(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】拡張現実(AR)映像の現実感を向上するAR情報表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20221109BHJP
【FI】
G06T19/00 600
(21)【出願番号】P 2017248321
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 克則
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-203326(JP,A)
【文献】特開2017-016466(JP,A)
【文献】特開2008-065698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
G06F 3/01
G06F 3/048 - 3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ、表示部及び制御部を有する端末装置上で、拡張現実(AR)映像を表示するための方法であって、
前記制御部が、前記カメラが取得した映像に関するカメラ品質情報を取得するステップと、
前記制御部が、前記カメラが取得した映像からARマーカーを検出したか否かを判定するステップと、
前記制御部が、前記ARマーカーが検出された場合、当該検出したARマーカーのパターン形状に対応するAR情報を取得するステップと、
前記制御部が、当該取得したAR情報を、前記カメラ品質情報を用いて加工するステップと、
前記制御部が、当該加工したAR情報を前記カメラが撮影した映像に重畳することによりAR映像を生成するステップと、
前記制御部が、当該生成したAR映像を前記表示部で表示するステップと、
を含み、
前記カメラ品質情報は、前記カメラの解像度を示す解像度情報を含み、
前記加工するステップは、
前記取得したAR情報を
、前記解像度情報が示す解像度を有するバッファに描画する
ことにより、前記
取得したAR情報の解像度を、前記解像度情報が示す解像度に変更するステッ
プ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記カメラ品質情報は、前記カメラが撮影する映像が有するノイズを示すノイズ情報と、前記カメラの解像度を示す解像度情報と、のうちの少なくとも1つを含み、
前記加工するステップは、
前記取得したAR情報に、前記ノイズ情報が示すノイズを付加するステップと、
前記取得したAR映像の解像度を、前記解像度情報が示す解像度に変更するステップと、
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記端末装置は、記憶部をさらに含み、
前記記憶部は、1又は複数のAR情報を、前記ARマーカーのパターン形状毎に対応付けて記憶しており、
前記AR情報を取得するステップは、前記記憶部から、前記検出したARマーカーのパターン形状に対応するAR情報を取り出すステップを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
カメラ、表示部及び制御部を有する端末装置上で、拡張現実(AR)映像を表示するためのプログラムであって、前記制御部に、
前記カメラが取得した映像に関するカメラ品質情報を取得するステップと、
前記カメラが取得した映像からARマーカーを検出したか否かを判定するステップと、
前記ARマーカーが検出された場合、当該検出したARマーカーのパターン形状に対応するAR情報を取得するステップと、
当該取得したAR情報を、前記カメラ品質情報を用いて加工するステップと、
当該加工したAR情報を前記カメラが撮影した映像に重畳することによりAR映像を生成するステップと、
当該生成したAR映像を前記表示部で表示するステップと、
を実行させ、
前記カメラ品質情報は、前記カメラの解像度を示す解像度情報を含み、
前記加工するステップは、
前記取得したAR情報を
、前記解像度情報が示す解像度を有するバッファに描画する
ことにより、前記
取得したAR情報の解像度を、前記解像度情報が示す解像度に変更するステッ
プ
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項5】
前記カメラ品質情報は、前記カメラが撮影する映像が有するノイズを示すノイズ情報と、前記カメラの解像度を示す解像度情報と、のうちの少なくとも1つを含み、
前記加工するステップは、
前記取得したAR情報に、前記ノイズ情報が示すノイズを付加するステップと、
前記取得したAR映像の解像度を、前記解像度情報が示す解像度に変更するステップと、
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記端末装置は、記憶部をさらに含み、
前記記憶部は、1又は複数のAR情報を、前記ARマーカーのパターン形状毎に対応付けて記憶しており、
前記AR情報を取得するステップは、前記記憶部から、前記検出したARマーカーのパターン形状に対応するAR情報を取り出すステップを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張現実(AR)映像の現実感を向上するAR情報表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばスマートフォンやタブレット端末用のアプリケーションとして、拡張現実(AR:Augmented Reality)技術を利用したものが盛んに開発されている(例えば、特許文献1参照)。AR技術とは、スマートフォン等のカメラで撮影して入力された現実の映像に対してCGで作成したデータや写真、ビデオ、テキストファイル等の電子データ(以下、AR情報)を重畳させる技術をいう。
【0003】
