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特許7172105配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法
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  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図1
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  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図12
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  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図14
  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図15
  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図16
  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図17
  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図18
  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図19
  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図20
  • 特許-配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法 図21
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】配線基板、配線基板を有する半導体装置、および半導体装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20221109BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20221109BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H01L23/12 501B
H05K3/46 B
H05K3/46 N
H05K3/28 A
H01L23/14 R
H01L23/12 N
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2018074450
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019186352
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】工藤 寛
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/026002(WO,A1)
【文献】特開2017-059779(JP,A)
【文献】特開2003-101244(JP,A)
【文献】特開2011-216771(JP,A)
【文献】特開平05-218015(JP,A)
【文献】特開2009-049153(JP,A)
【文献】特開2002-185146(JP,A)
【文献】特開2017-157666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0040548(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104779219(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H05K 3/46
H05K 3/28
H01L 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに電気的に接続された第1から第nの配線、
前記第1から第nの配線を埋め込む絶縁膜、
前記絶縁膜の上に位置し、前記絶縁膜と接し、少なくとも窒化ケイ素と酸化ケイ素のいずれか一つを含む第1の保護膜、および
前記第1の保護膜の上に位置し、前記第nの配線と電気的に接続された接続パッドを有し、
前記第1から第nの配線は、前記第1から第nの配線から選択される第(k+1)の配線が第kの配線上に位置するように積層され、
前記第1の保護膜は、
窒化ケイ素を含む第1の無機膜、
前記第1の無機膜上の酸化ケイ素を含む第2の無機膜、および
前記第2の無機膜上の窒化ケイ素を含む第3の無機膜を有し、
前記第2の無機膜の厚さは、前記第nの配線が前記絶縁膜から露出する部分の厚さよりも大きく、
は1よりも大きい自然数であり、kはnより小さい自然数である配線基板。
【請求項2】
前記第1から第nの配線はそれぞれ銅を含む、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記絶縁膜は、1×10-3以上1×10-2以下の誘電正接を有する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第3の無機膜の厚さは、前記第1の無機膜の厚さよりも大きく、前記第2の無機膜の厚さよりも小さい、請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第1の保護膜は、前記第1から第nの配線上に位置する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
前記第nの配線は、前記第1の保護膜上に位置する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
前記第1の保護膜と前記第nの配線上に、第2の絶縁膜をさらに有する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
少なくとも窒化ケイ素と酸化ケイ素のいずれか一つを含む第2の保護膜を前記絶縁膜の下にさらに有する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項9】
前記第2の保護膜は、
窒化ケイ素を含む第4の無機膜、
前記第4の無機膜の下の酸化ケイ素を含む第5の無機膜、および
前記第5の無機膜の下の窒化ケイ素を含む第6の無機膜を有する、請求項8に記載の配線基板。
【請求項10】
前記第6の無機膜の厚さは、前記第4の無機膜の厚さよりも大きく、前記第5の無機膜の厚さよりも小さい、請求項9に記載の配線基板。
