(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】積層フィルムの立体成形方法
(51)【国際特許分類】
B31D 5/00 20170101AFI20221109BHJP
B31F 1/07 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B31D5/00
B31F1/07
(21)【出願番号】P 2018092498
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】安海 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】石坂 公一
(72)【発明者】
【氏名】畠 源英
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/081102(WO,A1)
【文献】特開2017-030330(JP,A)
【文献】特開2017-140848(JP,A)
【文献】特開2015-037953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0266222(US,A1)
【文献】特開2000-343603(JP,A)
【文献】特開2001-018996(JP,A)
【文献】特開2014-046655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31D 5/00
B65D 30/00
B65D 33/00
B29C 43/00
B31F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも最内面の柔らかい内面フィルムと外面側の強度の高い外面フィルムとがラミネートされた積層フィルムを、内面フィルム側に位置する成形金型及び外面フィルム側に位置するアンビルを用いて圧縮成形し
、圧縮成形部を外面側に張出させる包装体用積層フィルムの立体成形方法において、
前記内面フィルムがヒートシール性を有するポリオレフィンフィルムであり、前記外面フィルムがナイロンの延伸フィルム又はポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムであり、前記成形金型の表面粗度(Ra)が0.5μm以下であることを特徴とする包装体用積層フィルムの立体成形方法。
【請求項2】
前記アンビルの表面粗度(Ra)が1~5μmである請求項1に記載の包装体用積層フィルムの立体成形方法。
【請求項3】
前記圧縮成形を冷間で行う請求項1または2に記載の包装体用積層フィルムの立体成形方法。
【請求項4】
前記積層フィルムを、該積層フィルムの内面フィルムを構成する樹脂のビカット軟化温度以下の温度に加熱した後、常温乃至前記ビカット軟化点温度以下の温度で圧縮成形を行う請求項1~3の何れかに記載の包装体用積層フィルムの立体成形方法。
【請求項5】
前記積層フィルムに形成される張出加工部の成形高さが0.1mm以上である請求項1~4の何れかに記載の包装体用積層フィルムの立体成形方法。
【請求項6】
前記成形金型及びアンビルが回転ロールから成る請求項1~5の何れかに記載の包装体用積層フィルムの立体成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの立体成形方法に関するものであり、より詳細には、充分に高さのある張出加工部をしわなどの発生なく成形可能であり、外観特性に優れた張出加工部を成形可能な積層フィルムの立体成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体や粉体等の流動性を有する内容物を密封包装し、別の容器に移し替えて使用するための詰め替え用に使用される可撓性の包装体(パウチ)には、包装体を構成する積層フィルムを両外側に張出すように立体成形して注出口等を形成することが行われている。
このような立体成形方法としては、積層フィルムを予熱した後プレス成形し、同時に型内で冷却する方法(特許文献1)や、プラスチックフィルムを加熱した後、冷却しながら成形する方法(特許文献2)が提案されている。
【0003】
上記立体成形方法では、予め2枚の積層フィルムを重ね合せた状態で注出口を成形することはできず、しかもプレス成形に伴う加工伸びによるずれが生じ、このずれを見込んだマージンを設けることから、注出口の大きさに比べて小さな張出部しか成形できないという問題があった。
このような問題を解決するために、本出願人は、少なくとも最内面の柔らかい内面フィルムと外面側の強度の高い外面フィルムとがラミネートされた積層フィルムを冷間で厚み方向に圧縮成形し、当該圧縮成形部を外面側に張り出させるようにしたことを特徴とする積層フィルムの立体成形方法を提案した(特許文献3)。
