(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】フォークリフトの作業部視認装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
B66F9/24 P
B66F9/24 Z
(21)【出願番号】P 2021022895
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】301053888
【氏名又は名称】アールアンドピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088867
【氏名又は名称】西野 卓嗣
(72)【発明者】
【氏名】山下 満
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2007-0000864(KR,A)
【文献】特開2013-252970(JP,A)
【文献】実開平02-007295(JP,U)
【文献】実開昭62-026396(JP,U)
【文献】特開2003-246597(JP,A)
【文献】特開2019-026474(JP,A)
【文献】実開平05-054496(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、当該車両本体に対して相対移動可能に装着されたバックレストに固設された連結桿と当該連結桿に装着された荷役用の2本の爪が備えられているフォークリフトの、前記車両本体に搭乗している操作者が作業部方向を視認するための作業部視認装置であって、
前記車両本体に搭載され前記フォークリフトの駆動に資する大型のバッテリと、
前記連結桿に装着され作業部の映像を撮影するビデオカメラと、
前記ビデオカメラに前記バッテリからの電力を供給する電力線と、
前記ビデオカメラで撮影された映像信号を送信するための信号線と、
前記
ビデオカメラから前記信号線によって送信された映像信号を表示するための前記車両本体に装着されたモニターとよりなり、
前記ビデオカメラと前記モニターは信号線で直接接続され、前記
フォークリフトの駆動に資する大型のバッテリと前記モニターおよび前記ビデオカメラは電力線で直接接続されており、
前記電力線と前記信号線は、前記車両本体と前記バックレストの間で、可撓性を有するホルダにて保持されていることを特徴とするフォークリフトの作業部視認装置。
【請求項4】
前記ホルダは一方向にのみ湾曲するように構成されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフォークリフトの作業部視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトの作業部視認装置に関するものであり、例えば荷役移動用フォークリフトの荷役作業部(爪)などを、車両本体に搭乗している操作者が容易に視認できるようにする作業部視認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な荷役移動用フォークリフトでは、その作業部を操作者が直接目視をして操作しているため、操作者から死角部分が生じ、フォークリフトでは荷物を破壊したり、また他の作業者に危害を加えたりする虞があった。
【0003】
より具体的には、フォークリフトでは、運転者は爪をパレットに差し込んでフォークリフトを運転することにより、パレットに乗せた荷物を移動させて、トラックへの積み込みや荷下ろしなどの荷役作業を行う。
一般的なフォークリフトでは、フォークリフトの操作席の前方に荷物を搭載するL字状の爪が設置されており、荷物が大型の物である場合は、操作者は荷物のため前方に死角が生じ、フォークリフト後進させて移動させることになる。
しかしながら、フォークリフトを後進で運転することは、作業能率を損ねるばかりでなく、安全上の問題もあった。
更には、荷物が小型の場合でも、荷物を搭載する爪は下方にあるため、また立体倉庫などでは荷物を数メートルも上方に移動させる必要もあり、操作席から見えにくく、荷役作業が困難であるという課題もあった。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-246597
【文献】特開2019-26476
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1には、荷物移動用のフォークリフトに、前方を撮影するカメラと、当該カメラで撮影した映像信号を伝送する信号伝送路と、当該信号伝送路から伝送された映像信号により画像を表示する表示装置とを備え、前記カメラにより撮影した映像信号を操作席で見られるようにしたフォークリフト用カメラシステムにおいて、前記カメラと表示装置は有線で接続され、前記フォークリフトの爪先端部の一方または双方に溝部を設け、前記溝部に前記カメラを埋設すると共に、前記溝部の開口部に前記カメラを保護する透明なカバーを付設したフォークリフト用カメラシステムが開示されている。
【0007】
