(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】3DCG空間の鑑賞条件連動システム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20221109BHJP
【FI】
G06T19/00 300B
(21)【出願番号】P 2017254445
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 遥
(72)【発明者】
【氏名】石川 克則
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-178331(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157523(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
G06F 3/01
G06F 3/048 - 3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを体験するための第1のコンピュータであって、
シアター型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスから前記ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスに切り替えるときに、前記シアター型バーチャルリアリティを体験するための第2のコンピュータが描画した際の鑑賞条件を示す情報を前記第2のコンピュータから受信し、
前記第2のコンピュータから受信した情報に基づいて、前記第1のコンピュータが再生するためのコンピュータグラフィックスを描画し、
前記ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスから前記シアター型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスに切り替えるときに、前記第1のコンピュータが描画した際の鑑賞条件を示す情報を前記第2のコンピュータに送信する
ように構成されたプロセッサを備えたことを特徴とする第1のコンピュータ。
【請求項2】
前記第1のコンピュータが再生するための前記コンピュータグラフィックスを描画する際の鑑賞条件として、前記第2のコンピュータが描画した仮想空間内の仮想カメラの位置を示す情報を使用する
ようにさらに構成されたプロセッサを備えたことを特徴とする請求項1に記載の第1のコンピュータ。
【請求項3】
前記受信した鑑賞条件に含まれる視点の位置、および、前記第1のコンピュータの動きに応じた視点の向きに基づいて、前記第1のコンピュータのために3DCG空間を描画する
ようにさらに構成されたプロセッサを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の第1のコンピュータ。
【請求項4】
前記受信した鑑賞条件に含まれる視点の位置は、所定の時の1つの位置である、または、所定の期間の複数の位置であることを特徴とする請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の第1のコンピュータ。
【請求項5】
ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを体験するための第1のコンピュータとシアター型バーチャルリアリティを体験するための第2のコンピュータとからなる鑑賞条件連動システムであって、
前記第1のコンピュータは、
前記シアター型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスから前記ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスに切り替えるときに、前記第2のコンピュータから、前記第2のコンピュータが描画した際の鑑賞条件を示す情報を受信し、
前記ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスから前記シアター型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスに切り替えるときに、前記第2のコンピュータへ、前記第1のコンピュータが描画した際の鑑賞条件を示す情報を送信する、ように構成され、
前記第2のコンピュータは、
前記ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスから前記シアター型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスに切り替えるときに、前記第1のコンピュータから、前記第1のコンピュータが描画した際の鑑賞条件を示す情報を受信し、
前記シアター型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスから前記ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスに切り替えるときに、前記第1のコンピュータへ、前記第2のコンピュータが描画した際の鑑賞条件を示す情報を送信する、ように構成されたことを特徴とする鑑賞条件連動システム。
【請求項6】
ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを体験するための第1のコンピュータによって実施される方法であって、
