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特許7171979擁壁固定用金具ならびにそれを用いたコンクリート躯体へのブラケット足場の固定方法およびコンクリート躯体への表示物の固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】擁壁固定用金具ならびにそれを用いたコンクリート躯体へのブラケット足場の固定方法およびコンクリート躯体への表示物の固定方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/14 20060101AFI20221109BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
E04F13/14 102Z
E02D17/18 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021535368
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2020028949
(87)【国際公開番号】W WO2021020409
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2019140343
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521541804
【氏名又は名称】株式会社三共シーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100117477
【弁理士】
【氏名又は名称】國弘 安俊
(72)【発明者】
【氏名】柴田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】米谷 孝計
(72)【発明者】
【氏名】西川 容平
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-068809(JP,U)
【文献】特開2009-144341(JP,A)
【文献】米国特許第7024833(US,B1)
【文献】登録実用新案第3115520(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/14
E04F 13/08
E04G 3/00
E04G 5/04
E04B 2/02
E02D 29/02
E02D 17/04
E02D 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
擁壁形成のために配置された複数のコンクリート躯体の間隙に挿入される擁壁固定用金具であって
水平方向に沿って、力点部分、支点部分および作用点部分をこの順に備える金具本体、ならびに
該金具本体の該力点部分を有する端部に固定されておりかつ該金具本体の鉛直方向に沿って延びる支持部材を備え、
該金具本体における該力点部分が、該水平方向に対して下方に配置された該コンクリート躯体と係合可能であり、かつ該水平方向に対して該支点部分と略同じ高さの位置またはそれより高い位置に設けられており、そして
該金具本体における該作用点部分が、該水平方向に対して上方に配置された該コンクリート躯体と係合可能であり、かつ該水平方向において該支点部分よりも高い位置に設けられている、擁壁固定用金具。
【請求項2】
前記金具本体における前記力点部分が、前記水平方向に対して前記支点部分と略同じ高さの位置に設けられている、請求項1に記載の擁壁固定用金具。
【請求項3】
前記金具本体における前記作用点部分が、前記上方に配置されたコンクリート躯体と前記鉛直方向に係合する係合部を備える、請求項2に記載の擁壁固定用金具。
【請求項4】
前記係合部の端部が、前記複数のコンクリート躯体に亘って配置された連結バーを収容するための受容部を備える、請求項3に記載の擁壁固定用金具。
【請求項5】
前記金具本体における前記力点部分が、前記水平方向に対して前記支点部分より高い位置に設けられている、請求項1に記載の擁壁固定用金具。
【請求項6】
前記金具本体における前記作用点部分が前記上方に配置された前記コンクリート躯体と該水平方向に係合する係合部を備える、請求項5に記載の擁壁固定用金具。
【請求項7】
擁壁形成のために配置された複数のコンクリート躯体の間隙にブラケット足場を固定するための方法であって、
該コンクリート躯体の間隙に、請求項1から6のいずれかに記載の擁壁固定用金具を、該金具本体における該支点部分が下方に位置するように、該金具本体の該作用点部分の端部から挿入する工程、
該擁壁固定用金具を、該支点部分を中心として回転することにより、該力点部分を、該水平方向に対して下方に配置された該コンクリート躯体と係合させ、かつ該作用点部分を該水平方向に対して上方に配置された該コンクリート躯体と係合させる工程、および
該擁壁固定用金具の該支持部材にブラケット足場を固定する工程、
を包含する、方法。
【請求項8】
擁壁形成のために配置された複数のコンクリート躯体の間隙に表示物を固定するための方法であって、
該コンクリート躯体の間隙に、請求項1から6のいずれかに記載の擁壁固定用金具を、該金具本体における該支点部分が下方に位置するように、該金具本体の該作用点部分の端部から挿入する工程、
該擁壁固定用金具を、該支点部分を中心として回転することにより、該力点部分を、該水平方向に対して下方に配置された該コンクリート躯体と係合させ、かつ該作用点部分を該水平方向に対して上方に配置された該コンクリート躯体と係合させる工程、および
該擁壁固定用金具の該支持部材に表示物を固定する工程、
を包含する、方法。
【請求項9】
前記表示物が看板または横断幕である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁固定用金具ならびにそれを用いたコンクリート躯体へのブラケット足場の固定方法およびコンクリート躯体への表示物の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤面に対して、例えば鉛直方向に盛土を造成する際、土留をする擁壁の1つとして補強土壁工法が知られている。補強土壁工法は例えば図17に示すような工法である。
