(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】印刷方法及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/70 20060101AFI20221109BHJP
B26D 3/08 20060101ALI20221109BHJP
B26D 1/06 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
B41J11/70
B26D3/08 Z
B26D1/06 Z
(21)【出願番号】P 2018056866
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】坂崎 尚之
(72)【発明者】
【氏名】亀田 晋一
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-179882(JP,A)
【文献】特開2012-139861(JP,A)
【文献】特開2006-289694(JP,A)
【文献】特開2003-285486(JP,A)
【文献】特開平07-025088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00
B41J 15/00
B26D 3/00
B26D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープに印刷を行う印刷方法であって、
前記テープに印刷を行う印刷装置が、
前記テープにおける印刷開始位置を、該印刷開始位置を境として隣り合う2つの領域が一体的な状態で保持される態様でハーフカットし、
前記テープにおける前記印刷開始位置と、前記テープに印刷する内容を示す情報を含むラベルデータとに基づいて、前記テープにおける、前記ラベルデータが印刷された領域を前記テープから切断して切り離すフルカット位置を決定し、
前記テープにおける前記印刷開始位置と前記フルカット位置との間となる領域に前記ラベルデータを印刷するとともに、前記テープにおける、前記フルカット位置を境として前記ラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域のうち、前記フルカット位置と、該フルカット位置から所定の距離となる位置との間に、目印を印刷し、
前記フルカット位置で前記テープを切断する、
処理を実行し、
前記所定の距離となる位置は、前記テープの切断が行われた後にハーフカットを行うハーフカット位置であり、
前記目印を印刷する処理は、
前記ハーフカット位置の近傍に少なくとも、前記目印を印刷することを含
み、
前記テープは、長手方向に巻かれて環形状を有した前記テープを含む被記録媒体を収容した媒体アダプタから供給され、
前記目印は、前記媒体アダプタに前記テープを収容する際に、前記媒体アダプタから前記テープを突出させる突出量の基準となる印刷範囲で印刷され、
前記突出量の基準は、前記媒体アダプタを前記印刷装置に装着したときの前記テープの先端から印刷部の位置までの距離の基準となる所定距離に基づいて設定されている、
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の印刷方法であって、
前記目印を印刷する処理は、前記フルカット位置から前記目印までの距離と前記ハーフカット位置から前記目印までの距離とが略同じになるように、前記目印を印刷することを含む、
ことを特徴とす
る印刷方法。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の印刷方法であって、
前記所定の距離は、前記テープに印刷をする際に、前記印刷装置の構造上、印刷することが困難な領域の寸法、又は、前記テープを搬送する前記印刷装置の搬送処理部により前記テープを搬送するために必要な領域の前記テープの搬送方向の寸法と対応する
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の印刷方法であって、
前記目印を印刷する処理では、前記印刷装置は、
前記フルカット位置を前記テープの先端としてラベルデータを印刷する際に印刷開始位置となる位置よりも前記先端側となる領域内に前記目印を印刷する
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の印刷方法であって、
前記目印を印刷する処理では、前記印刷装置は、
前記フルカット位置を前記テープの先端としてラベルデータを印刷する際の前記ハーフカット位置となる位置よりも前記先端側となる領域内に前記目印を印刷する
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の印刷方法であって、
前記ラベルデータを印刷する処理では、前記印刷装置は、
前記テープにおける、前記印刷開始位置と前記フルカット位置との間となる領域に、前記ラベルデータを印刷する複数の領域を設定し、該複数の領域のそれぞれに連続して前記ラベルデータを印刷する処理を実行可能であり、
前記ラベルデータを印刷する前記複数の領域のそれぞれに連続して前記ラベルデータを印刷する場合には、前記印刷装置は、前記ラベルデータを印刷した領域同士が一体的な状態で保持される態様でハーフカットする処理を実行可能である
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の印刷方法であって、
前記テープは、粘着層を含む前記ラベルデータを印刷するラベル層と、該ラベル層における前記粘着層を保護するセパレータとを備え、
前記フルカット位置で前記テープを切断する処理では、前記印刷装置は、前記ラベル層及び前記セパレータを切断し、
前記ハーフカットする処理では、前記印刷装置は、前記ラベル層のみを切断する
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
テープに印刷を行う印刷装置であって、
前記テープを搬送する搬送処理部と、
前記テープを切断して分離するフルカット、及び切断位置を境として隣り合う2つの領域が一体的な状態で保持される態様で前記テープを切断するハーフカットをすることが可能な切断処理部と、
前記テープに印刷する内容を示す情報を含むラベルデータを前記テープに印刷する印刷処理部と、
前記テープにおける印刷開始位置と前記フルカットするフルカット位置との間となる領域に前記ラベルデータを印刷するとともに、前記テープにおける、前記フルカット位置を境として前記ラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域のうち、前記フルカット位置と、該フルカット位置から所定の距離となる位置との間に、目印を印刷する処理を、前記搬送処理部及び前記印刷処理部に行わせ、
前記所定の距離となる位置は、前記テープの切断が行われた後にハーフカットを行うハーフカット位置であり、
前記目印を印刷する処理は、
前記ハーフカット位置の近傍に少なくとも、前記目印を印刷することを含む、制御部と、
を備え
、
前記テープは、長手方向に巻かれて環形状を有した前記テープを含む被記録媒体を収容した媒体アダプタから供給され、
前記目印は、前記媒体アダプタに前記テープを収容する際に、前記媒体アダプタから前記テープを突出させる突出量の基準となる印刷範囲で印刷され、
前記突出量の基準は、前記媒体アダプタを前記印刷装置に装着したときの前記テープの先端から印刷部の位置までの距離の基準となる所定距離に基づいて設定されている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
テープに印刷を行う印刷装置の制御部によって、
搬送処理部により、前記テープを搬送させ、
切断処理部により、前記テープを切断して分離するフルカット、及び切断位置を境として隣り合う2つの領域が一体的な状態で保持される態様で前記テープを切断するハーフカットをさせ、
印刷処理部により、前記テープに印刷する内容を示す情報を含むラベルデータを前記テープに印刷させ、
前記搬送処理部及び前記印刷処理部により、前記テープにおける印刷開始位置と前記フルカットするフルカット位置との間となる領域に前記ラベルデータを印刷するとともに、前記テープにおける、前記フルカット位置を境として前記ラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域のうち、前記フルカット位置と、該フルカット位置から所定の距離となる位置との間に、目印を印刷させる、プログラムであって、
前記所定の距離となる位置は、前記テープの切断が行われた後にハーフカットを行うハーフカット位置であり、
前記目印を印刷させる処理は、
前記ハーフカット位置の近傍に少なくとも、前記目印を印刷させることを含
み、
前記テープは、長手方向に巻かれて環形状を有した前記テープを含む被記録媒体を収容した媒体アダプタから供給され、
前記目印は、前記媒体アダプタに前記テープを収容する際に、前記媒体アダプタから前記テープを突出させる突出量の基準となる印刷範囲で印刷され、
前記突出量の基準は、前記媒体アダプタを前記印刷装置に装着したときの前記テープの先端から印刷部の位置までの距離の基準となる所定距離に基づいて設定されている、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、印刷方法及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、長手方向に巻かれてロール形状を有した印刷用のテープに文字、図形等を印刷してラベルを作成するラベルプリンタが知られている。この種のラベルプリンタには、箱状の部材にテープを含む被印刷媒体が収容されたテープカートリッジを装着し、該テープカートリッジから供給されるテープに文字、図形等を印刷するものがある。
【0003】
また、ラベルプリンタには、テープカートリッジから供給されるテープにおける文字や図形等が印刷された領域を切り出す際に、フルカット及びハーフカットを行うことが可能なものもある。ハーフカットは、ラベルとして使用する際には切り離される複数の領域同士を一体的な状態が保持される態様で切断する切断方法である。例えば、テープカートリッジから供給されるテープが文字等を印刷する粘着テープと該粘着テープの粘着面を保護するセパレータとを含むテープである場合、フルカットではテープ全体(粘着テープ及びセパレータ)を切断し、ハーフカットでは粘着テープのみを切断する。ハーフカットは、ラベルとして使用する領域同士の境界の切断や、印刷時に生じる余白領域(印刷することができない領域)とラベルとして使用する領域との境界の切断に適用される。
【0004】
特許文献1には、被印刷媒体を収容したテープカートリッジを収容するラベルプリンタが記載されている。また、特許文献2には、余白領域とラベルとして使用する領域との境界をハーフカットするテープ印刷装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-028448号公報
【文献】特開2010-195021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラベルプリンタ(テープ印刷装置)には、テープに印刷をする際に、テープの先端部分に印刷をすることができない領域が生じるものがある。この種のラベルプリンタでは、印刷時に、テープ先端部分の印字することができない領域と、文字等を印刷する領域(ラベルとして使用する領域)との境界をハーフカットすることにより、不要な余白部分(印字することができない領域)を切り離している。
【0007】
