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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20221109BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20221109BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/35
A61Q11/00
A61K8/37
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017230399
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019099483
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮越 美妃
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-029907(JP,B2)
【文献】特開2000-247851(JP,A)
【文献】CHEN,Michael Z.,et al.,Volatile Compounds and Sensory Analysis of Both Harvests of Double-Cut Yakima Peppermint(Mentha piperita L.),Journal of Food Science(2011),Vol.76,Issue7,p.C1032-C1038
【文献】周知・慣用技術集(香料)第III部 香粧品用香料,日本国特許庁,20 01年 6月15日,p.32,35,40-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/KOSMET/MEDLINE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量が1,000以上8,000以下のポリアクリル酸塩、
(B)メントール、及び
(C)メチルジヒドロジャスモネート、リナリルアセテート、ゲラニオール及びメチルジャスモネートから選ばれる1種以上
を含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
(A)成分を0.01~2質量%、(B)成分を0.01~2質量%、(C)成分を0.00001~0.3質量%含有する請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(A)/(C)が質量比として0.5~10,000である請求項1又は2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(C)/(B)が質量比として0.00001~1である請求項1~3のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項5】
歯磨剤である請求項1~4のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後味の刺激感が抑制され、さっぱりとした使い心地の良い使用感を与える、特定分子量のポリアクリル酸塩含有の口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔用組成物において、口腔内で使用した際の後味が良いことは、使用意欲を高め継続使用にも繋がる。従来から、口腔用組成物には、様々な香料成分が添加され、一般的に香料成分としてメントールを添加し、さっぱりとした使用感を与えることが行われているが、香料以外にも種々の成分が配合されることから、配合成分に由来する刺激感等によって後味が悪くなることがあり、その課題を解決する提案がなされてきた。
例えば、口腔用組成物の配合成分である界面活性剤等に由来する刺激の緩和や抑制には、糖アルコールのエリスリトールを活用した方法(特許文献1;特許第4328246号公報)、炭素数4~10の脂肪族環状エステル化合物を用いた方法(特許文献2;特許第4456892号公報)、グリセロリン酸塩による刺激の緩和のためにバニラアブソリュート、バニリン、エチルバニリン又はナツメグ油を用いた方法(特許文献3;特許第5825088号公報)、殺菌剤による刺激の抑制のために特定の非イオン性界面活性剤を用いた方法(特許文献4;特許第5227089号公報)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4328246号公報
【文献】特許第4456892号公報
【文献】特許第5825088号公報
【文献】特許第5227089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、後味の刺激感が抑制され、さっぱりとした良い使用感を与える、特定分子量のポリアクリル酸塩含有の口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、重量平均分子量が特定値以下のポリアクリル酸塩に、メントールと特定の香料物質とを組み合わせて口腔用組成物に配合すると、前記ポリアクリル酸塩に由来する後味の刺激感が抑えられ、さっぱりとした使い心地良い使用感が得られることを知見した。即ち、本発明では、(A)重量平均分子量(Mw)1,000~20,000のポリアクリル酸塩と、(B)メントールと、(C)リナロールオキサイド、シス-3-ヘキセノール、メチルジヒドロジャスモネート、リナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール及びメチルジャスモネートから選ばれる1種以上の香料成分とを配合することによって、後味の刺激感が抑制され、さっぱりとした良い使用感を与える口腔用組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
更に詳述すると、出願人は、重量平均分子量が1,000~20,000のポリアクリル酸塩とアニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤とを組合せると、口腔バイオフィルム除去効果が得られることを特願2017-084672号に提案したが、前記比較的低分子量である前記ポリアクリル酸塩を配合した口腔用製剤における使用感は検討しておらず不明であった。