【0003】
まず、図17の(a)に示すように、基礎となる整地面902に対して、複数のコンクリート製の躯体912(コンクリート躯体またはコンクリートスキンとも呼ばれる)が例えば鉛直方向に指向して配置される。コンクリート躯体912の背面側には、盛土材(土砂)の撒き出し、転圧および締固めと、水平方向に延びる帯鋼および面状のジオテキスタイル等の補強材914の配置とが交互に繰り返される。次いで、配置されたコンクリート躯体912の高さにまで盛土材の撒き出し、転圧および締固めが行われると、当該コンクリート躯体912の上に、さらに別のコンクリート躯体918が配置され、上記と同様にしてコンクリート躯体918の背面側には、盛土材の撒き出し、転圧および締固めと、補強材914の配置とが交互に繰り返される。その後、コンクリート躯体918の最上段(天端部)の施工において、作業者の安全性と作業性とを確保するためのブラケット足場916が取り付けられる(図17の(b))。最終的に、斜面904の全体に盛土材が配置されコンクリート躯体が略鉛直方向に配置された擁壁920が形成され、上方は例えば笠コンクリート922が配置される(図17の(c))。なお、この笠コンクリート922の施工には、外側に型枠を設置し、現場打ちの生コンクリートを打設、養生し、脱型等の作業が行われる。次いで、施工された笠コンクリート922の高さにまで土砂(盛土材)の撒き出し、転圧および締固めが行われ、上載盛土等、その他の構造物がなければ盛土作業は完成となる。
【0004】
このブラケット足場のコンクリート躯体への固定は、例えば予め設置された寸切ボルト、アイボルトなどのねじ込み金具を通じて行われ、例えば図18に示すようなコンクリート躯体912の間でねじ込み金具924が突出するようにして配置される。ブラケット足場の移動および撤去が行われた後は、こうしたねじ込み金具924はコンクリート躯体の外側面に突出したままであり、擁壁934の外観を低下させている。さらに、ねじ込み金具924は長年の風雨によって腐蝕して錆水などで擁壁面を汚染することがある。このため、作業者は、擁壁934の外観を保持するために、当該ねじ込み金具924の取り外しを、足場を取り除いた状態で行わなければならない。
【0005】
しかし、こうした取り外し作業は足場がない状態で行われる作業であることから、作業者にとって危険を伴うものである。まして、取り外しのために別途ブラケット足場を組むことも現実的とは言い難い。例えば、高所作業車等の特殊車両を用いて撤去することが考えられるが、傾斜地での造成や、盛土の上載構造物の状況によっては、高所作業車等が近接することができず、さらに大型の重機等により大掛かりな撤去作業が行われることもあり得る。しかし、こうした撤去には、多額の重機費用が発生する。そのため、実際には不適切な危険作業により撤去が行なわれていることも否めない。
【0006】
一方、高速道路や山間部の道路では、行き先案内板や道路標識、広告看板などの表示物が上記のような擁壁を構成するコンクリート躯体に取り付けられることがある。
【0007】
しかし、こうした表示物は容易に取り付け可能であるとともに、風雨に耐え得るように十分に固定されなければならない。加えて、近年では撤去が容易であり、かつ撤去にあたり擁壁が破損する等の不利益を回避して、擁壁を可能な限り清浄に保持することが所望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものである。その目的とするところは、擁壁形成の際にコンクリート躯体に対してブラケット足場や表示物を簡便に固定することができるとともに、当該足場や表示物の移動または除去後に、作業者を危険に晒すことなくコンクリート躯体から容易に取り外すことができる、擁壁固定用金具ならびにそれを用いたコンクリート躯体へのブラケット足場の固定方法およびコンクリート躯体への表示物の固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、擁壁形成のために配置された複数のコンクリート躯体の間隙に挿入される擁壁固定用金具であって
水平方向に沿って、力点部分、支点部分および作用点部分をこの順に備える金具本体、ならびに
該金具本体の該力点部分を有する端部に固定されておりかつ該金具本体の鉛直方向に沿って延びる支持部材を備え、
該金具本体における該力点部分が、該水平方向に対して下方に配置された該コンクリート躯体と係合可能であり、かつ該水平方向に対して該支点部分と略同じ高さの位置またはそれより高い位置に設けられており、そして
該金具本体における該作用点部分が、該水平方向に対して上方に配置された該コンクリート躯体と係合可能であり、かつ該水平方向において該支点部分よりも高い位置に設けられている、擁壁固定用金具である。
【0010】
1つの実施形態では、上記金具本体における上記力点部分は、上記水平方向に対して上記支点部分と略同じ高さの位置に設けられている。
【0011】
さらなる実施形態では、上記金具本体における上記作用点部分は、上記上方に配置されたコンクリート躯体と上記鉛直方向に係合する係合部を備える。
【0012】
またさらなる実施形態では、上記係合部の端部は、上記複数のコンクリート躯体に亘って配置された連結バーを収容するための受容部を備える。
【0013】
1つの実施形態では、上記金具本体における上記力点部分は、上記水平方向に対して上記支点部分より高い位置に設けられている。
【0014】
さらなる実施形態では、上記金具本体における上記作用点部分は、上記上方に配置された上記コンクリート躯体と該水平方向に係合する係合部を備える。
【0015】
本発明はまた、擁壁形成のために配置された複数のコンクリート躯体の間隙にブラケット足場を固定するための方法であって、
該コンクリート躯体の間隙に、上記いずれかの擁壁固定用金具を、該金具本体における該支点部分が下方に位置するように、該金具本体の該作用点部分の端部から挿入する工程、
該擁壁固定用金具を、該支点部分を中心として回転することにより、該力点部分を、該水平方向に対して下方に配置された該コンクリート躯体と係合させ、かつ該作用点部分を該水平方向に対して上方に配置された該コンクリート躯体と係合させる工程、および
該擁壁固定用金具の該支持部材にブラケット足場を固定する工程、
を包含する、方法である。
【0016】
