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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】電動補助システムおよび電動補助車両
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/50 20100101AFI20221108BHJP
【FI】
B62M6/50
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022033242
(22)【出願日】2022-03-04
(62)【分割の表示】P 2019541605の分割
【原出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2022071146
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 光晴
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-73638(JP,A)
【文献】特開2005-132274(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0102920(KR,A)
【文献】特開2015-174539(JP,A)
【文献】特開2014-211351(JP,A)
【文献】特開2002-160616(JP,A)
【文献】特開2016-28205(JP,A)
【文献】特開2013-244864(JP,A)
【文献】特開2013-241045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動補助車両に用いられる電動補助システムであって、
前記電動補助車両の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータと、
回転することにより前記電動補助車両を走行させる回転部品の回転に応じた信号を出力する回転センサと、
前記電動補助車両の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサと、
前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、第1の条件下では前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号の両方を用いて前記走行速度を演算し、第2の条件下では前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度の演算を行い、
前記制御装置は、前記回転センサの出力信号から得られる回転数に応じて、前記回転センサおよび前記加速度センサの中で前記走行速度の演算に用いるセンサを変更する、電動補助システム。
【請求項2】
電動補助車両に用いられる電動補助システムであって、
前記電動補助車両の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータと、
回転することにより前記電動補助車両を走行させる回転部品の回転に応じた信号を出力する回転センサと、
前記電動補助車両の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサと、
前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記回転センサの出力信号から得られる回転数が所定の回転数以上の場合、前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号の両方を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算し、
前記回転センサの出力信号から得られる回転数が前記所定の回転数未満の場合、前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算する、電動補助システム。
【請求項3】
前記回転センサの出力信号から得られる回転数が前記所定の回転数以上の場合、
前記制御装置は、
前記回転センサの出力信号を用いて第1の速度を演算し、
前記加速度センサの出力信号を用いて第2の速度を演算し、
前記第1の速度および前記第2の速度のそれぞれに重み付けを行い、
前記重み付けした第1の速度および前記重み付けした第2の速度の両方を用いて、前記電動補助車両の走行速度を演算する、請求項2に記載の電動補助システム。
【請求項4】
前記回転センサの出力信号から得られる回転数が前記所定の回転数以上の場合、
前記制御装置は、
前記回転センサの出力信号を用いて第1の速度を演算し、
前記加速度センサの出力信号を用いて第2の速度を演算し、
前記第1の速度に第1の係数を乗じ、前記第2の速度に第2の係数を乗じ、
前記第1の係数を乗じた後の第1の速度および前記第2の係数を乗じた後の第2の速度の両方を用いて、前記電動補助車両の走行速度を演算する、請求項2またはに記載の電動補助システム。
【請求項5】
電動補助車両に用いられる電動補助システムであって、
前記電動補助車両の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータと、
回転することにより前記電動補助車両を走行させる回転部品の回転に応じた信号を出力する回転センサと、
前記電動補助車両の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサと、
前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、第1の条件下では前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号の両方を用いて前記走行速度を演算し、第2の条件下では前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度の演算を行い、
前記制御装置は、前記回転センサの出力信号から得られる速度に応じて、前記回転センサおよび前記加速度センサの中から前記走行速度の演算に用いるセンサを変更する電動補助システム。
【請求項6】
前記回転部品は前記電動モータであり、
前記回転センサは、前記電動モータの回転に応じた信号を出力する、請求項1からのいずれかに記載の電動補助システム。
【請求項7】
電動補助車両に用いられる電動補助システムであって、
前記電動補助車両の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータと、
回転することにより前記電動補助車両を走行させる回転部品の回転に応じた信号を出力する回転センサと、
前記電動補助車両の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサと、
前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、第1の条件下では前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号の両方を用いて前記走行速度を演算し、第2の条件下では前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度の演算を行い、
前記回転部品は前記電動補助車両の車輪であり、
前記回転センサは、前記車輪の回転に応じた信号を出力し、
前記回転センサは、前記車輪が所定の角度回転するごとにパルス信号を出力し、
前記制御装置は、2つ以上の前記パルス信号を用いて前記走行速度を演算し、
前記パルス信号を検出しない期間は、前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度を演算する電動補助システム。
【請求項8】
電動補助車両に用いられる電動補助システムであって、
前記電動補助車両の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータと、
回転することにより前記電動補助車両を走行させる回転部品の回転に応じた信号を出力する回転センサと、
前記電動補助車両の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサと、
前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、第1の条件下では前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号の両方を用いて前記走行速度を演算し、第2の条件下では前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度の演算を行い、
前記回転部品は前記電動補助車両の車輪であり、
前記回転センサは、前記車輪の回転に応じた信号を出力し、
前記回転センサは、前記車輪が所定の角度回転するごとにパルス信号を出力し、
前記制御装置は、2つ以上の前記パルス信号を用いて前記走行速度を演算し、
前記制御装置は、前記パルス信号を検出してから次の前記パルス信号を検出するまでの期間は、前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度を演算する電動補助システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記パルス信号を検出すると、今回検出したパルス信号と前回検出したパルス信号とを用いて前記走行速度を演算し、
前記加速度センサの出力信号から得られた前記走行速度の大きさを、前記パルス信号から得られた前記走行速度に補正する、請求項またはに記載の電動補助システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記パルス信号を検出してから次に前記パルス信号を検出するまでの期間は、前記パルス信号から得られた前記走行速度を基準にして、前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度を演算する、請求項に記載の電動補助システム。
【請求項11】
前記回転部品は前記電動モータであり、
前記回転センサは、前記電動モータの回転に応じた信号を出力し、
前記制御装置は、前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両が備える動力伝達機構の変速比を演算する、請求項1に記載の電動補助システム。
【請求項12】
前記電動モータの回転に応じた信号を出力する回転センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記電動モータの回転に応じた信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両が備える動力伝達機構の変速比を演算する、請求項から10のいずれかに記載の電動補助システム。
【請求項13】
電動補助車両に用いられる電動補助システムであって、
前記電動補助車両の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータと、
前記電動モータの回転に応じた信号を出力する回転センサと、
前記電動補助車両の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサと、
前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて、前記電動補助車両が備える動力伝達機構の変速比を演算する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記演算した変速比が低い場合は、高い場合よりも、前記人力に対して発生させる補助力が小さくなるように前記電動モータを制御し、
