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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
B65D1/02 250
B65D1/02 232
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018032741
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019147576
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小宮 温
(72)【発明者】
【氏名】内山 剛志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】岡部 高規
(72)【発明者】
【氏名】石井 玲太
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-091819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部から下方に続く底部を有し、容器内に押し込み可能な可動する底面を有する合成樹脂製容器であって、
前記底部は、中央部の底面部と、
環状の接地部、該接地部から内側に立ち上がる内側立ち上がり部、及び前記接地部から外側に立ち上がって前記胴部に続く外側立ち上がり部からなる脚部と、
前記脚部の前記内側立ち上がり部の内周縁と接続する環状の溝部と、
該溝部と前記底面部との間に形成された接続部と、を有し、
前記溝部は、前記接続部の外周縁に接続する環状の内側溝部と、前記脚部の前記内側立ち上がり部の内周縁に接続する環状の外側溝部と、該外側溝部と前記内側溝部との間の突出部と、を有し、
前記接続部には、所定の間隔で放射状に設けた複数の放射リブと、該放射リブを接続する環状の環状リブと、が形成されている合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記環状リブは、隣接する前記放射リブ間で該放射リブ同士を接続するように設けられている請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記底面部の外周縁の形状は、円形である請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記接続部の形状及び前記溝部の形状は、円環状である請求項1乃至のいずれかに記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部から下方に続く底部を有し、該底部に含まれる底面部を可動部として容器内に押し込み可能な合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトル等の合成樹脂製容器へ、高温で滅菌処理された内容物(飲料物等)を充填して密封処理することが知られている。このような合成樹脂製容器への高温充填の場合、内容物を充填して密封した後に冷却するため、容器内が減圧状態となり、容器は不均一な変形が生じてしまう。
【0003】
このような冷却後の減圧による容器の不均一な変形を防止するために、容器の側壁面に複数個の減圧吸収パネルを形成し、更に容器の強度確保のために側壁面部の周囲に溝部(ビード)を形成することが知られている。
【0004】
ところで、内容物を高温充填する合成樹脂製容器において、外観に減圧吸収パネルや溝部等を形成することなく、凹凸のない滑らかな表面とすることが求められる場合があるが、このような場合には冷却後の容器内の減圧による容器の不均一な変形を避けることができない。このような外観をフラットにする容器の要望に応えるべく、内容物を高温充填して密封、冷却した後に、容器の底部を容器内に押し込んで底部反転の状態にすることで、容器内を内圧上昇させ、冷却時に生じる容器の内圧減少に対応することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-178994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、容器の底部を容器内に押し込み、容器内の内圧を上昇させることで冷却時に生じる不均一な減圧変形を抑えることができるが、容器を把持する手元から床に落下してしまったときなどの衝撃変形によって、容器内の内圧が変化し、底部が外方へ押し戻される(底バックリング)。