【請求項11】
前記第2の保護膜は、前記第1の配線下に位置する、請求項8に記載の配線基板。
【請求項12】
前記第2の保護膜の少なくとも一部は、前記第1の配線と前記第2の配線に挟まれる、請求項8に記載の配線基板。
【請求項13】
前記絶縁膜、および前記第2の保護膜の下に、第3の絶縁膜をさらに有する、請求項8に記載の配線基板。
【請求項14】
前記第1の保護膜は、前記絶縁膜の側面を覆う、請求項1に記載の配線基板。
【請求項15】
前記第1から第(n-1)の配線の少なくとも一つの上に位置し、前記少なくとも一つの配線と接する第3の保護膜をさらに有する、請求項1に記載の配線基板。
【請求項16】
前記第3の保護膜は、
窒化ケイ素を含む第7の無機膜、および
前記第7の無機膜上の酸化ケイ素を含む第8の無機膜を有する、請求項15に記載の配線基板。
【請求項17】
請求項1に記載の配線基板、および
前記第nの配線と電気的に接続される半導体チップを有する半導体装置。
【請求項18】
前記第1の配線に電気的に接続されるメイン基板をさらに有する、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記半導体装置は、高周波装置として動作するように構成される、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項20】
基板上に配線を形成すること、前記配線上に絶縁膜を形成すること、および前記絶縁膜に前記配線を露出する開口を形成することを順次繰り返すことにより、前記絶縁膜に埋め込まれ、互いに電気的に接続される第1から第nの配線を順次形成すること、
前記絶縁膜上に第1の保護膜を形成すること、
前記第nの配線上に、前記第nの配線と電気的に接続される接続パッドを形成すること
、および
前記基板を前記第1の配線から分離することを含み、
前記第1の保護膜は、
窒化ケイ素を含む第1の無機膜、
前記第1の無機膜上の酸化ケイ素を含む第2の無機膜、および
前記第2の無機膜上の窒化ケイ素を含む第3の無機膜を有し、
前記第2の無機膜の厚さは、前記第nの配線が前記絶縁膜から露出する部分の厚さよりも大きい、半導体装置を作製する方法。
【請求項21】
前記第1から第nの配線は、銅の電解めっきにより形成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記絶縁膜は、1×10-3以上1×10-2以下の誘電正接を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の保護膜の形成は、
前記第1の無機膜をプラズマCVD法によって形成すること、
前記第1の無機膜上に、前記第2の無機膜をプラズマCVD法によって形成すること、
前記第2の無機膜上に、前記第3の無機膜をプラズマCVD法によって形成することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の保護膜は、前記第3の無機膜の厚さが前記第1の無機膜よりも大きく、前記第2の無機膜の厚さよりも小さくなるように形成される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の保護膜は、前記第nの配線上に形成される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の保護膜は、前記第(n-1)の配線と前記第nの配線の間に位置するように形成される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の保護膜と前記第nの配線上に、第2の絶縁膜を形成することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記絶縁膜の形成前に、前記基板上に第2の保護膜を形成することをさらに含み、
前記第2の保護膜は、少なくとも窒化ケイ素と酸化ケイ素のいずれか一つを含む請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の保護膜の形成は、
窒化ケイ素を含む第4の無機膜をプラズマCVD法によって形成すること、
前記第4の無機膜上に、酸化ケイ素を含む第5の無機膜をプラズマCVD法によって形成すること、
前記第5の無機膜上に、窒化ケイ素を含む第6の無機膜をプラズマCVD法によって形成することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の保護膜は、前記第6の無機膜の厚さが前記第4の無機膜よりも大きく、前記第5の無機膜の厚さよりも小さくなるように形成される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の保護膜は、前記第1の配線を形成した後、前記第2の配線を形成する前に形成される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の保護膜は、前記第1の配線の形成前に形成される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記基板の分離後、第3の絶縁膜を、前記第2の保護膜の下に形成することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の保護膜は、前記絶縁膜の側面を覆うように形成される、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
前記第1から第(n-1)の配線の少なくとも一つの上に、前記少なくとも一つの配線と接する第3の保護膜を形成することをさらに含み、
前記第3の保護膜は、少なくとも窒化ケイ素と酸化ケイ素のいずれか一つを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
前記第3の保護膜の形成は、
窒化ケイ素を含む第7の無機膜をプラズマCVD法によって形成すること、
