(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】非水電解液用添加剤、非水電解液電池用電解液、及び非水電解液電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20221109BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221109BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20221109BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20221109BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20221109BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20221109BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20221109BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20221109BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0568
H01M10/0569
H01G11/64
H01G11/62
H01G11/60
(21)【出願番号】P 2018168192
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2017175033
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】森中 孝敬
(72)【発明者】
【氏名】中原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 進
(72)【発明者】
【氏名】河端 渉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹弘
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-280063(JP,A)
【文献】特開2004-259697(JP,A)
【文献】特開2014-157738(JP,A)
【文献】特開2014-194866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
H01G 11/60-11/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]~[4]で示される非水電解液
二次電池の電解液用添加剤。
[一般式[1]~[4]中、
X
1
及びX
2は、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、
又は炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子
又は不飽和結合が存在することもできる。
Yは
、炭素原子又は硫黄原子である。
R
1
及びR
2 は、それぞれ互いに独立して、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子
又は不飽和結合が存在することもできる。
R
3
及びR
4 は、それぞれ互いに独立して、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニル基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、及び、炭素数が6~10のアリール基からなる群から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子
又は不飽和結合が存在することもできる。
また、R
1とR
2、又は、R
1とR
4は、下記一般式[5] 又は[6]の様に互いを含む環状構造であっても良い。
【請求項2】
前記X
1
及びX
2が、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基であり、
前記R
1
及びR
2 の少なくとも1つが、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシル基、ビニル基、アリル基、アリルオキシ基、エチニル基、2-プロピニル基、2-プロピニルオキシ基、フェニル基、及びフェニルオキシ基からなる群から選ばれる基であり、
前記R
3
及びR
4の少なくとも1つが、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2-プロピニル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基である、請求項1に記載の
電解液用添加剤。
【請求項3】
前記X
1
及びX
2が、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基であり、
前記R
1とR
2、又は、R
1とR
4が、互いを含む下記一般式[7]~[11]で示されるいずれかの環状構造である、請求項1に記載の
電解液用添加剤。
[一般式中、R
5~R
9は、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、
又は炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子
又は不飽和結合が存在することもできる。
a及びcは
、0~6の整数、b及びdは
、0~4の整数、eは
、0~8の整数である。]
【請求項4】
前記R
3が、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2-プロピニル基、又はフェニル基であり、
前記R
5~R
9が、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、メチル基、ビニル基、アリル基、アリルオキシ基、エチニル基、2-プロピニル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基であり、
前記a~eが、0~2の整数である、請求項3に記載の
電解液用添加剤。
【請求項5】
非水溶媒、溶質、及び、請求項1~4のいずれか1項に記載の
電解液用添加剤を含有する、非水電解液
二次電池用電解液。
【請求項6】
前記
電解液用添加剤の含有量が、前記非水溶媒と前記溶質と前記
電解液用添加剤との総量に対して、0.001~5.0質量%の範囲である、請求項5に記載の非水電解液
二次電池用電解液。
【請求項7】
前記溶質が、LiPF
6、LiBF
4、LiPF
2(C
2O
4)
2、LiPF
4(C
2O
4)、LiP(C
2O
4)
3、LiBF
2(C
2O
4)、LiB(C
2O
4)
2、LiPO
2F
2、LiN(POF
2)
2、LiN(FSO
2)(POF
2)、LiN(FSO
2)(POF(OCH
2C≡CH))、LiN(FSO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(FSO
2)、LiSO
3F、NaPF
6、NaBF
4、NaPF
2(C
2O
4)
2、NaPF
4(C
2O
4)、NaP(C
2O
4)
3、NaBF
2(C
2O
4)、NaB(C
2O
4)
2、NaPO
2F
2、NaN(POF
2)
2、NaN(FSO
2)(POF
2)、NaN(FSO
2)(POF(OCH
2C≡CH))、NaN(FSO
2)
2、NaN(CF
3SO
2)
2、NaN(CF
3SO
2)(FSO
2)、及びNaSO
3Fからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項5又は6に記載の非水電解液
二次電池用電解液。
【請求項8】
さらに、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、trans-ジフルオロエチレンカーボネート、(エトキシ)ペンタフルオロシクロトリホスファゼン、テトラビニルシラン、及び1,3-プロパンスルトンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する、請求項5~7のいずれか
1項に記載の非水電解液
二次電池用電解液。
【請求項9】
前記非水溶媒が、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン化合物、スルホキシド化合物、及びイオン液体からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項5~8のいずれか
1項に記載の非水電解液
二次電池用電解液。
【請求項10】
少なくとも正極と、負極と、請求項5~9のいずれか
1項に記載の非水電解液
二次電池用電解液とを備えた、非水電解液
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液電池に用いた場合に初期のガス発生量(電池製造時のガス抜き工程前に行う充放電(初充放電やエージングなど)に伴うガスの発生量)を抑制できる、非水電解液用添加剤、非水電解液電池用電解液、及びそれを用いた非水電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報関連機器、又は通信機器、即ちパソコン、ビデオカメラ、デジタルスチールカメラ、携帯電話等の小型機器で、かつ高エネルギー密度を必要とする用途向けの蓄電システムや電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車補助電源、電力貯蔵等の大型機器で、かつパワーを必要とする用途向けの蓄電システムが注目を集めている。その一つの候補としてリチウムイオン電池、リチウム電池、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウムイオン電池等の非水電解液電池が盛んに開発されている。
【0003】
これらの非水電解液電池は既に実用化されているものも多いが、各特性に於いて種々の用途で満足できるものではない。特に、電気自動車等の車載用途等の場合、電池のコスト低減のため、電池製造時の歩留まりを向上させる必要がある。歩留まり向上には、電池製造時のガス抜き工程の簡略化が必要で、そのためには初充電時のガス発生量を抑制することが求められている。