【0007】
上述したように出願人が提案した特願2017-084672号において使用した特定分子量のポリアクリル酸塩の応用に関して、本発明者が更に検討を進めたところ、口腔用組成物、特に歯磨剤に(A)成分を配合すると、使用後の口腔内を水ですすいでも、後味としてヒリヒリとした刺激的な感覚(後味の刺激感)が残り、この刺激感は、使用中にはほとんど感じられない後味として残る独特な刺激感であり、しかも、ポリアクリル酸塩であっても粘結剤として公知の重量平均分子量20,000超、例えば300,000程度のものを使用した場合には認められず、(A)成分に特異なものであることがわかった。これに対して、(A)成分に(B)及び(C)成分を組み合わせて配合すると、(B)成分自体に刺激感を有するにもかかわらず、(B)及び(C)成分の併用系によって、さっぱり感を損なうことなく上記後味の刺激感を抑制し、使用後もさっぱりとした後味の良い優れた使用感を与えることができた。
【0008】
従って、本発明は、下記の口腔用組成物を提供する。
〔1〕
(A)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、
(B)メントール、及び
(C)リナロールオキサイド、シス-3-ヘキセノール、メチルジヒドロジャスモネート、リナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール及びメチルジャスモネートから選ばれる1種以上
を含有することを特徴とする口腔用組成物。
〔2〕
(A)成分を0.01~2質量%、(B)成分を0.01~2質量%、(C)成分を0.00001~0.3質量%含有する〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔3〕
(A)/(C)が質量比として0.5~10,000である〔1〕又は〔2〕に記載の口腔用組成物。
〔4〕
(C)/(B)が質量比として0.00001~1である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔5〕
歯磨剤である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、後味の刺激感が抑制され、さっぱりとした良い使用感を与える、特定分子量のポリアクリル酸塩含有の口腔用組成物を提供できる。この口腔用組成物は、口腔バイオフィルム除去効果も期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の口腔用組成物は、(A)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩と、(B)メントールと、(C)リナロールオキサイド、シス-3-ヘキセノール、メチルジヒドロジャスモネート、リナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール及びメチルジャスモネートから選ばれる1種以上とを含有する。
【0011】
(A)成分のポリアクリル酸塩は、重量平均分子量(Mw)が1,000以上20,000以下であり、特に10,000以下、とりわけ8,000以下のものが、(B)成分による刺激感の抑制に優れ、本発明の効果を与えるのに特に好適である。重量平均分子量が20,000を超えると、使用感が損なわれる場合がある。
【0012】
上記重量平均分子量の測定は、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフィー法)により、特許第5740859号公報に記載された方法及び測定条件で行った。具体的には下記に示す(以下同様)。
重量平均分子量の測定方法;
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー光散乱検出器(GPC-MALLS)を用いて測定された値であり、条件は以下の通りである。
移動相:0.3M NaClO4
NaN3水溶液カラム:TSKgelα-M 2本
プレカラム:TSKguardcolumn α
標準物質:ポリエチレングリコール
【0013】
(A)成分のポリアクリル酸塩は、後味の刺激感の抑制効果の点から、直鎖状のポリアクリル酸塩が好ましい。
塩としては、一価塩が好ましく、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩がより好ましく、更に好ましくはアルカリ金属塩であり、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられるが、ナトリウム塩が特に好ましい。
このようなポリアクリル酸塩としては、ポリサイエンス社や東亞合成(株)から販売されている市販品を使用し得る。
【0014】
(A)成分の配合量は、組成物全体の0.01~2%(質量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは0.01~1%、更に好ましくは0.05~0.5%である。0.01%以上であると、十分な配合効果が得られる。多く配合し過ぎると、後味の刺激感が強くなって十分に抑制できない場合があり、2%以下であると、後味の刺激感を十分に抑制できる。
【0015】
(B)メントールは、さっぱり感付与剤である。メントールとしては、L-メントールを使用することができ、L-メントールを含む精油等を使用してもよく、市販品を用いることができる。
(B)メントールの配合量は、組成物全体の0.01~2%が好ましく、より好ましくは0.1~1%である。配合量が0.01%以上であると、さっぱりとした使い心地が十分に得られる。2%以下であると、それ自身の苦味や刺激感が十分に抑制され、良い使用感が得られる。
【0016】
(C)成分は、リナロールオキサイド、シス-3-ヘキセノール、メチルジヒドロジャスモネート、リナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール及びメチルジャスモネートから選ばれる。(C)成分は、(A)成分に由来する後味の刺激感の抑制作用を奏する。これらは、1種単独でも、また、効果発現の点で2種以上を組み合わせて使用してもよい。(C)成分としては、中でも、リナロールオキサイド、シス-3-ヘキセノール、メチルジヒドロジャスモネートが好ましい。(C)成分を2種以上併用する場合は、少なくともリナロールオキサイド、シス-3-ヘキセノール、メチルジヒドロジャスモネートから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