前記第7の無機膜上に、酸化ケイ素を含む第8の無機膜をプラズマCVD法によって形成することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記基板の分離前に、前記第nの配線に半導体チップを接続することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の配線にメイン基板を接続することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インターポーザとして利用可能な配線基板、配線基板を有する半導体装置、ならびにこれらの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンなどの半導体基板を用いて作製された半導体チップは、ほぼすべての電子機器に搭載され、電子機器に様々な機能を提供している。半導体チップには、動作に必要な電源や信号を入力するための端子が設けられ、プリント配線基板などのメイン基板上に実装される。半導体チップの実装方法の一つとして、ファンアウト型ウェハレベルパッケージング(FOWLP)と呼ばれる方法が知られている。この実装方法では、半導体チップよりも大きな面積にわたって形成される配線層が設けられた配線基板(以下、インターポーザとも記す)が用いられ、半導体チップはインターポーザを介してメイン基板に搭載される。例えば特許文献1には、FOWLPが適用された半導体装置とその作製方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-085028号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】チエン-フ ツェン(Chien-Fu Tseng)、チュン-シ リュウ(Chung-Shi Liu)、チヒ ウー(Chi-Hsi Wu)、ダグラス ユー(Douglas Yu)、InFO(ウエハーレベルの集積化されたファン-アウト)技術(InFO(Wafer Level Integrated Fan-Out) Technology)、2016 IEEE 第66回電子コンポーネントと技術会議(2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference)、アメリカ合衆国、2016年6月、pp1-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の課題の一つは、FOWLPに適用可能な配線基板、およびこれを含む半導体装置とその作製方法を提供することである。例えば本開示の課題の一つは、高速通信において利用されるような、高い動作周波数が要求される半導体装置にも適用可能な配線基板、配線基板を有する半導体装置、およびこれらの作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態の一つは、配線基板である。この配線基板は、互いに電気的に接続された第1から第nの配線、第1から第nの配線を埋め込む絶縁膜、絶縁膜の上に位置し、絶縁膜と接し、少なくとも窒化ケイ素と酸化ケイ素のいずれか一つを含む第1の保護膜、および第1の保護膜の上に位置し、第nの配線と電気的に接続された接続パッドを有する。第1から第nの配線は、第1から第nの配線から選択される第(k+1)の配線が第kの配線上に位置するように積層される。nは1よりも大きい自然数であり、kはnより小さい自然数である。
【0007】
本開示の実施形態の一つは、半導体装置を作製する方法である。この方法は、基板上に配線を形成すること、配線上に絶縁膜を形成すること、および絶縁膜に配線を露出する開口を形成することを順次繰り返すことにより、絶縁膜に埋め込まれ、互いに電気的に接続される第1から第nの配線を順次形成すること、絶縁膜上に第1の保護膜を形成すること、第nの配線上に、第nの配線を露出する開口を介して第nの配線と電気的に接続される接続パッドを形成すること、および基板を第1の配線から分離することを含む。第1の保護膜は、少なくとも窒化ケイ素と酸化ケイ素のいずれか一つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的上面図と底面図。
図2】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図3】実施形態の一つに係る配線基板の配線の模式的上面図。
図4】実施形態の一つに係る配線基板の配線の模式的上面図。
図5】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図6】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図7】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図8】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図9】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図10】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図11】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図12】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図13】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図14】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
図15】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の作製方法を示す模式的断面図。
図16】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の作製方法を示す模式的断面図。
図17】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の作製方法を示す模式的断面図。
図18】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の作製方法を示す模式的断面図。
図19】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の作製方法を示す模式的断面図。
図20】実施形態の一つに係る配線基板、および半導体装置の作製方法を示す模式的断面図。
図21】実施例で用いた配線基板、および半導体装置の模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本開示は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省くことがある。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0012】
本明細書および請求項において、「ある構造体が他の構造体から露出するという」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。
【0013】
本明細書と図面において、複数の構成要素をそれぞれ区別して指す場合、符号の後にハイフンと自然数を用いて表記する。複数の構成要素の各々を区別せずに全体、あるいはそのうちの任意に選択される構成要素を表記する場合には、符号のみを用いる。
【0014】
(第1実施形態)
1.基本構造