【0004】
これまで非水電解液電池の特性を改善しガス発生量を低減する手段として、正極や負極の活物質をはじめとする様々な電池構成要素の最適化が検討されてきた。非水電解液関連技術もその例外ではなく、活性な正極や負極の表面で電解液が分解することによる劣化を種々の添加剤で抑制することが提案されている。例えば、リチウムイオン電池において、特許文献1及び2には、電解液にビニレンカーボネートや不飽和スルトンを添加することにより、電池特性を向上させることが提案されている。また、例えば、ナトリウムイオン電池において、特許文献3には、電解液にフルオロエチレンカーボネートを添加することにより、電池特性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-123867号公報
【文献】特開2002-329528号公報
【文献】特開2013-048077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術文献に開示されている非水電解液を用いた非水電解液電池において、初期ガス発生量(電池製造時のガス抜き工程前に行う充放電(初充放電やエージングなど)に伴うガスの発生量)の低減効果は、十分に満足のいくものではなく改善の余地があった。
【0007】
本発明は、非水電解液電池に用いた場合に、初期のガス発生量を抑制できる、非水電解液用添加剤、これを含有した非水電解液、及び当該電解液を用いた非水電解液電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる問題に鑑み鋭意検討の結果、非水溶媒と溶質とを含む非水電解液電池用非水電解液において、特定の構造のイミン化合物を非水電解液用添加剤として用いた場合に、該非水電解液電池が、初期のガス発生量を抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、
下記一般式[1]~[4]で示される非水電解液用添加剤(以降、単に「イミン化合物」と総称する場合がある)を提供するものである。
[一般式[1]~[4]中、X
1、X
2は、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子、不飽和結合が存在することもできる。Yは炭素原子又は硫黄原子である。
なお「有機基中にフッ素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基における水素原子がフッ素原子に置換されたものを指す。
また「有機基中に酸素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基の炭素原子の間に「-O-」(エーテル結合)が介在する基が挙げられる。
R
1、R
2 は、それぞれ互いに独立して、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子、不飽和結合が存在することもできる。
なお「有機基中にフッ素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基における水素原子がフッ素原子に置換されたものを指す。
また「有機基中に酸素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基の炭素原子の間に「-O-」(エーテル結合)が介在する基が挙げられる。
R
3、R
4 はそれぞれ互いに独立して、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニル基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、及び、炭素数が6~10のアリール基からなる群から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子、不飽和結合が存在することもできる。
なお「有機基中にフッ素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基における水素原子がフッ素原子に置換されたものを指す。
また「有機基中に酸素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基の炭素原子の間に「-O-」(エーテル結合)が介在する基が挙げられる。
また、R
1とR
2、又は、R
1とR
4は、下記一般式[5] 又は[6]の様に互いを含む環状構造であっても良い。
【0010】
また、上記一般式[1]~[4]で示されるイミン化合物が、
上記X1、X2が、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基であり、
上記R1、R2 の少なくとも1つが、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシル基、ビニル基、アリル基、アリルオキシ基、エチニル基、2-プロピニル基、2-プロピニルオキシ基、フェニル基、及びフェニルオキシ基からなる群から選ばれる基であり、
上記R3、R4の少なくとも1つが、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2-プロピニル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基である
化合物であることが好ましい。
【0011】
また、上記X
1、X
2が、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基であり、
上記R
1とR
2、又は、R
1とR
4が、互いを含む下記一般式[7]~[11] で示されるいずれかの環状構造を有する化合物であることも好ましい。
[一般式中、R
5~R
9は、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子、不飽和結合が存在することもできる。
なお「有機基中にフッ素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基における水素原子がフッ素原子に置換されたものを指す。
また「有機基中に酸素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基の炭素原子の間に「-O-」(エーテル結合)が介在する基が挙げられる。
a及びcは0~6の整数、b及びdは0~4の整数、eは0~8の整数である。]
【0012】
また、上記一般式[7]~[11] で示される環状構造において、
上記R3が、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、2-プロピニル基、又はフェニル基であり、
上記R5~R9が、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、メチル基、ビニル基、アリル基、アリルオキシ基、エチニル基、2-プロピニル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基であり、
上記a~eが0~2の整数であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、非水溶媒、溶質、及び、上記の非水電解液用添加剤を含有する、非水電解液電池用電解液(以降、単に「非水電解液」や「電解液」と記載する場合がある)である。
【0014】
上記非水電解液用添加剤の含有量が、上記非水溶媒と上記溶質と上記非水電解液用添加剤との総量に対して、0.001~5.0質量%の範囲であることが好ましい。該含有量が5.0質量%を超えると、過剰な被膜形成により、放電容量が低下する恐れがあり、また、0.001質量%未満の場合、被膜の形成が不十分となり、特性向上効果が発現し難くなる恐れがある。
【0015】
また、上記溶質が、LiPF6、LiBF4、LiPF2(C2O4)2、LiPF4(C2O4)、LiP(C2O4)3、LiBF2(C2O4)、LiB(C2O4)2、LiPO2F2、LiN(POF2)2、LiN(FSO2)(POF2)、LiN(FSO2)(POF(OCH2C≡CH))、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3SO2)(FSO2)、LiSO3F、NaPF6、NaBF4、NaPF2(C2O4)2、NaPF4(C2O4)、NaP(C2O4)3、NaBF2(C2O4)、NaB(C2O4)2、NaPO2F2、NaN(POF2)2、NaN(FSO2)(POF2)、NaN(FSO2)(POF(OCH2C≡CH))、NaN(FSO2)2、NaN(CF3SO2)2、NaN(CF3SO2)(FSO2)、及びNaSO3Fからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0016】
上記非水電解液は、さらに、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、trans-ジフルオロエチレンカーボネート、(エトキシ)ペンタフルオロシクロトリホスファゼン、テトラビニルシラン、及び1,3-プロパンスルトンからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有してもよい。
【0017】
また、上記非水溶媒が、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン化合物、スルホキシド化合物、及びイオン液体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、少なくとも正極と、負極と、上記の非水電解液電池用電解液とを備えた、非水電解液電池(以降、単に「非水電池」や「電池」と記載する場合がある)に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、非水電解液電池に用いた場合に、初期のガス発生量を抑制できる、非水電解液用添加剤、これを含有した非水電解液、及び当該電解液用いた非水電解液電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の一例であり、これらの具体的内容に限定はされない。その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
