(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】電力増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/30 20060101AFI20221108BHJP
H03F 1/02 20060101ALI20221108BHJP
H03F 3/21 20060101ALI20221108BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20221108BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H03F1/30
H03F1/02 188
H03F3/21
H01L27/06 102A
(21)【出願番号】P 2021571789
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015035
(87)【国際公開番号】W WO2021220772
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2020080183
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、5Gの普及・展開のための基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】佐治 隆司
(72)【発明者】
【氏名】本吉 要
(72)【発明者】
【氏名】松田 慎吾
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1999/029037(WO,A1)
【文献】特開2007-19631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0279185(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0061769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
H01L21/8232-21/8246
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源電圧
が供給される第1電源端子と
、
前記第1電源電圧よりも低電圧の第2電源電圧
が供給される第2電源端子と、
高周波信号が入力される第1ゲートと、前記第1電源端子に電気的に接続され、前記高周波信号が増幅された信号が出力される第1ドレインと、電気的に接地された第1ソースとを有する電力増幅用の第1のトランジスタと、
第1バイアス電圧が印加される第2ゲート
と、前記第1電源端子または前記第2電源端子に電気的に接続された第2ドレインと、電気的に接地された第2ソースとを有し
、前記第1のトランジスタの動作を模倣するモニター用の第2のトランジスタと、
前記第2電源端子から電力供給され、前記第2のトランジスタのドレイン電流またはソース電流を検出し、検出された電流値が所定の電流値となるように前記
第1バイアス電圧を生
成するバイアス回路と
、を備え
、
前記第1バイアス電圧または前記第1バイアス電圧から電圧レベル調整された第2バイアス電圧が前記第1ゲートに印加される
電力増幅装置。
【請求項2】
前記第2ドレインは、前記第2電源端子に電気的に接続されている
請求項1に記載の電力増幅装置。
【請求項3】
前記バイアス回路は、
前記第2のトランジスタのソース電流を検出し、検出された電流値が
前記所定の電流値となるように前記
第1バイアス電圧を生
成する
請求項1または2に記載の電力増幅装置。
【請求項4】
第1電源電圧
が供給される第1電源端子と
、
前記第1電源電圧よりも低電圧の第2電源電圧
が供給される第2電源端子と、
高周波信号が入力される第1ゲートと、前記第1電源端子に電気的に接続され、前記高周波信号が増幅された信号が出力される第1ドレインと、電気的に接地された第1ソースとを有する電力増幅用の第1のトランジスタと、
第1バイアス電圧が印加される第2ゲートと、前記第2電源端子
に電気的に接続された第2ドレイン
と、
電気的に接地された第2ソース
とを有し、前記第1ドレインを流れる第1ドレイン電流が減少した場合に減少し、前記第1ドレイン電流が増加した場合に増加する第2ドレイン電流を前記第2ドレインに発生させるモニター用の第2のトランジスタと、
前記第2電源端子から電力供給され、
前記第2ドレインに接続された電流検出素子で前記第2ドレイン電流を検出し、検出された電流値が所定の電流値となるように前記
第1バイアス電圧を
生成するバイア
ス回路と
、を備え、
前記第1バイアス電圧または前記第1バイアス電圧から電圧レベル調整された第2バイアス電圧が前記第1ゲートに印加される
電力増幅装置。
【請求項5】
前記第2電源電圧は、前記第2のトランジスタが飽和領域で動作する電圧に設定される請求項2または4に記載の電力増幅装置。
【請求項6】
第1電源電圧
が供給される第1電源端子と
、
前記第1電源電圧よりも低電圧の第2電源電圧
が供給される第2電源端子と、
高周波信号が入力される第1ゲートと、前記第1電源端子に電気的に接続され、前記高周波信号が増幅された信号が出力される第1ドレインと、電気的に接地された第1ソースとを有する電力増幅用の第1のトランジスタと、
第1バイアス電圧が印加される第2ゲートと、前記第1電源端子または前記第2電源端子
に電気的に接続された第2ドレイン
と、
電気的に接地された第2ソース
とを有し、
前記第1ドレインを流れる第1ドレイン電流が減少した場合に減少し、前記
第1ドレイン電流が増加した場合に増加する
第2ソース電流を前記第2ソースに発生させるモニター用の第2のトランジスタと、
前記第2電源端子から電力供給され、
前記第2ソースに接続された電流検出素子で前記
第2ソース電流を検出し、検出された電流値が所定の電流値となるように前記
第1バイアス電圧を
生成するバイア
ス回路と
、を備え、
前記第1バイアス電圧または前記第1バイアス電圧から電圧レベル調整された第2バイアス電圧が前記第1ゲートに印加される
電力増幅装置。
【請求項7】
前記第2ドレインは、前記第1電源端子に電気的に接続されている
請求項1または6に記載の電力増幅装置。
【請求項8】
前記第2のトランジスタは、前記第1のトランジスタと同じパッケージ内に収納されている
請求項1から7のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項9】
前記第2のトランジスタは、前記第1のトランジスタ
が形成された半導体基板上に形成されている
請求項1から8のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項10】
前記バイアス回路
の一部は、前記第2のトランジスタ
が形成された第1半導体基板と異なる
第2半導体基板
上に形成されている
請求項1から9のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項11】
前記第
2ドレインまたは
前記第2ソースに接続され
た電流検出
素子は、前記
第1半導体基板が実装され
たサブマウント基板上に実装されている
請求項10に記載の電力増幅装置。
【請求項12】
前記バイアス回路に接続され、前記
第1バイアス電圧の活性状態と不活性状態とを制御する
電圧が印加されるイネーブル制御端子を有する
請求項1から11のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項13】
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタは窒化物半導体デバイスである請求項1から12のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項14】
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタはLDMOSトランジスタである
請求項1から13のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項15】
前記第1のトランジスタを含む複数の電力増幅用トランジスタを有
する、
請求項1から14のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項16】
前記バイアス回路で生成された複数の異なる電圧のバイアス電圧は、前記複数の電力増幅用トランジスタの各ゲートに印加される
請求項15に記載の電力増幅装置。
【請求項17】
イネーブル制御端子を有し、
前記第1のトランジスタは、前記イネーブル制御端子にハイレベルが印加された場合は活性状態となり、ローレベルが印加された場合は不活性状態となる
請求項1から11のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項18】
前記複数の電力増幅用トランジスタは直列に接続されている
請求項15に記載の電力増幅装置。
【請求項19】
前記第2のトランジスタのゲート幅は前記第1のトランジスタのゲート幅より小さい