AR技術では、物や壁の表面に付されたARマーカーを含んだ現実の映像をカメラで取得すると、取得した静止画像および動画像からARマーカーの位置を算出し、カメラで取得した映像において当該算出した位置にAR情報を重畳したAR映像を端末の表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
AR技術においては、カメラで撮影した映像にはカメラセンサのノイズや低解像度による映像の劣化が生じるのに対し、AR情報には映像の劣化が生じない。そのため、重畳表示する際に、AR情報がカメラ映像に対して不自然に表示され、結果として出力されるAR映像の現実感が失われてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、AR映像の現実感を向上するAR情報表示方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るAR情報表示方法は、カメラ、表示部及び制御部を有する端末装置上で、拡張現実(AR)映像を表示するための方法であって、前記制御部が、前記カメラが取得した映像に関するカメラ品質情報を取得するステップと、前記制御部が、前記カメラが取得した映像からARマーカーを検出したか否かを判定するステップと、前記制御部が、前記ARマーカーが検出された場合、当該検出したARマーカーのパターン形状に対応するAR情報を取得するステップと、前記制御部が、当該取得したAR情報を、前記カメラ品質情報を用いて加工するステップと、前記制御部が、当該加工したAR情報を前記カメラが撮影した映像に重畳することによりAR映像を生成するステップと、前記制御部が、当該生成したAR映像を前記表示部で表示するステップと、を含み、前記カメラ品質情報は、前記カメラの解像度を示す解像度情報を含み、前記加工するステップは、前記取得したAR情報を、前記解像度情報が示す解像度を有するバッファに描画することにより、前記取得したAR情報の解像度を、前記解像度情報が示す解像度に変更するステップを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様に係るAR情報表示プログラムは、カメラ、表示部及び制御部を有する端末装置上で、拡張現実(AR)映像を表示するためのプログラムであって、前記制御部に、前記カメラが取得した映像に関するカメラ品質情報を取得するステップと、前記カメラが取得した映像からARマーカーを検出したか否かを判定するステップと、前記ARマーカーが検出された場合、当該検出したARマーカーのパターン形状に対応するAR情報を取得するステップと、当該取得したAR情報を、前記カメラ品質情報を用いて加工するステップと、当該加工したAR情報を前記カメラが撮影した映像に重畳することによりAR映像を生成するステップと、当該生成したAR映像を前記表示部で表示するステップと、を実行させ、前記カメラ品質情報は、前記カメラの解像度を示す解像度情報を含み、前記加工するステップは、前記取得したAR情報を、前記解像度情報が示す解像度を有するバッファに描画することにより、前記取得したAR情報の解像度を、前記解像度情報が示す解像度に変更するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るAR情報表示方法及びプログラムによると、AR映像の現実感を向上し、よりリアルなAR体験を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るAR情報表示プログラムがインストールされた端末装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係るAR情報表示方法を実行するための処理を示す処理フローを示す図である。
【
図3】従来技術を利用して生成されたAR映像と、本発明に係るAR情報表示方法を利用して生成されたAR映像とを比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明では、映像に重畳する1又は複数のAR情報を記憶した端末装置に、本発明の実施例に係るAR情報表示プログラムがインストールされている。
【0012】
図1は、本発明に係るAR情報表示プログラムがインストールされた端末装置の構成を示すブロック図である。
図1には、制御部110と、カメラ120と、表示部130と、記憶部140と、を備えた端末装置100が示されている。端末装置100は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等で構成することができる。
【0013】
制御部110は、例えば、CPUを含み、本発明に係るプログラムその他各種プログラムを実行し、端末装置100における各処理を制御することができる。制御部110は、マーカー認識部111と、カメラ品質情報取得部112と、AR映像生成部113と、を含む。
【0014】
マーカー認識部111は、カメラ120が撮影した映像にARマーカーが含まれているか否かを検出し、そのパターン形状を認識することができる。カメラ品質情報取得部112は、カメラ120が撮影した映像に関するカメラ品質情報を取得する。AR映像生成部113は、カメラ120が撮影した映像に、本発明に係るAR情報表示方法を用いて生成したAR情報を重畳することによりAR映像を生成する。
【0015】
カメラ120は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の端末装置100に搭載されたカメラとすることができる。
【0016】
表示部130は、制御部110が各種プログラムを実行することによって生成された各種画面、画像及び映像等を表示することができる。
【0017】
