IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヴォックス・セラピューティクス・リミテッドの特許一覧

特許7171965細胞透過性ペプチド(CPP)を介したEV充填
<>
  • 特許-細胞透過性ペプチド(CPP)を介したEV充填 図1
  • 特許-細胞透過性ペプチド(CPP)を介したEV充填 図2
  • 特許-細胞透過性ペプチド(CPP)を介したEV充填 図3
  • 特許-細胞透過性ペプチド(CPP)を介したEV充填 図4
  • 特許-細胞透過性ペプチド(CPP)を介したEV充填 図5
  • 特許-細胞透過性ペプチド(CPP)を介したEV充填 図6
  • 特許-細胞透過性ペプチド(CPP)を介したEV充填 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】細胞透過性ペプチド(CPP)を介したEV充填
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20221108BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K9/127
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022124802
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2019500658の分割
【原出願日】2017-07-10
(65)【公開番号】P2022164688
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】1611988.5
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518259431
【氏名又は名称】エヴォックス・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オスカー・ヴィクランダー
(72)【発明者】
【氏名】ペル・ルンディン
(72)【発明者】
【氏名】ダヌ・グプタ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/168548(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/120150(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/033695(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキソソームに少なくとも1つの薬剤を充填するための方法であって、エキソソームの集団を少なくとも1つの薬剤及び少なくとも1つの細胞透過性ペプチド(CPP)に露出させることを含み、前記少なくとも1つの薬剤及び前記少なくとも1つのCPPが、非共有結合複合体の形態で存在する、方法。
【請求項2】
エレクトロポレーションステップ又は脂質ベースのトランスフェクション試薬の使用を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エキソソームに少なくとも1つの薬剤を充填するための方法であって、
i. エキソソームソース細胞の集団を前記少なくとも1つの薬剤及び少なくとも1つの細胞透過性ペプチド(CPP)に露出させるステップであって、前記少なくとも1つの薬剤及び前記少なくとも1つのCPPが、非共有結合複合体の形態で存在する、ステップ;並びに
ii. 前記エキソソームソース細胞によって産生されるエキソソームを採取するステップであって、前記エキソソームが、前記薬剤を含む、ステップ
を含む、方法。
【請求項4】
ステップ(i)を前記エキソソームソース細胞のエレクトロポレーションと組み合わせることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのCPPと前記少なくとも1つの薬剤との間の前記非共有結合複合体が、正又は負のゼータ電位を有するナノ粒子の形態で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのCPPと前記少なくとも1つの薬剤との間の前記非共有結合複合体が、正又は負のゼータ電位を有するナノ粒子の形態で存在する、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外小胞(EV)に薬剤を充填するための方法、および治療目的でのかかるEVの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞(EV)は、それらの内容物(主に、RNA、タンパク質、および脂質)を標的組織中のレシピエント細胞に提示することによって、正常な生理および病理において細胞間の連絡を調節する。様々な種類の薬剤を組み込むためのEVの修飾は、数多くの背景、例えば、生物学的製剤の細胞内送達のためのエキソソームの使用を開示するWO2013/084000、またはエキソソームを使用する外因性遺伝物質の送達を説明するWO2010/119256において研究されてきた。
【0003】
薬物送達ビヒクルとしてのEVの可用性は、例えば、siRNAなどの核酸ベースの薬物、細胞内成分を標的とする巨大タンパク質ベースの薬物、および例えば難溶性または猛毒性の薬剤の場合に疑う余地のないものである。一連の幅広い薬剤のためのEV媒介性薬剤送達も、例えば、EVの充填に有機低分子量化合物を充填するための典型的なアプローチを示すWO2011/097480によって、ある程度研究されている。WO2011/097480は極めて簡易な方法を説明しており、その方法では、例えば植物化学物質であるクルクミンおよびレスベラトロルを、薬物のEVへの拡散に頼る、精製されたEVおよび遊離薬物(例えば、クルクミン)を室温のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で共にインキュベートさせる単純な共インキュベーションステップを使用してEVに充填する。非常に簡便かつ簡潔ではあるが、単純な薬剤をEVに充填するためのこの従来のアプローチは、特に効率的ではなく、薬剤が著しく無駄となり、また制御が極めて困難である。また、この方法は、一部の薬剤が共インキュベーションを使用するだけでは大量にEVに充填されないため、一般的な適用性に欠けることが問題である。他のもの(例えば、Fuhrman et al,J.Control Rel.,2015)も、この場合は光活性剤であるポルフィリンの充填効率を増大させる方法としてサポニンなどの界面活性剤を使用するEVの透過処理を評価している。
【0004】
最近の特許出願(WO2015/120150)も、小分子薬および巨大生物薬剤の両方を網羅する腫瘍由来EVへの様々な種類の抗癌剤の充填に関する。しかしながら、当該技術分野においてよくあることであるが、どのようにエキソソームを充填するのかに関して利用可能な情報はほとんどなく、利用可能な方法がある場合でも、それらが薬剤を担持するEVの充填および実際の治療用途に有用であることは稀である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2013/084000
【文献】WO2010/119256
【文献】WO2011/097480
【文献】WO2015/120150
【非特許文献】
【0006】
【文献】Fuhrman et al,J.Control Rel.,2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、後の治療用途、予防用途、および/または診断用途の薬剤のEVへの充填に関連する上で指摘した問題を克服することが、本発明の目的である。更に、本発明は、当該技術分野における他の既存のニーズ、例えば、多量の薬剤をEVに充填することの実現、制御可能な充填の実現、および相当な治療可能性を有する薬剤が充填されたEVの提供を満たすことを狙いとする。更に、本発明は、当該技術分野に欠如している、様々な起源(低分子量有機化合物、RNA治療薬、ペプチド、およびタンパク質など)の薬剤をEVに充填するための一般に適用可能な戦略を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、細胞透過性ペプチド(CPP)をEVへの薬剤の担体として利用することによって、これらの目的および他の目的を達成する。一態様では、本発明は、EVの集団を少なくとも1つの薬剤および少なくとも1つのCPPに露出させるステップを含むEV充填のための方法に関する。薬剤およびCPPは、1つのCPPが少なくとも1つの薬剤を担持して、単一の抱合体へと共有的に抱合され得る。あるいは、CPPおよび薬剤はまた、非共有的相互作用の結果としてナノ粒子複合体を形成してもよく、この相互作用は、例えば、疎水性および/または静電および/またはファン・デル・ワールス相互作用であることが推測され得る。興味深いことに、CPP-薬剤抱合体は、個別の抱合体の形態で存在し得るが、非共有結合ナノ粒子複合体も形成し得る。薬剤という用語は、本明細書で使用される場合、上述のとおり、ペプチド、核酸ベースの薬剤、例えば、siRNAまたはmRNA、および有機薬剤を含む多種多様な異なる種類の分子を包含する。
【0009】
更なる態様では、本発明は、EVソース細胞の充填によってEVに薬剤を充填する方法に関する。かかる方法は、(a)EVソース細胞の集団を少なくとも1つの薬剤および少なくとも1つのCPPに露出させるステップと、(b)EVが当の薬剤(複数可)を含む、EVソース細胞によって産生されたEVを採取するステップとを含み得る。
【0010】
本発明による充填方法は、ある特定の事例では、EVに充填される薬物の量を増加させるために、エレクトロポレーションステップと有利に組み合わされ得る。
【0011】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つのCPPと抱合または複合体化された少なくとも1つの薬剤を含むEV、および中で薬剤がCPP抱合体および/またはCPPナノ粒子複合体から放出されたEVに関する。本発明の薬剤は、多種多様な薬物または診断薬カテゴリー、例えば、抗癌剤、例えば、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、または他のヌクレオシド類似体、例えば、シトシンアラビノシド、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、またはイマチニブもしくはセリシクリブなどのキナーゼ阻害剤、またはナプロキセン、アスピリン、もしくはセレコキシブなどのNSAID、ヘラシリン(heracillin)などの抗生物質、抗高血圧剤、例えば、エナラプリルなどのACE阻害剤、様々な標的遺伝子のサイレンシングのための低分子干渉RNA、タンパク質コード薬の送達を可能にするmRNAおよび修飾されたmRNA、スプライシングパターンを変化させるスプライススイッチングRNA、薬理活性またはエンドソーム逸脱活性を有するペプチド、タンパク質治療薬などから選択され得る。
【0012】
また別の態様では、本発明は、薬剤を、標的細胞、標的組織、標的器官、または任意の標的成分(体液、例えば、血流または脳脊髄液も含み得る)に送達するための方法に関する。かかる方法は、本発明のCPPを介した戦略を使用して、標的を薬剤が充填されたEVに露出させることを含み得る。