本発明はまた、擁壁形成のために配置された複数のコンクリート躯体の間隙に表示物を固定するための方法であって、
該コンクリート躯体の間隙に、上記いずれかの擁壁固定用金具を、該金具本体における該支点部分が下方に位置するように、該金具本体の該作用点部分の端部から挿入する工程、
該擁壁固定用金具を、該支点部分を中心として回転することにより、該力点部分を、該水平方向に対して下方に配置された該コンクリート躯体と係合させ、かつ該作用点部分を該水平方向に対して上方に配置された該コンクリート躯体と係合させる工程、および
該擁壁固定用金具の該支持部材に表示物を固定する工程、
を包含する、方法である。
【0017】
1つの実施形態では、上記表示物は看板または横断幕である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンクリート躯体に対してブラケット足場や表示物の取り付けおよび取り外しを簡便に行うことができる。また、本発明の金具自体もコンクリート躯体から容易に脱着可能である。これにより、外観が良好な擁壁を形成されるとともに、擁壁の形成にあたり作業者を危険に晒す可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の擁壁固定用金具の一例を示す当該金具の斜視図である。
図2図1に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体に固定する様式の一例を説明するための模式図である。
図3図2に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体内に配置した状態を説明するための一部切欠断面図である。
図4】本発明の擁壁固定用金具の他の例を示す図であって、当該金具をコンクリート躯体内に配置した状態を説明するための模式断面図である。
図5図4に示す模式断面図の一部拡大図である。
図6図4に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体に取り付けた際のコンクリート躯体の背面側から見た図である。
図7】本発明の擁壁固定用金具のさらに別の例を示す当該金具の斜視図である。
図8】本発明の擁壁固定用金具のさらに別の例を示す当該金具の斜視図である。
図9】本発明の擁壁固定用金具のさらに別の例を示す当該金具の分解斜視図である。
図10図9に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体に固定する様式を説明するための模式図である。
図11図9に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体内に配置した状態を説明するための一部切欠断面図である。
図12】本発明の擁壁固定用金具のまたさらに別の例を示す当該金具の斜視図である。
図13図12に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体に固定する様式を説明するための模式図である。
図14】本発明の擁壁固定用金具のまたさらに別の例を示す当該金具の斜視図である。
図15図14に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体に固定する様式を説明するための模式図である。
図16】本発明の擁壁固定用金具に表示物を取り付ける手順の一例を説明するための図であって、(a)は擁壁を構成するコンクリート躯体の間に本発明の擁壁固定用金具を配置した状態を説明する模式図であり、そして(b)は当該(a)で配置した擁壁固定用金具に交通看板を取り付けた状態を説明する模式図である。
図17】従来の補強土壁工法により擁壁を形成するための手順を説明する模式図である。
図18】従来の補強土壁工法により配置されたコンクリート躯体の配置の状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳述する。
【0021】
(擁壁固定用金具)
図1は、本発明の擁壁固定用金具100の斜視図である。
【0022】
本発明の擁壁固定用金具100は、金具本体110および支持部材160を備える。
【0023】
金具本体110は、好ましくは硬質の材料(例えば、鋼板、ステンレススチール、アルミニウム、その他軽量合金)でなる1枚のプレートで構成されている。後述のようにブラケット足場や表示物(例えば、交通標識、看板、横断幕)(以下、これらをまとめて「支持対象物」ということがある)が固定され、複数の作業者が作業する際の重量に対して十分耐え得る強度を有するために、例えば中板または厚板の鋼板(好ましくは3mm以上、より好ましくは6mm以上、さらに好ましくは9mm以上の厚みを有する鋼板)が使用されてもよい。
【0024】
金具本体110は、水平方向に沿って、力点部分112、支点部分114および作用点部分116をこの順に備える。
【0025】
金具本体110における力点部分112は、後述する支持部材160に取り付けられた支持対象物からの荷重が下方に配置されたコンクリート躯体に対して直接かかる部分である。ここで、図1に示す擁壁固定用金具100では、金具本体110における力点部分112は、水平方向に対して支点部分114と略同じ高さの位置に設けられている。力点部分112は、水平方向に対して下方に配置されたコンクリート躯体と係合可能である。具体的には、図1において、金具本体110の下方のうち、支点部分114から力点部分112にかけては略平坦な底面118が形成されている。この底面118の全部または一部が下方に配置されたコンクリート躯体の上面と接触して係合することにより、支持部材160に取り付けられた支持対象物をコンクリート躯体の所定の位置に保持し得る。
【0026】
金具本体110の支点部分114は、当該支点部分114を中心にして金具本体110(または擁壁固定用金具100)を回転させることにより、コンクリート躯体の間隙に対して擁壁固定用金具100の着脱を行うことができる。図1では支点部分114は鈍角を有するように記載されているが、本発明において支点部分114はこの形状に必ずしも限定されない。例えば、この鈍角を構成する角に代えて面取り(例えばC面加工やR面加工)が行われていてもよい。
【0027】
