質量比(Na2O/SiO2)が2.5以上3.5以下(固形分が20%以上40%以下)であるときに、無機バインダが早期に硬化するのを防止し得る。また、この無機バインダには、吸湿性(湿気付与性)を好適に制御するために、界面活性剤が添加されていることが好ましい。具体的には、250℃以上の沸点を有するシリコンオイルが界面活性剤としてエマルションの形で添加されていることが好ましく、エマルションにおけるシリコンオイルの含有量がバインダの質量の8%以上10%以下であることがより好ましい。
【0048】
砂型を形成する際、無機バインダの添加量は、鋳物砂に対して、0.2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
<粉砕工程>
まず、鋳造に使用された砂型を粉砕して鋳物砂を回収する(粉砕工程s1)。砂型を粉砕する方法に特に制限はなく、公知の種々の粉砕方法を用いることができる。例えば、粉砕機により粉砕を行うことができる。砂型が中子である場合には、ノックアウトマシン等による砂落としの後、サンドフレッシャー等を用いた細粒化が行われる。
【0050】
<水洗工程>
次に、鋳物砂を5℃以上100℃以下の水中で攪拌しながら洗う(水洗工程s2)。これにより、鋳物砂の表面に付着した無機バインダを水に溶解させてある程度除去することができる。水の使用量は、鋳物砂に付着した無機バインダをある程度除去することができれば、特に制限はなく、例えば、鋳物砂の質量に対して、0.5倍量以上100倍量以下であり、好ましくは0.5倍量以上50倍量以下であり、より好ましくは1倍量以上30倍量以下である。
【0051】
攪拌方法としては、鋳物砂に付着した無機バインダをある程度除去することができれば、特に制限はなく、公知の攪拌方法を用いることができる。例えば、攪拌機(ミキサー)により好適に攪拌を行うことができる。攪拌機の回転数は、鋳物砂に付着した無機バインダを十分に除去する観点、および攪拌により鋳物砂の粒径が不均一になることを防止する観点からは、例えば30rpm以上300rpm以下、好ましくは40rpm以上250rpm以下、より好ましくは50rpm以上200rpm以下である。また、攪拌時間は、例えば5分以上60分以下、好ましくは10分以上50分以下、より好ましくは15分以上40分間以下である。攪拌機による攪拌を行う際の回転数および攪拌時間は、攪拌機の仕様や鋳物砂および無機バインダの種類などに応じて上記範囲から適宜設定され得る。
【0052】
<脱水工程>
続いて、水洗工程s2で用いられた水の大部分を鋳物砂から分離および除去する(脱水工程s3)。脱水方法としては、鋳物砂から水の大部分を分離および除去できれば、特に制限はなく、公知の脱水方法を用いることができる。
【0053】
例えば、砂が流出しないように金網等が設けられた排水口と、圧縮空気を導入するための空気導入孔とを有し、排水口と空気導入孔以外を密閉できる容器を用意する。この容器に、水洗後の水を含む砂を入れ、砂が静止した状態で圧縮空気(例えば0.2MPa以下)を空気導入孔から容器内に導入することにより、砂粒間に保持されている水を追い出して容易に脱水を行うことができる。
【0054】
<乾燥工程>
次に、鋳物砂を攪拌しながら100℃以上300℃以下に加熱して乾燥させる(乾燥工程s4)。脱水後の砂を攪拌しながら、例えば熱風、マイクロ波、過熱蒸気等を砂に当てることにより、乾燥させることができる。これにより、砂表面に残留バインダ成分による皮膜を形成しながら球状の平滑な表面をもつ乾燥砂を得ることができる。
【0055】
<冷却工程>
続いて、換気しながら鋳物砂を所定の温度(例えば60℃)まで冷却する(冷却工程s5)。鋳物砂に例えば冷風を当てることにより、冷却を行うことができる。
【0056】
<熱処理工程>