【0013】
更なる態様では、本発明は、薬剤の薬物動態または薬力学プロファイルを改変する方法も提供する。かかる方法は、問題の薬剤のインビボおよび潜在的には同様にインビトロの特性を調節するために、CPPを介して問題の薬剤をEVに充填することを伴う。
【0014】
加えて、更なる態様では、本発明は、本発明による薬剤を担持するEVを含む薬学的組成物、または実際的な言い方をすると本発明による薬剤を担持するEVの集団を含む組成物に関する。かかる組成物中のEV濃度は、多くの異なる方法、例えば、単位(多くの場合、体積)あたりまたは用量あたりのEVタンパク質の量、単位(多くの場合、体積、または体重の単位あたり)または用量あたりの粒子(即ち、EV)の数、単位あたりまたは用量あたりの薬剤の濃度などで表され得る。典型的には、かかる薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤を使用してインビボおよび同様にインビトロでの使用のために製剤化される。
【0015】
最後に、本発明は、例えば、炎症疾患、自己免疫疾患、癌、リソソーム蓄積症、希少疾患、代謝障害、または本発明によるEVを使用して治療され得る任意の好適な疾患もしくは障害の治療における、薬剤を担持するEVの医学的使用および用途に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】CPP-ドキスルビシン抱合体を充填した免疫細胞由来EVがMDA-MB-231細胞の増殖に与える効果を示す。遊離ドキソルビシン、ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体を充填したEV、および遊離ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体によって処置した際のMDA-MB-231-Rの細胞毒性を示すMTTアッセイ。細胞を異なる用量(1μΜ、5μΜ、10μΜ、15μΜ、および20μΜ)で処置し、処置の24時間後、細胞間のドキソルビシン媒介性細胞毒性をMTTアッセイによって決定した。
図2】CPP-ドキスルビシン抱合体を充填した免疫細胞由来EVのインビボの抗腫瘍作用を示す。L1210同系白血病保持マウスを、遊離ドキソルビシン、ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体を充填したEV、または遊離ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体で処置し、カプランマイヤー曲線を使用して生存率を分析した。
図3】CADY1-パクリタキセル複合体を充填したDC-EVのインビボの抗腫瘍作用を示す。L1210同系白血病保持マウスを、パクリタキセル-CADY1複合体を含むEV、パクリタキセル-CADY1複合体のみ、空EV、または10mg/kgのパクリタキセル用量の遊離パクリタキセルで処置し、カプランマイヤー曲線を使用して生存率を分析した。
図4】TNBS誘発性大腸炎マウスにおけるステアリル化TP10-アザチオプリン複合体を充填したMSC-EVの抗腫瘍作用を示す。アザチオプリン-ステアリル-TP10複合体を含むEV、アザチオプリン-ステアリル-TP10複合体のみ、空EV、または1.5mg/kgのアザチオプリン用量の遊離アザチオプリンを、尾静脈をとおして静脈内投与し、体重を以降7日間毎日記録した。データは基礎体重のパーセンテージとしてプロットした。
図5】NPC疾患患者由来の皮膚線維芽細胞におけるヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンPTAP-TAT複合体でカプセル化したEVのコレステロール低下作用を示す。ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンPTAP-TAT複合体でカプセル化したEV、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンPTAP-TAT複合体、および遊離ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンで処理した正常線維芽細胞およびNPC1線維芽細胞における総コレステロールの量。細胞を異なる用量(0.01、0.1、1、および10μΜ)で処理し、24時間後、フィリピン染色を使用して総コレステロール量を決定した。
図6】Evカプセル化Pip6a-PMO抱合体による処置後のスプライス補正を示す。24時間後の、異なる濃度(0.01、0.1、1、および10μΜ)での、705-Pip6a抱合体を含むEV、705-Pip6a抱合体のみ、空EV、および遊離705 SSOによる処置後の処置していない細胞と比べたHuh7 pLuc 705細胞におけるスプライス補正。グラフは、処置していない細胞に対して正規化した相対発光値を示す。
図7】EVカプセル化HTT siRNA-Pepfect 6複合体による処置後の遺伝子ノックダウンを示す。24時間後、異なる濃度(0.1、1、および10μΜ)での、HTT siRNA-Pepfect 6複合体を含むEV、HTT siRNA-Pepfect 6複合体のみ、空のEV、および遊離HTT siRNAによる処置後の処置していない細胞と比べたHuh7細胞におけるハンチントン遺伝子のmRNAレベル。グラフは、処置されていない細胞に対して正規化したハンチントンmRNAレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、とりわけ、薬剤の送達のためのEVの新規方法、組成物、および使用を説明する。より具体的には、本発明は、EVの充填、薬剤を充填したEV、かかるEVを利用するための様々な方法、EVを治療有効量で含む薬学的組成物、および本発明による薬剤を充填したEVの医学的使用に関する。
【0018】
簡便かつ明確にするために、本明細書で用いるある特定の用語を以下にまとめ、説明する。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0019】
本発明の特徴、態様、実施形態、または代替物がマーカッシュ群の観点から説明される場合、当業者は、本発明が、それによりマーカッシュ群の個々の構成要素または構成要素の部分群の観点からも説明されることを認識するであろう。当業者は、本発明が、それによりマーカッシュ群の個々の構成要素または構成要素の部分群の任意の組み合わせの観点からも説明されることを更に認識するであろう。加えて、本発明の態様および/または実施形態のうちの1つに関連して説明される実施形態および特徴は、本発明の全ての他の態様および/または実施形態において準用されることに留意されたい。例えば、EVのCPP媒介性充填のための方法に関連して説明される様々な薬剤は、薬剤を担持するEVを含む薬学的組成物の文脈においても開示され、適切であり、含まれることが理解される。更に、ある特定の態様に関連して説明されるある特定の実施形態、例えば、EVによるある特定の医学的適応症の治療それ自体に関する態様に関係して説明される、薬剤を充填したEVの投与経路は、同様に本発明の薬学的組成物に関するものなどの他の態様および/または実施形態に関連して必然的に適切であり得る。そのうえ、ありとあらゆる特徴(例えば、マーカッシュ群のありとあらゆる構成要素)は、ありとあらゆる他の特徴(例えば、任意の他のマーカッシュ群のありとあらゆる構成要素)と自由に組み合わせることができる。例えば、任意のEVタンパク質を任意の標的化部分と組み合わせてもよく、あるいは任意のEV細胞ソースを任意の薬剤と組み合わせてもよい。更に、本明細書の教示が、単数および/または別々の天然のナノ粒子様小胞としてEVに言及する場合、全てのかかる教示は、複数のEVおよびEVの集団に対して等しく適切であり、適用可能であることを理解されたい。一般的に言えば、本発明に従う薬剤、CPP、標的化部分、親細胞ソース、エキソソームタンパク質、ならびに全ての他の態様、実施形態、および代替物は、本発明の範囲および要旨から逸脱することなく、ありとあらゆる可能な組み合わせで自由に組み合わせられ得る。更に、本発明の任意のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドまたは任意のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド配列(それぞれ、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列)は、任意の所与の分子がそれと関連付けられる技術的効果を実行する能力を保持する限り、元のポリペプチド、ポリヌクレオチド、および配列から大きく逸脱してもよい。それらの生物学的特性が保持される限り、本用途に従うポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド配列は、できるだけ高い配列同一性(例えば、60%、70%、80%、または例えば90%以上)が好ましいものの、天然配列と比較して50%も(例えば、BLASTまたはClustalWを使用して計算して)逸脱してもよい。例えば、少なくとも1つの標的化ポリペプチドおよび少なくとも1つのEVタンパク質、または例えば少なくとも1つのCPPおよび少なくとも1つのペプチド形態での薬剤の組み合わせ(融合)は、対応するポリペプチドのある特定のセグメントが代置および/または修飾されていてもよいことを示唆し、これは、天然配列からの逸脱が、主要な特性(例えば、標的化特性、エキソソームの表面へのトラフィッキング、治療活性、効能など)が維持される限り多大であってもよいことを意味する。このため、同様の論拠が、かかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に必然的に適用される。
【0020】
「細胞外小胞」または「EV」または「エキソソーム」という用語は、本明細書では同義に使用され、任意の形態の細胞から得ることができる任意の種類の小胞、例えば、微小胞(例えば、細胞の細胞膜から落ちた任意の小胞)、エキソソーム(例えば、リソソーム内経路から誘導される任意の小胞)、アポトーシス小体(例えば、アポトーシス細胞から得ることができるもの)、微粒子(例えば血小板から誘導され得るもの)、エクトソーム(ectosome)(例えば、血清中の好中球および単球から誘導可能なもの)、プロスタトソーム(prostatosome)(例えば、前立腺癌細胞から得ることができる)、またはカルディオソーム(cardiosome)(例えば、心臓細胞から誘導することができる)に関することが理解される。細胞外小胞模倣体、細胞押し出し、膜押し出し、小胞押し出し、または他の技法によって得られる細胞および/または細胞膜系小胞などに関係することも理解される。本質的に、本発明は、目的の薬剤の送達または輸送ビヒクルとして作用することができる任意の種類の脂質ベース構造(小胞状のまたは任意の他の種類の好適な形態を有する)に関し得る。EVの医学的および科学的使用および適用を説明するとき、本発明は、通常、複数のEV、即ち、数千、数百万、数十億、または更には数兆ものEVを含み得るEVの集団に関することが当業者には明らかとなる。以下の実施例の節から分かるように、EVは、体積の単位あたり(例えば、mlあたり)10、10、1011、1015、1018、1025、1030のEV(多くの場合「粒子」と称される)などの濃度、またはより大きい、より小さい、もしくはその間の任意の他の数で存在し得る。同じように、例えば、ある特定の薬剤および多くの場合にある特定のCPPを含むEVに関し得る「集団」という用語は、かかる集団を構築する複数の実態を包含することが理解される。換言すると、個々のEVは、複数で存在する場合、EV集団を構築する。このため、必然的に、本発明は、当業者には明らかとなるように、薬剤を含む個々のEVと、薬剤を含むEVを含む集団との両方に関する。インビボで適用される場合のEVの投薬量は、必然的に、治療される疾患、投与経路、薬剤荷などに応じて大きく変わり得る。
