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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】3Dプリンティング方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20221109BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20221109BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221109BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20221109BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/314
B33Y10/00
B33Y70/00
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021151140
(22)【出願日】2021-09-16
(62)【分割の表示】P 2018526905の分割
【原出願日】2016-12-08
(65)【公開番号】P2022000348
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】15199449.8
(32)【優先日】2015-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521400615
【氏名又は名称】コベストロ (ネザーランズ) ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】トミック, カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ズーテリーフ, ヴィルヘルムス, フレデリクス
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-532579(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019212(WO,A1)
【文献】特表2016-502247(JP,A)
【文献】国際公開第2014/095598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/118
B29C 64/314
B33Y 10/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融フィラメント造形プリンターを用いた熱可塑性エラストマーを含有するポリマー組成物の3Dプリンティング方法において、前記ポリマー組成物が0.1~3重量%の離型剤および/または外部滑剤と任意選択的に0.5~10重量%のマット剤とを含有し、かつ前記熱可塑性エラストマーが32~44個の炭素原子を含有するダイマー脂肪酸および/またはそれから誘導されるジアミンのモノマー単位を含有することを特徴とする3Dプリンティング方法。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が少なくとも0.1~3重量%の離型剤および/または外部滑剤を含有する、請求項1に記載の3Dプリンティング方法。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が酸アミドを含有する、請求項1または2に記載の3Dプリンティング方法。
【請求項4】
前記ポリマー組成物がエルカアミド(eurecamide)を含有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の3Dプリンティング方法。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が<70のショアD硬度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の3Dプリンティング方法。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が<60のショアD硬度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の3Dプリンティング方法。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が<50のショアD硬度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の3Dプリンティング方法。
【請求項8】