シアター型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスから前記ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスに切り替えるときに、前記シアター型バーチャルリアリティを体験するための第2のコンピュータが描画した際の鑑賞条件を示す情報を前記第2のコンピュータから受信するステップと、
前記第2のコンピュータから受信した情報に基づいて、前記第1のコンピュータが再生するためのコンピュータグラフィックスを描画するステップと、
前記ヘッドマウントディスプレイ型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスから前記シアター型バーチャルリアリティを生じさせるコンピュータグラフィックスに切り替えるときに、前記第1のコンピュータが描画した際の鑑賞条件を示す情報を前記第2のコンピュータに送信するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアター型VRの3DCGで表現される仮想空間とHMD型VRの3DCGで表現される仮想空間との間で、鑑賞条件を連動することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巨大スクリーンやヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも言う)などに映し出された3次元コンピュータグラフィックス(以下、3DCGとも言う)を見ることによって、その3DCGによって表現される仮想空間内にあたかも実際にいるかのような感覚を得ることができるバーチャルリアリティ(以下、VRとも言う)の技術が開発されている。
【0003】
例えば、劇場内の観客席にいる鑑賞者たちが、巨大スクリーンに映し出された3DCGを見ることでVRを体験できる手法(以下、シアター型VRとも言う)がある。シアター型VRでは、複数の鑑賞者が同一のスクリーンを見る。そして、ナビゲータと呼ばれる人が、3DCGを描画するための仮想空間内での視点の位置や向きを操作する。そのため、ナビゲータは、全ての鑑賞者に対して、ナビゲータが鑑賞者に見せたい仮想空間内の物体を見せることができる。しかしながら、シアター型VRでは、鑑賞者は、3DCG以外のものも目にしてしまうため、VRの世界に没入しづらい。
【0004】
一方、HMDを装着している鑑賞者がHMDに映し出された3DCGを見ることでVRを体験できる手法(以下、HMD型VRとも言う)では、鑑賞者は、HMDに映し出された3DCGで視界が覆われるので、VRの世界に没入することができる。しかしながら、HMD型VRでは、鑑賞者は、各々に、鑑賞者の頭の動きに応じた仮想空間内の視点の向きで描画された3DCGを見る。その結果、鑑賞者は、ナビゲータが鑑賞者に見せたかった仮想空間内の物体を見るとは限らない。
【0005】
このように、“シアター型VR”は、ナビゲータが全ての鑑賞者に特定の物体を見せたい仮想空間に適している。一方、“HMD型VR”は、鑑賞者が自由自在に見て回りたい仮想空間に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ある1つの仮想空間において、仮想空間内のある部分はシアター型VRに適しているが、その仮想空間内の別の部分はHMD型VRに適している場合がある。つまり、1つの仮想空間内のうちのどの部分を鑑賞者に見せるのかによって、巨大スクリーン上に3DCGを映し出した方が良いか、HMD上に3DCGを映し出した方が良いかが異なる。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、3DCGで表現される仮想空間内での場面に応じて、鑑賞者がシアター型VRまたはHMD型VRを体験することができるシステム、方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、第1のコンピュータである。この第1のコンピュータは、第2のコンピュータのために描画した際の鑑賞条件を示す情報を受信し、前記第1のコンピュータのために描画した際の鑑賞条件を示す情報を送信する、ように構成されたプロセッサを備える。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1のコンピュータによって実施される方法である。この方法は、第2のコンピュータのために描画した際の鑑賞条件を示す情報を受信するステップと、前記第1のコンピュータのために描画した際の鑑賞条件を示す情報を送信するステップと、を含む。
【0010】
本発明の第3の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータを第1の態様の第1のコンピュータとして機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、3DCGで表現される仮想空間内での場面に応じて、鑑賞者がシアター型VRまたはHMD型VRを体験することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件連動システムの全体の概要図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件連動システムの携帯端末の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件連動システムのシアター装置の機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件の連動を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件の連動を説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件連動システムにおける処理フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本明細書で利用する用語について説明する。