IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社の特許一覧

特許7171988ケーブル端末加工装置及びケーブル端末加工方法
<>
  • 特許-ケーブル端末加工装置及びケーブル端末加工方法 図1
  • 特許-ケーブル端末加工装置及びケーブル端末加工方法 図2
  • 特許-ケーブル端末加工装置及びケーブル端末加工方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ケーブル端末加工装置及びケーブル端末加工方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20221109BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H02G1/12 075
H02G1/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019200437
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021078164
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000115245
【氏名又は名称】ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 純一
(72)【発明者】
【氏名】内野 勝
(72)【発明者】
【氏名】山口 京太
(72)【発明者】
【氏名】井上 龍起
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-40114(JP,U)
【文献】実開昭55-24048(JP,U)
【文献】特開昭57-103280(JP,A)
【文献】特公昭48-11866(JP,B1)
【文献】特開平11-332050(JP,A)
【文献】特開昭50-36984(JP,A)
【文献】特開昭52-29985(JP,A)
【文献】特開平11-218618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
H02G 1/14
H01B 13/00
H01R 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの端末部の被覆を剥がして導体を露出させるためのケーブル端末加工装置であって、
ケーブルの端末部の周囲を取り囲む誘導コイルと、該誘導コイルに交流電流を流してケーブルの端末部の導体を誘導加熱する交流電源と、ケーブルの端末部を挟持するケーブル端末挟持部と、ケーブルの中央部を挟持しつつケーブル端末挟持部に対して相対的に離間する方向に移動可能なケーブル中央挟持部と、を備えたことを特徴とするケーブル端末加工装置。
【請求項2】
ケーブルの端末部の被覆を剥がして導体を露出させるためのケーブル端末加工装置であって、
ケーブルの端末部の周囲を取り囲む誘導コイルと、該誘導コイルに交流電流を流してケーブルの端末部の導体を誘導加熱する交流電源と、ケーブルの中央部を挟持するケーブル中央挟持部と、ケーブルの端末部を挟持しつつケーブル中央挟持部に対して相対的に離間する方向に移動可能なケーブル端末挟持部と、を備えたことを特徴とするケーブル端末加工装置。
【請求項3】
前記誘導コイルを外周側に保持するコイル保持体が設けられ、該コイル保持体は、絶縁体からなる柱状とされると共に、その端面に、ケーブルの端末部を挿入可能な挿入穴が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル端末加工装置。
【請求項4】
前記コイル保持体に前記ケーブル端末挟持部が装備されたことを特徴とする請求項3に記載のケーブル端末加工装置。
【請求項5】
前記コイル保持体に前記ケーブル中央挟持部が装備され、該ケーブル中央挟持部は、前記誘導コイルの中心線方向で外側に配置されたことを特徴とする請求項4に記載のケーブル端末加工装置。
【請求項6】
前記ケーブルが通電可能な心線を有する歯付ベルトとされたことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のケーブル端末加工装置。
【請求項7】