1.非水電解液電池用添加剤
本発明による電池特性向上の作用機構については、明確ではないが、上記一般式[1]~[4]で示されるイミン化合物は、正極と電解液との界面、及び負極と電解液との界面において一部分解し、皮膜を形成すると考えられる。この皮膜は、非水溶媒や溶質と活物質との間の直接の接触を抑制して当該非水溶媒や溶質の分解を防ぎ、電池性能の劣化(高温時(~70℃程度)の溶媒の分解やガスの発生)を抑制すると考えられる。
【0022】
上記一般式[1]~[4]において、X1~X2及びR1~R2で表される、アルキル基及びアルコキシル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基等の炭素数が1~10のアルキル基や含フッ素アルキル基、及びこれらの基から誘導されるアルコキシ基が挙げられる。
アルケニル基及びアルケニルオキシ基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、及び1,3-ブタジエニル基等の炭素数が2~10のアルケニル基や含フッ素アルケニル基、及びこれらの基から誘導されるアルケニルオキシ基が挙げられる。
アルキニル基及びアルキニルオキシ基としては、エチニル基、2-プロピニル基、及び1,1ジメチル-2-プロピニル基等の炭素数が2~10のアルキニル基や含フッ素アルキニル基、及びこれらの基から誘導されるアルキニルオキシ基が挙げられる。
シクロアルキル基及びシクロアルコキシ基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の炭素数が3~10のシクロアルキル基や含フッ素シクロアルキル基、及びこれらの基から誘導されるシクロアルコキシ基が挙げられる。
シクロアルケニル基及びシクロアルケニルオキシ基としては、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等の炭素数が3~10のシクロアルケニル基や含フッ素シクロアルケニル基、及びこれらの基から誘導されるシクロアルケニルオキシ基が挙げられる。
アリール基及びアリールオキシ基としては、フェニル基、トリル基、及びキシリル基等の炭素数が6~10のアリール基や含フッ素アリール基、及びこれらの基から誘導されるアリールオキシ基が挙げられる。
【0023】
上記一般式[1]~[4]において、R3~R4で表される、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基等の炭素数が1~10のアルキル基や含フッ素アルキル基が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、及び1,3-ブタジエニル基等の炭素数が2~10のアルケニル基や含フッ素アルケニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、2-プロピニル基、及び1,1ジメチル-2-プロピニル基等の炭素数が2~10のアルキニル基や含フッ素アルキニル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の炭素数が3~10のシクロアルキル基や含フッ素シクロアルキル基が挙げられる。シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等の炭素数が3~10のシクロアルケニル基や含フッ素シクロアルケニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、及びキシリル基等の炭素数が6~10のアリール基や含フッ素アリール基が挙げられる。
【0024】
また、R1とR2、又はR1とR4は、上述のように、上記一般式[5]又は[6]の様に互いを含む環状構造であっても良く、その構造としては、上記一般式[7]~ [11]の環状構造が挙げられる。
上記一般式[7]~[11]のR5~R9で表される、
アルキル基及びアルコキシル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基等の炭素数が1~10のアルキル基や含フッ素アルキル基、及びこれらの基から誘導されるアルコキシ基が挙げられる。
アルケニル基及びアルケニルオキシ基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、及び1,3-ブタジエニル基等の炭素数が2~10のアルケニル基や含フッ素アルケニル基、及びこれらの基から誘導されるアルケニルオキシ基が挙げられる。
アルキニル基及びアルキニルオキシ基としては、エチニル基、2-プロピニル基、及び1,1ジメチル-2-プロピニル基等の炭素数が2~10のアルキニル基や含フッ素アルキニル基、及びこれらの基から誘導されるアルキニルオキシ基が挙げられる。
シクロアルキル基及びシクロアルコキシ基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の炭素数が3~10のシクロアルキル基や含フッ素シクロアルキル基、及びこれらの基から誘導されるシクロアルコキシ基が挙げられる。
シクロアルケニル基及びシクロアルケニルオキシ基としては、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等の炭素数が3~10のシクロアルケニル基や含フッ素シクロアルケニル基、及びこれらの基から誘導されるシクロアルケニルオキシ基が挙げられる。
アリール基及びアリールオキシ基としては、フェニル基、トリル基、及びキシリル基等の炭素数が6~10のアリール基や含フッ素アリール基、及びこれらの基から誘導されるアリールオキシ基が挙げられる。
【0025】
上記一般式[1]~[4]で示されるイミン化合物としては、より具体的には、例えば以下の化合物等が挙げられる。但し、本発明で用いられるイミン化合物は、以下の例示により何ら制限を受けるものではない。
【0026】
【0027】
置換基の炭素数の数がより少ないイミン化合物または、フッ素原子や酸素原子を多く含むイミン化合物は負極上での還元分解電位がより高く、電解液(溶媒)の分解より先に分解皮膜を形成する傾向があるため、電解液(溶媒)の分解によるガス発生をより抑制し易いと考えられる。
上記イミン化合物のうち、初期のガス発生量を抑制する効果の観点から、(1C-1)、(1C-4)、(1C-5)、(1C-6)、(1C-7)、(1C-9)、(1C-11)、(1C-13)、(1S-2)、(1S-4)、(1S-5)、(2C-1)、(2C-2)、(2C-4)、(3C-6)、(3C-9)、(3S-1)が好ましい。
【0028】
また、上記イミン化合物のうち、ガス発生の抑制効果と高温時(~70℃程度)の耐久性向上効果をバランスよく発揮しやすい観点から、(1C-1)、(1C-4)、(1C-6)、(1C-7)、(1C-9)、(1C-11)、(1C-13)、(1S-2)、(1S-3)、(1S-9)、(2C-1)、(2C-2)、(2C-4)、(3C-6)が好ましい。
【0029】
一般式[1]~[4]で示されるイミン化合物は、高純度であることが好ましく、特に、電解液中に溶解させる前の原料として当該イミン化合物中のCl(塩素)の含有量が5000質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000質量ppm以下、さらに好ましくは100質量ppm以下である。Cl(塩素)が高濃度に残留するイミン化合物を用いると電池部材を腐食させてしまう傾向があるため好ましくない。特にCl(塩素)の含有量が5000質量ppmを超えると非水電解液電池の集電体を腐蝕する恐れがあり好ましくない。
【0030】
また、電解液中に溶解させる前の原料として、上記一般式[1]~[4]で示されるイミン化合物に含まれる遊離酸の含有量が5000質量ppm以下であることが好ましく、1000質量ppm以下であることがさらに好ましい。遊離酸の含有量が5000質量ppmを超えると非水電解液電池の集電体を腐蝕する恐れがあり好ましくない。
【0031】
一般式[1]~[4]で示されるイミン化合物は種々の方法により製造できる。製造法としては、特に限定されることはない。
例えば、Tetrahedron Letters,43, 3957-3959, 2002年やChem.Ber,101, 162-173, 1968年などに記載のように、対応するイソシアネート(X1SO2N=C=O、またはX1X2P(=O)N=C=O)と、対応するカルボニル基を有する化合物(O=CR1R2、またはO=CR1(NR3R4))またはスルホキシド基を有する化合物(O=SR1R2、またはO=SR1(NR3R4))を無溶媒もしくはこれらと反応しない溶媒中で反応させる方法が挙げられる。
また、X1、X2がフッ素原子の場合には、クロロスルホニルイソシアネートまたはジクロロホスホニルイソシアネートと対応するカルボニル基を有する化合物(O=CR1R2、またはO=CR1(NR3R4))またはスルホキシド基を有する化合物(O=SR1R2、またはO=SR1(NR3R4))を無溶媒もしくはこれらと反応しない溶媒中で反応させた後、塩素原子をフッ素化することによって得ることもできる。
【0032】
2.非水電解液
2-1.非水電解液用添加剤について
本発明の非水電解液は、後述する溶質、非水溶媒、及び、上記の非水電解液用添加剤を含有する。電解液中の非水電解液用添加剤の含有量は、非水溶媒と、溶質と、非水電解液用添加剤との総量に対して、好適な下限は0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、また、好適な上限は5.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
上記添加量が0.001質量%を下回ると、電池特性を向上させる効果が十分に得られ難いため好ましくない。一方、上記添加量が5.0質量%を超えると、それ以上の効果は得られずに無駄であるだけでなく、過剰な皮膜形成により抵抗が増加し電池性能の劣化を引き起こし易いため好ましくない。非水電解液用添加剤である上述のイミン化合物は、5.0質量%を超えない範囲であれば一種類を単独で用いても良く、二種類以上を用途に合わせて任意の組み合わせ、比率で混合して用いても良い。
【0033】
2-2.溶質について