「3DCG空間」とは、巨大スクリーンやHMD上に描画(レンダリングとも言う)された3DCGによって表現される仮想空間である。3DCG空間内に配置された仮想のカメラ(視点とも言う)が撮影する画像が描画される。「シアター型VR」とは、劇場内の観客席などにいる鑑賞者が、巨大スクリーン上などに描画された3DCGを見ることでVRを体験できる手法である。「HMD型VR」とは、HMDを装着している鑑賞者が、HMD上に描画された3DCGを見ることでVRを体験できる手法である。本発明では、シアター型VRで描画される3DCGによって表現される仮想空間と、HMD型VRで描画される3DCGによって表現される仮想空間とは、同一の仮想空間である。「鑑賞条件」とは、3DCGを描画する際に用いられる情報(例えば、仮想空間における視点の位置の情報、視点の向きの情報など)のことを言う。
【0014】
また、「VRゴーグル」とは、VRゴーグルに差し込まれたスマートフォンなどの携帯端末のディスプレイ上に表示される3DCGを立体視することができるレンズを備えた、ダンボールなどでできたゴーグルである。本明細書では、VRゴーグルを装着している鑑賞者が、VRゴーグルに差し込まれたスマートフォンなどの携帯端末のディスプレイ上に表示される3DCGを見る場合を説明するが、本発明は、HMDを装着している鑑賞者がHMDのディスプレイ上に表示される3DCGを見る場合にも適用することができる。なお、HMDは、両眼、単眼、非透過型、透過型などの任意のHMDであってよい。
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件連動システム100の全体の概要図である。鑑賞条件連動システム100は、シアター型VR110のために3DCGを再生するためのシアター装置111、ならびに、HMD型VR120のために3DCGを再生するための1または複数の携帯端末121および1または複数のVRゴーグル122を含む。シアター装置111は、各携帯端末121と有線回線または無線回線を介してデータの送受信をすることができる。シアター装置111および携帯端末121は、シアター装置111が再生する3DCGによって表現される仮想空間内の視点の位置または向きの少なくとも一方の情報と、携帯端末121が再生する3DCGによって表現される仮想空間内の視点の位置または向きの少なくとも一方の情報と、を連動することができる。以下、それぞれについて詳細に説明する。
【0017】
シアター装置111は、シアター装置111内に記憶された3DCG、あるいはストリーミング動画を再生することができる。具体的には、シアター装置111は、3DCGを描画(レンダリング)することができる。シアター装置111は、描画した3DCGをプロジェクタでスクリーン上に投影することができる。あるいは、シアター装置111は、描画した3DCGを大型モニタなどのモニタ上に表示することができる。シアター装置111を操作する人(以下、ナビゲータとも言う)は、例えば、シアター装置111に接続されたコントローラを動かすことによって、3DCG空間内の視点の位置や向きを動かすことができる。例えば、劇場内にいる1または複数の鑑賞者は、シアター装置111が再生する3DCGを見ることによって、シアター型VR110を体験することができる
【0018】
携帯端末121は、スマートフォンなどの端末である。また、VRゴーグル122は、VRゴーグル122に差し込まれた携帯端末121のディスプレイ上に表示される3DCGを立体視することができるレンズを備えた、ダンボールなどでできたゴーグルである。なお、本発明は、HMDを装着している鑑賞者がHMDのディスプレイ上に表示される3DCGを見る場合にも適用することができる。この場合、HMDは、携帯端末121とVRゴーグル122との両方の機能を有する。携帯端末121は、携帯端末121に記憶された3DCG、あるいはストリーミング動画を再生することができる。具体的には、携帯端末121は、3DCGを描画(レンダリング)して、携帯端末121のディスプレイ上に表示することができる。鑑賞者は、携帯端末121やHMDのヘッドトラッキング機能(例えば、携帯端末121やHMDに内蔵された加速度センサやジャイロスコープにより、鑑賞者の頭の前後・上下・左右の動きを検出する)によって、3DCG空間内の視点の向きを動かすことができる。また、鑑賞者は、携帯端末121やHMDのポジショントラッキング機能(例えば、HMDが放射する赤外線を現実空間内に設置されたセンサが受け取るなどして、鑑賞者の現実空間内での位置を認識する)によって、3DCG空間内の視点の位置を動かすことができる。携帯端末121にコントローラを接続し、コントローラを操作することで積極的に3DCG空間内の視点の位置を動かしても良い。例えば、劇場内にいる1または複数の鑑賞者は、VRゴーグル122に差し込まれた携帯端末121が再生する3DCGを見ることによって、HMD型VR120を体験することができる。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件連動システム100の携帯端末121の機能ブロック図である。携帯端末121は、鑑賞条件受信部201、鑑賞条件連動部202、鑑賞条件送信部203を含む。携帯端末121は、プロセッサおよびメモリを含む1または複数のスマートフォンなどのコンピュータである。また、携帯端末121は、鑑賞条件受信部201、鑑賞条件連動部202、鑑賞条件送信部203を動作させるためのプログラム(例えば、スマートフォンのアプリケーションソフトなど)、または、後述する処理フローを実行するためのプログラム、を格納した記憶媒体を含む。