前記変速比が低い場合は、高い場合よりも、前記電動モータの回転速度に対して前記電動補助車両の車輪の回転速度が大きく減少する、電動補助システム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の電動補助システムを備えた電動補助車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動補助車両に用いられる電動補助システム、および当該電動補助システムを備えた電動補助車両に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員がペダルを漕ぐ力を電動モータにより補助する電動補助自転車が知られている。電動補助自転車では、乗員がペダルに加えた人力に応じた補助力を電動モータに発生させ、人力と補助力とを足し合わせた駆動力を駆動輪に伝達する。電動モータによって人力を補助することにより、乗員がペダルを漕ぐ力を軽減させることができる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-226664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動補助自転車では、車両の走行速度に応じて電動モータに発生させる補助力の大きさを変化させる制御を行うことがある。そのため、電動補助自転車では、車両の走行速度を検出している。しかし、車両の走行状態によっては、走行速度を継続的に安定して検出することが容易でない場合がある。例えば、車両の発進直後および停止直前等の状態においては、走行速度を継続的に安定して検出することが容易でない場合がある。
【0005】
本発明は、走行速度を継続的に安定して検出することが可能な電動補助システムおよび当該電動補助システムを備えた電動補助車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る電動補助システムは、電動補助車両に用いられる電動補助システムであって、前記電動補助車両の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータと、回転することにより前記電動補助車両を走行させる回転部品の回転に応じた信号を出力する回転センサと、前記電動補助車両の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサと、前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算する制御装置とを備える。
【0007】
本発明の実施形態によれば、回転センサおよび加速度センサを併用して電動補助車両の走行速度を演算する。回転センサを用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、加速度センサを用いて走行速度を検出する。加速度センサを用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、回転センサを用いて走行速度を検出する。様々な条件下において継続して車両速度を検出することができ、走行速度に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【0008】
ある実施形態において、前記制御装置は、第1の条件下では前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号の両方を用いて前記走行速度を演算し、第2の条件下では前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号の一方を用いて前記走行速度の演算を行ってもよい。
【0009】
条件に応じて走行速度の演算に用いるセンサを変更することで、様々な条件下において継続して車両速度を演算することができる。
【0010】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記回転センサの出力信号から得られる回転数に応じて、前記回転センサおよび前記加速度センサの中で前記走行速度の演算に用いるセンサを変更してもよい。
【0011】
走行速度の演算に用いるセンサを、現在の回転数に適したセンサに変更することで、様々な条件下において継続して車両速度を演算することができる。
【0012】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記回転センサの出力信号から得られる回転数が所定の回転数以上の場合、前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号の両方を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算し、前記回転センサの出力信号から得られる回転数が前記所定の回転数未満の場合、前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両の走行速度を演算してもよい。
【0013】
車両の発進直後、車両の停止直前および電動モータが停止しているときなど、回転センサから得られる回転数が小さいまたはゼロとなる場合は、回転センサを用いた走行速度の検出が難しくなる。回転センサから得られる回転数が所定の回転数未満の場合は、加速度センサを用いて走行速度を演算する。回転センサを用いた走行速度の検出が難しい条件下においても、加速度センサを用いて走行速度を検出することで、走行速度に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【0014】
ある実施形態において、前記回転センサの出力信号から得られる回転数が前記所定の回転数以上の場合、前記制御装置は、前記回転センサの出力信号を用いて第1の速度を演算し、前記加速度センサの出力信号を用いて第2の速度を演算し、前記第1の速度および前記第2の速度のそれぞれに重み付けを行い、前記重み付けした第1の速度および前記重み付けした第2の速度の両方を用いて、前記電動補助車両の走行速度を演算してもよい。
【0015】
回転センサから得られる速度および加速度センサから得られる速度のそれぞれに重み付けを行う。現在の回転数に適したセンサから得られる速度を採用する割合を大きくすることで、走行速度の検出精度を高めることができる。
【0016】
ある実施形態において、前記回転センサの出力信号から得られる回転数が前記所定の回転数以上の場合、前記制御装置は、前記回転センサの出力信号を用いて第1の速度を演算し、前記加速度センサの出力信号を用いて第2の速度を演算し、前記第1の速度に第1の係数を乗じ、前記第2の速度に第2の係数を乗じ、前記第1の係数を乗じた第1の速度および前記第2の係数を乗じた第2の速度の両方を用いて、前記電動補助車両の走行速度を演算してもよい。
【0017】
回転センサから得られる速度および加速度センサから得られる速度のそれぞれに係数を乗じる。現在の回転数に適したセンサから得られる速度を採用する割合を大きくすることで、走行速度の検出精度を高めることができる。
【0018】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記回転センサの出力信号から得られる速度に応じて、前記回転センサおよび前記加速度センサの中から前記走行速度の演算に用いるセンサを変更してもよい。
【0019】
走行速度を演算するためセンサを、現在の走行速度に適したセンサに変更することで、様々な条件下において継続して車両速度を演算することができる。
【0020】
ある実施形態において、前記回転部品は前記電動モータであり、前記回転センサは、前記電動モータの回転に応じた信号を出力してもよい。
【0021】
電動モータの回転に応じた信号および加速度センサの出力信号を併用して電動補助車両の走行速度を演算する。電動モータが停止している場合など回転センサを用いた走行速度の検出ができない条件下においても、加速度センサを用いて走行速度を検出することができ、走行速度に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【0022】
ある実施形態において、前記回転部品は前記電動補助車両の車輪であり、前記回転センサは、前記車輪の回転に応じた信号を出力してもよい。
【0023】
車輪の回転に応じた信号および加速度センサの出力信号を併用して電動補助車両の走行速度を演算する。車両の発進直後および停止直前などの車輪の回転が遅いときは、回転センサを用いた走行速度の検出が難しくなる。回転センサを用いた走行速度の検出が難しい条件下においても、加速度センサを用いて走行速度を検出することで、走行速度に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【0024】
ある実施形態において、前記回転センサは、前記車輪が所定の角度回転するごとにパルス信号を出力し、前記制御装置は、2つ以上の前記パルス信号を用いて前記走行速度を演算し、前記パルス信号を検出しない期間は、前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度を演算してもよい。
【0025】
回転センサがパルス信号を出力しない期間は、パルス信号を用いた走行速度の検出ができない。回転センサを用いた走行速度の検出ができない期間は、加速度センサを用いて走行速度を検出する。これにより、回転センサを用いた走行速度の検出ができない期間においても、走行速度に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【0026】
ある実施形態において、前記回転センサは、前記車輪が所定の角度回転するごとにパルス信号を出力し、前記制御装置は、2つ以上の前記パルス信号を用いて前記走行速度を演算し、前記制御装置は、前記パルス信号を検出してから次の前記パルス信号を検出するまでの期間は、前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度を演算してもよい。
【0027】
回転センサがパルス信号を出力してから次にパルス信号を出力するまでの期間は、パルス信号を用いた走行速度の検出ができない。回転センサを用いた走行速度の検出ができない期間は、加速度センサを用いて走行速度を検出する。これにより、回転センサを用いた走行速度の検出ができない期間においても、走行速度に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【0028】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記パルス信号を検出すると、今回検出したパルス信号と前回検出したパルス信号とを用いて前記走行速度を演算し、前記加速度センサの出力信号から得られた前記走行速度の大きさを、前記パルス信号から得られた前記走行速度に補正してもよい。
【0029】
パルス信号を検出しない期間は、加速度センサを用いて走行速度を検出する。一方、パルス信号を検出するタイミングにおいては、加速度センサよりも回転センサを用いた方が走行速度の検出精度が高い場合がある。この場合は、加速度センサを用いて得られた走行速度の大きさを、回転センサを用いて得られた走行速度に補正する。このような補正を行った上で、パルス信号を検出しない期間において加速度センサを用いた走行速度の検出を行うことで、走行速度の検出精度を高めることができる。
【0030】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記パルス信号を検出してから次に前記パルス信号を検出するまでの期間は、前記パルス信号から得られた前記走行速度を基準にして、前記加速度センサの出力信号を用いて前記走行速度を演算してもよい。
【0031】
回転センサを用いて検出した走行速度を基準にして、加速度センサの出力信号から走行速度を演算する。これにより、加速度センサを用いた走行速度の検出精度を高めることができる。
【0032】
ある実施形態において、前記回転部品は前記電動モータであり、前記回転センサは、前記電動モータの回転に応じた信号を出力し、前記制御装置は、前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両が備える動力伝達機構の変速比を演算してもよい。
【0033】
車両の発進直後および停止直前などの走行速度が遅い場合は、回転センサを用いた走行速度の検出が難しくなるが、加速度センサを用いることで走行速度を検出することができる。電動モータの回転数は回転センサの出力信号から演算できる。加速度センサを用いて検出した走行速度と回転センサを用いて検出した電動モータの回転数とから、動力伝達機構の変速比を演算する。これにより、変速比に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【0034】
ある実施形態において、前記電動モータの回転に応じた信号を出力する回転センサをさらに備え、前記制御装置は、前記電動モータの回転に応じた信号および前記加速度センサの出力信号を用いて前記電動補助車両が備える動力伝達機構の変速比を演算してもよい。
【0035】
