(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】三次元造形システム、データ生成装置、データを生成する方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20221109BHJP
B22F 10/18 20210101ALI20221109BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20221109BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20221109BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20221109BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20221109BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221109BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221109BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20221109BHJP
【FI】
B29C64/393
B22F10/18
B22F12/50
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/321
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2018048759
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水上 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 郷志
(72)【発明者】
【氏名】中村 和英
(72)【発明者】
【氏名】湯脇 康平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 功一
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105177(JP,A)
【文献】特表2017-523934(JP,A)
【文献】特表2016-536178(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038984(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0068774(US,A1)
【文献】国際公開第2016/038356(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106926444(CN,A)
【文献】国際公開第2017/152133(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B23K 9/00-10/02
26/00-26/70
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形装置と、制御装置と、を備える三次元造形システムであって、
前記三次元造形装置は、
造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、
前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、
前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と、
造形データに従って、前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御装置は、前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加することによって前記造形データを生成し、前記造形データを前記三次元造形装置に送信する造形データ生成部を備え
、
前記造形データ生成部は、
前記パスデータを解析して、前記パスが表す前記移動距離、及び、連続する2つの前記パスの間において前記移動方向が変わる角度を取得し、
連続する2つの前記パスのうち少なくともいずれかの前記パスの前記移動距離が予め定められた閾値以上であり、かつ、前記角度が予め定められた閾値より小さい場合に、連続する2つの前記パスの間に前記開閉コマンドを追加する、
三次元造形システム。
【請求項2】
三次元造形装置と、制御装置と、を備える三次元造形システムであって、
前記三次元造形装置は、
造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、
前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、
前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と、
造形データに従って、前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御装置は、前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加することによって前記造形データを生成し、前記造形データを前記三次元造形装置に送信する造形データ生成部を備え、
前記造形データ生成部は、前記パスデータを解析して、前記造形材料を吐出しながら前記ノズルを移動させるときの前記ノズルの移動速度を取得し、前記移動速度を用いて前記開閉コマンドを追加するか否かを決定する、三次元造形システム。
【請求項3】
請求項
2記載の三次元造形システムであって、
前記造形データ生成部は、前記パスデータを解析して、前記パスが表す移動経路における前記ノズルの
前記移動距離を取得し、前記移動距離を用いて前記開閉コマンドを追加するか否かを決定する、三次元造形システム。
【請求項4】
請求項
2又は請求項3記載の三次元造形システムであって、
前記造形データ生成部は、前記パスデータを解析して、連続する2つの前記パスの間において前記ノズルの
前記移動方向が変わる角度を取得し、前記角度を用いて、2つの前記パスの間に前記開閉コマンドを追加するか否かを決定する、三次元造形システム。
【請求項5】
請求項1記載の三次元造形システムであって、
前記造形データ生成部は、前記パスデータを解析して、前記造形材料を吐出しながら前記ノズルを移動させるときの前記ノズルの移動速度を取得し、前記移動速度を用いて前記開閉コマンドを追加するか否かを決定する、三次元造形システム。
【請求項6】
請求項1
から請求項5のいずれか一項に記載の三次元造形システムであって、
前記制御装置は、さらに、三次元造形物の形状を表す原データから、前記パスデータを生成し、前記パスデータを前記造形データ生成部に出力するパスデータ生成部を備える、三次元造形システム。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の三次元造形システムであって、
前記三次元造形装置は、材料の少なくとも一部を溶融して前記造形材料を生成する造形材料生成部を備え、
前記造形材料生成部は、溝が形成された溝形成面を有し、回転可能なフラットスクリューと、前記溝形成面に対向し、前記ノズルに連通する連通孔が形成されたスクリュー対面部と、を備え、
前記フラットスクリューは、回転軸に沿った方向の長さが、前記回転軸に垂直な方向の長さよりも短い、三次元造形システム。
【請求項8】
請求項7記載の三次元造形システムであって、
前記溝の深さは、前記フラットスクリューの外周から中心に向かって浅くなる、三次元造形システム。
【請求項9】
造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と、造形データに従って、前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える三次元造形装置に接続可能なデータ生成装置であって、
前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータの入力を受け付ける受付部と、
前記パスデータを解析して前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加することによって、前記造形データを生成する造形データ生成部と、
を備え、
前記造形データ生成部は、
前記パスデータを解析して、前記パスが表す前記移動距離、及び、連続する2つの前記パスの間において前記移動方向が変わる角度を取得し、
連続する2つの前記パスのうち少なくともいずれかの前記パスの前記移動距離が予め定められた閾値以上であり、かつ、前記角度が予め定められた閾値より小さい場合に、連続する2つの前記パスの間に前記開閉コマンドを追加する、
データ生成装置。
【請求項10】
造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と、造形データに従って、前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える三次元造形装置に接続可能なデータ生成装置であって、
前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータの入力を受け付ける受付部と、
前記パスデータを解析して前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加することによって、前記造形データを生成する造形データ生成部と、を備え、