請求項1から18のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、バイアス電圧を調整するバイアス回路を備えた電力増幅装置に関し、国等の委託研究の成果に係る特許出願(令和2年度、総務省、5Gの普及・展開のための基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)である。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話用基地局などにおいては、高出力かつ高効率な電力増幅装置が求められている。窒化ガリウム(GaN)などの窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)やシリコンベースの半導体を用いた横型拡散MOSFET(Lateral Diffused MOS:LDMOS)は、高電圧動作、高電流密度動作が可能であり、高出力電力増幅装置に適している。
【0003】
一方、信号伝達の高速化や干渉低減を図るために、高周波数帯(例えば、3GHz以上)において、多数の電力増幅装置やアンテナ装置を用いる大規模(Massive)Multiple Input Multiple Output(MIMO)が検討されている。1つの基地局に多数の電力増幅装置を設置するため、電力増幅装置の小型化や調整工数の削減が求められている。
【0004】
電力増幅装置の小型化や調整工数削減に対しては、特許文献1に、電力増幅用トランジスタのドレイン電流をモニターしバイアス電圧を調整するバイアス回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるような技術では、HEMTやLDMOSなどの電力増幅用トランジスタを高電圧で動作させる場合、バイアス回路にも高電圧が印加されてしまう。よって、バイアス回路の消費電力が大きくなる。また、バイアス回路は高耐圧素子で構成する必要があり、コストも大きな課題となる。
【0007】
そこで、本開示は、上記の課題を解決し、消費電力を低減し、かつ、コストを低減する電力増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る電力増幅装置は、第1電源電圧を入力するための第1電源端子と、バイアス電圧が印加される第1ゲートを有し、前記第1電源端子から電力供給される電力増幅用の第1のトランジスタと、前記第1電源電圧よりも低電圧の第2電源電圧を入力するための第2電源端子と、前記バイアス電圧が印加される第2ゲートを有し、前記第1電源端子または前記第2電源端子から電力供給され、前記第1のトランジスタの動作を模倣するモニター用の第2のトランジスタと、前記第2電源端子から電力供給され、前記第2のトランジスタのドレイン電流またはソース電流に応じて前記バイアス電圧を生成および調整するバイアス回路とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る電力増幅装置によれば、消費電力を低減し、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態1に係る電力増幅装置を備えた電力増幅システムの一構成例を示す回路図である。
【
図1B】
図1Bは、実施の形態1に係る電力増幅装置を備えた電力増幅システムの他の構成例を示す回路図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るバイアス回路の一構成を示す回路図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る電力増幅装置の一構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る電力増幅装置の供給電圧設定例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係るバイアス回路の変形例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2に係る電力増幅装置を備えた電力増幅システムの一構成例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係るバイアス回路の一構成を示す回路図である。
【
図8A】
図8Aは、実施の形態3に係る電力増幅装置を備えた電力増幅システムの一構成例を示す回路図である。
【
図8B】
図8Bは、実施の形態3に係る電力増幅装置を備えた電力増幅システムの他の構成例を示す回路図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3に係るバイアス回路の変形例を示す回路図である。
【
図10】
図10は、実施の形態4に係る電力増幅装置の一構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の電力増幅装置について、図面を参照しながら説明する。但し、詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、各図は必ずしも厳密に図示したものではない。これらは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、当業者が本開示を十分に理解するためのものであって、請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1に係る電力増幅装置を備えた電力増幅システムについて、
図1A~4を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
図1Aは、本実施の形態1の電力増幅装置を備えた電力増幅システムの一構成を示す回路図である。
【0015】
図1Aにおいて、電力増幅システムは、RF入力信号をRF出力信号に増幅する電力増幅装置100と、電力増幅装置100へ電力を供給する電源回路900とを備える。電力増幅システムは、例えば、携帯電話や衛星通信の基地局に用いられる。なお、電力増幅システムは、基地局に限られず、例えば、レーダー送信機、ワイヤレス電力送信機、電子レンジ、マイクロ波加熱装置などに用いられてもよい。
【0016】
電力増幅装置100は、外部入出力端子として、IN端子、OUT端子、VDD端子、VBB端子、VGG端子、GND端子を備える。また、電力増幅装置100は、例えば、電力増幅用の第1のトランジスタ101、バイアス回路120、キャパシタ102および105、インダクタ103および104などから構成される。
【0017】
IN端子は、キャパシタ102を介して第1のトランジスタ101のゲートに接続されており、RF入力信号が入力される端子である。
【0018】
OUT端子は、キャパシタ105を介して第1のトランジスタ101のドレインに接続されており、RF出力信号が出力される端子である。
【0019】
VDD端子は、第1電源電圧VDDを入力するための端子であり、インダクタ104を介して第1のトランジスタ101のドレインに接続されている。VDD端子は、電源回路900から第1のトランジスタ101に第1電源電圧VDDによる電力を供給するための端子である。また、VDD端子は、第1電源端子とも呼ばれる。
【0020】
VBB端子は、第1電源電圧VDDよりも低電圧の第2電源電圧VBBを入力するための端子である。VBB端子は、電源回路900からバイアス回路120に第2電源電圧VBBによる電力を供給するための端子である。また、VBB端子は、第2電源端子とも呼ばれる。
【0021】
VGG端子は、バイアス電圧生成用の第3電源電圧VGGを入力するための端子である。VGG端子は、電源回路900からバイアス回路120に第3電源電圧VGGによる電力を供給するための端子である。第3電源電圧VGGは、バイアス電圧VBIASの生成に用いられる。また、VGG端子は、第3電源端子とも呼ばれる。
【0022】
GND端子は、電力増幅装置100内部の基準電位であるGND配線またはGND配線層を接地するための端子である。
【0023】
なお、VDD端子、VGG端子等の端子類の形態は、電力増幅装置の実装形態に依存して異なるが、例えば、リードピン、リードレスピン、ワイヤボンディング用パッド,半田ボール用のパッド,コネクタの端子等である。
【0024】
第1のトランジスタ101は、IN端子からキャパシタ102を介して入力されたRF入力信号を増幅し、RF出力信号をOUT端子へキャパシタ105を介して出力する。第1のトランジスタ101のゲートには、バイアス調整回路150からバイアス電圧VBIASがインダクタ103を介して印加されてゲートバイアスされている。第1のトランジスタ101のドレインには電源回路900から第1電源電圧VDDがインダクタ104を介して印加されている。第1のトランジスタ101のソースは接地されている。なお、第1のトランジスタ101のソースを第1ソース、ドレインを第1ドレイン、ゲートを第1ゲートと略すことがある。また、第1のトランジスタ101のソース電流を第1ソース電流、ドレイン電流を第1ドレイン電流、ゲート電流を第1ゲート電流と略すことがある。
【0025】
バイアス回路120は、第2電源端子から電力供給され、第2のトランジスタ121のドレイン電流またはソース電流に応じてバイアス電圧VBIASを生成および調整する。そのため、バイアス回路120は、入出力端子として、Vbb端子、Vgg端子、VBIAS端子を有する。Vbb端子は第2電源端子つまりVBB端子に接続される。Vgg端子は第3電源端子つまりVGG端子に接続される。VBIAS端子はインダクタ103に接続される。バイアス回路120は、例えば、第2のトランジスタ121、電流検出抵抗122、バイアス調整回路150などから構成される。