車両の発進直後および停止直前などの車輪の回転が遅いときは、車輪の回転に応じた信号がなかなか出力されず、走行速度の演算ができなかったり走行速度の演算に時間が掛かったりする。そのような場合でも、加速度センサを用いることで走行速度を検出することができる。電動モータの回転数は回転センサの出力信号から演算できる。加速度センサを用いて検出した走行速度と回転センサを用いて検出した電動モータの回転数とから、動力伝達機構の変速比を演算することができる。これにより、変速比に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【0036】
本発明の実施形態に係る電動補助システムは、電動補助車両に用いられる電動補助システムであって、前記電動補助車両の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータと、前記電動モータの回転に応じた信号を出力する回転センサと、前記電動補助車両の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサと、前記回転センサの出力信号および前記加速度センサの出力信号を用いて、前記電動補助車両が備える動力伝達機構の変速比を演算する制御装置とを備える。
【0037】
加速度センサを用いて走行速度を検出することができるとともに、回転センサを用いて電動モータの回転数を検出することができる。検出した走行速度と電動モータの回転数とから、変速機の変速比を演算することができ、変速比に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【0038】
本発明の実施形態に係る電動補助車両は、上記の電動補助システムを備える。これにより、上記の電動補助システムの特徴を備えた電動補助車両が提供される。
【発明の効果】
【0039】
本発明による例示的な実施形態によれば、電動補助車両の回転部品の回転に応じた信号を出力する回転センサと、車両の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサとを併用して電動補助車両の走行速度を演算する。回転センサを用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、加速度センサを用いて走行速度を検出する。加速度センサを用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、回転センサを用いて走行速度を検出する。様々な条件下において継続的に安定して車両速度を検出することができ、走行速度に応じた電動補助車両の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態に係る電動補助自転車を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電動補助自転車の機械的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る電動補助自転車が備える回転センサを示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る操作盤の外観図である。
図5】本発明の実施形態に係る走行速度を演算する処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る走行速度を演算する処理を示すフローチャートである。
図7】(a)および(b)は、本発明の実施形態に係る走行速度を演算する処理を説明する図である。
図8】本発明の実施形態に係る変速比を演算する処理を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態に係る走行速度を演算する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る電動補助システムおよび電動補助車両の実施形態を説明する。実施形態の説明においては、同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。本発明の実施形態における前後、左右、上下とは、電動補助車両のサドル(シート)に乗員がハンドルに向かって着座した状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0042】
図1は、本実施形態に係る電動補助自転車1を示す側面図である。電動補助自転車1は後に詳述する駆動ユニット51を有している。電動補助自転車1は本発明の実施形態に係る電動補助車両の一例である。駆動ユニット51は、本発明の実施形態に係る電動補助システムの一例である。
【0043】
電動補助自転車1は、前後方向に延びる車体フレーム11を有する。車体フレーム11は、ヘッドパイプ12、ダウンチューブ5、ブラケット6、チェーンステイ7、シートチューブ16、シートステイ19を含む。ヘッドパイプ12は車体フレーム11の前端に配置される。ハンドルステム13は、ヘッドパイプ12に回転可能に挿入される。ハンドル14は、ハンドルステム13の上端部に固定される。ハンドルステム13の下端部にはフロントフォーク15が固定される。フロントフォーク15の下端部には、操舵輪である前輪25が回転可能に支持される。フロントフォーク15には、前輪25を制動するブレーキ8が設けられる。ヘッドパイプ12の前方の位置には前かご21が設けられる。フロントフォーク15にはヘッドランプ22が設けられる。
【0044】
ダウンチューブ5は、ヘッドパイプ12から後方斜め下方に向かって延びている。シートチューブ16は、ダウンチューブ5の後端部から上方に向かって延びている。チェーンステイ7は、シートチューブ16の下端部から後方に向かって延びている。ブラケット6は、ダウンチューブ5の後端部、シートチューブ16の下端部、チェーンステイ7の前端部を接続する。
【0045】
シートチューブ16にはシートポスト17が挿入され、シートポスト17の上端部には乗員が座るサドル27が設けられる。チェーンステイ7の後方部は、駆動輪である後輪26を回転可能に支持する。チェーンステイ7の後方部には、後輪26を制動するブレーキ9が設けられる。また、チェーンステイ7の後方部には、駐輪時に車両を立てたまま保持するスタンド29が設けられる。シートステイ19は、シートチューブ16の上部から後方斜め下方に向かって延びている。シートステイ19の下端部は、チェーンステイ7の後方部に接続される。シートステイ19は、サドル27の後方に設けられた荷台24を支持するとともに、後輪26の上部を覆うフェンダー18を支持する。フェンダー18の後方部にはテールランプ23が設けられる。
【0046】
車体フレーム11の車両中央部付近に配置されたブラケット6には駆動ユニット51が設けられる。駆動ユニット51は、電動モータ53、クランク軸57、制御装置70を含む。ブラケット6には、電動モータ53等に電力を供給するバッテリ56が搭載される。バッテリ56はシートチューブ16に支持されてもよい。
【0047】
クランク軸57は駆動ユニット51に左右方向に貫通して支持されている。クランク軸57の両端部にはクランクアーム54が設けられる。クランクアーム54の先端には、ペダル55が回転可能に設けられる。
【0048】
制御装置70は、電動補助自転車1の動作を制御する。典型的には、制御装置70はデジタル信号処理を行うことが可能なマイクロコントローラ、信号処理プロセッサ等の半導体集積回路を有する。乗員がペダル55を足で踏んで回転させたときに発生するクランク軸57の回転出力は、チェーン28を介して、後輪26に伝達される。制御装置70は、クランク軸57の回転出力に応じた駆動補助出力を発生するように電動モータ53を制御する。電動モータ53が発生した補助力は、チェーン28を介して、後輪26に伝達される。なお、チェーン28の代わりにベルト、シャフト等が用いられてもよい。
【0049】
図2は、電動補助自転車1の機械的および電気的構成を示すブロック図である。駆動ユニット51は、加速度センサ38、制御装置70、電動モータ53、モータ回転センサ46、減速機45、ワンウェイクラッチ44、クランク軸57、ワンウェイクラッチ43、トルクセンサ41、クランク回転センサ42、合成機構58、駆動スプロケット59を備える。駆動ユニット51は、ペダル55(図1)に加えられた乗員の人力に応じた駆動補助出力を電動モータ53に発生させる補助出力制御システムである。
【0050】
まず、動力の伝達経路を説明する。乗員がペダル55(図1)を踏み込んでクランク軸57を回転させると、そのクランク軸57の回転は、ワンウェイクラッチ43を介して合成機構58に伝達される。電動モータ53の回転は、減速機45、ワンウェイクラッチ44を介して合成機構58に伝達される。
【0051】
合成機構58は、例えば筒状部材を有し、その筒状部材の内部にクランク軸57が配置される。合成機構58には、駆動スプロケット59が取り付けられている。合成機構58は、クランク軸57および駆動スプロケット59と同じ回転軸を中心にして回転する。
【0052】
ワンウェイクラッチ43は、クランク軸57の順回転を合成機構58に伝達し、クランク軸57の逆回転は合成機構58に伝達させない。ここで、順回転とは、車両を前進させる駆動力を与える回転の方向である。逆回転とは、車両を前進させる駆動力を与えない回転の方向である。ワンウェイクラッチ44は、電動モータ53が発生した、合成機構58を順回転させる方向の回転を合成機構58に伝達し、合成機構58を逆回転させる方向の回転は合成機構58に伝達させない。また、電動モータ53が停止している状態で、乗員がペダル55を漕いで合成機構58が回転した場合、ワンウェイクラッチ44は、その回転を電動モータ53に伝達しない。乗員がペダル55に加えた踏力と電動モータ53が発生した補助力は、合成機構58に伝達されて合成される。合成機構58で合成された合力は、駆動スプロケット59を介してチェーン28へ伝達される。
【0053】
チェーン28の回転は、従動スプロケット32を介して駆動軸33に伝達される。駆動軸33の回転は、変速機構36、ワンウェイクラッチ37を介して後輪26に伝達される。
【0054】
変速機構36は、乗員による変速操作器67の操作に応じて変速比を変更する機構である。変速操作器67は例えばハンドル14(図1)に取り付けられる。この例では、変速機構36は内装変速機であるが、変速機構36は外装変速機であってもよい。変速機構36が外装変速機である場合は、従動スプロケット32として多段スプロケットが用いられ得る。ワンウェイクラッチ37は、変速機構36の出力軸の回転速度が後輪26の回転速度よりも速い場合にのみ、変速機構36の回転を後輪26に伝達する。変速機構36の出力軸の回転速度が後輪26の回転速度よりも遅い場合には、ワンウェイクラッチ37は変速機構36の回転を後輪26に伝達しない。
【0055】
このような動力伝達経路により、乗員がペダル55に加えた踏力および電動モータ53が発生する補助力は、後輪26に伝達される。
【0056】
なお、乗員の踏力と電動モータ53が発生した補助力とを合成する機構は、上記のようなクランク軸57と同じ回転軸を中心にして回転する合成機構58に限定されない。踏力と補助力とはチェーン28において合成されてもよい。
【0057】
次に、制御装置70による電動モータ53の駆動制御を説明する。制御装置70は、例えばMCU(Motor Control Unit)である。制御装置70は、演算回路71、メモリ72、モータ駆動回路79を備える。演算回路71は、電動モータ53の動作を制御するとともに、電動補助自転車1の各部の動作を制御する。メモリ72は、電動モータ53および電動補助自転車1の各部の動作を制御するための手順を規定したコンピュータプログラムを格納している。演算回路71は、メモリ72からコンピュータプログラムを読み出して各種制御を行う。
【0058】
加速度センサ38は、電動補助自転車1の車両本体の加速度を検出する。加速度センサ38は、例えばピエゾ抵抗型、静電容量型または熱検知型の3軸加速度センサである。3軸加速度センサは、直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)の各方向の加速度を1つで測定することが可能である。
【0059】
なお、本明細書では、直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)は絶対座標系ではなく、相対座標である。より具体的には、直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)の方向はそれぞれ、加速度センサ38が搭載された電動補助自転車1の前後方向、左右方向、および、上下方向である。なお、電動補助自転車1の前方向はその進行方向に一致し、上下方向は路面に垂直な方向に一致する。よって、平坦路を走行中の電動補助自転車1のX軸、Y軸、Z軸と、傾斜路を走行中の電動補助自転車1のX軸、Y軸、Z軸とは一致しないことがある。
