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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】層転写装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/08 20060101AFI20221109BHJP
   G03G 15/22 20060101ALI20221109BHJP
   B65H 39/14 20060101ALI20221109BHJP
   B41J 15/16 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
B65H23/08
G03G15/22 103Z
B65H39/14
B41J15/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018064461
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019172452
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】市川 智也
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161598(JP,A)
【文献】特開平04-007184(JP,A)
【文献】特開平09-039346(JP,A)
【文献】特開2016-165882(JP,A)
【文献】特開2000-318247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
B41J 11/00
B41J 15/00
B41J 29/00
B65H 23/00
B65H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのトナー像が形成された面に複数の層からなる多層フィルムを重ね、前記トナー像の上に前記多層フィルムの少なくとも一層を転写する層転写装置であって、
本体筐体と、
前記本体筐体に着脱可能なフィルムカートリッジであって、
多層フィルムが巻回された供給リールと、
前記多層フィルムを巻き取る巻取リールと、を有するフィルムカートリッジと、
前記供給リールの一端に連結されることで前記供給リールの一端に負荷を与えるギヤ機構であって、前記供給リールを回転させるための駆動力を受け取るギヤ機構と、
前記供給リールの他端に接触することで前記供給リールに摩擦力を付与する摩擦部材と、を備え
前記フィルムカートリッジは、
前記供給リールの一端に、前記ギヤ機構の一部を有し、
前記供給リールの他端に、前記摩擦部材を有し、
前記本体筐体は、前記ギヤ機構の他部を有し、
前記ギヤ機構の他部は、
前記供給リールの一端に負荷を与えるためのトルクリミッタと、
前記トルクリミッタに接続される入力ギヤと、を有し、
前記ギヤ機構の一部は、前記フィルムカートリッジが前記本体筐体に装着されたときに前記入力ギヤと噛み合うギヤを有することを特徴とする層転写装置。
【請求項2】
前記供給リールとともに回転する回転部材と、
前記供給リールの軸線方向外側から前記回転部材を覆うカバーと、を備え、
前記摩擦部材は、前記回転部材と前記カバーとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の層転写装置。
【請求項3】
前記摩擦部材と前記カバーとの間に配置され、前記摩擦部材を前記回転部材に付勢する付勢部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の層転写装置。
【請求項4】
前記供給リールの径方向において前記摩擦部材が移動するのを規制する規制部材を備えることを特徴とする請求項3に記載の層転写装置。
【請求項5】
前記摩擦部材は、バネであることを特徴とする請求項2に記載の層転写装置。
【請求項6】
前記回転部材は、前記供給リールの軸線方向外側に開口する凹部を有し、
前記摩擦部材は、前記凹部内に収容されることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項7】
回動可能なレバーを備え、
前記回転部材は、円筒状の壁を有し、
前記壁は、その外周面から突出する複数の突起を有し、
前記レバーは、前記突起と係合可能であり、
前記摩擦部材は、前記壁に囲われていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項8】
前記摩擦部材は、前記供給リールの他端部に対して前記供給リールの軸線方向に押し付けられることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項9】