前記誘導コイルとして、中心軸方向に複数のコイルが並設されたことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のケーブル端末加工装置。
【請求項8】
前記ケーブルの中央部を覆って電磁波を遮断する導電性カバーが設けられたことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のケーブル端末加工装置。
【請求項9】
ケーブルの端末部の被覆を剥がして導体を露出させるためのケーブル端末加工方法であって、
誘導コイルの内側にケーブルの端末部を挿入し、前記誘導コイルに交流電流を流してケーブルの端末部の導体を誘導加熱することにより、ケーブルの端末部の被覆のうちの導体との接着部分を軟化させる誘導加熱工程と、ケーブルの端末部をケーブル端末挟持部で挟持すると共に、ケーブルの中央部をケーブル中央挟持部で挟持する挟持工程と、を備え、誘導加熱工程及び挟持工程の後に、ケーブル中央挟持部をケーブル端末挟持部に対して相対的に離間する方向に移動させて、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜く引抜工程が設けられたことを特徴とするケーブル端末加工方法。
【請求項10】
ケーブルの端末部の被覆を剥がして導体を露出させるためのケーブル端末加工方法であって、
誘導コイルの内側にケーブルの端末部を挿入し、前記誘導コイルに交流電流を流してケーブルの端末部の導体を誘導加熱することにより、ケーブルの端末部の被覆のうちの導体との接着部分を軟化させる誘導加熱工程と、ケーブルの中央部をケーブル中央挟持部で挟持すると共に、ケーブルの端末部をケーブル端末挟持部で挟持する挟持工程と、を備え、誘導加熱工程及び挟持工程の後に、ケーブル端末挟持部をケーブル中央挟持部に対して相対的に離間する方向に移動させて、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜く引抜工程が設けられたことを特徴とするケーブル端末加工方法。
【請求項11】
前記誘導加熱工程の後に前記挟持工程が設けられ、前記誘導コイルの内側から誘導加熱されたケーブルの端末部を取り出して、ケーブルの端末部及び中央部を挟持することを特徴とする請求項9又は10に記載のケーブル端末加工方法。
【請求項12】
前記挟持工程の後に前記誘導加熱工程が設けられ、前記誘導コイルの内側にケーブルの端末部を挿入した状態で、ケーブルの端末部及び中央部を挟持し、前記導体を誘導加熱することを特徴とする請求項9又は10に記載のケーブル端末加工方法。
【請求項13】
ケーブル中央挟持部に対してケーブル端末挟持部から離間させる方向に力を負荷しつつ、前記導体を誘導加熱することを特徴とする請求項12に記載のケーブル端末加工方法。
【請求項14】
ケーブルの端末部と中央部との境界の被覆に切断溝を形成しておくことを特徴とする請求項9~13のいずれかに記載のケーブル端末加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば歯付ベルトからなる通電用ケーブルの端末部の被覆を剥がして導体を露出させるためのケーブル端末加工装置及びケーブル端末加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、通電用のケーブルには、導体を露出させて電気接続を可能にするよう端末部の被覆を剥がす加工が施されており、通電用ケーブルとして通常用いられる銅線などでは、例えば現場で所望の長さに切断した後、専用の工具を用いて端末部の被覆を剥がすことが多い。
【0003】
ただ、例えば特許文献1が開示するように、ウレタン樹脂などからなるベルト本体に通電可能な心線を埋設した構造の歯付ベルトをケーブルとして用いることがあり、この場合、ケーブルの端末から導体としての心線を露出させる際に、銅線などの被覆除去に用いる工具で、被覆としてのベルト本体を剥がすことはできない。
【0004】