【0060】
なお、加速度センサ38が、電動補助自転車1の前後方向、左右方向、および、上下方向の加速度値を測定できるようにするためには種々の方法が考えられる。例えば、加速度センサ38のX軸、Y軸およびZ軸が、それぞれ車両の前後方向、左右方向、および、上下方向に一致するよう、加速度センサ38を駆動ユニット51に取り付ければよい。このような加速度センサ38の取り付け方は、加速度センサ38を水平面に載置することを意味する。
【0061】
加速度センサ38は不図示の電子回路基板上に載置される。電子回路基板には、バッテリ56からの電力を電動補助自転車1の各電子部品に送電するための電源部、モータ駆動回路79、演算回路71、メモリ72等の種々のICチップを含む制御部も配置される。
【0062】
このような電子回路基板は、サイズの制約等により、駆動ユニット51内に垂直に立てた状態で配置される場合がある。その場合、加速度センサ38は水平面に載置された状態ではなくなる。そこで、加速度センサ38には、駆動ユニット51への加速度センサ38の取り付け角度相当分のずれを差し引いて信号を出力させる必要がある。換言すると、検出方向補正を行う必要がある。 検出方向補正の具体的な処理の内容は公知であるため、本明細書での詳細な説明は省略する。加速度センサ38の出力値を予め補正しておくことにより、加速度センサ38のX軸、Y軸およびZ軸の出力値を、電動補助自転車1の前後方向、左右方向、および、上下方向の加速度値として測定することができる。
【0063】
なお、加速度センサ38は、電動補助自転車1の重心に近い位置に設置されることがより好ましい。図1から理解されるように、駆動ユニット51はペダル55の近傍に配置されているため、加速度センサ38は電動補助自転車1の重心の近傍に配置されていると言える。
【0064】
電子回路基板の設置方向に関する制約を受けないようにするために、加速度センサ38を電子回路基板とは別体にすることも考えられる。両者を別体にすることで、加速度センサ38が設置される位置をより精度よく電動補助自転車1の静止時の重心に近付けることができる。
【0065】
なお、3軸加速度センサは加速度センサ38の一例である。加速度センサ38として、X軸の加速度GxおよびZ軸方向の加速度Gzを測定可能な2軸加速度センサを採用してもよい。加速度センサ38として、X軸の加速度Gxを測定可能な1軸加速度センサを採用してもよい。加速度センサ38は、車両の進行方向に沿ったX軸の加速度Gxを少なくとも測定可能であればよい。なお、複数の加速度センサを用いて、それぞれが異なる軸方向の加速度を検出してもよい。図2に示す例では、加速度センサ38は、駆動ユニット51内に配置されているが、配置位置はそれに限定されず、電動補助自転車1の任意の位置に配置されてもよい。
【0066】
演算回路71は、加速度センサ38から出力された検出信号から、例えば、車両の進行方向の加速度を演算する。また、演算回路71は、車両の進行方向の加速度を積分することで、車両の走行速度を取得することができる。
【0067】
トルクセンサ41は、乗員がペダル55に加えた人力(踏力)を、クランク軸57に発生するトルクとして検出する。トルクセンサ41は、例えば磁歪式トルクセンサである。トルクセンサ41は、検出したトルクの大きさに応じた振幅の電圧信号を演算回路71に出力する。演算回路71は、トルクセンサ41からの電圧信号をトルク値に換算する。例えば、トルクセンサ41から入力されるアナログ電圧信号をデジタル値に変換し、デジタル値の大きさからトルクを算出する。
【0068】
トルクセンサ41は、電圧信号をトルク値に換算するトルク演算回路(図示せず)を有していてもよい。トルク演算回路は、例えば出力されたアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換する。検出されたトルクの大きさは、デジタル電圧信号の値の大きさとして出力される。トルクセンサ41は、アナログ信号を出力してもよいし、デジタル信号を出力してもよい。
【0069】
クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転角を検出する。クランク回転センサ42は、クランク軸57の回転角に応じた信号を演算回路71に出力する。例えばクランク回転センサ42は、クランク軸57の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。出力された信号を用いてクランク軸57の回転角および回転速度が算出され得る。例えば、クランク軸57の周りに磁極(N極、S極)を有する磁性体を複数個配置する。位置が固定されたホールセンサで、クランク軸57の回転に伴う磁界の極性の変化を電圧信号に変換する。演算回路71は、ホールセンサからの出力信号を用いて、磁界の極性の変化をカウントし、クランク軸57の回転角および回転速度を算出する。クランク回転センサ42は、得られた信号からクランク軸57の回転角および回転速度を算出する演算回路を有していてもよい。演算回路71は、クランク軸57のトルクと回転速度とを乗じて、クランク回転出力を算出する。
【0070】
電動モータ53には、モータ回転センサ46が設けられている。モータ回転センサ46は例えばエンコーダである。モータ回転センサ46は、電動モータ53のロータの回転角を検出し、回転角に応じた信号を演算回路71およびモータ駆動回路79へ出力する。例えば、モータ回転センサ46は、ロータの回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。演算回路71およびモータ駆動回路79は、モータ回転センサ46の出力信号から電動モータ53の回転数および回転速度を算出する。
【0071】
車輪回転センサ35は、例えば、後輪26の回転角を検出し、回転角に応じた信号を演算回路71へ出力する。例えば、車輪回転センサ35は、後輪26の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。演算回路71は、車輪回転センサ35の出力信号から後輪26の回転数および回転速度を算出する。
【0072】
図3は、車輪回転センサ35の一例を示す斜視図である。この例では、車輪回転センサ35は、ホールセンサ35sと永久磁石35mとを有する。ホールセンサ35sは、例えば、後輪26を支持する一対のチェーンステイ7(図1)の一方に設けられる。永久磁石35mは、例えば、後輪26のスポーク34に設けられる。後輪26には永久磁石35mが1個以上設けられ得る。この例では、後輪26に永久磁石35mが1個設けられている。後輪26が1回転する毎に、永久磁石35mはホールセンサ35sの近傍を1回通過する。ホールセンサ35sは、永久磁石35mが近づくと永久磁石35mにより発生する磁気を検出し、パルス信号を出力する。ホールセンサ35sは、その近傍を永久磁石35mが通過する毎に1個のパルス信号を出力する。すなわち、この例では、ホールセンサ35sは、後輪26が1回転する毎に1個のパルス信号を出力する。演算回路71は、ホールセンサ35sからの出力信号を用いて、後輪26の回転数および回転速度を算出する。
【0073】
なお、車輪回転センサ35は、前輪25の回転を検出してもよい。この場合、例えば、ホールセンサ35sはフロントフォーク15(図1)に設けられ、永久磁石35mは前輪25のスポークに設けられる。演算回路71は、ホールセンサ35sからの出力信号を用いて、前輪25の回転数および回転速度を算出する。
【0074】
変速段センサ48は、変速機構36の変速段を示すデータを演算回路71へ出力する。演算回路71は、変速段を示すデータから、クランク軸57と後輪26との間の動力伝達機構の変速比を演算する。なお、演算回路71は、後述するように電動モータ53の回転速度と車両本体の走行速度から変速比を演算してもよい。この場合は、変速段センサ48は省略されてもよい。
【0075】
演算回路71は、クランク軸57のトルクおよび回転速度、車両の走行速度、変速比、乗員による操作装置80のスイッチ操作、およびメモリ72に格納されている情報などから、適切な駆動補助出力を発生させるための指令値を算出し、モータ駆動回路79へ送信する。演算回路71は、例えば、ペダル55に加えられた乗員の人力により発生するクランク回転出力と、電動モータ53が発生する駆動補助出力の関係等に基づいて作成されたマップを参照することにより指令値を算出する。メモリ72には複数種類のマップが格納されている。演算回路71は、メモリ72から条件に合ったマップを読み出し、読み出したマップを参照することにより指令値を算出する。
【0076】
モータ駆動回路79は、例えばインバータである。モータ駆動回路79は、演算回路71からの指令値に応じた振幅、周波数、流れる向き等を有する電流を、バッテリ56から電動モータ53に供給する。当該電流を供給された電動モータ53は回転し、所定の駆動補助出力を発生させる。このように、演算回路71は、走行時の乗員のペダル55を漕ぐ動作をアシストするように、電動モータ53に補助力を発生させる。
【0077】
電動モータ53が発生させる補助力の大きさは、現在選択されているアシストモードによって変動し得る。アシストモードは、乗員が操作盤60を操作して選択され得る。
【0078】
操作盤60は、電動補助自転車1のハンドル14(図1)に取り付けられて、例えば有線ケーブルによって制御装置70と接続される。操作盤60は、乗員が行った操作を示す操作信号を制御装置70に送信し、また、制御装置70から乗員に提示するための各種情報を受信する。
【0079】
図4は、例示的な操作盤60の外観図である。操作盤60は、例えばハンドル14の左グリップの近傍に取り付けられる。
【0080】
操作盤60は、表示パネル61と、アシストモード操作スイッチ62と、電源スイッチ65とを備える。
【0081】
表示パネル61は例えば液晶パネルである。表示パネル61には、制御装置70から提供された、電動補助自転車1の速度、バッテリ56の残容量、アシスト比率を変動させる範囲に関する情報、アシストモードおよびその他の走行情報を含む情報が表示される。
【0082】
表示パネル61は、速度表示エリア61a、バッテリ残容量表示エリア61b、アシスト比率変動範囲表示エリア61cおよびアシストモード表示エリア61dを有する。表示パネル61は、それらの情報等を乗員に報知する報知装置として機能し、この例では情報を表示するが、音声を出力して乗員に報知してもよい。
【0083】
速度表示エリア61aには、電動補助自転車1の車速が数字で表示される。本実施形態の場合、電動補助自転車1の車速は、後輪26または前輪25に設けられた車輪回転センサ35を用いて検出される。
【0084】
バッテリ残容量表示エリア61bには、バッテリ56から制御装置70に出力される電池残容量の情報に基づいて、バッテリ56の残容量がセグメントによって表示される。これにより、乗員はバッテリ56の残容量を直感的に把握することができる。
【0085】
アシスト比率変動範囲表示エリア61cには、制御装置70が設定したアシスト比率を変動させる範囲がセグメントによって表示される。また、その変動範囲において現在実行中のアシスト比率をさらに表示してもよい。
【0086】
アシストモード表示エリア61dには、乗員がアシストモード操作スイッチ62を操作して選択したアシストモードが表示される。アシストモードは、例えば“強”、“標準”、“オートエコ”である。乗員がアシストモード操作スイッチ62を操作してアシストモードオフを選択した場合は、アシストモード表示エリア61dには“アシストなし”と表示される。
【0087】
アシストモード操作スイッチ62は、上述した複数のアシストモード(アシストモードオフを含む。)のうちの一つを乗員が選択するためのスイッチである。複数のアシストモードのうちの一つが選択されたとき、操作盤60の内部に設けられたマイコン(図示せず)は、選択されたアシストモードを特定する操作信号を制御装置70に送信する。
【0088】
電源スイッチ65は、電動補助自転車1の電源のオン/オフを切り替えるスイッチである。乗員は電源スイッチ65を押して、電動補助自転車1の電源のオン/オフを切り替える。
【0089】
操作盤60は、乗員に必要な情報を音により発信するスピーカ63と光により発信するランプ64とをさらに備える。例えば、制御装置70は、乗員がペダル55を漕ぐ動作に連動した加速度の変化に応じて、電動モータ53に発生させる補助力の大きさを変更する。このとき、音声の出力および/または光の点滅等により、補助力の大きさを変更したことを乗員に報知する。これにより、乗員は例えば大きな補助力が発生していることを認識することができる。また、例えばハンドル14および/またはサドル27に振動を発生させることにより、補助力の大きさを変更したことを乗員に報知してもよい。