図1において、金具本体110の作用点部分116は、水平方向において支点部分114よりも高い位置に設けられている。作用点部分116がこのような位置に設けられていることにより、作用点部分116は、コンクリート躯体の間隙内に挿入されて支持部材160(すなわち、力点部分112側)に支持対象物が固定された際に、水平方向に対して上方に配置されたコンクリート躯体と接触して係合することができる。具体的には、図1において、金具本体110の端部(力点部分112と反対側)には、上方に突出した係合部120が設けられている。この係合部120は、本発明の擁壁固定用金具100の上方に配置されたコンクリート躯体と鉛直方向に係合可能な係合面122を有し、当該係合面122の全部または一部が作用点部分116として機能し得る。
【0028】
図1において、金具本体110は、支点部分114を中心にして図の左側(すなわち力点部分112から支点部分114にかけて)では略平行な幅を保持する。一方、支点部分114を中心にして図の右側(すなわち支点部分114から作用点部分116にかけての側)では、コンクリート躯体から取り外すにあたり、支点部分114を中心にして擁壁固定用金具100の力点部分112側を上方に持ち上げた際に支点部分114から作用点部分116にかけての側が下方に配置されたコンクリート躯体と接触して、擁壁固定用金具100の取り外しを妨害することのないようにするために、当該図の右側に向かって徐々に幅が狭められた形状を有している。本発明において、金具本体110のこのような形状は必ずしも限定されない。例えば、この徐々に幅が狭められた形状は、丸みを帯びたものであってもよい。これらの幅は、固定されるコンクリート躯体自体の形状や金具本体110の強度等を考慮して当業者にて任意の形状が選択され得る。
【0029】
支持部材160は、好ましくは硬質の材料(例えば、鋼板、ステンレススチール、アルミニウム、その他軽量合金)でなる1本の角材、角パイプ、C型材、またはL型アングルで構成されている。支持部材160は、その上端が上記金具本体110に取り付けられており、下端は略鉛直方向を指向する。図1において、支持部材160は、六角ボルト124およびナット126によって金属金具110に取り付けられている。このような六角ボルト124およびナット126に代えて、支持部材160は、金属本体110と溶接して一体化されていてもよい。支持部材160はまた、金具本体110の軸方向(水平方向)と略平行となるように複数個のネジ穴128が設けられている。そして、ネジ穴128に支持対象物を取り付けるためのボルト(図示せず)が配置される。
【0030】
図2は、図1に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体に固定する様式の一例を説明するための模式図である。
【0031】
本発明の擁壁固定用金具100は、擁壁を作製するために積み上げられたコンクリート躯体782,784,786の間隙790に、作用点部分116から挿入される。なお、この段階では、積み上げられたコンクリート躯体782,784,786の裏面には、盛土材(土砂)の撒き出しは行われていない。その後、コンクリート躯体782,784,786の表面および裏面で、擁壁固定用金具100の金具本体110が、例えば構成面の一部がC字型またはU字型の切欠部136または138を備える2枚のストッパ132,134で固定される。具体的には、ストッパ132,134のそれぞれに設けられた切欠部分136,138で、擁壁固定用金具100の金具本体110が挟持される。
【0032】
図3は、図2に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体内に配置した状態を説明するための一部切欠断面図である。
【0033】
図3において、本発明の擁壁固定用金具100は、金具本体110の下方のうち、支点部分114から力点部分112にかけて延びる底面118がコンクリート躯体782の上面と接触して係合されている。金具本体110の作用点部分116は、突出した係合部120の係合面122が、ストッパ134を介してコンクリート躯体786の鉛直方向の面と係合されている。
【0034】
他方、コンクリート躯体786と係合部120の係合面112との間は、ストッパ134によって隙間なく固定されている。金具本体110に取り付けられた支持部材160とコンクリート躯体782,786との間はストッパ132によって隙間なく固定されている。
【0035】
このような状態において、本発明の擁壁固定用金具100は、図3の上方および下方のいずれにも動かすことができず、コンクリート躯体の間隙に強固に固定される。そして支持部材160には、別途設けられたボルト172およびナット174によってブラケット足場170などの支持対象物が強固に固定される。
【0036】
図3に示す状態から本発明の擁壁固定用金具100を取り外す際は、まずブラケット足場170などの支持対象物を擁壁固定用金具100から取り外し、次いでストッパ132が取り外される。その後、支点部分114を中心にして力点部分112側を上方に回転させることにより、作用点部分116の係合(すなわち、係合部120の係合面122とストッパ134を介したコンクリート躯体706との係合)が解除される。その状態で擁壁固定用金具100は、コンクリート躯体の間隙からそのまま引き出すことができる。
【0037】
図4は、本発明の擁壁固定用金具の他の例を示す図であって、当該金具をコンクリート躯体内に配置した状態を説明するための模式断面図である。
【0038】
本発明の擁壁固定用金具200は、金具本体210の作用点部分216に設けられた係合部220に、係合面の代わりに、隣り合うコンクリート躯体の間に亘って配置された連結バー240を収容するための受容部222を有する以外は、図1に示されるものと同様である。
【0039】
図5は、図4に示す模式断面図の一部拡大図である。図5に記載のように本発明の擁壁固定用金具200では、係合部220に、連結バー240の外形を収容し得るように予め受容部222が設けられている。この連結バー240は、コンクリート躯体788の一部に設けられた窪み794内に配置されている。コンクリート躯体788に設けられる窪み794の深さを調整することにより、図5に示すように本発明の擁壁固定用金具200の作用点部分216や係合部220がコンクリート躯体788の背面から飛び出ることなく、全体として略平坦な背面を形成することができる。