前記付勢部材は、押しバネであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の層転写装置。
【請求項10】
記フィルムカートリッジは、前記供給リールを収容するケースと、前記ケースが着脱可能な支持体とを備え、
前記ケースは、前記摩擦部材および前記ギヤ機構の一部を備え、
前記本体筐体は、前記ギヤ機構の他部を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項11】
前記供給リールは、
前記多層フィルムが巻回される供給軸と、
前記供給軸の一端に位置する第1フランジであって、前記ギヤ機構の前記一部であるリールギヤを有する第1フランジと、
前記供給軸の他端に位置する第2フランジであって、前記摩擦部材と接触する第2フランジと、を有し、
前記第1フランジ、前記リールギヤおよび前記第2フランジは、同軸で回転することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項12】
前記フィルムカートリッジは、
前記供給リールに係合し、前記供給リールの回転を規制する規制位置と、前記供給リールから離間し、前記供給リールの回転を許容する非規制位置との間で移動可能なレバーを備えることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項13】
前記シートおよび前記多層フィルムを挟む2つのローラによって、前記シートおよび前記多層フィルムを加熱および加圧するフィルム転写部と、
2つの前記ローラの状態を、2つの前記ローラで前記多層フィルムを挟んだ第1状態と、一方の前記ローラが前記多層フィルムから離れた第2状態とに切り替える接離機構と、をさらに備え、
2つの前記ローラの状態が前記第2状態のとき、前記レバーが前記規制位置に位置し、
2つの前記ローラの状態が前記第2状態から前記第1状態に切り替えられる場合に、前記接離機構の一部が、前記レバーと係合し、前記レバーが前記規制位置から前記非規制位置に移動することを特徴とする請求項12に記載の層転写装置。
【請求項14】
前記フィルムカートリッジは、
前記レバーを覆うカバーであって、開口を有するカバーを有し、
前記接離機構の前記一部は、前記カバーの開口を通して前記レバーと係合可能であることを特徴とする請求項13に記載の層転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像の上に箔などの層を転写する層転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートのトナー像が形成された面に複数の層からなる多層フィルムを重ね、トナー像の上に多層フィルムの少なくとも一層を転写する層転写装置が知られている(特許文献1参照)。具体的に、層転写装置は、多層フィルムが巻回された供給リールと、多層フィルムを巻き取る巻取リールとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-252190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、層転写装置において、供給リールと巻取リール間で多層フィルムが弛まないように、供給リールにギヤ機構を連結して供給リールに負荷を与えることが望まれている。しかしながら、ギヤ機構を、供給リールの一端のみに連結させてしまうと、供給リールの他端に負荷が付与されず、多層フィルムの幅方向における一端と他端にかかる張力の差が大きくなるといった問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、多層フィルムの幅方向における一端と他端にかかる張力の差を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る層転写装置は、シートのトナー像が形成された面に複数の層からなる多層フィルムを重ね、前記トナー像の上に前記多層フィルムの少なくとも一層を転写する装置である。
前記層転写装置は、多層フィルムが巻回された供給リールと、前記多層フィルムを巻き取る巻取リールと、前記供給リールの一端に設けられ、前記供給リールを回転させるための駆動力を受け取るギヤ機構と、前記供給リールの他端に設けられ、前記供給リールに摩擦力を付与する摩擦部材と、を備える。
【0007】
この構成によれば、例えば供給リールの一端にギヤ機構を設け、他端に摩擦部材を設けない構成と比べ、多層フィルムの一端と他端にかかる張力の差を小さくすることができる。
【0008】
また、前記層転写装置は、前記供給リールとともに回転する回転部材と、前記供給リールの軸線方向外側から前記回転部材を覆うカバーと、を備え、前記摩擦部材は、前記回転部材と前記カバーとの間に配置されていてもよい。