【0020】
鑑賞条件受信部201は、シアター装置111から、シアター装置111が描画している3DCGの、その時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“位置”を示す情報を受信することができる。また、鑑賞条件受信部201は、シアター装置111から、シアター装置111が描画している3DCGの、その時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“向き”を示す情報を受信することができる。つまり、鑑賞条件受信部201は、シアター型VR110を体験していた鑑賞者が3DCG空間内のいずれの位置やいずれの向きの視点で描画された3DCGを見ていたかを知ることができる。例えば、鑑賞条件受信部201は、シアター装置111から、所定の時に、1つの位置または1つの向きの少なくとも一方を示す情報(例えば、ナビゲータがシアター型VR110からHMD型VR120へ切り替える時に、鑑賞者がシアター型VR110で直近に見ていた3DCGが描画された際の視点の位置や向き)を受信することができる。あるいは、例えば、鑑賞条件受信部201は、シアター装置111から、所定の期間に、複数の位置(例えば、ナビゲータがシアター装置111に接続されたコントローラなどで動かし続けている視点の位置)を示す情報を受信することができる。
【0021】
鑑賞条件連動部202は、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の“位置”として、鑑賞条件受信部201が受信した情報が示す“位置”を使用することができる。例えば、鑑賞条件連動部202は、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の“位置”として、鑑賞者がシアター型VR110で直近に見ていた3DCGが描画された際の視点の“位置”を使用することができる。また、例えば、鑑賞条件連動部202は、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の“位置”として、ナビゲータがシアター装置111に接続されたコントローラなどで動かし続けている視点の“位置”を使用することができる。
【0022】
なお、鑑賞条件連動部202は、鑑賞条件受信部201が“位置”のみを受信して“向き”を受信しなかった場合には、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の位置として、鑑賞条件受信部201が受信した位置を使用し、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の向きとして、予め定めておいた向き(例えば、所定の方角)や携帯端末121やHMDのその時点の向き(つまり、鑑賞者の頭の向き)を使用することができる。また、鑑賞条件連動部202は、鑑賞条件受信部201が“位置”と“向き”の両方を受信した場合には、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の位置として、鑑賞条件受信部201が受信した位置を使用し、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の向きとして、鑑賞条件受信部201が受信した向きの上下左右の向きを携帯端末121やHMDの上下左右の向き(つまり、鑑賞者の頭の上下左右の向き)に一致させた向きを使用することができる。
【0023】
鑑賞条件送信部203は、シアター装置111へ、携帯端末121が描画している3DCGのその時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“位置”を示す情報を送信することができる。また、鑑賞条件送信部203は、シアター装置111へ、携帯端末121が描画している3DCGのその時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“向き”を示す情報を送信することができる。つまり、鑑賞条件送信部203は、HMD型VR120を体験していた鑑賞者が3DCG空間内のいずれの位置やいずれの向きの視点で描画された3DCGを見ていたかを通知することができる。例えば、鑑賞条件送信部203は、シアター装置111へ、所定の時に、1つの位置または1つの向きの少なくとも一方を示す情報(例えば、ナビゲータがHMD型VR120からシアター型VR110へ切り替える時に、鑑賞者がHMD型VR120で直近に見ていた3DCGが描画された際の視点の位置や向き)を送信することができる。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件連動システム100のシアター装置111の機能ブロック図である。シアター装置111は、鑑賞条件送信部301、鑑賞条件受信部302、鑑賞条件連動部303を含む。シアター装置111は、プロセッサおよびメモリを含む1または複数のコンピュータである。また、シアター装置111は、鑑賞条件送信部301、鑑賞条件受信部302、鑑賞条件連動部303を動作させるためのプログラム、または、後述する処理フローを実行するためのプログラム、を格納した記憶媒体を含む。
【0025】