これに対し、ケーブルとしての歯付ベルトの端末部からベルト本体を剥がす方法として、ベルト本体を溶剤で溶かして除去する方法や、ベルト本体を加熱軟化させて除去する方法が考えられる。これらの方法のうち、溶剤による方法は、ベルト本体の除去に多大の作業時間を要するだけでなく、その溶剤の取扱いが難しく危険作業を伴うことから、ベルト本体の除去には、ベルト本体を加熱軟化させる方法を採用する方が好ましいといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-202907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、歯付ベルトから端末部のベルト本体を加熱軟化させて除去する場合、ヒーターで加熱した金型を用いて歯付ベルトの端末部の温度を上昇させ、ベルト本体と心線との接着部を軟化させた後、端末部のベルト本体から心線を引き抜くことで、ケーブルの端末から導体としての心線を露出させることが多い。
【0007】
しかしながら、金型を用いて歯付ベルトの端末部を外側から加熱する場合、内部の心線を引き抜くことができる程度までベルト本体を加熱するのに要する時間が長くなりやすく、一方、端末部におけるベルト本体の全体が過度に軟化することにより、引き抜いた心線にウレタン樹脂が残留するなどの品質低下を生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、ケーブルの端末部の被覆を短時間で過不足なく加熱し、その被覆を除去して導体を露出させることのできるケーブル端末加工装置及びケーブル端末加工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るケーブル端末加工装置は、ケーブルの端末部の被覆を剥がして導体を露出させるためのものであり、ケーブルの端末部の周囲を取り囲む誘導コイルと、この誘導コイルに交流電流を流してケーブルの端末部の導体を誘導加熱する交流電源と、ケーブルの端末部を挟持するケーブル端末挟持部と、ケーブルの中央部を挟持しつつケーブル端末挟持部に対して相対的に離間する方向に移動可能なケーブル中央挟持部と、を備えたものである。
【0010】
上記構成によれば、誘導コイルに交流電流を流してケーブルの端末部の導体を誘導加熱するので、導体から伝わる熱で、ケーブル端末部における導体とその周囲の被覆との接着部分を軟化させることができる。これにより、ケーブル中央挟持部をケーブル端末挟持部から離間させるようにして、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜くことができ、ケーブル端末部から被覆を除去して導体を露出させることができる。
【0011】
さらに、ケーブル端末部を外側から加熱することなく、誘導加熱で導体を加熱するので、導体と被覆との接着部分を軟化させて被覆を除去するのに要する時間を短くすることができる。しかも、導体を直に加熱する分、被覆の全体が過度に軟化するのを防止することができ、被覆の形状を維持して導体の引き抜きを容易にすると共に、溶けた被覆が導体に残留するのを抑えて、加工後のケーブルの品質を向上させることができる。
【0012】
ここで、誘導加熱は、誘導コイルに高周波の交流電流を流すことにより、誘導コイルの内側にある導体に渦電流を発生させて加熱するものであり、誘導コイルの巻き数及び巻き径や、交流電流の周波数及び電流値、導体の素材、断面積及び本数、加熱時間などをパラメータとして管理することにより、適切な加工条件に設定することができる。
【0013】
また、上記構成では、ケーブル中央挟持部をケーブル端末挟持部に対して相対的に離間する方向に移動可能にするのに対し、これを言い換えて、ケーブル端末挟持部をケーブル中央挟持部に対して相対的に離間する方向に移動可能にしてもよい。
【0014】
すなわち、本発明は、ケーブルの端末部の被覆を剥がして導体を露出させるためのケーブル端末加工装置であって、ケーブルの端末部の周囲を取り囲む誘導コイルと、該誘導コイルに交流電流を流してケーブルの端末部の導体を誘導加熱する交流電源と、ケーブルの中央部を挟持するケーブル中央挟持部と、ケーブルの端末部を挟持しつつケーブル中央挟持部に対して相対的に離間する方向に移動可能なケーブル端末挟持部と、を備えたことを特徴とするケーブル端末加工装置を提供する。
【0015】
また、誘導コイルを外周側に保持するコイル保持体を設け、このコイル保持体を絶縁体からなる柱状とすると共に、その端面に、ケーブルの端末部を挿入可能な挿入穴を形成するようにしてもよい。
【0016】