その後、鋳物砂を550℃以上900℃以下に加熱する(熱処理工程s6)。熱処理は、鋳物砂を550℃以上900℃以下に加熱できれば、特に制限はない。例えば、熱処理を行う装置としてキルンを用いると、鋳物砂を動かしながら550℃以上900℃以下に加熱することができる。熱処理時間は、適宜設定される。例えば、熱処理後の砂の表面を電子顕微鏡で確認し、表面が適切な状態となるように熱処理時間を設定すればよい。あるいは、熱処理後の砂を水中に投入し、溶け出したナトリウムイオンの濃度が適切となるように熱処理時間を設定してもよい。
【0057】
図2に、熱処理工程s6において用いられるキルンの例を示す。図2に示すキルン(ロータリーキルン)10は、胴部(キルン本体)11と、胴部11内に設けられた螺旋翼(フィーダー)12と、胴部11の内部を加熱するバーナー13とを備える。胴部11の一端には、被処理物1(ここでは鋳物砂)を胴部11内に導入するための導入口11aが設けられており、他端には、被処理物1を胴部11から外部に排出するための排出口11bが設けられている。キルン10は、螺旋翼12を回転させながら、導入口11aから導入した被処理物1に熱処理を施し、得られた熱処理物を移送させて排出口から排出する装置である。このようなキルン10を用いることにより、鋳物砂を動かしながら熱処理を行うことができる。なお、図2には、被処理物1がバーナー13の炎に直接曝される構成を例示しているが、キルン10はこのような構成に限定されるものではない。
【0058】
<混合工程>
次に、熱処理後の鋳物砂に所定量(例えば5質量%)の新砂を添加して混合する(混合工程s7)。混合工程s7は、粒度調整と減耗分の補充を目的として行われる。
【0059】
<混錬工程>
その後、さらにバインダ(無機バインダ)を添加して混錬し、混錬砂を得る(混錬工程s8)。このようにして、表面に無機バインダが付着した使用済みの鋳物砂を再生することができる。
【0060】
上述したように、本発明の実施形態による鋳物砂再生方法は、水洗工程s2の後に、鋳物砂を550℃以上900℃以下に加熱する熱処理工程s6を包含するので、この熱処理工程s6により、鋳物砂とその表面に残留している無機バインダとの間に存在する水分や無機バインダに含まれる結晶水を無くす(つまり無水化する、さらに言い換えると最小限にする)ことができる。そのため、本発明の実施形態による鋳物砂再生方法によって再生された鋳物砂で形成した砂型を用いて鋳造を行う場合、水分に起因した、鋳造品への鋳物砂の貼り付きを防止することができる。
【0061】
熱処理工程を、鋳物砂を動かしながら(例えば攪拌したり、振動させたりしながら)行うと、軟化した無機バインダによって隣接する砂同士が結合することを防止できる。鋳物砂が550℃未満になるまで鋳物砂を動かし続けることが好ましい。
【0062】
水洗工程における水温は、20℃以上100℃以下であることが好ましい。水温が20℃以上であると、無機バインダの溶解度を十分に高くすることができる。また、後の工程における予熱時間を短くできる。
【0063】
水洗工程における水温は、80℃以上100℃以下であることがより好ましい。水洗工程における水温が80℃以上であると、後の工程における予熱時間をいっそう短くできる。
【0064】
例示したように、水洗工程s2と熱処理工程s6との間に、鋳物砂を攪拌しながら100℃以上300℃以下に加熱して乾燥させる乾燥工程s4を行うことにより、砂表面に残留バインダによる被膜を形成しながら平滑な表面を有する乾燥砂を容易に得ることができる。
【0065】
なお、熱処理工程s6において砂表面に残留バインダによる被膜を好適に形成できるのであれば、熱処理工程s6が乾燥工程s4を実質的に兼ねることによって、図3に示すように、乾燥工程s4(および冷却工程s5)を省略してもよい。例えば上述したキルン10等を用いて、熱処理工程s6において鋳物砂を攪拌しながら熱処理を行うことができれば、熱処理工程s6が乾燥工程s4を実質的に兼ね得る。