【0009】
また、前記層転写装置は、前記摩擦部材と前記カバーとの間に配置され、前記摩擦部材を前記回転部材に付勢する付勢部材を備えていてもよい。
【0010】
これによれば、付勢部材により摩擦部材を回転部材に押し付けるので、適切な摩擦力を発生させることができる。
【0011】
また、前記層転写装置は、前記供給リールの径方向において前記摩擦部材が移動するのを規制する規制部材を備えていてもよい。
【0012】
また、前記摩擦部材は、バネであってもよい。
【0013】
また、前記回転部材は、前記供給リールの軸線方向外側に開口する凹部を有し、前記摩擦部材は、前記凹部内に収容されていてもよい。
【0014】
これによれば、例えば回転部材に凹部を設けない構成と比べ、摩擦部材等を軸線方向内側に配置することができるので、層転写装置を軸線方向に小型化することができる。
【0015】
また、前記層転写装置は、回動可能なレバーを備え、前記回転部材は、円筒状の壁を有し、前記壁は、その外周面から突出する複数の突起を有し、前記レバーは、前記突起と係合可能であり、前記摩擦部材は、前記壁に囲われていてもよい。
【0016】
これによれば、レバーを突起に係合させることで、供給リールの回転を規制することができる。そして、供給リールの回転を規制するための突起を回転部材に設けることで、回転部材に、供給リールの回転を規制する機能と摩擦部材との間で摩擦力を発生させる機能の2つの機能を持たせることができる。
【0017】
また、前記摩擦部材は、前記供給リールの他端部に対して前記供給リールの軸線方向に押し付けられていてもよい。
【0018】
また、前記付勢部材は、押しバネであってもよい。
【0019】
また、前記層転写装置は、本体筐体と、前記本体筐体に着脱可能なフィルムカートリッジと、を備え、前記フィルムカートリッジは、前記供給リールを収容するケースと、前記ケースが着脱可能な支持体とを備え、前記ケースは、前記摩擦部材および前記ギヤ機構の一部を備え、前記本体筐体は、前記ギヤ機構の他部を備えていてもよい。
【0020】
これによれば、ギヤ機構の他部が本体筐体に設けられるので、フィルムカートリッジの軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、多層フィルムの幅方向における一端と他端にかかる張力の差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る箔転写装置の断面図である。
図2】フィルムカートリッジを分解して示す図(a)と、供給リール周りの構造を示す断面図(b)である。
図3】供給リールの一端側の構造を拡大して示す図(a)と、他端側の構造を拡大して示す図(b)である。
図4】ギヤ機構を示す図(a)と、図(a)の矢印I方向から見た矢視図(b)である。
図5】供給リールの他端側の構造を分解して示す分解斜視図である。
図6】レバーと接離機構の関係を示す図であり、加熱ローラが離間位置に位置する状態を示す図である。
図7】レバーと接離機構の関係を示す図であり、加熱ローラが押圧位置に位置する状態を示す図である。
図8】摩擦部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、箔転写装置の全体構成を簡単に説明した後、フィルムカートリッジの構成について説明する。
以下の説明において、方向は、図1に示す方向で説明する。すなわち、図1の右側を「前」とし、図1の左側を「後」とし、図1の紙面手前側を「左」とし、図1の紙面奥側を「右」とする。また、図1の上下を「上下」とする。
【0024】
層転写装置の一例としての箔転写装置1は、例えば、レーザプリンタ等の画像形成装置でシートにトナー像を形成した後、シートのトナー像の上に金箔等の箔を転写するための装置である。
【0025】
図1に示すように、箔転写装置1は、本体筐体2と、本体筐体2の後部に設けられ、例えば、用紙、OHPフィルム等のシートSが載置されるシートトレイ3と、シートトレイ3から供給されるシートSが通過するシート供給口4と、本体筐体2の前部に設けたシート排出口5と、シート排出口5を通して排出されたシートSが載置されるシート排出トレイ6とを備えている。
本体筐体2は、その内部に、シート供給口4からシート排出口5まで延びる搬送経路SPに沿ってシートSを搬送するシート搬送部10と、シート搬送部10から搬送されたシートSに重ねるように多層フィルムFを供給するフィルム供給部20と、シートSと多層フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧するフィルム転写部50とを主に備えている。
【0026】