【0026】
第2のトランジスタ121は、第1のトランジスタ101の動作を模倣するモニター用のトランジスタである。第2のトランジスタ121が模倣する動作は、主に、第1のトランジスタ101の直流電流の挙動に関する動作である。そのため、第2のトランジスタ121は、ゲートにバイアス調整回路150からバイアス電圧VBIASが印加される。第2のトランジスタ121のソースは接地されている。すなわち、第2のトランジスタ121のゲート電圧は、第1のトランジスタ101と同じ直流電圧であるバイアス電圧VBIASでバイアスされている。なお、第2のトランジスタ121のソースを第2ソース、ドレインを第2ドレイン、ゲートを第2ゲートと略すことがある。また、第2のトランジスタ121のソース電流を第2ソース電流、ドレイン電流を第2ドレイン電流、ゲート電流を第2ゲート電流と略すことがある。第2のトランジスタ121は、第1のトランジスタ101の動作の模倣として、第1ドレイン電流に対応する第2ドレイン電流を第2ドレインに発生させる。なお、第1ドレイン電流に対応する第2ドレイン電流というのは、第2ドレイン電流が第1ドレイン電流に略比例していることをいい、完全に比例していなくてもよい。
【0027】
電流検出抵抗122は、第2のトランジスタ121のドレイン電流を検出するための抵抗であり、例えば、抵抗値の製造ばらつきや温度変動の小さい高精度抵抗である。電流検出抵抗122の2端子のうちの一方は第2のトランジスタ121のドレインに接続され、他方はVbb端子に接続されている。
【0028】
バイアス調整回路150は、電流検出抵抗122の両端に接続された電流検出アンプ160、Vgg端子およびインダクタ103に接続された電圧設定回路170などから構成される。電流検出アンプ160は、電流検出抵抗122の両端電圧を増幅し、電圧設定回路170に第2のトランジスタ121のドレイン電流情報を出力する。例えば、ドレイン電流情報は、第2のトランジスタ121のドレイン電流に略比例する電流値または電圧値である。
【0029】
電圧設定回路170は、第2のトランジスタ121のドレイン電流情報を基にバイアス電圧VBIASを設定および調整する。
【0030】
電源回路900は、第1電源電圧VDD、第2電源電圧VBB、第3電源電圧VGGを生成し、電力増幅装置100に供給する。
【0031】
なお、
図1Aにおいて第2のトランジスタ121はバイアス回路120の外部に備えられてもよい。この場合の構成例を
図1Bに示す。
図1Bの電力増幅装置100sは、
図1Aの電力増幅装置100と比べて、第2のトランジスタ121がバイアス回路120sの内部ではなく外部に備えられる点が異なっている。これ以外は、同様である。
【0032】
次に、バイアス回路120の構成例について説明する。
【0033】
図2は、本実施の形態1のバイアス回路120の一構成を示す回路図である。特に、
図1Aに示す電流検出アンプ160と電圧設定回路170の詳細な構成の一例を示す回路図である。
【0034】
電流検出アンプ160は、NPNトランジスタ161、PNPトランジスタ162、抵抗163および164などから構成される。PNPトランジスタ162のベースには、Vbb端子からの第2電源電圧VBBが抵抗163および164によって抵抗分割された基準電圧Vrefが入力される。PNPトランジスタ162のエミッタには、NPNトランジスタ161のエミッタ電圧が入力される。NPNトランジスタ161のベースには、第2電源電圧VBBから電流検出抵抗122による電圧降下分が差し引かれた電圧が印加されているため、電流検出抵抗122による電圧降下分が大きいほど、PNPトランジスタ162のエミッタ電圧は低下し、PNPトランジスタ162のコレクタ電流は減少する。すなわち、第2のトランジスタ121のドレイン電流が増加するほど、PNPトランジスタ162のコレクタ電流は減少する。PNPトランジスタ162のコレクタ電流は、上記のドレイン電流情報の一例である。
【0035】
電圧設定回路170は、抵抗171および172などから構成される。抵抗171は、PNPトランジスタ162のコレクタと抵抗172に接続される。抵抗172の2端子のうち一端は、Vgg端子に接続され、他端は抵抗171に接続される。抵抗171と抵抗172の接続点は第2のトランジスタ121のゲートに接続される。PNPトランジスタ162のコレクタ電流が抵抗171および172によって電流-電圧変換され、バイアス電圧VBIASが生成される。PNPトランジスタ162のコレクタ電流が減少するほど、バイアス電圧VBIASが低くなる。バイアス電圧VBIASが低くなると、第2のトランジスタ121のドレイン電流が減少する。第2のトランジスタ121のドレイン電流が所定の電流値よりも減少するとバイアス電圧VBIASが高くなる。
【0036】
このように、電流検出アンプ160と電圧設定回路170を備えたバイアス調整回路150と、電流検出抵抗122によって第2のトランジスタ121のドレイン電流を所定の電流値に調整するフィードバック制御回路が構成される。
【0037】
次に、半導体基板を有する電力増幅装置100の構成例について説明する。
【0038】
図3は、本実施の形態1の電力増幅装置100の一構成として電力増幅装置100tを示す回路図である。特に、
図1Aに示す電力増幅装置100の一部を2つの半導体基板上に形成した場合の構成を示す回路図である。
【0039】
電力増幅装置100tは、第1の半導体基板190と第2の半導体基板191を備える。
図1Aに示されたバイアス回路120の構成要素の一部は、第1の半導体基板190と第2の半導体基板191に分かれて形成されている。また、第1の半導体基板190および第2の半導体基板191は、電流検出抵抗122、キャパシタ102および105、インダクタ103および104とともに、多層樹脂基板などのサブマウント基板に実装され、電力増幅装置100tを構成する。つまり、電力増幅装置100tは、サブマウント基板として構成されてもよい。
【0040】
第1の半導体基板190は、例えば、シリコン(Si)やシリコンカーバイド(SiC)などの基板上に形成された窒化ガリウム(GaN)系半導体基板であり、VG1端子、VG2端子、VD1端子、VD2端子を備える。第1の半導体基板190上には、第1のトランジスタ101と第2のトランジスタ121が形成される。第1のトランジスタ101と第2のトランジスタ121は、HEMT型のノーマリーオントランジスタである。第1のトランジスタ101は、例えば、ゲート幅Wg1が3mmである。第2のトランジスタ121は、例えば、ゲート幅Wg2が0.4mmであり、第1のトランジスタ101とはゲート幅は異なるが、デバイス構造は同じである。第1のトランジスタ101のゲートには、バイアス電圧VBIASがインダクタ103およびVG1端子を介して印加されてゲートバイアスされ、IN端子から入力されたRF入力信号を増幅する。第1のトランジスタ101のドレインには第1電源電圧VDDがインダクタ104およびVD1端子を介して印加され、RF入力信号を増幅したRF出力信号をOUT端子へ出力する。第2のトランジスタ121のゲートには、バイアス電圧VBIASがVG2端子を介して印加される。第2のトランジスタ121のドレインには第2電源電圧VBBが電流検出抵抗122およびVD2端子を介して印加される。第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121は第1の半導体基板上で同じ温度変化を受けるので、温度変化による第1のトランジスタの特性変動を、第2のトランジスタでより正確にモニターすることができる。例えば、温度変化による第1ドレイン電流の変動をより正確に第2ドレイン電流に反映させることができる。
【0041】
第2の半導体基板191は、例えば、ガリウム砒素(GaAs)系半導体基板であり、Vbb端子、Vbd端子、Vgg端子、VBIAS端子を備える。第2の半導体基板191上には、電流検出アンプ160と電圧設定回路170が形成され、
図1Aのバイアス調整回路150に相当する。電流検出アンプ160は、Vbb端子とVbd端子を介して、電流検出抵抗122の両端電圧が入力され、電圧設定回路170に第2のトランジスタ121のドレイン電流情報を出力する。電圧設定回路170は、第2のトランジスタ121のドレイン電流情報を基にバイアス電圧VBIASを調整し、VBIAS端子から出力する。
【0042】
以上のように構成された本実施の形態1の電力増幅装置100の動作を説明する。電力増幅用の第1のトランジスタ101は、IN端子からゲートに入力されたRF入力信号を増幅し、ドレインに接続されたOUT端子へRF出力信号を出力する。第1のトランジスタ101がAB級の動作クラスになるように、第1のトランジスタ101のゲートには、バイアス回路120からバイアス電圧VBIASが印加されている。バイアス電圧VBIASは、例えば、約-2.5Vである。第1のトランジスタ101のドレインには、電源回路900から第1電源電圧VDDが印加され、電力増幅のための電力が供給されている。第1電源電圧VDDは、例えば、40Vである。なお、ゲートやドレインに接続されたキャパシタ102および105によって、IN端子からOUT端子へ高周波信号は通過するが、直流電流は流れない。また、ゲートやドレインに接続されたインダクタ103および104によって、バイアス回路120や電源回路900から直流電流は流れるが、高周波信号はバイアス回路120や電源回路900へ伝達されない。IN端子からのRF入力信号は、第2のトランジスタ121にも流れないので、第2のトランジスタ121は第1のトランジスタ101のRF入力信号の増幅動作ではなく、直流動作を模倣することになる。なお、バイアス回路120や電源回路900への高周波信号を遮断または低減し、直流電圧および直流電流を通過させる手段は、インダクタ103でなくてもよく、例えば、抵抗とキャパシタなどから構成されるローパスフィルタなどでもよい。