本発明の非水電解液電池用電解液の溶質の種類は、特に限定されず、任意の電解質塩を用いることができる。金属カチオン電池用非水電解液やキャパシタ用非水電解液では、そのイオン源となる金属カチオンやオニウムカチオンを有する塩であればよく、例えば、リチウムイオン電池の場合にはイオン源となるリチウム塩、ナトリウムイオン電池の場合にはイオン源となるナトリウム塩であればよい。その対アニオンとしては、非水電解液中での解離度を考慮すると、PF6
-
、BF4
-、PF2(C2O4)2
-、PF4(C2O4)-、P(C2O4)3
-、BF2(C2O4)-、B(C2O4)2
-、PO2F2
-、N(POF2)2
-、N(FSO2)(POF2)-、N(FSO2)(POF(OCH2C≡CH))-、N(FSO2)2
-、N(CF3SO2)2
-、N(CF3SO2)(FSO2)-、SO3F-、N(FSO2)(FCO)-からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。中でも、電池としての、エネルギー密度、出力特性、耐久性能などを考慮して、これらを2種類以上組み合わせて用いることが好ましい。
【0034】
具体例としては、リチウム電池及びリチウムイオン電池の場合には、LiPF6、LiBF4、LiPF2(C2O4)2、LiPF4(C2O4)、LiP(C2O4)3、LiBF2(C2O4)、LiB(C2O4)2、LiPO2F2、LiN(POF2)2、LiN(FSO2)(POF2)、LiN(FSO2)(POF(OCH2C≡CH))、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(FSO2)、LiSO3F、LiClO4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC(CF3SO2)3、LiPF3(C3F7)3、LiB(CF3)4、LiBF3(C2F5)などに代表される電解質塩が挙げられる。
また、ナトリウムイオン電池の場合には、NaPF6、NaBF4、NaPF2(C2O4)2、NaPF4(C2O4)、NaP(C2O4)3、NaBF2(C2O4)、NaB(C2O4)2、NaPO2F2、NaN(POF2)2、NaN(FSO2)(POF2)、NaN(FSO2)(POF(OCH2C≡CH))、NaN(FSO2)2、NaN(CF3SO2)2、NaN(C2F5SO2)2、NaN(CF3SO2)(FSO2)、NaSO3F、NaN(FSO2)(FCO)、NaClO4、NaAsF6、NaSbF6、NaCF3SO3、NaC(CF3SO2)3、NaPF3(C3F7)3、NaB(CF3)4、NaBF3(C2F5)などに代表される電解質塩が挙げられる。
【0035】
これらの溶質は、一種類を単独で用いても良く、二種類以上を用途に合わせて任意の組み合わせ、比率で混合して用いても良い。中でも、電池としてのエネルギー密度、出力特性、寿命等から考えると、LiPF6、LiBF4、LiPF2(C2O4)2、LiPF4(C2O4)、LiP(C2O4)3、LiBF2(C2O4)、LiB(C2O4)2、LiPO2F2、LiN(POF2)2、LiN(FSO2)(POF2)、LiN(FSO2)(POF(OCH2C≡CH))、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3SO2)(FSO2)、LiSO3F、NaPF6、NaBF4、NaPF2(C2O4)2、NaPF4(C2O4)、NaP(C2O4)3、NaBF2(C2O4)、NaB(C2O4)2、NaPO2F2、NaN(POF2)2、NaN(FSO2)(POF2)、NaN(FSO2)(POF(OCH2C≡CH))、NaN(FSO2)2、NaN(CF3SO2)2、NaN(CF3SO2)(FSO2)、及びNaSO3Fが好ましい。
【0036】
上記溶質の好適な組合せとしては、リチウム電池及びリチウムイオン電池の場合には、例えば、LiBF4、LiPF2(C2O4)2、LiPF4(C2O4)、LiP(C2O4)3、LiBF2(C2O4)、LiB(C2O4)2、LiPO2F2、LiN(POF2)2、LiN(FSO2)(POF2)、LiN(FSO2)(POF(OCH2C≡CH))、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3SO2)(FSO2)、LiSO3Fからなる群から選ばれる少なくとも1つと、LiPF6とを組み合わせたもの等が好ましい。上記の組み合わせの場合の比率(LiPF6を1モルとしたときのモル比)は、通常、1:0.001~1:0.5、好ましくは1:0.01~1:0.2の範囲である。上記のような比率で溶質を組み合わせて用いると種々の電池特性をさらに向上させる効果がある。一方、1:0.5よりもLiPF6の割合が低いと電解液のイオン伝導度が低下し、抵抗が上昇してしまう傾向がある。
【0037】
これら溶質の濃度については、特に制限はないが、好適な下限は0.5mol/L以上、好ましくは0.7mol/L以上、さらに好ましくは0.9mol/L以上であり、また、好適な上限は2.5mol/L以下、好ましくは2.0mol/L以下、さらに好ましくは1.5mol/L以下の範囲である。0.5mol/Lを下回るとイオン伝導度が低下することにより非水電解液電池のサイクル特性、出力特性が低下する傾向があり、一方、2.5mol/Lを超えると非水電解液電池用電解液の粘度が上昇することにより、やはりイオン伝導度を低下させる傾向があり、非水電解液電池のサイクル特性、出力特性を低下させる恐れがある。
【0038】
一度に多量の上記溶質を非水溶媒に溶解すると、溶質の溶解熱のため非水電解液の温度が上昇することがある。該液温が著しく上昇すると、フッ素原子を含有するリチウム塩の分解が促進されてフッ化水素が生成する恐れがある。フッ化水素は電池性能の劣化の原因となるため好ましくない。このため、該溶質を非水溶媒に溶解する際の液温は特に限定されないが、-20~80℃が好ましく、0~60℃がより好ましい。
【0039】
2-3.非水溶媒について
本発明の非水電解液電池用電解液に用いる非水溶媒の種類は、特に限定されず、任意の非水溶媒を用いることができる。具体例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン等の環状エステル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等の鎖状エーテル、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン化合物やスルホキシド化合物等が挙げられる。また、非水溶媒とはカテゴリーが異なるがイオン液体等も挙げることができる。また、本発明に用いる非水溶媒は、一種類を単独で用いても良く、二種類以上を用途に合わせて任意の組み合わせ、比率で混合して用いても良い。これらの中ではその酸化還元に対する電気化学的な安定性と熱や上記溶質との反応に関わる化学的安定性の観点から、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。
例えば、非水溶媒として、誘電率の高い環状カーボネートから1種類以上と、液粘度が低い鎖状カーボネートもしくは鎖状エステルから1種類以上とを併用すると、電解液のイオン伝導度が高まるため好ましい。
【0040】
2-4.その他添加剤について
以上が本発明の非水電解液電池用電解液の基本的な構成についての説明であるが、本発明の要旨を損なわない限りにおいて、本発明の非水電解液電池用電解液に一般的に用いられる添加剤を任意の比率で添加しても良い。具体例としては、ビニレンカーボネート(以降「VC」と記載する場合がある)、フルオロエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、trans-ジフルオロエチレンカーボネート、(エトキシ)ペンタフルオロシクロトリホスファゼン、テトラビニルシラン、1,3-プロパンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、1,2-エタンジスルホン酸無水物、1,6-ジイソシアナトヘキサン、スクシノニトリル、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、t-ブチルベンゼン、ビニルエチレンカーボネート、ジフルオロアニソール、ジメチルビニレンカーボネートや下記一般式[12]で示される化合物等の過充電防止効果、負極皮膜形成効果や正極保護効果を有する化合物が挙げられる。
[一般式[12]中、Z
1~Z
4は、それぞれ互いに独立して、フッ素原子、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルコキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルケニルオキシ基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニル基、炭素数が2~10の直鎖あるいは分岐状のアルキニルオキシ基、炭素数が3~10のシクロアルキル基、炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、炭素数が3~10のシクロアルケニル基、炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、炭素数が6~10のアリール基、及び、炭素数が6~10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる有機基であり、その有機基中にフッ素原子、酸素原子、不飽和結合が存在することもできる。
なお「有機基中にフッ素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基における水素原子がフッ素原子に置換されたものを指す。
また「有機基中に酸素原子が存在する場合」とは、具体的には上記の基の炭素原子の間に「-O-」(エーテル結合)が介在する基が挙げられる。
M
p+は、プロトン、金属カチオン、又はオニウムカチオンであり、pは当該カチオンの価数である。]
また、上記溶質(リチウム塩、ナトリウム塩)以外の金属塩を添加剤として用いてもよい。具体的には、アクリル酸リチウム、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸ナトリウムなどのカルボン酸塩、リチウムメチルサルフェート、ナトリウムメチルサルフェート、リチウムエチルサルフェート、ナトリウムエチルサルフェートなどの硫酸エステル塩などが挙げられる。