また、荷物移動用のフォークリフトに、フォークリフトの前方を撮影するカメラと、当該カメラで撮影した映像信号を伝送する信号伝送路と、当該信号伝送路から伝送された映像信号により画像を表示する表示装置とを備え、前記カメラにより撮影した映像信号を操作席で見られるようにしたフォークリフト用カメラシステムにおいて、前記カメラと表示装置は有線で接続され、先端にカメラを保護する透明なカバーを付設した溝部を備え、後端に嵌合部を備えるアタッチメントを設け、同アタッチメントの溝部に前記カメラを埋設し、前記嵌合部を前記フォークリフトの爪先端部に嵌合して固着してなることを特徴とするフォークリフト用カメラシステムも開示されている。
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の従来技術においては、次のような課題があった。
即ち、この従来技術では、爪に装着されたカメラと表示装置は有線(伝導線)で機械的に連結されていたので、前記爪が上下動する度に前記伝導線が屈伸を繰り返し、断線をする虞があった。
【0009】
上記特許文献2には、特許文献1に記載の課題、即ち爪が上下動する度に前記伝導線が屈伸を繰り返し、断線をする虞があったという点を解決するために、フォークリフトの爪に搭載されているビデオカメラと、車両本体に備えられているモニターとの間を無線で接続することによって、前述のような断線を防止せんとする発明が記載されている。
【0010】
しかし上記の特許文献2に記載の従来技術においてもまた次のような課題があった。
即ち、フォークリフトの爪に搭載されているビデオカメラと、車両本体に備えられているモニターとの間を無線で接続されているため、ビデオカメラ専用のモバイルバッテリを爪などの可動部に装着する必要があり、当該モバイルバッテリが全て放電され、前記ビデオカメラへの電力供給が停止されると、モニターの映像は突如消滅することになる。
【0011】
また無線として近年多用されてきているWi-Fi(ワイファイ)を使用する場合、前記モバイルバッテリからの電力供給が停止されると、その停止寸前の映像が前記モニターに残像することがあり、当該モニターを見たフォークリフトの操作者が状況を誤認し、映像が消滅する場合よりも危険性が高まる恐れが生じる。
もちろんモバイルバッテリに常に充電をしておけば上記のような問題は生じないが、通常モバイルバッテリは小型で小容量のために、常時充電することが必要でその作業が面倒で煩わしいことから、つい充電を忘れがちになり上記のような問題が生じる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、車両本体と、当該車両本体に対して相対移動可能に装着されたバックレストに固設された連結桿と当該連結桿に装着された荷役用の2本の爪が備えられているフォークリフトの、前記車両本体に搭乗している操作者が作業部方向を視認するための作業部視認装置であって、前記車両本体に搭載され前記フォークリフトの駆動に資する大型のバッテリと、前記連結桿に装着され作業部の映像を撮影するビデオカメラと、前記ビデオカメラに前記バッテリからの電力を供給する電力線と、前記ビデオカメラで撮影された映像信号を送信するための信号線と、前記ビデオカメラから前記信号線によって送信された映像信号を表示するための前記車両本体に装着されたモニターとよりなり、前記ビデオカメラと前記モニターは信号線で直接接続され、前記フォークリフトの駆動に資する大型のバッテリと前記モニターおよび前記ビデオカメラは電力線で直接接続されており、前記電力線と前記信号線は、前記車両本体と前記バックレストの間で、可撓性を有するホルダにて保持されていることを特徴とする。
【0013】
本発明では、ビデオカメラとモニターは信号線で直接接続され、大型のバッテリとモニターおよびビデオカメラは電力線で直接接続されているので、前記ビデオカメラにモバイルバッテリを接続する必要がなくなり、前記ビデオカメラへの電力供給が停止されることはなくなる。
もし前記大型のバッテリからの電力供給が停止すると、そもそもフォークリフト自体が動作をしないことになるので、前述のような問題は生じえない。
また、信号線や電力線は可撓性を有するホルダにて保持されているので断線する恐れは少ない。
【0014】
(2)前記車両本体の前側には鉛直方向に延在するマストが固設され、当該マストに前記バックレスト摺動自在に装着され、前記マストに前記ホルダの一端が固定され、前記バックレストに前記ホルダの他端が固定されていることが望ましい。
前記マストに前記ホルダの一端が固定され、前記バックレストに前記ホルダの他端が固定されており、相対移動をする前記マストと前記バックレストの間の可動部分にホルダが装荷されるので、信号線や電力線はで断線する恐れは少ない。
【0015】
(3)前記ホルダは、断面が矩形で両端に矩形の開口を有しそれ自体は可撓性を有さないブロックが、当該開口を対向する状態で複数個回動可能に接続されて形成され、内部に前記電力線と前記信号線が収納されていることが望ましい。
それ自体は可撓性を有さないブロックが、複数個回動可能に接続されて形成され、内部に前記電力線と前記信号線が収納されているので、前記電力線と前記信号線はホルダによって堅牢に保護され、外力が加えられても断線する恐れは少ない。
【0016】
(4)前記ホルダは一方向にのみ湾曲するように構成されていることが望ましい。