【0043】
以下に、バイアス回路120の動作について詳細に説明する。第1のトランジスタ101がAB級の動作クラスになるように、バイアス回路120から出力されるバイアス電圧VBIASは設定される。RF入力信号が無信号である時の第1のトランジスタ101のドレイン電流、いわゆるアイドル電流Idq1を所定の値、例えば、75mA(ゲート幅Wg=1mmあたり25mA)になるようにバイアス電圧VBIASが設定される。ここで、第1のトランジスタ101の特性、例えば、しきい値電圧や相互コンダクタンスは、製造ばらつきや温度依存性によってばらつく。バイアス電圧VBIASが固定された電圧値である場合、第1のトランジスタ101の特性ばらつきによって、アイドル電流Idq1もばらつき、電力増幅装置の主要特性である、電力効率、電力利得、線形性などがばらつき問題となる。そのため、バイアス回路120は、第1のトランジスタ101の特性がばらついても、アイドル電流Idq1が所定の値となるようにバイアス電圧VBIASを調整する機能を有する。
【0044】
バイアス回路120は、電源回路900から第2電源電圧VBBと第3電源電圧VGGが印加されている。第2電源電圧VBBは、例えば、5Vであり、第3電源電圧VGGは、例えば、-5Vである。第2のトランジスタ121は、第1のトランジスタ101と同じバイアス電圧VBIASでゲートバイアスされており、ドレイン電流Idq2が第2ドレイン電流として流れる。第2のトランジスタ121には、インダクタ103によってRF入力信号が入力されないため、ドレイン電流Idq2はRF入力信号にかかわらず、一定である。ドレイン電流Idq2は、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1に略比例し、例えば、10mAである。なお、「略比例」とは、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121は半導体デバイスであり、例え、同じドレイン電圧およびゲート電圧が印加されてもそれぞれのドレイン電流が完全な比例関係になることは稀であるため、実質的な比例関係であることを意味する。そのため、第2のトランジスタ121のドレイン電流Idq2を検出することで、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1をモニターすることができる。また、第2のトランジスタ121は、第1のトランジスタ101の製造ばらつきや温度依存性による特性ばらつきと連動するように、第1のトランジスタ101と同じデバイス構造で同じ第1の半導体基板190に形成され、一つのパッケージ内に収納されている。なお、第1のトランジスタ101と第2のトランジスタ121は、別の半導体基板に形成されていてもよい。その場合も、同じパッケージ内に収納され、熱結合されていてもよい。
【0045】
図4は、本実施の形態1の電力増幅装置100の供給電圧設定例を示す図である。より詳しくは、
図4の(a)は、第1のトランジスタ101のドレイン電圧VD1を横軸とし、ドレイン電流ID1を縦軸とし、所定のバイアス電圧VBIASをゲートに印加した場合の特性図である。
図4の(b)は、第2のトランジスタ121のドレイン電圧VD2を横軸とし、ドレイン電流ID2を縦軸とし、所定のバイアス電圧VBIASをゲートに印加した場合の特性図である。
【0046】
第1のトランジスタ101のドレインには第1電源電圧VDDが印加され、
図4の(a)に示すように、飽和領域で動作し、アイドル電流Idq1が流れる。
図4の(a)では、第1電源電圧VDDは40Vであり、アイドル電流Idq1が75mAである例を示している。
【0047】
一方、第2のトランジスタ121のドレインには第2電源電圧VBB(=5V)が印加され、
図4の(b)に示すように、飽和領域で動作し、ドレイン電流Idq2(=10mA)が流れる。
図4の(b)では、第2電源電圧VBBは5Vであり、ドレイン電流Idq2が10mAである例を示している。
【0048】
第2のトランジスタ121も飽和領域で動作すれば、第1のトランジスタ101とドレインへの供給電圧が大きく異なっても、ドレイン電流の比は、ゲート幅の比に近い値となる。よって、第2のトランジスタ121が飽和領域で動作するように第2電源電圧VBBを設定してもよい。なお、線形領域で動作させた場合であっても、所望の精度でドレイン電流の比を得ることができれば問題ない。また、厳密には、電流検出抵抗122による電圧降下によって、第2のトランジスタ121のドレイン電圧は、第2電源電圧VBBよりも低下する。そのため、電流検出抵抗122の抵抗値は、電流検出精度が許容できる範囲で低く設定し、電圧降下を小さくしてもよい。
【0049】
電流検出抵抗122は、第2のトランジスタ121のドレイン電流Idq2を検出するための抵抗であり、例えば、100Ωである。ドレイン電流Idq2が、例えば、10mA流れると、電流検出抵抗122の両端電圧(検出電圧Vdetect)は1.0Vとなる。
【0050】
電流検出アンプ160は、抵抗163および164によって第2電源電圧VBBを抵抗分割し、基準電圧Vrefを生成する。抵抗163および164は、例えば、それぞれ、3.4kΩ、1.6kΩであり、基準電圧Vrefは、1.6Vである。NPNトランジスタ161およびPNPトランジスタ162は、検出電圧Vdetectと基準電圧Vrefに応じたコレクタ電流を流し、電圧設定回路170へ出力する。
【0051】
電圧設定回路170は、抵抗171および172によって、PNPトランジスタ162のコレクタ電流を電流-電圧変換し、バイアス電圧VBIASを生成する。抵抗171および172は、例えば、共に、1kΩであり、PNPトランジスタ162のコレクタ電圧と第3電源電圧VGGの中間電位がバイアス電圧VBIASとなる。
【0052】
以上により、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1が、例えば、温度変化などにより減少した場合、略比例関係にある第2のトランジスタ121のドレイン電流Idq2が減少する。NPNトランジスタ161のベース電圧が上昇し、PNPトランジスタ162のコレクタ電流が増加する。これにより、バイアス電圧VBIASが上昇し、第2のトランジスタ121のドレイン電流Idq2が増加する。第2のトランジスタ121と略比例関係にある第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1も増加する。したがって、バイアス回路120は、電力増幅用の第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1が製造ばらつきや温度依存性などにより、所定の電流値よりも減少すると、アイドル電流Idq1を増加させるように動作することができる。
【0053】
一方、前述とは逆に、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1が増加した場合には、NPNトランジスタ161のベース電圧が低下し、PNPトランジスタ162のコレクタ電流が減少する。これにより、バイアス電圧VBIASが低下し、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1が減少させることができる。したがって、バイアス回路120は、電力増幅用の第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1の増減に応じてバイアス電圧VBIASを制御し、アイドル電流Idq1が一定になるように制御することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態1の電力増幅装置は、電力増幅用の第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1をモニターしバイアス電圧VBIASを調整することで、製造ばらつきや温度依存性に対してアイドル電流Idq1のばらつきを低減し、所定の動作クラスで動作させることができる。また、第1のトランジスタ101のドレインには、例えば、40Vが印加されて高電圧動作することで、電力効率を高くすることができる一方、バイアス回路120に印加される供給電圧は、例えば、5V以下となり、消費電力を低減することができる。また、バイアス回路120は、第2のトランジスタ121を除いて、低耐圧素子で構成することができ、製造コストを低減できる。
【0055】