この底バックリングが発生すると容器内が減圧状態となり、容器の胴部が内方に凹むなどの、不均一な変形を生じる場合がある。このような落下による容器の変形は、商品としての外観を損ない、商品価値を低下させてしまうことになる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、底部を容器内に押し込んだ容器を落下などの衝撃によっても、底部が外方に押し戻されることのない、衝撃による底バックリングを抑制した合成樹脂製容器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る合成樹脂製容器は、胴部から下方に続く底部を有し、容器内に押し込み可能な可動する底面を有する合成樹脂製容器であって、前記底部は、中央部の底面部と、環状の接地部、該接地部から内側に立ち上がる内側立ち上がり部、及び前記接地部から外側に立ち上がって前記胴部に続く外側立ち上がり部からなる脚部と、前記脚部の前記内側立ち上がり部の内周縁と接続する環状の溝部と、該溝部と前記底面部との間に形成された接続部と、を有し、前記溝部は、前記接続部の外周縁に接続する環状の内側溝部と、前記脚部の前記内側立ち上がり部の内周縁に接続する環状の外側溝部と、該外側溝部と前記内側溝部との間の突出部と、を有し、前記接続部には、所定の間隔で放射状に設けた複数の放射リブと、該放射リブを接続する環状の環状リブと、が形成されている合成樹脂製容器。
【0009】
このような構成によれば、脚部と接続部との間に形成される溝部が、間に突出部を設けた外側溝部と内側溝部から構成されているので、容器内に内容物が高温充填され、冷却後に底面部を押し込んで容器内に入れ込んだ状態で、把持した手元から容器を落下させても、底面部は外側溝部を支えに、次いで内側溝部を支えにして容器の外方に向けて段階的に押し戻されるので、底面が外方に押し出される途中で内圧上昇を吸収することができ、底バックリングを抑えることができる。
更に、可動部として容器内に押し込み可能な底面の周囲である接続部に、所定の間隔で放射状に設けた複数の放射リブと、該放射リブを接続する環状の環状リブと、が形成されているので、容器内に内容物が高温充填され、冷却後に底面部を押し込んで容器内に入れ込んだ状態で、把持した手元から容器を落下させても、底面部が外方に押し戻されることを防止することができる。すなわち、複数の放射リブが外側への底面部の膨出を防止し、環状リブが底面部の折れ曲がりを防止することで、底面部が容器の外方へ押し戻されるのを防止することができる。
よって、前記接続部に形成された複数の放射リブ、該放射リブを接続する環状の環状リブ、環状の内側溝部及び外側溝部を設けることにより、把持した手元から容器を落下させても、押し込んだ底面部が外側に押し戻されるのを抑えることができる。すなわち、外側溝部及び内側溝部による段階的な押し戻しがなされる際中に、放射リブ及び環状リブの作用が働くので、より一層効果的に底面部が容器の外方へ押し戻されるのを防止することができるからである。
【0013】
本発明に係る合成樹脂製容器において、前記環状リブは、隣接する前記放射リブ間で該放射リブ同士を接続するように設けられている構成とすることができる。
【0014】
このような構成によれば、環状リブが、隣接する放射リブ間で該放射リブ同士を接続するように設けられているので、放射リブ間を折り目として底面部が折り曲げられるのを抑えることができる。
【0017】
本発明に係る合成樹脂製容器において、前記底面部の外周縁の形状は、円形である構成とすることができる。
【0018】
このような構成によれば、底面部の外周縁の形状が円形であるので、容器落下による変形、及び内圧変化の影響が底面部に均等に伝わり、底面部が外方に押し戻されるのを有効に防止することができる。
【0019】
本発明に係る合成樹脂製容器において、前記接続部の形状及び前記溝部の形状は、円環状である構成とすることができる。
【0020】
このような構成によれば、前記接続部の形状及び前記溝部の形状は、円環状であるので、容器落下による変形、及び内圧変化の影響が底面部に均等に伝わり、底面部が外方に押し戻されるのを有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る合成樹脂製容器によれば、落下等による衝撃に伴う変形による内圧変化があっても、容器内に押し込んだ底面部が押し戻されるのを抑え、容器の不均一な変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の第1の実施形態(実施形態1)に係る合成樹脂製容器であるボトルの正面図である。