【0021】
「薬剤」または「薬学的活性剤」または「治療剤」または「薬物」または「医薬品」または「医薬治療薬」は、本明細書では同義に使用され、疾患および/または障害の治療および/または診断に使用され得る任意の分子薬剤に関することが理解される。本発明による薬剤は、多種多様な薬理学的または薬学的活性剤を包含し、これらの活性剤には、(i)通常は化学合成によって合成される薬理活性を有する有機化合物、(ii)例えば、天然源から精製によって得られ得る、天然由来の化合物、(iii)様々な種類の核酸ベースの化合物、例えば、siRNA、スプライススイッチングRNA、CRISPRガイド鎖、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチド、mRNAなどのポリヌクレオチド、ならびに特に化学合成されるおよび/または化学修飾されたヌクレオチド、例えば、2’-O-Me、2’-O-アリル、2’-O-MOE、2’-F、2’-CE、2’-EA2’-FANA、LNA、CLNA、ENA、PNA、ホスホロチオエート、トリシクロ-DNAなどを含む核酸ベースの薬剤、(iii)例えばペプチド合成または組換えタンパク質産生によって得られる、任意の種類のペプチドおよびポリペプチド(即ち、タンパク質)、ならびに(iv)CPPと相互作用するように作製することができる本質的に任意の種類の薬理学的および/または薬学的活性剤が含まれる。本発明は、必然的に、当業者には明らかとなるように、本発明の要旨から逸脱することなく、他の薬剤にも適用可能である。
【0022】
「細胞透過性ペプチド」および「CPP」は、本明細書では同義に使用され、事実上あらゆる細胞型の内部にアクセスする能力を有する比較的短いペプチド(典型的には50個未満のアミノ酸であるが、本発明によるCPPはより長い場合もある)に関係することを理解されたい。CPPは、典型的には、極めて陽イオン性であり、アルギニンおよび/またはリジンアミノ酸に富む。多くの有効なCPPは、更に両親媒性であり、疎水性アミノ酸の伸長を有する。加えて、一部のCPPは、疎水性、結合特性、両親媒性などを調節するためにアミノ酸間に組み入れられた脂肪族スペーサーを有してもよい。本明細書で示されるように、CPPは、多種多様な共有的(抱合)および/または非共有的に結合した荷、例えば、タンパク質、オリゴヌクレオチド、有機化合物、および本発明の薬剤中のものを細胞および/またはEVに運び入れることができる秀でた特性を有する。本発明によるCPPには、トランスポータン、トランスポータン10、ペネトラチン、MTS、VP22、CADYペプチド、MAP、KALA、PpTG20、プロリンに富むペプチド、MPGペプチド、PepFectペプチド、Pep-1、L-オリゴマー、カルシトニン-ペプチド、アルギニンに富むCPP、例えば、ポリ-Arg、Tat、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に従うCPPは、抗菌性ペプチド、膜作用性ペプチド、およびEVの内在化または相互作用を促進し得るEV膜上に既に存在する受容体に対するペプチドリガンドなどの類似したクラスのペプチドも含む。更に、様々な種類の化学的修飾のCPPへの導入が大きな成功を収めているため、本発明のCPPは、例えば、脂質尾部、コレステロールおよびコレステロール類似体、キノロンおよび特にクロロキンおよびそのフッ素化類似体、ポリヒスチジン、ならびに他の種類のC末端および/またはN末端および/または直交修飾の導入により修飾され得る。これらの種類の化学的修飾により、例えば、薬剤の複合体形成、EVへの内在化、またはEV表面との相互作用、それに加えてサイズおよびゼータ電位の調節が改善され得る。CPP自体に行われる化学的修飾に加えて、本発明によるCPPは、合成および/または人工のペプチド誘導体、例えば、非天然アミノ酸を含有するCPPを含むいわゆるペプチドイド、インベルソおよび/またはレトロインベルソ類似体、L-アミノ酸からD-アミノ酸への修飾、線状または分岐状脂肪族鎖、タンパク質翻訳後修飾を模倣する残基を含有するペプチド、ならびに当業者に既知である他の種類の望ましい修飾を含んでもよい。更に、CPP-薬剤抱合体の背景において明らかであるように、CPPは、薬剤荷との化学的抱合または更には複合体形成を可能にする部分を含むように官能化されてもよい。
【0023】
「EVタンパク質」、「エキソソームタンパク質」、「エキソソームソーティングドメイン」、「EVソーティングドメイン」、「EVソーティングタンパク質」、「エキソソームタンパク質」、「エキソソームポリペプチド」、「EVポリペプチド」などの用語は、本明細書では同義に使用され、ポリペプチド構築物(典型的には、EVタンパク質に加えて、少なくとも1つの目的のタンパク質を含む)を好適な小胞構造、即ち、好適なEVに輸送するために利用することができるいずれのポリペプチドにも関係することを理解されたい。より具体的には、該用語は、ポリペプチド構築物をエキソソームなどの小胞構造に輸送、トラフィッキング、またはシャトリングすることが可能ないずれのポリペプチドも含むものとして理解されるべきである。かかるエキソソームソーティングドメインの例は、例えば、CD9、CD53、CD63、CD81、CD54、CD50、FLOT1、FLOT2、CD49d、CD71、CD133、CD138、CD235a、ALIX、シンテニン-1、シンテニン-2、Lamp2b、TSPAN8、TSPAN14、CD37、CD82、CD151、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、Fc受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン、MHC-IまたはMHC-II成分、CD2、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD13、CD18、CD19、CD30、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD274、CD362、COL6A1、AGRN、EGFR、GAPDH、GLUR2、GLUR3、HLA-DM、HSPG2、L1CAM、LAMB1、LAMC1、LFA-1、LGALS3BP、Mac-1アルファ、Mac-1ベータ、MFGE8、SLIT2、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、VTI1A、VTI1B、およびそれらの任意の組み合わせであるが、ポリペプチド構築物をEVに輸送することができる多数の他のポリペプチドが、本発明の範囲内に含まれる。本発明によるEVタンパク質は、典型的にはヒト起源である、様々な公に利用可能なデータベース、例えば、Uniprot、RCSBなどにおいて見い出すことができる。本EVタンパク質は、様々な他のタンパク質および/またはタンパク質ドメインに融合させることで、例えば、表面提示の増強、親和性の増大、または特定の種類の結合タンパク質との非共有的な相互作用の実現をもたらし得る。
【0024】
「ソース細胞」もしくは「EVソース細胞」もしくは「親細胞」もしくは「細胞ソース」もしくは「EV産生細胞」という用語、または任意の他の類似した用語は、好適な条件下で、例えば、懸濁培養もしくは付着培養、または任意の他の種類の培養系において、EVを産生することができる任意の種類の細胞に関係することが理解される。本発明によるソース細胞は、インビボでエキソソームを産生する細胞も含み得る。本発明によるソース細胞は、多種多様な細胞および細胞株、例えば、間葉系幹細胞もしくは間質細胞または線維芽細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、ワルトン膠様質、周産期組織、歯芽、臍帯血、皮膚組織などから得ることができる)、羊膜細胞、およびより具体的には任意選択で様々な早期マーカーを発現する羊膜上皮細胞、骨髄抑制細胞、M2極性マクロファージ、脂肪細胞、内皮細胞、線維芽細胞などから選択され得る。特に目的とされる細胞株には、ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)、ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK)細胞、微小血管またはリンパ内皮細胞などの内皮細胞株、軟骨細胞、異なる起源のMSC、気道または肺胞上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞などが挙げられる。また、免疫細胞、例えば、B細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞(DC)も、本発明の範囲内であり、EVを産生することができる任意の種類の細胞が同様に本明細書に包含される。
【0025】
第1の態様では、本発明は、EVに薬剤を充填するための方法に関し、本方法は、EVの集団を少なくとも1つの薬剤および少なくとも1つのCPPに露出させることを含む。通常は陽イオン性アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基の混合を含むCPPは、薬剤荷に共有結合により抱合または共有結合によらずに複合体化される。CPPと薬剤との間の非共有結合複合体は、通常、ナノ粒子研究のための従来の技法、例えば、動的光散乱およびナノ粒子追跡分析によって試験し特徴付けることができるナノ粒子様構造を形成する。薬剤とCPPとの間の抱合体も、例えば、超分子構造への凝集につながる個々の抱合体間の静電および/または疎水性相互作用に起因して、ナノ粒子を形成することがある。複合体が、非共有結合または抱合した薬剤およびCPPを含むかどうかにかかわらず、かかる複合体は、サイズおよびゼータ電位など、ある特定のナノ粒子様構造を示し得る。本発明の複合体のゼータ電位は、問題のCPPおよび薬剤に応じて大きく異なり得るが、ゼータ電子は、コロイド安定性を示すために、好ましくは+/-10mV、より好ましくは+/-20mV、または更により好ましくは+/-30mV、または更にそれ以上/以下の絶対値で、正または負のいずれかであることが有利となる。かかるナノ粒子複合体のサイズも、大きく異なり得るが、EVへの効率的な組込みを実現するためには、複合体のサイズがEVのサイズより小さいことが好ましい。一例として、120nmのサイズのEVには、120nmをはるかに下回るサイズ、例えば10nmのCPP含有ナノ粒子の形態にある薬剤が充填される。
【0026】
更なる態様では、本発明は、EVソース細胞の充填によってEVに薬剤を充填する方法に関する。このアプローチは、EVの産生/分泌と関連付けられる細胞内コンパートメント、例えば、リソソーム内経路および細胞膜に内在化することが知られているCPPまたはウイルス由来ペプチドを使用する場合に特に有利である。かかる方法は、(a)EVソース細胞の集団を少なくとも1つの薬剤および少なくとも1つのCPPに露出させるステップと、(b)EVソース細胞によって産生された、問題の薬剤(複数可)を含むEVを採取するステップとを含み得る。