この構成によると、絶縁体からなるコイル保持体の外周側に誘導コイルを保持するので、コイル保持体にケーブルの端末部を挿入することにより、導体を誘導加熱する際、ケーブルの端末部を安定した状態で、誘導コイルの内側に位置させることができる。
【0017】
また、コイル保持体にケーブル端末挟持部を装備するようにしてもよい。
【0018】
この構成によると、導体を誘導加熱する際、ケーブル端末挟持部でケーブル端末部を挟持することができ、より安定した状態で、誘導コイルの内側に位置させることができる。しかも、導体を誘導加熱して被覆との接着部分を軟化させた後、ケーブル中央挟持部でケーブルの中央部を挟持して離間させるだけで、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜くことができる。
【0019】
また、コイル保持体にケーブル中央挟持部を装備し、このケーブル中央挟持部を誘導コイルの中心線方向で外側に配置するようにしてもよい。
【0020】
この構成によると、導体を誘導加熱する際、ケーブル端末部に加えてケーブル中央部を挟持することができ、ケーブル端末部をより安定した状態で誘導コイルの内側に位置させることができる。しかも、導体と被覆との接着部分を軟化させた後、ケーブル中央挟持部をケーブル端末挟持部から離間させるだけで、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜くことができ、適宜、ケーブル端末加工装置を工具化して現場での使用を容易にすることができる。
【0021】
また、ケーブルを通電可能な心線を有する歯付ベルトとするようにしてもよい。
【0022】
この構成によると、歯付ベルトの心線を導体とすると共に、ベルト本体を被覆として通電用のケーブルを構成するので、一般的な通電用のケーブルに用いられる工具では、その被覆を剥がすことができないが、本発明のケーブル端末加工装置を用いることにより、その被覆を剥がすことができ、本発明の好適な態様を提供することができる。
【0023】
また、誘導コイルとして、中心軸方向に複数のコイルを並設するようにしてもよい。
【0024】
この構成によると、各コイルの巻き数や電流値を個別に設定して、誘導加熱される導体の温度の偏りを阻止するなど、複数のコイルで構成される誘導コイルによる誘導加熱の温度分布を所望の分布に設定することができる。これにより、被覆を剥がすのに適切な温度分布に設定することができ、過度の加熱や加熱不足による加工トラブルを防止して、品質や生産性を向上させることができる。
【0025】
また、ケーブルの中央部を覆って電磁波を遮断する導電性カバーを設けるようにしてもよい。
【0026】
この構成によると、例えば鉄などの電磁波を遮断する金属で導電性カバーを構成し、この導電性カバーでケーブル中央部を覆って保護するので、被覆を残すケーブル中央部が誘導加熱されるのを防止することができる。
【0027】
また、本発明は、ケーブルの端末部の被覆を剥がして導体を露出させるためのケーブル端末加工方法を提供する。
【0028】
すなわち、本発明は、誘導コイルの内側にケーブルの端末部を挿入し、前記誘導コイルに交流電流を流してケーブルの端末部の導体を誘導加熱することにより、ケーブルの端末部の被覆のうちの導体との接着部分を軟化させる誘導加熱工程と、ケーブルの端末部をケーブル端末挟持部で挟持すると共に、ケーブルの中央部をケーブル中央挟持部で挟持する挟持工程と、を備え、誘導加熱工程及び挟持工程の後に、ケーブル中央挟持部をケーブル端末挟持部に対して相対的に離間する方向に移動させて、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜く引抜工程が設けられたことを特徴とするケーブル端末加工方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、誘導コイルの内側にケーブルの端末部を挿入し、前記誘導コイルに交流電流を流してケーブルの端末部の導体を誘導加熱することにより、ケーブルの端末部の被覆のうちの導体との接着部分を軟化させる誘導加熱工程と、ケーブルの中央部をケーブル中央挟持部で挟持すると共に、ケーブルの端末部をケーブル端末挟持部で挟持する挟持工程と、を備え、誘導加熱工程及び挟持工程の後に、ケーブル端末挟持部をケーブル中央挟持部に対して相対的に離間する方向に移動させて、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜く引抜工程が設けられたことを特徴とするケーブル端末加工方法を提供する。