本開示の実施形態の一つに係る配線基板110、および配線基板110を有する半導体装置100の模式的上面図と底面図をそれぞれ図1(A)、図1(B)に、模式的断面図を図2(A)に示す。図2(A)に示すように、半導体装置100は、配線基板110、および配線基板110と電気的に接続される半導体チップ200を備える。任意の構成として、半導体装置100はメイン基板140を備えてもよい。メイン基板140は接続パッド142を有しており、接続パッド142を介して配線基板110とメイン基板140が電気的に接続される。
【0015】
配線基板110は、互いに積層され、かつ互いに電気的に接続される複数の配線(第1の配線112-1から第nの配線112-n。nは1よりも大きい自然数)112を有する。配線112はそれぞれ、全体、あるいは一部が絶縁膜(ベースフィルムとも呼ばれる)102に内に埋め込まれる。配線112の層数(すなわち、n)に制約はなく、半導体チップ200の端子数やメイン基板140の接続パッド142の数などを考慮して任意に決定することができる。図2(A)ではnが5の例が示されており、配線基板110は複数の配線112として第1から第5の配線(112-1、112-2、112-3、112-4、112-5)を備える。第1の配線112-1は最も下に位置し、第nの配線112-5は最も上に位置する。すなわち、配線112は、第1から第nの配線から選択される第(k+1)の配線が第kの配線上に位置するように積層される(kはnよりも小さい自然数)。また、図2(A)に示すように、配線112は、nが大きくなるほど配置面積が小さくなるよう配置される。すなわち、第kの配線が配置される領域の面積は、第(k+1)の配線が配置される領域の面積よりも大きい。この構造により、メイン基板140との接続のための配線基板110の端子、すなわち第1の配線112-1を半導体チップ200と重ならない位置にも配置することが可能となる。図2(A)に示すように、第(k+1)の配線は、少なくとも一部が第kの配線に近づくほど細くなるように構成されることが好ましい。
【0016】
配線基板110にはさらに、第nの配線112-nと(第1の絶縁膜)絶縁膜102の上に、これらに接する第1の保護膜114が設けられる。第1の保護膜114は一つ、あるいは複数の膜から構成され、少なくとも窒化ケイ素と酸化ケイ素のいずれか一つを含む。第1の保護膜114は、絶縁膜102に外部から水や酸素などの不純物が浸入することを防ぐ機能を有する。
【0017】
第nの配線112-nはその側面の一部と上面が絶縁膜102から露出する。第nの配線112-nの、絶縁膜102よりも上の部分の厚さは0.5μm以上10μm以下、1μm以上5μm以下、あるいは1μm以上3μm以下とすることができる。第nの配線112-nの上面の一部と側面は、第1の保護膜114によって覆われ、上面の他の一部は第1の保護膜114から露出され、第nの配線112-nの上に設けられる接続パッド116と電気的に接続される。配線112と同様、接続パッド116も、少なくとも一部が第nの配線112-nに近づくほど細くなるように構成されることが好ましい。
【0018】
任意の構成であるバンプ202を介し、接続パッド116には半導体チップ200が電気的に接続される。バンプ202を用いない場合には、例えば半導体チップ200の端子と接続パッド116を固相接合によって接続してもよい。半導体チップ200は任意の構成や機能を有することができ、例えば中央演算ユニット(CPU)や特定用途向け集積回路(ASIC)、グラフィック処理ユニット(GPU)、フィールド-プログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのロジックLSI、DRAMやフラッシュメモリなどのメモリなどから選択される。図1(A)、図2(A)に示した例では、ロジックLSI200-1とメモリ200-2が配線基板110上に配置される例が示されている。これらの半導体チップ200は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂などの樹脂(モールド樹脂)204によって封止される。
【0019】
一方、第1の配線112-1はその底面が絶縁膜102から露出し、底面はバンプ120と電気的に接続される。バンプ120を介して配線基板110をメイン基板140の接続パッド142と接続することができ、これにより、半導体チップ200をメイン基板140上に実装することができる。メイン基板140としては公知の印刷配線基板(プリント基板)などを用いることができる。
【0020】
図1(B)や図2(A)から理解されるように、第1の配線112-1が配置される面積は半導体チップ200が占有する面積よりも大きい。このため、半導体チップ200の外側まで端子を広げることができ、メイン基板140に設けられる多数の接続パッド142との接続が可能となるだけでなく、半導体チップ200が微細化されてもメイン基板140との電気的接続を容易に行うことができる。
【0021】
以下、個々の構成に関して説明する。
【0022】
2.絶縁膜
絶縁膜102は有機化合物を含む。用いられる有機化合物は誘電率と誘電正接が低いことが好ましく、例えば誘電率が2.0以上4.0以下であり、誘電正接が1×10-4以上1×10-2以下、あるいは1×10-3以上1×10-2以下の有機化合物を絶縁膜102として使用することができる。このような有機化合物は典型的にはポリイミドを基本骨格とする高分子(以下、単にポリイミドと記す)であり、ポリイミドは鎖状でも良く、分子間で架橋していてもよい。絶縁膜102は可撓性を有してもよい。
【0023】
3.配線
図2(B)に配線112の一部の断面模式図を示す。後述するように、配線112は電解めっき法を用いて形成することができる。この場合、図2(B)に示すように、各配線112はシード層136、およびシード層136上のめっき層137を有する。シード層136はチタン、ニッケル、クロム、銅、金などの金属、あるいはこれらの合金などを含み、典型的には銅を含む。めっき層137はチタン、アルミニウム、銅、ニッケル、タングステン、モリブデン、金、銀、鉄、クロムなどの金属やこれらの合金を含むことができ、典型的には銅を含む。図示していないが、それぞれのシード層136の下に、さらにバリア層を設けてもよい。バリア層に含まれる材料は、チタンやタンタル、モリブデン、タングステンなどの金属やその合金、あるいはこれらの窒化物から選択され、シード層136やめっき層137に含まれる金属よりも高い融点を有する導電性材料であることが好ましい。バリア層を設けることで、配線112に含まれる金属が絶縁膜102へ拡散することを防ぐことができる。
【0024】