また、リチウムポリマー電池と呼ばれる非水電解液電池に使用される場合のように非水電解液電池用電解液をゲル化剤や架橋ポリマーにより擬固体化して使用することも可能である。
【0041】
3.非水電解液電池
本発明の非水電解液電池は、少なくとも、(ア)上記の非水電解液電池用電解液と、(イ)正極と、(ウ)リチウム金属を含む負極材料、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はマグネシウムの吸蔵放出が可能な負極材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する負極とを含む。さらには、(エ)セパレータや外装体等を含むことが好ましい。
【0042】
〔(イ)正極〕
(イ)正極は、少なくとも1種の酸化物及び/又はポリアニオン化合物を正極活物質として含むことが好ましい。
【0043】
[正極活物質]
非水電解液中のカチオンがリチウム主体となるリチウムイオン二次電池の場合、(イ)正極を構成する正極活物質は、充放電が可能な種々の材料であれば特に限定されるものでないが、例えば、(A)ニッケル、マンガン、コバルトの少なくとも1種以上の金属を含有し、かつ層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、(B)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、(C)リチウム含有オリビン型リン酸塩、及び(D)層状岩塩型構造を有するリチウム過剰層状遷移金属酸化物から少なくとも1種を含有するものが挙げられる。
【0044】
((A)リチウム遷移金属複合酸化物)
正極活物質(A)ニッケル、マンガン、コバルトの少なくとも1種以上の金属を含有し、かつ層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物、リチウム・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物等が挙げられる。また、これらリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部を、Al、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、B、Ba、Y、Sn等の他の元素で置換したものを用いても良い。
【0045】
リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル複合酸化物の具体例としては、LiCoO2、LiNiO2やMg、Zr、Al、Ti等の異種元素を添加したコバルト酸リチウム(LiCo0.98Mg0.01Zr0.01O2、LiCo0.98Mg0.01Al0.01O2、LiCo0.975Mg0.01Zr0.005Al0.01O2等)、WO2014/034043号公報に記載の表面に希土類の化合物を固着させたコバルト酸リチウム等を用いても良い。また、特開2002-151077号公報等に記載されているように、LiCoO2粒子粉末の粒子表面の一部に酸化アルミニウムが被覆したものを用いても良い。
【0046】
リチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物については、一般式[1-1]で示される。
LiaNi1-b-cCobM1
cO2 [1-1]
式[1-1]中、M1はAl、Fe、Mg、Zr、Ti、Bからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、aは0.9≦a≦1.2であり、b、cは、0.1≦b≦0.3、0≦c≦0.1の条件を満たす。
これらは、例えば、特開2009-137834号公報等に記載される製造方法等に準じて調製することができる。具体的には、LiNi0.8Co0.2O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.87Co0.10Al0.03O2、LiNi0.6Co0.3Al0.1O2等が挙げられる。
【0047】
リチウム・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物の具体例としては、LiNi0.5Mn0.5O2、LiCo0.5Mn0.5O2等が挙げられる。
【0048】
リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物としては、一般式[1-2]で示されるリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
LidNieMnfCogM2
hO2 [1-2]
式[1-2]中、M2はAl、Fe、Mg、Zr、Ti、B、Snからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、dは0.9≦d≦1.2であり、e、f、g及びhは、e+f+g+h=1、0≦e≦0.8、0≦f≦0.5、0≦g≦0.5、及びh≧0の条件を満たす。
リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物は、構造安定性を高め、リチウム二次電池における高温での安全性を向上させるためにマンガンを一般式[1-2]に示す範囲で含有するものが好ましく、特にリチウムイオン二次電池の高率特性を高めるためにコバルトを一般式[1-2]に示す範囲でさらに含有するものがより好ましい。
具体的には、例えば4.3V以上に充放電領域を有する、Li[Ni1/3Mn1/3Co1/3]O2、Li[Ni0.45Mn0.35Co0.2]O2、Li[Ni0.5Mn0.3Co0.2]O2、Li[Ni0.6Mn0.2Co0.2]O2、Li[Ni0.49Mn0.3Co0.2Zr0.01]O2、Li[Ni0.49Mn0.3Co0.2Mg0.01]O2等が挙げられる。
【0049】
((B)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物)
正極活物質(B)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物としては、例えば、一般式[1-3]で示されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物が挙げられる。
Lij(Mn2-kM3
k)O4 [1-3]
式[1-3]中、M3はNi、Co、Fe、Mg、Cr、Cu、Al及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属元素であり、jは1.05≦j≦1.15であり、kは0≦k≦0.20である。
具体的には、例えば、LiMn2O4、LiMn1.95Al0.05O4、LiMn1.9Al0.1O4、LiMn1.9Ni0.1O4、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。
【0050】
((C)リチウム含有オリビン型リン酸塩)
正極活物質(C)リチウム含有オリビン型リン酸塩としては、例えば一般式[1-4]で示されるものが挙げられる。
LiFe1-nM4
nPO4 [1-4]
式[1-4]中、M4はCo、Ni、Mn、Cu、Zn、Nb、Mg、Al、Ti、W、Zr及びCdから選ばれる少なくとも1つであり、nは、0≦n≦1である。
具体的には、例えば、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4等が挙げられ、中でもLiFePO4及び/又はLiMnPO4が好ましい。
【0051】
((D)リチウム過剰層状遷移金属酸化物)
正極活物質(D)層状岩塩型構造を有するリチウム過剰層状遷移金属酸化物としては、例えば一般式[1-5]で示されるものが挙げられる。
xLiM5O2・(1-x)Li2M6O3 [1-5]
式[1-5]中、xは、0<x<1を満たす数であり、M5は、平均酸化数が3+である少なくとも1種以上の金属元素であり、M6は、平均酸化数が4+である少なくとも1種の金属元素である。式[1-5]中、M5は、好ましくは3価のMn、Ni、Co、Fe、V、Crから選ばれてなる1種の金属元素であるが、2価と4価の等量の金属で平均酸化数を3価にしてもよい。
また、式[1-5]中、M6は、好ましくはMn、Zr、Tiから選ばれてなる1種以上の金属元素である。具体的には、0.5[LiNi0.5Mn0.5O2]・0.5[Li2MnO3]、0.5[LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2]・0.5[Li2MnO3]、0.5[LiNi0.375Co0.25Mn0.375O2]・0.5[Li2MnO3]、0.5[LiNi0.375Co0.125Fe0.125Mn0.375O2]・0.5[Li2MnO3]、0.45[LiNi0.375Co0.25Mn0.375O2]・0.10[Li2TiO3]・0.45[Li2MnO3]等が挙げられる。
この一般式[1-5]で表される正極活物質(D)は、4.4V(Li基準)以上の高電圧充電で高容量を発現することが知られている(例えば、米国特許7,135,252)。
これら正極活物質は、例えば特開2008-270201号公報、WO2013/118661号公報、特開2013-030284号公報等に記載される製造方法等に準じて調製することができる。
【0052】
正極活物質としては、上記(A)~(D)から選ばれる少なくとも1つを主成分として含有すればよいが、それ以外に含まれるものとしては、例えばFeS2、TiS2、TiO2、V2O5、MoO3、MoS2等の遷移元素カルコゲナイド、あるいはポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、及びポリピロール等の導電性高分子、活性炭、ラジカルを発生するポリマー、カーボン材料等が挙げられる。
【0053】
[正極集電体]
(イ)正極は、正極集電体を有する。正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又はこれらの合金等を用いることができる。
【0054】
[正極活物質層]
(イ)正極は、例えば正極集電体の少なくとも一方の面に正極活物質層が形成される。正極活物質層は、例えば、前述の正極活物質と、結着剤と、必要に応じて導電剤とにより構成される。