【0066】
また、水洗工程s2と乾燥工程s4との間に、脱水工程s3を行うことにより、乾燥工程s4に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0067】
水洗工程s2と脱水工程s3と乾燥工程s4とは、同一の設備で行われてもよいし、異なる設備で行われてもよい。水洗工程s2と脱水工程s3と乾燥工程s4とを同一の設備で行うと、鋳物砂の再生に要する設備全体の設置面積を小さくすることができる。水洗工程s2と脱水工程s3と乾燥工程s4とを異なる設備で行うと、単位時間当たりの再生量を多くすることができる。
【0068】
なお、乾燥工程s4直後の高温の砂をそのままホッパーへ投入し常温まで冷却すると、ホッパーや砂粒間の熱い空気が冷えて結露を起こすことがある。この結露によって発生する水分と砂の表面の残留バインダが反応すると、ブロッキングが発生する。乾燥工程s4と熱処理工程s6との間に、換気しながら鋳物砂を冷却する冷却工程s5を行うと、鋳物砂の結露を防止することができる。そのため、上述したブロッキングの発生を防止できる。
【0069】
[砂付着を防止する効果の検証結果]
本発明の実施形態による鋳物砂再生方法を用いて実際に鋳物砂を再生し、砂付着防止の効果を検証した結果を説明する。
【0070】
<実施例>
以下のようにして実施例の再生鋳物砂を得た。
【0071】
・粉砕工程
砂落とし工程後に回収された砂型(中子)のかけら(ガラ)を隙間2~4mmのスクリーンを取り付けたサンドフレッシャーに投入し、振動を加えることによりガラどうしを擦れ合わせて細粒化した。目開き寸法850μmの金網を通った鋳物砂を回収した。
【0072】
・水洗工程
遠州鉄工製ミキサーに鋳物砂250kgと水250kgを投入し、インペラを61rpmで20分間回転させて水洗を行った。
【0073】
・脱水工程
上述したミキサー底面に、金網フィルターで砂が流出しないように構成された排水口を設け、圧縮空気を導入する空気導入孔と排水口以外はバルブを閉めて密閉できる状態にした。水洗後、インペラを停止した後、空気導入孔以外のバルブを閉塞するとともに排水口のバルブを開放し、空気導入孔から0.2MPaの圧縮空気をミキサー内に導入した。20分間の圧縮空気導入により含水率5~10%まで脱水を行った。
【0074】
・乾燥工程
上述のミキサーにおいて排気口および熱風吹き込み口のバルブを開き、熱風吹き込み口から300℃の熱風を吹き込みつつ、ミキサーのインペラを81rpmで回転させ、排気口から排気することで、球状の平滑な表面を有する乾燥砂を得た。
【0075】
・冷却工程
上述のミキサーにおいて、乾燥工程後、熱風発生機のヒーターを切って送風運転に切り替え、インペラの回転を27rpmまで低下させ約60℃になるまで攪拌を続けたのち、ホッパーへ排出した。
【0076】
・熱処理工程
乾燥工程後の鋳物砂を遠州鉄工製ロータリーキルンに投入し750℃で10分間加熱した後、500℃まで冷却し、その後鋳物砂を回収した。
【0077】
<比較例>
特許文献1の再生方法によって再生した鋳物砂を用意した。具体的には、熱処理工程を行わない以外は実施例と同様にして鋳物砂を再生した。
【0078】
<参考例>
参考例として、新砂を用意した。
【0079】
<砂付着量>
上述したようにして用意した実施例、比較例、参考例を用いて砂型(中子)を造型し、それらを用いてアルミニウム合金製の鋳造品を製造した。そして、鋳造品の表面に付着している砂の量を検証した。
【0080】
・中子造型