【0090】
また、補助力を大きくしているときは、電動補助自転車1の周囲の人々に聞こえる音量の音をスピーカ63に発生させたり、ヘッドランプ22およびテールランプ23を点灯または点滅させたりしてもよい。これにより、電動補助自転車1の周囲の人々は、電動補助自転車1が通常の補助力よりも大きな補助力を発生させていることを認識することができる。
【0091】
電動モータ53の補助力は、クランク回転出力に対して、“強”、“標準”、“オートエコ”の順に小さくなる。
【0092】
アシストモードが“標準”の場合、電動モータ53は、例えば電動補助自転車1が発進、平坦路走行または上り坂走行の際に補助力を発生させる。アシストモードが“強”の場合、電動モータ53は、“標準”の場合と同様、例えば電動補助自転車1が発進、平坦路走行または上り坂走行の際に補助力を発生させる。電動モータ53は、アシストモードが“強”の場合には、同じクランク回転出力に対して"標準"の場合よりも大きな補助力を発生させる。アシストモードが“オートエコ”の場合、平坦路や下り坂の走行などでペダル踏力が小さいときは、電動モータ53は“標準”の場合よりも補助力を小さくしたり補助力の発生を停止したりして、電力消費量を抑える。アシストモードが“アシストなし”の場合、電動モータ53は、補助力を発生しない。
【0093】
このように、上述のアシストモードに応じて、クランク回転出力に対する補助力が変わる。この例では、アシストモードを4段階に切り替えている。しかしながら、アシストモードの切替えは3段階以下であってもよいし、5段階以上であってもよい。
【0094】
次に、本実施形態に係る回転センサの出力信号および加速度センサの出力信号を用いて電動補助自転車1の走行速度を演算する処理を説明する。
【0095】
上述したように、電動補助自転車1では、車両の走行速度に応じて電動モータ53に発生させる補助力の大きさを変化させる制御を行う。そのため、演算回路71は、例えば車輪回転センサ35の出力信号を用いて走行速度を演算する。しかし、車輪回転センサ35の出力信号から走行速度を演算する方法では、車両の発進直後および停止直前等の車両の走行状態によっては、走行速度を継続的に安定して演算することが難しい場合がある。
【0096】
本実施形態では、電動補助自転車1の回転部品の回転に応じた信号を出力する回転センサの出力信号と、加速度センサ38の出力信号とを用いて、電動補助自転車1の走行速度を演算する。
【0097】
ここで、回転部品とは、電動補助自転車1を走行させるために回転する部品である。回転部品は、例えば、電動モータ53、後輪26または前輪25である。なお、回転部品は、電動モータ53と後輪26との間の動力伝達経路におけるいずれかの部品であってもよい。例えば、回転部品は、減速機45内のギアまたは変速機構36内のギアであってもよい。また、回転センサの出力信号および加速度センサ38の出力信号を用いる演算とは、例えば、回転センサおよび加速度センサ38の両方の出力信号を用いた演算と、一方のセンサの出力信号を用いた演算とが混在した処理を指す。
【0098】
本実施形態では、例えば、車輪回転センサ35および加速度センサ38を併用して電動補助自転車1の走行速度を演算する。車輪回転センサ35を用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、加速度センサ38を用いて走行速度を検出する。加速度センサ38を用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、車輪回転センサ35を用いて走行速度を検出する。また、例えば、モータ回転センサ46および加速度センサ38を併用して電動補助自転車1の走行速度を演算する。回転センサ46を用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、加速度センサ38を用いて走行速度を検出する。加速度センサ38を用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、回転センサ46を用いて走行速度を検出する。これにより、様々な条件下において継続して車両速度を検出することができ、走行速度に応じた電動補助自転車1の制御を適切に行うことができる。
【0099】
図5は、走行速度を演算する処理の一例を示すフローチャートである。図5に示す例では、モータ回転センサ46および加速度センサ38を併用して電動補助自転車1の走行速度を演算する。
【0100】
電動モータ53の回転数と電動補助自転車1の走行速度との関係は、例えば、以下の式1のように表すことができる。
1=60×R53×r45×r36×C26 ・・・(式1)
ここで、V1は車両の走行速度(km/h)、R53は電動モータ53の回転数(rpm)、r45は減速機45の減速比、r36は減速機45の出力軸と後輪26との間の変速比、C26は後輪26の外周の長さである。
【0101】
演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から電動モータ53の回転数R53を演算することができる。減速機45の減速比r45および後輪26の外周の長さC26は、固定値であり、演算回路71は、これらの固定値を予め記憶している。
【0102】
演算回路71は、変速段センサ48が出力する変速機構36の変速段を示す信号を用いて、変速比r36を演算することができる。例えば、変速機構36以外の減速機45の出力軸と後輪26との間の各部品の歯数等は固定値であるとする。すなわち、変速機構36以外の減速機45の出力軸と後輪26との間の動力伝達機構の減速比または増速比は固定値であり、演算回路71は、このような固定値を予め記憶している。また、演算回路71は、変速機構36の複数の変速段それぞれの減速比または増速比を予め記憶している。演算回路71は、上記のような固定値と変速段センサ48の出力信号とを用いて、変速比r36を演算することができる。また、演算回路71は、変速機構36の変速段と、電動モータ53の回転数と、電動補助自転車1の走行速度との関係を示すテーブルを予め記憶していてもよい。この場合、演算回路71は、テーブルを参照することで走行速度を演算することができる。
【0103】
上記のように、電動モータ53の回転数から電動補助自転車1の走行速度を演算することができる。このため、例えば、電動補助自転車1が車輪回転センサ35を備えていない形態においても、演算回路71は、電動補助自転車1の走行速度を得ることができる。また、例えば、車輪回転センサ35が故障した場合においても、演算回路71は、電動補助自転車1の走行速度を得ることができる。
【0104】
しかしながら、車両の発進直後、車両の停止直前および電動モータ53が停止しているときなど、モータ回転センサ46から得られる回転数が小さいまたはゼロとなる場合は、モータ回転センサ46を用いた走行速度の検出は難しい、または検出することはできない。そこで、本実施形態では、演算回路71は、モータ回転センサ46から得られる回転数が所定の回転数未満の場合は、加速度センサ38を用いて走行速度を演算する。演算回路71は、加速度センサ38の出力信号から得られる車両の進行方向の加速度を積分することで、車両の走行速度を取得することができる。モータ回転センサ46を用いた走行速度の検出が難しい条件下においても、加速度センサ38を用いて走行速度を検出することで、走行速度に応じた電動補助自転車1の制御を行うことができる。
【0105】
図5に示すステップS101において、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号を用いて電動モータ53の回転数を演算する。次に、ステップS102において、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数以上であるか判定する。
【0106】
ここで、所定の回転数とは、例えば、電動補助自転車1が徐行しているときの電動モータ53の回転数である。例えば、所定の回転数は、車両の走行速度2km/hに相当する電動モータ53の回転数である。一例として、走行速度V1=2(km/h)、減速比r45=1/40、変速比r36=38/25、後輪外周の長さC26=2(m)としたとき、上記の式1から電動モータ53の回転数R53は439(rpm)となる。すなわち、この例では、所定の回転数は、439(rpm)となる。なお、この回転数の値は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0107】
ステップS102において、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数以上であると判定すると、ステップS103の処理に進む。ステップS103では、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号および加速度センサ38の出力信号の両方を用いて車両の走行速度を演算する。
【0108】
例えば、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から演算した速度、および加速度センサ38の出力信号から演算した速度のそれぞれに重み付けを行う。演算回路71は、重み付けしたそれら2つの速度を用いて、車両の走行速度を演算する。例えば、演算回路71は、以下の式2に示すように車両の走行速度V1を演算する。
1=a×Vm+(1-a)×Vg ・・・(式2)
ここで、Vmはモータ回転センサ46の出力信号から演算した速度、Vgは加速度センサ38の出力信号から演算した速度、aは0<a<1を満たす任意の数である。演算した速度VmおよびVgのそれぞれに係数を乗じている。係数の値を調整し、現在の電動モータ53の回転数に適したセンサから得られる速度を採用する割合を大きくすることで、走行速度の検出精度を高めることができる。
【0109】
aの値は固定であってもよいし、可変であってもよい。例えば、電動モータ53の回転数が大きいときは、電動モータ53の回転数から演算する走行速度の精度は、加速度センサ38の出力信号から演算する走行速度の精度よりも高くなる。このため、電動モータ53の回転数が大きいときはaの値を大きくし、モータ回転センサ46の出力信号から得られる速度を採用する割合を大きくする。一方、電動モータ53の回転数が小さいときは、電動モータ53の回転数から演算する走行速度の精度は低くなる。このため、電動モータ53の回転数が小さいときはaの値を小さくし、加速度センサ38の出力信号から得られる速度を採用する割合を大きくする。これにより、走行速度の検出精度を高くすることができる。
【0110】
ステップS102において、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数未満であると判定すると、ステップS104の処理に進む。ステップS104では、演算回路71は、加速度センサ38の出力信号を用いて車両の走行速度を演算する。ステップS104では、演算回路71は、走行速度の演算にモータ回転センサ46の出力信号は用いない。
【0111】
乗員が電動補助自転車1のペダル55を漕がずに慣性走行したり、ペダル55を漕がずに下り坂を走行したりしているときは、電動モータ53は停止しており、そのときの電動モータ53の回転数はゼロになる。この場合は、電動モータ53の回転数から求められる走行速度はゼロになり、実際の車両の走行速度とは異なった値になる。
【0112】
また、ワンウェイクラッチ37(図2)が電動モータ53の回転を後輪26に伝達しない条件下では、電動モータ53の回転数から求められる走行速度と、実際の車両の走行速度とは異なった値になり得る。例えば、慣性走行中や下り坂を走行中に乗員がペダル55を僅かに動かした場合、電動モータ53が少し回転することがある。しかし、変速機構36の出力軸の回転速度が後輪26の回転速度よりも遅い場合は、ワンウェイクラッチ37は、電動モータ53の回転を後輪に伝達しない。このような条件下において電動モータ53の回転数から求められる走行速度は、実際の車両の走行速度とは異なった値になり得る。
【0113】
そのため、ステップS104では、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号は用いずに、加速度センサ38の出力信号を用いて車両の走行速度を演算する。演算回路71は、加速度センサ38の出力信号から得られる車両の進行方向の加速度を積分することで、車両の走行速度を取得することができる。
【0114】