しかしながら、上記のラベルプリンタにおいてテープをハーフカットした場合、目視では、ラベルプリンタから切り出されたテープにおけるハーフカットの位置が分かりづらい。特に、余白領域とラベルとして使用する領域との境界をハーフカットした場合には、ラベルとして使用する領域の外周部にも文字や図形が印刷されていない領域が存在するため、ハーフカットの位置が分かりづらい。
【0008】
特許文献2に記載のテープ印刷装置では、ラベルとして使用する領域に対して文字や図形を印刷する際に、余白領域にハーフカットの位置を示す切断印を印刷することで、切り出されたテープにおけるハーフカットの位置を分かりやすくしている。しかしながら、特許文献2に記載の印刷テープ装置では、テープ先端部分の印字することができない領域と、文字等を印刷する領域との境界をハーフカットする場合に、該ハーフカットの位置を示す切断印を印刷することができない。
【0009】
本発明の一側面に係る目的は、上記の実情を踏まえたものであり、印刷装置により作成したラベルにおけるハーフカットの位置を利用者に提示することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る印刷方法は、テープに印刷を行う印刷方法であって、前記テープに印刷を行う印刷装置が、前記テープにおける印刷開始位置を、該印刷開始位置を境として隣り合う2つの領域が一体的な状態で保持される態様でハーフカットし、前記テープにおける前記印刷開始位置と、前記テープに印刷する内容を示す情報を含むラベルデータとに基づいて、前記テープにおける、前記ラベルデータが印刷された領域を前記テープから切断して切り離すフルカット位置を決定し、前記テープにおける前記印刷開始位置と前記フルカット位置との間となる領域に前記ラベルデータを印刷するとともに、前記テープにおける、前記フルカット位置を境として前記ラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域のうち、前記フルカット位置と、該フルカット位置から所定の距離となる位置との間に、目印を印刷し、前記フルカット位置で前記テープを切断する、処理を実行し、前記所定の距離となる位置は、前記テープの切断が行われた後にハーフカットを行うハーフカット位置であり、前記目印を印刷する処理は、前記ハーフカット位置の近傍に少なくとも、前記目印を印刷することを含み、前記テープは、長手方向に巻かれて環形状を有した前記テープを含む被記録媒体を収容した媒体アダプタから供給され、前記目印は、前記媒体アダプタに前記テープを収容する際に、前記媒体アダプタから前記テープを突出させる突出量の基準となる印刷範囲で印刷され、前記突出量の基準は、前記媒体アダプタを前記印刷装置に装着したときの前記テープの先端から印刷部の位置までの距離の基準となる所定距離に基づいて設定されている、ことを特徴とする印刷方法である。
【0011】
また、本発明の一態様に係る印刷装置は、テープに印刷を行う印刷装置であって、前記テープを搬送する搬送処理部と、前記テープを切断して分離するフルカット、及び切断位置を境として隣り合う2つの領域が一体的な状態で保持される態様で前記テープを切断するハーフカットをすることが可能な切断処理部と、前記テープに印刷する内容を示す情報を含むラベルデータを前記テープに印刷する印刷処理部と、前記テープにおける印刷開始位置と前記フルカットするフルカット位置との間となる領域に前記ラベルデータを印刷するとともに、前記テープにおける、前記フルカット位置を境として前記ラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域のうち、前記フルカット位置と、該フルカット位置から所定の距離となる位置との間に、目印を印刷する処理を、前記搬送処理部及び前記印刷処理部に行わせ、前記所定の距離となる位置は、前記テープの切断が行われた後にハーフカットを行うハーフカット位置であり、前記目印を印刷する処理は、前記ハーフカット位置の近傍に少なくとも、前記目印を印刷することを含む、制御部と、を備え、前記テープは、長手方向に巻かれて環形状を有した前記テープを含む被記録媒体を収容した媒体アダプタから供給され、前記目印は、前記媒体アダプタに前記テープを収容する際に、前記媒体アダプタから前記テープを突出させる突出量の基準となる印刷範囲で印刷され、前記突出量の基準は、前記媒体アダプタを前記印刷装置に装着したときの前記テープの先端から印刷部の位置までの距離の基準となる所定距離に基づいて設定されている、ことを特徴とする印刷装置である。
また、本発明の一態様に係るプログラムは、テープに印刷を行う印刷装置の制御部によって、搬送処理部により、前記テープを搬送させ、切断処理部により、前記テープを切断して分離するフルカット、及び切断位置を境として隣り合う2つの領域が一体的な状態で保持される態様で前記テープを切断するハーフカットをさせ、印刷処理部により、前記テープに印刷する内容を示す情報を含むラベルデータを前記テープに印刷させ、前記搬送処理部及び前記印刷処理部により、前記テープにおける印刷開始位置と前記フルカットするフルカット位置との間となる領域に前記ラベルデータを印刷するとともに、前記テープにおける、前記フルカット位置を境として前記ラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域のうち、前記フルカット位置と、該フルカット位置から所定の距離となる位置との間に、目印を印刷させる、プログラムであって、前記所定の距離となる位置は、前記テープの切断が行われた後にハーフカットを行うハーフカット位置であり、前記目印を印刷させる処理は、前記ハーフカット位置の近傍に少なくとも、前記目印を印刷させることを含み、前記テープは、長手方向に巻かれて環形状を有した前記テープを含む被記録媒体を収容した媒体アダプタから供給され、前記目印は、前記媒体アダプタに前記テープを収容する際に、前記媒体アダプタから前記テープを突出させる突出量の基準となる印刷範囲で印刷され、前記突出量の基準は、前記媒体アダプタを前記印刷装置に装着したときの前記テープの先端から印刷部の位置までの距離の基準となる所定距離に基づいて設定されている、ことを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様によれば、印刷装置により作成したラベルにおけるハーフカットの位置を利用者に提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】蓋4が閉じた状態の印刷装置1の平面図である。
【
図2】蓋4が開いた状態の印刷装置1の平面図である。
【
図3】被記録媒体40の構成を説明する分解斜視図である。
【
図4】印刷装置1が行う印刷処理及び切断処理の概要を説明する図である。
【
図5】印刷装置1が行うフルカット及びハーフカットを説明する図である。
【
図6】一実施形態に係る印刷装置1の機能的構成を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る印刷装置1が行う処理を説明するフローチャートである。
【
図8】一実施形態に係る印刷装置1によりラベルを作成した場合の感熱テープ42の状態の時間変化を説明する図である。
【
図9】媒体アダプタ10の構成を示す斜視図である。
【
図10】感熱テープ42に目印Mを印刷することによる別の効果を説明する斜視図である。
【
図11】感熱テープ42にラベル複数枚分の連続印刷を行う場合の目印M2の印刷位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、
図1及び
図2を参照しながら、一実施形態に係る印刷装置の構成について説明する。
図1は、蓋4が閉じた状態の印刷装置1の平面図である。
図2は、蓋4が開いた状態の印刷装置1の平面図である。
【0015】
図1及び
図2に示した印刷装置1は、被記録媒体40が有する感熱テープ42に印刷を行うラベルプリンタである。感熱テープ42は、印刷用のテープの一例である。なお、本明細書では感熱テープ42に印刷をする感熱方式のラベルプリンタを印刷装置1の例とするが、印刷装置1の印刷方式は特に限定されない。例えば、印刷装置1は、インクリボンを使用する熱転写方式のラベルプリンタであってもよい。また、ラベルプリンタである印刷装置1は、上記のサーマルプリンタに限らない。例えば、印刷装置1は、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ等であってもよい。また、印刷装置1は、シングルパス(ワンパス)方式で印刷を行ってもよく、マルチパス(スキャン)方式で印刷を行ってもよい。
【0016】
印刷装置1は、装置筐体2と、入力装置3と、蓋4と、表示装置5と、プラテンローラ6と、サーマルヘッド7と、カッター8と、を備える。また、図示は省略するが、印刷装置1は、プリント回路板、電源ユニット、各種端子、並びに各種配線等の各種電子部品を備える。
【0017】
装置筐体2は、印刷装置1の動作を制御する制御回路の一部を含むプリント回路板(図示せず)、入力装置3、プラテンローラ6、サーマルヘッド7、カッター8等が配設された箱状の部材である。また、装置筐体2には、蓋4が開閉自在な状態で取り付けられている。更に、図示はしていないが、装置筐体2には、電源コード接続端子、外部機器接続端子、記憶媒体挿入口等が設けられている。
【0018】
装置筐体2のうちの、蓋4が閉じた状態である場合に蓋4の下方となる領域には、アダプタ収容部2a、プラテンローラ6、サーマルヘッド7、及びカッター8が配設されている。アダプタ収容部2aは、媒体アダプタ10を収容可能な凹形状の収容空間である。媒体アダプタ10は、感熱テープ42を含む被記録媒体40を収容するケース部材である。印刷装置1により文字等を印刷する感熱テープ42は、媒体アダプタ10から供給される。
【0019】
プラテンローラ6は、媒体アダプタ10から供給される感熱テープ42を搬送するローラである。プラテンローラ6は、図示しない搬送用モータの回転により回転する。搬送用モータは、例えば、ステッピングモータ、直流(DC)モータなどである。印刷装置1では、媒体アダプタ10から繰り出された感熱テープ42をプラテンローラ6とサーマルヘッド7との間に狭持した状態でプラテンローラ6を回転させることにより、感熱テープ42を搬送方向に搬送する。プラテンローラ6及び搬送用モータ(図示しない)は、印刷用のテープを搬送する搬送処理部の一例である。
【0020】
サーマルヘッド7は、感熱テープ42に印刷を行う印刷ヘッドである。サーマルヘッド7は、感熱テープ42の搬送方向に直交する主走査方向に配列された複数の発熱素子を有し、発熱素子で感熱テープ42を加熱することにより一ラインずつ印刷を行う。サーマルヘッド7は、印刷用のテープに印刷をする印刷処理部の一例である。
【0021】
カッター8は、感熱テープ42を切断する。カッター8は、感熱テープ42の長手方向(搬送方向)における所定の位置をフルカット又はハーフカットする。フルカットは、セパレータ(剥離紙)を含む感熱テープ42全体を切断する切断方法であり、ハーフカットは感熱テープ42におけるセパレータは切断しない切断方法である。カッター8は、印刷用のテープを切断する切断処理部の一例である。
【0022】
入力装置3は、装置筐体2の上面であって、蓋4が閉じた状態であるときに蓋4とは重ならない領域に配設されている。入力装置3は、利用者が感熱テープ42に印刷する文字や図形等の印刷内容の入力、印刷装置1の動作を制御する各種命令の入力を行う入力装置の一例である。入力装置3は、入力キー、十字キー、変換キー、及び決定キーなどの種々のキーを備える。入力キーは、文字や各種命令を入力するキーである。十字キーは、カーソルを移動させるキーである。変換キーは、入力した文字列の漢字かな変換等を行うキーである。決定キーは、変換処理、各種設定処理、各種処理の内容を決定する(確定する)キーである。
【0023】