前記造形データ生成部は、前記パスデータを解析して、前記造形材料を吐出しながら前記ノズルを移動させるときの前記ノズルの移動速度を取得し、前記移動速度を用いて前記開閉コマンドを追加するか否かを決定する、
データ生成装置。
【請求項11】
造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、前記造形テーブルに対する前記ノズルの位置を変更する移動機構と、造形データに従って、前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える三次元造形装置に入力される前記造形データを生成する方法であって、
前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータの入力を受け付ける工程と、
前記パスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加する工程と、
を備え、
前記開閉コマンドを前記パスデータに追加する前記工程において、
前記パスデータを解析して、前記パスが表す前記移動距離、及び、連続する2つの前記パスの間において前記移動方向が変わる角度を取得し、
連続する2つの前記パスのうち少なくともいずれかの前記パスの前記移動距離が予め定められた閾値以上であり、かつ、前記角度が予め定められた閾値より小さい場合に、連続する2つの前記パスの間に前記開閉コマンドを追加する、
方法。
【請求項12】
造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、前記造形テーブルに対する前記ノズルの位置を変更する移動機構と、造形データに従って、前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える三次元造形装置に入力される前記造形データを生成する方法であって、
前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータの入力を受け付ける工程と、
前記パスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加する工程と、を備え、
前記開閉コマンドを前記パスデータに追加する前記工程において、前記パスデータを解析して、前記造形材料を吐出しながら前記ノズルを移動させるときの前記ノズルの移動速度を取得し、前記移動速度を用いて前記開閉コマンドを追加するか否かを決定する、
方法。
【請求項13】
造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と、造形データに従って前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える三次元造形装置に入力される前記造形データを生成する機能をコンピューターに実現させるためのプログラムであって、
前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータの入力を受け付ける機能と、
前記パスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加する機能と、
を備え、
前記開閉コマンドを前記パスデータに追加する前記機能は、
前記パスデータを解析して、前記パスが表す前記移動距離、及び、連続する2つの前記パスの間において前記移動方向が変わる角度を取得し、
連続する2つの前記パスのうち少なくともいずれかの前記パスの前記移動距離が予め定められた閾値以上であり、かつ、前記角度が予め定められた閾値より小さい場合に、連続する2つの前記パスの間に前記開閉コマンドを追加する、
プログラム。
【請求項14】
造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と、造形データに従って前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える三次元造形装置に入力される前記造形データを生成する機能をコンピューターに実現させるためのプログラムであって、
前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータの入力を受け付ける機能と、
前記パスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加する機能と、を備え、
前記開閉コマンドを前記パスデータに追加する前記機能は、前記パスデータを解析して、前記造形材料を吐出しながら前記ノズルを移動させるときの前記ノズルの移動速度を取得し、前記移動速度を用いて前記開閉コマンドを追加するか否かを決定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形物の造形技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、光硬化性樹脂をビームで照射して硬化させることによって三次元造形物を造形する三次元造形システムが開示されている。特許文献1の三次元造形システムでは、三次元CADデータを適切なフォーマットに変換したデータに基づいて、三次元造形装置に三次元造形物を造形させる。このように、一般に、三次元造形システムでは、三次元CADデータから、三次元造形装置の構成に適合する造形データを生成し、当該造形データに従って、三次元造形装置に三次元造形物を造形させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元造形システムには、ノズルから造形テーブルに造形材料を吐出して三次元造形物を造形する三次元造形装置を備えるものがある。そうした三次元造形装置に対しては、例えば、ノズルからの造形材料の吐出を制御するための構成として、ノズルに接続されている造形材料の流路を開閉する開閉機構を新たに追加する改変がおこなわれる場合がある。三次元造形システムでは、三次元造形装置にそうした改変がおこなわれた場合でも、改変後の三次元造形装置に適合し、追加された開閉機構を効率良く動作させることができる造形データが、簡易に生成できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態は、制御装置と三次元造形装置とを有する三次元造形システムであって;前記三次元造形装置は;造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと;前記ノズルに接続されている流路を開閉する開閉機構と;前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と;造形データに従って前記開閉機構と前記移動機構と、を制御する制御部と;を備え;前記制御装置は;前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加することによって、前記造形データを生成し、前記造形データを前記三次元造形装置に送信する造形データ生成部を備え;前記造形データ生成部は;前記パスデータを解析して、前記パスが表す前記移動距離、及び、連続する2つの前記パスの間において前記移動方向が変わる角度を取得し;連続する2つの前記パスのうち少なくともいずれかの前記パスの前記移動距離が予め定められた閾値以上であり、かつ、前記角度が予め定められた閾値より小さい場合に、連続する2つの前記パスの間に前記開閉コマンドを追加する;三次元造形システムとして提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】三次元造形システムの構成を示す概略ブロック図。
【
図3】フラットスクリューの構成を示す概略斜視図。
【
図5】三次元造形装置における造形中の様子を模式的に示す概略図。
【
図9】コマンド追加判定処理のフローの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.実施形態:
1-1.三次元造形システムの概略構成:
図1は、本実施形態における三次元造形システム10の構成を示す概略ブロック図である。三次元造形システム10は、三次元造形装置100を備える。三次元造形システム10は、三次元造形物の形状を表す原データODに基づいて、三次元造形装置100に三次元造形物を造形させる。本実施形態では、原データODは、三次元CAD(Computer-aided design)ソフトウェアで作成された三次元CADデータである。以下では、「三次元造形システム」、「三次元造形装置」、「三次元造形物」、および「三次元CADデータ」をそれぞれ、単に、「造形システム」、「造形装置」、「造形物」、および、「CADデータ」とも呼ぶ。三次元造形装置100の構成については後述する。
【0008】
三次元造形システム10は、さらに、制御装置11を備える。制御装置11は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、を備えるコンピューターによって構成される。制御装置11は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。なお、他の実施形態では、制御装置11は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0009】
制御装置11は、原データODから生成した造形データMDを造形装置100に送信する。制御装置11は、パスデータ生成部12と、造形データ生成部13と、を備える。本実施形態では、パスデータ生成部12と造形データ生成部13とは、制御装置11を構成するコンピューターにおいて実行されるプログラムによって実現される機能部である。