なお、本実施形態では、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121を窒化ガリウム(GaN)系半導体基板である第1の半導体基板190上に形成したHEMT型のトランジスタとしたが、シリコン(Si)系半導体基板上に形成されたLDMOSでもよい。なお、ノーマリーオフトランジスタの場合、第3電源電圧VGGを接地レベルに設定してもよいし、または、正の電圧に設定してもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、バイアス調整回路150をガリウム砒素(GaAs)系半導体基板である第2の半導体基板191上に形成したが、シリコン(Si)系半導体基板上に形成してもよい。また、第2のトランジスタ121と同じ半導体基板上に形成してもよい。例えば、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121は、10V以上の高電圧で動作するシリコン系LDMOSであり、バイアス調整回路150は、10V以下の低電圧で動作するシリコン系相補型MOS(Complementary MOS:CMOS)回路であってもよい。
【0057】
なお、本実施形態では、電流検出抵抗122は、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1のばらつきに対して影響が大きいため、第2の半導体基板191には形成しなかったが、第2の半導体基板191に形成してもよい。電流検出アンプ160内のトランジスタなどの温度依存性を相殺するように、電流検出アンプ160の近くに配置してもよい。また、第1の半導体基板190に形成してもよい。第1のトランジスタ101の近くに配置し、第1のトランジスタ101の温度に依存して抵抗値を変化させ、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1に温度依存性をもたせてもよい。例えば、第1のトランジスタ101が高温ほど電流検出抵抗122の抵抗値を上昇させることで、アイドル電流Idq1が減少し、電力効率が改善され、発熱を低減できる。さらに、検査工程などにおいてレーザートリミングなどによる抵抗調整を行ってもよい。また、ユーザーが抵抗値を調整できる可変抵抗器であってもよい。
【0058】
なお、本実施形態では、電流検出抵抗122を用いて第2のトランジスタ121のドレイン電流を検出するバイアス回路120を説明したが、その他の電流検出方法を用いてもよい。バイアス回路120の変形例として、例えば、
図5にカレントミラー回路を用いたバイアス回路120aを示す。バイアス回路120aは、P型MOSFET151および152によって構成されたカレントミラーを含むバイアス調整回路150aを備える。カレントミラーによって第2のトランジスタ121のドレイン電流に比例した電流を生成し、電流検出抵抗153で電流-電圧変換を行う。第2のトランジスタ121のドレイン電流に比例した電圧が電流検出アンプ160に入力され、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
なお、本実施形態では、電流検出アンプ160として、NPNトランジスタ161およびPNPトランジスタ162による構成について説明したが、オペアンプなどの演算回路で構成してもよい。
【0060】
なお、電力増幅装置100は、IN端子やOUT端子のインピーダンスを50Ωなどに調整するための整合回路を内蔵していてもよい。さらに、整合回路は、キャパシタ102および105、インダクタ103および104などと共に、第1のトランジスタ101が形成された第1の半導体基板190上、または、バイアス調整回路150が形成された第2の半導体基板191上に形成されていてもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、第1のトランジスタ101と第2のトランジスタ121のソースは、接地していたが、抵抗やインダクタを介して接地してもよい。
【0062】
なお、本実施形態では、第1のトランジスタ101のゲートと第2のトランジスタ121のゲートは、インダクタ103を介して接続されていたが、抵抗やインダクタをさらに挿入してもよい。また、第2のトランジスタ121のゲートとGNDの間にキャパシタを挿入し、ゲート電圧を安定させてもよい。また、第2のトランジスタ121のゲートには、レベルシフト回路などによってバイアス電圧VBIASを電圧シフトさせて入力してもよい。レベルシフト回路は、電圧設定回路170内に抵抗を追加し、第1のトランジスタ101と第2のトランジスタ121に異なるバイアス電圧VBIASを供給できるようにしてもよい。
【0063】
なお、本実施形態では、第1のトランジスタ101と第2のトランジスタ121のデバイス構造を同一としたが、異なっていてもよい。例えば、ゲート長などのゲート構造が異なっていてもよい。
【0064】
なお、本実施形態では、電源回路900から印加される第1電源電圧VDDは40Vで一定としたが、変動してもよい。例えば、エンベロープトラッキング増幅装置のように、RF入力信号によって第1電源電圧VDDを変化させてもよい。その場合、第2電源電圧VBBは一定の電圧であってもよいし、第1電源電圧VDDに連動させてもよい。
【0065】
以上説明してきたように実施の形態1に係る電力増幅装置100は、第1電源電圧VDDを入力するための第1電源端子と、バイアス電圧VBIASが印加される第1ゲートを有し、第1電源端子から電力を供給される電力増幅用の第1のトランジスタ101と、第1電源電圧VDDよりも低電圧の第2電源電圧VBBを入力するための第2電源端子と、バイアス電圧VBIASが印加される第2ゲートを有し、第1電源端子または第2電源端子から電力供給され、第1のトランジスタ101の動作を模倣するモニター用の第2のトランジスタ121と、第2電源端子から電力供給され、第2のトランジスタ121のドレイン電流またはソース電流に応じてバイアス電圧VBIASを生成および調整するバイアス回路120とを備える。
【0066】
これによれば、バイアス回路120の消費電力を低減することができ、しかも、バイアス回路120が耐圧の低い汎用性のある低コスト素子で構成できることからコストを低減することができる。
【0067】
ここで、第2のトランジスタ121は、第2電源端子から電力供給されてもよい。
【0068】
これによれば、さらに、第2のトランジスタ121の消費電力を低減することができる。
【0069】
ここで、バイアス回路120は、第2のトランジスタ121のソース電流に応じてバイアス電圧VBIASを生成および調整してもよい。
【0070】
これによれば、ソース電流はドレイン電流と比べてより低い電圧値として検出可能であり、バイアス回路をより低電圧動作させることができ、さらに消費電力を低減することができる。
【0071】
また、実施の形態1に係る電力増幅装置100は、第1電源電圧VDDを入力するための第1電源端子と、第1電源端子から電力供給される第1ドレイン、接地された第1ソース、および、高周波信号を入力するための第1ゲートを有する電力増幅用の第1のトランジスタ101と、第1電源電圧VDDよりも低電圧の第2電源電圧VBBを入力するための第2電源端子と、第1のトランジスタ101の第1ゲートにバイアス電圧VBIASを印加するバイアス回路120とを備え、バイアス回路120は、第2電源端子から電力供給される第2ドレイン、接地された第2ソース、および、第1ゲートに電気的に接続された第2ゲートを有し、第1ドレインを流れる第1ドレイン電流に対応する第2ドレイン電流を第2ドレインに発生させるモニター用の第2のトランジスタ121と、第2電源端子から電力供給され、第2ドレイン電流に応じてバイアス電圧を調整するバイアス調整回路150とを有する。
【0072】
これによれば、バイアス回路の消費電力を低減することができ、しかも、バイアス回路が耐圧の低い汎用性のある低コスト素子で構成できることからコストを低減することができる。
【0073】
ここで、第2電源電圧VBBは、第2のトランジスタ121が飽和領域で動作する電圧に設定されてもよい。
【0074】
これによれば、第2のトランジスタのドレイン電圧依存性が安定する飽和領域で使用することで第1のトランジスタと第2のトランジスタとの電源電圧特性の違いを緩和することができる。
【0075】
ここで、第2のトランジスタ121は、第1のトランジスタ101と同じパッケージ内に収納されていてもよい。
【0076】
これによれば、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121はパッケージ内で同じ温度変化を受けるので、温度変化による第1のトランジスタの特性変動を、第2のトランジスタでより正確にモニターすることができる。
【0077】
ここで、第2のトランジスタ121は、第1のトランジスタ101と同じ第1の半導体基板190上に形成されていてもよい。
【0078】
これによれば、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121は第1の半導体基板190上で同じ温度変化を受けるので、温度変化による第1のトランジスタの特性変動を、第2のトランジスタで正確にモニターすることができる。
【0079】
ここで、バイアス回路120の少なくとも一部は、第2のトランジスタ121とは異なる半導体基板に形成されていてもよい。
【0080】
これによれば、バイアス回路120は、例えば、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121を有する第1の半導体基板190とは異なる、安価な第2の半導体基板191で構成可能であることから、よりコストを低減することができる。
