(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/512 20060101AFI20221109BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20221109BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20221109BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61F13/512 200
A61F13/15 220
A61F13/537 310
A61F13/511 400
(21)【出願番号】P 2018200247
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕喜
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-175074(JP,A)
【文献】特表2018-516707(JP,A)
【文献】特開2011-239835(JP,A)
【文献】特開平10-234776(JP,A)
【文献】特開2017-099458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体とを備え、幅方向に延びる2本の折り線によって長手方向に折り畳まれて個別包装される吸収性物品であって、
前部、股部及び後部を有し、
前記折り線が、前記前部と前記股部との境界部、及び前記股部と前記後部との境界部に設けられ、
前記トップシートと前記吸収体との間に、複数の開口を有する開孔フィルムが配置され、該開孔フィルムが、長手方向に伸長されて配置され
、
前記開孔フィルムの伸長率が、101%以上140%以下である
吸収性物品。
【請求項2】
前記開孔フィルムの開孔径が2mm以下であり、開孔の数が50個/cm
2以上であり、坪量が20g/m
2以上60g/m
2以下である請求項1に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。このような吸収性物品には、体液の吸収性の向上、着用者の装着感の向上、漏れ防止等を図るために、様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、開孔フィルムを吸収性物品の所定の位置に設けることによって、ウェットバックや吸収速度などの吸収性能を向上させる技術がある。肌側面の開孔フィルムの開口面積を非肌側面より大きくすることで、ウェットバックや吸収速度を向上させるというものである。
【0004】
開孔フィルムを用いた吸収性物品として、例えば、特許文献1に、液透過性の表面材、液体保持性の吸収材及び液不透過性の防漏材を有する吸収性物品であって、表面材が、少なくとも、肌当接面層と非肌当接面層とを積層一体化してなる液透過性シートからなり、肌当接面層が、熱可塑性樹脂からなる開孔フィルム又は合成繊維からなる不織布である吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、特許文献2に、吸収性物品を速やかに取り出して装着することができる吸収性物品の包装構造が記載されている。さらに、特許文献3に、吸収体の幅方向に延びており、かつ吸収体の全幅に亘らない長さを有する折曲補助手段が設けられた吸収性物品の個装体であって、折曲補助手段が、吸収体の長手方向に位置をずらして複数本形成された折り曲げ領域を有し、折り曲げ領域が存する部位において折り曲げられている吸収性物品の個装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-66425号公報
【文献】特開2006-320397号公報
【文献】特開2009-153735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、開孔フィルムを設けた特許文献1に記載の吸収性物品では、ウェットバックなどの液戻り防止及び吸収速度に優れてものの、体へのフィット性改善に効果があるものとは言えず、吸収体の吸収性能を十分に発揮できていない。また、特許文献2に記載の包装構造によれば、吸収性物品を長手方向に折り畳んでおり、これによりコンパクトに個別包装されるが、身体へのフィット性の改善は不十分である。さらに、特許文献3に記載の吸収性物品の個装体では、ウェットバックなどの吸収性能が優れているとは言い難い。
生理用ナプキンや使い捨ておむつは、保管しやすさ及び持ち運びやすさの観点から、折られた形で保管されるものがある。しかし、折られた状態では折癖が付きやすく、開封しにくく、さらに、下着への密着性と股間部へのフィット性が損なわれ、装着感の悪化又は漏れに繋がる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、下着への密着性及び股間部へのフィット性が改善され、漏れ防止性及び液戻りの抑制に優れた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、鋭意研究を行った結果、特定の構成の開孔フィルムをトップシートと吸収体との間に設けることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体とを備え、幅方向に延びる2本の折り線によって長手方向に折り畳まれて個別包装される吸収性物品であって、前部、股部及び後部を有し、前記折り線が、前記前部と前記股部との境界部、及び前記股部と前記後部との境界部に設けられ、前記トップシートと前記吸収体との間に、複数の開口を有する開孔フィルムが配置され、該開孔フィルムが、長手方向に伸長されて配置されている吸収性物品である。