配線112の平面形状には制約が無く、要求される機能に基づいて決定される。例えば配線112は、図3(A)に示すように、主として一つの方向に延伸するように設けることができる。この場合、配線112の幅Wは10μm以上1000μm以下の範囲で選択することができる。あるいは図3(B)に示すように、配線112はメッシュ状の形状を有してもよい。この場合、幅W(すなわち、メッシュ形状に設けられる隣接する開口間の距離)は5μm以上500μm以下の範囲で選択することができる。あるいは図4に示すように、配線112は、1000μmよりも大きく、かつ7cm以下の範囲から選択される幅Wを有する矩形でもよい。この場合、配線112は、配線基板110の平面形状と同一、あるいはほぼ同一の形状を有してもよい。
【0025】
4.保護膜
上述したように、第1の保護膜114は窒化ケイ素と酸化ケイ素のいずれか一つを含む。第1の保護膜114は、プラズマ存在下、化学気相堆積法(プラズマCVD法)によって形成することが好ましい。これにより、緻密な第1の保護膜114を絶縁膜102上に形成することができ、不純物に対して高いブロッキング性を付与することができる。
【0026】
5.変形例
図5に示すように、配線基板110は、第1の保護膜114だけでなく、第2の保護膜118を絶縁膜102の下に設けてもよい。第2の保護膜118も窒化ケイ素と酸化ケイ素のいずれか一つを含み、プラズマCVD法によって形成することが好ましい。この場合、第1の配線112-1の底面の一部と絶縁膜102の下面が第2の保護膜118と接し、第1の配線112-1の底面の他の一部が第2の保護膜118から露出し、バンプ120と電気的に接続される。
【0027】
第nの配線112-nと第1の保護膜114との上下関係に制約は無い。例えば第(n-1)の配線112-(n-1)と第nの配線112-nの断面図である図6(A)に示すように、第nの配線112-nを第1の保護膜114の上に、第1の保護膜114に接するように設けてもよい。この場合、第1の保護膜114は、第(n-1)の配線112-(n-1)と第nの配線112-nの間に位置する。第1の保護膜114は、絶縁膜102に設けられ、第(n-1)の配線112-(n-1)の上面を露出する開口の側壁を覆ってもよく(図6(A))、あるいは図6(B)に示すように、側壁は第nの配線112-nと接してもよい。あるいは図6(C)に示すように、第1の保護膜114の側面が絶縁膜102上において第nの配線112-nと接するよう、第1の保護膜114と第nの配線112-nを構成してもよい。
【0028】
配線112に用いられる銅などの金属の熱膨張率は、第1の保護膜114に含まれる材料のそれと比較して大きい。例えば銅の熱膨張率は16ppm以上であり、窒化ケイ素や酸化ケイ素の熱膨張率は3ppm、あるいはそれ以下である。このため、図5に示した構造、すなわち、第nの配線112-n上に第1の保護膜114が設けられる場合、第1の保護膜114が第nの配線112-nと接し、かつ、屈曲した部分(例えば図5における領域114a)においてクラックが発生しやすい。しかしながら図6(A)から図6(C)に示した構造を採用することで、第nの保護膜の熱膨張による第1の保護膜114に対するダメージが軽減されるため、クラックの発生を抑制することができる。
【0029】
あるいは図7(A)に示すように、第1の保護膜114上に第2の絶縁膜104を設けてもよい。第2の絶縁膜104は絶縁膜102で使用可能な材料を含むことができる。第2の絶縁膜104内の不純物濃度は絶縁膜102のそれよりも高くてもよく、このため、第2の絶縁膜104の誘電率や誘電正接は絶縁膜102のそれらよりも高くてもよい。第2の絶縁膜104には第nの配線112-nを露出する開口が設けられ、この開口において配線基板110と接続パッド116、バンプ202、あるいは半導体チップ200との電気的接続が行われる。また、図7(B)に示すように、第1の保護膜114の側面がこの開口の側壁を形成してもよい。すなわち、第2の絶縁膜104の開口の側壁と第1の保護膜114の側面は同一平面上に位置することができる。このような構造を用いることで、開口においてバンプ202を安定的に保持することができるため、接続パッド116を用いなくても半導体チップ200との安定な電気的接続が可能となり、半導体装置100の信頼性を向上することができる。
【0030】
なお、図7(C)に示すように、第2の絶縁膜104を設けず、第1の保護膜114に傾いた側面を付与することによってバンプ202を安定的に保持することが可能である。
【0031】
同様の構成は第2の保護膜118にも適用することができる。例えば図8(A)に示すように、第2の保護膜118は、第1の配線112-1の上に、第1の配線112-1と接するように設けてもよい。この場合、第2の保護膜118は第1の配線112-1と第2の配線112-2の間に位置する。第2の保護膜118には第1の配線112-1の上面を露出する開口が設けられ、この開口において第1の配線112-1と第2の配線112-2が電気的に接続される。さらに、図8(B)に示すように、第1の配線112-1、および絶縁膜102の下に第3の絶縁膜106を設けてもよい。第3の絶縁膜106にも第1の配線112-1の下面を露出する開口が設けられる。第2の絶縁膜104と同様、第3の絶縁膜106も絶縁膜102で使用可能な材料を含むことができ、その誘電率や誘電正接は絶縁膜102のそれらよりも高くてもよい。
【0032】
このような構造では、図5に示した構造と比較し、第1の配線112-1と第2の保護膜118との界面の面積を増大することができるため、この界面を経由する水の侵入経路を長くすることができる。このため、外部から侵入する水による絶縁膜102の誘電率と誘電正接の増大を防止することができる。
【0033】
あるいは図9(A)に示すように、第3の絶縁膜106は、第1の配線112-1と絶縁膜102の下に設けてもよい。第2の保護膜118は第3の絶縁膜106に設けられる開口において露出してもよく、あるいは図9(B)に示すように、第3の絶縁膜106の開口の側壁と第2の保護膜118の側面が同一平面上に位置するよう、第3の絶縁膜106と第2の保護膜118を構成してもよい。図7(A)から図7(C)に示した構造と同様、このような構造を適用することでバンプ120を安定的に保持することができ、メイン基板140との安定な電気的接続が可能となる。その結果、、半導体装置100の信頼性を向上することができる。
【0034】
第1の保護膜114や第2の保護膜118は多層構造を有してもよい。例えば図10(A)に示すように、第1の保護膜114は第1の無機膜114-1、第1の無機膜114-1の上に位置し、第1の無機膜114-1と接する第2の無機膜114-2、および第2の無機膜114-2の上に位置し、第2の無機膜114-2と接する第3の無機膜114-3を含む三層構造を有することができる。
【0035】