【0081】
ここで、電力増幅装置100は、第2のトランジスタ121のドレインに接続される電流検出抵抗122と、半導体基板が実装されたサブマウント基板とを備え、電流検出抵抗は、サブマウント基板上に実装されていてもよい。
【0082】
これによれば、半導体基板に形成される抵抗よりも、ばらつきまたは温度特性の点で精度の高い抵抗素子を電流検出抵抗122として使用することが容易である。また、電流検出抵抗122を半導体基板の外部に構成することによって、サブマウント基板に実装する製造段階において第2ドレイン電流値を容易に調整することが可能になる。電流検出抵抗122を半導体基板の外部に構成しても、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121を有する第1の半導体基板190や電流検出アンプ160および電圧設定回路170を有する第2の半導体基板191の端子数を増加させない。
【0083】
ここで、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタ121は窒化物半導体デバイスであってもよい。
【0084】
これによれば、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタが高周波数かつ高電圧動作する窒化物半導体であってもバイアス回路は低耐圧の汎用的な回路部品で容易に作製可能である。
【0085】
ここで、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタ121はLDMOSトランジスタであってもよい。
【0086】
これによれば、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタが高周波数かつ高電圧動作するLDMOSトランジスタであってもバイアス回路は低耐圧の汎用的な回路部品で容易に作製可能である。
【0087】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る電力増幅装置を備えた電力増幅システム装置について、
図6および
図7を参照しながら説明する。
【0088】
実施の形態2では、イネーブル機能を備えた電力増幅装置について説明する。なお、実施の形態1と重複する説明は省略する。
【0089】
図6は、本実施の形態2の電力増幅装置を備えた電力増幅システムの一構成例を示す回路図である。
図6の電力増幅システムは、実施の形態1の電力増幅装置を備えた電力増幅システムを示す
図1Aと比較して、電力増幅装置100の代わりに電力増幅装置200を備える点が異なる。以下、異なる点を中心に説明する。電力増幅装置200は、
図1Aの電力増幅装置100と比較して、バイアス回路120の代わりにバイアス回路220を備え、バイアス電圧の活性状態と不活性状態とを制御するためのイネーブル制御端子としてEN端子が追加されている点が異なる。バイアス回路220は、Enable端子を介して電力増幅装置200のEN端子に接続された電流検出アンプ260と電圧設定回路170などから構成されたバイアス調整回路250を備える。
【0090】
なお、
図6において第2のトランジスタ121は、
図1Bのように,バイアス回路220の外部に備えられる構成であってもよい。
【0091】
また、
図7は、本実施の形態2の電力増幅装置のバイアス回路220の一構成例を示す回路図である。実施の形態1のバイアス回路120を示す
図2と比較して、Enable端子と、インバータ回路265および266、P型MOSFET267を備えている点が異なる。Enable端子は、インバータ回路265および266を介してP型MOSFET267のゲートに接続される。P型MOSFET267のソースには、第2電源電圧VBBが印加される。また、P型MOSFET267のドレインは、基準電圧Vrefを生成するための抵抗163および164の接続点に接続されている。
【0092】
以上のように構成された本実施の形態2に係る電力増幅装置の動作について、実施の形態1と異なるイネーブル機能を中心に説明する。
【0093】
バイアス回路220は、電力増幅装置200のEN端子電圧に応じて、バイアス電圧VBIASを切り替え、第1のトランジスタ101の動作を活性状態(ON状態)と不活性状態(OFF状態)を切り替えることができる。EN端子にハイレベルの電圧、例えば、3.3Vが印加されると、インバータ回路265の出力はローレベルに、インバータ回路266の出力はハイレベルとなり、P型MOSFET267のゲートには第2電源電圧VBBが印加される。P型MOSFET267はノーマリーオフであり、導通しない。よって、EN端子にハイレベルの電圧が印加されている場合は、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121はON状態であり、実施の形態1のバイアス回路120と同様の動作となる。
【0094】
一方、EN端子にローレベルの電圧、例えば、0Vが印加されると、インバータ回路265の出力はハイレベルに、インバータ回路266の出力はローレベルとなり、P型MOSFET267のゲートはローレベルとなる。P型MOSFET267が導通すると、基準電圧Vrefが第2電源電圧VBB付近まで上昇する。PNPトランジスタ162のコレクタ電流が十分に減少すると、バイアス電圧VBIASは第3電源電圧VGG付近まで低下し、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ121はOFF状態となる。よって、EN端子にローレベルの電圧が印加されている場合は、電力増幅装置200はOFF状態となり、消費電力はRF入力信号が無信号時と比べても大幅に低減される。
【0095】
以上より、本実施の形態2の電力増幅装置は、実施の形態1と同様に、電力増幅用の第1のトランジスタ101の製造ばらつきや温度依存性に対してドレイン電流のばらつきを低減できるバイアス回路を備え、さらに、バイアス回路への供給電圧を低くできるため、消費電力低減やコスト低減が可能な回路構成を実現できる。さらに、電力増幅が不要な場合に電力増幅装置200をOFF状態にすることができ、消費電力低減が可能となる。また、少数の低耐圧素子を追加することでイネーブル機能を搭載することができ、コストアップを抑制することができる。
【0096】
なお、イネーブル機能は、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)などの通信方式によって、同一周波数帯域で送信・受信を時間ごとに切り替える場合にも有効である。例えば、送信用の増幅装置の場合、EN端子電圧を送信時はハイレベルに、受信時はローレベルにすることで容易に切り替えができる。
【0097】
なお、本実施形態では、電流検出アンプ260のイネーブル制御部分をインバータ回路265および266やP型MOSFET267を用いて構成することにより、EN端子電圧がハイレベルの時には基準電圧Vrefへの影響がないようにしたが、PNPトランジスタなどを用いて構成してもよい。また、EN端子電圧がハイレベルの時に基準電圧Vrefに影響を与えてもよい。
【0098】
なお、本実施形態では、基準電圧Vrefを切り替えることで間接的にバイアス電圧VBIASを切り替え、イネーブル機能を実現したが、バイアス電圧VBIASを直接切り替えてもよい。
【0099】
以上説明してきたように実施の形態2に係る電力増幅装置200は、バイアス電圧の活性状態と不活性状態とを制御するためのイネーブル制御端子を有する。
【0100】
これによれば、バイアス回路が低耐圧の汎用的な回路素子で構成できるため、イネーブル制御端子によるイネーブル機能も容易に実装可能である。
【0101】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る電力増幅装置を備えた電力増幅システム装置について、
図8Aを参照しながら説明する。
【0102】
実施の形態3では、第2のトランジスタのソース電流を検出するバイアス回路を備えた電力増幅装置について説明する。なお、実施の形態1と重複する説明は省略する。
【0103】
図8Aは、本実施の形態3の電力増幅装置を備えた電力増幅システムの一構成例を示す回路図である。
図8Aの電力増幅システムは、実施の形態1の電力増幅装置を備えた電力増幅システムを示す
図1Aと比較して、電力増幅装置100の代わりに電力増幅装置300を備える点が異なる。以下、異なる点を中心に説明する。電力増幅装置300は、
図1Aの電力増幅装置100と比較して、バイアス回路120の代わりにバイアス回路320を備えている点が異なる。バイアス回路320は、Vdd端子、Vbb端子、Vgg端子、VBIAS端子を備え、例えば、第2のトランジスタ321、電流検出抵抗322、バイアス調整回路350などから構成される。バイアス調整回路350は、電流検出アンプ360と電圧設定回路370から構成される。
図1Aと比較して、電力増幅用の第1のトランジスタ101のドレイン電流をモニターするための第2のトランジスタ321に関して、第2のトランジスタ321のドレインにはVdd端子が接続され、ソースには電流検出抵抗322が接続されている点が異なる。第2のトランジスタ321のソースは、実質的に接地されている。ここで、実質的に接地というのは、第2のトランジスタ321が直接接地されることに限らず、第2のトランジスタ321のソースが電流検出抵抗322を介して接地されることを含む。というのは、電流検出抵抗322の抵抗値が十分小さいことからである。