蓋4は、装置筐体2上にアダプタ収容部2aを開閉自在な態様で配置されている。蓋4は、図示していないロック機構により、
図1に示した閉じた状態に保持される。利用者(ユーザ)は、蓋4に設けられたボタン4rを押下してロック機構を解除することで、
図2に示すように、蓋4を開けることができる。また、本実施形態に係る印刷装置1に装着する媒体アダプタ10は、
図2に示すように、アダプタ収容部2aに収容して蓋4を閉じた場合に蓋4と向かい合う面が透明な部材で形成されている。すなわち、利用者は、アダプタ収容部2aに媒体アダプタ10を収容した状態で、媒体アダプタ10に被記録媒体40が収容されているか否かを目視で確認することが可能である。更に、本実施形態に係る印刷装置1における蓋4は、蓋4を閉じたときに媒体アダプタ10に収容された被記録媒体40の一部領域Awと重なる位置に、窓404が設けられている。このため、利用者は、蓋4が閉じた状態であっても印刷装置1に媒体アダプタ10(被印刷媒体40)が収容されているか否かを目視で確認することが可能である。また、媒体アダプタ10に収容した被印刷媒体40が、感熱テープ42の幅や色を示すアテンションシート44を含む場合、利用者は、蓋4の窓404を通して、感熱テープ42の幅や色を確認することが可能である。
【0024】
また、印刷装置1は、幅が異なる複数種類の感熱テープ42のそれぞれに印刷を行うことが可能となっている。このため、本実施形態の印刷装置1における装置筐体2のアダプタ収容部2aは、収容する被印刷媒体40(感熱テープ42)の幅が異なる複数種類の媒体アダプタ10を収容可能な凹形状となっている。これら複数種類の媒体アダプタ10は、それぞれ、
図2に示した平面形状が同一であり、感熱テープ42の幅方向と対応する厚さ方向の寸法が異なる。
【0025】
アダプタ収容部2aに媒体アダプタ10を収容して印刷を行う場合、サーマルヘッド7に供給する感熱テープ42の幅方向への位置ずれを防ぐために、媒体アダプタ10は、厚さ方向の位置ずれを抑制することが可能な状態で保持される。このため、厚さ方向の寸法が異なる複数種類の媒体アダプタ10を利用可能な印刷装置1では、アダプタ本体20の外周側面に設けたヒレ部(図示せず)を、アダプタ収容部2aに設けた支持部(図示せず)及び蓋4に設けた支持部401,402で挟持して媒体アダプタ10を保持する。更に、本実施形態の印刷装置1では、媒体アダプタ10、アダプタ収容部2aの支持部、及び蓋4の支持部401,402の形状についての公差により印刷時等に生じる媒体アダプタ10のがたつきを防止するため、蓋4にアダプタ押さえ部403を設けている。アダプタ押さえ部403は、アダプタ収容部2aに媒体アダプタ10を収容した状態で蓋4を閉じたときに、ばね等の弾性部材に生じる弾性復元力により、媒体アダプタ10に押圧荷重を印加する。
【0026】
表示装置5は、蓋4の外方を向いた面のうちの蓋4を閉じたときに上面となる面に配設されている。表示装置5は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(electro-luminescence)ディスプレイなどである。表示装置5は、入力装置3からの入力に対応する文字や図形、各種設定のための選択メニュー、各種処理に関するメッセージ等、を表示する。なお、表示装置5は、タッチパネル付きのディスプレイ等、入力装置3の一部として利用可能な機能を持つものであってもよい。
【0027】
本実施形態の印刷装置1では、上記のように、装置筐体2のアダプタ収容部2aに媒体アダプタ10が収容される。媒体アダプタ10は、感熱テープ42を含む被印刷媒体40を収容するためのケースであり、利用者が被印刷媒体40を交換できるように、被印刷媒体40を収容する。すなわち、本実施形態に係る媒体アダプタ10は、利用者が媒体アダプタ10に対して被印刷媒体40を適宜出し入れすることを前提に設計されている。
【0028】
更に、本実施形態の印刷装置1は、上記のように、テープ幅が異なる複数種類の媒体アダプタのそれぞれに印刷を行うことが可能である。このため、本実施形態の印刷装置1と組み合わせて用いる媒体アダプタ10は、印刷可能なテープ幅毎に用意される。例えば、本実施形態の印刷装置1では、テープ幅が6mmの感熱テープ、テープ幅が9mmの感熱テープ、テープ幅が12mmの感熱テープ、及びテープ幅が18mmの感熱テープのそれぞれに印刷を行うことが可能である。この場合、印刷装置1と組み合わせる媒体アダプタ10としては、テープ幅が6mmの感熱テープを収容する媒体アダプタ、テープ幅が9mmの感熱テープを収容する媒体アダプタ、テープ幅が12mmの感熱テープを収容する媒体アダプタ、及びテープ幅が18mmの感熱テープを収容する媒体アダプタが用意される。これら複数種類の媒体アダプタは、それぞれ、
図2に示した平面形状が同一であり、収容する被記録媒体40(感熱テープ42)のテープ幅方向と対応した厚さ方向の寸法が異なる。また、厚さ方向の寸法が異なる複数種類の媒体アダプタ10は、それぞれ、アダプタ収容部2aに収容したときに上面となる面に、収容する対象となる被記録媒体40(感熱テープ42)のテープ幅を示す情報が印刷されている。例えば、
図2の媒体アダプタ10は、「12」という数字が印刷されている。すなわち、
図2の媒体アダプタ10は、テープ幅が12mmの感熱テープ42(被記録媒体40)を収容するのに適した寸法で形成されている。
図2の媒体アダプタ10にテープ幅が12mmよりも狭い感熱テープ(被記録媒体40)を収容した場合には、テープ幅方向における被記録媒体40の位置の変動量が大きくなり、媒体アダプタ10から供給される感熱テープ42の幅方向の位置が不安定となる。また、
図2の媒体アダプタ10にテープ幅が12mmよりも広い感熱テープ(被記録媒体40)を収容しようとした場合には、例えば、後述するアダプタ蓋30(
図4を参照)を閉じた位置で保持することができない。
【0029】
図3は、被記録媒体40の構成を説明する分解斜視図である。
図3に示すように、媒体アダプタ10に収容する被記録媒体40は、筒状部材41と、感熱テープ42と、バラけ防止シート43と、アテンションシート44とを含む。
【0030】
筒状部材41は、被記録媒体40を媒体アダプタ10に収容したときに被記録媒体40の回転軸(回転支点)となる部材である。筒状部材41には、例えば、紙管等が利用可能である。なお、筒状部材41は、
図3に示した円筒状に限らず、軸心方向を回転軸として回転可能な態様で、媒体アダプタ10に設けた支持部と係合する形状であればよい。媒体アダプタ10に設けた支持部が円柱状である場合、筒状部材41は、例えば、開口面が正多角形(例えば、正八角形等)の筒状であってもよい。
【0031】
感熱テープ42は、上記のように、文字や図形等を印刷する印刷用のテープである。媒体アダプタ10に収容する被記録媒体40は、長手方向の寸法が所定の長さ(例えば、5m~10m程度)である感熱テープ42を筒状部材41の外周側面に巻き付けた状態で利用者に提供される。すなわち、被記録媒体40における感熱テープ42は、長手方向に巻かれて環形状となっており、該環形状における外周側から順に印刷装置1に供給され消費される。以下の説明では、感熱テープ42のうちの長手方向に巻かれて環形状となっている感熱テープ42のことを「環形状の感熱テープ42」ともいう。
【0032】
感熱テープ42は、例えば、セパレータ425と、粘着層424と、基材421と、発色層422と、保護層423とがこの順に積層されている。
【0033】
基材421は、感熱テープ42におけるベースとなるテープ状の部材であり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)により形成される。基材421の色を複数種類用意することにより、テープ色(印刷面の色)の異なる複数種類の感熱テープ42を提供することが可能となる。例えば、基材421として白色、赤色、青色、黄色、及び透明の5種類の基材を用意することで、テープ色が異なる5種類の感熱テープ42を提供することが可能となる。
【0034】
基材421における厚さ方向の端面(主面)のうちの一方の端面には、所定の温度以上に加熱することにより発色する(色が変化する)発色層422と、発色層422を保護する保護層423とが積層されている。また、基材421における厚さ方向の端面のうちの他方の端面には、粘着層424と、セパレータ425とが積層されている。粘着層424は、例えば、基材421に粘着材を塗布して設けており、基材421、発色層422、及び保護層423を含む印刷後のテープ(ラベル)を所望の物体に貼り付けることに利用される。セパレータ425は、テープ(ラベル)を所望の物体に貼り付けるまで粘着層244を保護する部材であり、粘着層424に対して剥離可能な状態で貼り付けられている。すなわち、
図3の感熱テープ42では、粘着層424、基材421、発色層422、及び保護層423がラベルとして使用される粘着テープ(積層部材)となる。
【0035】
上記の5層構成の感熱テープ42は、
図3のように、保護層423が内径側となり、セパレータ425が外径側となる向きで筒状部材41に巻きつけられている。
【0036】
なお、感熱テープ42は、上記の構成に限らない。例えば、感熱テープ42は、セパレータ425を含まず、粘着層424が露出したものであってもよい。また、感熱テープ42は、保護層423を含まず、発色層422が露出したものであってもよい。更に、感熱テープ42における発色層422は、例えば、加熱することにより有色の状態から無色透明の状態に変化する層であってもよい。
【0037】
バラけ防止シート43は、感熱テープ42を環形状に維持するために、環形状の感熱テープ42における側面の一方に貼り付ける粘着シートである。ここで、環形状の感熱テープ42における側面は、環形状の感熱テープ42(筒状部材41)の軸心方向における端面、言い換えると感熱テープ42の幅方向における一方の端部42bにより形成される面と他方の端部42cにより形成される面とを意味する。
図3の被記録媒体40では、環形状の感熱テープ42における側面のうちの、感熱テープ42の端部42bにより形成される側面に、バラけ防止シート43が貼り付けられる。
【0038】
バラけ防止シート43には、中央部分に開口43aを有する環形状の粘着シートを用いる。バラけ防止シート43の開口43aの寸法は、感熱テープ42を巻きつけた筒状部材41における中空部分の寸法(内径)と同じ寸法、或いは筒状部材41の中空部分よりも大きい寸法とする。バラけ防止シート43を感熱テープ42に貼り付ける際には、筒状部材41の中空部分の輪郭全体がバラけ防止シート43の開口43a内に含まれるように貼り付ける。
【0039】
上記のような多層構造の感熱テープ42は、例えば、温度や湿度の変化等により膨張及び収縮をすることがあるが、層毎(材料毎)に膨張率が異なる。このため、筒状部材41に感熱テープ42を巻き付けただけの場合(言い換えると、バラけ防止シート43を貼り付けていない場合)、感熱テープ42の膨張及び収縮により感熱テープ42の形状が変化し感熱テープ42がバラけてしまうことがある。また、上記のようにセパレータ425を含む感熱テープ42を筒状部材41に巻き付けた場合、径方向で隣り合うセパレータ425と保護層423とは接触した状態である。このため、筒状部材41に感熱テープ42を巻き付けただけの場合(バラけ防止シート43を貼り付けていない場合)、例えば、被記録媒体40の落下等により感熱テープ42に外力が加わることで、感熱テープ42の形状が変化し、感熱テープ42がバラけてしまうことがある。
【0040】