また、車体の振動が大きかったり、傾斜路を走行したりしている場合は、加速度センサ38の出力信号から車両の走行速度を演算することは難しくなる。この場合は、演算回路71は、加速度センサ38の出力信号は用いずに、モータ回転センサ46の出力信号を用いて車両の走行速度を演算してもよい。あるいは、演算回路71は、上記式2のaの値を大きくして走行速度を演算してもよい。
【0115】
上記のように、モータ回転センサ46の出力信号および加速度センサ38の出力信号を使い分けることで、様々な条件下において車両速度を継続的に安定して検出することができる。これにより、様々な条件下において走行速度に応じた電動補助自転車1の制御を適切に行うことができる。
【0116】
上記の例では、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から得られる回転数に応じて、モータ回転センサ46および加速度センサ38の中で走行速度の演算に用いるセンサを変更していた。演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から得られる電動モータ53の回転速度またはその周囲の回転部品の回転速度に応じて、モータ回転センサ46および加速度センサ38の中から走行速度の演算に用いるセンサを変更してもよい。また、走行速度の演算に用いるセンサを変更することは、モータ回転センサ46および加速度センサ38の一方を用いる演算と、両方を用いる演算とを切り替えることに限定されない。センサの変更とは、モータ回転センサ46および加速度センサ38の一方を用いる演算と、他方を用いる演算とを切り替えることも含まれる。
【0117】
また、上記の例では、走行速度の単位をkm/h、回転数の単位をrpmとしたが、それら以外の単位を採用した演算を行ってもよい。例えば、走行速度の単位をメートル毎分としてもよいし、回転数の単位をrpsとしてもよい。
【0118】
次に、後輪26の回転を検出する車輪回転センサ35(図2)および加速度センサ38を併用して電動補助自転車1の走行速度を演算する処理を説明する。
【0119】
図6は、車輪回転センサ35および加速度センサ38を用いて電動補助自転車1の走行速度を演算する処理を示すフローチャートである。図7は、車輪回転センサ35および加速度センサ38を用いて電動補助自転車1の走行速度を演算する処理を示す図である。
【0120】
上述したように、車輪回転センサ35は、後輪26が所定の角度回転するごとにパルス信号を出力する。例えば、図3を用いて上述したように、後輪26に車輪回転センサ35の永久磁石35mが1個設けられている形態では、車輪回転センサ35は、後輪26が1回転する毎に1個のパルス信号を出力する。車輪回転センサ35が1個のパルス信号を出力してから次の1個のパルス信号を出力する間に、電動補助自転車1は後輪26の外周の長さ分だけ移動したことになる。演算回路71は、車輪回転センサ35が出力する1個のパルス信号を検出してから次の1個のパルス信号を検出するまでの時間と、後輪26の外周の長さとを用いて、車両の走行速度を演算することができる。
【0121】
しかし、車両の発進直後および停止直前等の後輪26の回転速度が遅い状態では、演算回路71がパルス信号を検出してから次にパルス信号を検出するまでに時間が掛かり、その間は走行速度を更新することができない。本実施形態では、パルス信号を検出しない期間は、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度を演算し、走行速度を継続的に更新する。これにより、車輪回転センサ35を用いた走行速度の検出ができない期間においても、そのときの走行速度に応じた電動補助自転車1の制御を行うことができる。
【0122】
図7(a)の縦軸は、電動補助自転車1の進行方向における走行速度を示している。図7(a)の横軸は時間を示している。図7(b)の縦軸は、加速度センサ38の出力信号から得られる電動補助自転車1の進行方向の加速度を示している。図7(b)の横軸は時間を示している。図7(a)の点線は、加速度センサ38の出力信号から得られる車両の走行速度81(以下、加速度センサ速度と表現する)を示している。図7(a)の破線は、車輪回転センサ35の出力信号から得られる車両の走行速度82(以下、回転センサ速度と表現する)を示している。図7(a)の実線は、加速度センサ38の出力信号および車輪回転センサ35の出力信号の両方を用いて演算して得られた車両の走行速度83(以下、推定速度と表現する)を示している。
【0123】
図6および図7を参照して、時間がゼロのとき電動補助自転車1は停止している。電動補助自転車1が停止しているときは、演算回路71は、車輪回転センサ35からのパルス信号を検出せず、加速度センサ38の出力信号を用いて加速度センサ速度81を演算する(ステップS111、S112)。その加速度センサ速度81が推定速度83となる。外乱等により、加速度センサ速度81は完全なゼロにはならない場合があるが、ゼロもしくはゼロに近い値になる。
【0124】
時間t11において、電動補助自転車1が発進すると、加速度センサ速度81は大きくなっていく。電動補助自転車1が発進して後輪26が少なくとも1回転より多く回転する(例えば2回転する)までは、演算回路71は、パルス信号を複数個検出していないため、推定速度83を加速度センサ速度81に一致させる。このように、車輪回転センサ35を用いた走行速度の検出ができない期間は、演算回路71は、加速度センサ38を用いて走行速度を検出する。
【0125】
後輪26が1回転より多く回転し、時間t12において演算回路71はパルス信号を2個検出すると、それらパルス信号を用いて回転センサ速度82を演算する(ステップS113)。演算回路71は、加速度センサ速度81に一致させていた推定速度83を回転センサ速度82に一致させる補正を行う(ステップS114)。時間t12における回転センサ速度82の大きさはs12であり、演算回路71は、推定速度83の大きさをs12に補正する。
【0126】
時間t12でパルス信号を検出してから次に時間t13でパルス信号を検出するまでの間の期間は、演算回路71は、パルス信号を検出しない。このパルス信号を検出しない期間では、演算回路71は、加速度センサ速度81を用いて推定速度83を演算する(ステップS115、S116)。このとき、演算回路71は、回転センサ速度82の大きさs12を基準にして、加速度センサ速度81を用いて推定速度83を演算する。具体的には、図7(a)のグラフにおいて、点線で示す加速度センサ速度81の傾きと同じ傾きになるように、速度s12から推定速度83を上昇させていく。
【0127】
時間t13において、演算回路71は新たにパルス信号を検出する。演算回路71は、今回検出したパルス信号と前回検出したパルス信号とを用いて回転センサ速度82を演算する(ステップS113)。演算回路71は、速度s12を基準として加速度センサ速度81を用いて演算していた推定速度83を、新たな回転センサ速度82に一致させる補正を行う(ステップS114)。時間t13における回転センサ速度82の大きさはs13であり、演算回路71は、推定速度83の大きさをs13に補正する。
【0128】
演算回路71は、パルス信号を検出しない期間は、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度を演算する。一方、パルス信号を検出するタイミングにおいては、加速度センサ38よりも車輪回転センサ35を用いた方が走行速度の検出精度が高い場合がある。このため、パルス信号を検出するタイミングにおいては、加速度センサ38を用いて得られた走行速度を、車輪回転センサ35を用いて得られた走行速度に補正する。このような補正を行った上で、パルス信号を検出しない期間において加速度センサ38を用いた走行速度の演算を行う。これにより、加速度センサ38の出力信号を用いて継続的に更新する走行速度の精度を高めることができる。
【0129】
時間t13でパルス信号を検出してから次に時間t14でパルス信号を検出するまでの間の期間は、演算回路71は、パルス信号を検出しない。このパルス信号を検出しない期間では、演算回路71は、加速度センサ速度81を用いて推定速度83を演算する(ステップS115、S116)。上記と同様に、演算回路71は、回転センサ速度82の大きさs13を基準にして、加速度センサ速度81を用いて推定速度83を演算する。
【0130】
時間t14において、演算回路71は、新たにパルス信号を検出し、回転センサ速度82を演算する(ステップS113)。演算回路71は、速度s13を基準として加速度センサ速度81を用いて演算していた推定速度83を、新たな回転センサ速度82の大きさs14に一致させる補正を行う(ステップS114)。このように、演算回路71は、加速度センサ速度81および回転センサ速度82を用いて推定速度83の演算を継続する。
【0131】
時間t15において、電動補助自転車1の走行速度は減速に転じる。時間t16においてパルス信号を検出すると、演算回路71は、回転センサ速度82を演算する。演算回路71は、推定速度83を、新たな回転センサ速度82の大きさs16に一致させる補正を行う。
【0132】
時間t16でパルス信号を検出してから次に時間t17でパルス信号を検出するまでの間の期間は、演算回路71は、パルス信号を検出しない。このパルス信号を検出しない期間では、演算回路71は、加速度センサ速度81を用いて推定速度83を演算する。上記と同様に、演算回路71は、回転センサ速度82の大きさs16を基準にして、加速度センサ速度81を用いて推定速度83を演算する。時間t17においてパルス信号を検出すると、演算回路71は、回転センサ速度82を演算する。演算回路71は、推定速度83を、新たな回転センサ速度82の大きさs17に一致させる補正を行う。このように、演算回路71は、加速度センサ速度81および回転センサ速度82を用いて推定速度83の演算を継続する。
【0133】
本実施形態では、パルス信号を検出しない期間は、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度を演算し、走行速度を継続的に更新する。これにより、車輪回転センサ35を用いた走行速度の検出ができない期間においても、そのときの走行速度に応じた電動補助自転車1の制御を行うことができる。
【0134】
なお、車輪回転センサ35は、後輪26の回転を検出していたが、前輪25の回転を検出してもよい。車輪回転センサ35が前輪25の回転を検出する形態においても、上記と同様に電動補助自転車1の走行速度を演算することができる。
【0135】
次に、モータ回転センサ46の出力信号および加速度センサ38の出力信号を用いて電動補助自転車1の動力伝達機構の変速比を演算する処理を説明する。
【0136】
上記の例では、電動補助自転車1は、変速機構36の変速段を示す信号を出力する変速段センサ48を備えていた。以下に説明する例では、電動補助自転車1が変速段センサ48を備えていない場合、あるいは変速段センサ48が故障した場合において、演算により変速比を取得する処理を説明する。
【0137】
本実施形態の電動補助自転車1では、動力伝達機構の変速比に応じて、電動モータ53に発生させる補助力の大きさを制御する。例えば、変速比が低い場合は、補助力の大きさを小さくする。ここで、「変速比が低い」とは、「ローギア」とも表現され、電動モータ53の回転速度に対して後輪26の回転速度が大きく減少する変速比であることを示している。一方、「変速比が高い」とは、「ハイギア」とも表現され、電動モータ53の回転速度に対して後輪26の回転速度が減少する割合が小さい変速比であることを示している。
【0138】
変速比が低くなるほど、ペダル55に加えた人力に対してペダル55は回転しやすくなるといえる。そのため、変速比が低い場合に大きな補助力を発生させると、乗員は違和感を覚える場合がある。そこで、変速機構36が低い変速比に設定されている場合は、補助力の大きさを小さくすることで、乗員の違和感を低減させる。例えば、メモリ72(図2)には、変速比を複数のパラメータのうちの1つとするマップが格納されている。演算回路71は、そのようなマップを参照することにより、電動モータ53を駆動させるための指令値を算出する。
【0139】
演算により変速比を取得する処理を説明する。電動補助自転車1が内装変速機を備える形態では、動力伝達機構の変速比は、例えば、駆動スプロケット59、チェーン28、従動スプロケット32、駆動軸33、変速機構36の間の変速比である。電動補助自転車1が外装変速機を備える形態では、動力伝達機構の変速比は、例えば、駆動スプロケット59、チェーン28、従動スプロケット32の間の変速比である。ここでは、減速機45の出力軸と駆動スプロケット59の回転速度は同じとする。動力伝達機構の変速比として、減速機45の出力軸と後輪26との間の変速比r36を演算により求める。