前記ダイマー脂肪酸が36個の炭素原子を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の3Dプリンティング方法。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマーが、40~80重量%のポリブチレンテレフタレートハードセグメントと、20~60重量%のダイマー脂肪酸および/またはそれから誘導されるジアミンのモノマー単位と、を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の3Dプリンティング方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の3Dプリンティング用のフィラメント。
【請求項11】
請求項10に記載のフィラメントを含む3Dプリンティング用の装置にフィラメントを供給するシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、溶融フィラメント造形(FFF)プリンターを用いたポリマー組成物の造形品の3Dプリンティング方法に関する。
【0002】
溶融フィラメント造形(FFF)(溶融堆積モデリング(FDM)ともいう)では、ポリマー組成物のフィラメントは、かかるフィラメントのコイルから押出しノズルに供給される。多くのFFF機では、フィラメントは、たとえば、ウォーム駆動ギアシステムまたは一対のプロファイルホイールにより、制御速度でプリントヘッドに押し込まれる。プリントヘッドは、加熱してフィラメントを溶融し得るとともに、次いで、溶融フィラメントは、通常は第1の層の基材上に、その後は成長中の造形物に、プリントヘッドの押出しノズルにより堆積される。堆積後、ポリマー組成物は凝固する。かかる方法および装置の例は、たとえば、国際公開第15019212号パンフレットに開示されている。
【0003】
公知の方法が抱える問題は、熱可塑性エラストマーを使用した場合、プリントヘッドからの溶融ポリマー組成物の排出量の変動が原因で、プリンティングプロセスが円滑に実行されないことである。完全な中断が起こる可能性さえもある。このことがとくに当てはまるのは、プリンティングプロセスの速度を経済的許容レベルに増加させた場合である。
【0004】
本発明の目的は、こうした問題を招くことなく溶融フィラメント造形プリンターを用いて熱可塑性エラストマーを含有するポリマー組成物の3Dプリンティングを行う方法を提供することである。
【0005】
驚くべきことに、この目的は、ポリマー組成物が0.1~3.0重量%の離型剤および/または外部滑剤と任意選択的に0.5~10重量%のマット剤とを含有する場合、かつポリマー組成物が熱可塑性エラストマーを含有し、熱可塑性エラストマーがダイマー脂肪酸および/またはそれから誘導されるジアミンのモノマー単位を含有する場合、達成される。
【0006】
本発明のプロセスは、公知のプロセスと比較してかなりの高速度でさえも円滑に実行される。3Dプリント物で後続層間の良好な接着を得ることはきわめて重要である。それにもかかわらず、本発明のプロセスで得られる物品の接着は、離型剤および/または外部滑剤を使用してもなお十分なレベルにある。
【0007】
好ましくは、ポリマー組成物は離型剤および/または外部滑剤を含有する。
【0008】
離型剤とは、好ましくはパーツの表面と成形型キャビティーの表面との間に滑り効果を生成することにより、成形型からのパーツの離型を促進する化学化合物のことである。離型剤の例としては、脂肪酸系化合物、たとえば、ステアリン酸の金属塩、とくに、ナトリウム、亜鉛、またはカルシウムのステアリン酸塩またはモンタン酸塩が挙げられる。
【0009】
外部滑剤とは、ダイ壁とポリマー溶融物との間に滑り層を生成することにより、押出し機ダイ内の圧力を低減する化学化合物のことである。外部滑剤の例としては、脂肪酸(たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸の脂肪酸)、テフロン(Teflon)、炭化水素ワックス(たとえば、PE、PP、パラフィンのワックス)が挙げられる。好ましくは、酸エステル:モンタンワックス、ステアリルステアレート、ジステアリルフタレート(phtalate)、金属石鹸(たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛)が使用される。最も好ましくは、酸アミド、たとえば、第1級アミドのエルカアミド(ロキシオール)、オレアミド、ステアルアミド、第2級アミドのエチレンビスステアルアミド(steraramide)(EBS)およびエチレンビスオレアミド(EBO)が使用される。酸アミドを用いると、非常に速い速度で円滑に実行されるプロセスだけでなく、本発明に係るプロセスで作製される物品の後続層間の非常に高い接着も達成される。
【0010】
多くの場合、化学化合物は離型剤および外部滑剤の両方の機能に好適である。
【0011】
好ましくは、本発明に係るポリマー組成物は、少なくとも0.2重量%、より好ましくは少なくとも0.3重量%、最も好ましくは少なくとも0.4重量%の離型剤および/または外部滑剤を含有する。好ましくは、本発明に係るポリマー組成物は、多くとも2.5重量%、より好ましくは多くとも2重量%、最も好ましくは多くとも1wtの離型剤および/または外部滑剤を含有する。
【0012】