【0009】
前記開孔フィルムの伸長率は101%以上140%以下であることが好ましい。
【0010】
前記開孔フィルムの開孔径は2mm以下であり、開孔の数は50個/cm2以上であり、坪量は20g/m2以上60g/m2以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収性物品によれば、開孔フィルムを長手方向に沿って延ばして成形するもので、開孔フィルムによる液透過性及び液戻り性抑制が向上するとともに、所定の長手方向に伸長して成形することにより、弾力が生じるため、吸収性物品の長手方向両端部が反り返り、下着への密着性及び股間部へのフィット性が改善され、漏れ防止性及び液戻りの抑制に優れた吸収性物品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付する。
また、本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、非肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1としては、ベビー用又は成人用を問わず、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつが例示されるが、これに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。
【0014】
[吸収性物品]
図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品1をトップシート10側から見た平面図である。
図2は、
図1におけるX
1-X
1断面図である。
図1及び
図2に示すように、吸収性物品1は、肌当接面側に配された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して非肌当接面側に配置された液不透過性のバックシート20と、トップシート10の直下にセカンドシート40を備え、セカンドシート40とバックシート20との間に配置された吸収体30と、を備える。これにより、吸収体30は、トップシート10とバックシート20の間に挟まれた構造となっている。
【0015】
吸収性物品1は、
図1に示すように、前部aと股部bとの境界部、及び股部bと後部cとの境界部に、幅方向Xに延びる2本の折り線が設けられている。2本の折り線101によって長手方向Yに折り畳まれて個別包装されるものである。吸収性物品1は、前部a、股部b及び後部cを有する。
さらに、本発明の吸収性物品1には、トップシート10と吸収体30との間に、複数の開口を有する開孔フィルムが配置され、開孔フィルム70は、長手方向Yに伸長されて配置されている。
吸収性物品1の、長手方向の寸法は100mm以上800mm以下、幅方向の寸法は50mm以上500mmであることが好ましい。吸収性物品1の寸法を上記の範囲に調整することにより、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等に適した吸収性物品1を得ることができる。
【0016】
吸収性物品1には、
図2に示すように、使用者が排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート10上に、立体ギャザー用弾性部材を有する一対の立体ギャザー60を備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー60の外端は、バックシート20に固定され、その内端はトップシート10に固着され、その中央はトップシート10に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシートが配される。立体ギャザー用弾性部材を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー60が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
以下、吸収性物品1の構成要素の詳細について説明する。
【0017】
<トップシート>
トップシート10は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0018】
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート10の坪量は、18g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体30へと誘導するために必要とされる吸収体30を覆う形状であればよい。
【0019】
<バックシート>
バックシート20は、吸収体30が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0020】
強度及び加工性の点から、バックシート20の坪量は、15g/m2以上60g/m2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート20には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート20に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート20にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0021】
<開孔フィルム>
吸収性物品1は、