【0104】
なお、
図8Aにおいて第2のトランジスタ321はバイアス回路320の外部に備えられてもよい。この場合の構成例を
図8Bに示す。
図8Bの電力増幅装置300sは、
図8Aの電力増幅装置300と比べて、第2のトランジスタ321がバイアス回路320sの内部ではなく外部に備えられる点が異なっている。これ以外は、同様である。
【0105】
以上のように構成された本実施の形態3に係る電力増幅装置の動作について、実施の形態1と異なるバイアス回路320を中心に説明する。
【0106】
バイアス回路320は、電源回路900から第2電源電圧VBBと第3電源電圧VGGが印加されている。第2電源電圧VBBは、例えば、3.3Vであり、第3電源電圧VGGは、例えば、-5Vである。第2のトランジスタ321のゲートには、第1のトランジスタ101と同じバイアス電圧VBIASが印加されており、ドレイン電流Idq2が流れる。ここで、第2のトランジスタ321がHEMT型のトランジスタやLDMOSである場合、ゲート-ドレイン間またはゲート-ソース間には電流がほとんど流れないため、ソース電流Isq2はドレイン電流Idq2とほぼ等しい。第2のトランジスタ321には、インダクタ103によってRF入力信号が入力されないため、ソース電流Isq2はRF入力信号にかかわらず、一定である。ソース電流Isq2は、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1に略比例し、例えば、10mAである。なお、「略比例」とは、第1のトランジスタ101および第2のトランジスタ321は半導体デバイスであり、例え、同じドレイン電圧およびゲート電圧が印加されてもそれぞれのドレイン電流およびソース電流が完全な比例関係になることは稀であるため、実質的な比例関係であることを意味する。そのため、第2のトランジスタ321のソース電流Isq2を検出することで、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1をモニターすることができる。また、第2のトランジスタ321は、第1のトランジスタ101の製造ばらつきや温度依存性による特性ばらつきと連動するように、第1のトランジスタ101と同じデバイス構造で同じ半導体基板上に形成され、一つのパッケージ内に収納されていてもよい。
【0107】
電流検出抵抗322は、第2のトランジスタ321のソース電流Isq2を検出するための抵抗であり、例えば、10Ωである。ソース電流Isq2が、例えば、10mA流れると、電流検出抵抗322の両端電圧(検出電圧Vdetect)は0.1Vとなる。
【0108】
電流検出アンプ360は、検出電圧Vdetectに応じた信号を生成し、電圧設定回路370へ出力する。
【0109】
電圧設定回路370は、電流検出アンプ360から入力された信号と第3電源電圧VGGからバイアス電圧VBIASを生成する。電圧設定回路370は、検出電圧Vdetectが低いほど、バイアス電圧VBIASを高く設定する。
【0110】
以上により、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1が、例えば、温度変化などにより減少した場合、略比例関係にある第2のトランジスタ321のソース電流Isq2が減少する。検出電圧Vdetectが低くなることにより、バイアス電圧VBIASが上昇し、第2のトランジスタ321のソース電流Isq2が増加する。第2のトランジスタ321と略比例関係にある第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1も増加する。したがって、バイアス回路320は、電力増幅用の第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1が製造ばらつきや温度依存性などにより、所定の電流値よりも減少すると、アイドル電流Idq1を増加させるように動作することができる。
【0111】
一方、前述とは逆に、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1が増加した場合には、検出電圧Vdetectが上昇する。これにより、バイアス電圧VBIASが低下し、第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1が減少させることができる。したがって、バイアス回路320は、電力増幅用の第1のトランジスタ101のアイドル電流Idq1の増減に応じてバイアス電圧VBIASを制御し、アイドル電流Idq1が一定になるように制御することができる。
【0112】
以上より、本実施の形態3の電力増幅装置300は、実施の形態1と同様に、電力増幅用の第1のトランジスタ101の製造ばらつきや温度依存性に対してドレイン電流のばらつきを低減できるバイアス回路320を備え、さらに、バイアス回路320への供給電圧を低くできるため、消費電力低減やコスト低減が可能な回路構成を実現できる。さらに、第2のトランジスタ321のドレインには、第1のトランジスタ101のドレインと同じく第1電源電圧VDDが印加されており、ドレイン電圧依存性による特性差がない。そのため、より高精度にドレイン電流のばらつきを低減できる。また、ドレイン電圧依存性を考慮してバイアス回路320への供給電圧を設定する必要がないため、さらに第2電源電圧VBBを低くすることができる。また、電流検出アンプ360は、低電圧の高精度アンプが使用できるため、第2のトランジスタ321のゲート幅をより小さくしソース電流Isq2を低減することで、消費電力を低減できる。
【0113】
なお、本実施形態では、第2のトランジスタ321のゲートには、第1のトランジスタ101と同じバイアス電圧VBIASを印加するバイアス回路320を説明したが、バイアス電圧VBIASを電圧シフトして印加してもよい。例えば、
図9に、レベルシフト回路を備えたバイアス回路320aを示す。バイアス回路320aは、レベルシフト回路380を備え、バイアス電圧VBIASを電圧シフトした電圧を第2のトランジスタ321のゲートに印加する。レベルシフト回路380は、例えば、バイアス電圧VBIASに0.1V加算した電圧を出力する。すなわち、第2のトランジスタ321のゲート電圧は、第1のトランジスタ101のゲート電圧よりも0.1V高くなる。一方、第2のトランジスタ321のソース電圧は電流検出抵抗322によって約0.1V高くなっているため、第2のトランジスタ321のゲート-ソース間電圧は、第1のトランジスタ101のゲート-ソース間電圧とほぼ一致する。よって、電流検出抵抗322によるゲート-ソース間電圧への影響をレベルシフト回路380によって低減することができる。
【0114】
なお、本実施形態では、第2のトランジスタ321のドレインはVDD端子に接続され、第1のトランジスタ101と同じく第1電源電圧VDDが印加されているが、第2電源電圧VBBなど、第1のトランジスタ101と異なる電圧が印加されてもよい。
【0115】
以上説明してきたように実施の形態3に係る電力増幅装置300は、第1電源電圧VDDを入力するための第1電源端子と、第1電源端子から電力供給される第1ドレイン、接地された第1ソース、および、高周波信号を入力するための第1ゲートを有する電力増幅用の第1のトランジスタ101と、第1電源電圧VDDよりも低電圧の第2電源電圧VBBを入力するための第2電源端子と、第1のトランジスタ101の第1ゲートにバイアス電圧を印加するバイアス回路320とを備え、バイアス回路320は、第1電源端子または第2電源端子から電力供給される第2ドレイン、実質的に接地された第2ソース、および、第1ゲートに電気的に接続された第2ゲートを有し、第1のトランジスタ101のドレイン電流に対応するソース電流を第2ソースに発生させるモニター用の第2のトランジスタ321と、第2電源端子から電力供給され、第2のトランジスタ321のソース電流に応じてバイアス電圧を調整するバイアス調整回路350とを有する。
【0116】
これによれば、バイアス回路320の消費電力を低減することができ、しかも、バイアス調整回路を耐圧の低い汎用性のある低コスト素子で構成できることからコストを低減することができる。
【0117】
ここで、第2のトランジスタ321は、第1電源端子から電力供給されてもよい。
【0118】
これによれば、モニター用の第2のトランジスタ321は、第1のトランジスタ101と同じ第1電源電圧で動作し、第2のトランジスタ321と第1のトランジスタ101との特性差を緩和し、モニター精度つまり模倣精度をより高くすることができる。
【0119】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る電力増幅装置について、
図10を参照しながら説明する。
【0120】
実施の形態4では、複数の電力増幅用トランジスタを備えたドハティ型電力増幅装置について説明する。なお、実施の形態1と重複する説明は省略する。
【0121】
図10は、本実施の形態4の電力増幅装置の一構成例を示す回路図である。
図10の電力増幅装置400は、実施の形態1の電力増幅装置100tを示す
図3と比較して、電力増幅用のトランジスタを複数備える点などが異なる。以下、異なる点を中心に説明する。