シート搬送部10は、複数対のローラを含み、シート供給口4を通して供給されたシートSをフィルム転写部50に向けて搬送するシート供給機構15と、フィルム転写部50を通過したシートSをシート排出口5に向けて搬送する一対の搬送ローラ18とを主に備えている。
シート搬送部10は、シート供給機構15により、シートSのトナー像が形成された面(表面)を下向きにしてシートトレイ3に載置されたシートSを一枚ずつフィルム転写部50に向けて搬送し、フィルム転写部50を通過して箔が転写されたシートSを、搬送ローラ18によりシート排出口5に向けて案内する。
【0027】
フィルム供給部20は、多層フィルムFと、供給リール21と、巻取リール31と、支持ローラ41と、剥離ローラ43とを備えている。多層フィルムF、供給リール21、巻取リール31、支持ローラ41、剥離ローラ43は、フィルムカートリッジFCに設けられている。
【0028】
フィルムカートリッジFCは、本体筐体2の側面に設けたカバー(図示せず)を開けることで露出した開口部(図示せず)を通して、本体筐体2に着脱可能となっている。なお、フィルムカートリッジFCの着脱時において、フィルムカートリッジFCと後述する加圧ローラ51または加熱ローラ61とが干渉しないように、加圧ローラ51および加熱ローラ61の少なくとも一方を移動させて、加圧ローラ51と加熱ローラ61との間にフィルムカートリッジFCを通すための間隔を空けるように構成されている。なお、本実施形態では、加熱ローラ61を加圧ローラ51に対して接触・離間させるための接離機構70によって加熱ローラ61を移動させている。
フィルムカートリッジFCは、シートSの搬送経路SPにおいて、シート供給機構15と搬送ローラ18の間、且つ搬送経路SPの下側に配置されている。
【0029】
多層フィルムFは、支持層と、剥離層と、転写層とを有している。支持層は、高分子材料からなるテープ状の基材であり、剥離層および転写層を支持している。剥離層は、支持層から転写層を剥離しやすくするための層であり、支持層と転写層との間に配置されている。転写層は、トナー像に転写される層であり、箔を含んでいる。箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の金属であって薄く延された金属である。
多層フィルムFは、例えば、主として高分子材料からなっている。
【0030】
供給リール21は、多層フィルムFが巻回される供給軸22を有している。供給リール21は、中空円柱状の供給リールケース23に収容されている。供給リール21は、両端部が供給リールケース23に回転可能に支持されることで、多層フィルムFと一体に回転する。
【0031】
巻取リール31は、多層フィルムFを巻き取るための巻取軸32を有しており、多層フィルムFの端部が巻取軸32に固定される。巻取リール31は、中空円柱状の巻取リールケース33に収容されている。巻取リール31は、両端部が巻取リールケース33に回転可能に支持されている。
フィルムカートリッジFCを箔転写装置1に装着した状態において、巻取リール31は、本体筐体2に設けられた駆動源によって回転駆動される。巻取リール31が回転すると、供給リール21に巻回された多層フィルムFが引き出され、引き出された多層フィルムFが巻取軸32に巻き取られていく。
【0032】
支持ローラ41は、トナー像を下にしてシート供給機構15から搬送されるシートSに対して、供給リール21から供給された多層フィルムFを、転写層を上にした状態で重ねるように案内するローラである。支持ローラ41は、供給リール21から引き出された多層フィルムFの搬送方向を変えて、シートSの搬送経路SPと略平行に多層フィルムFを案内する。
【0033】
剥離ローラ43は、フィルム転写部50を通過した多層フィルムFと接触し、巻取リール31が多層フィルムFを巻き取ることにより、フィルム転写部50を通過した多層フィルムFの搬送方向をシートSの搬送経路SPとは異なる方向に変更するローラである。
フィルム転写部50を通過してシートSと重なった状態で搬送された多層フィルムFは、剥離ローラ43を通過する際にシートSとは異なる方向に案内され、シートSから剥離される。
【0034】
フィルム転写部50は、加圧ローラ51と、加熱ローラ61とを備えており、加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部において、シートSと多層フィルムFを重ねて加熱および加圧する。
【0035】
加圧ローラ51は、シートSの搬送経路SPの上側で、シートSの裏面(トナー像が形成された面と反対側の面)と接触する位置に配置される。
加圧ローラ51は、中央部に設けた円筒状の芯金の周囲をシリコンゴムからなるゴム層で被覆したローラである。