【0040】
なお、連結バー240は、図6に示すようにコンクリート躯体782上に配置された、隣り合うコンクリート躯体788,789の窪み794,794’に亘って配置されている。このため、連結バー240を受容部222で収容する本発明の擁壁固定用金具200は、コンクリート躯体788,789の間の間隙において、コンクリート躯体788,789の背面側と(連結バー240を介して)間接的に係合することができる。
【0041】
再び図4を参照すると、本発明の擁壁固定用金具200は、金具本体210の下方のうち、支点部分214から力点部分212にかけて延びる底面218がコンクリート躯体782の上面と接触して係合されている。金具本体210の作用点部分216は、上記の通りコンクリート躯体782の背面側と(連結バー240を介して)間接的に係合されている。
【0042】
他方、金具本体210に取り付けられた支持部材160とコンクリート躯体782との間はストッパ132によって隙間なく固定されている。
【0043】
このような状態において、本発明の擁壁固定用金具200は、図4の上方および下方のいずれにも動かすことができず、コンクリート躯体の間隙に強固に固定される。そして支持部材160には、別途設けられたボルト172およびナット174によってブラケット足場170などの支持対象物が強固に固定される。
【0044】
図4に示す状態から本発明の擁壁固定用金具200を取り外す際は、まずブラケット足場170などの支持対象物を擁壁固定用金具200から取り外し、次いでストッパ132が取り外される。その後、支点部分214を中心にして力点部分212側を上方に回転させることにより、作用点部分216の係合(すなわち、係合部220の受容部222と連結バー240を介したコンクリート躯体782との係合)が解除される。その状態で擁壁固定用金具200は、コンクリート躯体の間隙からそのまま引き出すことができる。
【0045】
図7は、本発明の擁壁固定用金具のさらに別の例を示す当該金具の斜視図である。
【0046】
図7において、本発明の擁壁固定用金具300は、金具本体310の支点部分314に対して作用点部分316とは反対側(すなわち、力点部分(図示せず))に一対のL字型部材352,354が所定の間隙をあけて溶接された金具本体310と、該一対のL字型部材352,354の当該間隙に収容可能な支持部材360とを備える。図7において、支持部材360は、六角ボルト324およびナット326によって金属金具310内の一対のL字型部材352,354に取り付けられている。支持部材360はまた、図1に示す上記支持部材160と同様に、金具本体310と略平行となるように複数個のネジ穴328が設けられている。そして、ネジ穴328に支持対象物を取り付けるためのボルト(図示せず)が配置される。
【0047】
図8は、本発明の擁壁固定用金具のさらに別の例を示す当該金具の斜視図である。
【0048】
図8において、本発明の擁壁固定用金具400では、金具本体410の支点部分414に対して作用点部分416とは反対側(すなわち、力点部分412)に支持部材460が溶接して固定されている。図8において、支持部材460は、金具本体410が溶接された側とは反対側に、当該金具本体410の軸方向と略平行に棒ネジ456が設けられている。この支持部材460に設けられた棒ネジ456を、支持対象物に設けられたネジ穴などの孔に通すことにより、擁壁固定用金具400に支持対象物を取り付けることができる。
【0049】
あるいは、本発明の擁壁固定用金具は、上記に示すものに代えて、以下のようなものであってもよい。
【0050】
図9は、本発明の擁壁固定用金具のさらに別の例を示す当該金具の分解斜視図である。
【0051】
本発明の擁壁固定用金具500は、金具本体510および支持部材560を備える。
【0052】
金具本体510は、上記図1に示す金具本体110と同様の材料でなる1枚のプレートで構成されている。金具本体510は、水平方向に沿って、力点部分512、支点部分514および作用点部分516をこの順に備える。
【0053】
金具本体510における力点部分512は、支持部材560に取り付けられた支持対象物からの荷重が下方に設けられたコンクリート躯体に直接かかる部分である。ここで、図9に示す擁壁固定用金具500では、金具本体510における力点部分512は、水平方向に対して支点部分514よりも高い位置に設けられている。力点部分512は、水平方向に対して下方に配置されたコンクリート躯体と係合可能である。具体的には、図9において、金具本体510の下方のうち、支点部分514から力点部分512にかけて、一部に水平方向と略平行となる略平坦な底面518が形成されている。この底面518の全部または一部が下方に配置されたコンクリート躯体の上面と接触して係合することにより、支持部材560に固定された支持対象物をコンクリート躯体の所定の位置に保持し得る。
【0054】
なお、本発明においては、金具本体510の力点部分512の側に、後述する六角ボルト524が貫通するためボルト穴513と、当該ボルト穴513よりも上方に設けられたフック穴515と、当該フック穴515よりも支点部分517側に設けられたシャフト穴517がそれぞれ設けられていてもよい。さらに、金具本体510は、力点部分512の側において、ボルト穴513の下方に力点部分512よりもさらに下に向かって延びる支持プレート部521を備える。支持プレート部521は、支持部材560の側面と接触して支持部材560を支持し、本発明の擁壁固定用金具500に支持対象物が取り付けられた際のガタツキを抑えることができる。なお、図9に示す実施形態においては、支持部材560が特に設けられることなく、支持プレート部521自体が「支持部材」としての役割を果たすこともできる。すなわち、支持プレート部521には、支持部材560が設けられることなく、支持対象物が直接固定されてもよい。
【0055】
金具本体510の支点部分514は、当該支点部分514を中心にして金具本体510(または擁壁固定用金具500)を上方向に回転させることにより、コンクリート躯体の間隙に対して擁壁固定用金具500の着脱を行うことができる。図9では、支点部分514は鈍角を有するように記載されているが、本発明において支点部分514はこの形状に必ずしも限定されない。例えば、この鈍角を構成する角に代えて面取り(例えばC面加工やR面加工)が行われていてもよい。