【0122】
電力増幅装置400は、IN端子、OUT端子、VDD端子、VBB端子、VGG端子、GND端子を備え、第1の半導体基板490、第2の半導体基板491、電流検出抵抗422、1/4波長位相線路406および416などを備える。バイアス回路を構成する要素(電力増幅用トランジスタのドレイン電流をモニターするためのトランジスタ、電流検出抵抗、バイアス調整回路)の一部は、第1の半導体基板490と第2の半導体基板491に分かれて形成されている。また、第1の半導体基板490および第2の半導体基板491は、電流検出抵抗422、キャパシタ402、405、412および415、インダクタ403、404、413および414、1/4波長位相線路406および416と、多層樹脂基板などのサブマウント基板に実装され、電力増幅装置400を構成する。
【0123】
第1の半導体基板490は、VG_CA端子、VG_PA端子、VG2端子、VD_CA端子、VD_PA端子、VD2端子を備え、第1のトランジスタ401、第2のトランジスタ421、第3のトランジスタ411が形成される。第1のトランジスタ401は、例えば、ゲート幅Wg1が3mmである。第2のトランジスタ421は、例えば、ゲート幅Wg2が0.4mmである。第3のトランジスタ411は、例えば、ゲート幅Wg3が4.8mmである。これらのトランジスタのデバイス構造は同じである。
【0124】
第2の半導体基板491は、Vbb端子、Vbd端子、Vgg端子、VBIAS_CA端子、VBIAS_PA端子を備え、電流検出アンプ460、電圧設定回路470、レベルシフト回路480が形成され、バイアス調整回路を構成する。
【0125】
以上のような構成要素が
図10のように接続され、電力増幅装置400は、第1のトランジスタ401をキャリアアンプ、第3のトランジスタ411をピークアンプとしたドハティ型増幅装置を構成する。
【0126】
IN端子は、第1のトランジスタ401のゲートにキャパシタ402を介して接続され、かつ、1/4波長位相線路416とキャパシタ412を介して第3のトランジスタ411のゲートに接続されている。
【0127】
OUT端子は、1/4波長位相線路406とキャパシタ405を介して、第1のトランジスタ401のドレインに接続され、かつ、キャパシタ415を介して第3のトランジスタ411のドレインに接続されている。
【0128】
第1のトランジスタ401は、例えば、A級またはAB級で動作し、IN端子から入力されたRF入力信号を常に増幅する。一方、第3のトランジスタ411は、例えば、C級で動作し、RF入力信号が所定電力以上の場合に増幅する。
【0129】
以上のように構成された本実施の形態4に係る電力増幅装置の動作について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0130】
第2のトランジスタ421、電流検出抵抗422、電流検出アンプ460、電圧設定回路470は、
図1Aのバイアス回路120と同等のバイアス回路を構成し、
図1Aのバイアス電圧VBIASと同等のCAバイアス電圧VBIAS_CAを生成する。CAバイアス電圧VBIAS_CAは、例えば、約-2.5Vである。CAバイアス電圧VBIAS_CAは、第1のトランジスタ401および第2のトランジスタ421のゲートに印加される。これらにより、実施の形態1と同様に、第1のトランジスタ401のアイドル電流Idq1をモニターしCAバイアス電圧VBIAS_CAを調整することで、製造ばらつきや温度依存性に対してアイドル電流Idq1のばらつきを低減し、所定の動作クラスで動作させることができる。
【0131】
第3のトランジスタ411のゲートには、CAバイアス電圧VBIAS_CAをレベルシフト回路480によって電圧シフトしたPAバイアス電圧VBIAS_PAが印加されている。PAバイアス電圧VBIAS_PAは、例えば、約-3.5Vである。よって、第3のトランジスタ411は、CAバイアス電圧VBIAS_CAに連動したPAバイアス電圧VBIAS_PAでゲートバイアスされ、所定の動作クラスで動作させることができる。第3のトランジスタ411は、第1のトランジスタ401と同じ第1の半導体基板490に形成されているため、製造ばらつきや温度依存性に対して、第1のトランジスタ401と同様に特性ばらつきを低減できる。
【0132】
以上より、本実施の形態4の電力増幅装置400は、実施の形態1と同様に、電力増幅用の第1のトランジスタ401の製造ばらつきや温度依存性に対してドレイン電流のばらつきを低減できるバイアス回路を備え、さらに、バイアス回路への供給電圧を低くできるため、消費電力低減やコスト低減が可能な回路構成を実現できる。さらに、第1のトランジスタ401および第3のトランジスタ411を備えた電力増幅装置400のように複数の電力増幅用トランジスタを備えた電力増幅装置であっても、第2の半導体基板491に形成された1つのバイアス調整回路でゲートバイアスが可能である。
【0133】
なお、本実施形態では、第2の半導体基板491に形成された1つのバイアス調整回路からCAバイアス電圧VBIAS_CAおよびPAバイアス電圧VBIAS_PAを生成していたが、CAバイアス電圧VBIAS_CAおよびPAバイアス電圧VBIAS_PAは異なる2つのバイアス調整回路から生成されてもよい。
【0134】
なお、本実施形態では、第1の半導体基板490に第1のトランジスタ401、第2のトランジスタ421、第3のトランジスタ411が形成されていたが、第3のトランジスタ411は別の半導体基板に形成されてもよい。その場合も一つのパッケージ内に収納されていてもよい。また、第2のトランジスタ421は、第1のトランジスタ401に隣接するように配置されていてもよい。
【0135】
なお、本実施形態では、複数の電力増幅用トランジスタを備えた電力増幅装置としてドハティ型増幅装置を説明したが、ドハティ型以外の電力増幅装置であってもよい。例えば、複数の電力増幅用トランジスタを直列接続した電力増幅装置でもよく、各段の電力増幅用トランジスタのうち、2つ以上のトランジスタのゲートに1つのバイアス調整回路から生成されたバイアス電圧が印加されてもよい。
【0136】
以上説明してきたように実施の形態4に係る電力増幅装置400は、第1のトランジスタを含む複数の電力増幅用トランジスタを有し、複数の電力増幅用トランジスタのうち少なくとも1つのゲートには、バイアス回路からバイアス電圧が印加される。
【0137】
これによれば、複数の電力増幅用トランジスタを対象に、1つのバイアス回路でバイアス電圧を調整可能である。
【0138】
ここで、バイアス回路は、複数の電力増幅用トランジスタに対して、複数の異なるバイアス電圧を生成してもよい。
【0139】
これによれば、1つのバイアス回路で複数の電力増幅用トランジスタに対して異なるバイアス電圧を供給および調整可能である。
【0140】
以上、本出願において開示する技術を例示するため、実施の形態として、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0141】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0142】
なお、本開示における技術は、これらに限定されるものではなく、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、本開示における技術の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を施したものや、複数の実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示における技術の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本開示の電力増幅装置は、電力増幅用トランジスタの製造ばらつきや温度依存性に対してドレイン電流のばらつきを低減できるバイアス回路を備え、さらに、バイアス回路への供給電圧を低くできるため、消費電力低減やコスト低減が可能な回路構成を実現できる。
【0144】
また、本開示の電力増幅装置は、携帯電話や衛星通信の基地局および端末の電力増幅システム、レーダー送信機、ワイヤレス電力送信機、電子レンジなどのマイクロ波加熱装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0145】
100、100s、100t、200、300、300s、400 電力増幅装置
101、401 第1のトランジスタ
102、105、402、405、412、415 キャパシタ
103、104、403、404、413、414 インダクタ
120、120a、120s、220、320、320a、320s バイアス回路
121、321、421 第2のトランジスタ
122、153、322、422 電流検出抵抗
150、150a、250、350、350a バイアス調整回路
151、152、267 P型MOSFET
160、260、360、460 電流検出アンプ
161 NPNトランジスタ
162 PNPトランジスタ
163、164、171、172 抵抗
170、370、470 電圧設定回路
190、490 第1の半導体基板
191、491 第2の半導体基板
265、266 インバータ回路
380、480 レベルシフト回路
406、416 1/4波長位相線路
411 第3のトランジスタ
900 電源回路