環形状の感熱テープ42における一方の側面(感熱テープ42の端部42bにより形成される面)にバラけ防止シート43を貼り付けた場合、径方向で隣り合う感熱テープ42の異なる部位同士の位置関係をバラけ防止シート43により維持することが可能となる。したがって、バラけ防止シート43を貼り付けることにより、環形状の感熱テープ42の膨張及び収縮による形状の変化、並びに外力が加わることによる形状の変化等を抑制し、感熱テープ42がバラけてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0041】
また、バラけ防止シート43は、
図3に示したように、被記録媒体40が未使用の状態であるときの環形状の感熱テープ42の側面全体を覆うような大きさを有することが望ましい。すなわち、バラけ防止シート43の直径は、環形状の感熱テープ42における直径(最大径)よりも大きいことが望ましい。これにより、環形状の感熱テープ42における一方の側面全体を粘着面で保持することができるため、環形状をより確実に維持することができる。
【0042】
更に、バラけ防止シート43の形状は、環形状の感熱テープ42における側面の形状に近似した形状であることが望ましい。すなわち、環形状の感熱テープ42における側面が円環形状であれば、バラけ防止シート43も円環形状とすることが望ましい。これにより、バラけ防止シート43における感熱テープ42の形状維持に貢献しない領域を小さくすることが可能となり、バラけ防止シート43の大きさを小さくすることができる。また、バラけ防止シート43における粘着面の露出も少なくなるため、バラけ防止シート43への塵、埃などの付着も抑えることができる。
【0043】
アテンションシート44は、感熱テープ42の種類を示す情報を利用者に提示するために、環形状の感熱テープ42における他方の側面(言い換えると、感熱テープ42における幅方向の端部42cにより形成される側面)に貼り付ける粘着シートである。
図3では省略しているが、感熱テープ42の種類を示す情報は、アテンションシート44における感熱テープ42と対向させる面とは反対側の面に印刷される。アテンションシート44には、感熱テープ42の種類を示す情報として、例えば、感熱テープ42の幅及び被記録媒体40の型番等が印刷される。また、感熱テープ42の色は、例えば、アテンションシート44の下地の色により示される。感熱テープ42には、テープ幅、及び被印刷面(基材421)の色の違い等により、様々な種類が存在する。このため、感熱テープ42の種類を特定する情報が印刷されたアテンションシート44を感熱テープ42の側面に貼り付けることで、利用者は、被印刷媒体40の種類を容易に特定することが可能となる(
図2を参照)。
【0044】
アテンションシート44には、中央部分に開口44aを有する環形状の粘着シートを用いる。アテンションシート44の開口44aの寸法は、感熱テープ42を巻きつけた筒状部材41の中空部分の寸法(内径)よりも小さい寸法とする。アテンションシート44は、開口44aの中心が筒状部材41の中空部分の中心(軸心)と略一致するように、環形状の感熱テープ42の側面に貼り付ける。また、アテンションシート44は、例えば、被印刷媒体40の販売時など、少なくとも被印刷媒体40の使用が開始される前においては、環形状の感熱テープ42の側面よりも小さいことが望ましい。これにより、感熱テープ42の側面(端部42cにより形成される面)のうちアテンションシート44に覆われる領域が小さくなるため、利用者が感熱テープ42の残量を容易に確認することが可能となる。
【0045】
図3の被記録媒体40は、上記のように、筒状部材41の軸心方向を回転軸として回転可能な状態で媒体アダプタ10に収容される。媒体アダプタ10に収容された被記録媒体40の感熱テープ42は、媒体アダプタ10に設けたテープ繰出口から媒体アダプタ10の外部に繰り出される。印刷装置1は、媒体アダプタ10の外部に繰り出された感熱テープ42(言い換えると、媒体アダプタ10から供給される感熱テープ42)に対し、文字や図形等の印刷内容(ラベルデータ)を印刷する印刷処理と、感熱テープ42を切断する切断処理とを行う。
【0046】
図4は、印刷装置1が行う印刷処理及び切断処理の概要を説明する図である。
【0047】
媒体アダプタ10の外部に繰り出された感熱テープ42は、プラテンローラ6とサーマルヘッド7とにより挟持され、プラテンローラ6が回転することにより搬送される。
【0048】
感熱テープ42に印刷をする際には、印刷装置1は、プラテンローラ6を所定の回転方向(例えば
図4では反時計回り方向)に所定の回転速度で回転させながら感熱テープ42を印刷装置1におけるテープ排出口の方向に搬送する。このとき、印刷装置1は、印刷する内容に基づいて、サーマルヘッド7(発熱素子)上を通過する感熱テープ42に対して熱エネルギーを印加し、感熱テープ42に対する印刷を行う。
【0049】
また、感熱テープ42を切断する際には、印刷装置1は、プラテンローラ6を所定の回転方向に所定の回転速度で回転させ、感熱テープ42における長手方向での切断位置がカッター8の第1の刃801又は第2の刃802と対応する位置になるよう感熱テープ42を搬送する。フルカットを行う場合、印刷装置1は、感熱テープ42におけるフルカットする切断位置が第1の刃801と対応する位置となるよう、感熱テープ42を搬送する。ハーフカットを行う場合、印刷装置1は、感熱テープ42におけるハーフカットする切断位置が第2の刃802と対応する位置となるよう、感熱テープ42を搬送する。
【0050】
図5は、印刷装置1が行うフルカット及びハーフカットを説明する図である。
【0051】
本実施形態では、印刷用のテープとして、セパレータ425を含む5層構成の感熱テープ42を例示している。本実施形態の印刷装置1におけるカッター8は、例えば、
図4及び
図5に示すように、感熱テープ42における保護層423と対向する位置に第1の刃801及び第2の刃802が配設される。また、
図4及び
図5では省略しているが、カッター8は、感熱テープ42が通過する位置を境として第1の刃801及び第2の刃802が配設された方向とは反対側の方向に、第1の刃801及び第2の刃802のそれぞれと対応した刃受が配設されている。
【0052】
感熱テープ42をフルカットする場合、印刷装置1は、
図5に示すように、第1の刃801を感熱テープ42側に移動させ、感熱テープ42に含まれる5つの層の全てを切断する。言い換えると、感熱テープ42をフルカットする場合、粘着層424、基材421、発色層422、及び保護層423がこの順序で積層した印刷用の粘着テープ426と、粘着テープ426における粘着層424を保護するセパレータ425とを切断する。
【0053】
一方、感熱テープ42をハーフカットする場合、印刷装置1は、
図5に示すように、第2の刃802を感熱テープ42側に移動させ、感熱テープ42に含まれる5つの層のうちのセパレータ425を除く4つの層を切断する。言い換えると、感熱テープ42をハーフカットする場合、印刷装置1は、粘着層424、基材421、発色層422、及び保護層423がこの順序で積層した印刷用の粘着テープ426のみを切断する。
【0054】
本実施形態に係る印刷装置1では、感熱テープ42に印刷をする際に感熱テープ42の先端部分に生じる「印刷することのできない領域」を含む余白領域(耳)と、印刷内容が印刷された「ラベルとして使用する領域」との境界をハーフカットする。また、本実施形態に係る印刷装置1では、感熱テープ42に対して予め設定された枚数分の印刷が終了した後、フルカットにより、印刷内容が印刷された領域を感熱テープ42から切り離す。更に、本実施形態に係る印刷装置1では、感熱テープ42に対して予め設定された枚数分の印刷が終了した後、フルカットを行う前に、感熱テープ42におけるフルカット位置を境として印刷内容(ラベルデータ)が印刷された領域とは反対側の領域に目印Mを印刷する。目印Mは、感熱テープ42に対する次回の印刷における、先端部分の余白領域とラベルとして使用する領域との境界(ハーフカット位置)を示す任意の図形である。
【0055】
図6は、一実施形態に係る印刷装置1の機能的構成を示す図である。
【0056】
図6に示すように、本実施形態の印刷装置1は、機能的構成の観点では、制御部101と、アダプタ検知部102と、入力部103と、表示部104と、搬送処理部105と、印刷処理部106と、切断処理部107と、記憶部110とを備える。
【0057】
制御部101は、印刷装置1が実行可能な各種処理の制御を行う。制御部101の持つ機能は、例えば、印刷装置1が備えるプロセッサが各種プログラムを実行することにより実現される。
【0058】
アダプタ検知部102は、アダプタ収容部2aに装着された媒体アダプタ10を検知する。アダプタ検知部102は、例えば、印刷装置1の蓋4が閉じられたタイミングで、アダプタ収容部2aに媒体アダプタ10が装着されているか否かを検知する。また、アダプタ検知部102は、媒体アダプタ10が装着されていることを検知した場合、装着された媒体アダプタ10が収容の対象としている被記録媒体40(感熱テープ42)のテープ幅を検知する。アダプタ検知部102は、例えば、アダプタ収容部2aに配設された複数のスイッチを含む。該複数のスイッチは、例えば、アダプタ収容部2aに収容可能な複数種類の媒体アダプタ10の厚さ方向と連携し、収容された媒体アダプタ10の厚さに応じて出力の組み合わせが異なる組み合わせとなるよう配設される。
【0059】
入力部103は、文字や図形の入力、各種設定に対する入力、及び各種処理の実行命令の入力等を受け付ける。入力部103の持つ機能は、例えば、入力装置3により実現される。
【0060】
表示部104は、入力部103を通して入力された各種情報を表示する。表示部104の持つ機能は、表示装置5により実現される。
【0061】
搬送処理部105は、制御部101による制御のもと、感熱テープ42の搬送処理を行う。搬送処理部105の持つ機能は、例えば、プラテンローラ6及び搬送用モータを含む搬送機構により実現される。
【0062】
印刷処理部106は、制御部101による制御のもと、感熱テープ42に対する印刷処理を行う。印刷処理部106の持つ機能は、例えば、サーマルヘッド7を含む印刷機構により実現される。
【0063】
切断処理部107は、制御部101による制御のもと、感熱テープ42の切断処理を行う。切断処理部107の持つ機能は、例えば、カッター8を含む切断機構により実現される。
【0064】
記憶部110は、印刷装置1の動作時に制御部101が実行する各種プログラム、及び印刷装置1の動作時に制御部101が参照する各種情報等を記憶する。
【0065】
図7は、一実施形態に係る印刷装置1が行う処理を説明するフローチャートである。
【0066】
図7に示すように、本実施形態の印刷装置1では、まず、印刷用のテープを検知する(S1)。ステップS1の処理は、制御部101が、アダプタ検知部102の検知結果等に基づいて行う。ステップS1の処理では、制御部101は、例えば、アダプタ検知部102の検知結果に基づいて、アダプタ収容部2aに媒体アダプタ10が装着されているか否かを検知する。媒体アダプタ10が装着されていない場合、制御部101は、媒体アダプタ10の装着を促すメッセージを表示部104に表示させる。媒体アダプタ10が装着されている場合、制御部101は、装着された媒体アダプタ10が収容の対象としている被記録媒体40(感熱テープ42)のテープ幅を検知する。また、媒体アダプタ10が装着されている場合、制御部101は、例えば、搬送処理部105及び印刷処理部106と協働して、媒体アダプタ10から感熱テープ42が正しく供給されているか否かを判定する。感熱テープ42が供給されていない場合、制御部101は、感熱テープ42(被記録媒体40)の確認を促すメッセージを表示部104に表示させる。感熱テープ42が正しく供給されている場合、制御部101は、例えば、媒体アダプタ10から供給される感熱テープ42の情報等を表示部104に表示させる。
【0067】