図2図2は、図1に示すボトルの底面部が容器の外方に膨出した状態の前記合成樹脂製容器の断面の外形を示す外形線図である。
図3図3は、図2に示すボトルの底面部を容器の内方に押し込んだ状態の前記ボトルの断面の外径を示す外形線図である。
図4A図4Aは、図1に示すボトルの底面図である。
図4B図4Bは、本発明の第2の実施形態(実施形態2)に係るボトルの底面図である。
図5A図5Aは、図4AのA-A線での底部の断面の外形を示す外形線図である。
図5B図5Bは、図4AのB-B線での底部の断面の外形を示す外形線図である。
図6A図6Aは、図1に示すボトルの底面部が容器の内方に押し込んだ状態においての当該底部の断面の外形を示す外形線図である。
図6B図6Bは、図6Aに示す底面部が容器の内方に押し込んだ状態から容器の外方に押し戻しされ始めた状態のボトルの底部の断面の外形を示す外形線図である。
図6C図6Cは、図6Bに示す状態から更に底面部が容器の外方に押し戻された状態のボトルの底部の断面の外形を示す外形線図である。
図6D図6Dは、図6Cに示す状態から更に底面部が容器の外方に押し戻された状態のボトルの底部の断面の外形を示す外形線図である。
図7図7は、比較例(比較例1)となるボトルの底面図である。
図8A図8Aは、図7のC-C線での底部の断面の外形を示す外形線図である。
図8B図8Bは、図7のD-D線での底部の断面の外形を示す外形線図である。
図9A図9Aは、図7に示す比較例1のボトルの底面部が容器の内方に押し込んだ状態の底部の断面の外形を示す外形線図である。
図9B図9Bは、図9Aに示すボトルの底面部が容器の外方に押し戻された状態の当該底部の断面の外形を示す外形線図である。
図10A図10Aは、図1に示すボトルの底部の斜視図である(第1の実施形態)。
図10B図10Bは、図4Bに示す底部を有するボトルの底部の斜視図である(第2の実施形態)。
図11A図11Aは、図7に示す底部の斜視図である(比較例1)。
図11B図11Bは、他の比較例に係るボトルの底部の斜視図である(比較例2)。
図12A図12Aは、実施例1、2及び比較例1、2の各ボトルを落下させたときに底バックリングが発生したときの落下の高さ(cm)を示す表図である。
図12B図12Bは、実施例1、2及び比較例1、2の各ボトルの底部の押し戻し荷重と底部の変位との試験結果の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
本発明の第1の実施形態に係る合成樹脂製容器(以下、「ボトル」という)は、図1図4A図5A及び図5Bに示すように構成される。図1は、本発明の第1の実施形態(実施形態1)に係る合成樹脂製容器であるボトルの正面図であり、図2は、図1に示すボトルの底面部が容器の外方に膨出した状態の断面の外形を示す外形線図であり、図3は、図2に示すボトルの底面部を容器の内方に押し込んだ状態の断面の外径を示す外形線図である。図4Aは、図1に示すボトルの底面部が外方に膨出した状態の当該底部の正面図であり、図5Aは、図4AのA-A線での底部の断面の外形を示す外形線図であり、図5Bは、図4AのB-B線での底部の断面の外形を示す外形線図である。
【0025】
図1図4A図5A及び図5Bにおいて、ボトル11は、合成樹脂を原材料として公知の製法で形成される。ボトル11は、上から順に口部12、肩部13、胴部15、底部16により構成される(図1図3参照)。胴部15は表面に凹凸(例えば、減圧吸収パネル、溝)が形成されていない、表面が滑らかな円筒形状である。内容物を高温充填後、冷却して生じた減圧変形を、底面部21を内方に押し込むことで、内圧を上昇させ、圧力を補償させるため、胴部15表面の減圧吸収パネル等の形成を不要にできたものである。なお、胴部15の表面に減圧吸収パネル、溝等を設けることも可能である。また、胴部15の所定領域にはラベルが巻かれることがある。ラベルとしては、加熱により収縮密着するシュリンクラベル、又は熱収縮されることなく胴部に巻きつけるロールラベル等、種々のラベルがある。
【0026】
胴部15の下に続く底部16は、底面の中央にある円形状の底面部21と、底面部21の外周縁に接する径方向に傾斜した円環状の接続部22と、接続部22の外周側に位置する脚部23と、脚部23と接続部22との間に位置する溝部25と、から構成されている(図2図5B参照)。底面部21は、中央が平坦な円形状であり、その外周縁が接続部22に接している。脚部23は、円環状の接地部23aと、接地部23aから径方向内側に立ち上がる内側立ち上がり部23bと、接地部23aから径方向外側に立ち上がり、胴部15に接続する外側立ち上がり部23cとから成る。溝部25は、径方向外側に位置する円環状の外側溝部25aと、径方向内側に位置する円環状の内側溝部25bと、外側溝部25aと内側溝部25bとの間を仕切る容器外方へ突出する突出部25cとから成る。外側溝部25aの外周縁が内側立ち上がり部23bの内周縁と接し、内側溝部25bの内周縁が接続部22の外周縁と接している。