鑑賞条件送信部301は、携帯端末121へ、シアター装置111が描画している3DCGの、その時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“位置”を示す情報を送信することができる。また、鑑賞条件送信部301は、携帯端末121へ、シアター装置111が描画している3DCGの、その時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“向き”を示す情報を送信することができる。つまり、鑑賞条件送信部301は、シアター型VR110を体験していた鑑賞者が3DCG空間内のいずれの位置やいずれの向きの視点で描画された3DCGを見ていたかを通知することができる。例えば、鑑賞条件送信部301は、携帯端末121へ、所定の時に、1つの位置または1つの向きの少なくとも一方を示す情報(例えば、ナビゲータがシアター型VR110からHMD型VR120へ切り替える時に、鑑賞者がシアター型VR110で直近に見ていた3DCGが描画された際の視点の位置や向き)を送信することができる。あるいは、例えば、鑑賞条件送信部301は、携帯端末121へ、所定の期間に、複数の位置(例えば、ナビゲータがシアター装置111に接続されたコントローラなどで動かし続けている視点の位置)を示す情報を送信することができる。
【0026】
鑑賞条件受信部302は、携帯端末121から、携帯端末121が描画している3DCGのその時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“位置”を示す情報を受信することができる。また、鑑賞条件受信部302は、携帯端末121から、携帯端末121が描画している3DCGのその時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“向き”を示す情報を受信することができる。つまり、鑑賞条件受信部302は、HMD型VR120を体験していた鑑賞者が3DCG空間内のいずれの位置やいずれの向きの視点で描画された3DCGを見ていたかを知ることができる。例えば、鑑賞条件受信部302は、携帯端末121から、所定の時に、1つの位置または1つの向きの少なくとも一方を示す情報(例えば、ナビゲータがHMD型VR120からシアター型VR110へ切り替える時に、鑑賞者がHMD型VR120で直近に見ていた3DCGが描画された際の視点の位置や向き)を受信することができる。
【0027】
鑑賞条件連動部303は、シアター装置111が3DCGを描画する際の視点の“位置”として、鑑賞条件受信部302が受信した情報が示す“位置”を使用することができる。また、鑑賞条件連動部303は、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の“向き”として、鑑賞条件受信部302が受信した情報が示す“向き”を使用することができる。例えば、鑑賞条件連動部303は、シアター装置111が3DCGを描画する際の視点の“位置”や“向き”として、複数の鑑賞者のうちの1人の鑑賞者がHMD型VR120で直近に見ていた3DCGが描画された際の視点の“位置”や“向き”を使用することができる。つまり、複数の鑑賞者がいた場合、鑑賞条件連動部303は、複数の鑑賞者のうちの1人の鑑賞者の携帯端末121の鑑賞条件送信部203からの情報を選択のうえ使用する。
【0028】
このように、本発明では、シアター装置111と携帯端末121とが、3DCG空間内での視点の位置または向きの少なくとも一方を示す情報を相互に通知することができる。そのため、鑑賞者は、シアター型VRの3DCG空間とHMD型VRの3DCG空間との間をスムーズに行き来することができる。
【0029】
以下、3DCG空間の鑑賞条件の連動の例(<連動例1>~<連動例3>)を説明する。
図4および
図5は、本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件の連動を説明するための図である。3DCG空間(シアター)401は、シアター装置111が描画する3DCGによって表現される3次元(X,Y,Z)の仮想空間である。また、3DCG空間(第1のHMD)402は、第1の携帯端末121が描画する3DCGによって表現される3次元(X,Y,Z)の仮想空間である。また、3DCG空間(第2のHMD)403は、第2の携帯端末121が描画する3DCGによって表現される3次元(X,Y,Z)の仮想空間である。また、3DCG空間(第3のHMD)404は、第3の携帯端末121が描画する3DCGによって表現される3次元(X,Y,Z)の仮想空間である。第1の携帯端末121、第2の携帯端末121、第3の携帯端末121は、別々の鑑賞者によって利用されているとする。3DCG空間(シアター)401、3DCG空間(第1のHMD)402、3DCG空間(第2のHMD)403、3DCG空間(第3のHMD)404は、同一の仮想空間を表わしている。丸印は、視点の位置を示す。また、矢印は、視点の向きを示す。
【0030】
<連動例1>
図4は、シアター型VR110を体験していた鑑賞者たちが、引き続きHMD型VR120を体験する際に、シアター型VR110で最後に見た3DCGが描画された際の視点の位置で、自由な向きで3DCG空間内を見ることができる例である。例えば、ナビゲータは、観客席にいる鑑賞者たちに、シアター型VR110で3DCG空間内を視点の位置や向きを動かしながら見せる。次に、ナビゲータは、鑑賞者たちに携帯端末121が差し込まれたVRゴーグル122を装着させる。次に、鑑賞者たちは、シアター型VR110で最後に見た3DCGが描画された際の視点の位置で、各々が自由な向きで3DCG空間内を見ることができる。
【0031】
この例では、ナビゲータがシアター型VR110からHMD型VR120へ切り替える時に、シアター装置111は、全ての携帯端末121へ、鑑賞者がシアター型VR110で直近に見ていた3DCGが描画された際の視点の位置を示す情報を送信する。そして、携帯端末121は、取得した情報が示す位置に視点を固定したまま、携帯端末121の動きに応じた視点の向きに基づいて、3DCG空間を描画する。