第2の無機膜114-2の誘電率は、第1の無機膜114-1や第3の無機膜114-3のそれよりも小さいことが好ましい。より具体的には、第1の無機膜114-1と第3の無機膜114-3は窒化ケイ素、あるいは炭化ケイ素(シリコンカーバイド)を含む。すなわち、第1の無機膜114-1と第3の無機膜114-3は、ケイ素と窒素、あるいはケイ素と炭素を主な構成元素として含む。一方、第2の無機膜114-2は酸化ケイ素あるいは酸化窒化ケイ素を含む。すなわち、第2の無機膜114-2はケイ素と酸素を構成元素として含み、さらに窒素を含有してもよい。窒素を含む場合、その組成は酸素の組成よりも小さい。これらの第1の無機膜114-1、第2の無機膜114-2、第3の無機膜114-3は、プラズマCVD法によって形成される。
【0036】
第1の無機膜114-1の厚さは、第2の無機膜114-2や第3の無機膜114-3の厚さよりも小さくてもよく、例えば0.05μm以上0.3μm以下、典型的には0.2μmとすることができる。第2の無機膜114-2の厚さは、第1の無機膜114-1や第3の無機膜114-3の厚さよりも大きてもよく、0.5μm以上10μm以下、あるいは1μm以上5μm以下とすることができる。第3の無機膜114-3の厚さは0.2μm以上1μm以下、あるいは0.3μm以上0.7μm以下、典型的には0.5μmとすることができる。すなわち、第1の無機膜114-1、第2の無機膜114-2、第3の無機膜114-3の厚さをそれぞれT1、T2、T3とすると、以下の関係が成立するよう、第1の保護膜114を構成することができる。
1<T3<T2
【0037】
図10(B)に、第nの配線112―n、および三層構造を有する第1の保護膜114の模式的断面図を示す。第2の無機膜114-2の厚さは、第nの配線112-nが絶縁膜102から露出する部分の厚さよりも小さくてもよく、あるいは図10(B)に示すように、当該部分の厚さよりも大きくてもよい。この場合、複数の第nの配線112-nが近接しても、隣接する第nの配線112-n間において、第3の無機膜114-3の底面は第nの配線112-nの上面よりも上に位置する。すなわち、断面において第3の無機膜114-3は隣接する第nの配線112-nによって挟持されない。このため、誘電率の比較的高い第3の無機膜114-3と隣接する第nの配線112-nによって容量(寄生容量)が形成されることを防ぐことができる。また、第1の無機膜114-1の厚さを第2の無機膜114-2の厚さより小さくすることで、第1の無機膜114-1と隣接する第nの配線112-nによって大きな容量が形成されることも同時に防ぐことができる。その結果、寄生容量の発生とこれに伴う信号伝送速度の低下を防止することができる。
【0038】
このような三層構造を第2の保護膜118に適用することも可能である。具体的には図11に示すように、第2の保護膜118は、絶縁膜102の下に位置し、絶縁膜102と接する第4の無機膜118-1、第4の無機膜118-1の下に位置し、第4の無機膜118-1と接する第5の無機膜118-2、および第5の無機膜118-2の下に位置し、第5の無機膜118-2と接する第6の無機膜118-3を含む三層構造を有することができる。第4の無機膜118-1、第5の無機膜118-2、第6の無機膜118-3はそれぞれ第1の無機膜114-1、第2の無機膜114-2、第3の無機膜114-3と対応し、それぞれの組成や厚さの関係、形成方法も第1の無機膜114-1、第2の無機膜114-2、第3の無機膜114-3のそれらと同様である。
【0039】
図12に示すように、第1の保護膜114は絶縁膜102の側面を覆うように形成してもよい。この場合、第2の保護膜118は第1の保護膜114と接するように設けることができる。このような構造を採用することにより、絶縁膜102への不純物の侵入をより効果的に防止することができる。
【0040】
配線基板110はさらに、図13に示すように、第1から第(n-1)の配線112から選択される少なくとも一つの配線112上に位置し、この選択された配線112と接する第3の保護膜122を有してもよい。第3の保護膜122は絶縁膜102内に存在する。第3の保護膜122も単層構造、積層構造、いずれの構造を有していてもよい。積層構造を有する場合、第3の保護膜122は、例えば窒化ケイ素を含み、上記選択された配線112と接する第7の無機膜122-1、および第7の無機膜122-1の上に位置し、酸化ケイ素を含む第8の無機膜122-2を有することができる。これらの無機膜122もそれぞれ第1の無機膜114-1、第2の無機膜114-2に対応し、それぞれの組成や厚さの関係、形成方法も第1の無機膜114-1、第2の無機膜114-2のそれらと同様である。図示しないが、第3の保護膜122はさらに、第8の無機膜122-2の上に位置し、第8の無機膜122-2と接し、窒化ケイ素を含む第9の無機膜を有してもよい。
【0041】
第1の保護膜114が絶縁膜102の側面を覆う場合、第1の無機膜114-1が第7の無機膜122-1や第8の無機膜122-2の側面と接するように第1の保護膜114を設けてもよい(図14参照)。
【0042】
このような構造を有する第3の保護膜122を形成することにより、配線112の積層数が増大して絶縁膜102の厚さが増大しても、絶縁膜102に不純物が浸入することを効果的に抑制することができる。
【0043】
図2(A)、図5図10(A)、および図11乃至図14から理解されるように、第1の配線112-1に接続されるバンプ120はメイン基板140に接続され、第1の配線112-1や絶縁膜102とメイン基板140の間にはパッケージ基板などの他の基板が存在しない。このため、本実施形態の配線基板110は、薄型インターポーザ、あるいは可撓性インターポーザとして利用することができ、半導体装置100の薄型化に寄与する。
【0044】
また、配線基板110は、高周波素子などの高い動作周波数が要求される半導体装置のインターポーザとして利用することが可能である。高周波素子に配線基板を用いる場合、信号の伝送損失や遅延を防止するため、配線基板の配線を取り囲む絶縁膜には低い誘電率と誘電正接が求められる。このような性能を満足する材料を用いて絶縁膜(例えば、配線基板110における絶縁膜102)を形成した場合でも、配線基板の形成後、外部から水や酸素、金属イオンなどの不純物が絶縁膜に侵入し、絶縁膜の誘電率や誘電正接が徐々に増大する。その結果、信号の伝送損失や遅延が生じ、インターポーザに実装される半導体チップの特性に大きな影響を及ぼす。
【0045】
しかしながら上述したように、本実施形態の配線基板110では、絶縁膜102と接する第1の保護膜114や第2の保護膜118、あるいは絶縁膜102内において複数の配線112の少なくとも一つを覆う第3の保護膜122などが設けられる。これにより、不純物の侵入に起因する絶縁膜102の誘電率や誘電正接の増大を効果的に抑制することができ、配線基板110に実装される半導体チップの信号の伝送損失や遅延を防止することが可能となる。
【0046】