前記ホルダが一方向にのみ湾曲するように構成されていると他方向には湾曲せず、前記電力線と前記信号線はホルダによって安定的に保護され、外力が加えられても断線する恐れは少ない。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るフォークリフトの作業部視認装置では、作業用可動部に搭載されているビデオカメラと、操作者が搭乗する車両本体に備えられているモニターとの間および大型のバッテリーとの間が有線で接続されており、かつ電力線と信号線はホルダによって堅固に保護されているので断線する恐れも少なく、かつモバイルバッテリーも不要であるので当然のことながら当該モバイルバッテリーの充電の必要もない。
また、カメラから電波でモニターに映像を送受信する装置が必要なくなり格段に安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係るフォークリフトの外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るフォークリフトの爪の一部断面正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るフォークリフトの爪の
図2に対応する右側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るホルダの外観斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るホルダの拡大断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るホルダを構成するブロックの外観斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る配線を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施の形態として、荷役移動用フォークリフトについて説明する。
図1は、フォークリフトの外観斜視図である。
この図において、車両本体1は、シャシー2と、その上に搭載されている駆動部3と、当該駆動部3上に備えられている操作者用椅子4と、その上方に設けられているヘッドガード5と、前記操作者用椅子4の前部に設けられているハンドル6およびバックレスト操作レバー7とからなる。
フォークリフトの駆動に資する大型のバッテリー17は後部に内蔵されている。
【0020】
また車両本体1の前部にはマスト8が立設され、その前部に上下に摺動するバックレスト9が装着されており、当該バックレスト9の下端部にL字状の爪10が固着されている。
この爪10は鉛直方向に延在する鉛直部10aと、水平方向に延在する水平部10bとからなる。
このような構成から前記爪10は、前記バックレスト9と共に前記マスト8に沿って上下動することになる。
【0021】
また前記マスト8には油圧機構によって動作するローラチェーン11が装着されており、前記爪10は前記バックレスト9と共に前記油圧機構によって駆動される。
荷物を移送させる際には、前記2本の爪10の水平部10bを、荷物12が載置されたパレット13に差し込み、若干爪10を持ち上げて移動し、所定の位置まで搬送することになる(
図2)。
以上がフォークリフトの基本構造であって周知である。
【0022】
前記爪10の鉛直部10aには、前記2本の爪10を連結するための水平方向に延在する連結桿14が備えられ、当該連結桿14の下部に作業部を撮影するビデオカメラ15が装着されている。ここで作業部とは、前記爪10の水平部10bの先端部をいう(
図2では左端)。
前記マスト8の上部には、
図4に示すホルダ16のマスト側固定具21が固着され、当該マスト側固定具21にホルダ16の一端16aが固設される。また前記バックレスト9の側面にはホルダ16のバックレスト側固定具
20が固着され、当該バックレスト側固定具
20に前記ホルダ16の他端16bが固設される。
【0023】
前記ホルダ16の内部には電力線22と信号線23が挿通され、
図7に示すように車両本体1に内蔵されフォークリフトの駆動に資する大型のバッテリー17と、モニター19およびビデオカメラ15が夫々電力線22で接続され、ビデオカメラ15とモニター19は信号線23で接続されている。
【0024】
従って、大型のバッテリー17からの電力は電力線22によってモニター19およびビデオカメラ15に直接給電され、ビデオカメラ15からの映像信号は信号線に23によってモニター19に直接供給される。
図7においてAはフォークリフトの本体(固定側)を表し、Bはバックレストおよび爪(可動側)を表しており、Aに対しBが上下動することを表している。
【0025】
次に
図4ないし
図6に従いホルダ16の詳細について説明する。
ホルダ16は、
図5、
図6に示すように、断面が矩形で両端に矩形の開口18を有しそれ自体は可撓性を有さない樹脂製のブロックが、当該開口18を対向する状態で複数個回動可能に接続されて形成され、
図4に示すような全体として蛇腹筒形状でX方向にのみ湾曲するように構成されており、内部に前記電力線22と前記信号線23が収納されている。
従って、前記マスト8に対してバックレスト9が上下動すると、それに従い前記ホルダ16は湾曲部分を移動させながら追随することになる。
【符号の説明】
【0026】
1 車両本体、2 シャシー、3 駆動部、4 操作者用椅子、5 ヘッドガード、10a 鉛直部、10b 水平部、10af 鉛直部の前面、11 ローラチェーン、12 荷物、13 パレット、14 連結桿、15 ビデオカメラ、16 ホルダ、17 大型バッテリ、18 開口、19 モニター、20 固定具、21 固定具、22 電力線、23 信号線。