また、これらを含む精油を使用することもでき、例えばラベンダー油、コリアンダー油、ネロリ油(オレンジフラワー油)、ローズ油、ジャスミン油等を用いることができる。具体的には、高砂香料工業(株)製の市販品を使用できる。
【0017】
(C)成分の配合量は、組成物全体の0.00001~0.3%が好ましく、より好ましくは0.0001~0.1%である。配合量が0.00001%以上であると、十分な後味の刺激抑制が得られる。0.3%以下であると、それ自身の香りや味が強くなり過ぎることがなく、さっぱりとした使い心地が十分に得られる。
【0018】
本発明において、(A)/(C)の質量比は、0.03~200,000とすることができるが、後味の刺激感を抑制する点で、0.5~10,000が好ましく、より好ましくは1~5,000である。この範囲内であると、使用中のさっぱり感を損なうことなく、後味の刺激感がより抑制され、使用感がより向上する。
また、(C)/(B)の質量比は、0.000005~30とすることができるが、0.00001~1が好ましく、より好ましくは0.001~1である。この範囲内であると、使用中のさっぱり感を損なうことなく、後味の刺激感がより抑制され、使用感が更に向上する。
【0019】
本発明の口腔用組成物は、特に練歯磨、液状歯磨、潤製歯磨、液体歯磨等の歯磨剤、中でも練歯磨として好適であり、通常の方法で調製できる。また、上記成分に加えて、必要に応じて他の公知の添加剤を、本発明の効果を妨げない範囲で配合できる。例えば、界面活性剤、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、有効成分、pH調整剤、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合して製造することができる。
【0020】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤が挙げられる。具体的には下記に示すものを使用できる。
アニオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム
ノニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ショ糖脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル
カチオン性界面活性剤;塩化ジステアリルメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム
両イオン性界面活性剤;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン系
界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.01~15%、特に0.01~10%が望ましい。
なお、界面活性剤には刺激性のものもあるが、本発明では、歯磨剤に一般的に使用される界面活性剤、例えばラウリル硫酸塩等のアルキル硫酸塩、更にはノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が配合されていても、後味の刺激感のなさ及び使用中のさっぱり感が優れ、さっぱりとした良い使用感を与えることができる。
【0021】
研磨剤は、無水ケイ酸、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム無水和物、第2リン酸カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、アルミナ、2酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケート、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。これらの研磨剤の配合量は、組成物全体の2~60%、特に10~55%が好ましい。
【0022】
粘稠剤は、ソルビット、還元でんぷん糖化物等の糖アルコール、プロピレングリコール、平均分子量200~6,000(医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量)のポリエチレングリコール、エチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる(配合量は、通常、組成物全体の5~70%)。
【0023】
粘結剤は、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる(配合量は、通常、組成物全体の0.3~10%)。
【0024】
甘味剤は、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
防腐剤は、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等の安息香酸又はその塩が挙げられる。
着色剤は、青色1号、黄色4号、緑色3号が挙げられ、通常量で配合できる。
【0025】
有効成分は、口腔用組成物に通常、配合されるフッ素含有化合物、殺菌剤、抗炎症剤、酵素、植物抽出物、歯石防止剤、歯垢防止剤等を、本発明の効果を妨げない範囲で有効量を配合できる。具体的には、フッ化ナトリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ素含有化合物、正リン酸のナトリウム塩、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、トコフェロール酢酸エステル、α-ビサボロール、ジヒドロコレステロール、クロロヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸又はその塩類や、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グルコン酸銅等の銅化合物、グリセロホスフェート等のキレート性リン酸化合物、ヒドロキサム酸又はその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、メトキシエチレン、エピジヒドロコレステリン、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸又はその塩、アスコルビン酸リン酸エステル又はその塩、塩化リゾチーム、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、オウバクエキスが挙げられる。