ステップS1において媒体アダプタ10から感熱テープ42が正しく供給されていることを検知すると、印刷装置1は、次に、テープ先端部をハーフカットする処理を行う(ステップS2)。ステップS2の処理は、制御部101が搬送処理部105及び切断処理部107と協働して行う。ステップS2の処理では、制御部101は、感熱テープ42の長手方向における先端42aから距離L1となるハーフカット位置が、切断処理部107(カッター8)の第2の刃802と対応した位置となるよう、搬送処理部105に感熱テープ42を搬送させる。距離L1は、例えば、感熱テープ42に印刷をする際に、構造上、印刷することが困難な領域の寸法と対応する。
【0068】
次に、印刷装置1は、ラベルとして切り出す領域に印刷する内容を示すラベルデータ(印刷情報)を作成する(ステップS3)。ステップS3の処理は、制御部101が入力部103及び表示部104と協働して行う。印刷装置1の利用者が入力部103(入力装置3)を介して文字や図形を入力すると、制御部101は、入力された文字や図形を表示部104(表示装置5)に表示させる。また、利用者が入力部103を介してフォント等の設定を変更すると、制御部101は、表示部104の表示を変更後の設定に基づいた表示に変更させる。更に、利用者が入力部3を介して印刷条件の設定等に関する情報を入力すると、制御部101は、印刷イメージを表示部104に表示させる。ステップS3の処理を行っている期間に利用者が入力した印刷の実行命令を受け付けると、制御部101は、ステップS3の処理を終了し、入力された文字や図形の情報、及び各種設定に基づいて作成したラベルデータを感熱テープ42に印刷する処理を開始する。
【0069】
ラベルデータを印刷する処理を開始すると、制御部101は、まず、切断位置を決定する(ステップS4)。ステップS4の処理では、制御部101は、ラベルデータに基づいて、該ラベルデータを印刷するのに必要な感熱テープ42の長さLを算出し、テープ先端部のハーフカット位置から距離Lとなる位置を切断位置(フルカット位置)に決定する。制御部101は、ラベルデータのうちの、例えば、文字のサイズ、文字の間隔、及びラベル外周部に設ける余白の寸法に基づいて、感熱テープ42の長さLを算出する。また、ラベル複数枚分の印刷を連続して行う場合、制御部101は、個々のラベルデータの印刷に必要な長さと、それらの総和とを算出して切断位置を決定する。この場合、制御部101は、個々のラベルデータの印刷に必要な長さに基づいてハーフカット位置を決定するとともに、印刷に必要な長さの総和に基づいてフルカット位置を決定する。
【0070】
切断位置を決定すると、印刷装置1は、次に、ラベルデータを感熱テープ42に印刷する(ステップS5)。ステップS5の処理は、制御部101が搬送処理部105及び印刷処理部106と協働して行う。ステップS5の処理において、制御部101は、所定の搬送方向に所定の搬送速度で感熱テープ42を搬送する処理を、搬送処理部105に行わせる。また、ステップS5の処理において、制御部101は、搬送される感熱テープ42におけるラベルデータを印刷する領域内にラベルデータを印刷する処理を、印刷処理部106に行わせる。印刷処理部106は、例えば、既知である感熱方式の印刷装置と同様の処理により感熱テープ42にラベルデータを印刷する。ラベルデータを印刷する領域の全てに対しラベルデータが印刷されると、制御部101は、ステップS5の処理を終了する。例えば、制御部101は、搬送している感熱テープ42におけるフルカット位置がサーマルヘッド7における発熱素子のライン(印刷ライン)を通過するタイミングで、ステップS5の処理を終了する。
【0071】
ラベルデータを印刷する処理が終了した後、制御部101は、続けて、感熱テープ42における非切出領域に目印を印刷する(ステップS6)。ステップS6の処理は、制御部101が搬送処理部105及び印刷処理部106と協働して行う。感熱テープ42における非切出領域は、フルカット位置を境としてラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域である。すなわち、感熱テープ42における非切出領域は、フルカットをした後、被記録媒体40(環形状の感熱テープ42)における新たなテープ先端部分となる領域である。また、目印Mは、次回のラベルデータを印刷する処理により感熱テープ42から切り出されるラベルにおける、テープ先端部分の印刷することのできない領域を含む余白領域と、ラベルデータを印刷した領域との境界(ハーフカット位置)を示す情報である。
【0072】
ステップS6の処理において、制御部101は、ステップS5の処理における搬送方向及び搬送速度で感熱テープ42を搬送する処理を、搬送処理部105に行わせる。また、ステップS6の処理において、制御部101は、搬送される感熱テープ42に対して目印Mを印刷する処理を、印刷処理部106に行わせる。目印Mの印刷が終了すると、制御部101は、目印Mを印刷するステップS6の処理を終了する。例えば、制御部101は、フルカット位置から所定の距離L1となる位置がサーマルヘッド7における発熱素子のライン(印刷ライン)を通過するタイミングで、ステップS6の処理を終了する。距離L1は、例えば、感熱テープ42にラベルデータを印刷する際にテープ先端部分に生じる、フルカット位置が感熱テープ42の先端となった場合に印刷することのできない領域の長手方向の寸法と対応した距離である。
【0073】
ラベルデータの印刷及び目印の印刷を終えると、印刷装置1は、次に、感熱テープ42を切断する処理を行う(ステップS7)。ステップS7の処理は、制御部101が搬送処理部105及び切断処理部107と協働して行う。ステップS7の処理において、制御部101は、感熱テープ42におけるフルカット位置が切断処理部107として機能するカッター8における第1の刃801により切断可能な搬送位置となるよう感熱テープ42を搬送する処理を、搬送処理部105に行わせる。また、ステップS7の処理において、制御部101は、第1の刃801により感熱テープ42におけるフルカット位置を切断する処理を、切断処理部108に行わせる。
【0074】
また、ステップS5の処理においてラベル複数枚分の印刷をしており、かつラベルとして使用する領域同士の境界をハーフカットするよう設定されている場合、ステップS7の処理では、上記のフルカットを行う前に、ラベルとして使用する領域同士の境界をハーフカットする処理を行う。ハーフカットを行う場合、制御部101は、感熱テープ42におけるラベルとして使用する領域同士の境界の位置が切断処理部107として機能するカッター8における第2の刃802によりハーフカット可能な搬送位置となるよう感熱テープ42を搬送する処理を、搬送処理部105に行わせる。また、ハーフカットを行う場合、制御部101は、第2の刃802により感熱テープ42におけるラベル層426を切断する処理(
図5のハーフカットを参照)を、切断処理部108に行わせる。
【0075】
フルカットにより感熱テープ42におけるラベルデータを印刷した領域(ラベル)を切断すると、印刷装置1は、一連の処理を終了して待機状態となる。印刷装置1が待機状態であるときに利用者が印刷装置1の蓋4を開閉すると、印刷装置1は、例えば、
図7のステップS1の処理を行う。また、印刷装置1が待機状態であるときに、例えば、入力部103において新たなラベル作成の開始命令の入力を受け付けると、印刷装置1は、ステップS2以降の処理を行う。
【0076】
図8は、一実施形態に係る印刷装置1によりラベルを作成した場合の感熱テープ42の状態の時間変化を説明する図である。
【0077】
本実施形態の印刷装置1によりラベルを作成する際には、被記録媒体40(感熱テープ42)を収容した媒体アダプタ10を、印刷装置1のアダプタ収容部2aに収容する(装着する)。媒体アダプタ10を印刷装置1に装着すると、印刷装置1は、感熱テープ42を検出する処理(ステップS1)を行う。このとき、感熱テープ42は、
図8の状態T0のように、媒体アダプタ10から供給される感熱テープ42における先端42aから距離L1となる位置が、サーマルヘッド7の発熱素子701と対向する位置となる。ここで、距離L1は、プラテンローラ6により感熱テープ42を搬送するために必要な領域42zの長手方向の寸法と対応する。すなわち、感熱テープ42における先端部分の領域42zは、構造上、印刷をすることのできない領域となる。言い換えると、感熱テープ42における先端42aから距離L1の位置が、感熱テープ42に印刷をする際の印刷開始位置となる。
【0078】
次に、印刷装置1は、感熱テープ42の先端部をハーフカットする処理(ステップS2)を行う。このとき、感熱テープ42は、状態T1のように、感熱テープ42における先端42aから距離L1の位置(印刷開始位置)が、カッター8の第2の刃802によりハーフカット可能な搬送位置となるよう搬送される。印刷装置1は、感熱テープ42における印刷開始位置に対しハーフカットを行った後、感熱テープ42における印刷開始位置(ハーフカット位置CH1)を印刷開始時の搬送位置に戻す逆搬送を行う。逆搬送を行うことにより、感熱テープ42は、状態T3のように、ハーフカット位置CH1がサーマルヘッド7の発熱素子701と対向する位置となる搬送位置に戻る。
【0079】
その後、利用者が入力した各種情報に基づいてラベルデータを作成し(ステップS3)、印刷の実行命令を受け付けると、印刷装置1は、切断位置を決定し(ステップS4)、ラベルデータを感熱テープ42に印刷する(ステップS5)。ステップS5の処理が終了した時点での感熱テープ42の状態は、状態T3のように、ラベルデータD1が印刷されており、かつフルカット位置CFが発熱素子701を通過した状態となる。
【0080】
本実施形態の印刷装置1は、上記のように、ステップS5の処理が終了した後、続けて、目印Mを印刷する処理(ステップS6)を行う。ステップS6の処理は、上記のように、感熱テープ42における、フルカット位置CFを境としてラベルデータD1を印刷する領域とは反対側の領域に目印Mを印刷する処理である。このため、ステップS6の処理が終了した時点での感熱テープ42の状態は、状態T4のように、フルカット位置CFを境としてラベルデータD1が印刷された領域とは反対側の領域に目印M1が印刷された状態となる。
【0081】
ラベルデータD1及び目印M1の印刷が終了すると、印刷装置1は、次に、感熱テープ42を切断する処理(ステップS7)を行う。ステップS7の処理では、印刷装置1は、感熱テープ42におけるフルカット位置CFをフルカットし、ラベルデータD1が印刷された領域(ラベル42r)を感熱テープ42から切り離す。フルカットを行う際の感熱テープ42の状態は、状態T5のように、フルカット位置CFが第1の刃801により切断可能(フルカット可能)な搬送位置に搬送された状態となる。
【0082】
また、ステップS7の処理では、印刷装置1は、例えば、ラベル42rを切り離した後の感熱テープ42を、印刷開始時の搬送位置に搬送する。このため、ステップS7が終了した時点での感熱テープ42の状態は、状態T6のように、フルカット後の感熱テープ42における新たな先端42aから距離L1となる位置が発熱素子701と対向した状態となる。感熱テープ42の状態が
図8の状態T6のような状態である場合、上記のように、感熱テープ42における先端42aから距離L1までの領域42zは、次回のラベル作成時に印刷することのできない領域となる。すなわち、本実施形態の印刷装置1では、印刷することのできない領域42zに目印M1が印刷された状態で、次回のラベル作成を開始することが可能となる。
【0083】
図8に示した「あいうえお」というラベルデータD1が印刷されたラベル42rを作成した後、新たなラベルの作成を開始する命令の入力を受け付けると、印刷装置1は、感熱テープ42の先端部をハーフカットする処理(ステップS2)を行う。このとき、感熱テープ42の状態は、