【0027】
底面部21と内側溝部25bとの間に位置する径方向に傾斜した円環状の接続部22には、所定角度の間隔(例えば15°~45°の角度毎)で周方向、放射状に配置された複数の放射リブ31と、隣り合う放射リブ同士を接続するように複数の円弧状の環状リブ32が円周に沿って離散的に形成されている。放射リブ31は粗密に配置されていても良い。放射リブ31が底面部21の外方への押し戻しに抵抗する働きを有し、環状リブ32が底面部21の折り曲げによる押し戻しに抵抗する働きを有するものと解される。これにより、底面部21を容器内に押し込んだボトル11を把持したときに手元から落下させた場合でも、底面部21の押し戻しを抑えることができる。
【0028】
次に、ボトル11の底面部21が容器内に押し込まれた状態から、底面部21が外方に押し戻される底バックリングが生じる一連の動作について図6A図6Bを参照して説明する。図6Aは、ボトル11内に内容物(緑茶、紅茶などの飲料その他)を高温充填(60℃以上)し、口部12をキャップ(不図示)により密封、そして冷却した後に、底面部21を容器の内方に押し込んだ状態を示す底部の断面の外形線図である。具体的には、図5A及び図5Bに示すように、底面部21が外方に膨出した状態のときに、内容物を高温充填し、封印冷却後に、底面部21を押し込み装置の円柱状の部材(不図示)を底面部21に当接して容器内に押し込んだ後の状態の底部16を図6Aに示したものである。
【0029】
図6Aにおいて、ボトル11の内方に押し込まれた底面部21に対して、容器を床に落下するなどし、衝撃を受けた部分の変形によって、容器の内圧が変化重(矢示30)に達すると、底面部21は図6Aの状態から図6Bの状態へと、外側溝部25aを支えにして外側(下方)に押し戻しが開始され、底面部21は外方へ所定長さ変位する。更に、底面部21に、より大きな荷重(矢示30で示す方向)がかかると、図6Cに示すように底面部21は、次に内側溝部25bを支えにして更に外側(下方)に押し戻されることになる。そして更に底面部21により大きな荷重(矢示30で示す方向)がかかると、図6Dに示すように、内側溝部25bを支えにして底面部21は更に外側(下方)に押し戻される。このような底面部21の押し戻しが生じても、底面部21の形状は変形することなく略維持されている。これは、底部16における接続部22において、放射リブ31を接続する環状リブ32が形成されているため、放射リブ31間を折り目として底面部21の折り曲げ変形を防止するためと考えられる。
【0030】
本実施形態に係るボトル11は、従来の合成樹脂製容器と異なり、溝部25が外側溝部25a及び内側溝部25bにより構成されているので、底面部21に押し戻しの荷重が作用したときに、外側溝部25aを支えにして底面部21の押し戻しが開始され、その後内側溝部25bを支えにした底面部21の押し戻しがなされる。これにより溝部25が押し戻しのクッション的な役割となり、支えとなる点が2箇所ある2段階の押し戻しとなっている。さらに内側溝部25bを支えとする押し戻しでは、傾斜した接続部22に放射リブ31及び環状リブ32が形成されているので、放射リブのみの従来容器よりも底面部21の押し戻しを抑える働きがより大きく作用することになる。また、溝部25が内側立ち上がり部23bに対して略垂直方向に配することで、押し戻しの際に周方向外側に作用する力が大きくなるので、これにより押し戻しに対する抵抗も大きくなり、底面部21の押し戻しをより効果的に抑えることができる。
【0031】
図4Bに示す実施形態2のボトル11a底部161は、実施形態1と同様に、底面の中央にある円形状の底面部211と、底面部211の外周縁に接する径方向に傾斜した円環状の接続部221と、接続部221の外周側に位置する脚部231と、脚部231と接続部221との間に位置する溝部251(外側溝部251a、内側溝部251b及び突出部251c)と、で構成されている。底面部211は、中央が平坦な円形状であり、その外周縁が接続部221に接している。脚部231は、円環状の接地部231aと、接地部231aから径方向内側に立ち上がる内側立ち上がり部231bと、接地部231aから径方向外側に立ち上がり、胴部15に接続する外側立ち会がり部231cとから成る。実施形態1では、放射リブ31同士を接続する環状リブ32は、各1本であるが、(図4A参照)、実施形態2では、平行に2本(2重)の環状リブ321a、321bが形成されている。なお、接続部221の幅(径方向)の長さ制限があるため、実施形態2の環状リブ321a、321bの幅(径方向)は実施形態1の環状リブ32の幅よりも細い(小さい)ものとなっている。