【0026】
香料として、(B)及び(C)成分以外の香料成分を配合してもよい。例えば、アニス油、ユーカリ油、カシア油、クローブ油、ウィンターグリーン油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、イリスコンクリート、オレンジ油、レモン油、マンダリン油、グレープフルーツ油、柚子油、ライム油等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及びカルボン、アネトール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、チモール、メントン、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、プレゴン、カルビルアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ジメチルサルファイド、シクロテン、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用できる。これらの香料素材の配合量は特に限定されないが、組成物中に0.000001~1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料は、組成物中に0.1~2.0%使用するのが好ましい。
なお、(B)又は(C)成分を含む香料は、それぞれ(B)又は(C)成分の配合量の範囲内で配合し得る。
【0027】
口腔用組成物のpH(25℃)は、通常範囲でよく、pH5~9、特に6~8がよい。なお、公知のpH調整剤を添加してpH調整してもよい。pH調整剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸又はその塩類、リン酸又はその塩類、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機化合物が挙げられる。
【実施例
【0028】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー光散乱検出器(GPC-MALLS)を用いて上記と同様の方法及び測定条件で測定した。
【0029】
[実施例、比較例]
表1~5に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を下記方法で調製して容器(アルミニウムラミネートチューブ)に充填し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。
また、表1~4に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)は、いずれも口腔バイオフィルム除去効果があることを確認した。
<調製方法>
(1)精製水中に(A)成分、その他の水溶性成分及び粘度調整剤を常温で混合溶解させた(混合物X)。
(2)プロピレングリコール中に粘結剤を常温で分散させ(混合物Y)、撹拌中の混合物X中に、混合物Yを添加混合して、混合物Zを調製した。
(3)混合物Z中に、(B)成分、(C)成分及び研磨剤を、ニーダーを用いて常温で混合し、減圧(5.3kPa)による脱泡を行い、歯磨剤組成物を得た。
なお、比較例の歯磨剤組成物は、上記方法に準じて調製した。
【0030】
<評価方法>
10名の被験者により、1gの歯磨剤組成物を歯刷子にのせ、3分間のブラッシングをして水ですすぎ、口腔内洗浄における使用感(ブラッシングして使用中のさっぱり感、すすぎ後の後味の刺激感のなさ)について、官能試験を行い、それぞれ下記の評点基準で判定した。10名の平均値を求め、下記の評価基準で評価した。
【0031】
(i)後味の刺激感のなさ
評点基準
4点:後味の刺激感をほとんど感じない
3点:後味の刺激感をやや感じるが問題ないレベル
2点:後味の刺激感を感じる
1点:後味の刺激感を非常に感じる
評価基準
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:1.0点以上2.0点未満
【0032】
(ii)使用中のさっぱり感
評点基準
4点:使用中のさっぱり感を非常に感じる
3点:使用中のさっぱり感を感じる
2点:使用中のさっぱり感をやや感じる
1点:使用中のさっぱり感を全く感じない
評価基準
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:1.0点以上2.0点未満
【0033】
使用したポリアクリル酸塩の詳細を下記に示す。
(A)成分:
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:1,000)
直鎖状、ポリサイエンス社製
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:6,000)
直鎖状、東亞合成(株)製、AC-10NP
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:20,000)
直鎖状、東亞合成(株)製、アロンA-20UN
ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:300,000、比較成分)
架橋型、ポリサイエンス社製
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
表1~4の結果からわかるように、(A)、(B)及び(C)成分を含有する歯磨剤組成物(実施例)は、後味の刺激感のなさ及び使用中のさっぱり感が優れていた。これに対して、表5の結果からわかるように、(A)成分を含有し、(B)及び(C)成分を欠く場合、あるいは(B)成分は含有するが(C)成分を欠く場合は、口腔内を水ですすいだ後に、使用中には感じることがなかった後味の刺激感が感じられ、後味の刺激感のなさが劣っていた(比較例3、2)。なお、ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:300,000)を含有していても(A)成分を欠く比較例1では、(B)成分由来の刺激が生じ、後味の刺激感のなさが劣っていた。