図8の状態T7のように、感熱テープ42の先端42aから距離L1となるハーフカット位置CH2が第2の刃802によりハーフカット可能な搬送位置に搬送された状態となる。感熱テープ42におけるハーフカット位置CH2のハーフカットを終えると、印刷装置1は、感熱テープ42を印刷開始時の搬送位置に搬送する。このとき、感熱テープ42の状態は、状態T8のように、ハーフカット位置CH2がサーマルヘッド7の発熱素子701と対向する搬送位置に搬送された状態となる。
【0084】
この後、利用者が入力した各種情報に基づいてラベルデータを作成し(ステップS3)、印刷の実行命令を受け付けると、印刷装置1は、切断位置を決定し(ステップS4)、ラベルデータを感熱テープ42に印刷する(ステップS5)。また、印刷装置1は、ステップS5の処理が終了した後、続けて、目印M2を印刷する(ステップS6)。このため、ステップS5及びS6の処理が終了した時点での感熱テープ42の状態は、状態T9のように、ラベルデータD2が印刷されており、かつフルカット位置CFを境とした非切出領域に目印M2が印刷された状態となる。非切出領域は、上記のように、フルカット位置CFを境としたラベルデータD2が印刷された領域とは反対側の領域である。
【0085】
ラベルデータD2及び目印M2の印刷が終了すると、印刷装置1は、次に、感熱テープ42を切断する処理(ステップS7)を行う。ステップS7の処理では、印刷装置1は、感熱テープ42におけるフルカット位置CFをフルカットしてラベルデータD2が印刷された領域(ラベル42s)を感熱テープ42から切り離す。フルカットを行う際の感熱テープ42の状態は、状態T10のように、フルカット位置CFが第1の刃801により切断可能(フルカット可能)な搬送位置に搬送された状態となる。
【0086】
また、ステップS7の処理では、印刷装置1は、例えば、ラベル42sを切り離した後の感熱テープ42を、印刷開始時の搬送位置に搬送する。このため、ステップS7が終了した時点での感熱テープ42の状態は、状態T11のように、フルカット後の感熱テープ42における新たな先端42aから距離L1となる位置が発熱素子701と対向した状態となる。感熱テープ42の状態が
図8の状態T11のような状態である場合、上記のように、感熱テープ42における先端42aから距離L1までの領域42zは、次回のラベル作成時に印刷することのできない領域となる。よって、本実施形態の印刷装置1では、印刷することのできない領域42zに目印M2が印刷された状態で、次回のラベル作成を開始することが可能となる。
【0087】
また、感熱テープ42から切り離されたラベル42sは、ハーフカット位置CHにおいてラベル層426がハーフカットされている。また、ラベル42sは、ハーフカット位置CHを境としたラベルデータD2が印刷された領域とは反対側の領域に目印M1が印刷されている。このため、利用者は、目印M1の存在に基づいて、目印M1とラベルデータD2との間にハーフカット位置CHが存在すると認識することができる。すなわち、利用者は、目印M1の印刷範囲に基づいてハーフカット位置CHを容易に識別することができ、ラベルデータD2が印刷された領域(ラベルとして使用する領域)をセパレータ425から容易にはがすことができる。
【0088】
このように、本実施形態の印刷装置1では、感熱テープ42にラベルデータを印刷する処理を行う際に、ラベルデータを印刷した領域を感熱テープ42から切り離すフルカット位置を境としてラベルデータを印刷した領域とは反対側の領域に目印Mを印刷する。このため、本実施形態の印刷装置1では、フルカット後の感熱テープ42における新たな先端部分に生じる、次の印刷処理において印刷することのできない領域に、目印Mを印刷しておくことが可能となる。したがって、本実施形態の印刷装置1では、感熱テープ42の先端部分に生じる印刷することのできない領域と、ラベルデータを印刷する領域との間に、ハーフカットの位置を示す目印Mを印刷するための領域を介在させることなく、目印Mが印刷されたラベルを作成することが可能となる。よって、本実施形態に係る印刷方法によれば、感熱テープ42におけるラベル作成時に印刷することのできない領域とラベルとして使用する領域との境界となるハーフカットの位置を利用者に提示することが可能となる。すなわち、本実施形態に係る印刷方法を適用してラベルを作成することにより、利用者は、作成したラベルにおけるラベルとして使用する領域をめくる(はがす)際に、目印Mに基づいてめくる位置(ハーフカット位置)を容易に視認することができる。
【0089】
また、本実施形態の印刷方法では、ラベル作成時に印刷をすることのできない領域が印刷をすることが可能な状態であるときに、目印Mを印刷しておく。このため、本実施形態の印刷装置1でラベルを作成した場合、ラベル作成時に感熱テープ42の先端部分の印刷することのできない領域とラベルデータを印刷する領域との間に目印Mを印刷するための領域を確保することなく、ハーフカットの位置を提示することが可能となる。よって、本実施形態の印刷方法によれば、感熱テープ42におけるラベルとして使用されない部分の量を低減することが可能となる。
【0090】
本実施形態に係る上記の印刷方法を適用可能な印刷装置1は、ハーフカットが可能な印刷装置1であればよい。すなわち、本実施形態の印刷方法は、感熱テープ42等の印刷用のテープを供給する媒体アダプタ10の構成によらず、適用可能である。しかしながら、本実施形態の印刷方法は、特に、利用者が被記録媒体40(感熱テープ42)を適宜出し入れ可能な媒体アダプタ10を利用可能な印刷装置1に適用することが好ましい。
【0091】
図9は、媒体アダプタ10の構成を示す斜視図である。
図9に示すように、被記録媒体40(感熱テープ42)を適宜出し入れ可能な媒体アダプタ10は、アダプタ本体20と、アダプタ蓋30とを備える。
【0092】
アダプタ蓋30は、アダプタ本体20に対し、アダプタ本体20の媒体収容部22を開閉自在に取り付けられている。本実施形態の媒体アダプタ10では、アダプタ本体20の蓋支持部27においてアダプタ蓋30の回転支点部31を回転可能に支持することにより、アダプタ蓋30を開閉可能にしている。アダプタ蓋30は、アダプタ本体20における媒体収容部22の底面22aと、アダプタ蓋30を閉じたときに媒体収容部22の底面22aと対向する面33aとの角度が変更する態様で回転する。被記録媒体40は、アダプタ本体20と閉じた状態のアダプタ蓋30とにより区画される媒体アダプタ10の内部空間内に収容される。媒体アダプタ10の内部空間は、アダプタ本体20に設けた凹形状の媒体収容部22と、アダプタ蓋30に設けた凹形状の媒体収容部33とにより区画される。
【0093】
媒体アダプタ10の内部空間は、被記録媒体40(感熱テープ42)の幅方向がアダプタ本体20における媒体収容部22の底面22aの法線方向(z方向)となる向きで被記録媒体40を収容可能な空間形状を有する。媒体アダプタ10の内部空間に被記録媒体40を収容する際には、
図9に示したように、被記録媒体40におけるバラけ防止シート43をアダプタ本体20の媒体収容部22の底面22aと対向させて収容する。この場合、被記録媒体40におけるアテンションシート44は、閉じたアダプタ蓋30における媒体収容部33の面33aと対向する。このため、アダプタ蓋30は、閉じた状態で利用者が媒体アダプタ10の内部の状態を目視することができるよう、透明な材料で形成する。より具体的には、アダプタ蓋30は、アテンションシート44に印刷されたテープ幅等の文字情報、及びアテンションシート44の色を正しく視認することが可能な、無色透明の樹脂材料により形成することが好ましい。一方、アダプタ本体20は、被記録媒体40(感熱テープ42)との識別が可能な色の樹脂材料により形成する。
【0094】
また、本実施形態の印刷装置1と組み合わせて用いる媒体アダプタ10には、上記のように、印刷可能なテープ幅の種類と対応する複数種類の媒体アダプタ10がある。このため、アダプタ本体20のうちアダプタ蓋30と重なる領域の外側となる部位には、収容する対象である(収容に適した)テープ幅を提示する領域20aが設けられている。すなわち、
図9では省略しているが、アダプタ本体20の領域20aには、収容に適したテープ幅を示す数字が印刷されている。例えば、収容する対象となるテープ幅が12mmである媒体アダプタ10の場合、アダプタ本体20における領域20aには、「12」という数字が印刷されている(
図2を参照)。
【0095】
複数種類の媒体アダプタ10の内部に区画される空間は、それぞれ、収容する被記録媒体40のテープ幅毎に、アダプタ本体20における媒体収容部22の底面22aからアダプタ蓋30における媒体収容部33の面33aまでの距離が異なる。更に、複数種類の媒体アダプタ10は、収容する被記録媒体40のテープ幅毎に、外形寸法における厚さ方向(
図9のz方向)の寸法が異なる。
【0096】
媒体アダプタ10におけるアダプタ本体20は、
図9に示すように、ガイド21と、媒体収容部22と、媒体支持部23と、テープ繰出溝24と、リブ25と、蓋支持部27と、フック受け部28と、ヒレ部29とを有する。
【0097】
ガイド21は、媒体収容部22からテープ繰出溝24を通して媒体アダプタ10の外部に繰出された感熱テープ42の搬送方向を規制する規制部である。ガイド21は、アダプタ本体20のうちの、印刷装置1に媒体アダプタ10を装着した場合に、感熱テープ42におけるプラテンローラ6とサーマルヘッド7とにより挟持される位置よりも下流側(テープ排出口側)となる位置に設けられる。ガイド21は、感熱テープ42の幅方向の端面と対向する第1の規制面21aと第2の規制面21bとを有する。第1の規制面21aは、感熱テープ42の幅方向における一方の端部42bと当接することにより、端部42b側(-z方向)への感熱テープ42の移動を規制する規制面である。第2の規制面21bは、感熱テープ42の幅方向における他方の端部42cと当接することにより、端部42c側(+z方向)への感熱テープ42の移動を規制する規制面である。第1の規制面21aと第2の規制面21bとは、収容に適した感熱テープ42の幅と略同一の間隔で対向するよう設けられる。プラテンローラ6とサーマルヘッド7との間を通過して排出口に向けて搬送される感熱テープ42は、ガイド21の第1の規制面21a又は第2の規制面21bと当接することにより、幅方向への移動が規制される。
【0098】
媒体収容部22は、媒体アダプタ10に区画される内部空間における内壁面の一部となる凹形状を有する。媒体収容部22の底面22aには、被印刷媒体40を回転可能に支持する媒体支持部23(第1の支持部23a及び第2の支持部23b)と、リブ25とが設けられている。
【0099】
媒体支持部23は、媒体アダプタ10に被印刷媒体40が収容された状態で、被印刷媒体40が有する感熱テープ42(筒状部材)等の開口に挿通され、被印刷媒体40を回転可能に支持する。媒体支持部23は、媒体収容部22の底面22aから突出した第1の支持部23aと、第1の支持部23aの先端面23cから更に突出した第2の支持部23bとを含む。
【0100】
第1の支持部23aは、バラけ防止シート43の開口及び感熱テープ42を巻きつけた筒状部材41の中空部分(
図3を参照)に挿通して筒状部材41の中空部分と係合させることにより、被記録媒体40を回転可能に支持する部位である。このため、第1の支持部23aの外径は、筒状部材41の中空部分の内径、及びバラけ防止シート43の開口43aの内径よりも小さい(
図3を参照)。また、第1の支持部23aの底面22aからの高さは、媒体アダプタ10が対応した感熱テープ42のテープ幅よりも低い。
【0101】