加圧ローラ51は、両端部が本体筐体2に回転可能に支持され、駆動源によって回転駆動される。加圧ローラ51は、加熱ローラ61に押し当てられることで、加熱ローラ61との間でシートSおよび多層フィルムFを挟持し、加圧ローラ51の回転により加熱ローラ61を従動回転させる。
【0036】
加熱ローラ61は、シートSの搬送経路SPの下側で、多層フィルムFと接触する位置に配置される。
加熱ローラ61は、円筒状に形成された金属管の内部にヒータ(図示せず)を配置したローラである。
【0037】
このように構成された箔転写装置1では、シートSの表面を下向きにしてシートトレイ3に載置されたシートSが、シート供給機構15により一枚ずつフィルム転写部50に向けて搬送される。
シートSの搬送経路SPに沿って搬送されたシートSは、フィルム転写部50の上流側で、多層フィルムFの搬送経路に沿って供給リール21から供給された多層フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と多層フィルムFの転写層が接触した状態でフィルム転写部50に搬送される。
フィルム転写部50においては、シートSと多層フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部を通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に箔が熱転写される。
【0038】
箔が熱転写された後、シートSと多層フィルムFは密着した状態で剥離ローラ43まで搬送される。シートSと多層フィルムFが剥離ローラ43を通過すると、多層フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから多層フィルムFが剥離される。
シートSから剥離された多層フィルムFは、巻取リール31の巻取軸32に巻き取られていく。一方、多層フィルムFが剥離されたシートSは、搬送ローラ18によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、シート排出口5からシート排出トレイ6へと排出される。
【0039】
図2(a)に示すように、フィルムカートリッジFCは、前述した供給リールケース23および巻取リールケース33と、支持体の一例である一対のベースプレートBPとを備えている。供給リールケース23および巻取リールケース33は、ベースプレートBPに着脱可能となっている。支持ローラ41および剥離ローラ43は、ベースプレートBPに回転可能に支持されている。
【0040】
図2(b)に示すように、供給リール21は、前述した供給軸22と、円筒状の供給軸22の一端部に嵌合により固定される第1フランジ110と、供給軸22の他端部に嵌合により固定される第2フランジ26とを備えている。図3(a)に示すように、第1フランジ110は、円柱状の嵌合部111と、嵌合部111よりも大径となる円板状のフランジ部112と、フランジ部112よりも小径となるリールギヤG1と、リールギヤG1よりも小径となる円柱状部113と、円柱状部113よりも小径となる軸部114とを一体に有している。
【0041】
嵌合部111は、供給軸22に嵌合する部位であり、フランジ部112の一方の面から突出している。フランジ部112は、多層フィルムFの幅方向の端部の位置を規制する部位であり、幅方向において多層フィルムFの幅方向の端部と対向する位置に配置されている。
【0042】
リールギヤG1は、フランジ部112の嵌合部111とは反対側の面に一体に形成されている。リールギヤG1は、第1フランジ110の一部として形成されることで、供給リール21の回転軸を中心にして、供給リール21と一体に回転する。
【0043】
円柱状部113は、リールギヤG1のフランジ部112とは反対側の面から突出している。円柱状部113は、後述する段ギヤGsの第2ギヤ部Gs2と干渉しないような径で形成されている。
【0044】
軸部114は、円柱状部113のリールギヤG1とは反対側の面から突出している。軸部114は、供給リールケース23に回転可能に支持されている。
【0045】
段ギヤGsは、第1ギヤ部Gs1と、当該第1ギヤ部Gs1よりも大径となる第2ギヤ部Gs2とを一体に有している。段ギヤGsは、供給リールケース23に回転可能に支持されており、第1ギヤ部Gs1がリールギヤG1に噛み合っている。これにより、段ギヤGsが、供給リール21に連動して回転するようになっている。
【0046】
図4(a)に示すように、フィルムカートリッジFCに設けられるリールギヤG1および段ギヤGsは、本体筐体2に設けられるギヤ群G30とともにギヤ機構GMを構成している。つまり、フィルムカートリッジFCを本体筐体2に装着した状態において、供給リール21の一端には、ギヤ機構GMが設けられている。
【0047】