実施例、比較例、参考例の鋳物砂に対し、苛性ソーダ0.2質量%、珪酸ソーダ1.0質量%、ナノシリカ懸濁液0.6質量%を添加・混練した後、成形型へ充填し、脱水硬化後取出して中子を得た。
【0081】
・鋳造
中子を用いて重力鋳造によりシリンダヘッドを鋳造した。シリンダヘッドの材料としてアルミニウム合金AC4Bを用いた。
【0082】
・砂落とし
得られたシリンダヘッドをヨーマー社製ノックアウトマシンに取り付け30秒間の打撃と揺動を加えた。
【0083】
実施例、比較例および参考例について、鋳造品表面への砂付着量を測定した結果を表1および図4に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1および図4から、比較例では、参考例(新砂)に比べて砂の付着量が大幅に増加していることがわかる。これに対し、実施例では、砂の付着量が参考例とほぼ同じであることがわかる。また、実施例では、砂型(中子)の崩壊性も、参考例と同様に良好であった。このように、本発明の実施形態によれば、鋳造品への砂付着量が新砂と遜色ないことが確認された。
【0086】
上述したように、本発明の実施形態による鋳物砂再生方法は、表面に無機バインダが付着した使用済みの鋳物砂1を再生する鋳物砂再生方法であって、鋳造に使用された砂型を粉砕して鋳物砂1を回収する粉砕工程s1と、前記粉砕工程s1の後に、前記鋳物砂1を5℃以上100℃以下の水中で攪拌しながら洗う水洗工程s2と、前記水洗工程s2の後に、前記鋳物砂1を550℃以上900℃以下に加熱する熱処理工程s6と、を包含する。
【0087】
本発明の実施形態による鋳物砂再生方法は、水洗工程s2の後に、鋳物砂1を550℃以上900℃以下に加熱する熱処理工程s6を包含するので、この熱処理工程s6により、鋳物砂1とその表面に残留している無機バインダとの間に存在する水分や無機バインダに含まれる結晶水を無くす(つまり無水化する)ことができる。そのため、本発明の実施形態による鋳物砂再生方法によって再生された鋳物砂1で形成した砂型を用いて鋳造を行う場合、水分に起因した、鋳造品への鋳物砂1の貼り付きを防止することができる。
【0088】
ある実施形態において、前記熱処理工程s6は、前記鋳物砂1を動かしながら行われる。
【0089】
熱処理工程s6を、鋳物砂1を動かしながら行うと、軟化した無機バインダによって隣接する砂同士が結合することを防止できる。
【0090】
ある実施形態において、前記水洗工程s2における水温は、20℃以上100℃以下である。
【0091】
水洗工程s2における水温が20℃以上であると、無機バインダの溶解度を十分に高くすることができる。また、後の工程における予熱時間を短くできる。
【0092】
ある実施形態において、前記水洗工程s2における水温は、80℃以上100℃以下である。
【0093】
水洗工程s2における水温が80℃以上であると、後の工程における予熱時間をいっそう短くできる。
【0094】
ある実施形態において、前記鋳物砂再生方法は、前記水洗工程s2と前記熱処理工程s6との間に、前記鋳物砂1を攪拌しながら100℃以上300℃以下に加熱して乾燥させる乾燥工程s4をさらに包含する。
【0095】
水洗工程s2と熱処理工程s6との間に、鋳物砂1を攪拌しながら100℃以上300℃以下に加熱して乾燥させる乾燥工程s4を行ってもよい。乾燥工程s4を行うことにより、砂表面に残留バインダによる被膜を形成しながら平滑な表面を有する乾燥砂を容易に得ることができる。
【0096】
ある実施形態において、前記鋳物砂再生方法は、前記水洗工程s2と前記乾燥工程s4との間に、前記水洗工程s2で用いられた水の大部分を前記鋳物砂1から分離および除去する脱水工程s3をさらに包含する。
【0097】