【0030】
これらの構成によると、上記のケーブル端末加工装置の構成を採用することによる効果と同様の効果を奏することができる。
【0031】
本発明の方法において、誘導加熱工程と挟持工程とは、どちらを先に行ってもよく、例えば、誘導加熱工程の後に挟持工程を設け、誘導コイルの内側から誘導加熱したケーブルの端末部を取り出して、ケーブルの端末部及び中央部を挟持するようにしてもよい。
【0032】
この構成によると、ケーブルの端末部を誘導加熱して誘導コイルの内側から取り出した後、ケーブルの端末部及び中央部を挟持して、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜くので、ケーブル端末部の誘導加熱と、被覆からの導体の引き抜きとについて、それぞれ専用の装置を用いることができ、その分、各装置を精巧かつ単純化することができる。
【0033】
これとは反対に、挟持工程の後に誘導加熱工程を設け、誘導コイルの内側にケーブルの端末部を挿入した状態で、ケーブルの端末部及び中央部を挟持し、導体を誘導加熱することもできる。
【0034】
この構成によると、ケーブルの端末部及び中央部を挟持した状態でケーブルの端末部を誘導加熱するので、その誘導加熱の後、ケーブルの端末部を誘導コイルの内側に挿入したまま、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜くことができる。これにより、ケーブル端末部を誘導加熱する装置と、被覆から導体を引き抜く装置とを一体化して、現場などで被覆を剥がすための工具として構成することができる。
【0035】
また、挟持工程の後に誘導加熱工程を設ける場合、ケーブル中央挟持部に対してケーブル端末挟持部から離間させる方向に力を負荷しつつ、導体を誘導加熱するようにしてもよい。
【0036】
この構成によると、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜くような力を負荷しながら誘導加熱するので、導体と被覆との接着部分が必要十分なだけ軟化した時点で、被覆から導体が引き抜かれる。これにより、ケーブル端末部を必要十分なだけ誘導加熱することができ、被覆が過度に軟化するのを防止することができる。
【0037】
また、ケーブルの端末部と中央部との境界の被覆に切断溝を形成しておくようにしてもよい。
【0038】
この構成によると、例えばレーザー加工によって被覆に切断溝を形成しておくので、誘導加熱した後、切断溝を境界として、ケーブル中央部とケーブル端末部との被覆を容易に離間させることができる。これにより、ケーブルの端末部の被覆から導体を引き抜く際、あらかじめ設定した正確な位置で、ケーブルの端末部の被覆と中央部の被覆とを分離させることができる。
【発明の効果】
【0039】
以上のとおり、本発明によると、ケーブル端末部の導体を誘導加熱して、ケーブル端末部における導体とその周囲の被覆との接着部分を軟化させ、ケーブル端末部から導体を引き抜くようにして、ケーブル端末部の導体を露出させるようにしている。
【0040】
これにより、ケーブルの端末部の被覆を過度に軟化させることなく、短時間で過不足なく加熱することができ、加熱に要する時間を短くすると共に、温度管理の手間を省略することができる。しかも、被覆の過度な軟化を防止するので、その被覆を導体に残留させることなく除去することができる分、導体に残る被覆の残留物を除去する手間を省略することができ、ケーブル端末加工の作業効率を向上させることができる。
【0041】
さらに、例えば歯付ベルトをケーブルとして採用する場合であっても、銅線のように容易に被覆を剥がすことができるので、あらかじめケーブル端末部の被覆を剥がした所定の長さのケーブルを用意することなく、ケーブルを現場で所望の長さに切断して、その端末部の被覆を剥がすことができ、ケーブルの汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係るケーブル端末加工装置のうちの誘導加熱装置の斜視図
図2】本発明に係るケーブル端末加工装置のうちの引抜装置の斜視図