【0027】
上述のように、本発明のある特定の態様では、少なくとも1つの薬剤および少なくとも1つのCPPは、形態、または共有結合抱合体、非共有結合複合体、またはそれらの組み合わせで存在し得る。共有結合抱合/連結に利用可能な戦略は複数あり、これらは、例えば、CPPと薬剤との間における、例えば、エステル結合、アミン結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用、マレイミド-NHS反応から得られる連結、EDC-NHS反応から得られる連結、ステープル連結(例えば、全炭化水素ステープル)、および様々な他の抱合技法を含む群から選択される任意の種類の化学結合の形成である。
【0028】
また別の実施形態では、CPP-薬剤複合体および/または抱合体の充填は、リポソームおよび/または脂質ナノ粒子などのトランスフェクション試薬の使用によって増強され得る。CPPとトランスフェクション試薬とを組み合わせることで、ある特定の場合には、その方法を利用すると、EVおよびEVソース細胞への薬剤充填を改善することができる。更に、エレクトロポレーションの使用によっても、EVへの充填を増大させることができ、エレクトロポレーションをトランスフェクション試薬の使用と併用することもできる。エレクトロポレーションは、20V/cm~1000V/cm、多くの場合、20V/cm~100V/cmの範囲の電圧を使用して行われ得る。エレクトロポレーションステップの静電容量は、通常、25μF~250μF、例えば、25μF~125μFであるが、これらのパラメータは、EVソース細胞、任意のEVの遺伝子または化学修飾、CPPの性質、薬剤の性質などといった様々な因子に応じて大幅に異なり得る。
【0029】
また別の態様では、本発明は、少なくとも1つのCPPに抱合および/または複合体化された少なくとも1つの薬剤を含むEVに関係する。更に、本発明はまた、少なくとも1つの薬剤がEVの内部で少なくとも1つのCPP抱合体および/またはCPP複合体から放出されるEVに関する。「EVの内部」および「EVの中」という用語は、薬剤が何らかの方法でEVと相互作用し、EVがいずれかの方法で薬剤(複数可)自体を担持している限り、EVの膜、または更にはEVの外表面上を含む、EV全体を含むように理解される。
【0030】
上述のように、本発明による薬剤は、本質的に、薬学的および/または薬理学的および/または診断学的に関連性のある薬剤全体から得ることができ、これらは、例えば、抗癌剤、細胞増殖抑制剤、チロシンキナーゼ阻害剤、スタチン、NSAID、抗生物質、抗真菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗線維化剤、降圧剤、アロマターゼまたはエステラーゼ阻害剤、抗コリン剤、SSRI、BKT阻害剤、PPAR作動薬、HER阻害剤、AKT阻害剤、BCR-ABL阻害剤、シグナル伝達阻害剤、血管新生阻害剤、シンターゼ阻害剤、ALK阻害剤、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、PI3K阻害剤、ネプリライシン阻害剤、ベータ2作動薬、CRTH2拮抗薬、FXR作動薬、BACE阻害剤、スフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーター、MAPK阻害剤、ヘッジホッグシグナル伝達阻害剤、MDM2拮抗薬、LSD1阻害剤、ラクタマーゼ阻害剤、TLR作動薬、TLR拮抗薬、IDO阻害剤、ERK阻害剤、Chk1阻害剤、スプライシング調節剤、DNAまたはRNAインターカレーターなどである。本発明による薬剤の他の非限定例には、例えば、エベロリムス、トラベクテジン、アブラキサン、パゾパニブ、エンザスタウリン、バンデタニブ、FLT-3阻害剤、VEGFR阻害剤、EGFR TK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PIK-1調節剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、c-MET阻害剤、PARP阻害剤、Cdk阻害剤、EGFR TK阻害剤、IGFR-TK阻害剤、抗HGF抗体、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、JAK/STAT阻害剤、チェックポイント-1または2阻害剤、接着斑キナーゼ阻害剤、Mapキナーゼキナーゼ(mek)阻害剤、ペメトレキセド、エルロチニブ、ダサタニブ(dasatanib)、ニロチニブ、デカタニブ(decatanib)、パニツムマブ、アムルビシン、オレゴボマブ、ノラトレキシド、バタブリン、オファツムマブ、ザノリムマブ、エドテカリン、テトランドリン、ルビテカン、テスミリフェン、オブリメルセン、チシリムマブ、イピリムマブ、ゴシポール、シレンギチド、ギマテカン、ルカントン、ノイラジアブ(neuradiab)、ビテスパン(vitespan)、タランパネル、アトラセンタン、ロミデプシン、スニチニブ、5-フルオロウラシル、ボリノスタット、エトポシド、ゲムシタビン、ドキソルビシン、5’-デオキシ-5-フルオロウリジン、ビンクリスチン、テモゾロミド、セリシクリブ、カペシタビン、カンプトテシン、PEG標識イリノテカン、タモキシフェン、トレミフェンクエン酸塩、アナストラゾール、エキセメスタン、レトロゾール、バタラニブ、ゴセレリン酢酸塩、リュープロリド酢酸塩、トリプトレリンパモ酸塩、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸メゲストロール、エルロチニブ、ラパタニブ、カネルチニブ、ロナファルニブ、チピファルニブ、アミホスチン、ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド、バルプロ酸、トリコスタチン、ソラフェニブ、アムサクリン、アナグレリド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、エピルビシン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、ミトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレチノイン、ビンデシン、13-cis-レチノイン酸、フェニルアラニンマスタード、ウラシルマスタード、エストラムスチン、アルトレタミン、フロクスウリジン、5-デオキシウリジン、シトシンアラビノシド、6-メカプトプリン(mecaptopurine)、デオキシコホルマイシン、カルシトリオール、バルルビシン、ミトラマイシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、ラゾキシン、マリマスタット、COL-3、ネオバスタット、スクアラミン、エンドスタチン、ビタキシン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、スピロノラクトン、フィナステリド、シメチジン、トラスツズマブ、デニロイキンジフチトクス、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、クレモホール非含有パクリタキセル、ドセタキセル、エピチロン(epithilone)B、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ピペンドキシフェン、アルゾキシフェン、フルベストラント、アコルビフェン、ラソフォキシフェン、イドキシフェン、トポテカン、ラパマイシン、テムシロリムス、ゾレンドロネート(zolendronate)、プレドニゾン、レナリドマイド、ゲムツズマブ、ヒドロコルチゾン、デクスラゾキサン、アレムツズマブ、全トランスレチノイン酸、ケトコナゾール、、メガストロール、免疫グロブリン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、イブリツモマブチウキセタン、アンドロゲン、デシタビン、ヘキサメチルメラミン、ベキサロテン、トシツモマブ、三酸化ヒ素、コルチゾン、エチドロン酸、ミトタン、シクロスポリン、ダウノルビシンリポソーム、エルウィニア-アスパラギナーゼ、ストロンチウム89、カソピタント、ネツピタント、NK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン、アプレピタント、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メトクロプラミド、ロラゼパム、アルプラゾラム、ハロペリドール、ドロペリドール、ドロナビノール、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プロクロルペラジン、グラニセトロン、オンダンセトロン、ドラセロトン、トロピセトロン、ペグフィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンアルファ、およびダルベポエチンアルファ、エファビリンツ(efavirinz)などが挙げられる。更に、上述のように、本発明による薬剤は、例えば、天然源からの精製によって得られ得る天然由来の化合物、任意の種類の核酸ベースの化合物、例えば、siRNA、スプライススイッチングRNA、CRISPRガイド鎖、低分子ヘアピン型RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNAなどのオリゴヌクレオチド、ならびに特に化学合成される核酸ベースの化合物、および/または化学修飾されたヌクレオチド、例えば、2’-O-Me、2’-O-アリル、2’-O-MOE、2’-F、2’-CE、2’-EA2’-FANA、LNA、CLNA、ENA、PNA、ホスホロチオエート、トリシクロ-DNAなどを含む、核酸ベースの化合物も含む。更に、ペプチドおよびポリペプチド、ならびにペプチド合成によって得ることができるペプチドおよび/またはタンパク質、それだけでなく組換えタンパク質産生によって得ることができるペプチドおよびタンパク質も、本発明による薬剤の定義の範囲に含まれる。上述のように、本発明は、必然的に、当業者には明らかであるように、本発明の要旨から逸脱することなく、他の薬剤にも適用可能である。
【0031】