本出願人による上記立体成形方法においては、加熱や冷却の必要がなく、冷間で立体成形できると共に、積層フィルムを2枚重ね合わせた状態でも両外側や一方側に張出させることができ、連続的に高速で立体成形することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-343603号公報
【文献】特開2001-18996号公報
【文献】特開2014-46655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような立体成形方法においては、注出口の流量を大きくしたり、或いは張出加工部によりパウチに装飾を施すような場合等、張出加工部の成形高さをより大きくすることが望まれているが、張出加工部の成形高さを大きくするために、成形金型及びアンビル(受け台)の間のクリアランスを小さくする等、圧縮荷重を大きくすることによって行われていた。しかしながら成形荷重を大きくすると、積層フィルムにダメージを与えたり、或いは成形設備にかかる負担も大きくなることから、生産性及び経済性の点で充分満足するものではなかった。また、張出加工部の成形高さを大きくできたとしても、張出加工部にしわが発生しやすいという問題もあった。
【0006】
従って本発明の目的は、張出加工部の成形高さを大きくした場合でも、積層フィルム或いは成形設備への負荷を軽減可能であり、外観特性に優れた張出加工部を効率よく成形可能な積層フィルムの立体成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、少なくとも最内面の柔らかい内面フィルムと外面側の強度の高い外面フィルムとがラミネートされた積層フィルムを、内面フィルム側に位置する成形金型及び外面フィルム側に位置するアンビルを用いて圧縮成形し、圧縮成形部を外面側に張出させる包装体用積層フィルムの立体成形方法において、前記内面フィルムがヒートシール性を有するポリオレフィンフィルムであり、前記外面フィルムがナイロンの延伸フィルム又はポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムであり、前記成形金型の表面粗度(Ra)が0.5μm以下であることを特徴とする包装体用積層フィルムの立体成形方法が提供される。
【0008】
本発明の包装体用積層フィルムの立体成形方法においては、
1.前記アンビルの表面粗度(Ra)が1~5μmであること、
2.前記圧縮成形を冷間で行うこと、
3.前記積層フィルムを、該積層フィルムの内面フィルムを構成する樹脂のビカット軟化温度以下の温度に加熱した後、常温乃至前記ビカット軟化点温度以下の温度で圧縮成形を行うこと、
4.前記積層フィルムに形成される張出加工部の成形高さが0.1mm以上であること、
5.前記成形金型及びアンビルが回転ロールから成ること、
が好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層フィルムの立体成形方法においては、成形金型の表面粗度(Ra)を0.5μm以下にすることによって、成形金型及びアンビルの間のクリアランスを、同じ積層フィルムを用い且つ同じ成形高さの張出加工部を成形する場合、従来のクリアランスに比して大きくすることが可能であり、その結果、成形荷重を低減することができ、積層フィルムにダメージを与えることがないと共に成形設備への負荷を小さくすることが可能になる。また成形荷重が低減される結果、加工に要するエネルギーも削減でき、コストダウンを図ることも可能になる。
さらに、上述した成形金型の表面粗度(Ra)と相俟って、アンビルの表面粗度(Ra)を1~5μmにすることにより、充分な張出加工部の成形高さを有し、しわの発生を抑え、成形金型に接する積層フィルムの外面フィルム表面における粗面跡の発生を抑制することができ、外観特性に優れた張出加工部を成形することができる。
本発明の立体成形方法においては、積層フィルム及び成形金型の温度を室温で行う冷間で行うことができるが、積層フィルムを、内面フィルムを構成する樹脂のビカット軟化温度以下の温度に加熱し、常温から該軟化温度以下の温度で圧縮成形することにより、より低い成形荷重で効率よく張出加工を行うことができる。
【0010】
本発明の上述した作用効果は、後述する実施例の結果からも明らかである。
すなわち、成形金型及びアンビルの間のクリアランスが一定の条件下で、成形金型の表面粗度(Ra)を0.5μm以下(実施例1、2)として形成した張出加工部の成形高さは0.25mm以上であり、これに対して、成形金型の表面粗度(Ra)が0.5μmを超える(比較例1)以外は同様の成形条件で立体成形された張出加工部の成形高さは0.25mm未満の0.16mmと本発明に比して低く、本発明の積層フィルムの立体成形方法が、成形荷重が低減されて積層フィルムにダメージを与えることがなく、成形設備への負荷を小さくすることが可能であることが明らかである。