【0010】
パスデータ生成部12は、制御装置11の外部からの原データODの入力を受け付け、原データODからパスデータPDを生成する機能を有する。パスデータ生成部12は、生成したパスデータPDを造形データ生成部13に出力する。パスデータPDについては、造形装置100の構成を説明した後に説明する。
【0011】
造形データ生成部13は、パスデータPDから造形データMDを生成するデータ生成処理を実行する。造形データ生成部13は、受付部14と、コマンド追加部15と、送信部16と、を有する。受付部14は、パスデータ生成部12からのパスデータPDの入力を受け付ける。受付部14は、パスデータPDをコマンド追加部15に出力する。
【0012】
コマンド追加部15は、パスデータPDの内容を解析する。コマンド追加部15は、その解析結果に基づいて、開閉コマンドをパスデータPDに追加して、造形データMDを生成する。送信部16は、生成された造形データMDを造形装置100に送信する。データ生成処理、コマンド追加部15によるパスデータPDの解析、コマンド追加部15が追加する開閉コマンド、および、造形データMDについては後述する。
【0013】
1-2.三次元造形装置の概略構成:
1-2-1.三次元造形装置の全体構成:
図2は、造形装置100の構成を示す概略図である。
図2には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。本実施形態では、X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、重力方向(鉛直方向)とは反対の方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の参照図においても、図示の方向が
図2と対応するように適宜、図示してある。
【0014】
造形装置100は、造形材料を用いて三次元造形物を造形する。「造形材料」については後述する。造形装置100は、制御部101と、造形部110と、造形テーブル210と、移動機構230と、を備える。
【0015】
制御部101は、制御装置11から受け取った造形データMDに従って、造形装置100全体の動作を制御して、造形物を造形する造形処理を実行する。本実施形態では、制御部101は、1つ、または、複数のプロセッサーと、主記憶装置と、を備えるコンピューターによって構成される。制御部101は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。なお、制御部101は、そうしたコンピューターによって構成される代わりに、各機能を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0016】
造形部110は、固体状態の材料の少なくとも一部を溶融させてペースト状にした造形材料を造形テーブル210上に配置する。造形部110は、材料供給部20と、造形材料生成部30と、吐出部60と、を備える。
【0017】
材料供給部20は、造形材料生成部30に材料を供給する。材料供給部20は、例えば、材料を収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、下方に排出口を有している。当該排出口は、連通路22を介して、造形材料生成部30に接続されている。材料は、ペレットや粉末等の形態で材料供給部20に投入される。材料供給部20に投入される材料については後述する。
【0018】
造形材料生成部30は、材料供給部20から供給された材料の少なくとも一部を溶融させた流動性を有するペースト状の造形材料を生成し、吐出部60へと導く。造形材料生成部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、スクリュー対面部50と、を有する。
【0019】
フラットスクリュー40は、その中心軸に沿った方向である軸線方向における高さが直径よりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー40は、その軸線方向がZ方向に平行になるように配置され、円周方向に沿って回転する。本実施形態では、フラットスクリュー40の中心軸は、その回転軸RXと一致する。
図2には、フラットスクリュー40の回転軸RXを一点鎖線で図示してある。
【0020】
フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面47側は駆動モーター32に連結されており、フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内において回転する。駆動モーター32は、制御部101の制御下において駆動する。
【0021】
フラットスクリュー40は、回転軸RXと交差する面である下面48に、溝部42が形成されている。上述した材料供給部20の連通路22は、フラットスクリュー40の側面から、当該溝部42に接続されている。
【0022】
フラットスクリュー40の下面48は、スクリュー対面部50の上面52に面しており、フラットスクリュー40の下面48の溝部42と、スクリュー対面部50の上面52との間には空間が形成される。造形部110では、フラットスクリュー40とスクリュー対面部50との間のこの空間に、材料供給部20から材料が供給される。フラットスクリュー40およびその溝部42の具体的な構成については後述する。
【0023】
スクリュー対面部50には、材料を加熱するためのヒーター58が埋め込まれている。回転しているフラットスクリュー40の溝部42内に供給された材料は、フラットスクリュー40の回転によって、少なくとも一部が溶融されつつ、溝部42に沿って流動し、フラットスクリュー40の中央部46へと導かれる。中央部46に流入したペースト状の材料は、スクリュー対面部50の中心に設けられた連通孔56を介して、造形材料として吐出部60に供給される。
【0024】
吐出部60は、ノズル61と、流路65と、開閉機構70と、を有する。ノズル61は、流路65を通じて、スクリュー対面部50の連通孔56に接続されている。流路65は、フラットスクリュー40とノズル61との間の造形材料の流路である。ノズル61は、造形材料生成部30において生成された造形材料を、先端の吐出口62から造形テーブル210に向かって吐出する。
【0025】
ノズル61の吐出口62は、孔径Dnを有する。ノズル61の孔径Dnは、ノズル61の走査方向における吐出口62の開口幅の最大値である。なお、「ノズル61の走査方向」とは、ノズル61が造形材料を吐出しながら造形テーブル210に対してノズル61の位置が相対的に移動する方向である。本実施形態では、吐出口62は正円状の形状を有しており、孔径Dnは吐出口62の直径に相当する。なお、吐出口62は正円状以外の形状を有していてもよい。その場合には、孔径Dnは走査方向において最も離れた位置にある吐出口62の端部同士の間の距離に相当する。吐出口62が複数の微小な開口が配列された構成を有している場合には、孔径Dnは走査方向において最も外側に配列されている2つの微小開口における外側の端部同士の間の距離に相当する。
【0026】
開閉機構70は、流路65を開閉して、ノズル61からの造形材料の流出を制御する。本実施形態では、開閉機構70は、バタフライバルブによって構成されている。開閉機構70は、駆動軸72と、弁体73と、バルブ駆動部74と、を備える。
【0027】
駆動軸72は、一方向に延びる軸状部材である。駆動軸72は、流路65の出口において、造形材料の流れ方向に交差するように取り付けられている。本実施形態では、駆動軸72は流路65に対して垂直に取り付けられている。
図2では、駆動軸72は、Y方向に平行に配置されている構成が図示されている。駆動軸72は、その中心軸を中心に回転可能に取り付けられている。
【0028】
弁体73は、流路65内において回転する板状部材である。本実施形態では、弁体73は、駆動軸72の流路65内に配置されている部位を板状に加工することによって形成されている。弁体73を、その板面に垂直な方向に見たときの形状は、弁体73が配置されている部位における流路65の開口形状とほぼ一致する。
【0029】
バルブ駆動部74は、制御部101の制御下において、駆動軸72を回転させる回転駆動力を発生する。バルブ駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。駆動軸72の回転によって弁体73が流路65内において回転する。
【0030】
弁体73の板面が、
図2に示されているように、流路65における造形材料の流れ方向に沿っている状態が、流路65が開かれている状態である。この状態では、流路65からノズル61への造形材料の流入が許容され、吐出口62から造形材料が流出する。弁体73の板面が、流路65における造形材料の流れ方向に対して垂直にされた状態が、流路65が閉じられた状態である。この状態では、流路65からノズル61への造形材料の流入が遮断され、吐出口62からの造形材料の流出が停止される。
【0031】
造形テーブル210は、ノズル61の吐出口62に対向する位置に配置されている。造形テーブル210は、X,Y方向に平行に配置される上面211を有している。後述するように、造形装置100では、造形テーブル210の上面211に造形材料を堆積させることによって造形物が造形される。
【0032】
移動機構230は、制御部101の制御下において、ノズル61と造形テーブル210との相対的な位置関係を変更する。移動機構230は、3軸ポジショナーによって構成され、3つのモーターMの駆動力によって、ノズル61と造形テーブル210との相対位置をX,Y,Z方向の3軸方向に変化させる。本実施形態では、移動機構230は、位置が固定されているノズル61に対して、造形テーブル210を移動させる。