【0056】
図9において、金具本体510の作用点部分516は、水平方向において支点部分514よりも高い位置に設けられている。作用点部分516がこのような位置に設けられていることにより、作用点部分516は、コンクリート躯体の間隙内に挿入されて支持部材560(すなわち、力点部分512側)に支持対象物が取り付けられた際に、水平方向に対して上方に配置されたコンクリート躯体と係合することができる。具体的には、図9において、金具本体510の端部(力点部分512と反対側)の上方には、水平方向に略平坦に延びる係合面522が設けられている。この係合面522の全部または一部は、本発明の擁壁固定用金具500の上方に配置されたコンクリート躯体と水平方向に係合可能となり、当該係合面522が作用点部分516として機能し得る。
【0057】
図9において、金具本体510は、支点部分514を中心にして図の左側(すなわち力点部分512から支点部分514にかけて)では、金具本体510に十分な剛性を提供するために、例えば高さ方向に幾分幅広の形状を有し、かつ支点部分514を中心にして図の右側(すなわち支点部分514から作用点部分516にかけての側)では、コンクリート躯体から取り外すにあたり、支点部分514を中心にして擁壁固定用金具500の力点部分512側を上方に持ち上げた際に支点部分514から作用点部分516にかけての側が下方に配置されたコンクリート躯体と接触して、擁壁固定用金具500の取り外しを妨害することのないようにするために徐々に幅が狭められた形状(特に下方が丸みを帯びた形状)を有している。これらの幅は、固定されるコンクリート躯体自体の形状や金具本体510の強度等を考慮して当業者にて任意の形状が選択され得る。
【0058】
支持部材560は、上記図1に示す金具本体110と同様の材料でなる1本の角材、角パイプ、C型材、またはL型アングルで構成されている。支持部材560は、その上端が上記金具本体510に取り付けられており、下端は略鉛直方向を指向する。図9において、支持部材560は、六角ボルト524およびナット526によって金属金具510に取り付けられている。このような六角ボルト524およびナット526に代えて、支持部材560は、金属本体510(例えば、支持プレート部521)と溶接して一体化されていてもよい。支持部材560はまた、金具本体510の軸方向(水平方向)と略平行となるように複数個のネジ穴528が設けられている。そして、ネジ穴528に支持対象物を固定するためのボルト、紐、ロープ、結束バンド等(いずれも図示せず)が配置される。
【0059】
図10は、図9に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体に固定する様式を説明するための模式図である。
【0060】
本発明の擁壁固定用金具500は、擁壁を作製するために積み上げられたコンクリート躯体804,806の間隙890に、作用点部分516から挿入される。なお、この段階では、積み上げられたコンクリート躯体804,806の裏面には、盛土材(土砂)の撒き出しは行われていない。その後、コンクリート躯体804,806の表面で、擁壁固定用金具500の金具本体510が、例えば構成面の一部がC字型またはU字型の切欠536を備えるストッパ532で固定される。具体的には、ストッパ532に設けられた切欠部分536で、擁壁固定用金具500の金具本体110が挟持される。
【0061】
なお、1つの実施形態では、ストッパ532には、厚み方向にシャフト穴533が設けられている。ストッパ532のシャフト穴533、および擁壁固定用金具500の金具本体510のシャフト穴517には、1本のシャフト555が貫通されることにより、コンクリート躯体804,806に対して、擁壁固定用金具500とストッパ532とを強固に固定することができる。
【0062】
図11は、図9に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体内に配置した状態を説明するための一部切欠断面図である。
【0063】
図11において、本発明の擁壁固定用金具500は、金具本体510の下方のうち、力点部分512において略水平方向に延びる底面518の全部または一部がコンクリート躯体804の上面と接触して係合されている。金具本体510の作用点部分516は、当該作用点部分516において水平方向に延びる係合面522の全部または一部が、コンクリート躯体806の側方突出部の底面812と接触して係合されている。なお、図11において、金具本体510の下方とコンクリート躯体804の上面との間には所定の隙間519が設けられている。
【0064】
他方、金具本体510に取り付けられた支持部材560とコンクリート躯体804,806との間はストッパ532によって隙間がなく、ストッパ532のシャフト穴533(図10)および金具本体510のシャフト穴517にシャフト555が貫通されている。
【0065】
このような状態において、本発明の擁壁固定用金具500は、図11の上方および下方のいずれにも動かすことができず、コンクリート躯体804,806の間隙に強固に固定される。そして支持部材560には、別途設けられたボルト172およびナット174によってブラケット足場170などの支持対象物が強固に固定される。
【0066】
図11に示す状態から本発明の擁壁固定用金具500を取り外す際は、まずブラケット足場170などの支持対象物を擁壁固定用金具500から取り外し、次いでストッパ532が取り外される。その後、例えば金具本体510のフック穴515に上方からフック(図示せず)を引っ掛け、これを上方に引き上げることにより、隙間519を利用して支点部分514を僅かに下方に移動させ、支点部分514を中心にして力点部分512側を上方に回転させることにより、作用点部分516の係合(すなわち、係合面522とコンクリート躯体806の側方突出部の底面812との係合)が解除される。その状態で擁壁固定用金具500は、コンクリート躯体の間隙からそのまま引き出すことができる。
【0067】
図12は、本発明の擁壁固定用金具のまたさらに別の例を示す当該金具の斜視図である。
【0068】