また、成形金型の表面粗度(Ra)を0.04μmとし、アンビルの表面粗度(Ra)を1~5μm(実施例3~6)として立体成形された張出加工部は、しわ、積層フィルムの外面フィルム表面に粗面跡の発生がなく、アンビルの表面粗度(Ra)を1μm未満(比較例2、3)とすると張出加工部にしわが発生し、一方、アンビルの表面粗度(Ra)が5μmを超える(比較例4)と、積層フィルムの外面フィルム表面に粗面跡が発生する傾向がみられ、アンビルの表面粗度(Ra)を1~5μmとすることにより外観適性に優れた積層フィルムとなることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の積層フィルムの立体成形方法の一例を説明するための図である。
【
図2】本発明の積層フィルムの立体成形方法の他の一例を説明するための図である。
【
図3】積層フィルムの張出加工部における成形高さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[立体成形方法]
本発明の積層フィルムの立体成形方法は、成形金型のフィルムの接触する表面の表面粗度(Ra)が0.5μm以下(Ra=0の鏡面の場合を含む)である点を除けば従来公知の積層フィルムの立体成形方法と同様に行うことができる。尚、本発明における表面粗度は、JIS B0601に準拠した算術平均粗さ(Ra)によるものである。
積層フィルムの立体成形方法は、最内面となる柔らかい内面フィルムと外面側の強度の高い外面フィルムとが少なくともラミネートされた積層フィルムを用い、この積層フィルムの立体成形したい部位を、厚み方向に圧縮成形することにより行う。圧縮された積層フィルムは、柔らかい内面フィルムが変形して圧縮された面から押し出されるように大きく伸びると共に、強度の高い外面フィルムは内面フィルムの伸びに応じて伸ばされる。次いで圧縮した部分の圧力を解放することにより、内面フィルム及び外面フィルムの厚みが復元するが、その際、柔らかい内面フィルムの復元は大きいが、外面フィルムの復元はわずかであることから、強度の高い外面フィルム側に張出す現象が生じて、圧縮された部分を外面側に張り出すことが可能になる。
【0013】
図1は、本発明の積層フィルムの立体成形方法において、圧縮成形装置として一対の加工ロールを用いて回転しながら圧縮するロータリー加工装置を用いた例を説明する図である。
このロータリー加工装置は、成形金型11を有する加工ロール12及びアンビルロール13から成っており、本発明においては、この成形金型11の積層フィルム10が接触する表面が0.5μm以下の表面粗度(Ra)を有していることが重要な特徴である。
ロータリー加工装置において成形金型11とアンビルロール13による加工は点接触又は線接触でなされることから、後述するパンチとアンビルを面接触させて加工する平面プレス加工装置に比べ接触面積が小さく、必要な成形力を簡単に加えることができると共に、装置自体を小型化することもできる。またロールの回転により、フィルムを搬送しながら連続的に加工することもできる。
【0014】
このロータリー加工装置を用いた立体成形方法においては、内面フィルム10b及び外面フィルム10aから成る積層フィルム10の厚みに対する、加工ロール12の成形金型11とアンビルロール13間の距離(クリアランス量L)を調整することにより、積層フィルム10に作用する圧縮荷重を調整することができ、
図3に示す所望の成形高さhを有する張出加工部14を外面側に張出すことができる。しかしながら、本発明においては更に、成形金型の表面粗度(Ra)を0.5μm以下とすることにより、同じ成形高さの張出加工部を形成する場合でもクリアランス量(L)を大きくすることができ、その結果、成形に要する圧縮荷重を軽減して積層フィルムのダメージや圧縮成形装置への負荷を低減することが可能になる。
【0015】
本発明においては、成形金型の表面粗度(Ra)を0.5μm以下に調整することによって、好適には、それと同時にアンビルロールの表面粗度(Ra)を1~5μmの範囲に調整することによって、成形高さhが0.1mm以上と充分な高さがある張出加工部をより効率よく形成することができる。すなわち、成形金型の表面粗度及びアンビルロールの表面粗度を上記範囲にすることにより、外側フィルムではアンビルロールとの摩擦力が大きく、内面フィルムでは成形金型との摩擦力が小さいことから、積層フィルムの内面フィルムと外面フィルムの間に生じる剪断力が大きくなる結果、張出加工部を形成するための圧縮力を補うように作用することから、クリアランス量(L)を大きくすることによって低減された圧縮力を効率よく積層フィルムに作用させることができ、張出加工部を効率よく形成することが可能になる。尚、上記範囲よりもアンビルロールの表面粗度が大きい場合には、アンビルロールの粗面に起因する加工痕が張出加工部に形成されてしまうおそれがあり、一方上記範囲よりもアンビルロールの表面粗度が小さく、鏡面仕上げのようになっている場合には、張出加工部にしわが発生するおそれがある。