【0033】
なお、造形装置100では、移動機構230によって造形テーブル210を移動させる構成の代わりに、造形テーブル210の位置が固定された状態で、移動機構230が造形テーブル210に対してノズル61を相対的に移動させる構成が採用されてもよい。こうした構成であっても、ノズル61と造形テーブル210との相対的な位置関係が変更可能である。
【0034】
本明細書においては、特に断らない限り、「ノズル61の移動」は、造形テーブル210に対するノズル61の相対的な位置の変化を意味する。また、「ノズル61の移動速度」というときは、造形テーブル210に対するノズル61の相対的な速度を意味し、「ノズル61の移動距離」というときは、造形テーブル210とノズル61との相対的な位置の変化量を意味する。
【0035】
1-2-2.フラットスクリューについての詳細:
図3は、フラットスクリュー40の下面48側の構成を示す概略斜視図である。
図3には、造形材料生成部30において回転するときのフラットスクリュー40の回転軸RXの位置が一点鎖線で図示されている。
図2を参照して説明したように、スクリュー対面部50に対向するフラットスクリュー40の下面48には、溝部42が設けられている。以下、下面48を、「溝形成面48」とも呼ぶ。
【0036】
フラットスクリュー40の溝形成面48の中央部46は、溝部42の一端が接続されている凹部として構成されている。中央部46は、
図2に図示されているスクリュー対面部50の連通孔56に対向する。中央部46は、回転軸RXと交差する。
【0037】
フラットスクリュー40の溝部42は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝部42は、中央部46から、フラットスクリュー40の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝部42は、螺旋状に延びるように構成されているとしてもよい。溝形成面48には、溝部42の側壁部を構成し、各溝部42に沿って延びている凸条部43が設けられている。
【0038】
溝部42は、フラットスクリュー40の側面に形成された材料流入口44まで連続している。この材料流入口44は、材料供給部20の連通路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0039】
フラットスクリュー40が回転すると、材料流入口44から供給された材料の少なくとも一部が、溝部42内において加熱されながら溶融し、流動性が高まっていく。そして、その材料は、溝部42を通じて中央部46へと流動し、中央部46に集まり、そこで生じる内圧により、ノズル61へと導かれ、吐出口62から吐出される。
【0040】
図3には、3つの溝部42と、3つの凸条部43を有するフラットスクリュー40の例が図示されている。フラットスクリュー40に設けられる溝部42や凸条部43の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー40には、1つの溝部42のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝部42が設けられていてもよい。また、溝部42の数に合わせて任意の数の凸条部43が設けられてもよい。
【0041】
図3には、材料流入口44が3箇所に形成されているフラットスクリュー40の例が図示されている。フラットスクリュー40に設けられる材料流入口44の数は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー40には、材料流入口44が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0042】
図4は、スクリュー対面部50の上面52側を示す概略平面図である。スクリュー対面部50の上面52は、上述したように、フラットスクリュー40の溝形成面48に対向する。以下、この上面52を、「スクリュー対向面52」とも呼ぶ。スクリュー対向面52の中心には、造形材料をノズル61に供給するための上述した連通孔56が形成されている。
【0043】
スクリュー対向面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。複数の案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有する。
図2を参照して説明したように、スクリュー対面部50には、材料を加熱するためのヒーター58が埋め込まれている。造形材料生成部30における材料の溶融は、ヒーター58による加熱と、フラットスクリュー40の回転と、によって実現される。
【0044】
図2を参照する。造形部110では、Z方向に小型なサイズを有するフラットスクリュー40を利用していることによって、材料の少なくとも一部を溶融してノズル61まで導くための経路がZ方向において占める範囲が小さくなっている。このように、造形装置100では、フラットスクリュー40を利用していることによって、造形材料の生成機構が小型化されている。
【0045】
造形装置100では、フラットスクリュー40を利用していることによって、流動性を有する状態にされた造形材料をノズル61へと圧送する構成が簡易に実現されている。この構成により、ノズル61からの造形材料の吐出量の制御がフラットスクリュー40の回転数の制御によって可能であり、ノズル61からの造形材料の吐出制御が容易化されている。「ノズル61からの造形材料の吐出量」とは、ノズル61の吐出口62から流出する造形材料の流量を意味する。
【0046】
造形装置100では、フラットスクリュー40を利用した造形材料の生成機構を有していることによって、流動性が発現された造形材料が、流路65を通じてノズル61へと導かれる。そのため、流路65の下流に設けられた簡易な構成の開閉機構70による造形材料の吐出制御が可能になっており、造形材料MMの吐出制御の精度が高められている。
【0047】
1-2-3.三次元造形装置での造形:
図5は、造形装置100が吐出処理によって造形物を造形していく様子を模式的に示す概略図である。造形装置100では、造形物を造形する際には、制御部101の制御下において、以下の吐出処理が実行される。
【0048】
吐出処理では、上述したように、造形材料生成部30において、回転しているフラットスクリュー40に供給された固体状態の材料の少なくとも一部が溶融されて造形材料MMが生成される。そして、移動機構230によって、造形テーブル210の上面211に沿った走査方向にノズル61を移動させながら、造形テーブル210の上面211に向かって、ノズル61から造形材料MMが吐出される。吐出処理では、ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の走査方向に連続して堆積されていく。
【0049】
制御部101は、ノズル61からの造形材料MMの吐出を停止した状態で、造形テーブル210に対するノズル61の位置を変更する場合には、開閉機構70の弁体73によって流路65を閉塞させて、ノズル61を移動させる。制御部101は、吐出処理を再開する場合には、開閉機構70の弁体73によって流路65を開く。このように、造形装置100によれば、開閉機構70による開閉動作によって、ノズル61による造形材料MMの堆積位置を簡易に制御することができる。なお、開閉機構70による開閉動作は、後述する造形データ内に含まれる開閉コマンドによって制御される。
【0050】
ここで、造形テーブル210の上面211に対してノズル61が同一の高さ位置にあるときの吐出処理によって堆積された造形材料MMによって構成される層を「造形層ML」と呼ぶ。制御部101は、ノズル61の位置をZ方向に移動させ、これまでの吐出処理で形成された造形層MLの上に、次の吐出処理によって、さらに造形材料MMを積み重ねることによって、造形物を造形していく。つまり、造形装置100では、造形物は、造形層MLの積層によって造形される。制御部101は、後述する造形データMDが表すノズル61の制御内容に従って、ノズル61の移動と、ノズル61からの造形材料MMの吐出と、を制御することによって、造形テーブル210上に造形物を造形する。
【0051】
ところで、造形層MLを形成する際には、ノズル61の先端の吐出口62と、ノズル61の直下の位置近傍においてノズル61から吐出された造形材料MMが堆積される予定部位MLtとの間に、下記のギャップGが保持されていることが望ましい。造形材料MMが造形層MLの上に堆積される場合には、造形材料MMが堆積される予定部位MLtは、ノズル61の下に位置する造形層MLの上面である。
【0052】
ギャップGの大きさは、ノズル61の吐出口62における孔径Dn(
図2に図示)以上とすることが望ましく、孔径Dnの1.1倍以上とすることがより好ましい。こうすれば、ノズル61の吐出口62から吐出される造形材料MMが、予定部位MLtに押しつけられない自由な状態で堆積される。この結果、ノズル61から吐出された造形材料MMの横断面形状が潰れてしまうことを抑制でき、造形物の面粗さを低減することが可能である。また、ノズル61の周囲にヒーターが設けられた構成においては、ギャップGを形成することにより、当該ヒーターによる造形材料MMの過熱を防止でき、堆積後の造形材料MMの過熱による変色や劣化が抑制される。一方、ギャップGの大きさは、孔径Dnの1.5倍以下とすることが好ましく、1.3倍以下とすることが特に好ましい。これによって、予定部位MLtに対する造形材料MMの堆積位置の位置ずれや、造形層ML同士の密着性の低下が抑制される。