【0032】
次に、従来の形状の底部を有する合成樹脂製容器として、当該ボトルの底部の正面図を図7に、図7のC-C線での底部の断面の外形を示す外形線図を図8Aに、図7のD-D線での底部の断面の外形を示す外形線図を図8Bに示す。図7図8Bにおいて、ボトル100の底部101は、底面の中央にある円形状の底面部103と、底面部103の外周縁に接する傾斜した円環状の接続部105と、接続部105の外周側に位置する脚部106、脚部106と接続部105との間に位置する溝部107と、から構成されている。底面部103は、中央が平坦な円形状であり、その外周縁が接続部105に接している。脚部106は、円環状の接地部106aと、接地部106aから径方向内側に立ち上がる内側立ち上がり部106bと、接地部106aから径方向外側に立ち上がり、胴部104(図8A図8B参照)に接続する外側立ち上がり部106cとから成る。
【0033】
底面部103と溝部107との間に位置する径方向に傾斜した円環状の接続部105には、所定間隔(例えば15°~45°の角度毎)で放射状に配置された複数の花弁形状の放射リブ111が円形に沿って形成されている。放射リブ111は、接続部105に形成されている。上記した放射状に配置された複数の花弁形状の放射リブ111が底面部103の内方への押し込み及び外方への押し戻しに抵抗する働きを有している。上述した実施形態1、2と異なり、ボトル100の底部101は、環状リブに相当するものが無く、押し戻しの荷重が作用すると隣接する花弁形状の放射リブ111同士の間で底面部103の折れが生じ易くなる。また、溝部107は、実施形態1、2と異なり外側溝部及び内側溝部とに区分けされていないので、押し戻しの荷重が直接、接続部105に作用するので、底面部103が変位し易く、底面部103の折れも生じ易くなる。
【0034】
次に、上記した従来の形状の底部を有するボトル100の底面部103が内方に押し込まれた状態から、外方に押し戻される動作について図9A図9Bを参照して説明する。図9Aは、底面部103を内方に押し込んだ状態を示す底部の断面の外形線図であり、図9Bは、図9Aに示すボトルの底面部が容器の外方に押し戻された状態の当該底部の断面の外形を示す外形線図である。
【0035】
図9Aにおいて、ボトル100の内方に押し込まれた底面部103に対して、容器の外方に向けた内圧が所定量の荷重(矢示30で示す方向)に達すると、底面部103は、溝部107を支えとして外方に向けて変位する。そして、図9Bに示すように、底面部103は、かかる荷重により変形し、容器の外方へ押し戻される。上記したように、押し戻しの荷重が作用すると隣接する花弁形状の放射リブ111同士の間で底面部103の折れが生じ易くなり、さらに溝部107の形状から押し戻しの荷重が直接、接続部105に作用するので、底面部103が変位し易くなる。
【0036】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。第1の実施形態に係る合成樹脂製容器であるボトル11について実施例1(図10A)、第2実施形態に係るボトル11aについて実施例2(図10B)、上述の従来形状の底部を有するボトル100について比較例1(図11A)、そして、接続部に所定角度の間隔(30~60°)で放射状に配置された複数個の放射リブが形成された従来形状の底部を有するボトル120について比較例2(図11B)として底バックリング発生時の落下高さ測定、及び押し戻し荷重と変位の関係を実験した。図10Aは実施例1のボトル11の底部の斜視図、図10Bは実施例2のボトル11aの底部の斜視図、図11Aは比較例1のボトル100の底部の斜視図、図11Bは比較例2のボトル120の底部の斜視図である。なお、実施例1、2は実施形態1、2とそれぞれ同様の名称を使用する。比較例1も同様に従来のボトル(図7図9B)と同様の名称を使用する。
【0037】
図12Aでは、実施例1、2及び比較例1、2の各ボトルを落下させたときに底バックリングが発生したときの落下の高さ(cm)を表図で示したものである。また、図12Bでは、実施例1、2及び比較例1、2の各ボトルの口部から入れた棒状部材により底面部を外方に向けて押し戻すときに要する荷重(N:Y軸)と当該荷重を作用させたときの底面部の外方(下方向)の変位(cm:X軸)を折れ線グラフで示したものである。なお、図12A図12Bにおいて、実施例1をJ1、実施例2をJ2、比較例1をH1、比較例2をH2と表示している。