【0140】
上記の式1から、変速比r36は、以下の式3のように表すことができる。
36=V1/(60×R53×r45×C26) ・・・(式3)
【0141】
減速機45の減速比r45と後輪26の外周の長さC26は固定値であるため、定数をAとすると、変速比r36は、以下の式4のように表すことができる。
36=A×V1/R53 ・・・(式4)
【0142】
すなわち、変速比r36は、電動補助自転車1の走行速度V1と電動モータ53の回転数R53とが分かれば演算により求めることができる。
【0143】
しかし、上述したように、電動補助自転車1の発進直後および停止直前等の後輪26の回転速度が遅い状態では、車輪回転センサ35がパルス信号を出力するのに時間が掛かる。このため、車輪回転センサ35のみを用いて車両の走行速度を演算する場合、演算回路71は走行速度V1をなかなか求めることができない。そのため、演算回路71は変速比r36もなかなか求めることができない。そこで、本実施形態では、加速度センサ38の出力信号を用いて演算した走行速度V1を用いて、変速比r36を演算する。これにより、後輪26の回転速度が遅い状態でも、演算回路71は、変速比に応じた電動モータ53の制御を行うことができる。
【0144】
図8は、変速比を演算する処理を示すフローチャートである。ステップS121において、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号を用いて電動モータ53の回転数R53を演算する。次に、ステップS122において、演算回路71は、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度V1を演算する。演算回路71は、加速度センサ38の出力信号から得られる車両の進行方向の加速度を積分することで、走行速度V1を取得することができる。次に、ステップS123において、演算回路71は、電動モータ53の回転数R53と車両の走行速度V1を用いて変速比r36を演算する。
【0145】
このように、加速度センサ38の出力信号を用いて変速比r36を演算する。このため、電動補助自転車1の発進直後および停止直前等の後輪26の回転速度が遅い状態でも、変速比r36を演算により求めることができる。変速比r36が求まることにより、演算回路71は、後輪26の回転速度が遅い状態でも変速比に応じた電動モータ53の制御を行うことができる。
【0146】
次に、モータ回転センサ46、車輪回転センサ35および加速度センサ38を用いて電動補助自転車1の走行速度を演算する処理を説明する。
【0147】
図9は、モータ回転センサ46、車輪回転センサ35および加速度センサ38を用いて電動補助自転車1の走行速度を演算する処理を示すフローチャートである。
【0148】
上述した例から理解されるように、モータ回転センサ46の出力信号を用いて演算した車両の走行速度の精度は相対的に高い。しかし、ワンウェイクラッチ37(図2)が電動モータ53の回転を後輪26に伝達しない条件下では、電動モータ53の回転数から求められる走行速度と、実際の車両の走行速度とは異なった値になり得る。車輪回転センサ35の出力信号を用いて演算した走行速度の精度は、高速度域では高いが、低速度域では低くなる。加速度センサ38の出力信号を用いて演算した走行速度の精度は相対的に低いが、走行速度を常時演算することができる。本実施形態では、モータ回転センサ46、車輪回転センサ35および加速度センサ38のそれぞれの短所を互いに補い合うようして走行速度を演算する。これにより、様々な条件下において車両の走行速度を継続的に安定して検出することができる。
【0149】
図9を参照して、乗員が電源スイッチ65(図4)を押して、電動補助自転車1がオフ状態からオン状態に変化したとき、演算回路71は、車両の走行速度の初期設定値としてゼロを設定する(ステップS131)。
【0150】
次に、ステップS132において、演算回路71は、トルクセンサ41の出力信号に基づいて、クランク軸57に所定以上のトルクが発生しているか判定する。乗員がペダル55を足で踏んだとき、クランク軸57には所定以上のトルクが発生する。上述したように、トルクセンサ41は、乗員がペダル55に加えた人力を、クランク軸57に発生するトルクとして検出する。クランク軸57に所定以上のトルクが発生している場合、制御装置70は、電動モータ53に補助力を発生させる制御を行う。
【0151】
演算回路71は、クランク軸57に所定以上のトルクが発生していると判定した場合、モータ回転センサ46の出力信号を用いて電動モータ53の回転数を演算する(ステップS133)。次に、ステップS134において、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数以上であるか判定する。
【0152】
所定の回転数は、例えば、電動補助自転車1が実質的に停車しているとみなされ得る走行速度に相当する電動モータ53の回転数である。例えば、所定の回転数は、秒速10cm未満程度の走行速度に相当する電動モータ53の回転数である。一例として、所定の回転数は60(rpm)である。なお、この回転数の値は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0153】
ステップS134において、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数以上であると判定すると、ステップS135の処理に進む。ステップS135では、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号を用いて車両の走行速度を演算する。演算回路71は、走行速度を演算すると、ステップS140の処理に進む。
【0154】
ステップS140において、演算回路71は、電動補助自転車1のシステムをオフにする操作がなされたか判定する。システムをオフにする操作は、例えば乗員が電源スイッチ65を押す操作である。システムをオフにする操作がなされていない場合は、ステップS132に戻る。システムをオフにする操作がなされた場合は、走行速度を演算する処理を終了する。
【0155】
ステップS134において、演算回路71は、モータ回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数未満であると判定すると、車両の走行速度をゼロとする。例えば、傾斜が急な登坂路において、乗員はペダル55を踏んではいるが、電動補助自転車1は動かずに停止したままという状態について考える。この場合、電動モータ53に駆動電流は流れているが電動モータ53は停止していることが起こり得る。また、例えば、歩道の段差に前輪25を突き当てた状態、または信号待ちでブレーキをかけたままペダル55に足を乗せている状態等においても同様に、電動モータ53に駆動電流は流れているが電動モータ53は停止していることが起こり得る。このように、乗員がペダル55を踏んではいるが、電動補助自転車1が実質的に停止している状態では、演算回路71は車両の走行速度をゼロと判断する。演算回路71は、走行速度ゼロと判断すると、ステップS140の処理に進む。
【0156】
ステップS132において、演算回路71は、クランク軸57に所定以上のトルクが発生していないと判定した場合、ステップS137の処理に進む。
【0157】
ステップS137において、演算回路71は、車輪回転センサ35からのパルス信号を、所定時間内に複数個検出したか判定する。一例として、所定時間は5秒である。なお、この時間の値は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0158】
演算回路71は、車輪回転センサ35からのパルス信号を、所定時間内に複数個検出した場合、それらパルス信号を用いて車両の走行速度を演算する(ステップS138)。次に、ステップS139において、演算した現在の走行速度を基準として、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度を演算する。図6および図7を用いて上述したように、パルス信号を検出しない期間においては、加速度センサ38を用いた走行速度の演算を行う。これにより、パルス信号を検出しない期間においても走行速度を継続的に更新することができる。演算回路71は、走行速度を演算すると、ステップS140の処理に進む。
【0159】
ステップS137において、演算回路71は、車輪回転センサ35からのパルス信号を、所定時間内に複数個検出しない場合、ステップS139の処理に進む。この場合、演算回路71は、既に演算済みの現在の走行速度を基準として、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度を演算する。なお、現在の走行速度がゼロである場合は、ゼロを基準して走行速度を演算する。上述したように、後輪26の回転速度が遅い状態では、演算回路71がパルス信号を検出してから次にパルス信号を検出するまでに時間が掛かり、その間は走行速度を更新することができない。この場合は、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度を演算することにより、走行速度を継続的に更新することができる。これにより、車輪回転センサ35を用いた走行速度の検出ができない期間においても、そのときの走行速度に応じた電動補助自転車1の制御を行うことができる。
【0160】
演算回路71は、走行速度を演算すると、ステップS140の処理に進む。システムをオフにする操作がなされるまで、上記の処理を継続する。
【0161】
このように、モータ回転センサ46の出力信号、車輪回転センサ35の出力信号および加速度センサ38の出力信号を使い分けることで、様々な条件下において車両の走行速度を継続的に安定して検出することができる。これにより、様々な条件下において走行速度に応じた電動補助自転車1の制御を適切に行うことができる。
【0162】
上記の説明では、電動補助自転車として二輪の電動補助自転車を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電動補助自転車は三輪以上の電動補助自転車であってもよい。
【0163】
また、上記の説明では、乗員がペダルを踏んで発生させる人力および電動モータが発生させる補助力が伝達される駆動輪は後輪であったが、本発明はこれに限定されない。電動補助自転車の形態に応じて、それら人力および補助力は前輪に伝達されてもよいし、前輪および後輪の両方に伝達されてもよい。
【0164】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0165】
上述したように、本発明の実施形態に係る電動補助システム51は、電動補助車両1の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータ53と、回転することにより電動補助車両1を走行させる回転部品の回転に応じた信号を出力する回転センサ35および46と、電動補助車両1の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサ38とを備える。電動補助システム51は、回転センサ35および46の出力信号の少なくとも一方と、加速度センサ38の出力信号とを用いて電動補助車両1の走行速度を演算する制御装置70をさらに備える。
【0166】
本発明の実施形態によれば、回転センサ35および46の少なくとも一方と、加速度センサ38とを併用して、電動補助車両1の走行速度を演算する。回転センサ35または46を用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、加速度センサ38を用いて走行速度を検出する。加速度センサ38を用いた走行速度の検出が難しい条件下においては、回転センサ35および46の少なくとも一方を用いて走行速度を検出する。様々な条件下において継続して車両速度を検出することができ、走行速度に応じた電動補助車両1の制御を行うことができる。
【0167】
ある実施形態において、制御装置70は、第1の条件下では、回転センサ35または46の出力信号、および加速度センサ38の出力信号の両方を用いて走行速度を演算する。第2の条件下では、回転センサ35または46の出力信号、および加速度センサ38の出力信号の一方を用いて走行速度の演算を行う。
【0168】
条件に応じて走行速度の演算に用いるセンサを変更することで、様々な条件下において継続して車両速度を演算することができる。
【0169】