第2の支持部23bは、アテンションシート44の開口44aに挿通してアテンションシート44と係合させることにより、被記録媒体40を回転可能に支持する部位である。このため、第2の支持部23bの外径は、アテンションシート44の開口44aの寸法よりも小さい。また、第2の支持部23bの底面22aからの高さは、媒体アダプタ10に収容するのに適した感熱テープ42のテープ幅よりも高い。
【0102】
アダプタ本体20のリブ25は、媒体収容部22に収容された被記録媒体40の側面(バラけ防止シート43)と当接して被記録媒体40を支持する。すなわち、リブ25は、媒体収容部22の底面22aと被記録媒体40の側面(バラけ防止シート43)との接触面積を低減させる。これにより、媒体アダプタ10内部で被記録媒体40が回転するときにアダプタ本体20と被記録媒体40との間の摩擦抵抗が減少する。よって、被記録媒体40のスムーズな回転が実現でき、感熱テープ42を安定して繰り出し、搬送させることが可能となる。特に、
図9のようにリブ25を媒体支持部23に対して放射状に設けることで、被記録媒体40の径方向の各位置に均等に摩擦力を働かせることができる。
【0103】
更に、アダプタ本体20の媒体収容部22は、
図9に示すように、底面22aのリブ25における放射状に伸びる部位の間となる位置に平坦な領域20bを有している。領域20bには、例えば、収容する対象である(収容に適した)被記録媒体40のテープ幅を特定するための情報、及び被記録媒体40の向き等を示す情報が印刷されたシールを貼り付ける。これにより、利用者は、媒体アダプタ10に被記録媒体40を装着するときに、領域20bの情報とアテンションシート44の情報とを比較することで、被記録媒体40のテープ幅が媒体アダプタ10に対応しているテープ幅であるか否かをひと目で確認することができる。このため、利用者が誤ったテープ幅の被記録媒体40を媒体アダプタ10に装着することを防止することができる。更に、領域20bに貼り付けたシールに、アテンションシート44が貼り付けられた面を上向きにして被記録媒体40を収容することを示す情報が含まれる場合、利用者が被記録媒体4を誤った向きで媒体アダプタ10に収容することを防止することが可能となる。
【0104】
テープ繰出溝24は、媒体アダプタ10に収容された被記録媒体40の感熱テープ42を媒体アダプタ10の外部に繰り出す(引き出す)ための溝である。テープ繰出溝24は、媒体収容部22からアダプタ本体20の外側面に向かうにつれて、溝内を通過させる感熱テープ42における厚さ方向の寸法が小さくなるテーパ形状を有する。テープ繰出溝24は、媒体アダプタ10における感熱テープ42の繰出口となる位置で、感熱テープ42の厚さ方向への移動と、幅方向における一方の端部42b側(-z方向)への移動とを規制する規制部として機能する。
【0105】
蓋支持部27は、アダプタ蓋30の回転支点部31を回転可能に支持する支持部である。蓋支持部27は、アダプタ本体20のうちの、媒体支持部23から見て、ガイド21、テープ繰出溝24、及びフック受け部(図示せず)等が設けられた方向とは反対側の端部に設けられる。
【0106】
フック受け部28は、アダプタ蓋30を閉じたときに、該アダプタ蓋30の開く方向への移動を規制する態様で、アダプタ蓋30のフック部32と係合する。
【0107】
ヒレ部29は、媒体アダプタ10をアダプタ収容部2aに収容したときの、感熱テープ42の幅方向の位置と、サーマルヘッド7の発熱素子701の位置との位置合わせを行うための位置合わせ部である。収容の対象となるテープ幅が異なる複数種類の媒体アダプタ10のそれぞれにおけるヒレ部29は、例えば、アダプタ本体20における厚さ方向(
図9のz方向)での、感熱テープ42における幅方向の所定位置からの距離が同一の距離となるような位置に形成される。例えば、複数種類の媒体アダプタ10のそれぞれにおけるヒレ部29は、感熱テープ42における幅方向の中心位置からの距離が同一の距離となるような位置に形成される。この場合、媒体アダプタ10のヒレ部29を媒体収容部2aの支持部と、蓋4の支持部とで挟持すよう支持することにより、媒体アダプタ10から供給される感熱テープ42のテープ幅によらず、サーマルヘッド7に対するテープ幅方向の中心位置を同じ位置とすることが可能となる。
【0108】
一方、本実施形態の媒体アダプタ10におけるアダプタ蓋30は、
図9に示すように、回転支点部31と、フック部32と、媒体収容部33と、リブ35と、突出部36と、規制面37とを有する。
【0109】
回転支点部31は、アダプタ本体20の蓋支持部27と回転可能に係合し、アダプタ本体20に対してアダプタ蓋30が回転するときに支点となる部位である。本実施形態の媒体アダプタ10におけるアダプタ蓋30の回転支点部31とアダプタ本体20の蓋支持部27とは、上記のように、アダプタ本体20の底面22aと、アダプタ蓋30を閉じたときに底面22aと対向するアダプタ蓋30の面33aとの角度が変更される態様でアダプタ蓋30が回転するよう構成されている。
【0110】
フック部32は、アダプタ蓋30を閉じた状態にしたときに、アダプタ本体20に設けたフック受け部28と係合する。フック部32とアダプタ本体20のフック受け部28とは、アダプタ蓋30の開く方向への移動を規制する態様で係合する。また、アダプタ蓋30が閉じた状態であるときにフック部32を所定の方向(アダプタ本体20の媒体支持部23がある方向)に移動させると、フック部32とアダプタ本体20のフック受け部28との係合が解除され、アダプタ蓋30を開くことが可能となる。
【0111】
アダプタ蓋30の媒体収容部33は、媒体アダプタ10に区画される内部空間における内壁面の一部となる凹形状を有する。媒体収容部33における、アダプタ本体20の媒体収容部22の底面22aと対向する面33a(以下「媒体収容部33の底面33a」ともいう)のうち、アダプタ蓋30を閉じた状態でアダプタ本体20の第2の支持部23bと対向する位置は、開口している。また、媒体収容部33の底面33aにおける該開口の周囲には、リブ35が設けられている。
【0112】
アダプタ蓋30のリブ35は、アダプタ蓋30における媒体収容部33の底面33aと被印刷媒体40の側面(アテンションシート44)との接触面積を低減させる。このため、媒体アダプタ10内部で被印刷媒体40が回転するときにアダプタ蓋30と被印刷媒体40との間の摩擦抵抗が減少する。よって、被印刷媒体40のスムーズな回転が実現でき、感熱テープ42を安定して搬送させることが可能となる。特に、
図4のようにリブ35を放射状に設けることで、被印刷媒体40の径方向の各位置に均等に摩擦力を働かせることができる。
【0113】
アダプタ蓋30の突出部36は、アダプタ蓋30における媒体収容部33の底面33aから突出した部位である。該突出部36は、アダプタ蓋30を閉じた状態としたときに、アダプタ本体20のテープ繰出溝24の出口部分(媒体アダプタ10の外部に最も近い部分)と対向する位置に設けられている。アダプタ蓋30の突出部36は、テープ繰出溝24を通り媒体アダプタ10の外部に繰り出される感熱テープ42の幅方向における他方の端部42c側(+z方向)への感熱テープ42の移動を規制する規制部である。すなわち、本実施形態の媒体アダプタ10は、アダプタ蓋30を閉じると、アダプタ本体20のテープ繰出溝24とアダプタ蓋30の突出部36とにより、内部空間に収容した感熱テープ42を媒体アダプタの外部に繰り出す繰出口が形成される。そして、本実施形態の媒体アダプタ10では、繰出口から外部に繰り出される感熱テープ42の幅方向への移動を、アダプタ本体20における繰出口となる部位(テープ繰り出し溝24)と、アダプタ蓋30の繰出口となる位置に設けた突出部36とにより規制する。
【0114】
アダプタ蓋30の規制面37は、媒体アダプタ10の繰出口において感熱テープ42の厚さ方向(+y方向)への移動を規制する部位である。
【0115】
被印刷媒体40を媒体アダプタ10に収容する際、利用者は、感熱テープ42の幅方向における一方の端部側となる被印刷媒体40の側面がアダプタ本体20における媒体収容部22の底面22aと対向する向きで、被印刷媒体40を媒体収容部22に収容する。被印刷媒体40がバラけ防止シート43及びアテンションシート44を含む場合、利用者は、
図9に示したように、バラけ防止シート43をアダプタ本体20における媒体収容部22の底面22aと対向させて被印刷媒体40を媒体収容部22に収容する。この際、利用者は、バラけ防止シート43の開口及び感熱テープ42を巻きつけた筒状部材の中空部分に、媒体収容部22の底面22aに設けた第1の支持部23aを挿通して係合させる。更に、利用者は、アテンションシート44の開口44aに、第1の支持部23a上に設けられた第2の支持部23bを挿通して係合させる。これにより、被印刷媒体40は、アダプタ本体20に設けた媒体支持部23(第1の支持部23a及び第2の支持部23b)に、底面22aと略垂直な方向を回転軸として回転可能に支持される。また、利用者は、被印刷媒体40における感熱テープ42の外周側の一端42aをバラけ防止シート43から離間させて引き出し、該感熱テープ42の先端部分をアダプタ本体20に設けたテープ繰出溝24に差し込む(落とし込む)。被印刷媒体40が媒体支持部23に支持され、かつ感熱テープ42の端部がテープ繰出溝24に差し込まれた状態で、利用者がアダプタ蓋30を閉じると、アダプタ本体20と閉じた状態のアダプタ蓋30とで区画された媒体アダプタ10の内部空間に被印刷媒体40が収納される。このとき、被印刷媒体40は、アテンションシート44がアダプタ蓋30と対向する。このため、アダプタ蓋30が透明な樹脂材料を成形して形成されたものであれば、利用者は、アダプタ蓋30を閉じた状態のまま、収容された被記録媒体40(感熱テープ42)の幅及び色を視認することが可能となる。
【0116】
この種の媒体アダプタ10を印刷装置1のアダプタ収容部2aに収容する(装着する)場合には、媒体アダプタ10から引き出した感熱テープ42における先端部分を、アダプタ本体20のガイド21に当接させた状態で収容する。これにより、アダプタ収容部2aに収容された媒体アダプタ10から引き出された感熱テープ42をプラテンローラ6とサーマルヘッド7とで挟持し、搬送することが可能となる。本実施形態の印刷方法により感熱テープ42の先端部分に印刷された目印Mは、媒体アダプタ10をアダプタ収容部2aに収容する際の感熱テープ42の適切な引き出し量を示す情報として利用することが可能である。
【0117】
図10は、感熱テープ42に目印Mを印刷することによる別の効果を説明する斜視図である。
【0118】
利用者が媒体アダプタ10の被記録媒体40(感熱テープ42)を適宜出し入れすることが可能である場合、被記録媒体40を出し入れする毎に、媒体アダプタ10から引き出された感熱テープ42の長さが変わる。媒体アダプタ10から引き出された感熱テープ42の長さが適切な長さよりも長い場合、例えば、ラベル作成時に感熱テープ42の先端部分に生じる印刷することのできない領域が増大し、感熱テープ42のうちのラベルとして使用されない量が増大する。ここで、感熱テープ42の適切な長さは、感熱テープ42を搬送可能であり、かつラベル作成時に感熱テープ42の先端部分に生じる印刷することのできない領域が最小となるような長さである。すなわち、媒体アダプタ10から引き出された感熱テープ42の長さが適切な長さよりも短い場合、例えば、感熱テープ42を正しく搬送することが困難となり、テープ詰まり(ジャム)等が発生する。このため、媒体アダプタ10をアダプタ収容部2aに収容する際、利用者は、媒体アダプタ10から引き出された感熱テープ42の長さが適切な長さとなるよう引き出し量を調整する。このとき、感熱テープ42に適切な長さの目安となる目印がないと、利用者は、目測で引き出し量を調節することとなるため、調節に手間がかかる。
【0119】
これに対し、本実施形態の印刷方法では、上記のように、感熱テープ42の先端部分にハーフカット位置を示す目印(