水洗工程s2と乾燥工程s4との間に、脱水工程s3を行うことにより、乾燥工程s4に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0098】
ある実施形態において、前記水洗工程s2と前記脱水工程s3と前記乾燥工程s4とが同一の設備で行われる。
【0099】
水洗工程s2と脱水工程s3と乾燥工程s4とを同一の設備で行うと、鋳物砂1の再生に要する設備全体の設置面積を小さくすることができる。
【0100】
ある実施形態において、前記水洗工程s2と前記脱水工程s3と前記乾燥工程s4とが異なる設備で行われる。
【0101】
水洗工程s2と脱水工程s3と乾燥工程s4とを異なる設備で行うと、単位時間当たりの再生量を多くすることができる。
【0102】
ある実施形態において、前記鋳物砂再生方法は、前記乾燥工程s4と前記熱処理工程s6との間に、換気しながら前記鋳物砂1を冷却する冷却工程s5をさらに包含する。
【0103】
乾燥工程s4と熱処理工程s6との間に、換気しながら鋳物砂1を冷却する冷却工程s5を行うと、鋳物砂1の結露を防止することができる。
【0104】
ある実施形態において、前記無機バインダは、珪酸ソーダを含む。
【0105】
無機バインダとしては、珪酸ソーダ(水ガラス)を含むものを好適に用いることができる。
【0106】
ある実施形態において、前記珪酸ソーダは、一般式:Na2O・nSiO2(nは0.5以上4.0以下)で表される。
【0107】
珪酸ソーダとしては、一般式:Na2O・nSiO2(nは0.5以上4.0以下)で表されるものを好適に用いることができる。
【0108】
ある実施形態において、前記無機バインダは、一般式:xSiO2・yM2O・zH2O(MはLi+、K+またはNa+)で表されるアルカリ珪酸塩水溶液から形成されており、前記無機バインダには吸湿剤としてナトリウム含有物が、ナトリウム含有物と前記アルカリ珪酸塩水溶液との質量比が1:4から1:6の範囲内となるように加えられており、前記無機バインダにはさらに250℃以上の沸点を有するシリコンオイルが界面活性剤としてエマルションの形で添加されており、前記エマルション中におけるシリコンオイルの含有量は、前記無機バインダの質量の8%以上10%以下である。
【0109】
無機バインダは、一般式:xSiO2・yM2O・zH2O(MはLi+、K+またはNa+)で表されるアルカリ珪酸塩水溶液から形成された、水ガラスベースのバインダであってもよい。その場合、無機バインダには、吸湿剤が加えられていることが好ましい。吸湿剤としては、具体的には、ナトリウム含有物を用いることができる。ナトリウム含有物とアルカリ珪酸塩水溶液との質量比は、1:4~1:6の範囲内であることが好ましい。ナトリウム含有物とアルカリ珪酸塩水溶液との質量比が1:4~1:6の範囲内であると、例えばアルカリ珪酸塩水溶液中のNa2OとSiO2との質量比(Na2O/SiO2)が2.5以上3.5以下(固形分が20%以上40%以下)であるときに、無機バインダが早期に硬化するのを防止し得る。また、この無機バインダには、吸湿性を好適に制御するために、界面活性剤が添加されていることが好ましい。具体的には、250℃以上の沸点を有するシリコンオイルが界面活性剤としてエマルションの形で添加されていることが好ましく、エマルションにおけるシリコンオイルの含有量がバインダの質量の8%以上10%以下であることがより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の実施形態によると、表面に無機バインダが付着した鋳物砂の再生を繰り返しても鋳造品への砂付着量が増加しにくい鋳物砂再生方法が提供される。
【符号の説明】
【0111】
1 被処理物(鋳物砂)
10 キルン
11 回転胴部
11a 導入口
11b 排出口
12 バーナー
図1
図2
図3
図4