更なる実施形態では、薬剤をEVおよび/またはEVソース細胞に充填するためのCPPは、多種多様なCPPから選択され得、これらのCPPには、トランスポータン、トランスポータン10、ペネトラチン、CADYペプチド、例えば、CADY-1、MTS、VP22、MAP、KALA、PpTG20、プロリンに富むペプチド、MPGペプチド、PepFectペプチド、Pep-1、L-オリゴマー、カルシトニン-ペプチド、アルギニンに富むCPP、例えば、ポリ-Arg、Tat、(1-9)-(38-42)Crot、(1-9)-Ahx-(38-42)Crot、(42-38)-(9-1)Crot、(KFF)3K、(KH)9-Bp100、(RW)4、435Bペプチド、439Aペプチド、7Arg、A、A1、A10、A11、A12、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、ABL-1、Ac-ペネトラチン-基質、Ac-pep5-cpp、Ac-TAT-基質、AcD11、AcD4、AcD6、AcD7、acFTAT、ACPP、AgNP-TAT、ALPHAウイルスヌクレオキャプシド(311-320)、アルファウイルスP130(227-234)、APP521、ARF(1-22)、ARF(1-37)、ARF(19-31)、ARF(2-14)、Arg5-ELPBC、Arg8-ELPBC、Arg9、TatのArg欠失突然変異(48-60)、Asn-Oct-6、B、b-WT1-pTj、B1、B1-Leu、B1-Lys、B5、B6、B8、B9、BagP、betaZipTF、BF2d、Bip1、Bip10、Bip11、Bip12、Bip13、Bip14、Bip15、Bip16、Bip17、Bip18、Bip19、Bip2、Bip3、Bip4、Bip5、Bip6、Bip7、Bip8、Bip9、二分ヌクレオプラスミンNLS(155-170)、BMVGAG、BMVGag(7-25)、ウシPrp(1-30)、BP326、BP328、BP330、Buforin-II、C、c-Myc-R11、C.eSDC3、C1、C1-pep5-cpp、C105Y、C105Y誘導体、C11、C16NTD、C2、C2-pep5-cpp、C24-LMWP、C3、C4、C4-pep5-cpp、C45D18、C5、C5-pep5-cpp、C6、C6-pep5-cpp、C7-pep5-cpp、CA3、CA4、CA5、CA6、CA6L、CAD-2(des-アセチル、Lys19-CADY)、CADY-1、CADY2、cAMP依存性TF、カンプチド(Camptide)、CAR、CCMVGAG、CendRP、CF-BP16、CF-ペネトラチン-基質、CF-sC18、CF-TAT-基質、CF-Tat.48-60、CH2R4H2C、CL22、CPPecp、CPPK、CPPL、CPPP-2、cRGD、CRGDK、Crot(27-39)、クロタミン、CS-Lin-Pen、CSK、CTP、CTP50、CTP501、CTP502、CTP503、CTP504、CTP505、CTP506、CTP507、CTP508、CTP509、CTP510、CTP511、CTP512、CTP513、CTP514x、環式[W(RW)4]、サイクリンLania-6a、CyLoP-1、Cys(BSH)-Arg11-NH2、Cys(BSH)-Lys[Cys(BSH)-]Arg11-NH2、Cys(BSH)-R11、Cys(BSH)-TAT、Cyt4-13、Cyt5-13、Cyt79-88、Cyt79-92、Cytc-ss-MAP、Cytc-ss-R8、Cytc(5-13)、CytC71-101、CytC86-101、d-NTD、D-TAT、D1、D10、D11、D12、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D9、KLA1の誘導体、デルマセプチンS4、(1-9)-(38-42)CrotのD形態、dfTAT、DNA-IL-PEI、Dox-pVEC-gHo(Dox-gHoPe2)、DOX-T7-TAT-LIP、DOX-TAT-LIP、DPV10、DPV10/6、DPV1047、DPV1048、DPV15、DPV15b、DPV3、DPV3/10、DPV6、DPV7、DPV7b、DS4.3、DSPE-PEG-2K-TAT、DSPE-PEG-CPP(CPP-Lp)、EB-1、EB1、EB1-Cys、ECP(32-38)、ECP(32-39)、ECP(32-40)、ECP(32-41)、ECP(32-41)R3Q、ECP(32-41)W4R、ECP(33-40)、ECP(33-41)、ECP(34-41)、EDN(32-41)、EF、エングレイルド(454-513)、Erns1、Erns10、Erns11、Erns2、Erns3、Erns4、Erns5、Erns6、Erns7、Erns8、Erns9、F(SG)4Pen、F(SG)4R8、F(SG)4TP10、F10、F3、F3ペプチド、F4、F4R8-PAD、F7、F8、FabRev1-Tat、fGeT、FHV-TA(39-49)、FHV(40-49)、FHVコート(35-49)、FHVガンマペプチド、FHVペプチド、Foxp3-11R、FP-lipo、fTAT、G(SG)4Pen、G(SG)4R8、G(SG)4TP10、G3R6TAT、G53-4、G55-9、GALA、ガラニン、GC/R8-Lip、GCN-4、Gd3+-DOTA-CAT、GKKペプチド、Glu、Glu-Ala、Glu-Lys、Glu-Oct-6、GV1001、H16R8、H8R15、HATF3、HB-EGF、hBCPP、hClock-(35-47)、HEI、HEN1/NSLC1、HEN2/NSLC2、HEO、ヘルペスウイルス8k8タンパク質(124-135)、HipC、HIV-1Rev(34-50)、HIV-1Tat(48-60)、HIV-1TATペプチド-クリスタリン、HIV-TAT、HIV-TAT(47-57)、hLF(38-59)ペプチド、hLF+4R、hLFK7、hLFlin+4R、hLFM9A、hLFP15A、hLFペプチド、hLFQ6A、hLFR13A、hLFR13A/P15R、hLFR7、hLFR7A、hLFR7A/V12R、hLFV12R、hLFW5A、hLFWT、HME-1、HN-1、HNF3、hPER1-PTD、hPER1-PTD(830-846)NLS、hPER3NLS、Hph-1、HR9、HTLV-IIRex(4-16)、ヒトcFos(139-164)、ヒトcJun(252-279)、ヒトPrp(1-28)、ヒトU2AF(142-153)、I、I-TYR-L-Mca、IA0(二環式)(一体型アルギニンペプチド)、IA2、IA4a、IA4b、IA52H1W、IA6a、IA6b、IA6c、IA6d、IA8a、IA8b、IA8bL(線形変異体)、II、III、IL-13p、iNGR、Inv1、Inv10、Inv11、Inv2、Inv3、Inv3.10、Inv3.3、Inv3.4、Inv3.5、Inv3.6、Inv3.7、Inv3.8、Inv3.9、Inv4、Inv5、Inv6、Inv7、Inv8、Inv9、IP-1、IPL、iRGD、iRGD-CDD、IRQ、IV、IX、JF06、JST-1、K8-lip、K9、KAFAK、KALA、Lyp-1、Lys9、M1、M2、M3、M4、M5、M511、M591、M593、M6、M630、M867、M918、M918(C-S)、M918(R-K)、m9R、MAP、Melittin、Met-Arg、MG2A、MG2d、Mgpe-10、Mgpe-3、Mgpe-4、Mgpe-9、MK2i、MMD45、MMD47、MMD49、マウスPrp(1-28)、MP、Mペプチド14F-L、Mペプチド8F-L、MPG、MPG-NLS、MPG変異体、MPGNLS、MPS、MPS-Gアルファi2、MPS-Gアルファi3、MTat2-Nat、MTpl-1、MTpl-2、MTpl-3、MTS、MTS-(5-FAM)-H3R8、変異型tat-NBD、N-E5L-Sc18、n-NTD、N-pep5-cpp、X-PepのN末端、N2-pep5-cpp、N3-pep5-cpp、NAP、NF-kB、NF1、NFL-TBS.40-63、NGR、nrdfTAT、NTD、ヌクレオプラスミンX、NYAD-36、NYAD-41、NYAD-66、NYAD-67、P(アルファ)、P(ベータ)、P1、P16、P2、p21-ELP1-Bac、P22N、p28、P3、P4、P42-TAT、P5、p53-R11、p53-R3、p53-R7、P6、P7、P7-4、P7-5、P7-6、P7-7、P8、P9R、PA1、PA2、PA3、PA4、PA5、PA8、PACAP、PAF26、PAF95、PAF96、pAntp、pAntp(43-48)、pAntp(43-50)、pAntp(43-51)、pAntp(43-52)、pAntp(43-53)、pAntp(43-54)、pAntp(43-55)、pAntp(43-56)、pAntp(43-57)、pAntp(43-58)、pAntp(44-58)、pAntp(45-58)、pAntp(46-58)、pAntp(47-58)、pAntp(48-58)、pAntp(49-58)、pAntp(50-58)、pAntp(51-58)、pAntp(52-58)、pAntp(53-58)、pAntpHD、pAntpHD(3Pro)、pAntpHD(43-58)、pAntpHD(58-43)、pAntpHD(Pro50)、pAntpHD40P2、pAntpHD50A、pAntp変異体、PasR8-p27kip1C、PasR8-PAD、PC-CC9/miRNA、PD1、PD2、PDX-1-PTD、PE1、PE2、Pen、Pen-C-Cy5、Pen-Cys、Pen2W2F、PenArg、PenArg-Cys、PenetraMax、ペネトラチン、PEP-1、PEP-2、Pep-3、Pep1、Pep2、Pep3、Pep3(変異体)、pep5-cpp、pepM、pepR、ペプチド1、ペプチド1-C3G、ペプチド10、ペプチド11、ペプチド12、ペプチド13、ペプチド14、ペプチド15、ペプチド16、ペプチド17、ペプチド18、ペプチド19、ペプチド1C-GNS、ペプチド1N-GNS、ペプチド2、ペプチド20、ペプチド21、ペプチド22、ペプチド23、ペプチド24、ペプチド25、ペプチド26、ペプチド27、ペプチド28、ペプチド29、ペプチド2C-GNS、ペプチド2N-GNS、ペプチド3、ペプチド30、ペプチド31、ペプチド32、ペプチド33、ペプチド34、ペプチド35、ペプチド36、ペプチド37、ペプチド38、ペプチド39、ペプチド4、ペプチド40、ペプチド41、ペプチド42、ペプチド43、ペプチド44、ペプチド45、ペプチド46、ペプチド47、ペプチド48、ペプチド49、ペプチド5、ペプチド50、ペプチド51、ペプチド52、ペプチド53、ペプチド54、ペプチド55、ペプチド56、ペプチド57、ペプチド58、ペプチド59、ペプチド6、ペプチド60、ペプチド61、ペプチド62、ペプチド63、ペプチド64、ペプチド65、ペプチド66、ペプチド7、ペプチド8、ペプチド9、PF20、PF21、PF22、PF28、PF3、Phe-Oct-6、PHI21N(12-29)、pISL、PL、PNIPAM-FL-TATペプチド、POD、ポリ-アルギニン、ポリグアニジンコンパレーター1、PolyP1、PolyP2、PolyP3(SAP)、PolyP4、PolyP5、PolyP6、PolyP7、PolyP8、PolyP9、PolyR、PolyR-C-Cy5、ppTG、ppTG1、ppTG20、PR9、PreS2(41-52)、PreS23S変異体、TatのPro欠失変異体(48-60)、プロタミン、pTat、PTX-C-TAT-LP、PTX-N-TAT-LP、PTX-TAT-LP