ギヤ機構GMは、供給リール21を回転させるための駆動力(巻取リール31からの駆動力)を受け取るギヤ機構であり、供給リール21の一端に連結されることで、供給リール21の一端に負荷を与えている。ギヤ機構GMの一部(リールギヤG1および段ギヤGs)は、供給リールケース23に設けられ、他部(ギヤ群G30)は、本体筐体2に設けられている。ギヤ群G30は、入力ギヤG31と、中継ギヤG32と、検知ギヤG33とを備えている。
【0048】
入力ギヤG31は、段ギヤGsの第2ギヤ部Gs2に噛合可能となっている。中継ギヤG32は、入力ギヤG31と検知ギヤG33の間に配置され、入力ギヤG31と検知ギヤG33とに噛み合っている。
【0049】
中継ギヤG32には、入力ギヤG31から検知ギヤG33へ伝達されるトルクを制限するトルクリミッタTLが取り付けられている。検知ギヤG33には、ロータリエンコーダREの回転ディスクRE1が取り付けられている。図4(b)に示すように、ロータリエンコーダREは、検知ギヤG33の回転速度を検知するセンサであり、周方向に並ぶ複数のスリットが形成された回転ディスクRE1と、回転ディスクRE1のスリットに通すように出射した光を検知する光センサRE2とを備えている。
【0050】
入力ギヤG31、中継ギヤG32および検知ギヤG33は、入力ギヤG31の軸線方向において、ロータリエンコーダREとトルクリミッタTLとの間に位置している。詳しくは、図4(a)に示すように、ロータリエンコーダREの回転ディスクRE1とトルクリミッタTLは、入力ギヤG31の軸線方向から見て重なっており、各ギヤG31~G33に対して同じ側に配置すると干渉してしまうため、干渉を抑えるには、中継ギヤG32または検知ギヤG33の径を大きくする必要がある。これに対し、本実施形態では、各ギヤG31~G33に対して、一方側にロータリエンコーダREを配置し、他方側にトルクリミッタTLを配置したので、中継ギヤG32または検知ギヤG33の径を大きくする必要がなく、ギヤ群G30の小型化を図ることが可能となっている。
【0051】
図5に示すように、供給軸22の他端に嵌合される第2フランジ26は、供給リール21とともに回転する回転部材の一例であり、嵌合部26Aと、嵌合部26Aよりも大径となるフランジ部26Eと、フランジ部26Eよりも小径となる円筒状の壁26Bとを一体に有している。嵌合部26Aは、供給軸22に嵌合する部位であり、フランジ部26Eの一方の面から突出している。フランジ部26Eは、多層フィルムFの幅方向の端部の位置を規制する部位であり、幅方向において多層フィルムFの幅方向の端部と対向する位置に配置されている。
【0052】
円筒状の壁26Bは、その外周面から突出する複数の突起26Cを有している。また、円筒状の壁26Bの内側には、当該壁26Bよりも小径となる軸部26Dが設けられている。言い換えると、第2フランジ26は、軸方向外側に向けて開口する凹部26Fを有しており、凹部26F内に軸部26Dが設けられている。軸部26Dは、フランジ部26Eの中心部から軸方向外側に突出している。軸部26Dは、供給リールケース23を構成するサイドカバー25に回転可能に支持されている。
【0053】
供給リールケース23は、略円筒状に形成されるケース本体24(図3(b)参照)と、ケース本体24の一端にネジSCで固定されるサイドカバー25とを備えている。
【0054】
サイドカバー25は、供給リール21の軸線方向外側から第2フランジ26を覆うカバーであり、円板状のカバー本体25Aと、カバー本体25Aの外周部から供給リール21に向けて突出する外周壁25Bとを有している。
【0055】
供給リール21の他端側には、供給リール21の他端部に負荷を付与するための負荷付与機構200と、供給リール21の回転を規制するためのレバー27とが設けられている。つまり、供給リールケース23の一端側には、前述したギヤ機構GMの一部が収容され、他端側には、負荷付与機構200が収容されている。これにより、供給リール21の両端に負荷を付与することが可能となっている。
【0056】
負荷付与機構200は、第2フランジ26とサイドカバー25との間に配置されている。負荷付与機構200は、摩擦部材の一例としての摩擦パッド210と、付勢部材の一例としての押しバネ220と、規制部材230とを備えている。
【0057】
摩擦パッド210は、供給リール21の供給軸22の他端部に嵌合により固定されている第2フランジ26に接触することで供給リール21に摩擦力を付与する部材であり、供給リール21の他端に設けられている。摩擦パッド210は、略円板状に形成されたベース部211と、ベース部211の外周端からサイドカバー25に向けて突出する外周壁212とを備えている。図3(b)に示すように、ベース部211の中心部には、第2フランジ26の軸部26Dを挿通させるための孔213が形成されている。孔213の周囲には、ベース部211からサイドカバー25に向けて突出する内周壁214が形成されている。内周壁214のベース部211からの突出量は、外周壁212のベース部211からの突出量よりも小さくなっている。