記憶部140は、例えば本発明に係るAR情報表示プログラムやAR情報など、種々の情報を記憶することができる。特に、記憶部140は、1又は複数のAR情報を、それぞれARマーカーのパターン形状毎に対応付けて記憶している。記憶部140は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、RAM、又はそれらの任意の組み合わせで構成される。
【0018】
ここで、カメラ品質情報は、例えば、カメラ120のノイズ情報及び解像度情報のうちの少なくとも1つを含むことができる。ノイズ情報は、例えば、カメラ120の映像におけるARマーカーの一部(例えば無地部分)又は全部と、ARマーカーに対応するAR情報の一部又は全部との間で画素値の差分を事前又はカメラ撮影中に取得して、この差分をノイズパターンとすることにより、取得することができる。例えば、カメラ120の映像におけるARマーカーの一部である無地部分と、記憶部140に記憶されているAR情報において当該ARマーカーの無地部分に対応する箇所の無地部分との画素値の差分を取得することが挙げられる。解像度情報は、カメラ120のドライバ等の情報から、サイズ、画素数(密度)、フレームレート等を事前又はカメラ撮影中に取得することにより、取得することができる。
【0019】
本発明では、ノイズ情報や解像度情報などのカメラ品質情報を取得し、カメラ品質情報に基づいてAR情報を加工することによって、AR情報の現実感を高め、よりリアルなAR体験を提供することが可能となる。
【0020】
図2は、本発明に係るAR情報表示方法を実行するための処理を示す処理フローを示す。
図2に示す以下のステップS201乃至S206は、制御部110によって実行される。
【0021】
図2に示すように、まず、ステップS201で、カメラ120が取得した映像に関するカメラ品質情報を取得する。カメラ品質情報は、例えばカメラ120が撮影する映像が有するノイズを示すノイズ情報と、カメラ120の解像度を示す解像度情報と、を含む。
【0022】
ステップS202で、カメラ120が取得した映像からARマーカーを検出したか否かを判定する。上述のように、物や壁の表面にARマーカーが付されており、当該ARマーカーをカメラ120で撮影することによりARマーカーを検出することができる。ARマーカーを検出した場合、次のステップS203に進み、ARマーカーが検出されない場合、ARマーカーが検出されるまでステップS202を繰り返す。
【0023】
ステップS203で、検出したARマーカーのパターン形状に対応するAR情報を記憶部140から取り出して取得する。
【0024】
ステップS204で、取得したAR情報をカメラ品質情報を用いて加工する。例えば、制御部110は、カメラ品質情報に含まれるノイズ情報が示すノイズをAR情報に投影処理することにより、AR情報に対し実際の映像と同様のノイズを付加することができる。もしくは、制御部110は、ノイズ情報が示すノイズを含む描画用バッファにAR情報を描画し、その描画用バッファに描画されたAR情報を使用することにより、AR情報に対し実際の映像と同様のノイズを付加することができる。
【0025】
さらに例えば、制御部110は、カメラ品質情報に含まれる解像度情報が示す解像度を有する描画用バッファにAR情報を描画し、その描画用バッファに描画されたAR情報を使用することにより、AR情報の解像度を解像度情報が示す解像度(すなわち実際のカメラにおける解像度)に変更することができる。
【0026】
なお、ステップS204において例示した上述の加工の方法は、あくまで例示であってこれに限定されるものではなく、種々の方法を採用して、取得したAR情報をカメラ品質情報を用いて加工することができる。
【0027】
ステップS205で、カメラ品質情報を用いて加工したAR情報をカメラが撮影した映像に重畳することによりAR映像を生成する。
【0028】
ステップS206で、生成したAR映像を表示部130で表示する。
【0029】
ここで、ステップS203では、検出したARマーカーのパターン形状に対応するAR情報を記憶部140から取り出して取得するように構成したが、これに限定されず、端末装置100の不図示の通信部を介してARマーカーのパターン形状に対応するAR情報をARコンテンツサーバからダウンロードして取得するように構成してもよい。
【0030】
図3は、従来技術を利用して生成されたAR映像と、本発明に係るAR情報表示方法を利用して生成されたAR映像とを例示的に比較するための図である。
図3には、カメラを通して見える実映像301と、カメラを通して見える映像301に従来技術を利用してCGデータ(AR情報)を重畳した従来のAR映像302と、ノイズ情報303と、本発明に係るAR情報表示方法を利用してノイズ情報303を付加することにより生成されたAR映像304と、が示されている。
【0031】
図3に示すように、カメラを通して見える実映像301には、恐竜の絵及びその題名をパターン形状とするARマーカーのパネルが含まれている。従来のAR映像302では、実映像301におけるARマーカーが配置されている部分全体にAR情報が重畳されている。AR情報は、ARマーカーにおいて描かれた恐竜が骨の化石となってARマーカーから飛び出したように見えるCGデータとなっている。従来のAR映像302では、パネル部分及び飛び出した恐竜の化石部分のCGデータが周囲の映像に対して際立って不自然に表示されている。
【0032】
一方で、本発明に係るAR情報表示方法を利用してノイズ情報303を付加することにより生成されたAR映像304は、パネル部分全体及び飛び出した恐竜の化石部分全体にノイズが付加され、解像度が調整されることにより、CGデータが周囲の映像となじんで表示されていることがわかる。
【0033】
このように、本発明に係るAR情報表示方法によると、AR映像の現実感を向上し、よりリアルなAR体験を提供することが可能となる。
【0034】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例は、本発明の単なる例示であって、当業者であれば、適宜設計変更可能である。