図4に示されるように、3DCG空間(シアター)401では、視点の位置は原点(0,0,0)である。3DCG空間(第1のHMD)402、3DCG空間(第2のHMD)403、3DCG空間(第3のHMD)404でも、視点の位置は原点(0,0,0)である。しかし、3DCG空間(第1のHMD)402、3DCG空間(第2のHMD)403、3DCG空間(第3のHMD)404では、各々の視点の向きが異なっている。
【0032】
<連動例2>
図5は、HMD型VR120を体験している鑑賞者たちが、強制的に視点の位置を移動させられながら、自由な向きで3DCG空間内を見ることができる例である。例えば、ナビゲータは、観客席にいる鑑賞者たちに携帯端末121が差し込まれたVRゴーグル122を装着させる。次に、鑑賞者たちは、鑑賞条件送信部301から送信される視点の位置の情報にしたがって、各々が自由な向きで3DCG空間内を見ることができる。
【0033】
この例では、シアター装置111は、全ての携帯端末121へ、強制的に移動させるための同一の視点の位置の情報を送信する。つまり、シアター装置111は、複数の位置(例えば、ナビゲータがシアター装置111に接続されたコントローラなどで動かしている視点の位置)を示す情報を送信する。
図5の点線の矢印は、視点の位置の移動(原点から、位置1、位置2・・・への移動)を示す。そして、携帯端末121は、取得した情報が示す位置に視点を移動しながら、携帯端末121の動きに応じた視点の向きに基づいて、3DCG空間を描画する。
図5に示されるように、3DCG空間(第1のHMD)402、3DCG空間(第2のHMD)403、3DCG空間(第3のHMD)404では、各位置における各々の視点の向きが異なっている。
【0034】
<連動例3>
鑑賞者が、携帯端末121やHMDのポジショントラッキング機能(例えば、HMDが放射する赤外線を現実空間内に設置されたセンサが受け取るなどして、鑑賞者の現実空間内での位置を認識する)によって、3DCG空間内の視点の位置を動かすことができる場合を説明する。この場合、例えば、ナビゲータは、鑑賞者たちに、シアター型VR110で3DCG空間内を視点の位置や向きを動かしながら見せる。次に、ナビゲータは、鑑賞者たちに携帯端末121が差し込まれたVRゴーグル122を装着させる。次に、鑑賞者たちは、シアター型VR110で最後に見た3DCGが描画された際の視点の位置で3DCG空間内を見る。その後、鑑賞者たちは、各々が自由な位置や向きで3DCG空間内を見ることができる。
【0035】
図6は、本発明の一実施形態にかかる3DCG空間の鑑賞条件連動システム100における処理フローの一例を示すフローチャートである。なお、携帯端末121の場合を説明するが、シアター装置111の場合も同様である。
【0036】
ステップ601で、携帯端末121は、シアター装置111から、シアター装置111が描画している3DCGの、その時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“位置”を示す情報を受信する。なお、携帯端末121は、シアター装置111から、シアター装置111が描画している3DCGの、その時点の3DCG空間内の視点(仮想のカメラ)の“向き”を示す情報を受信することもできる。
【0037】
ステップ602で、携帯端末121は、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の“位置”として、ステップ601で受信した情報が示す位置を使用する。なお、携帯端末121は、携帯端末121が3DCGを描画する際の視点の“向き”として、ステップ601で受信した情報が示す向きを使用することもできる。
【0038】
ステップ603で、携帯端末121は、ステップ602で描画した3DCGを、携帯端末121の動きに応じた視点の向きで描画し直す。なお、携帯端末121は、ステップ602で描画した3DCGを、携帯端末121の動きに応じた視点の位置で描画し直すこともできる。
【0039】
なお、任意のステップ604で、携帯端末121は、シアター装置111へ、携帯端末121が描画している3DCGの、その時点の3DCG空間内の視点(仮想カメラ)の“位置”や“向き”を示す情報を送信する。
【0040】
なお、本明細書では、携帯端末121が3DCGを描画する実施形態を説明したが、シアター装置111などの他のコンピュータが描画した3DCGを携帯端末121が受信してディスプレイ上に表示するようにしてもよい。
【0041】
このように、本発明では、鑑賞者がVRの世界に没入することと、ナビゲータが観客に見せたい物体を見せることとを両立することができる。
【0042】
ここまで、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまで一例であり、本発明は上述した実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0043】
また、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0044】
100 鑑賞条件連動システム
110 シアター型VR
111 シアター装置
120 HMD型VR
121 携帯端末
122 VRゴーグル
201 鑑賞条件受信部
202 鑑賞条件連動部
203 鑑賞条件送信部
301 鑑賞条件送信部
302 鑑賞条件受信部
303 鑑賞条件連動部
401 3DCG空間(シアター)
402 3DCG空間(第1のHMD)
403 3DCG空間(第2のHMD)
404 3DCG空間(第3のHMD)