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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20221109BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20221109BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20221109BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20221109BHJP
   B41M 1/34 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H01L29/78 626C
H01L29/78 617K
H01L29/78 616S
H01L29/78 616K
H01L29/78 617J
H01L29/78 627C
H01L27/06 102A
H01L27/088 331E
H01L21/288 Z
H01L29/50 M
H01B1/22 A
B41M1/30 Z
B41M1/34
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017187916
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019062167
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横尾 正浩
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-277832(JP,A)
【文献】特開2009-170447(JP,A)
【文献】特開2006-037071(JP,A)
【文献】特開2016-058443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0286361(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0285084(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0048501(KR,A)
【文献】特開2007-142022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
H01L 21/8234
H01L 27/088
H01L 21/288
H01L 29/417
H01B 1/22
B41M 1/30
B41M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基板上に、少なくともゲート電極と第一絶縁層がこの順に備えられており、
前記第一絶縁層の上に、ソース電極とドレイン電極と半導体層とが備えられており、
ソース電極とドレイン電極と半導体層の上に第二絶縁層が備えられてなる薄膜トランジスタにおいて、
ゲート電極とソース電極とドレイン電極の各々の空隙率が10%以上80%以下であり、ゲート電極とソース電極とドレイン電極は、曲率半径5mmの曲げ試験を1000回実施後、亀裂のないことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記ソース電極表面および前記ドレイン電極表面の算術平均粗さRaが3nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記ソース電極および前記ドレイン電極が金属のナノ粒子を含むインキからなることを 特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版反転オフセット印刷により作製された薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の低コスト化および微細化に対応するため、電子部品が備える金属配線や絶縁層などのパターン状の皮膜を印刷法により形成することが試みられている。
【0003】
印刷法のなかでも、微細なパターンを形成可能な印刷法として、凸版反転オフセット印刷法が検討されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