、PV-S4(13)、pVEC、pVEC変異体、PV逆転-S4(13)、q-NTD、R10、R11、R11-PKI、R12、R15、R16、R2、R4、R5、R5H3、R6、R6-Pen(W-L)、R6H3、R6L3、R6W3、R7、R7-KLA、R7-SRC1(1222-1245)、R7-SRC1LXXLL、R7H3、R7W、R8、R8-GALA-リポソーム、R8-GALA-リポソーム-IgG、R8-lip、R8-lipo、R8-リポソーム、R8-p27kip1C、R8-PAD、R8-RGD、R8H3、R9、R9-PCP、R9-TAT、R9H3、RA、RALA、RALAペプチド、Rath-FITC、Res1、Res2、Res3、Res4、Res5、Res6、Res7、Retro-pVEC、Retro-Tat(57-49)、Rev(34-50)、RevARM、RF、RFFF9、RFFW9、RFWF9、RFWW9、RGD、RGI、RGO、Rho-ビオチニル-TP10、RIPL、RIPLペプチド、RL-9、rLF、RLW、RR-S4(13)、RSG1.2、切断されたRSG1.2、RSV-A1、RSV-A10、RSV-A11、RSV-A12、RSV-A13、RSV-A2、RSV-A3、RSV-A4、RSV-A5、RSV-A6、RSV-A7、RSV-A8、RSV-A9、RSV-B1、RSV-B2、RSV-B3、RTAT-ELPBC、rV1aR(102-113a)、RV24、RVG-9LR、RW-9、RW16、RW9、RWFF9、RWFW9、RWMIX、RWR、RWWF9、S-TAT、S4(13)、S4(13)-PV、S41、S6KR、S6R、S9R、S9RH、Sc18、SFTI-1、SFTI-M1、SFTI-M2、SFTI-M3、SFTI-M4、SFTI-M5、SG3、sgRNA-CPP、SKP、SN50、SR9、SRAMC105Y、ST1-104、ST2-104、ST9-104、ステアリル-NAP、ステアリル-NS、STR-H12R8、STR-H16R8、STR-H20R8、STR-H8R15、STR-H8R8、STR-R8、SV40、スイートアロータンパク質(SweetArrowProtein)(SAP)(E)、SynB1、Synb1-ELP、SynB1-ELP-H1、Synb1-ELP-PKI、Synb1-ELP-TRTK、SynB3、SynB5、T7-LP、T7/TAT-LP-PTX、TAM-MP、TAM-rMP、TAMARA-ペプチド1、TAMARA-ペプチド2、TAMRA-IP-1、TAT、TAT-BID、Tat-C-Cy5、Tat-CG、Tat-Cys、TAT-システインペプチド、TAT-ELPBC、TAT-HA2、TAT-LP-PTX、TAT-NBD、Tat-PCP、Tat-PKI、Tat.48-60、Tat(37-53)、Tat(37-60)、Tat(43-60)、TAT(47-57)、Tat(48-57)、Tat(48-59)、Tat(48-60)、Tat(49-55)、Tat(49-56)、Tat(49-57)、Tat(50-57)、Tat(51-57)、Tat(TG)、Tat2-Nat、TatARM、TatLK15、TatP59W、TatsMTS(TMG)、TP、TP-10、TP-biot1、TP10、TP10-biot1、TP10-SRC1(1222-1245)、TP10-SRC1LXXLL、TP11、TP12、TP13、TP14、TP15、TP16、TP2、TP4、TP5、TP6、TP7、TP8、TP9、Tpl、Tyr-Oct-6、Cyc-(L、D)-R6、Cyc-(L、D)-R7、Cyc-(L、D)-R8、Cyc-R3-R4、Cyc-R4、Cyc-R4-R3、Cyc-R5-R2、Cyc-R6、Cyc-R6-R1、Cyc-R7、Cyc-R8、Cyc-R9、D-ペネトラチン、D-R5、D-R6、D-R7、D-R8、d-R8-C6-NP、d-R8-INS-NP、D-R9、D-SFTI-1、D-SynB1、D-SynB3、D-Tat(49-57)、D-Tat(57-49)、dF4R8-p53C’、C105YのD形態、F3のD形態、KLAのD形態、pAntpHDのD形態(43-58)、pVECのD形態、スウェットアロータンパク質(SweatArrowProtein)(SAP)のD形態、ミトパラン(Mitoparan)(MitP)、MMD68、Pepfect1、Pepfect14、Pepfect2、Pepfect3、Pepfect4、Pepfect5、Pepfect6、ペプチド599、ペプチドI、ペプチドII、ペプチドIII、ペプチドIV、ペプチドV、PF14、PF15、PF23、PF24、PF25、PF26、PF27、PF6、Pip6a、PN285、ポリグアニジンコンパレーター2、プローブ1、プローブ2、プローブ3、pVEC変異体、r12、r2(rR)3、R6、R7、R8、R8-RGD-lipo、R9、R9-GO-203、r9k、rR7、RVG-9DR、SFTI-M6、SFTI-M7、ステアリル-TP10、TAM-iMitP、TAM-iMP、TAM-MitP、TAM-riMitP、TAM-riMP、TAM-rMitP、Tat-DYQQD、Tat-ENAEYLR、Tat-NYQQN、Tat-OH、Tat-QNAQYLR、Tat(49-57)、Tat(57-49)、TP-biot13、TP10、TP102GD、TP102GL、TP104LD、TP104LL、TV-Xlla、ならびにXentryペプチド、またはそれらの任意の修飾されたおよび/もしくは合成のペプチドもしくはペプチド誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の効用のCPPの化学修飾は、脂肪族および脂肪酸修飾、例えば、例えばステアリン酸の形態にある脂質尾部の共有結合、または任意の他の種類の脂質修飾、例えば、コレステロール部分の付加である。EV充填の観点からの複合体形成、内在化、および全体的な効能のための特定の関連性の脂質修飾には、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、およびベヘン酸、またはそれらの任意の誘導体、特にそれらの不飽和脂肪酸誘導体から選択される10~30個の炭素を含む脂肪酸が含まれる。CPPの化学修飾は、ペプチドのN末端、ペプチドのC末端、またはペプチドに沿った直交するあらゆる場所に共有結合によって連結する1つ以上の部分を更に含む。これらの1つ以上の部分は、多様な化学基、例えば、アセチル基、ステアリル基、コレステリル、クロロキンまたはその修飾形などのキノリン、ポリエチレングリコール、核内移行シグナル、核外移行シグナル、抗体またはその抗体断片、ペプチド、多糖、標的化分子、システアミド基、システイン、チオール、アミド、ニトリロ三酢酸、カルボキシル基、直鎖または分岐鎖アルキル基、1級または2級アミン、オシディック(osidic)誘導体、脂質、リン脂質、脂肪酸、コレステロール、ポリエチレングリコールなどから選択され得る。
【0032】
また別の実施形態では、本発明によるEVは、EVの表面に提示された少なくとも1つの標的化部位を含み、目的の組織、器官、または細胞型を標的とすることによって、その治療可能性をなお更に増強し得る。標的化部分は、通常、例えばファージディスプレイまたは任意の他の種類のスクリーニング方法によって特定され得る、アミノ酸の配列を含む。標的化部分は、典型的に、EVソース細胞の遺伝子操作によってEV表面に提示され、この遺伝子操作では、ソース細胞をトランスフェクトして、標的化部分およびエキソソームタンパク質を含む融合タンパク質を含むEVを産生させる。代替的な標的化アプローチには、抗体および/または抗体誘導体をEVの表面に結合させて、小胞を、目的の組織、器官、および/または細胞型へと導くことが含まれる。
【0033】
更なる態様では、本発明は、薬剤を標的細胞に送達する方法に関する。かかる送達方法は、標的細胞、または標的組織もしくは標的器官(流体および液体、例えば、血液、間質液、脳脊髄液などを含み得る)を、本発明によるEVに露出させることを含み得る。上述のように、EVは、標的化部分がその表面上に発現されてもよく、あるいは天然の向性および標的化に依存してもよく、あるいは標的化されていなくてもよい。標的細胞への送達は、背景に応じて、インビトロおよび/またはインビボで実行することができる。更に、本発明は、薬剤の薬物動態または薬力学プロファイルを改変する方法に関する。これは、分布、酵素活性、組織透過性などの因子に必然的に影響することになる、問題の薬剤のEVへの充填によって達成することができる。
【0034】
また別の態様では、本発明は、CPPに抱合または複合体化された薬剤を含むEVを含む薬学的組成物に関する。典型的には、本発明による薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化された1種類の治療用EV(即ち、ある特定の所望の薬剤(複数可)を含むEVの集団)を含むが、例えば、組み合わせ治療が望ましい場合には、1種類以上のEV集団が薬学的組成物に含まれてもよい。少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、例えば、EV集団の懸濁、EV集団の活性の維持、またはある器官もしくは身体の一部から別の器官もしくは身体の一部への(例えば、血液から任意の目的の組織および/または器官および/または身体部位への)EV集団の運搬もしくは輸送に関与し得る、任意の薬学的に許容される物質、組成物、またはビヒクル、例えば、固体または液体充填剤、希釈剤、賦形剤、担体、溶媒、またはカプセル化材料を含む群から選択され得る。
【0035】
本発明は、薬剤を担持するEVの美容および皮膚科用途にも関係する。このため、本発明は、乾燥肌、皺(wrinkle)、ひだ(fold)、隆起(ridge)、および/または皮膚の皺(crease)などの症状および問題を改善および/または緩和するために、好適なEVを含む、クリーム、ローション、ゲル、エマルション、軟膏、ペースト、粉末、塗布剤、日焼け止め、シャンプーなどのスキンケア製品に関する。一実施形態では、EV(目的の薬剤を含む)は、再生特性を有する好適なEV産生細胞ソース(例えば、間葉系幹細胞)から得られ、皺(wrinkle)、線(line)、ひだ(fold)、隆起(ridge)、および/または皮膚の皺(crease)の美容的または治療的緩和において使用するための美容クリーム、ローション、またはゲルに含まれる。
【0036】
また別の態様では、本発明は、医学に使用するための本発明によるEVに関係する。必然的に、本発明に従う薬剤を含むEV(CPPに抱合および/または複合体化される)は、医学に使用される場合、実際には、通常、使用されるEVの集団である。患者に投与されるEVの用量は、EVに充填されている薬剤量、治療または緩和される疾患または症状、投与経路、薬剤自体の薬理作用、EVの固有の特性、および様々な他の関連するパラメータに依存することになる。
【0037】