図2に示すように、トップシート10と吸収体30との間に、複数の開孔を有する開孔フィルム70が配置されている。開孔フィルム70は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性及び液拡散性を備えていることが好ましい。開孔フィルム70の坪量は、強度及び加工性の点から、20g/m
2以上60g/m
2以下であることが好ましく、23g/m
2以上30g/m
2以下であることがより好ましい。また、液透過性の点から、開孔の数は50個/cm
2以上が好ましい。さらに、液拡散性の観点から、開孔径は2mm以下であることが好ましく、0.50mm以上0.65mm以下であることがより好ましい。開孔フィルム70の開孔の数、開孔径及び坪量を上記範囲とすることにより、強度及び加工性の点で優れ、液透過性及び液拡散性に優れた開孔フィルム70を得ることができる。開孔フィルム70の材質は、例えば、ポリエチレンが挙げられる。
【0022】
また、本発明における吸収性物品1の開孔フィルム70は伸長させて配置される。開孔フィルム70の伸長率は、以下の式から算出する。
伸長率(%)=(長手方向に伸長させた時の開孔フィルムの寸法)/(伸長させない状態での開孔フィルムの寸法)×100
開孔フィルム70の伸長率は、101%以上140%以下であることが好ましく、105%以上120%以下であることがより好ましい。140%を超えた場合、開孔フィルム70の破断が生じるため好ましくない。
【0023】
トップシート10と吸収体30との間に開孔フィルム70を配置し、かつ、伸長した状態で開孔フィルム70を吸収体30に配置することで、弾性により吸収体の長手方向両端部のそれぞれが反り返ることで、折癖が改善され、使用時に開封し易く、股間部へのフィット性が改善され、かつ液戻りを抑制することができる。
【0024】
<吸収体>
本発明の吸収性物品1において、吸収体30の長手方向の最長幅の寸法LOは、100mm以上800mm以下であることが好ましく、150mm以上500mm以下であることがより好ましい。また、吸収体30の幅方向の最長幅の寸法WOは、50mm以上500mm以下であることが好ましく、70mm以上105mm以下であることがより好ましい。また、吸収体30は、
図2に示すように、肌当接面側に位置する上層吸収体301と、非肌当接面側に位置する下層吸収体302との二層からなっていてもよく、上層吸収体301と下層吸収体302の間に、キャリアシート50を配置してもよい。
【0025】
(吸収性繊維)
吸収体30は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)とを含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであればよく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体30に、基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、100g/m2以上800g/m2以下であることが好ましく、325g/m2以上615g/m2以下であることがより好ましい。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収させることができる。
【0026】
(高吸収性ポリマー)
吸収体30の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであればよく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
【0027】
吸収体30に含有されるSAPの坪量は、240g/m2以上450g/m2以下であることが好ましく、245g/m2以上445g/m2以下であることがより好ましい。SAPの坪量を上記数値範囲内とすることにより、吸収体30におけるゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収体30において多量の体液を吸収させることができる。
また、吸収体30において、フラッフパルプの重量に対する高吸収性ポリマーの重量の比率である、高吸収性ポリマーの重量/フラッフパルプの重量×100(%)が、40%以上120%以下であることが好ましく、50%以上100%以下であることがより好ましい。
【0028】
吸収体30において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートでもよい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体30の形状の安定化の目的から、吸収体30をキャリアシート50に包んでもよい。キャリアシート50の基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシート50を複数備える場合は、複数のキャリアシート50の基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0029】
<セカンドシート>
本発明において、
図2に示すように、トップシート10と開孔フィルム70との間に、吸収性物品1の液拡散性を向上させ、かつ、開孔フィルム70の硬さを抑制し、肌触りを良くするために、液拡散性のセカンドシート40を配置することが好ましい。
セカンドシート40の基材は、体液の透過速度がトップシート10より速く、体液を吸収体30へ素早く拡散するものであればよく、例えば、親水性不織布が好ましく、特に、エアスルー不織布が好ましい。セカンドシート40の厚さは、0.1mm以上が好ましく、その坪量は、10g/m
2以上60g/m
2以下が好ましく、15g/m
2以上40g/m
2以下がより好ましい。厚さが0.1mm未満、又は、坪量が10g/m
2未満もしくは60g/m