凸版反転オフセット印刷法に用いる印刷装置の模式図を図6に示す。なお、図5及び図6中の白抜き矢印は移動方向を示している。図6には、通称ブランケット52と呼ばれる筒状のインキ膜形成基材と、ブランケット52にインキを供給しインキ膜53とするインキ供給手段51と、ブランケット52上に形成されたインキ膜53から不要部53bを除去する除去版54と、ブランケット52上に残された必要部53aが転写されて印刷物となる被印刷基板55と、除去版54および被印刷基板55を印刷に適切な位置へ搬送する定盤56が示されている。ブランケット52には通常インキ膜53が剥がれ易いような処理がなされている。例えばシリコーンゴムが用いられる。また、除去版54は板状のガラス版を用い、定盤56上に吸着設置する。
【0005】
次に、図5を使用して印刷工程について説明する。
まず、インキ供給手段41からインキをブランケット42上に塗布してインキ膜43を形成する(図5(a))。このとき、インキはブランケット42上で予備乾燥状態に置かれ、含まれている溶媒の一部を失ってインキ膜43となる。ついで、該インキ膜43に対し所定形状の除去版44を接触させて該インキ膜43の不要部43bを転写してブランケット42から除去する(図5(b))。ここでは除去版44として必要部43aに対応する部位が凹部、不要部43bに対応する部位が凸部となった凸版を使用している。次に、該ブランケット42上に残った該インキ膜43の必要部43aを被印刷基板45に転写して、印刷物を得ることができる(図5(c))。
【0006】
このような凸版反転オフセット印刷法によりパターンを形成する例として、基材上に導電性インキを用いて印刷を行い、電磁波シールドを作製することが提案されている(例えば特許文献2参照)。このほか、さまざまなパターンを印刷した印刷物の製造が望まれている。特に、一つの印刷面に対し、キャパシタ電極と配線パターンなど、大面積のべたパターンと、細く間隔の狭いパターンの両方が混在したパターンの形成が望まれていた。
【0007】
一方、これまで可撓性のフィルム基板上にスパッタリング法で得られる金属薄膜をパターニングした金属配線パターンを使用して薄膜トランジスタを作製して来たが、スパッタリング法によって作製した金属薄膜は、緻密で空隙率が小さく、表面の算術平均粗さRaも小さい。そのため、フィルム基板の曲げ変形により金属配線パターンに微小な亀裂や絶縁層との間にはがれ等が生じ易く、断線欠陥が発生する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭60-29358号公報
【文献】特開2005-175061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、可撓性フィルム基材上に形成された金属配線パターンが、曲げ変形を受けても、亀裂や絶縁層との剥れおよびそれらによる断線欠陥の発生が抑制された薄膜トランジスタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する手段として、本発明の第一の態様は、可撓性基板上に、少なくともゲート電極と第一絶縁層がこの順に備えられており、前記第一絶縁層の上に、前記第一絶縁層の上に、ソース電極とドレイン電極と半導体層とが備えられており、ソース電極とドレイン電極と半導体層の上に第二絶縁層が備えられてなる薄膜トランジスタにおいて、ゲート電極とソース電極とドレイン電極の各々の空隙率が10%以上80%以下であることを特徴とする薄膜トランジスタである。
【0011】
第二の態様は、前記ソース電極表面および前記ドレイン電極表面の算術平均粗さRaが3nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタである。
【0012】
第三の態様は、前記ソース電極および前記ドレイン電極が金属のナノ粒子を含むインキからなることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタである。
【発明の効果】
【0013】
ゲート電極およびソース電極およびドレイン電極の金属配線パターンを、金属のナノ粒子を含むインキで凸版反転オフセット印刷法にて設けることにより、スパッタリング法によって設けるよりも空隙率が高くすることができる。さらに表面粗さも大きくなるため、上層となる第一絶縁層および半導体層および第二絶縁層との密着性が向上した金属配線パターンが得られ、フィルム基板の曲げ変形によって生じる金属配線パターンの微小な亀裂やはがれ等を抑制し、高精細かつナノスケールの薄膜パターンにおいて断線欠陥のない金属配線パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に使用する凸版反転オフセット印刷用凸版の一例を示す断面図である。
図2】(a)は本発明に使用する凸版反転オフセット印刷用凸版の一例を示す上面図であり、(b)は(a)で示す図のA-Bラインでの断面図である。
図3】本発明に使用する凸版の製造工程の一例を示す模式図である。
図4】本発明に係る有機薄膜トランジスタの一例を示す断面図である。
図5】反転オフセット印刷法を説明する工程を例示する模式図である。