本発明によるEVおよびEV集団は、このため、予防目的および/または治療目的、例えば、様々な疾患および障害の予防および/または治療および/または緩和における使用のために使用され得る。本発明によるEVが適用され得る疾患の非限定的な実例には、クローン病、潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、特発性肺線維症、乾癬、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)、子宮内膜症、自己免疫性肝炎、強皮症、筋炎、脳卒中、急性脊髄損傷、血管炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD)、線維症、ギラン-バレー症候群、急性心筋梗塞、ARDS、敗血症、髄膜炎、脳炎、肝不全、腎不全、心不全、または任意の急性もしくは慢性臓器不全および関連する原因疾患、移植片対宿主病、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよび他の筋肉疾患、リソソーム蓄積症、例えば、ゴーシェ病、ファブリー病、MPSI、II(ハンター症候群)、およびIII、ニーマン-ピック病、ポンペ病など、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および他のトリヌクレオチド反復関連疾患、認知症、ALS、癌誘導性悪液質、食欲不審、2型糖尿病、および様々な癌が含まれる。事実上全ての種類の癌が本発明について関連性のある疾患標的であり、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫(小脳または大脳)、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨腫瘍、脳幹神経膠腫、脳癌、脳腫瘍(小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、視経路および視床下部神経膠腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児、消化管)、原発不明癌、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌(眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、胃(Gastric)(胃(Stomach))癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(頭蓋外、性腺外、または卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫(脳幹の神経膠腫、大脳星状細胞腫、視経路および視床下部神経膠腫)、胃カルチノイド、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌(膵臓内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、咽頭癌(laryngeal cancer)、白血病((急性リンパ芽球性(急性リンパ球性白血病とも呼ばれる)、急性骨髄性(急性骨髄性白血病とも呼ばれる)、慢性リンパ球性(慢性リンパ球性白血病とも呼ばれる)、慢性骨髄性(慢性骨髄性白血病とも呼ばれる)、ヘアリー細胞白血病))、口唇口腔癌、脂肪肉腫、肝臓癌(原発性)、肺癌(非小細胞、小細胞)、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキン、髄芽腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮癌、口腔癌(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(myelogenous leukemia)、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia)(急性、慢性)、骨髄腫、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌(oral cancer)、口腔咽頭癌、骨肉腫/骨の線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌(表面上皮-間質性腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵島細胞癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌(pharyngeal cancer)、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽細胞腫およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、下垂体腺腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫)、セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫、黒色腫)、小腸癌、扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉腫瘍、精巣癌、咽頭癌(throat cancer)、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ならびに/またはウィルムス腫瘍である。
【0038】
本発明による薬剤-EVは、様々な異なる投与経路、例えば、耳介(耳)、頬側、結膜、皮膚、歯科、電気浸透、頸管内、副鼻腔内、気管内、腸内、硬膜外(epidural)、羊膜外、体外、血液透析、浸潤、間質、腹腔内(intra-abdominal)、羊膜内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、心臓内、軟骨内、仙骨内、陰茎海綿体内、腔内、大脳内、槽内、角膜内、歯冠内(歯科)、冠動脈内、陰核海綿体内、皮内、脊髄内(intradiscal)、管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、回腸内、病巣内、管腔内、リンパ腺内、骨髄内、髄膜内、筋肉内、眼内、卵巣内、心膜内、腹腔内(intraperitoneal)、胸膜腔内、前立腺内、肺内、イントラシナル(intrasinal)、髄腔内、滑膜内、腱内、精巣内、包膜内、胸腔内、尿細管内、腫瘍内、鼓膜内、子宮内、血管内、静脈内、静脈内ボーラス、静脈内点滴、脳室内、膀胱内、硝子体内、イオン浸透法、潅注、咽頭、経鼻、経鼻胃、密封包帯法、経眼、経口、口腔咽頭、その他、非経口、経皮(percutaneous)、関節周囲、硬膜外(peridural)、神経周囲、歯周、直腸、呼吸(吸入)、眼球後、軟組織、くも膜下、結膜下、皮下、舌下、粘膜下、局所、経皮(transdermal)、粘膜内、経胎盤、経気管、経鼓膜、尿管、尿道、および/もしくは膣投与、ならびに/または上記投与経路の任意の組合せを介してヒトまたは動物対象に投与され得、これは、典型的には、治療される疾患および/または薬剤もしくはEV集団それ自体の特徴に依存する。
【0039】
本明細書に記載の薬剤をEVに充填する方法は、極めて効率的かつ容易に拡張可能であり、薬剤を充填したEVを治療用投与に必要な量で急速に産生することを可能にする。前述の態様のある特定の実施形態では、EVへの薬剤の充填は、30分以下、例えば、5分以下で生じる。一部の実施形態では、EVの充填は、30分、20分、15分、10分、5分、または1分で生じる。ある特定の実施形態では、薬剤CPP抱合体またはCPP複合体と共にインキュベートしたEVの少なくとも80%に薬剤が充填される。好ましい実施形態では、薬剤CPP複合体/抱合体と共にインキュベートしたEVの少なくとも90%に薬剤が充填される。例示的な実施形態では、薬剤複抱合体/複合体と共にインキュベートしたEVの少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%以上に薬剤が充填される。一実施形態では、薬剤-CPP複合体/抱合体と共にインキュベートしたEVの少なくとも99%に薬剤が充填される。
【0040】
本発明の方法はまた、後で薬剤を充填する、結果として得られるEVの収率または特性に影響するために、EVソース細胞を、血清飢餓、低酸素、バフィロマイシン、EV取り込み阻害剤、エキソサイトーシス誘導剤、またはサイトカイン、例えば、TNF-アルファおよび/またはIFN-ガンマに露出させることを含み得る。EV産生スケールおよびタイムラインは、EV産生細胞または細胞株に大きく依存することになるため、当業者によって相応に適合され得る。
【0041】
薬剤をEVに充填するための方法は、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、スピン濾過、接線流濾過、中空糸濾過、遠心分離、免疫沈降、フィールドフローフラクショネーション、透析、マイクロ流体系分離など、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択される手順によりEVが精製される、精製ステップを含んでもよい。有利な実施形態では、EVの精製は、濾過(好ましくは限外濾過(UF)、接線流濾過、または中空糸濾過)およびサイズ排除液体クロマトグラフィー(LC)の逐次併用を使用して実行される。この精製ステップの組み合わせにより、最適化された精製が得られ、これにより今度は優れた治療効果がもたらされる。更に、エキソソームの精製に日常的に使用される超遠心分離(UC)と比較して、連続的濾過-クロマトグラフィーはかなり速く、本分野を席巻している現在のUC方法の重大な欠点である、より高い製造量まで拡大することが可能である。別の有利な精製方法は、拡大可能性および純度を提供する接線流濾過(TFF)であり、これを濾過などの他の種類の精製技法と組み合わせてもよい。精製技法は、典型的には、例えば血清タンパク質からの干渉、または望ましくない特性もしくは特徴を有するEVへの特定的でない充填を回避するために、EVを薬剤-CPP抱合体および/または複合体に充填露出させる前に展開される。薬剤を保持するEVを産生するための典型的なワークフローは、(1)標的化部分が表面に提示されたEVを発現する安定な細胞株の創出、(2)任意選択のステップにおける、大量のかかる遺伝子操作されたEVの精製、(3)少なくとも1つのCPPを用いた少なくとも1つの薬剤の問題のEVへの導入である。CPPは、例えばEV集団との相互作用の前に複合体形成を可能にするために、EVへの露出の前に、別々の容器、および/または例えばマイクロ流体デバイス中で薬剤と混合され得る。あるいは、複合体形成または共有結合によって抱合したCPP-薬剤は、典型的には形態または精製されたEV集団においてEVと直接混合されてもよい。
【0042】
上に記載した例示的態様、実施形態、代替形、および変化形は、本発明の範囲から逸脱することなく改変され得ることを理解されたい。これから、本発明を添付の実施例によって更に例示するが、これらの実施例も、本発明の範囲および要旨から逸脱することなく大幅に改変され得る。
【実施例
【0043】
実施例1:CPP-ドキスルビシン抱合体を充填した免疫細胞由来EV
末梢血単核細胞(PBMC)を野生型マウスの全血から抽出し、10cm皿の中で適当な密度で培養した。細胞培地を24時間後に取り除き、細胞をPBSで3回洗浄した。新たな新鮮なEV欠乏培地または無血清培地を細胞に添加し、48時間培インキュベートした。細胞を中で増殖させた細胞培地を含有する血清中の異質なEVおよび微粒子を、細胞と共にインキュベーションする前に、一晩の110000gでの超遠心分離により正常に枯渇させる。あるいは、OptiMEMまたはDMEMなどの無血清培地をその代わりに適用する。
【0044】
PBMC培養からの馴化培地を、一連の技法、この場合、連続LCによる限外濾過または接線流濾過(TFF)を使用して精製した。
【0045】
CPPペネトラチンを、Shi et al.,Int J Nanomedicine,2012;7:1613-21においてこれまでに説明されているように心毒性抗癌剤のドキソルビシンと共有抱合させた。
【0046】
TFFまたはUF/LC精製ステップから得られた好適な濃度(例えば、1012(即ち、10兆)個の粒子牛/ml)のPBMC EVを含む組成物を、濃度1mMでペネトラチン-ドキソルビシン抱合体を含有する緩衝液と混合した。30分間インキュベートした後、充填されていないペネトラチン-ドキソルビシン抱合体を、10kDaのカットオフで限外濾過を使用して、充填されたEVから除去した。