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、炭素繊維、黒鉛(粒状黒鉛や燐片状黒鉛)、フッ素化黒鉛等の炭素材料を用いることができる。正極においては、結晶性の低いアセチレンブラックやケッチェンブラックを用いることが好ましい。
【0055】
〔(ウ)負極〕
負極材料としては、特に限定されないが、リチウム電池及びリチウムイオン電池の場合、リチウム金属、リチウム金属と他の金属との合金や金属間化合物、種々の炭素材料(人造黒鉛、天然黒鉛など)、金属酸化物、金属窒化物、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、活性炭、導電性ポリマー等が用いられる。
【0056】
炭素材料とは、例えば、易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素(ハードカーボン)や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解性炭素、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類にはピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。炭素材料は、リチウムの吸蔵及び放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られるので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。また、非晶質炭素や非晶質炭素を表面に被覆した黒鉛材料は、材料表面と電解液との反応性が低くなるため、より好ましい。
【0057】
(ウ)負極は、少なくとも1種の負極活物質を含むことが好ましい。
【0058】
[負極活物質]
非水電解液中のカチオンがリチウム主体となるリチウムイオン二次電池の場合、(ウ)負極を構成する負極活物質としては、リチウムイオンのド-プ・脱ド-プが可能なものであり、例えば(E)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素材料、(F)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nmを超える炭素材料、(G)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属の酸化物、(H)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属若しくはこれら金属を含む合金又はこれら金属若しくは合金とリチウムとの合金、及び(I)リチウムチタン酸化物から選ばれる少なくとも1種を含有するものが挙げられる。これら負極活物質は、1種を単独で用いることができ、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0059】
((E)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素材料)
負極活物質(E)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素材料としては、例えば熱分解炭素類、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、有機高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等が挙げられ、これらは黒鉛化したものでもよい。当該炭素材料は、X線回折法で測定した(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以下のものであり、中でも、その真密度が1.70g/cm3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料が好ましい。
【0060】
((F)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nmを超える炭素材料)
負極活物質(F)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nmを超える炭素材料としては、非晶質炭素が挙げられ、これは、2000℃以上の高温で熱処理してもほとんど積層秩序が変化しない炭素材料である。例えば難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、1500℃以下で焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソペーズビッチカーボンファイバー(MCF)等が例示される。
【0061】
((G)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属の酸化物)
負極活物質(G)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属の酸化物としては、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な、例えば酸化シリコン、酸化スズ等が挙げられる。
Siの超微粒子がSiO2中に分散した構造を持つSiOx等がある。この材料を負極活物質として用いると、Liと反応するSiが超微粒子であるために充放電がスムーズに行われる一方で、上記構造を有するSiOx粒子自体は表面積が小さいため、負極活物質層を形成するための組成物(ペースト)とした際の塗料性や負極合剤層の集電体に対する接着性も良好である。
なお、SiOxは充放電に伴う体積変化が大きいため、SiOxと上述負極活物質(E)の黒鉛とを特定比率で負極活物質に併用することで高容量化と良好な充放電サイクル特性とを両立することができる。
【0062】
((H)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属若しくはこれら金属を含む合金又はこれら金属若しくは合金とリチウムとの合金)
負極活物質(H)Si、Sn、Alから選ばれる1種以上の金属若しくはこれら金属を含む合金又はこれら金属若しくは合金とリチウムとの合金としては、例えばシリコン、スズ、アルミニウム等の金属、シリコン合金、スズ合金、アルミニウム合金等が挙げられ、これらの金属や合金が、充放電に伴いリチウムと合金化した材料も使用できる。
これらの好ましい具体例としては、WO2004/100293号や特開2008-016424号等に記載される、例えばケイ素(Si)、スズ(Sn)等の金属単体(例えば粉末状のもの)、該金属合金、該金属を含有する化合物、該金属にスズ(Sn)とコバルト(Co)とを含む合金等が挙げられる。当該金属を電極に使用した場合、高い充電容量を発現することができ、かつ、充放電に伴う体積の膨張・収縮が比較的少ないことから好ましい。また、これらの金属は、これをリチウムイオン二次電池の負極に用いた場合に、充電時にLiと合金化するため、高い充電容量を発現することが知られており、この点でも好ましい。
さらに、例えばWO2004/042851号、WO2007/083155号等に記載される、サブミクロン直径のシリコンのピラーから形成された負極活物質、シリコンで構成される繊維からなる負極活物質等を用いてもよい。
【0063】
((I)リチウムチタン酸化物)
負極活物質(I)リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム等を挙げることができる。
スピネル構造を有するチタン酸リチウムとしては、例えば、Li4+αTi5O12(αは充放電反応により0≦α≦3の範囲内で変化する)を挙げることができる。また、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウムとしては、例えば、Li2+βTi3O7(βは充放電反応により0≦β≦3の範囲内で変化する)を挙げることができる。これら負極活物質は、例えば特開2007-018883号公報、特開2009-176752号公報等に記載される製造方法等に準じて調製することができる。
例えば、非水電解液中のカチオンがナトリウム主体となるナトリウムイオン二次電池の場合、負極活物質としてハードカーボンやTiO2、V2O5、MoO3等の酸化物等が用いられる。例えば、非水電解液中のカチオンがナトリウム主体となるナトリウムイオン二次電池の場合、正極活物質としてNaFeO2、NaCrO2、NaNiO2、NaMnO2、NaCoO2等のナトリウム含有遷移金属複合酸化物、それらのナトリウム含有遷移金属複合酸化物のFe、Cr、Ni、Mn、Co等の遷移金属が複数混合したもの、それらのナトリウム含有遷移金属複合酸化物の遷移金属の一部が他の遷移金属以外の金属に置換されたもの、Na2FeP2O7、NaCo3(PO4)2P2O7等の遷移金属のリン酸化合物、TiS2、FeS2等の硫化物、あるいはポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、及びポリピロール等の導電性高分子、活性炭、ラジカルを発生するポリマー、カーボン材料等が使用される。
【0064】
[負極集電体]
(ウ)負極は、負極集電体を有する。負極集電体としては、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又はこれらの合金等を用いることができる。
【0065】
[負極活物質層]
(ウ)負極は、例えば負極集電体の少なくとも一方の面に負極活物質層が形成される。負極活物質層は、例えば、前述の負極活物質と、結着剤と、必要に応じて導電剤とにより構成される。
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、炭素繊維、黒鉛(粒状黒鉛や燐片状黒鉛)、フッ素化黒鉛等の炭素材料を用いることができる。
【0066】
〔電極((イ)正極及び(ウ)負極)の製造方法〕
電極は、例えば、活物質と、結着剤と、必要に応じて導電剤とを所定の配合量でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)や水等の溶媒中に分散混練し、得られたペーストを集電体に塗布、乾燥して活物質層を形成することで得ることができる。得られた電極は、ロールプレス等の方法により圧縮して、適当な密度の電極に調節することが好ましい。
【0067】
〔(エ)セパレータ〕