図6】反転オフセット印刷法に用いる装置を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に使用する凸版について、図を用いて説明する。
【0016】
本発明に使用する凸版の材料は、堅牢で加工が容易であることから、ガラスが好ましい。
【0017】
図1に示す凸版10は、ブランケット上のインキ膜から不要部を除去し、必要部を残すために、不要部に対応した部位が凸部(レリーフパターン)となるように形成されている。なお、ここで不要部とは基板上に印刷物として形成されない部分を指し、必要部とは、印刷物として形成される部分を指す。
図1を用いて説明すると、本明細書中では凸版表面の最も高い部位を凸部頂部14、最も低い部位を凹部底面16とし、凸部の側面、あるいは凹部17の側面でもある部位は凸
部側面15とする。凸部頂部14と凹部底面16の差を版深dとし、その許容される範囲は製造される印刷物によって選択される。
【0018】
<凸版の製造>
凸版の製造工程の一例について図3を用いて説明する。
まず、凸版基材31となる表面の凸部に対応する位置に所望のパターンを有するマスク32を形成する(図3(a))。マスク32は、次に行われるレリーフ形成工程において凸版基材31の表面を保護する役割を備えており、材料として、例えば金属を用いることができる。金属の場合は、凸版基材31の表面に蒸着の後、その表面の必要な部分を覆うようレジストを形成し、露出している金属のみをエッチングすることでパターン状に形成できる。
【0019】
こうして得られた、マスク済みの基材33のマスク32で覆われていない領域を彫り込んで凹部17を形成することによりレリーフ34を形成する(図3(b))。レリーフ34の形成方法は、選択した凸版基材31に応じて適宜選択することができる。例えばサンドブラスト、ウェットブラストなどのブラスト法、FIB(収束イオンビーム)による切削、ナノインプリンティング法、ドライエッチング、ウエットエッチング等を挙げることができる。
【0020】
レリーフ形成法として、例えば、ガラス基材にクロム蒸着を行い、このクロム皮膜上にフォトリソグラフィー法によってレジストを形成、不要部(すなわち必要部に対応する領域)を開口させ、エッチングを行う。次いでクロム皮膜上のレジストを剥離し、クロム皮膜をマスクとしてガラス基材のウエットエッチングを行うことにより、ガラス基材に所定の深さのレリーフパターンを形成することができる。
【0021】
次に場合によって、凸版側面及び凹部底面(すなわちエッチングによって新たに形成された凹部17の内面)に対して、撥インキ処理35を行ってもよい。凸版基材31に形成された凸部側面と凹部底面に撥インキ処理面(シランカップリング剤単分子膜)36が形成される(図3(c))。
【0022】
撥インキ処理35をするために選択する表面処理剤は用いるインキによって異なるが、撥水性や撥油性の高いフッ素元素やシロキサン基が含まれるシランカップリング剤を用いるのが好ましい。好ましく用いることのできる化合物としては例えば、長鎖フルオロアルキルシラン、加水分解性基含有シロキサン、フルオロエーテル基含有ポリマー、フルオロアルキル基含有オリゴマーなどが挙げられる。
【0023】
凸版基材31に形成された凸部側面と凹部底面の表面に撥インキ処理35を施す方法としては、上述のカップリング剤をその表面に化学的に結合させて固定する方法を挙げることができる。例えば、シランカップリング剤を使用した公知のガラス表面処理方法を用いることができる。すなわち、シランカップリング剤を水、酢酸水、水-アルコール混合液、あるいはアルコールに溶解させてカップリング剤溶液を調製する。次いで、前記カップリング剤溶液を公知の塗工方法であるスピンコート、ロールコート、アプリケータなどを用いてガラス表面に塗工する。最後に加熱乾燥して溶媒を除くことでシランカップリング剤をガラスなどの凸版基材31に形成された凸部側面と凹部底面の表面に固定できる。このとき加熱乾燥によって、シランカップリング剤とガラス表面はオリゴマー化することによって強固に結合するために、非常に耐性のある表面処理となる。
【0024】
図3(c)の撥インキ処理35後に、マスク32に付着した未反応のシランカップリング剤を洗浄して除去することで、必要部(パターン形成する位置)に該当する凹部17の内面に撥インキ処理35が施された本発明の薄膜トランジスタの製造に使用する撥インキ
処理凸版30を得ることができる(図3(d))。
【0025】
<薄膜トランジスタの製造>
前述の撥インキ処理凸版30(図3(d))を用いた凸版反転オフセット印刷法による薄膜トランジスタの製造について、図4図5図6を用い説明する。なお、既に説明したものについては説明を省略する。
【0026】