マット剤を用いるとより速い製造速度でさえも問題なく達成し得るので、ポリマー組成物は好ましくはマット剤を含有する。
【0013】
マット剤としてはタルカムおよびシリカの粒子が挙げられる。粒子は、好ましくは1~10ミクロンの平均サイズ(重量基準のd50)を有する。タルカムは鉱物であり、マット剤として製造されて市販されている。マット剤として使用するのに好適なシリカ粒子は、いわゆるヒュームドシリカ製品を得る火炎プロセスで製造し得る。好ましくは、シリカ粒子は、いわゆる沈降シリカを得る沈殿プロセスで得られる。マット剤として使用するのに好適なシリカ粒子は市販されている。好ましくは、本発明に係るポリマー組成物は、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、最も好ましくは少なくとも3重量%のマット剤を含有する。好ましくは、本発明に係るポリマー組成物は、多くとも8重量%、より好ましくは多くとも6重量%のマット剤を含有する。
【0014】
好ましくは、組成物は、少なくとも離型剤および/または外部滑剤を含有する。最も好ましくは、組成物は、マット剤と離型剤および/または外部滑剤とを含有する。
【0015】
本発明に係る方法は、<70、好ましくは<60、より好ましくは<50、より好ましくは<40、より好ましくは<30、より好ましくは<20のショアD硬度を有するポリマー組成物にとくに好適である。本発明に係る方法はまた、90未満またはそれよりかなり低いショアA硬度を有するポリマー組成物にも好適である。この理由は、かかる低硬度を有する熱可塑性エラストマーを用いると上述した問題が最も顕在化するが、かかる低硬度を有するポリマー組成物を用いて造形品を製造することが望ましいからである。
【0016】
コポリエステルエラストマーおよびコポリアミドエラストマーは、ポリエステルハードセグメントまたはポリアミドハードセグメントと、他のポリマーから誘導されるソフトセグメントと、を含むエラストマー性を有する熱可塑性ポリマーである。ソフトセグメントは、ダイマー脂肪酸および/またはそれから誘導されるジアミンのモノマー単位を含有する。コポリエステルエラストマーのポリエステルハードセグメントは、一般に、少なくとも1つのアルキレンジオールと少なくとも1つの芳香族または脂環式のジカルボン酸とから誘導されるモノマー単位で構成される。コポリアミドエラストマーのポリアミドハードセグメントは、一般に、少なくとも1つの芳香族および/もしくは脂肪族のジアミンと少なくとも1つの芳香族もしくは脂肪族のジカルボン酸とからの、ならびにまたは脂肪族アミノカルボン酸からの、モノマー単位で構成される。
【0017】
ハードセグメントは、典型的には、適用可能であれば室温を十分に上回り300℃程度でもよいしさらに高くてもよい融解温度またはガラス温度を有するポリエステルまたはポリアミドからなる。好ましくは、融解温度またはガラス温度は、少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも170℃、さらには少なくとも190℃である。
【0018】
好ましくは、熱可塑性エラストマーはコポリエステルエラストマーである。コポリエステルエラストマーの例としては、コポリエステルエステルエラストマー、コポリカーボネートエステルエラストマー、またはコポリエーテルエステルエラストマー、すなわち、ダイマー脂肪酸および/またはそれから誘導されるジアミンのモノマー単位から誘導されるソフトセグメントを有するコポリエステルブロックコポリマーが挙げられる。コポリエステルエラストマーは、たとえば、オランダ国(The Netherlands)のDSMエンジニアリングプラスチックスB.V.(DSM Engineering Plastics B.V.)からアーニテル(Arnitel)という商品名で入手可能である。
【0019】
ハードセグメントの芳香族ジカルボン酸は、好適には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、および4,4-ジフェニルジカルボン酸、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、より好ましくはジカルボン酸の全モル量を基準にして少なくとも50モル%、さらにより好ましくは少なくとも90モル%、さらには全部がテレフタル酸からなる。
【0020】
ハードセグメントのアルキレンジオールは、好適には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、1,4-ブタンジオール、ベンゼンジメタノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、アルキレンジオールはエチレングリコールおよび/または1,4ブタンジオールを含み、より好ましくはアルキレンジオールの全モル量を基準にして少なくとも50モル%、さらにより好ましくは少なくとも90モル%、さらには全部がエチレングリコールおよび/または1,4ブタンジオールからなる。
【0021】
ハードセグメントは、最も好ましくは、ポリブチレンテレフタレートセグメントを含むかさらにはそれからなる。
【0022】