【0047】
遊離ドキソルビシン、ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体を充填したEV、および遊離ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体の細胞毒性を、MTTアッセイを使用して決定した。MDA-MB-231またはMCF7細胞(1×10細胞/100μl/ウェル)を、37℃および5%のCOで96ウェルプレート中で培養した。上記のとおりの薬物水溶液を、最終濃度1、5、10、15、および20μΜで培地に溶解させた。24時間のインキュベーション時間の後、MTT溶液(PBS中2mg/ml)をプレートに加え、24時間インキュベートし、細胞を、pH4.5、20%のSDSを含有する50%のN,N-ジメチルホルムアミドによって溶解させた。各ウェルについて、570nmでの吸光度を、SpectraMax M5計器(Molecular Devices,CA)によって測定した。対照細胞の吸光度を生存率100%とし、処置した細胞の値を対照のパーセンテージとして計算した。結果を図1に示す。ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体を充填したEVが遊離CPP-ドキソルビシン抱合体に類似した抗癌作用を例示することが示され、更にインビボ調査が必要である。
【0048】
実施例2:免疫細胞EVに充填したペネトラチン-ドキソルビシン抱合体のインビボ評価
実施例1のペネトラチン-ドキソルビシンEVを、雌のDBA/2マウス(体重16~20g)を使用してインビボ腫瘍モデル中で試験した。0日目、マウスの5グループに、0.5mlのRPMI1640中のL1210腫瘍細胞(2.5×10)を腹腔内注射によって接種した。処置を腫瘍細胞の注射の1日後に開始し、外側尾静脈を介して単回静脈内投薬として投与した。動物を、ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体、ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体を含むEV、空EV、および5mg/kgのドキソルビシン用量の遊離ドキソルビシンで処理した。生存期間を腫瘍注射後の日数で記録した。生存期間の平均値および中央値、ならびに結果の統計的有意性を、両側のウィルコクソンの順位検定を用いて決定した。繰り返した実験について得られた全てのデータをプールし、統計分析に利用した。結果を図2に示す。ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体を充填したEVが、遊離ペネトラチン-ドキソルビシン抱合体に類似した効能を呈したことが示される。しかしながら、ドキソルビシンの心毒性はEV媒介性送達時に大幅に低下した(データ図示せず)。
【0049】
実施例3:CADY1-パクリタキセル複合体を充填したDC-EVのインビボ評価
EVを、実施例1に記したとおりであるが、細胞ソースとして樹状細胞(DC)から得た。パクリタキセルおよび両親媒性CPP CADY-1(GLWWKAWWKAWWKSLWWRKRKRKA)を、様々なモル比で混合し、22℃で1時間インキュベートした。様々な量のCADY-1を使用したが(100μg、500μg、2.5mg、5mg、および10mg)、パクリタキセルの量は100μgのままにした。パクリタキセル対CADY-1の最終重量比は、それぞれ、1:1、1:5、1:25、1:50、および1:100であった。実施例2に記したモデルと同じマウスモデルを利用したが、代わりにパクリタキセル-CADY1複合体と共にインキュベートしたEVを、遊離パクリタキセル-CADY1複合体を限外濾過によって除去した後で使用した。パクリタキセル-CADY1複合体を含むEV、パクリタキセル-CADY1複合体のみ、空EV、および10mg/kgのパクリタキセル用量の遊離パクリタキセルを、上記のように腫瘍モデルにおいてインビボで試験した。ペネトラチン-ドキソルビシンEVで見られた結果と同様に、パクリタキセル-CADY1複合体を含むEVは、強力な抗腫瘍作用を呈した(図3)。
【0050】
実施例4:大腸炎の治療のためのステアリル化TP10-アザチオプリン複合体を充填したMSC-EVのインビボ評価
EVを、骨髄およびワルトン膠様質起源の間葉系間質細胞から得られた細胞培地から、実施例1に記したように精製した。様々な量のステアリル-TP10を使用したが(100μg、500μg、2.5mg、5mg、および10mg)、アザチオプリの量は100μgのままにした。アザチオプリン対ステアリル-TP10の最終重量比は、それぞれ、1:1、1:5、1:25、1:50、および1:100であり、22℃で、10分、30分、2時間、および6時間インキュベートした。様々な量のCPPを使用したが、アザチオプリンの濃度は一定のままにした。CPP対薬剤の最適なモル比で得られた複合体を、続いてMSC-EVの精製した集団と混合し、37℃で、10分、30分、2時間、および6時間インキュベートさせた。EVの最大荷重を30分以内に得て、遊離アザチオプリンを限外濾過によって除去した。次に、アザチオプリンを充填したMSC-EVを、TNBS誘発性大腸炎を有するマウスにこのように続いて投与した。
【0051】
クローン病を模倣するTNBS誘導性大腸炎は、サイトカイン急増、下痢、体重増加、および胃腸の炎症をもたらす。24頭のマウスを1群あたり6頭で4つの処置群に分けた。マウスを、大腸炎誘発の1週間前に2%のTNBSを含む150μlのオリーブ油-酢酸塩溶液を皮膚に塗布することによって事前感作した。次に、40%のエタノール中の1.5%のTNBSを含有する100μl溶液を直腸注入することによって、大腸炎を誘発した。大腸炎誘発の直後、120μl中の30μgのアザチオプリン含有EVの単回用量。
【0052】
アザチオプリン-ステアリル-TP10複合体を含むEV、アザチオプリン-ステアリル-TP10複合体のみ、空EV、および1.5mg/kgのアザチオプリン用量の遊離アザチオプリンを、尾静脈をとおして静脈内投与し、体重を以降7日間毎日記録した。図4に示すように、アザチオプリン-TP10のEVで処置したマウスが大腸炎低減後最も迅速な回復を示した。
【0053】
実施例5:ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンPTAP-TAT複合体を充填した脂肪細胞-EVのインビトロ評価
不死化脂肪細胞を15cm皿にプレートした。次に、細胞をヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンPTAP-TAT複合体でトランスフェクトした。様々な量のPTAP-TATを使用したが(100μg、500μg、2.5mg、5mg、および10mg)、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンの量は100μgで一定のままにした。ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン対PTAP-TATの最終重量比は、それぞれ、1:1、1:5、1:25、1:50、および1:100であり、22℃で60分間インキュベートした。細胞培地を4時間後に取り除き、細胞をPBSで3回洗浄した。新たな新鮮なEV欠乏培地または無血清培地を細胞に添加し、48時間培インキュベートした。次に、EVを、実施例1で言及したように馴化培地から精製した。ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンPTAP-TAT複合体でカプセル化したEV、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンPTAP-TAT複合体、および遊離ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンのコレステロール低下作用を、ニーマン・ピックC型疾患患者由来の皮膚線維芽細胞上で、EV処置の24時間後に細胞をフィリピンIII色素で45分間室温にて染色することによるフィリピン染色を使用して、評価した。結果を図5に示す。ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンPTAP-TAT複合体を充填したEVが、遊離薬物と比較して強力なコレステロール低下作用を提示したことが示される。
【0054】
実施例6:705 PMOスプライススイッチングオリゴヌクレオチド-Pip6a抱合体を充填したMSC-EVのインビトロ評価
EVを、実施例1に記したようにMSC EVから得た。ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)修飾を有するスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)705を、Betts C.et.al Mol.Ther.Nucleic Acids.2012に記載されているようにCPP Pip6aと抱合させた。EVを、実施例1に記したようにCPP抱合体と共にインキュベートし、遊離抱合体を限外濾過によって除去した。705-Pip6a抱合体を含むEV、705-Pip6a抱合体のみ、空EV、および遊離705SSOを、Huh7 705レポーター細胞株においてインビトロで試験し、24時間後、PBS中0.1%のトリトンX-100を使用して細胞を溶解させた後、Promega蛍ルシフェラーゼキットを使用して、発光値を決定した。結果を図6に示す。SSO-CPP複合体を充填したEVにより、SSO-CPP複合体のみよりも強力なスプライススイッチ作用が示された。
【0055】
実施例7:siRNA-Pepfect6複合体を充填した線維芽細胞EVのインビトロ評価
EVを、実施例1に記載したとおりであるが、代わりに包皮由来線維芽細胞から得た。ハンチントン遺伝子を標的とするsiRNAを、様々なモル比でCPP Pepfect6と複合体化させ、22℃で1時間インキュベートした。様々な量のPepfect6を使用したが(100μg、500μg、2.5mg、5mg、および10mg)、siRNAの量は100μgのままにした。siRNA対Pepfect6の最終モル比は、それぞれ、1:1、1:5、1:25、1:50、および1:100であった。EVを、実施例1に記したようにCPP複合体と共にインキュベートし、遊離複合体を限外濾過によって除去した。siRNA CPP複合体を含むEV、siRNA-Pepfect6複合体のみ、空のEV、および遊離siRNAを、Huh7細胞株におけるハンチントン遺伝子スプライシングについてインビトロで試験し、24時間後、細胞を採取し、Trizol精製法を使用してRNAを単離した。次に、cDNAを、高性能cDNA逆転写キットを使用してRNAから逆転写した後、ハンチントンmRNAレベルを決定するために、cDNAを使用して定量的PCRを実行した。実施例6で観察された結果と一貫して、siRNA-CPP複合体を充填したEVは、siRNA-CPP複合体のみよりも強力な遺伝子スプライシングを示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
0007171965000001.app