図5、6に示す様に、凸版反転オフセット印刷法に用いられるブランケット42、52に使用されるインキ膜形成部材の材料としては、インキ膜53の形成、凸版である除去版44、54による非画像部(不要部43b、53b)のインキ膜43、53の除去及び被印刷基板45、55への画像部(必要部43a、53a)のインキ膜の転写が可能なものが用いられる。また、変形の少ない材料が好ましいが、ある程度の柔軟性が求められる。このような材料として、シリコーン系エラストマー、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることができる。また、ブランケット42、52の表面の濡れ性を調整するため、ブランケット42、52の表面にフッ素樹脂およびシリコーンの塗布、プラズマ処理、UVオゾン洗浄処理などの表面処理を施しても良い。このようなインキ膜形成部材は通常可とう性の板として供給されるので、これを円筒形の版胴に巻きつけて用いたり(図6参照)、強度のある平板に固定して用いたりすることができる。
【0027】
図4に例示する本発明の薄膜トランジスタ70においては、前述のインキ膜43、53に金属のナノ粒子を含むインキを用いて、基板61上に、まずゲート電極63を印刷により形成する。次に、ゲート絶縁層に相当する第一絶縁層64を形成する。次に第一絶縁層64の上に、ソース電極66およびドレイン電極65の金属配線パターンを形成する。本発明の薄膜トランジスタ70のインキ膜に用いられるインキは、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウムなどをナノ粒子化し、塗液に分散させ、必要に応じて各種添加剤を加えた金属インキを用いることができる。このインキは、導電性インキとして用いられる。
次に、半導体層67を少なくともソース電極66とドレイン電極65に跨って形成後、その上に保護層に相当する第二絶縁層68を形成する。
次に、第二絶縁層68にドレイン電極65と導通をとるための貫通孔を形成し、第二絶縁層68上に画素電極69を形成することにより、薄膜トランジスタを形成することができる。
【0028】
ブランケット42、52上へのインキの供給手段41、51としては、均一なインキ膜43、53が形成できればよく、バーコート、ダイコート、キャップコート、スピンコート、スリットコート法等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
インキ膜43、53の転写によって画像が形成される被印刷基板45、55は、目的とする印刷物に応じて適宜選択することができる。電子部品を製造する場合は通常、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネートなどのフレキシブルなプラスチック材料、石英などのガラス基板やシリコンウェハーなどを挙げることができる。薄膜トランジスタ70が使用される環境に合わせてフィルム等の可撓性基材を選択することも可能であり、この場合は生産効率の向上のために長尺の基材を用い、連続して印刷を行うことが好ましい。
【0030】
インキ膜43、53の転写によって導電性インキパターンが形成された被印刷基板45、55は熱処理をすることで金属配線としての機能を発現する。このとき熱処理温度および熱処理時間を調整することで、金属配線の空隙率と表面粗さを所望の範囲にすることができる。なお、ここで空隙率とは金属配線の単位体積当りの隙間または空間の割合を百分率で表したものであるが、ここでは、金属配線の断面に単位面積当りの空間の割合を百分率で表したものも空隙率を指すものとする。
【0031】
本発明において、金属のナノ粒子を含む導電性インキによって形成されたソース電極66およびドレイン電極65のそれぞれの金属配線パターンの断面を観察した場合の空隙率の範囲が10%以上80%以下であることが好ましい。空隙率が10%未満の場合、可撓性のフィルム基板上に積層した金属配線パターンを曲率半径5mm以下で曲げ変形することで亀裂が発生する。一方、空隙率が80%より大きい場合、金属配線パターンの導電率が低下し、且つ安定しない。
【0032】
また、金属のナノ粒子を含む導電性インキによって形成されたソース電極66およびドレイン電極65の金属配線パターンの表面の算術平均粗さRaの範囲が、3nm以上30nm以下であることが好ましい。Raが3nm未満の場合、ナノ粒子の表面積が小さいため、金属配線パターンの上層に積層した第一絶縁層64や半導体層67との密着力が小さくなり、はがれが生じ易い。一方、Raが30nmより大きい場合、積層する半導体層67による被覆性が低下する。
【0033】