図3】本発明に係るケーブル端末加工方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係るケーブル端末加工装置及びケーブル端末加工方法を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0044】
図1及び図2に示すように、ケーブル端末加工装置1は、ケーブル2の端末部3の被覆4を剥がして導体5を露出させるためのものであり、ケーブル2の端末部3の導体5を誘導加熱する誘導加熱装置6と、ケーブル2の端末部3の被覆4から導体5を引き抜く引抜装置7とから構成されたものである。
【0045】
ケーブル2は、例えば、スチールコードなどの通電可能な心線を有する歯付ベルトとされ、その心線が導体5とされ、ウレタン樹脂などで形成されたベルト本体が被覆4とされる。
【0046】
誘導加熱装置6は、合成樹脂、セラミックなどの絶縁体からなる円柱状のコイル保持体8と、コイル保持体8の外周側に電線を螺旋状に巻き付けて構成された誘導コイル9と、誘導コイル9に交流電流を流す交流電源10と、を備えている。
【0047】
コイル保持体8の端面には、挿入穴11が形成され、この挿入穴11にケーブル2の端末部3を挿入することにより、端末部3の周囲が誘導コイル9で取り囲まれる。この状態で、交流電源10から誘導コイル9に交流電流を流すことにより、ケーブル2の端末部3の導体5が誘導加熱されるようになっている。
【0048】
引抜装置7は、ケーブル2の端末部3を挟持するケーブル端末挟持部12と、ケーブル2の中央部13を挟持しつつケーブル端末挟持部12に対して相対的に離間する方向に移動可能なケーブル中央挟持部14と、を備えている。
【0049】
ケーブル端末挟持部12は、移動不能に設置された金属製の固定側ベース部15と、ベース部15の上面側に装着される金属製の固定側蓋部16とからなり、固定側ベース部15と固定側蓋部16との間にケーブル2の端末部3を上下に挟持しつつ、挟持した端末部3を保温することができるようになっている。
【0050】
ケーブル中央挟持部14は、レール17に沿って移動可能なスライダー18と、スライダー18の上面に固定された金属製の移動側ベース部19と、移動側ベース部19の上面側に装着される金属製の移動側蓋部20とからなり、移動側ベース部19と移動側蓋部20との間にケーブル2の中央部13を上下に挟持するようになっている。
【0051】
次に、上記のケーブル端末加工装置を用いてケーブル端末を加工する方法を説明する。
【0052】
まず、事前の準備として、歯付ベルトを所望の長さ及び幅に切断してケーブル2を形成し、その端末部3と中央部13との境界の被覆4に、例えばレーザー加工によって切断溝21を形成する。
【0053】
次いで、誘導加熱工程として、誘導加熱装置6のコイル保持体8の挿入穴11にケーブル2の端末部3を挿入することによって、この端末部3を誘導コイル9の内側に挿入し、この状態で、交流電源10から誘導コイル9に高周波の交流電流を例えば数秒程度だけ流す。これにより、誘導コイル9の内部に高周波の交番磁界が発生し、端末部3の導体5が渦電流によって誘導加熱され、導体5からの伝熱によって、端末部3の被覆4のうちの導体5との接着部分が軟化し、その接着力が低下する(図3(a)参照)。
【0054】
挟持工程として、誘導加熱工程の後、誘導加熱されたケーブル2の端末部3を誘導加熱装置6から取り出して、ケーブル2の端末部3及び中央部13をそれぞれケーブル端末挟持部12及びケーブル中央挟持部14で挟持する。その際、ケーブル端末挟持部12の固定側ベース部15と固定側蓋部16との間に端末部3を上下に挟持すると共に、ケーブル中央挟持部14の移動側ベース部19と移動側蓋部20との間に中央部13を上下に挟持し、挟持した端末部3を保温する。
【0055】
引抜工程として、挟持工程の後、端末部3の被覆4と導体5との接着部分の接着力が低下した状態で、ケーブル中央挟持部14のスライダー18をレール17に沿ってケーブル端末挟持部12から離間する方向に移動させる。これにより、スライダー18の移動に伴って、ケーブル2の中央部13を挟持する移動側ベース部19及び移動側蓋部20がケーブル端末挟持部12から離間し、切断溝21の位置で被覆4が引き裂かれた後、固定側ベース部15及び固定側蓋部16で挟持された端末部3の被覆4から導体5が引き抜かれて、ケーブル2の端末部3の導体5が露出する(図3(b)参照)。