【0058】
摩擦パッド210は、第2フランジ26の凹部26F内に収容されている。言い換えると、摩擦パッド210は、第2フランジ26の円筒状の壁26Bに囲われている。
【0059】
なお、摩擦パッド210および第2フランジ26は、これらの間で適切な摩擦力が生じるような材料でそれぞれ形成されている。例えば、第2フランジ26の材料は、POM(ポリオキシメチレン)とすることができ、摩擦パッド210の材料は、フェルトとすることができる。
【0060】
押しバネ220は、圧縮コイルバネであり、摩擦パッド210を第2フランジ26に付勢している。これにより、摩擦パッド210は、供給リール21の他端部に対して供給リール21の軸線方向に押し付けられている。
【0061】
押しバネ220は、摩擦パッド210とサイドカバー25との間に配置されている。詳しくは、押しバネ220は、自然長よりも圧縮された状態で、摩擦パッド210と規制部材230との間に配置されている。押しバネ220の付勢力は、ギヤ機構GMによって供給リール21の一端に加わる負荷と、負荷付与機構200によって供給リール21の他端に加わる負荷とが略等しくなるような付勢力に設定されている。
【0062】
規制部材230は、供給リール21の径方向において摩擦パッド210が移動するのを規制する部材であり、サイドカバー25に固定されている。図3および図5に示すように、規制部材230は、環状に形成されるベース部231と、ベース部231の内周端から第2フランジ26に向けて突出する内周壁232と、ベース部231の外周端から第2フランジ26に向けて突出する外周壁233とを備えている。規制部材230の外周壁233は、摩擦パッド210の外周壁212の外周面を支持し、内周壁232は、摩擦パッド210の内周壁214の内周面を支持している。また、ベース部231のサイドカバー25と対向する面には、サイドカバー25に形成された2つの嵌合孔H1に嵌合する2つの嵌合突起234が形成されている。
【0063】
図5に戻って、レバー27は、第1アーム27Aと、第2アーム27Bと、第1アーム27Aと第2アーム27Bの間に設けられる軸部27Cと、第1アーム27Aのサイドカバー25側の面に設けられた係合突起27Dとを有している。レバー27は、第2フランジ26の複数の突起26Cと対向する位置に配置され、突起26Cと係合可能となっている。
【0064】
レバー27の軸部27Cは、円筒状に形成されている。図6に示すように、円筒状の軸部27Cは、サイドカバー25のカバー本体25Aに形成された支持突起25Dによって回動可能に支持されている。
【0065】
レバー27は、第2アーム27Bが第2フランジ26の突起26Cと係合する規制位置(図6の位置)と、第2アーム27Bが突起26Cから離間する非規制位置(図7の位置)との間で移動可能となっている。レバー27が規制位置にあるとき、供給リール21の回転は規制され、レバー27が非規制位置にあるとき、供給リール21の回転は許容される。
【0066】
レバー27の第2アーム27Bは、トーションばね28によって突起26Cに付勢されている。トーションばね28のコイル状の部分は、支持突起25Dで支持されている。トーションばね28の一端は、サイドカバー25のカバー本体25Aに形成された係合突起25Eに係合され、トーションばね28の他端は、第2アーム27Bの係合突起27Dに係合されている。
【0067】
図6に示すように、サイドカバー25の外周壁25Bには、後述する接離機構70の凸部72をサイドカバー25内に進入させるための開口25Cが形成されている。レバー27の第1アーム27Aは、第2アーム27Bよりも開口25Cの近くに配置されている。
【0068】
接離機構70は、本体筐体2に設けられており、加熱ローラ61の軸線方向の両端部を回転可能に支持する一対の支持プレート71(一方のみ図示する)と、支持プレート71を移動させる図示せぬ移動機構とを備えている。加熱ローラ61は、接離機構70によって、加圧ローラ51から離間した離間位置と、加圧ローラ51に対して押圧される押圧位置とに移動可能となっている。
【0069】
支持プレート71は、供給リール21と対向する側面71Aに凸部72が形成されている。支持プレート71と凸部72は、耐熱樹脂により一体に形成される。
【0070】
凸部72は、加熱ローラ61を離間位置から押圧位置に向けて移動すべく、支持プレート71を上昇させる際に、サイドカバー25の開口25Cを通して供給リールケース23内に進入し、レバー27の第1アーム27Aと係合可能となっている。
【0071】