図5において、インキ膜形成基材であるブランケット42からインキ膜の不要部43bを除去後に、凸版である除去版44の凸部が保持するインキ膜の不要部43bは洗浄工程によって洗浄される。除去版44の洗浄方法としては、薬液や有機溶剤によって洗浄する方法と、粘着剤を担時した粘着性フィルムにインキ膜の不要部43bを押し当てて取り除く方法と、を挙げることができる。洗浄に使用することのできる薬液としては、例えば硫酸や塩酸等を挙げることができる。有機溶媒としては例えばトルエン等を挙げることができる。インキ膜の組成によって適宜選択することができ、除去版44を構成する材料を侵さない液を選べばよい。洗浄時には超音波により振動を与えることもできる。洗浄に用いることのできる粘着性フィルムとしては、市販の粘着性フィルムを使用することができ、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体を基材フィルムとし、アクリル系粘着剤を塗布することによって粘着性の付与された粘着性フィルムを用いることができる。洗浄時に粘着剤が除去版44側に転移しなければよい。粘着性フィルムによる洗浄は、洗浄後即時印刷に用いることができるので、特に連続的に同じ除去版44を用いて印刷を行う場合に適している。そのため、粘着性フィルムもロール状状態で供給され、使用に応じて必要な部分を除去版44に押し当て、使用後のフィルムは巻き取られるようになっていてもよい。
【実施例
【0034】
以下、本発明の薄膜トランジスタについて実施例を挙げて説明する。
【0035】
<実施例1>
(除去版の作製)
まず、凸版反転オフセット印刷法で使用する除去版を作製した。
除去版の材料として、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス板を用いた。このガラス板の表面及び裏面にクロムを蒸着により50nmの厚さで製膜した。このクロム薄膜上にポジレジストを用いたフォトリソグラフィー法によってレジストパターンを形成し、露出したクロム薄膜をエッチング除去した。その後レジストを剥離してクロム薄膜のパターンが形成されたガラス板を得た。
【0036】
ここで形成したクロム薄膜のパターンは、図2(a)で模式的に示したパターンを1単位として、ガラス板中央部の100mm四方の領域に、10単位×10単位で計100単位配置したものである。パターン疎部27は250μm×250μmの正方形であり、パターン密部28には、15μm×250μmの長方形のパターンが長手方向に直交する方向にライン/スペース15μm/15μmで等間隔に配置されている。
【0037】
このクロム薄膜をマスクとし、フッ酸系のエッチング液を用いて、凹部の深さが5μmになるようにガラスのエッチングを行うことにより、凸版反転オフセット印刷用除去版を作製した。
【0038】
(導電性インキ)
導電性インキとして、銀粒子水分散液(平均粒径20nm)にポリエチレンオキサイド(平均分子量10,000)を、(ポリエチレンオキサイド/銀粒子/水)=(1/8/31)の重量比となるように溶解させ導電性インキを調製した。なお、ここで平均粒径とは、動的光散乱法による体積平均径を指す。
【0039】
(金属配線パターンの製造)
金属配線パターンを次のようにして製造した。
まず、凸版反転オフセット印刷装置に使用するブランケットを、2液型シリコーンゴムを、厚さ2mm、大きさ150mm×120mmに成形することによって作製した。
【0040】
このブランケットを凸版反転オフセット印刷装置のブランケットロールに巻き付け円筒形とし、ブランケット上に上記のように調整した導電性インキをバーコータで塗布した後、室温で3分間乾燥させ、ブランケット上に導電性のインキ膜を、焼成後膜厚で約100nmとなる厚さで形成した。
【0041】
次に、除去版をブランケット上のインキ膜に密着させたのち剥離し、インキ膜の不要部を除去した。次に、インキ膜の必要部が残されたブランケットと、厚さ0.1mm、大きさが100mm×100mmの被印刷基板であるポリイミド基板とを密着させたのち剥離して、ブランケット上のインキ膜を被印刷基板側に転写した。
【0042】
次に、金属配線パターンの空隙率が60%、表面の算術平均粗さRaが15nmとなるように、被印刷基板の熱処理温度と時間を、それぞれ200℃と2時間に、熱風循環式のクリーンオーブンを用いて調整して、金属配線パターンを備えたポリイミド基板を得た。
【0043】
次に、上記の金属配線パターンを備えたポリイミド基板上に半導体層を形成するための塗液を、スピンコートで乾燥後の厚さが1μmになるように、ソース電極とドレイン電極に跨って成膜し、積層基板を得た。その積層基板を200℃で30分間熱処理して金属配線パターンを備えた薄膜トランジスタ基板を形成した。得られた薄膜トランジスタ基板を曲率半径5mmの曲げ試験を1000回実施した後、光学顕微鏡で観察したところ、金属配線パターンに微小な亀裂や半導体層とのはがれ等とそれによる断線欠陥はみられなかった。
なお、塗液の組成は、下記の通りである。
【0044】
(塗液の組成)