【0056】
その後、露出した導体5に、絶縁素材からなる収縮チューブやホットメルトなどのコーキング材、絶縁テープなどで絶縁加工する。その際、使用目的に応じて、並列する複数本の導体5を所望の導体抵抗値となるように、被膜を除去した部分で捻じり合わせてスケアを増やした後、収縮チューブでまとめるようにすればよい。
【0057】
さらに、圧着端子やコネクタなどのような電気配線及び電気接続を可能にする部品を露出した導体5の先端に取り付けた後、導通・耐圧・絶縁・抵抗値などについての電気検査など、加工部を含む品質検査を行って、ケーブル端末の加工が完了する。
【0058】
上記構成によれば、例えばケーブル2としての歯付ベルトの端末部3を加熱する手段に誘導加熱を用いて、端末部3における被覆4としてのベルト本体を介することなく、導体5としての心線を直に加熱するようにしている。さらに、導体5の熱を伝えることにより、被覆4及び導体5の接着部分を軟化させ、その後、端末部3の被覆4から導体5を引き抜いて、ケーブル端末から導体5を露出させるようにしている。
【0059】
これにより、例えば数秒で接着部分を軟化させて、ケーブル端末の加工時間を大幅に短縮することができ、しかも、被覆4の全体が過度に軟化するのを防止して、その樹脂が導体5に残留付着するのを抑えることができ、導体5に付着した樹脂を除去する手間を省略して、ケーブル2の加工の作業性を大幅に向上させることができる。さらに、加熱時間や導体5の本数などの管理が容易な項目をパラメータとすることができ、加工条件の調整を容易にすることができる。
【0060】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、誘導加熱工程の後に挟持工程を設ける代わりに、挟持工程の後に誘導加熱工程を設けるようにしてもよく、すなわち、誘導コイル9の内側にケーブル2の端末部3を挿入した状態で、ケーブル2の端末部3及び中央部13を挟持した後、導体5を誘導加熱するようにしてもよい。
【0061】
挟持工程の後に誘導加熱工程を設ける場合、ケーブル2の端末部3を挟持するには、ケーブル端末挟持部12を合成樹脂、セラミックなどの絶縁素材で形成し、これをコイル保持体8に装備すればよい。また、ケーブル2の中央部13を挟持するには、ケーブル中央挟持部14をコイル保持体8の誘導コイル9の外部に位置するように装備すればよい。これにより、ケーブル端末加工装置1を小形化して、現場などで使用可能なハンディー工具を構成することができる。
【0062】
さらに、ケーブル中央挟持部14をケーブル端末挟持部12から離間させるように力を負荷した状態で、導体5を誘導加熱するようにしてもよい。これにより、接着部分が必要最小限だけ軟化した際に、導体5が自動的に引き抜かれるので、誘導加熱を最小限に抑えて、加熱時間を極力短くすると共に、導体5への樹脂の残留付着を最小限に抑えることができる。
【0063】
また、中心軸方向に複数のコイルを並設して誘導コイル9を構成するようにしてもよい。例えば、3つのコイルを中心軸方向に並べ、導体5が加熱されやすい中央のコイルに流す電気の電流値を低くし、両側のコイルに流す電気の電流値を高くすることにより、ケーブル2の端末部3の導体5をその長さ方向に沿って均一に加熱することができる。電流値の他にも、加熱時間やコイルの巻き数によって、誘導加熱の温度分布を制御することができる。
【0064】
また、誘導コイル9の内部に挿入した部位だけ、誘導加熱によって、その接着部分を軟化させることができるが、ケーブル2の中央部13を導電性カバーで覆って電磁波を遮断するようにしてもよい。これにより、被覆4を残す中央部13の導体5が誘導加熱されて、その接着部分が軟化するのをより確実に阻止することができ、端末加工後のケーブル2の品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ケーブル端末加工装置
2 ケーブル
3 端末部
4 被覆
5 導体
6 誘導加熱装置
7 引抜装置
8 コイル保持体
9 誘導コイル
10 交流電源
11 挿入穴
12 ケーブル端末挟持部
13 中央部
14 ケーブル中央挟持部
15 固定側ベース部
16 固定側蓋部
17 レール
18 スライダー
19 移動側ベース部
20 移動側蓋部
21 切断溝
図1
図2
図3