本発明の擁壁固定用金具600は、金具本体610および支持部材660を備える。金具本体610および支持部材660は、上記図1に示す金具本体110と同様の材料でなる1枚のプレートを折り曲げて構成されている。金具本体610は、水平方向に沿って、力点部分612、支点部分614および作用点部分616をこの順に備える。
【0069】
金具本体610における力点部分612は、支持部材660に取り付けられた支持対象物からの荷重が下方に設けられたコンクリート躯体に直接かかる部分である。ここで、図12に示す擁壁固定用金具600では、金具本体610における力点部分612は、水平方向に対して支点部分614よりも高い位置に設けられている。力点部分612は、水平方向に対して下方に配置されたコンクリート躯体と係合可能である。具体的には、図12において、金具本体610の下方のうち、支点部分614から力点部分612にかけて、一部に水平方向と略平行となる略平坦な底面618が形成されている。この底面618の全部または一部が下方に配置されたコンクリート躯体の上面と接触して係合することにより、支持部材660に固定された支持対象物をコンクリート躯体の所定の位置に保持し得る。
【0070】
金具本体610の支点部分614は、当該支点部分614を中心にして金具本体610(または擁壁固定用金具600)を上方向に回転させることにより、コンクリート躯体の間隙に対して擁壁固定用金具600の着脱を行うことができる。図12では、支点部分614は鈍角を有するように記載されているが、本発明において支点部分614はこの形状に必ずしも限定されない。例えば、この鈍角を構成する角に代えて面取り(例えばC面加工やR面加工)が行われていてもよい。
【0071】
図12において、金具本体610の作用点部分616は、水平方向において支点部分614よりも高い位置に設けられている。作用点部分616がこのような位置に設けられていることにより、作用点部分616は、コンクリート躯体の間隙内に挿入されて支持部材660(すなわち、力点部分612側)に支持対象物が取り付けられた際に、水平方向に対して上方に配置されたコンクリート躯体と係合することができる。具体的には、図12において、金具本体610の端部(力点部分612と反対側)の上方には、水平方向に略平坦に延びる係合面622が設けられている。この係合面622の全部または一部は、本発明の擁壁固定用金具600の上方に配置されたコンクリート躯体と水平方向に係合可能となり、当該係合面622が作用点部分616として機能し得る。
【0072】
図12において、金具本体610は、支点部分614を中心にして図の左側(すなわち力点部分612から支点部分614にかけて)では、金具本体610に十分な剛性を提供するために、例えば幅方向に幾分幅広の形状を有している。この幅方向の長さは、固定されるコンクリート躯体自体の形状や金具本体610の強度等を考慮して当業者にて任意の長さが選択され得る。
【0073】
支持部材660は、上記の通り、金具本体610と一体となっており、下方に延びる板状部分の一部を正面方向に突出するように配置した折り曲げ部分662を有する。支持部材660は上端から下端にかけて略鉛直方向を指向する。図12において、支持部材660は、少なくとも1つのネジ穴628が設けられている。ネジ穴628に支持対象物を固定するためのボルト、紐、ロープ、結束バンド等(いずれも図示せず)が配置される。
【0074】
図13は、図12に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体に固定する様式を説明するための模式図である。
【0075】
本発明の擁壁固定用金具600は、擁壁を作製するために積み上げられたコンクリート躯体854,856の間隙892に、作用点部分616から挿入される。なお、この段階では、積み上げられたコンクリート躯体854,856の裏面には、盛土材(土砂)の撒き出しは行われていなくてもよい。
【0076】
図13において、本発明の擁壁固定用金具600は、金具本体610の下方のうち、力点部分612において略水平方向に延びる底面618の全部または一部がコンクリート躯体854の上面と接触して係合されている。金具本体610の作用点部分616は、当該作用点部分616において水平方向に延びる係合面622の全部または一部が、コンクリート躯体856の側方突出部の底面(図示せず)と接触して係合されている。
【0077】
このような状態において、本発明の擁壁固定用金具600は、支持部材660に設けられた折り曲げ部分662のネジ穴628を通じて下方に荷重がかけられると、図13の上方および下方のいずれにも動かすことができず、コンクリート躯体854,856の間隙に強固に固定される。そして支持部材660に設けられた折り曲げ部分662のネジ穴628には、ブラケット足場などの支持対象物(図示せず)がネジ等の手段を用いて強固に固定される。
【0078】
図13に示す状態から本発明の擁壁固定用金具600を取り外す際は、まず支持対象物を擁壁固定用金具600から取り外し、その後、例えば折り曲げ部分628のネジ穴628に上方からフックを引っ掛け、これを上方に引き上げかつ支点部分614を中心にして力点部分612側を上方に回転させることにより、作用点部分616の係合(すなわち、係合面622とコンクリート躯体856の側方突出部の底面622との係合)が解除される。その状態で擁壁固定用金具600は、コンクリート躯体の間隙からそのまま引き出すことができる。
【0079】
図14は、本発明の擁壁固定用金具のまたさらに別の例を示す当該金具の斜視図である。
【0080】
本発明の擁壁固定用金具700は、金具本体710および支持部材760を備える。金具本体710および支持部材760は、上記図1に示す金具本体110と同様の材料でなる、例えば1枚のプレートで構成されている。金具本体710は、水平方向に沿って、力点部分712、支点部分714および作用点部分716をこの順に備える。
【0081】