【0053】
1-2-4.三次元造形装置で用いられる材料:
造形装置100において用いられる材料について説明する。造形装置100では、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として造形物を造形することができる。ここで、「主材料」とは、造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料MMには、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0054】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、造形材料生成部30において、当該材料が可塑化することによって造形材料MMが生成される。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。
【0055】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック
【0056】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、造形材料生成部30において、フラットスクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された造形材料MMは、ノズル61から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0057】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から射出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂は、ガラス転移点が約120℃であり、ノズル61からの射出時には約200℃であることが望ましい。このように高温の状態で造形材料MMを射出するために、ノズル61の周囲にはヒーターが設けられてもよい。
【0058】
造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料MMの生成の際に溶融する成分が混合されて、造形材料生成部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金
【0059】
造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、造形テーブル210に配置された造形材料MMは焼結によって硬化されてもよい。
【0060】
材料供給部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、造形材料生成部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0061】
材料供給部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等
【0062】
その他に、材料供給部20に投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)或いはその他の熱可塑性樹脂。
【0063】
1-3.パスデータ生成部およびパスデータ:
図6は、造形システム10における制御装置11のパスデータ生成部12が生成するパスデータPDの一例を示す模式図である。パスデータPDに記述されている情報は、
図6で図示されている上方から下方に順に読み込まれて解釈される。パスデータPDは、造形装置100が、原データODが表す造形物を造形するためのノズル61の制御内容を指定するパラメーターを含む。ここでの「ノズル61の制御内容」には、造形テーブル210に対するノズル61の移動の制御と、ノズル61からの造形材料MMの吐出の制御と、が含まれる。本実施形態のパスデータPDでは、ノズル61の移動の制御は、パスパラメーターPPによって示される。また、ノズル61からの造形材料MMの吐出の制御は、吐出パラメーターPMによって示される。
【0064】
パスパラメーターPPは、ノズル61が次に位置すべき造形テーブル210の上面211上におけるX,Y方向を座標軸とする座標系の座標(X,Y)を指定する。パスデータPDでは、前後に並ぶ2つのパスパラメーターPPn,PPn+1の組によって、1つのパスが特定される。添え字「n」は任意の自然数である。「パス」とは、ノズル61の移動経路の単位であり、造形層MLを造形する際のノズル61の移動を、任意のある座標から次の座標への一方向の直線的な移動で区切ったときの一区間の経路を意味する。
【0065】
図6の例では、2つのパスパラメーターPP
n,PP
n+1の組によって、座標(10,10)から座標(10,20)へと+10の既定の単位距離だけY方向にノズル61が移動するパスが特定されている。このように、パスデータPDは、ノズル61の移動方向と移動距離とを示すパスを含んでいると解釈される。
【0066】
吐出パラメーターPMは、パスパラメーターPPの後に付される。吐出パラメーターPMは、そのパスパラメーターPPで示されている座標にノズル61が移動する間に吐出される造形材料MMの量を指定する。つまり、吐出パラメーターPMは、パスデータPDに含まれるパスが表すノズル61の移動に伴って造形テーブル210上に配置される造形材料MMの合計量を表している。
【0067】
図6の例では、吐出パラメーターPMであることを示すアルファベット「E」の後に、既定の単位量で表された造形材料MMの量を示す整数値が付されている。この例では、ノズル61を座標(10,10)から座標(10,20)へと移動させる間に、10単位量の造形材料MMを吐出することが指定されている。
【0068】
パスデータPDは、本実施形態の造形装置100にように、開閉機構70のようなバルブによって造形材料MMの吐出を制御する構成を有していないタイプの造形装置に、造形物を造形させる際にも使用可能なデータである。本実施形態では、パスデータPDは、いわゆる熱溶解積層方式(FDM方式)の3Dプリンターに入力されるデータと同じデータ型を有する。パスデータ生成部12は、FDM方式の3Dプリンター用に開発された、いわゆるスライサーと呼ばれる公知のソフトウェアを利用して、パスデータPDを生成するものとしてもよい。本実施形態の造形システム10では、以下に説明するデータ生成処理によって、そうしたパスデータPDに基づいて、開閉機構70が追加されている造形装置100に適合する造形データMDを生成する。
【0069】
1-4.データ生成処理:
図7は、造形データ生成部13において実行されるデータ生成処理のフローを示す説明図である。データ生成処理とは、パスデータPDにおけるパスパラメーターPPによって示されているパスと吐出パラメーターPMとに応じて、開閉機構70を駆動させる開閉コマンドをパスデータPDに追加して、造形データMDを生成する処理である。データ生成処理において、造形データ生成部13は、パスデータPDに記述されているノズル61の制御内容を解析し、開閉機構70の駆動により、ノズル61から造形材料MMが適切に吐出されるように、パスデータPDに開閉コマンドを追加する。
【0070】
ステップS10の工程では、造形データ生成部13の受付部14は、パスデータ生成部12が生成したパスデータPDの入力を受け付ける。受付部14は、パスデータPDをコマンド追加部15に出力する。
【0071】
ステップS20の工程では、コマンド追加部15は、パスデータPDの内容を解析する。コマンド追加部15は、パスデータPDを解析して、パスデータPDに記述されている以下のノズル61の制御内容を特定する。
【0072】
図6を参照する。コマンド追加部15は、パスデータPDのパスパラメーターPPと吐出パラメーターPMとから、ノズル61が造形材料MMを吐出しながら移動するパスを特定する。以下、「ノズル61が造形材料MMを吐出しながら移動するパス」のことを単に「材料吐出パス」とも呼ぶ。
【0073】
コマンド追加部15は、各材料吐出パスでのノズル61の移動距離と移動速度とを取得する。各材料吐出パスのノズル61の移動距離は、材料吐出パスの始端位置と終端位置を示すパスパラメーターPPn,PPn+1の座標値から算出される。ノズル61の移動速度は、各パスでのノズル61の平均速度であり、造形システム10のユーザーによって予め指定されている造形スピードのレベルに応じて、造形装置100において各パスに予め割り当てられる速度である。コマンド追加部15は、さらに、連続する2つの材料吐出パスの間においてノズル61の移動方向が変わる角度を取得する。
【0074】
図8を参照する。
図8は、ステップS30の工程において生成される造形データMDの一例を示す模式図である。
図8の造形データMDは、
図6で例示されているパスデータPDに基づき生成され、パスデータPDの一部に開閉コマンドVCが追加されたものに相当する。
【0075】
ステップS30の工程では、コマンド追加部15は、ステップS20での解析結果を用いて、後述するコマンド追加判定処理を実行する。そして、その判定結果に応じて、パスデータPDに開閉機構70の駆動する開閉コマンドVCを追加して、造形データMDを生成する。開閉コマンドVCは、開コマンドVCoと、閉コマンドVCcと、を含む。開コマンドVCoは、開閉機構70に流路65を開かせて、ノズル61からの造形材料MMの吐出を許容する指令を表す。閉コマンドVCcは、開閉機構70に流路65を閉じさせて、ノズル61からの造形材料MMの吐出を停止させる指令を表す。
【0076】