上記の非水電解液電池は、(エ)セパレータを備えることができる。(イ)正極と(ウ)負極の接触を防ぐためのセパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、セルロース、紙、又はガラス繊維等で作られた不織布や多孔質シートが使用される。これらのフィルムは、電解液がしみ込んでイオンが透過し易いように、微多孔化されているものが好ましい。
ポリオレフィンセパレ-タとしては、例えば多孔性ポリオレフィンフィルム等の微多孔性高分子フィルムといった正極と負極とを電気的に絶縁し、かつリチウムイオンが透過可能な膜が挙げられる。多孔性ポリオレフィンフィルムの具体例としては、例えば多孔性ポリエチレンフィルム単独、又は多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンフィルムとを重ね合わせて複層フィルムとして用いてもよい。また、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとを複合化したフィルム等が挙げられる。
【0068】
〔外装体〕
非水電解液電池を構成するにあたり、非水電解液電池の外装体としては、例えばコイン型、円筒型、角型等の金属缶や、ラミネート外装体を用いることができる。金属缶材料としては、例えばニッケルメッキを施した鉄鋼板、ステンレス鋼板、ニッケルメッキを施したステンレス鋼板、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が挙げられる。
ラミネート外装体としては、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、SUS製ラミネートフィルム、シリカをコーティングしたポリプロピレン、ポリエチレン等のラミネートフィルム等を用いることができる。
【0069】
本実施形態にかかる非水電解液電池の構成は、特に制限されるものではないが、例えば、正極及び負極が対向配置された電極素子と、非水電解液とが、外装体に内包されている構成とすることができる。非水電解液電池の形状は、特に限定されるものではないが、以上の各要素からコイン状、円筒状、角形、又はアルミラミネートシート型等の形状の電気化学デバイスが組み立てられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定されるものではない。
【0071】
<リチウムイオン電池について>
[実施例1C-1]
(電解液の調製)
非水溶媒としてエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートの体積比3:3:4の混合溶媒を用い、該溶媒中に溶質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように、上記イミン化合物として化合物(1C-1)(電解液中に溶解させる前の原料としての当該イミン化合物中の、Cl含有量は10質量ppmであり、遊離酸含有量は60質量ppmであった)を、非水溶媒と溶質とイミン化合物の総量に対して1.0質量%の濃度となるように溶解し、非水電解液電池用電解液No.(1C-1)-1-(0)を調製した。上記の調製は、液温を20~30℃の範囲に維持しながら行った。非水電解液の調製条件を表1に示す。
【0072】
(電池の作製)
上記電解液を用いてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2を正極材料、黒鉛を負極材料としてセルを作製し、実際に電池の初期ガス発生量、高温保存特性を評価した。試験用セルは以下のように作製した。
【0073】
LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のポリフッ化ビニリデン(以降「PVDF」と記載する)、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN-メチルピロリドン(以降「NMP」と記載する)を添加し、ペースト状にした。このペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより、試験用正極体とした。
また、黒鉛粉末90質量%に、バインダーとして10質量%のPVDFを混合し、さらにNMPを添加し、スラリー状にした。このスラリーを銅箔上に塗布して、120℃で12時間乾燥させることにより、試験用負極体とした。
そして、ポリエチレン製セパレータに電解液を浸み込ませてアルミラミネート外装の50mAhセルを組み立てた。
【0074】
[初期ガス発生量評価]
上記のセルを用いて、25℃の環境温度での充放電試験を実施し、その際に発生したガス量を初期ガス発生量として評価した。充電、放電ともに電流密度0.35mA/cm2で行い、充電は、4.3Vに達した後、1時間4.3Vを維持、放電は、3.0Vまで行った。その充放電前後において、シリコンオイルを用いた浮力法によりセルの容積の増大量を見積もることで、ガス発生量を評価した。
【0075】
[高温保存特性評価(70℃耐久性能)]
上記の充放電後、再度、電流密度0.35mA/cm2で4.3Vまで充電した後に、70℃の環境温度で10日間保存した。その後、25℃の環境温度で電流密度0.35mA/cm2で、3.0Vまで放電し、その放電容量を比較評価した。
【0076】
上記の電池の評価結果を表2に示す。なお、表2中の電池のガス発生量及び70℃耐久性能のそれぞれの値は、後述の電解液No.(0)-(0)を用いて作製したラミネートセルの初充放電後のガス発生量、及び70℃保存試験後の放電容量をそれぞれ100としたときの相対値である。
【0077】
[実施例1C-2~4C-2、比較例1-1~1-3]
表1に示すように、イミン化合物の種類を変え、それ以外は電解液No.(1C-1)-1-(0)と同様の手順で、それぞれの電解液を調製した。なお、以降の実施例で用いたイミン化合物中の、Cl含有量はすべて200質量ppm以下であり、遊離酸含有量は150質量ppm以下であった。
また、イミン化合物を添加しなかった以外は、電解液No.(1C-1)-1-(0)と同様の手順で、電解液No.(0)-(0)を調製した。
また、イミン化合物を添加せずに、代わりにビニレンカーボネート(以降、「VC」と記載する)を添加した以外は、電解液No.(1C-1)-1-(0)と同様の手順で、電解液No.(0)-(VC)-1を調製した。
また、イミン化合物を添加せずに、代わりに1,3-プロペンスルトン(以降、「13PRS」と記載する)を添加した以外は、電解液No.(1C-1)-1-(0)と同様の手順で、電解液No.(0)-(13PRS)-1を調製した。
得られた電解液を実施例1C-1と同様の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0078】
【0079】
【0080】
従来のビニレンカーボネートや不飽和スルトンを添加した組成の電解液を用いた比較例1-2や1-3に比べて、本発明の特定の構造のイミン化合物を含有する組成の電解液を用いると、初期のガス発生量を抑制できることが確認できた。特に、イミン化合物として、(1C-1)、(1C-4)、(1C-5)、(1C-6)、(1C-7)、(1C-9)、(1C-11)、(1C-13)、(1S-2)、(1S-4)、(1S-5)、(2C-1)、(2C-2)、(2C-4)、(3C-6)、(3C-9)、(3S-1)を用いると、初期のガス発生量を抑制する効果が大きいことが確認された。
【0081】
また、参考までに、高温保存特性評価(70℃耐久性能)の結果を表中に記載しているが、いずれの実施例においても70℃耐久性能が大きく損なわれることなく初期のガス発生量を抑制できる、すなわち、初期のガス発生量の抑制と70℃耐久性能をバランスよく発揮できることが確認された。
特に、イミン化合物として、(1C-1)、(1C-4)、(1C-6)、(1C-7)、(1C-9)、(1C-11)、(1C-13)、(1S-2)、(1S-3)、(1S-9)、(2C-1)、(2C-2)、(2C-4)、(3C-6)を用いると、初期のガス発生量を抑制する効果に加え、70℃耐久性能に優れることが確認された。
【0082】
[実施例1-1~1-33、比較例1-1~1-17]
表3、4に示すように、イミン化合物の種類や濃度、溶質の濃度を変え、それ以外は電解液No.(1C-1)-1-(0)と同様の手順で、それぞれの電解液を調製し、得られた電解液を実施例1C-1と同様の方法で評価した。評価結果を表5、6に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
表3~6に示すように、イミン化合物の種類を変えた場合(例えば、実施例1-2、1-7~1-9、1-11~1-12、1-16、1-18、1-22~1-24、1-27~1-33)であっても、従来のビニレンカーボネートや不飽和スルトンを添加した組成の電解液を用いた比較例(例えば、比較例1-2や1-3)に比べて、初期のガス発生量を抑制できることが確認できた。
また、イミン化合物の濃度、溶質の濃度を変えた場合であっても、同様に、初期のガス発生量を抑制できることが確認できた。
また、表3、4のすべての実施例において、初期のガス発生量の抑制と70℃耐久性能をバランスよく発揮できることが確認された。
【0088】
[組成を種々変更した電解液を用いた実施例、比較例について]
表7~10、16に示すように、イミン化合物の種類や濃度、その他の溶質や添加剤の種類や濃度を種々変更した以外は、電解液No.(1C-1)-1-(0)と同様の手順で、表11~15、17の実施例及び比較例に係る電解液をそれぞれ調製した。
得られた電解液を実施例1C-1と同様の方法で評価したところ、表11~15、17に示すように、それぞれの実施例においても、従来のビニレンカーボネートや不飽和スルトンを添加した組成の電解液を用いた対応する比較例に比べて、初期のガス発生量を抑制できることが確認できた。
また、表11~15、17のすべての実施例において、初期のガス発生量の抑制と70℃耐久性能をバランスよく発揮できることが確認された。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