[ソフトブロックとしてのダイマー脂肪酸]
ダイマー脂肪酸および/またはそれから誘導されるジアミンのモノマー単位を含有する熱可塑性エラストマーを用いると、非常に良好な結果が得られる。プリント層間の非常に強い接着が得られる。熱可塑性エラストマーを含有するポリマー組成物は、本明細書では、さらなる熱可塑性エラストマーとのブレンドも使用し得るものと理解される。
【0023】
かかるダイマー脂肪酸の酸は、モノマー不飽和脂肪酸のダイマー化により得られ得るとともに、ダイマー脂肪酸と記される。
【0024】
ダイマー化反応後、そのようにして得られたオリゴマー混合物は、高含有率のダイマー脂肪酸を有する混合物を得るために、たとえば蒸留により、さらに処理される。ダイマー脂肪酸の二重結合は、接触水素化により飽和し得る。本明細書で用いられるダイマー脂肪酸という用語は、飽和および不飽和の両方のタイプのこうしたダイマー脂肪酸を意味する。ダイマー脂肪酸は飽和のものが好ましい。
【0025】
ダイマー脂肪酸は、好ましくは32~44個の炭素原子を含有する。最も好ましくは、ダイマー脂肪酸は36個の炭素原子を含有する。ダイマー脂肪酸は、通常は混合物として入手可能であるので、C原子の量は、通常は平均値である。
【0026】
周知の反応の1つにより酸基の1つまたは2つをアミン基で置き換えることにより、ダイマー脂肪酸の誘導体を生成することも可能である。
【0027】
好ましくは、熱可塑性エラストマーは、20~80重量%のポリブチレンテレフタレートハードセグメントと、20~80重量%のダイマー脂肪酸および/またはそれから誘導されるジアミンのモノマー単位と、を含有する。より好ましくは、熱可塑性エラストマーは、40~80重量%のポリブチレンテレフタレートハードセグメントと、20~60重量%のダイマー脂肪酸および/またはそれから誘導されるジアミンのモノマー単位と、を含有する。ソフトセグメントの含有率が高いとより軟質の材料が得られ、こうした材料では、離型剤および/または外部滑剤の存在は、3Dプリンティングに関してより多くの利点を示す。
【0028】
本発明はまた、本発明に係る3Dプリンティングプロセスに使用されるフィラメントに関する。かかるフィラメントは、その目的のために周知の押出しプロセスにより製造し得る。通常、フィラメントはモノフィラメントである。フィラメントの直径は1~3.5mmであり得るが、好ましくは1.5~3mmである。
【0029】
本発明はまた、本発明に係るフィラメントを含む、3Dプリンターにフィラメントを適用するためのかつ3Dプリンターに取り付けるべく適合化されたシステムに関する。かかるシステムの例は、リールとカセットとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明に係る方法に使用し得るFFF装置のプリントヘッドの例および基材の模式図を示す。
図2図2は、プリントスラブおよび試験試料を示す。
図3図3は、本発明に係る方法に使用し得るボーデン(Bowden)型FFF装置のプリントヘッドおよび輸送機構の例ならびに基材の模式図を示す。
【0031】
図1は、本発明に係る方法に使用し得るFFF装置のプリントヘッドの例の模式図を示す。フィラメント(1)は、フィラメントを溶融するために一対のホイール(2)によりリール(図示せず)からプリントヘッドのオーブン(3)内に輸送される。フィラメントの溶融材料は、ノズル(4)を通って流れる。このフローを得る圧力は、一対のホイールによりフィラメントに加えられた力により得られるが、まだ溶融されていないフィラメントは、オーブンの最初の部分でピストンとして作用する。ノズルを離れた押出し物(5)は、ノズルの下に位置決めされて基材(6)上に堆積され、それぞれ、物品を形成する。
【0032】
図2は、プリントスラブ(3)、第1の押出し物(1)、第2の押出し物(2)、および破断点歪みを決定するための試験試料(4)を示す。
【0033】
図3は、本発明に係る方法に使用し得るプリント熱・輸送機構の例の模式図を示す。このいわゆるボーデン型押出し機では、フィラメント(1)は、フィラメントを溶融するために一対のホイール(2)によりリール(図示せず)からプリントヘッドのオーブン(3)内に輸送される。ここでは、輸送ホイールは、プリントヘッドのすぐ上に接続されていないが、フィラメントは、フレキシブルチューブ(7)により一対のホイールからプリントヘッド内に案内される。この構成は、フィラメントのより長い輸送を必要とすることから、フィラメントがチューブおよび/または輸送機構に固着するおそれがあり無供給のリスクがより高くなる。
【0034】
[実施例]
[使用した材料]
・ アーニテルECO(商標) ポリブチレンテレフタレートのハードセグメントとダイマー脂肪酸のソフトセグメントとを含みショアD硬度が34であるオランダ国DSM製の熱可塑性コポリエステル。
・ ニンジャフレックス(Ninjaflex)(商標)、米国フェナー・ドライブズ・コーポレーション(Fenner Drives Corp.US)製の熱可塑性ポリウレタン材料。