【0038】
図12Aにおいて、実施例1(J1)及び、実施例2(J2)の落下高さの結果から通常の手元からの落下(120cm前後)では底面部が押し戻されないことが判明した。これは、上述したように実施例1の底部16において、溝部25が外側溝部25aと内側溝部25bとで構成されていること、更に底面部21の周囲の接続部22において放射リブ31及び環状リブ32が形成されていることによると考えられる。
【0039】
図12Bの底面部を外方に向けて押し戻すときに要する荷重と当該荷重を作用させたときの底面部の外方の変位を示した折れ線グラフにおいて、実施例1(実線J1)は、変位約5cmで荷重130Nとなる1次ピークが生じ、さらに変位約12cmで荷重230Nとなる2次ピークが生じた。これは外周溝25aが最初の変位の支えとなって1次ピークを生じ、内周溝25bが次の変位の支えとなって2次ピークを生じさせたものと解される。1次ピークは外周溝25aがクッション的な役割となり、押し戻し及び落下において良好な数値となり、2次ピークでは、接続部22に放射リブ31及び環状リブ32が形成されていることにより、隣接する放射リブ間で底面部の折れが生じず、1次ピークよりも大きな荷重に耐える結果となっている。実施例2(破線J2)も同様の溝構成と、放射リブ及び環状リブの形成がされていることから、1次、そして1次ピークより大きい荷重となる2次ピークを生じている。実施例1、2は、底バックリングに対し弾性があり、耐荷重が大きいことが分かった。また2次ピークを生じる際、溝部が内側立ち上がり部に対して略垂直方向に配されていることによって、周方向外側へ向かって溝部が圧縮されるように荷重がかかり、2次ピークはより大きくなっているものと推定される。
【0040】
上記した試験の結果より、実施例1、2では、溝部が外側溝部及び内側溝部から構成され、更に接続部に放射リブと隣接する放射リブとを接続する環状リブが形成されているので、押し込み、押し戻しには所定の荷重を要すると共に、手元等の高さからの落下によっては底面部の反転による押し戻しが生じることがなく、ボトルの変形も抑制することができる。
【0041】
上記した実施形態及び実施例では、合成樹脂製容器として説明したがこれに限定するものではない。また、胴部の表面が滑らかな円筒形状のボトルとしているが、表面に減圧吸収パネル、溝部等を設けることもできる。また、円筒形状に替えて胴部及び底部を角形形状のボトルとすることもできる。また、底部の接続部に形成した放射リブ、環状リブは凹凸形状の補強リブであり、表面の凹と凸を逆にすることができる。さらに環状リブを連続な円環状とすることもできる。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、この実施形態や実施例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその実施例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る合成樹脂製容器は、把持した手元からの落下等による衝撃に伴う変形による内圧変化があっても、容器内に押し込んだ底面部が押し戻されるのを抑え、容器の不均一な変形を防止することができるという効果を奏し、胴部から下方に続く底部を有し、該底部に含まれる底面部を可動部として容器内に押し込み可能な合成樹脂製容器として有用である。
【符号の説明】
【0044】
11、11a ボトル
12 口部
13 肩部
15 胴部
16、161 底部
21、211 底面部
22、221 接続部
23、231 脚部
23a、231a 接地部
23b、231b 内側立ち上がり部
23c、231c 外側立ち上がり部
25、251 溝部
25a、251a 外側溝部
25b、251b 内側溝部
25c、251c 突出部
31、311 放射リブ
32、321a、321b 環状リブ
100 ボトル
101 底部
103 底面部
105 接続部
106 脚部
106a 接地部
106b 内側立ち上がり部
106c 外側立ち上がり部
107 溝部
120 ボトル
121 底部
122 底面部
125 脚部
125a 接地部
126 溝部
130 放射リブ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B