コマンド追加部15は、コマンド追加判定処理において、開閉コマンドVCの追加禁止が決定されない限り、材料吐出パスの始端において開閉機構70が開き、終端において開閉機構70が閉じられるように、開閉コマンドVCを追加する。具体的には、コマンド追加部15は、材料吐出パスの始端に開コマンドVCoを追加し、終端に閉コマンドVCcを追加する。
図8の例では、材料吐出パスの始端の座標を示すパスパラメーターPP
nの後に、開コマンドVCoが追加され、終端の座標を示すパスパラメーターPP
n+1の後に、閉コマンドVCcが追加されている。
【0077】
図9は、コマンド追加部15が実行するコマンド追加判定処理のフローの一例を示す説明図である。本実施形態では、コマンド追加部15は、コマンド追加判定処理によって、2つの連続する材料吐出パスの間に開閉コマンドVCを追加するか否かを判定する。「2つの連続する材料吐出パスの間」とは、先の材料吐出パスでのノズル61の走査の後、次の材料吐出吐出パスでのノズル61の走査を開始するまでの期間を意味する。以下での各判定工程における閾値は、開閉機構70の開閉速度や応答速度などの開閉機構70の駆動特性や、ノズル61の吐出性能、移動機構230の駆動特性、造形材料MMの特性などの種々の条件に応じて予め定められる値である。
【0078】
ステップS100では、コマンド追加部15は、各材料吐出パスにおけるノズル61の移動速度が予め決められた閾値以上であるか否かを判定する。ノズル61の移動速度が高い場合には、開閉機構70の開閉速度や応答速度が、ノズル61の移動速度に追いつかず、造形材料MMの吐出を開始するタイミングや、停止するタイミングが遅れてしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、ノズル61の移動速度の高低を、開閉コマンドVCの追加の要否を判定する条件のひとつとしている。ステップS100において、ノズル61の移動速度が閾値以上であると判定された場合には、コマンド追加部15は、ステップS110の判定処理に進む。
【0079】
ステップS110では、コマンド追加部15は、ノズル61の移動距離についての判定を実行する。ステップS110では、コマンド追加部15は、2つの連続する材料吐出パスのうちの後の材料吐出パスでのノズル61の移動距離が予め決められた閾値以上であるか否かを判定する。コマンド追加部15は、ノズル61の移動距離が閾値より小さい場合、つまり、先の材料吐出パスに続く後の材料吐出パスが短い場合には、2つの材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加の禁止を決定する。これによって、先の材料吐出パスの後に、開閉機構70が一旦閉じられて、後の材料吐出パスでの造形材料MMの吐出の開始が遅れ、後の短い材料吐出パスで形成される長さの短い造形部位において、造形材料MMの堆積量が不足することを抑制できる。また、短い材料吐出パスの前で開閉機構70が駆動することによる造形スピードの低下を抑制できる。ステップS110において、ノズル61の移動速度が閾値以上と判定された場合には、コマンド追加部15は、ステップS120の判定処理に進む。
【0080】
ステップS120では、コマンド追加部15は、2つの材料吐出パスの間の角度についての判定を実行する。ここでの「角度」は、2つのパスの間に形成される2つの角度のうち180度以下の方の角度を意味する。コマンド追加部15は、2つの材料吐出パスの間の角度が、予め決められた閾値以上の緩やかな角度である場合には、2つの材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加の禁止を決定する。これによって、2つの材料吐出パスの間の角部において、開閉機構70が開閉動作することによって造形材料MMが吐出される量が予定された量から変動してしまうことが抑制される。よって、造形材料MMの量の誤差があるときに形状の変化が顕著となる緩やかな角度の角部での造形精度の低下が抑制される。また、2つの材料吐出パスの間でノズル61が連続して走査されるため、造形時間の短縮が可能である。ステップS120において、コマンド追加部15は、2つの材料吐出パスの間の角度が、予め決められた閾値より小さい急角度である場合には、2つの材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加を決定する。これによって、2つの材料吐出パスの間の角部でノズル61による連続した走査がおこなわれ、急角度であるべき角部が丸められてしまうことが抑制され、当該角部の造形精度の低下が抑制される。
【0081】
最初のステップS100において、ノズル61の移動速度が閾値より大きいと判定された場合には、コマンド追加部15は、ステップS130の判定処理に進む。ステップS130では、上記のステップS120と同様に、2つの材料吐出パスの間の角度についての判定をおこなう。本実施形態では、ステップS130で判定に用いられる閾値は、ノズル61の移動速度が遅いため、ステップS120での閾値より小さい。なお、他の実施形態では、ステップS130で判定に用いられる閾値は、ステップS120での閾値と同じ値であってもよいし、大きい値であってもよい。コマンド追加部15は、2つの材料吐出パスの間の角度が閾値以上の緩やかな角度である場合には、2つの材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加の禁止を決定する。これによって、開閉機構70の開閉動作に起因する2つの材料吐出パスによって造形される角部での造形材料MMの量の変動が抑制され、当該角部の造形精度が低下してしまうことを抑制できる。また、造形時間の短縮が可能である。一方、ステップS130において、コマンド追加部15は、2つの材料吐出パスの間の角度が、予め決められた閾値より小さい場合には、2つの材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加を決定する。これによって、2つの材料吐出パスの間の角部が丸められてしまうことが抑制され、当該角部の造形精度の低下が抑制される。
【0082】
このように、コマンド追加判定処理の判定により、造形物の造形の際に、開閉機構70の駆動が適切に実行されるように、パスデータPDに記述されているノズル61の制御内容に応じて、開閉コマンドVCがパスデータPDの適切な位置に追加される。なお、コマンド追加部15は、開閉コマンドVCを追加する際に、パスデータPDから吐出パラメーターPMを削除することが望ましい。これによって、造形データMDをよりコンパクトにすることができるため、効率的である。
【0083】
図7を参照する。データ生成処理のステップS40では、コマンド追加部15によって生成された造形データMDが造形装置100の制御部101に送信される。造形装置100は、造形データMDに従って、開閉機構70を駆動させつつノズル61を走査して、造形物を造形する。
【0084】
1-5.まとめ:
本実施形態の造形システム10によれば、ノズル61の移動とノズル61からの造形材料MMの吐出とが記述されているパスデータPDから、開閉機構70を効率良く駆動させることができる造形装置100に適合した造形データMDが、自動的に簡易に生成される。そのため、例えば、造形装置100が、開閉機構70を有していない構成から開閉機構70を有している構成に改変された場合であっても、その対応が容易化され、効率的である。特に、本実施形態の造形システム10によれば、パスデータPDを、従来公知のFDM方式の3Dプリンター用のソフトウェアを用いて作成できるため、より効率的である。
【0085】
本実施形態の造形システム10によれば、制御装置11がパスデータ生成部12を有している。そのため、制御装置11に、CADデータなどの原データODを入力すれば、制御装置11において造形データMDが生成され、そのまま造形装置100に造形物を造形させることができる。よって、CADデータの生成された後、造形物の造形までの工程が簡易化されるため、効率的である。
【0086】
本実施形態の造形システム10によれば、造形データ生成部13は、材料吐出パスでのノズル61の移動速度についての判定結果に応じて、連続する2つの材料吐出パスの間に開閉コマンドVCを追加するか否かを決定している。これによって、先の材料吐出パスの終端において開閉機構70の閉動作が遅れて造形材料MMが過剰に吐出されることや、後の材料吐出パスの始端において開閉機構70の開動作が遅れて、後の材料吐出パスで造形材料MMが不足することが抑制される。
【0087】
本実施形態の造形システム10によれば、造形データ生成部13は、材料吐出パスでのノズル61の移動距離についての判定結果に応じて、連続する2つの材料吐出パスの間に開閉コマンドVCを追加するか否かを決定している。これによって、材料吐出パスの長さに起因してノズル61からの造形材料MMの吐出タイミングの遅延が生じ、造形精度が低下することが抑制される。また、短い材料吐出パスの前に開閉機構70が駆動することによって造形スピードが低下してしまうことが抑制される。
【0088】
本実施形態の造形システム10によれば、造形データ生成部13は、連続する2つの材料吐出パスの間の角度についての判定結果に応じて、その2つの材料吐出パスの間に開閉コマンドVCを追加するか否かを決定している。これによって、2つの材料吐出パスの間の角部において造形精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0089】