ポリ(3-ヘキシルチオフェン)を0.1重量%の濃度でメシチレンに溶解させた。
【0045】
<実施例2>
実施例1と同様に除去版およびインキを準備し、導電性のインキ膜を被印刷基材に転写を行った。金属配線パターンの空隙率が80%、表面の算術平均粗さRaが29nmとなるように被印刷基板の熱処理温度と時間を調整して金属配線パターンを備えたポリイミド基板を得た。その後、実施例1と同様に、半導体層を積層して薄膜トランジスタ基板を形成した。得られた薄膜トランジスタ基板を曲率半径5mmの曲げ試験を1000回実施して光学顕微鏡で観察したところ、金属配線パターンに微小な亀裂や半導体層とのはがれ等とそれによる断線欠陥はみられなかった。
【0046】
<実施例3>
実施例1と同様に印刷用凸版およびインキを準備し、導電性のインキ膜を被印刷基材に転写を行った。金属配線パターンの空隙率が30%、表面粗さ(Ra)が8nmとなるように印刷基板を熱処理して金属配線パターンを備えた印刷物を形成した。その後、実施例1と同様に半導体層を積層して薄膜トランジスタ基板を形成した。得られた薄膜トランジスタ基板を曲率半径5mmの曲げ試験を1000回実施して光学顕微鏡で観察したところ、金属配線パターンに微小な亀裂や半導体層とのはがれ等とそれによる断線欠陥はみられなかった。
【0047】
<実施例4>
実施例1と同様に印刷用凸版およびインキを準備し、導電性のインキ膜を被印刷基材に転写を行った。金属配線パターンの空隙率が10%、表面粗さ(Ra)が3nmとなるように被印刷基板を熱処理温度と時間を調整して金属配線パターンを備えたポリイミド基板を形成した。その後、実施例1と同様に半導体層を積層して薄膜トランジスタ基板を形成した。得られた薄膜トランジスタ基板を曲率半径5mmの曲げ試験を1000回実施して光学顕微鏡で観察したところ、金属配線パターンに微小な亀裂や半導体層とのはがれ等とそれによる断線欠陥はみられなかった。
【0048】
<比較例1>
実施例1と同様に印刷用凸版およびインキを準備し、導電性のインキ膜を被印刷基材に転写を行った。金属配線パターンの空隙率が85%、表面粗さ(Ra)が32nmとなるように被印刷基板を熱処理温度と時間を調整して金属配線パターンを備えたポリイミド基板を形成した。その後、実施例1と同様に半導体層を積層して薄膜トランジスタ基板を形成した。得られた薄膜トランジスタ基板を曲率半径5mmの曲げ試験を1000回実施して光学顕微鏡で観察したところ、金属配線パターンに微小な亀裂や半導体層とのはがれとそれによる断線欠陥が発生した。
【0049】
<比較例2>
製造方法としてスパッタリング法を用いて金属配線パターンを成膜した他は、実施例1と同様に積層基板の製造を行った。
【0050】
スパッタリング法で得られた金属配線パターンの空隙率と表面粗さを測定したところ、空隙率は5%、表面粗さ(Ra)は2nmであった。その後、実施例1と同様に半導体層を積層して薄膜トランジスタ基板を形成した。得られた薄膜トランジスタ基板を曲率半径5mmの曲げ試験を1000回実施して光学顕微鏡で観察したところ、金属配線パターンに微小な亀裂や半導体層とのはがれ等とそれによる断線欠陥が発生した。
【0051】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の凸版反転オフセット印刷法で得られた印刷物は、微細なパターンを連続的に印刷で形成可能であるため、薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタアレイ、カラーフィルタなどのデバイスを印刷物として製造する際に応用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 :凸版
11 :撥インキ処理面
14 :凸部頂部
15 :凸部側面
16 :凹部底面
17 :凹部
20 :凸版
27 :パターン疎部
28 :パターン密部
30 :撥インキ処理凸版
31 :凸版基材
32 :マスク
33 :マスク済みの基材
34 :レリーフ
35 :撥インキ処理
36 :撥インキ処理面(シランカップリング剤単分子膜)
41、51 :インキ供給手段
42 :インキ膜形成基材
43、53 :インキ膜
43a、53a:インキ膜の必要部
43b、53b:インキ膜の不要部
44、54 :除去版
45 :被印刷基板
46、56 :定盤
50 :凸版反転オフセット印刷装置
52 :ブランケット
55 :被印刷基板
61 :基板
62 :キャパシタ電極
63 :ゲート電極
64 :第一絶縁層(ゲート絶縁層)
65 :ドレイン電極
66 :ソース電極
67 :半導体層
68 :第二絶縁層(保護層)
69 :画素電極
70 :薄膜トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6