接離機構70は、図1に示す制御部100によって制御される。シートSに箔転写を実行しない非転写時において、加熱ローラ61は、図6に示す離間位置に位置している。制御部100は、箔転写を実行するための転写指令を受けると、接離機構70を駆動して、加熱ローラ61を離間位置から図7に示す押圧位置に移動させるように構成されている。
【0072】
これにより、非転写時においては、レバー27によって供給リール21の回転が規制されるので、非転写時においてユーザが多層フィルムFに触っても、供給リール21から多層フィルムFが誤って引き出されることを抑制することが可能となっている。また、転写指令を受けた制御部100が接離機構70を駆動して、加熱ローラ61が離間位置から押圧位置に向けて移動すると、凸部72がレバー27を押圧して、レバー27が規制位置から非規制位置に回動するので、転写時において、供給リール21の回転が許容され、箔転写を良好に行うことができる。
【0073】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
転写時において巻取リール31を駆動すると、供給リール21に巻回されている多層フィルムFが巻取リール31によって巻き取られることにより、供給リール21が回転する。この際、供給リール21の一端には、ギヤ機構GMから負荷が付与され、他端には、負荷付与機構200から負荷が付与される。これにより、例えば供給リールの一端にギヤ機構を設け、他端に負荷付与機構(摩擦部材)を設けない構成と比べ、多層フィルムFの幅方向における一端と他端にかかる張力の差を小さくすることができる。
【0074】
押しバネ220により摩擦パッド210を第2フランジ26に押し付けるので、適切な摩擦力を発生させることができる。
【0075】
摩擦パッド210を第2フランジ26の凹部26F内に収容することで、例えば第2フランジに凹部を設けない構成と比べ、摩擦パッド210等を軸線方向内側に配置することができるので、フィルムカートリッジFC、ひいては箔転写装置1を軸線方向に小型化することができる。
【0076】
供給リール21の回転を規制するための突起26Cを第2フランジ26に設けることで、第2フランジ26に、供給リール21の回転を規制する機能と摩擦パッド210との間で摩擦力を発生させる機能の2つの機能を持たせることができる。
【0077】
ギヤ機構GMの一部を供給リールケース23に設け、ギヤ機構GMの他部を本体筐体2に設けたので、例えばギヤ機構のすべてを供給リールケースに設ける構造と比べ、フィルムカートリッジFCの軽量化を図ることができる。
【0078】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0079】
前記実施形態では、押しバネ220として、圧縮コイルバネを例示したが、本発明はこれに限定されず、押しバネは、例えば、板バネや線バネなどであってもよい。また、付勢部材は、押しバネに限定されず、引きバネなどであってもよい。
【0080】
前記実施形態では、摩擦部材として摩擦パッド210を例示したが、本発明はこれに限定されず、摩擦部材は、例えばバネであってもよい。具体的には、例えば、図8に示すように、前記実施形態の構造から摩擦パッド210を取り除いた構造としてもよい。つまり、押しバネ220を、第2フランジ26に直接接触させることで、摩擦部材として利用してもよい。
【0081】
前記実施形態では、規制部材として、ベース部231、外周壁233および内周壁232を有する規制部材230を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前記実施形態に係る規制部材230から外周壁233または内周壁232を取り除いた構造の規制部材を採用してもよい。また、前記実施形態では、規制部材230をサイドカバー25に固定したが、本発明はこれに限定されず、例えば、規制部材は、回転部材に固定してもよい。
【0082】
前記実施形態では、多層フィルムFを3層で構成したが、本発明はこれに限定されず、多層フィルムは、4層以上で構成されてもよい。
【0083】
前記実施形態では、回転部材として第2フランジ26を例示したが、本発明はこれに限定されず、回転部材は、供給リールとともに回転する部材であればどのような部材であってもよい。
【0084】
シートSは、例えば、厚紙、はがき、薄紙などの用紙であってもよいし、OHPシートであってもよい。
【0085】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 箔転写装置
21 供給リール
210 摩擦パッド
F 多層フィルム
GM ギヤ機構
S シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8