以上、本実施形態の造形システム10や、造形データMDを生成する方法、制御装置11を構成しているコンピューターに造形データMDを生成させる機能を実現させているプログラムによれば、本実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0090】
2.他の実施形態:
上記の実施形態中で説明した種々の構成は、例えば、以下のように改変することが可能である。以下に説明する他の実施形態はいずれも、上記の実施形態と同様に、発明を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0091】
2-1.他の実施形態1:
上記の実施形態では、造形データ生成部13は、制御装置11においてプログラムが実行されることによって実現される一機能部として構成されている。これに対して、造形データ生成部13は、造形装置100と接続可能であり、上記実施形態で説明したデータ生成処理と同等の処理を実行する単体の造形データ生成装置として構成されてもよい。
【0092】
2-2.他の実施形態2:
造形システム10において、パスデータ生成部12は、制御装置11とは別のコンピューターによって構成されていてもよく、制御装置11とは別の単体の装置として構成されていてもよい。また、造形システム10は、制御装置11のパスデータ生成部12が省略され、システム外部で生成されたパスデータPDに基づいて、制御装置11の造形データ生成部13において造形データMDを生成する構成が採用されてもよい。
【0093】
2-3.他の実施形態3:
造形データ生成部13のコマンド追加部15が実行するコマンド追加判定処理のフローは、上記の実施形態で説明したものに限定されることはない。例えば、造形材料の種類や性状、ノズル61の構成、ノズル61の移動制御の内容などに応じて、造形材料MMの吐出が適切におこなわれるように、コマンド追加判定処理の判定内容や判定条件は任意に変更されてよい。
【0094】
例えば、コマンド追加部15は、材料吐出パスでのノズル61の移動速度についての判定のみを実行し、その判定結果に応じて、開閉コマンドVCを追加してもよい。より具体的には、材料吐出パスでのノズル61の移動速度が閾値以上のときに、開閉機構70の駆動タイミングが遅れないように、開閉コマンドVCの追加を禁止してもよい。逆に、2つの連続する材料吐出パスのそれぞれのノズル61の移動速度が閾値未満のときに、造形精度よりも造形スピードを優先させるために、2つの連続する材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加を禁止してもよい。
【0095】
コマンド追加部15は、材料吐出パスでのノズル61の移動距離についての判定のみを実行し、その判定結果に応じて、開閉コマンドVCを追加してもよい。コマンド追加部15は、ノズル61の移動速度についての判定をおこなうことなく、上記実施形態のように、連続する2つの材料吐出パスの後の材料吐出パスにおいて、ノズル61の移動距離が閾値以上のときに、開閉コマンドVCの追加を禁止してもよい。また、コマンド追加部15は、例えば、連続する2つの材料吐出パスのそれぞれのノズル61の移動距離が閾値以上のときに、例えば、造形精度よりも造形スピードを優先させるなどの理由のために、2つの連続する材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加を禁止してもよい。
【0096】
コマンド追加部15は、連続する2つの材料吐出パスの間でノズル61が方向転換する角度についての判定のみを実行し、その判定結果に応じて、開閉コマンドVCを追加してもよい。コマンド追加部15は、ノズル61の移動速度や移動距離についての判定をおこなうことなく、上記実施形態のように、連続する2つの材料吐出パスの間の角度が閾値以上のときに、開閉コマンドの追加を禁止してもよい。あるいは、コマンド追加部15は、例えば、2つの材料吐出パスの間の角度が閾値未満であっても、例えば、角部の造形精度よりも造形スピードが優先されるような場合には、2つの材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加を禁止してもよい。
【0097】
ここで、連続する2つの材料吐出パスでの造形精度は、先の材料吐出パスの長短に影響される場合がある。そこで、コマンド追加部15は、例えば、連続する2つの材料吐出パスのうちの先の材料吐出パスでのノズル61の移動距離に応じて、開閉コマンドVCの追加判定の内容を変更してもよい。例えば、コマンド追加部15は、先の材料吐出パスでのノズル61に応じて、2つの材料吐出パスの間の角度についての判定内容を次のように変えてもよい。
【0098】
コマンド追加部15は、先の材料吐出パスでのノズル61の移動距離が閾値未満である場合には、後の材料吐出パスでのノズル61の移動距離や2つの材料吐出パスの間の角度にかかわらず、2つの材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加を禁止する。先の材料吐出パスでのノズル61の移動距離が短い場合にその終端で開閉機構70を動作させると、その前後で吐出される造形材料MMの量の誤差が大きくなってしまう可能性や、造形時間が増大する可能性が高いためである。なお、コマンド追加部15は、先の材料吐出パスでのノズル61の移動距離が閾値未満である場合において、後の材料吐出パスでのノズル61の移動距離が閾値以上の場合にのみ、2つの材料吐出パスの間の角度が閾値未満のときに、2つの材料吐出パスの間への開閉コマンドVCの追加を決定してもよい。後の材料吐出パスでのノズル61の移動距離が長いときに、開閉機構70の開閉動作が省略されると、2つの材料吐出パスの間での角部の形状の造形誤差が顕著になる可能性があるためである。
【0099】
コマンド追加部15は、先の材料吐出パスでのノズル61の移動距離が閾値以上であり、後の材料吐出パスでのノズル61の移動距離が閾値未満の場合には、2つの材料吐出パスの間の角度が第1の閾値以上のときに開閉コマンドVCの追加を禁止する。そして、当該角度が第1の閾値未満のときに開閉コマンドVCの追加を決定する。一方、コマンド追加部15は、2つの材料吐出パスでのノズル61の移動距離がともに閾値以上である場合には、2つの材料吐出パスの間の角度が第1の閾値とは異なる第2の閾値以上のときに開閉コマンドVCの追加を禁止し、当該角度が第2の閾値未満のときに開閉コマンドVCの追加を決定する。角度についての判定での閾値を変える理由は、後の材料吐出パスでのノズル61の移動距離に応じて、角部で開閉機構70を動作させないことによる角部の造形精度の低下が顕著になる角度が変わる場合があるためである。
【0100】
コマンド追加部15は、ノズル61の移動速度についての判定、ノズル61の移動距離についての判定、ノズル61が方向転換する角度についての判定、のうちの2つ以上を任意に組み合わせて、開閉コマンドVCを追加してもよい。また、コマンド追加部15は、上記の3つの判定以外の判定基準に基づいて、開閉コマンドVCを追加するか否かを判定してもよい。コマンド追加部15は、例えば、吐出パラメーターPMの値に基づく判定を実行しても良い。コマンド追加部15は、例えば、2つの材料吐出パスに挟まれた中間の材料吐出パスについて、吐出される造形材料MMの量が閾値よりも小さく、その長さが閾値より短いときに、その材料吐出パスでは開閉機構70を閉じたままにする判定をしてもよい。
【0101】
2-4.他の実施形態4:
パスデータPDは、FDM方式の3Dプリンターで使用されるデータと同じ型のデータでなくてもよく、公知のソフトウェアであるスライサーで作成可能なデータでなくてもよい。パスデータPDには、パスデータPDや吐出パラメーターPM以外のパラメーターやコマンドが含まれていてもよい。
【0102】
2-5.他の実施形態5:
造形装置100は、フラットスクリュー40によって造形材料MMを生成してノズル61から吐出する構成を有するものには限定されない。造形装置100には、例えば、予め準備された造形材料MMを、プランジャーや圧電素子が発生させる圧力によって、ノズル61から吐出する構成を有するものが採用されてもよい。
【0103】
2-6.他の実施形態6:
造形装置100の開閉機構70は、流路65内において造形材料が流れる方向に交差するように移動するシャッターによって構成されてもよい。また、開閉機構70は、ピストンが流路65内に突出して流路65を閉塞するプランジャーによって構成されてもよい。開閉機構70は、上記実施形態で説明したバタフライバルブや、シャッターを用いたシャッター機構、プランジャーのうちの2つ以上の機構を組み合わせて構成されてもよい。
【0104】
2-7.他の実施形態7:
上記実施形態において、材料供給部20は、複数のホッパーを備える構成を有していてもよい。この場合には、各ホッパーからフラットスクリュー40へと異なる材料が供給され、フラットスクリュー40の溝部42内において混合されて、造形材料が生成されてもよい。例えば、上記実施形態で説明した主材料となる粉末材料と、それに添加される溶媒やバインダーなどが別々のホッパーから並行してフラットスクリュー40に供給されてもよい。
【0105】
2-8.他の実施形態8:
上記実施形態において、ソフトウェアによって実現された機能及び処理の一部又は全部は、ハードウェアによって実現されてもよい。また、ハードウェアによって実現された機能及び処理の一部又は全部は、ソフトウェアによって実現されてもよい。ハードウェアとしては、例えば、集積回路、ディスクリート回路、または、それらの回路を組み合わせた回路モジュールなど、各種回路を用いることができる。
【0106】
3.他の形態:
本発明は、上述の各実施形態や実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態(aspect)によって実現することができる。例えば、本発明は以下の形態として実現可能である。以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する上記の各実施形態中の技術的特徴は、本発明の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本発明の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中において必須であると説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0107】
(1)第1の形態は、三次元造形装置と制御装置とを有する三次元造形システムとして提供される。この形態の三次元造形システムの前記三次元造形装置は、造形材料を前記造形テーブルに向かって吐出するノズルと;前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と;前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と;造形データに従って前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と;を備える。前記制御装置は、前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加することによって、前記造形データを生成して、前記三次元造形装置に送信する造形データ生成部を備える。
この形態の造形システムによれば、開閉機構の駆動制御は想定されていないパスデータに、開閉機構を駆動させるための開閉コマンドが追加された造形データを簡易に生成することができる。こうした造形システムであれば、開閉機構を有していない造形装置で使用できるパスデータを、開閉機構を有している造形装置に適合する造形データへと変換することができ、効率的である。
【0108】
(2)上記形態の三次元造形システムにおいて、前記制御装置は、さらに、三次元造形物の形状を表す原データから前記パスデータを生成し、前記パスデータを前記造形データ生成部に出力するパスデータ生成部を備えてよい。
この形態の造形システムによれば、三次元CADデータなどの原データから造形データが生成され、造形装置に造形物を造形させることができるため、効率的である。
【0109】
(3)上記形態の三次元造形システムにおいて、前記造形データ生成部は、前記パスデータを解析して、前記造形材料を吐出しながら前記ノズルを移動させるときの前記ノズルの移動速度を取得し、前記移動速度を用いて前記開閉コマンドを追加するか否かを決定してよい。
この形態の造形システムによれば、開閉機構の駆動が、パスにおけるノズルの移動速度に応じて適切に実行されるように開閉コマンドが追加された造形データを得ることができる。
【0110】
(4)上記形態の三次元造形システムにおいて、前記造形データ生成部は、前記パスデータを解析して、前記パスが表す移動経路における前記ノズルの移動距離を取得し、前記移動距離を用いて前記開閉コマンドを追加するか否かを決定してよい。
この形態の造形システムによれば、開閉機構の駆動が、パスにおけるノズルの移動距離に応じて適切に実行されるように開閉コマンドが追加された造形データを得ることができる。
【0111】
(5)上記形態の造形システムにおいて、前記パスデータを解析して、連続する2つの前記パスの間において前記ノズルの移動方向が変わる角度を取得し、前記角度を用いて、2つの前記パスの間に前記開閉コマンドを追加するか否かを決定してよい。
この形態の造形システムによれば、2つのパスの間での開閉機構の駆動が、2つのパスの間の角度に応じて適切に実行されるように開閉コマンドが追加された造形データを得ることができる。
【0112】
(6)上記形態の三次元造形システムにおいて、前記三次元造形装置は、さらに、フラットスクリューを有し、回転している前記フラットスクリューに供給された材料の少なくとも一部を溶融させることによって前記造形材料を生成して、前記ノズルに導く造形材料生成部を備えてよい。
この形態の製造方法によれば、フラットスクリューの利用によって、造形材料を生成する機構を小型化できる。また、フラットスクリューの利用によって、開閉機構によるノズルからの造形材料の吐出の制御の精度が高められる。
【0113】
(7)第2の形態は、造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と、造形データに従って前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える三次元造形装置に接続可能なデータ生成装置として提供される。この形態のデータ生成装置は、前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータの入力を受け付ける受付部と;前記パスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加することによって、前記造形データを生成する造形データ生成部と;を備える。
この形態のデータ生成装置によれば、パスデータに開閉機構を駆動させるための開閉コマンドを追加した造形データを簡易に生成することができる。このデータ生成装置を用いれば、開閉機構を有していない造形装置で使用できるパスデータを、開閉機構を有している造形装置に適合する造形データへと変換することができ、効率的である。
【0114】
(8)第3の形態は、造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、前記造形テーブルに対する前記ノズルの位置を変更する移動機構と、造形データに従って前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える三次元造形装置に入力される前記造形データを生成する方法として提供される。この形態の方法は、前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータの入力を受け付ける工程と;前記パスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加する工程と;を備える。
この形態の方法によれば、パスデータに開閉機構を駆動させるための開閉コマンドを追加した造形データを簡易に生成することができる。この方法によれば、開閉機構を有していない造形装置のために生成されたパスデータを、開閉機構を有している造形装置のための造形データへと変換することができ、効率的である。
【0115】
(9)第4の形態は、造形材料を造形テーブルに向かって吐出するノズルと、前記ノズルに接続されている前記造形材料の流路を開閉する開閉機構と、前記造形テーブルと前記ノズルとの相対位置を変更する移動機構と、造形データに従って前記開閉機構と前記移動機構とを制御する制御部と、を備える三次元造形装置に入力される前記造形データを生成する機能をコンピューターに実現させるためのプログラムとして提供される。この形態のプログラムは、前記造形テーブルに対する前記ノズルの相対的な移動方向および移動距離を示すパスと、前記造形材料の吐出を示す吐出パラメーターと、を含むパスデータの入力を受け付ける機能と;前記パスデータを解析して、前記開閉機構を駆動させる開閉コマンドを前記パスデータに追加する機能と;を備える。
この形態のプログラムによれば、コンピューターによって、パスデータに開閉機構を駆動させるための開閉コマンドを追加した造形データを簡易に生成することができる。このプログラムを用いれば、コンピューターによって、開閉機構を有していない造形装置のために生成されたパスデータを、開閉機構を有している造形装置のための造形データへと変換することができ、効率的である。
【0116】
本発明は、造形システム、データ生成装置、造形データを生成する方法、造形データを生成するコンピュータープログラム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、前記に造形システムにおいて生成された造形データや、前記のデータ生成装置や方法、コンピュータープログラムによって生成された造形データ、前記のコンピュータープログラムや造形データを記録した一時的でない記録媒体(non-transitory storage medium)等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0117】
10…三次元造形システム、11…制御装置、12…パスデータ生成部、13…造形データ生成部、14…受付部、15…コマンド追加部、16…送信部、20…材料供給部、22…連通路、30…造形材料生成部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、42…溝部、43…凸条部、44…材料流入口、46…中央部、48…溝形成面、50…スクリュー対面部、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、60…吐出部、61…ノズル、62…吐出口、65…流路、70…開閉機構、72…駆動軸、73…弁体、74…バルブ駆動部、100…三次元造形装置、101…制御部、110…造形部、210…造形テーブル、211…上面、230…移動機構、Dn…孔径、G…ギャップ、M…モーター、MD…造形データ、ML…造形層、MLt…予定部位、MM…造形材料、OD…原データ、PD…パスデータ、PM…吐出パラメーター、PP,PPn,PPn+1…パスパラメーター、RX…回転軸、VC…開閉コマンド、VCc…閉コマンド、VCo…開コマンド