また、これらの保護膜が上述した三層構造をさらに有する場合、不純物の侵入をより効果的に抑制でき、以下に述べるように、半導体装置100の信頼性を大幅に向上させることができる。第2の無機膜114-2に含まれる酸化ケイ素は比較的親水性が高いため、外部から水などの不純物が侵入すると不純物は第1の無機膜114-1内部へ拡散する。第1の無機膜114-1は親水性が低く、かつ、不純物に対するブロッキング性が高い窒化ケイ素を含有するものの、厚さを小さく形成した場合、不純物が一部透過する場合がある。絶縁膜102内に進入する不純物が浸入すると、水やそれに含まれる酸素や金属イオンなどによって配線112の表面が酸化され、その結果、第3の保護膜122とそれに覆われる配線112間の密着性が低下する。配線112と第3の保護膜122に含まれる第7の無機膜122-1の熱膨張率は大きく異なるため、これらの間に発生する膜応力に起因し、剥離に至る。
【0047】
しかしながら、第1の保護膜114には、第2の無機膜114-2上に、第1の無機膜114-1よりも大きな厚さを有するように、窒化ケイ素を含有する第3の無機膜114-3が設けることができる。このため、第2の無機膜114-2を通して第1の無機膜114-1や絶縁膜102に不純物が浸入する速度を大幅に低下させることができ、配線112と第7の無機膜122-1間の剥離を効果的に防止することができる。このため、剥離に起因する不良の発生を防ぐことが可能となり、その結果、半導体装置100の信頼性を向上させることができる。
【0048】
(第2実施形態)
本実施形態では、図11に示した配線基板110、およびこれを含む半導体装置100の作製方法を述べる。第1実施形態と同様、あるいは類似する構成については説明を割愛することがある。
【0049】
まず、支持基板130上に剥離層132を形成し、その上にさらに接合層134を形成する(図15(A))。支持基板130としてはガラスや石英などを含む基板を用いればよい。剥離層132は、例えばタングステンやモリブデンなどの金属を含む膜をCVD法やスパッタリング法を用いて形成することができる。あるいは、アクリル樹脂やシリコーン樹脂を基本構造とする感光性の有機剥離材料、もしくは機械的な剥離が可能な有機剥離材料を用いて剥離層132を形成してもよい。接合層134は、例えばポリシロキサン系の高分子化合物を用い、スピンコート法やディップコーティング法などを適用して形成することができる。
【0050】
次に、第2の保護膜118を形成する(図15(B))。具体的には、接合層134上に、窒化ケイ素を含む第6の無機膜118-3、酸化ケイ素を含む第5の無機膜118-2、および窒化ケイ素を含む第4の無機膜118-1をプラズマCVD法を用いて順次形成する。上述したように、第4の無機膜118-1、第5の無機膜118-2、第6の無機膜118-3はそれぞれ、第1の無機膜114-1、第2の無機膜114-2、第3の無機膜114-3に対応する。したがって、第6の無機膜118-3の厚さは0.2μm以上1μm以下、あるいは0.3μm以上0.7μm以下、典型的には0.5μmに設定することができる。第5の無機膜118-2の厚さは、0.5μm以上10μm以下、あるいは1μm以上5μm以下に設定することができる。第6の無機膜118-3の厚さは、0.05μm以上0.2μm以下、典型的には0.1μmに設定することができる。
【0051】
次に、スパッタリング法やCVD法、無電解めっき、あるいは蒸着法などを適用してシード層136を第2の保護膜118上に形成する。特にスパッタリング法を適用することで、効率よくシード層136が形成される。図示していないが、シード層136を設ける前に、バリア層を形成してもよい。その後、第1の配線112-1を形成しない領域にレジストマスク138を形成する(図15C))。レジストマスク138は、液体のレジストを塗布、硬化することで形成しても良いが、フィルム状のレジストをシード層136上に貼り付け、その後露光と現像を行うことで形成してもよい。その後、シード層136に給電して電解めっきを行い、レジストマスク138に覆われていないシード層136上に金属膜を成膜し、第1の配線112-1が形成される。その後、レジストマスク138をアッシングなどによって除去し、第1の配線112-1に覆われていないシード層136、およびバリア層をエッチングによって除去する。エッチャントとしては、硫酸などの酸を含むエッチャントを使用することができる。これにより、第1の配線112-1が形成される(図16(A))。
【0052】
引き続き、第1の配線112-1を覆うように、絶縁膜102の一部を形成する。具体的には、第1実施形態で述べたポリイミドを基本骨格とする感光性高分子、あるいはその前駆体の溶液や懸濁液を支持基板130上に塗布し、その後フォトマスクを用いる露光、現像、焼成を行うことで、第1の配線112-1を露出する開口144を有する絶縁膜102の一部を形成する。あるいは上記高分子のフィルムを張り付け、フォトマスクを用いる露光、現像、焼成を行うことで、絶縁膜102の一部を形成してもよい。この段階で形成する絶縁膜102の厚さは0.5μmから5μmの範囲で適宜調整される。図16(B)に示すように、開口144は、順テーパー構造を有するように形成することが好ましい。すなわち、第(k+1)の配線は、少なくとも一部が第kの配線に近づくほど細くなるよう形成することが好ましい。
【0053】
引き続き、第1の配線112-1の形成と同様、バリア層やシード層136を絶縁膜102の開口や上面に形成し、レジストマスクを形成し、その後電解めっき、レジストマスクの除去、およびバリア層やシード層136の部分的な除去により、第2の配線112-2を形成する(図16(C))。このプロセスを繰り返すことで、第2の配線112-2から第nの配線112-nが形成される(図17(A))。なお、明瞭化のため、図16(C)においては第2の配線112-2のシード層136、図17(A)から図20においてはすべてのシード層136は図示していない。
【0054】
次に、第1の保護膜114を形成する(図17(B))。第1の保護膜114は、プラズマCVD法を用い、第1の無機膜114-1、第2の無機膜114-2、第3の無機膜114-3を順次形成することで形成される。その後、プラズマエッチングを利用して第nの配線112-nと重なる開口を第1の保護膜114に設け、第nの配線112-nを露出させる(図18(A))。プラズマエッチングは、例えばCF4やCHF4などのフッ素含アルカンやアルケンを用いて行えばよい。この開口も順テーパー構造を有することが好ましい。
【0055】
その後、第1から第nの配線112の形成と同様の手法を用い、開口を覆うように接続パッド116を形成する(図18(B))。順テーパー構造を有するように開口を形成した場合、接続パッドの一部は第nの配線112-nに近づくほど細い形状となる。
【0056】