・ ロキシオール(Loxiol)E spez P、独国エメリー・オレオ・ケミカルズ(Emery Oleochemicals,Germany)製のエルカアミド(eurecamide)系外部滑剤。
ニップ(Nip)(商標)CX200ジェル、日本国の東ソー・シリカ株式会社(Tosch Silica Corp.from Japan)製の沈降シリカ粒子系マット剤。
【0035】
[比較実験A]
オランダ国マーストリヒト(Maastricht)のMaukCC製のカルテシオ(Cartesio)3Dプリンターのプリントヘッドを介して、1.75mmの直径を有するアーニテルECO(商標)フィラメントを各種速度で輸送した。かかるプリンターの模式図は図1に示される。オーブンの温度は240℃であり、ノズルの直径は0.4mmであった。図2に示されるように、ノズルを離れた押出し物は、フラット平面の形態を有する基材上に直線パターンで堆積させた。基材は、ノズルを離れた押出し物の速度と同一の速度でノズルの下をx-y方向に移動させた。
【0036】
基材上に堆積された押出し物の形状は、以下のように分類した。
1.滑らかな規則的な形状。
2.不規則な表面であるが押出し物の中断はない。
3.不規則な表面であるうえに押出し物の中断がある
いくつかの速度では、「無供給」が観測され、材料を供給できなかったので、それ以上の速度上昇の試験は行わなかった。
【0037】
各種速度における結果は表1に示される。
【0038】
[実施例I]
比較実験Aと同様であるが、フィラメントは、アーニテルECO(商標)と、0.5重量%のロキシオールE spez Pと、5重量のニップ(商標)CX200ジェルと、を含有するポリマー組成物であった。結果は表1に与えられる。
【0039】
[比較実験A2]
比較実験Aと同様であるが、フィラメントは、230℃の温度でプリントされたニンジャフレックス(商標)であった。結果は表1に与えられる。30mm/s以上の速度では、もはや供給できなかった。
【0040】
【表1】
【0041】
[比較実験B]
比較実験Aと同様であるが、10mm/sのフィラメント速度の一定した輸送速度であった。第1の工程では、第1の押出し物を比較実験Aと同様に基材上に直線状に堆積させた。押出し物を凝固させた。第2の工程では、第2の押出し物を第1の押出し物の傍らに堆積させた。こうして、第2の押出し物を第1の押出し物に接着させた。120mmの長さを有するプリントスラブが得られるまで、これを繰り返した(図2参照)。プリントスラブから打ち抜かれた試験試料の破断点歪みを決定することにより、押出し物間の接着を測定した。
【0042】
ISO527-2-1BAの試験試料の位置は図2に示される。引張り試験は、周囲温度で500mm/minのクロスヘッド速度で行われる。結果は表2に与えられる。
【0043】
[実施例II]
比較実験Bと同様であるが、フィラメントは、アーニテルECO(商標)と、0.5重量%のロキシオールE spez Pと、5重量%のニップ(商標)CX200ジェルと、を含有するポリマー組成物であった。結果は表2に与えられる。
【0044】
【表2】
【0045】
[比較実験C]
図3に模式的に描かれるように、ボーデン型プリンターのプリントヘッドを介して、1.75mmの直径を有するアーニテルECO(商標)フィラメントを各種速度で輸送した。フィラメントガイドチューブは、フィラメント直径1.75mmに好適な長さ700mmおよび内径2mmを有する。オーブンの温度は230℃であり、ノズルの直径は0.35mmであった。図2に示されるように、ノズルを離れた押出し物は、フラット平面の形態を有する基材上に直線パターンで堆積させた。基材は、ノズルを離れた押出し物の速度と同一の速度でノズルの下をx-y方向に移動させた。
【0046】
基材上に堆積された押出し物の形状は、以下のように分類した。
1.完全プリント
2.不完全プリント
いくつかの速度では、「無供給」が観測され、材料を供給できなかったので、それ以上の速度上昇の試験は行わなかった。同様に、「不完全プリント」の分類後、より速い速度でさらなる試験は行わなかった。
【0047】
各種速度の結果は表3に与えられる。
【0048】
[実施例III]
比較実験Cと同様であるが、フィラメントは、アーニテルECO(商標)と、0.25重量%のロキシオールE spez Pと、を含有するポリマー組成物であった。結果は表3に与えられる。
【0049】
[実施例IV]
比較実験Cと同様であるが、フィラメントは、アーニテルECO(商標)と、0.5重量%のロキシオールE spez Pと、を含有するポリマー組成物であった。結果は表3に与えられる。
【0050】
【表3】
【0051】
離型剤および/または外部滑剤および/またはマット剤が存在するとプリント適性が向上することは、以上の実施例から明確に示される。プリンティングが依然として可能な状態で、速度をかなり増加させることが可能であった。離型剤および/または外部滑剤および/またはマット剤を含有しないポリマーでは、かなり低い速度を達成可能であったか、さらには供給をまったく確保できなかった。本発明に係る方法では、フィラメント間の接着も十分であることが報告され、各種速度で「1」または「2」として示された。
図1
図2
図3