なお表中で、「LiPF2(Ox)2」はLiPF2(C2O4)2を意味し、「LiPF4(Ox)」はLiPF4(C2O4)を意味し、「LiBF2(Ox)」はLiBF2(C2O4)を意味し、「LiB(Ox)2」はLiB(C2O4)2を意味し、「LiN(FSO2)(POFpropynyloxy)」はLiN(FSO2)(POF(OCH2C≡CH)) を意味し、「FEC」はフルオロエチレンカーボネートを意味し、「13PS」は1,3-プロパンスルトンを意味し、「V4Si」はテトラビニルシランを意味し、「TDFEC」はtrans-ジフルオロエチレンカーボネートを意味し、「MMDS」はメチレンメタンジスルホネートを意味し、「12EDSAA」は1,2-エタンジスルホン酸無水物を意味し、「EEC」はエチニルエチレンカーボネートを意味し、「DICH」は1,6-ジイソシアナトヘキサンを意味し、「SN」はスクシノニトリルを意味し、「EPFCTP」は(エトキシ)ペンタフルオロシクロトリホスファゼンを意味し、「TBB」はt-ブチルベンゼンを意味し、「BP」はビフェニルを意味し、「CHB」はシクロヘキシルベンゼンを意味する。
【0101】
[負極体を種々変更した実施例、比較例について]
表18~20に示すように、電解液及び負極体を種々変更した構成の電池を作製して上述と同様に評価した。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
なお、負極活物質がLi4Ti5O12である負極体は、Li4Ti5O12粉末90質量%に、バインダーとして5質量%のPVDF、導電剤としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにNMPを添加し、得られたペーストを銅箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し、電池評価の際の充電終止電圧を2.7V、放電終止電圧を1.5Vとした。
【0106】
また、負極活物質が黒鉛(ケイ素含有)である負極体は、黒鉛粉末80質量%に、ケイ素粉末10質量%、バインダーとして10質量%のPVDFを混合し、さらにNMPを添加し、得られたペーストを銅箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し、電池評価の際の充電終止電圧と放電終止電圧は実施例1-1と同様とした。
【0107】
また、負極活物質がハードカーボンである負極体は、ハードカーボン90質量%に、バインダーとして5質量%のPVDF、導電剤としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにNMPを添加し、得られたペーストを銅箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し、電池評価の際の充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を2.2Vとした。
【0108】
上記のように、負極活物質として、Li4Ti5O12、黒鉛(ケイ素含有)、ハードカーボンを用いたいずれの電極構成においても、従来のビニレンカーボネートや不飽和スルトンを添加した組成の電解液を用いた比較例に比べて、本発明の特定の構造のイミン化合物を含有する組成の電解液を用いると、初期のガス発生量を抑制できることが確認された。従って、本発明の特定の構造のイミン化合物を含有する組成の電解液を用いることで、負極活物質の種類によらず、初期のガス発生量を抑制できる非水電解液電池が得られた。
また、表18~20のすべての実施例において、初期のガス発生量の抑制と70℃耐久性能をバランスよく発揮できることが確認された。
【0109】
[正極体を種々変更した実施例、比較例について]
表21~24に示すように、電解液及び正極体を種々変更した構成の電池を作製して上述と同様に評価した。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
なお、正極活物質がLiCoO2である正極体は、LiCoO2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにNMPを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製した。電池評価の際の充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を3.0Vとした。
【0115】
また、正極活物質がLiNi0.8Co0.15Al0.05O2である正極体は、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにNMPを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製した。電池評価の際の充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を3.0Vとした。
【0116】
また、正極活物質がLiMn2O4である正極体は、LiMn2O4粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN-メチルピロリドンを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製した。電池評価の際の充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を3.0Vとした。
【0117】
また、正極活物質がLiFePO4である正極体は、非晶質炭素で被覆されたLiFePO4粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにNMPを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製した。電池評価の際の充電終止電圧を4.1V、放電終止電圧を2.5Vとした。
【0118】
上記のように、正極活物質として、LiCoO2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiMn2O4、LiFePO4を用いたいずれの電極構成においても、従来のビニレンカーボネートや不飽和スルトンを添加した組成の電解液を用いた比較例に比べて、本発明の特定の構造のイミン化合物を含有する組成の電解液を用いると、初期のガス発生量を抑制できることが確認された。従って、本発明の特定の構造のイミン化合物を含有する組成の電解液を用いることで、正極活物質の種類によらず、初期のガス発生量を抑制できる非水電解液電池が得られた。
また、表21~24のすべての実施例において、初期のガス発生量の抑制と70℃耐久性能をバランスよく発揮できることが確認された。
【0119】
<ナトリウムイオン電池について>
[実施例23-1]
(電解液の調製)
非水溶媒としてプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートの体積比2:2:6の混合溶媒を用い、該溶媒中に、溶質としてNaPF6を1.0mol/Lの濃度となるように、上記イミン化合物として化合物(1C-7)(電解液中に溶解させる前の原料としての当該イミン化合物中のCl含有量は10質量ppm)を、非水溶媒と溶質とイミン化合物の総量に対して1.0質量%の濃度となるように溶解し、非水電解液電池用電解液No.Na(1C-7)-1-(0)を調製した。上記の調製は、液温を25℃に維持しながら行った。非水電解液の調製条件を表25に示す。
【0120】
(電池の作製)
上記電解液を用いてNaFe0.5Co0.5O2を正極材料、ハードカーボンを負極材料とした以外は実施例1C-1と同様にセルの作製を行い、実施例1C-1と同様に電池の評価を実施した。なお、正極活物質がNaFe0.5Co0.5O2である正極体は、NaFe0.5Co0.5O2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにNMPを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製した。電池評価の際の充電終止電圧を3.8V、放電終止電圧を1.5Vとした。
【0121】
上記の電池の評価結果を表26に示す。なお、表26中の電池のガス発生量及び70℃耐久性能のそれぞれの値は、後述の電解液No.Na(0)-(0)を用いて作製したラミネーセルの初充放電後のガス発生量、及び70℃保存試験後の放電容量をそれぞれ100としたときの相対値である。
【0122】
【0123】
【0124】
[実施例23-2~23-7、24-1~24-8、25-1~25-8、比較例23-1~23-7、24-1~24-8、25-1~25-8]
表25に示すように、イミン化合物の種類やその濃度の変更や、その他の溶質や添加剤の種類やその濃度の変更をした以外は、電解液No.Na(1C-7)-1-(0)と同様の手順で、表26~28の実施例及び比較例に係る電解液をそれぞれ調製した。
得られた電解液を用いて、実施例23-1と同様の手順で表26~28に記載の電極構成の電池を作製して上述と同様に評価した。
なお、正極活物質がNaFe0.4Ni0.3Mn0.3O2である正極体は、NaFe0.4Ni0.3Mn0.3O2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにNMPを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製した。電池評価の際の充電終止電圧を4.1V、放電終止電圧を2.0Vとした。
また、正極活物質がNaNi1/3Ti1/6Mn1/2O2である正極体は、NaNi1/3Ti1/6Mn1/2O2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにNMPを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製した。電池評価の際の充電終止電圧を4.5V、放電終止電圧を1.5Vとした。
【0125】
【0126】
【0127】
表26~28の結果から、ナトリウムイオン電池においても、従来のフルオロエチレンカーボネートを添加した組成の電解液を用いた比較例に比べて、本発明の特定の構造のイミン化合物を含有する組成の電解液を用いると、初期のガス発生量を抑制できることが確認された。従って、本発明の特定の構造のイミン化合物を含有する組成の電解液を用いることで、ナトリウムイオン電池においても、初期のガス発生量を抑制できる非水電解液電池が得られた。
また、表26~28のすべての実施例において、初期のガス発生量の抑制と70℃耐久性能をバランスよく発揮できることが確認された。