この後、はんだなどの導電性材料を含むバンプ202を用いて半導体チップ200を接続パッド116と電気的に接続する。例えばキャピラリフロー法やサーマルコンプレッションボンディング法などを用いて形成されるはんだボールをバンプ202として形成し、これによって半導体チップ200と配線基板110が電気的に接続される。この後、上述した樹脂204を用いて半導体チップ200を封止する(図19)。
【0057】
引き続き、フラッシュランプやレーザなどの光源を用いて支持基板130側から光照射を行い、剥離層132と支持基板130間の界面、あるいは剥離層132と接合層134の界面における接着力を低下させる(図19参照)。その後、物理的な力を用いて支持基板130を剥離する。さらに接合層134をアルカリ性の水溶液などの薬液を用いて溶解し、第2の保護膜118を露出させる。その後第2の保護膜118に対してエッチング加工を行い、第1の配線112-1を露出させるための開口を形成する(図20)。図示しないが、この開口も順テーパー構造を有するように形成してもよい。すなわち、第1の配線112-1に近づくほど開口面積が小さくなるよう、開口を形成してもよい。半導体チップ200と接続パッド116の接続と同様、キャピラリフロー法やサーマルコンプレッションボンディング法などを用いて形成されるはんだボールをバンプ120として用い、メイン基板140上に形成される接続パッド142と第1の配線112-1との電気的接続を行う(図11)。以上の工程により、配線基板150、ならびにこれを含む半導体装置100を作製することができる。
【0058】
通常、FOWLP法では、まず半導体チップを支持基板上に配置し、樹脂によって封止する。その後支持基板を剥離して疑似ウェハを形成する。引き続き、剥離によって露出する半導体チップの端子上に配線を積層することで配線基板を疑似ウェハ上に形成する。しかしながら配線基板を形成するには精密な配線パターニングが必要であるものの、疑似ウェハを用いた場合、パターニング精度は樹脂の特性に大きく左右されるため、必ずしも配線パターニングは容易ではない。
【0059】
これに対して本実施形態で述べた作製方法では、高い平坦性と剛性を有する支持基板130を用いて配線パターニングを行うことができるため、精密な配線パターニングが可能である。このため、本実施形態を適用することにより、配線基板とそれに搭載される半導体チップを含む半導体装置を歩留まり良く製造することが可能となる。さらに第1実施形態で述べたように、得られる半導体装置100は高い信頼性を有するとともに高速動作が可能であるため、高信頼性高周波装置として利用することが可能である。
【実施例
【0060】
本実施例では、本実施形態の配線基板110に対して信頼性試験を行った結果について述べる。図21に、本実施例における実施例1としての配線基板150の断面模式図を示す。配線基板150は、配線112が4層(第1から第4の配線112)積層された点で図13に示した配線基板110と異なる。
【0061】
配線基板150は、第2実施形態で述べた方法により作製した。具体的には、図15(A)に示した接合層134上に、第6の無機膜118-3、第5の無機膜118-2、および第4の無機膜118-1をそれぞれ、0.4μm、0.5μm、0.1μmの厚さで形成した後、チタンを含むバリア層(厚さ0.05μm)、および銅を含むシード層136(厚さ0.2μm)をスパッタリング法を用いて順次形成した。その後、第2実施形態で述べた方法に従い、それぞれ厚さ3μmの第1から第4の配線112を形成した。第1の無機膜114-1、第2の無機膜114-2、および第3の無機膜114-3の厚さはそれぞれ、0.4μm、0.5μm、0.1μmであった。バンプ120はSnAgCuを無電解めっきにより成長させ、その後リフローさせてメイン基板140の接続パッド142との接続を行った。図示しないが、第1の保護膜114を有するものの第2の保護膜118を持たない配線基板、および第2の保護膜118を有するものの第1の保護膜114を持たない配線基板をそれぞれ実施例2、3として作製した。
【0062】
作製した配線基板150を温度130℃、湿度85%の条件下で96時間静置し、その後走査型電子顕微鏡を用いて断面観察を行った。第1の配線112-1から第3の配線112-3は図3(A)、図3(B)、あるいは図4に示すように種々の形状や幅を有するが、表1に示すように、実施例2と実施例3においてそれぞれ第1の配線112-1と第3の配線112-3の表面がわずかに酸化されているものの、形状や幅に依存することなく酸化はほとんど起こらないことが確認された。実施例1では絶縁膜102の誘電損失の変動は確認されず、実施例2、3では、実用上無視できる程度の変動が確認されるにとどまった。また、実施例1から実施例3のいずれにおいても、第2の配線112-2とその上に設けられる第3の保護膜122間の剥がれは観察されなかった。
【0063】
【表1】
【0064】
これに対し、配線基板150と同様の構造を有するものの第1の保護膜114と第2の保護膜118を持たない配線基板(比較例1)を用いた場合、幅や形状にかかわらず、配線112が酸化されていることが確認された。また、絶縁膜102の誘電損失は変動(増加)し、伝送特性の大きな低下が確認された。さらに第2の配線112-2と第3の保護膜122間では、配線112の幅や形状にかかわらず剥離が生じていることが確認された。
【0065】
このように、上述した実施形態を適用することにより、信頼性の高い配線基板を提供できることが確認された。
【0066】
本開示の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本開示の要旨を備えている限り、本開示の範囲に含まれる。
【0067】
また、上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0068】
100:半導体装置、102:絶縁膜、104:第2の絶縁膜、106:第3の絶縁膜、110:配線基板、112:配線、112-1:第1の配線、112-2:第2の配線、112-3:第3の配線、112-4:第4の配線、112-5:第5の配線、112-n:第nの配線、114:第1の保護膜、114-1:第1の無機膜、114-2:第2の無機膜、114-3:第3の無機膜、116:接続パッド、118:第2の保護膜、118-1:第4の無機膜、118-2:第5の無機膜、118-3:第6の無機膜、120:バンプ、122:第3の保護膜、122-1:第7の無機膜、122-2:第8の無機膜、130:支持基板、132:剥離層、134:接合層、136:シード層、137:めっき層、138:レジストマスク、140:メイン基板、142:接続パッド、144:開口、150:配線基板、200:半導体チップ、200-1:ロジックLSI、200-2:メモリ、202:バンプ、204:樹脂
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