金具本体710における力点部分712は、支持部材760に取り付けられた支持対象物からの荷重が下方に設けられたコンクリート躯体に直接かかる部分である。ここで、図14に示す擁壁固定用金具700では、金具本体710における力点部分712は、水平方向に対して支点部分714と略同じ高さとなる位置に設けられている。力点部分712は、水平方向に対して下方に配置されたコンクリート躯体と係合可能である。具体的には、図14において、金具本体710の下方のうち、支点部分714から力点部分712にかけて、水平方向に延びる略平坦な底面718が形成されている。この底面718の全部または一部が下方に配置されたコンクリート躯体の上面と接触して係合することにより、支持部材760に固定された支持対象物をコンクリート躯体の所定の位置に保持し得る。
【0082】
金具本体710の支点部分714は、金具本体710(または擁壁固定用金具700)を上方向に回転させることにより、コンクリート躯体の間隙に対して擁壁固定用金具700の着脱を行うことができる。
【0083】
図14において、金具本体710の作用点部分716は、水平方向において支点部分714よりも高い位置に設けられている。作用点部分716の先端はフック形状を有し、後述のようにコンクリート躯体の間に配置された連結バーと係合可能である。作用点部分716がこのような位置で当該フック形状を有することにより、作用点部分716は、コンクリート躯体の間隙内に挿入されて支持部材760(すなわち、力点部分712側)に支持対象物が取り付けられた際に、水平方向に対して上方に配置されたコンクリート躯体の連結バーと係合することができる。
【0084】
支持部材760は、上記の通り、金具本体710と一体となっており、下方に延びる板状部分の一部に少なくとも1つのネジ穴728が設けられている。ネジ穴728に支持対象物を固定するためのボルト、紐、ロープ、結束バンド等(いずれも図示せず)が配置される。
【0085】
図15は、図14に示す擁壁固定用金具をコンクリート躯体に固定する様式を説明するための模式図である。
【0086】
本発明の擁壁固定用金具700は、擁壁を作製するために積み上げられたコンクリート躯体860上で水平方向に並んで配置されたコンクリート躯体862,864の間隙896に、作用点部分716から挿入される。なお、この段階では、積み上げられたコンクリート躯体860,862,864の裏面には、盛土材(土砂)の撒き出しは行われていなくてもよい。
【0087】
図15において、本発明の擁壁固定用金具700は、金具本体710の下方のうち、力点部分712から支店部分714にかけて略水平方向に延びる底面718の全部または一部がコンクリート躯体860の上面と接触して係合されている。金具本体710の作用点部分716は、水平方向に並んで配置されたコンクリート躯体862,864の間に存在する連結バー888と接触して係合されている。
【0088】
このような状態において、本発明の擁壁固定用金具700は、支持部材760に設けられたネジ穴728を通じて下方に荷重がかけられると、図15の上方および下方のいずれにも動かすことができず、コンクリート躯体860,862,864の間隙に強固に固定される。そして支持部材760に設けられたネジ穴728には、ブラケット足場などの支持対象物(図示せず)がネジ等の手段を用いて強固に固定される。
【0089】
図15に示す状態から本発明の擁壁固定用金具700を取り外す際は、まず支持対象物を擁壁固定用金具700から取り外し、その後、例えばネジ穴728に上方からフックを引っ掛け、これを僅かに上方に引き上げ、かつ支点部分714を中心にして力点部分712側を上方に回転させることにより、作用点部分716のフックによる連結バー888との係合が解除される。その状態で擁壁固定用金具700は、コンクリート躯体の間隙からそのまま引き出すことができる。
【0090】
(複数のコンクリート躯体の間隙への支持対象物の固定方法)
本発明の擁壁固定用金具を用いて、支持対象物は、例えば以下のようにして複数のコンクリート躯体の間隙に固定される。
【0091】
まず、コンクリート躯体の間隙に、上記擁壁固定用金具が、当該金具本体の支点部分が下方に位置するように、金具本体の該作用点部分の端部から挿入される。次いで、擁壁固定用金具を、支点部分を中心として、例えば下方に回転することにより、力点部分を、水平方向に対して下方に配置された該コンクリート躯体と係合させ、かつ作用点部分を水平方向に対して上方に配置された該コンクリート躯体と係合させられる。その後、擁壁固定用金具の支持部材に支持対象物が固定される。
【0092】
具体的には、図16の(a)に示すように、擁壁934を構成するコンクリート躯体の間に複数の擁壁固定用金具100が取り付けられる。その後、取り付けられた擁壁固定用金具100のそれぞれに、交通看板900などの支持対象物を、例えばボルト、紐、ロープ、結束バンド等を用いて固定される。本発明において固定され得る支持対象物の例としては、ブラケット足場;交通標識、交通看板、交通横断幕、広告看板、広告横断幕などの表示物;などが挙げられる。
【0093】
このように、本発明の擁壁固定用金具は、補強土壁工法を用いて擁壁を形成する作業現場において有用である。また、擁壁形成後では、当該擁壁が有する広大な面積を利用して様々な情報を記載した表示物を例えば暫定的または長期的に表示し得る点においても有用である。
【0094】
さらに、本発明によれば擁壁からの金具の撤去にあたり高所作業車等の特殊重機の使用から解放される。これにより、撤去のための特殊車両および作業資格者の配置や当該配置に要する費用が不要となり、現行の撤去方法に比して簡便かつ安全であり、経済的負担も低減させることができる。
【符号の説明】
【0095】
100,200,300,400,500,600,700 擁壁固定用金具
110,210,310,410,510,610,710 金具本体
112,212,312,412,512,612,612 力点部分
114,214,314,414,514,614,714 支点部分
116,216,316,416,516,616,716 作用点部分
120,220 係合部
122,522 係合面
124,524 六角ボルト
126,526 ナット
128,328 ネジ穴
132,134,532 ストッパ
136,138,536 切欠部分
160,360,460,560,660,760 支持部材
222 受容部
240 連結バー
352,354 L字型部材
456 棒ネジ
513 ボルト穴
515 フック穴
517 シャフト穴
555 シャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18