2より大きいと、吸収体30の上面全体への液体の拡散が十分に行われない。また、セカンドシート40の形状は、体液が、くまなく吸収体30に拡散するように、吸収体30の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0030】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0031】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(吸収性物品の作製)
図2に示す構成を有する吸収性物品を作製した。上層吸収体及び下層吸収体として、基材であるフラッフパルプ7gの中に、SAP6gを混合して形成したものを使用した。液透過性のトップシートとして、エアスルー不織布(坪量25g/m
2)を用いた。液不透過性のバックシートとして、通気性ポリエチレンシート(坪量32g/m
2)を用いた。セカンドシートとしてエアスルー不織布(坪量30g/m
2)を用いた。立体ギャザーとして、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布(坪量15g/m
2)を用いた。上層吸収体と下層吸収体との間に木材パルプよりなるキャリアシート(坪量16g/m
2)を用いた。また、セカンドシートの下に開孔フィルム(坪量26g/m
2)を配置した。
吸収性物品の寸法は、長手方向が273mm、幅105mmとした。吸収体の寸法は、長手方向が245mm、幅89mmとした。
さらに、トップシート、バックシート、吸収体を一体化する際に、ホットメルト接着剤を用いてトップシートと吸収体上面とを接合し、吸収性物品を作製した。
なお、開孔フィルムの伸長率(%)は前述の式から算出した。
【0032】
[実施例2、比較例1及び2]
吸収性物品及び吸収体の詳細を、表1のように変更した以外は実施例1と同様に吸収体物品を作製した。
【0033】
[評価]
作製した吸収性物品のフィット性、吸収性物品表面の肌触り、吸収速度、及び液戻り量を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0034】
(下着への貼り易さ)
20名のパネラーにより、吸収性物品を下着に貼り付けた時の貼り易さについて「貼り易い」、「どちらでもない」、「貼りにくい」のいずれか選択で調査を行い、以下の基準に基いて評価を行った。
◎:「貼り易い」が16人以上20人以下
○:「貼り易い」が11人以上15人以下
△:「貼り易い」が6人以上10人以下
×:「貼り易い」がいないか、1人以上5人以下
【0035】
(フィット性)
20名のパネラーにより、吸収性物品の着用時のフィット性について「フィット性が良い」、「どちらでもない」、「フィット性が悪い」のいずれか選択で調査を行い、以下の基準に基いて評価を行った。
◎:「フィット性が良い」が16人以上20人以下
○:「フィット性が良い」が11人以上15人以下
△:「フィット性が良い」が6人以上10人以下
×:「フィット性が良い」がいないか、1人以上5人以下
【0036】
(吸収性物品表面の肌触り)
8名のパネラーが、吸収性物品の表面の肌触り感を評価した。吸収性物品の表面を触り、「柔らかく感じた」評価者が6人以上8人以下の場合を「○」、「柔らかく感じた」評価者が3人以上5人以下の場合を「△」、「柔らかく感じた」評価者が1人もしくは2人の場合、又は「柔らかく感じた」評価者が1人もいない場合を「×」とした。
【0037】
(吸収速度)
底面積16.8cm2の円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定冶具を、吸収性物品1の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水それぞれ40mlを投下し、生理食塩水が吸収性物品1に接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間を計測した。
【0038】
(液戻り量)
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水120mlを吸収体の中心部に向かって注水し、10分間放置した後、生理食塩水の吸収部位に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製 No.2 ろ紙、直径55mm)を置き、その上に35kgf/cm2の錘を乗せ、30秒経過後、ろ紙の重量を測り、ろ紙の重量差を液戻り量とした。
【0039】
【0040】
【0041】
表2の結果から、開孔フィルムを伸長して配置した実施例1、2は、折癖を改善しやすいため下着に貼り易く、体へのフィット性に優れ、吸収速度に優れ、液戻りもしにくいということが分かった。
一方、開孔フィルムを含まない比較例1は吸収性物品の折癖が強いため、下着への貼り易さ、フィット性、表面の肌触り、模擬尿(生理食塩水)の吸収速度に劣り、液戻り量も多いものであった。また、開孔フィルムを含むが、開孔フィルムを伸長せず配置した比較例2は、吸収性物品の折癖があるために下着に貼りにくく、フィット性も悪かった。
本発明の吸収性物品によれば、排尿などにより受液した際、素早く濡れ広がることで、拡散性や液透過性が改善され、液戻り防止性を向上させることができる、吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 吸収性物品
10 (液透過性)トップシート
101 折り線
20 (液不透過性)バックシート
30、301、302 吸収体
40 セカンドシート
50 キャリアシート
60 立体ギャザー
70 開孔フィルム
a 前部
b 股部
c 後部