ある実施形態において、制御装置70は、回転センサ46の出力信号から得られる回転数に応じて、回転センサ46と加速度センサ38とのうちで走行速度の演算に用いるセンサを変更する。
【0170】
走行速度の演算に用いるセンサを、現在の回転数に適したセンサに変更することで、様々な条件下において継続して車両速度を演算することができる。
【0171】
ある実施形態において、制御装置70は、回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数以上の場合、回転センサ46の出力信号および加速度センサ38の出力信号の両方を用いて電動補助車両1の走行速度を演算する。制御装置70は、回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数未満の場合、加速度センサ38の出力信号を用いて電動補助車両1の走行速度を演算する。
【0172】
車両の発進直後、車両の停止直前および電動モータ53が停止しているときなど、回転センサ46から得られる回転数が小さいまたはゼロとなる場合は、回転センサ46を用いた走行速度の検出が難しくなる。回転センサ46から得られる回転数が所定の回転数未満の場合は、加速度センサ38を用いて走行速度を演算する。回転センサ46を用いた走行速度の検出が難しい条件下においても、加速度センサ38を用いて走行速度を検出することで、走行速度に応じた電動補助車両1の制御を行うことができる。
【0173】
ある実施形態において、回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数以上の場合、制御装置70は、回転センサ46の出力信号を用いて第1の速度を演算し、加速度センサ38の出力信号を用いて第2の速度を演算する。制御装置70は、第1の速度および第2の速度のそれぞれに重み付けを行い、重み付けした第1の速度および重み付けした第2の速度の両方を用いて、電動補助車両1の走行速度を演算する。
【0174】
回転センサ46から得られる速度および加速度センサ38から得られる速度のそれぞれに重み付けを行う。現在の回転数に適したセンサから得られる速度を採用する割合を大きくすることで、走行速度の検出精度を高めることができる。
【0175】
ある実施形態において、回転センサ46の出力信号から得られる回転数が所定の回転数以上の場合、制御装置70は、回転センサ46の出力信号を用いて第1の速度を演算し、加速度センサ38の出力信号を用いて第2の速度を演算する。制御装置70は、第1の速度に第1の係数を乗じ、第2の速度に第2の係数を乗じ、第1の係数を乗じた第1の速度および第2の係数を乗じた第2の速度の両方を用いて、電動補助車両1の走行速度を演算する。
【0176】
回転センサ46から得られる速度および加速度センサ38から得られる速度のそれぞれに係数を乗じる。現在の回転数に適したセンサから得られる速度を採用する割合を大きくすることで、走行速度の検出精度を高めることができる。
【0177】
ある実施形態において、制御装置70は、回転センサ46の出力信号から得られる速度に応じて、回転センサ46および加速度センサ38の中から走行速度の演算に用いるセンサを変更する。
【0178】
走行速度を演算するためセンサを、現在の走行速度に適したセンサに変更することで、様々な条件下において継続して車両速度を演算することができる。
【0179】
ある実施形態において、回転部品は電動モータ53であり、回転センサ46は、電動モータ53の回転に応じた信号を出力する。
【0180】
電動モータ53の回転に応じた信号および加速度センサ38の出力信号を併用して電動補助車両1の走行速度を演算する。電動モータ53が停止している場合など、回転センサ46を用いた走行速度の検出ができない条件下においても、加速度センサ38を用いて走行速度を検出することができ、走行速度に応じた電動補助車両1の制御を行うことができる。
【0181】
ある実施形態において、回転部品は電動補助車両1の車輪25または26であり、回転センサ35は、車輪25または26の回転に応じた信号を出力する。
【0182】
車輪25または26の回転に応じた信号および加速度センサ38の出力信号を併用して電動補助車両1の走行速度を演算する。車両の発進直後および停止直前などの車輪25および26の回転が遅いときは、回転センサ35を用いた走行速度の検出が難しくなる。回転センサ35を用いた走行速度の検出が難しい条件下においても、加速度センサ38を用いて走行速度を検出することで、走行速度に応じた電動補助車両1の制御を行うことができる。
【0183】
ある実施形態において、回転センサ35は、車輪25または26が所定の角度回転するごとにパルス信号を出力する。制御装置70は、2つ以上のパルス信号を用いて走行速度を演算する。制御装置70は、パルス信号を検出しない期間は、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度を演算する。
【0184】
回転センサ35がパルス信号を出力しない期間は、パルス信号を用いた走行速度の検出ができない。回転センサ35を用いた走行速度の検出ができない期間は、加速度センサ38を用いて走行速度を検出する。これにより、回転センサ35を用いた走行速度の検出ができない期間においても、走行速度に応じた電動補助車両1の制御を行うことができる。
【0185】
ある実施形態において、回転センサ35は、車輪25または26が所定の角度回転するごとにパルス信号を出力する。制御装置70は、2つ以上のパルス信号を用いて走行速度を演算する。制御装置70は、パルス信号を検出してから次のパルス信号を検出するまでの期間は、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度を演算する。
【0186】
回転センサ35がパルス信号を出力してから次にパルス信号を出力するまでの期間は、パルス信号を用いた走行速度の検出ができない。回転センサ35を用いた走行速度の検出ができない期間は、加速度センサ38を用いて走行速度を検出する。これにより、回転センサ35を用いた走行速度の検出ができない期間においても、走行速度に応じた電動補助車両1の制御を行うことができる。
【0187】
ある実施形態において、制御装置70は、パルス信号を検出すると、今回検出したパルス信号と前回検出したパルス信号とを用いて走行速度を演算する。そして、制御装置70は、加速度センサ38の出力信号から得られた走行速度の大きさを、パルス信号から得られた走行速度に補正する。
【0188】
パルス信号を検出しない期間は、加速度センサ38を用いて走行速度を検出する。一方、パルス信号を検出するタイミングにおいては、加速度センサ38よりも回転センサ35を用いた方が走行速度の検出精度が高い場合がある。この場合は、加速度センサ38を用いて得られた走行速度の大きさを、回転センサ35を用いて得られた走行速度に補正する。このような補正を行った上で、パルス信号を検出しない期間において加速度センサ38を用いた走行速度の検出を行うことで、走行速度の検出精度を高めることができる。
【0189】
ある実施形態において、制御装置70は、パルス信号を検出してから次にパルス信号を検出するまでの期間は、パルス信号から得られた走行速度を基準にして、加速度センサ38の出力信号を用いて走行速度を演算する。
【0190】
回転センサ35を用いて検出した走行速度を基準にして、加速度センサ38の出力信号から走行速度を演算する。これにより、加速度センサ38を用いた走行速度の検出精度を高めることができる。
【0191】
ある実施形態において、回転部品は電動モータ53であり、回転センサ46は、電動モータ53の回転に応じた信号を出力する。制御装置70は、回転センサ46の出力信号および加速度センサ38の出力信号を用いて電動補助車両1が備える動力伝達機構の変速比を演算する。
【0192】
車両の発進直後および停止直前などの走行速度が遅い場合は、回転センサ35を用いた走行速度の検出が難しくなるが、加速度センサ38を用いることで走行速度を検出することができる。電動モータ53の回転数は回転センサ46の出力信号から演算できる。加速度センサ38を用いて検出した走行速度と回転センサ46を用いて検出した電動モータ53の回転数とから、動力伝達機構の変速比を演算する。これにより、変速比に応じた電動補助車両1の制御を行うことができる。
【0193】
ある実施形態において、電動補助システム51は、電動モータ53の回転に応じた信号を出力する回転センサ46を備える。制御装置70は、電動モータ53の回転に応じた信号および加速度センサ38の出力信号を用いて電動補助車両1が備える動力伝達機構の変速比を演算する。
【0194】
車両の発進直後および停止直前などの車輪25および26の回転が遅いときは、車輪25または26の回転に応じた信号がなかなか出力されず、走行速度の演算ができなかったり走行速度の演算に時間が掛かったりする。そのような場合でも、加速度センサ38を用いることで走行速度を検出することができる。電動モータ53の回転数は回転センサ46の出力信号から演算できる。加速度センサ38を用いて検出した走行速度と回転センサ46を用いて検出した電動モータ53の回転数とから、動力伝達機構の変速比を演算することができる。これにより、変速比に応じた電動補助車両1の制御を行うことができる。
【0195】
本発明のある実施形態に係る電動補助システム51は、電動補助車両1の乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータ53と、電動モータ53の回転に応じた信号を出力する回転センサ46と、電動補助車両1の進行方向の加速度に応じた信号を出力する加速度センサ38とを備える。電動補助システム51は、回転センサ46の出力信号および加速度センサ38の出力信号を用いて、電動補助車両1が備える動力伝達機構の変速比を演算する制御装置70をさらに備える。
【0196】
加速度センサ38を用いて走行速度を検出することができるとともに、回転センサ46を用いて電動モータ53の回転数を検出することができる。検出した走行速度と電動モータ53の回転数とから、変速機の変速比を演算することができ、変速比に応じた電動補助車両1の制御を行うことができる。
【0197】
本発明の実施形態に係る電動補助車両1は、上記の電動補助システム51を備える。これにより、上記の電動補助システム51の特徴を備えた電動補助車両1が提供される。
【0198】
以上、本発明の実施形態を説明した。上述の実施形態の説明は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。また、上述の実施形態で説明した各構成要素を適宜組み合わせた実施形態も可能である。本発明は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、改変、置き換え、付加および省略などが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明は、加速度センサを有し、人力に補助力を加えて駆動される車両に特に有用である。
【符号の説明】
【0200】
1:電動補助自転車(電動補助車両)、 5:ダウンチューブ、 6:ブラケット、 7:チェーンステイ、 8:ブレーキ、 9:ブレーキ、 11:車体フレーム、 12:ヘッドパイプ、 13:ハンドルステム、 14:ハンドル、 15:フロントフォーク、 16:シートチューブ、 17:サドルパイプ、 18:フェンダー、 19:シートステイ、 21:前かご、 22:ヘッドランプ、 23:テールランプ、 24:荷台、 25:前輪、 26:後輪、 27:サドル、 28:チェーン、 29:スタンド、 34:スポーク、 35:車輪回転センサ、 38:加速度センサ、 41:トルクセンサ、 42:クランク回転センサ、 46:モータ回転センサ、 51:駆動ユニット(電動補助システム)、 53:電動モータ、 54:クランクアーム、 55:ペダル、 56:バッテリ、 57:クランク軸、 60:操作盤、 61:表示パネル、 62:アシストモード操作スイッチ、 63:スピーカ、 64:ランプ、 65:電源スイッチ、 70:制御装置、 71:演算回路、 72:メモリ、 79:モータ駆動回路、 81:加速度センサを用いて演算した走行速度、 82:回転センサを用いて演算した走行速度、 83:推定速度
図1
図2
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図5
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図7
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図9