図8のM1,M2等)を印刷する。このため、利用者は、
図10に示すように、目印Mの印刷範囲に基づいて、アダプタ本体20のガイド21における端部21cから感熱テープ42の先端42までの距離(感熱テープ42の突出量)を距離L1に調節することが可能となる。このように、目印Mに基づいて感熱テープ42の突出量を所定の距離L1と対応した量に調節すると、媒体アダプタ10をアダプタ収容部2aに収容したときの感熱テープ42の先端42aからプラテンローラ6とサーマルヘッド7とで挟持される位置までの距離のずれを抑制することが可能となる。このため、本実施形態の印刷方法によれば、利用者は、目印Mに基づいて、媒体アダプタ10を印刷装置1に装着する際の感熱テープ42の引き出し量を、適切な量に容易に調整することが可能となる。また、利用者が媒体アダプタ10を印刷装置1に装着する際の感熱テープ42の引き出し量のずれを抑制することが可能となるため、ラベル作成時に感熱テープ42の先端部分に生じる印刷することのできない領域を最小にし、感熱テープ42におけるラベルとして使用されない量を低減することが可能となる。
【0120】
なお、本実施形態に係る印刷方法は、
図8に示したように1枚のラベルを作成する場合に限らず、感熱テープ42にラベル複数枚分の連続印刷をして複数枚のラベルを作成する場合にも適用可能である。
【0121】
図11は、感熱テープ42にラベル複数枚分の連続印刷を行う場合の目印M2の印刷位置を説明する図である。
図11には、感熱テープ42にラベル3枚分の連続印刷をして3枚のラベルを作成する場合の切断位置及び目印M2の印刷位置を示している。
【0122】
本実施形態に係る印刷装置1では、例えば、
図8に示した状態T8の状態である感熱テープ42に対しラベル複数枚分の連続印刷を行い、複数枚のラベルを一括して作成することが可能である。例えば、「あいうえお」というラベルデータD1を印刷した3枚のラベルを一括して作成する場合、印刷装置1は、
図11に示したように、感熱テープ42におけるハーフカット位置CH1を印刷開始位置として、ラベルデータD1を3つの領域42uのそれぞれに連続して印刷する。このとき、印刷装置1は、ラベルデータD1を印刷する領域同士の境界をハーフカットする位置(ハーフカット位置CH2及びCH3)に設定し、ラベルデータD1の印刷を終了する位置をフルカット位置CFに設定する。この場合、印刷装置1は、フルカット位置CFがサーマルヘッド7の発熱素子701上を通過した後、目印M2を印刷する。すなわち、印刷装置1は、ハーフカット位置CH2及びCH3が発熱素子701上を通過したときには目印を印刷しない。
【0123】
図11の感熱テープ42におけるハーフカット位置CH2及びCH3のようなラベルデータD1が印刷された領域同士の境界にハーフカットを行った場合、例えば、ハーフカット位置を目視で確認することが困難な場合でも、ラベルデータD1の間隔等に基づいてハーフカット位置を推測することが可能である。更に、複数枚のラベルを一括して作成した場合、該複数枚のラベルのうちの1枚のラベルがはがされた状態になると、残っているラベルの端は一目で分かる。よって、複数枚のラベルを一括して作成する場合にはフルカット位置を境としてラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域に目印M(M1,M2)を印刷することにより、感熱テープ42におけるラベルとして使用されない量の増加を抑制することが可能となる。
【0124】
なお、上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。印刷装置1は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、様々な変形、変更が可能である。
【0125】
例えば、
図7のフローチャートは、印刷装置1が行う処理の一例に過ぎない。印刷装置1が行う処理は、
図7のフローチャートに沿った手順に限らず、適宜変更可能である。例えば、印刷装置1が行う処理のうち感熱テープ42の先端部分をハーフカットする処理(ステップS2)は、ラベルデータを作成する処理(ステップS3)及び切断位置を決定する処理(ステップS4)を行う処理の後で行ってもよい。また、印刷用のテープをハーフカットする際の切断方法は、印刷用のテープの構成に応じて適宜変更可能である。
【0126】
また、感熱テープ42に印刷する目印M(M1,M2)は、
図8及び
図11に示したような矩形(四角形)に限らず、ハーフカット位置の近傍でテープ幅方向に伸びる直線や破線であってもよい。また、感熱テープ42における先端42aから印刷開始位置(ハーフカット位置)までの領域は、該領域全体が印刷することのできない領域である必要はなく、構造上は印刷可能な領域が含まれていてもよい。
【0127】
また、
図9のフローチャートにおけるステップS1~S7、及びS10の処理は、印刷処理(ステップS9)を実行する直前に限らず、任意のタイミング(例えば、蓋4を閉じたタイミング)で行ってもよい。
【0128】
また、例えば、上述した実施形態では、入力装置3と表示装置5とを有する印刷装置1を例示したが、印刷装置1は、入力装置や表示装置を有しなくてもよい。すなわち、文字や図形等のラベルデータは、例えば、コンピュータ等の、印刷装置1とは別の電子機器から入力されても良い。
【0129】
更に、本実施形態の印刷装置1により印刷可能な印刷用のテープ(例えば感熱テープ42)を含む被記録媒体40は、例えば、未使用時におけるテープの先端部分に目印Mが印刷されていてもよい。このような被記録媒体40を利用者に提供した場合、例えば、被記録媒体40から初めてラベルを作成する際にも、目印Mが印刷されたラベルが得られる。すなわち、未使用時におけるテープの先端部分に目印Mを印刷しておくことで、被記録媒体40から初めてラベルを作成する際に、
図8の状態T6に示したような目印が印刷されていないラベル42rとなることを防げる。
【0130】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
テープに印刷を行う印刷方法であって、
前記テープに印刷を行う印刷装置が、
前記テープにおける印刷開始位置を、該印刷開始位置を境として隣り合う2つの領域が一体的な状態で保持される態様でハーフカットし、
前記テープにおける前記印刷開始位置と、前記テープに印刷する内容を示す情報を含むラベルデータとに基づいて、前記テープにおける、前記ラベルデータが印刷された領域を前記テープから切断して切り離すフルカット位置を決定し、
前記テープにおける前記印刷開始位置と前記フルカット位置との間となる領域に前記ラベルデータを印刷するとともに、前記テープにおける、前記フルカット位置を境として前記ラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域に、所定の目印を印刷し、
前記フルカット位置で前記テープを切断する、
処理を実行することを特徴とする印刷方法。
【0131】
[付記2]
付記1に記載の印刷方法であって、
前記目印を印刷する処理では、前記印刷装置は、
前記テープにおける前記フルカット位置と、該フルカット位置から所定の距離となる位置との間に前記目印を印刷する
ことを特徴とする印刷方法。
【0132】
[付記3]
付記2に記載の印刷方法であって、
前記目印を印刷する処理では、前記印刷装置は、
前記フルカット位置を前記テープの先端としてラベルデータを印刷する際に印刷開始位置となる位置よりも前記先端側となる領域内に前記目印を印刷する
ことを特徴とする印刷方法。
【0133】
[付記4]
付記3に記載の印刷方法であって、
前記目印を印刷する処理では、前記印刷装置は、
前記フルカット位置を前記テープの先端としてラベルデータを印刷する際の前記ハーフカット位置となる位置よりも前記先端側となる領域内に前記目印を印刷する
ことを特徴とする印刷方法。
【0134】
[付記5]
付記1乃至付記4のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記ラベルデータを印刷する処理では、前記印刷装置は、
前記テープにおける、前記印刷開始位置と前記フルカット位置との間となる領域に、前記ラベルデータを印刷する複数の領域を設定し、該複数の領域のそれぞれに連続して前記ラベルデータを印刷する処理を実行可能であり、
前記ラベルデータを印刷する前記複数の領域のそれぞれに連続して前記ラベルデータを印刷する場合には、前記印刷装置は、前記ラベルデータを印刷した領域同士が一体的な状態で保持される態様でハーフカットする処理を実行可能である
ことを特徴とする印刷方法。
【0135】
[付記6]
付記1乃至付記5のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記テープは、長手方向に巻かれて環形状を有した前記テープを含む被記録媒体を収容した媒体アダプタから供給され、
前記目印は、前記媒体アダプタに前記テープを収容する際に、前記媒体アダプタから前記テープを突出させる突出量の基準となる印刷範囲で印刷される
ことを特徴とする印刷方法。
【0136】
[付記7]
付記1乃至付記5のいずれか1項に記載の印刷方法であって、
前記テープは、粘着層を含む前記ラベルデータを印刷するラベル層と、該ラベル層における前記粘着層を保護するセパレータとを備え、
前記フルカット位置で前記テープを切断する処理では、前記印刷装置は、前記ラベル層及び前記セパレータを切断し、
前記ハーフカット処理では、前記印刷装置は、前記ラベル層のみを切断する
ことを特徴とする印刷方法。
【0137】
[付記8]
テープに印刷を行う印刷装置であって、
前記テープを搬送する搬送処理部と、
前記テープを切断して分離するフルカット、及び切断位置を境として隣り合う2つの領域が一体的な状態で保持される態様で前記テープを切断するハーフカットをすることが可能な切断処理部と、
前記テープに印刷する内容を示す情報を含むラベルデータを前記テープに印刷する印刷処理部と、
前記テープにおける印刷開始位置と前記フルカットするフルカット位置との間となる領域に前記ラベルデータを印刷するとともに、前記テープにおける、前記フルカット位置を境として前記ラベルデータが印刷された領域とは反対側の領域に、所定の目印を印刷する処理を、前記搬送処理部及び前記印刷処理部に行わせる制御部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【符号の説明】
【0138】
1・・・印刷装置、2・・・装置筐体、2a・・・アダプタ収容部、2b・・・(アダプタ収容部2aの)底面、201・・・支持部、3・・・入力装置、4・・・蓋、4a・・・(蓋4の)内部底面、4r・・・ボタン、401,402・・・支持部、403・・・アダプタ押さえ部、404・・・窓、5・・・表示装置、6・・・プラテンローラ、7・・・サーマルヘッド、8・・・カッター、801・・・第1の刃、802・・・第2の刃、20・・・アダプタ本体、20a,20b・・・領域、21・・・ガイド、21a・・・第1の規制面、21b・・・第2の規制面、22,33・・・媒体収容部、22a,33a・・・底面、23・・・媒体支持部、23a・・・第1の支持部、23b・・・第2の支持部、23c・・・先端面、24・・・テープ繰出溝、25,35・・・リブ、27・・・蓋支持部、28・・・フック受け部、29・・・ヒレ部、30・・・アダプタ蓋、31・・・回転支点部、32・・・フック部、40・・・被印刷媒体、42・・・感熱テープ、42b,42c・・・端部、43・・・バラけ防止シート、44・・・アテンションシート、43a,44a・・・開口、101・・・制御部、102・・・アダプタ検知部、103・・・入力部、104・・・表示部、105・・・搬送処理部、106・・・印刷処理部、107・・・切断処理部、110・・・記憶部