なお、成形高さhが0.1mm未満であると張出加工部の図柄、文字、マークの明瞭さ、装飾性が劣り、意匠性を向上させることが出来ない。一方、上限は、前述した張出加工部の意匠性、破断や剥離、ガスバリヤー性や水蒸気バリヤー性、落下強度耐性、突き刺し耐性などの包装体としての基本性能を考慮して決定すれば良い。
【0016】
成形加工に際して、積層フィルム10は、加熱することなく室温(常温)の状態のままでもよいが、好適には、室温よりも高く且つ積層フィルムの内面フィルムを構成する樹脂のビカット軟化温度(JIS K7206準拠)以下の温度に加熱されていることが望ましい。
また成形加工は、成形金型11、アンビルロール13を加熱することなく室温で行う冷間であってもよいし、成形金型11及び/又はアンビルロール13を内面フィルムの軟化温度近傍まで加熱して行う熱間、或いは冷間と熱間の中間の温度域(温間)で行ってもよい。
例えば、内面フィルムがポリエチレンの場合には、成形金型11及び/又はアンビルロール13を35~80℃の温度に加熱する温間、或いは成形金型を80~100℃の温度に加熱する熱間のいずれであってもよく、必要により加工後冷却を行う。
【0017】
図1に示した具体例においては、成形金型11を有する加工ロール12とアンビルロール13との一対のロール間で圧縮成形を行っているが、これに限定されず、アンビルロール13の成形金型11に対応する箇所に雄型が形成されていてもよい。この際、成形金型の表面粗度(Ra)が0.5μm以下であることが重要である。
また
図1に示した一対のロール間で圧縮成形するロール方式以外にも、
図2に示すように、加工部21を有するパンチ22とアンビル23から成るプレス方式によっても張出加工部を形成することができる。この場合もパンチ22の加工部21を受けるアンビル23(外面フィルム側)は平板状或いは雄型の何れであってもよい。この際、加工部21の表面粗度(Ra)が0.5μm以下であることが、同一成形高さhの張出加工部を形成する場合の成形荷重を低減し、積層フィルムやプレス成形装置への負荷を軽減する上で重要である。
【0018】
本発明の立体成形方法においては、柔らかい内面フィルムと強度の高い外面フィルムから成る積層フィルム1枚を圧縮成形して張出加工部を形成する場合は勿論、内面フィルム同士が対向するように積層フィルム2枚を重ね合せた場合にも、張出加工部を形成することができる。
積層フィルム1枚の場合は、成形金型の表面粗度(Ra)を0.5μm以下とし、好適には、アンビルの表面粗度(Ra)を1~5μmの範囲とすることにより、上述したとおり、充分な成形高さのある張出加工部を少ない成形荷重で形成することができる。
一方、上記のように積層フィルムを2枚重ね合わせた場合には、成形金型側の積層フィルムのみに張出加工部が形成される態様、或いは両方の積層フィルムに外面フィルム側に張出した張出加工部が形成される態様があるが、積層フィルムに作用する圧縮荷重を調整することにより何れの態様にも加工可能である。この場合でも、成形金型の表面粗度、更に必要によりアンビルの表面粗度を調整することによって、従来技術に比して成形に要する圧縮荷重を低減でき、積層フィルムや成形装置への負荷を軽減することができる。
【0019】
[積層フィルム]
本発明の立体成形方法に用いられる積層フィルムは、前述したとおり、最内面となる内面フィルムとして柔らかいフィルム、外面フィルムとして強度の高いフィルムを用いる。
内面フィルムとして用いる柔らかいフィルム、言い換えれば伸びの大きいフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等から成るヒートシール性を有するポリオレフィンフィルムを用いることが好ましく、一方外面フィルムとして用いる強度の高いフィルムとしては、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ということがある)等の延伸フィルムを用いることが望ましい。
具体的には、これに限定されないが、内面/外面の順で、
ポリエチレンフィルム/延伸ナイロンフィルム、
ポリエチレンフィルム/延伸PETフィルム、
ポリエチレンフィルム/延伸ナイロンフィルム/延伸PETフィルム、
ポリエチレンフィルム/延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルム、
ポリエチレンフィルム/延伸PETフィルム/延伸PETフィルム、
ポリエチレンフィルム/アルミ蒸着延伸ナイロンフィルム/延伸PETフィルム、
ポリエチレンフィルム/アルミ蒸着延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルム、
ポリエチレンフィルム/アルミ蒸着延伸PETフィルム/延伸PETフィルム、
ポリプロプレンフィルム/延伸ナイロンフィルム、
ポリプロピレンフィルム/延伸PETフィルム、
ポリプロピレンフィルム/延伸ナイロンフィルム/延伸PETフィルム、
ポリプロピレンフィルム/延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルム、
ポリプロピレンフィルム/延伸PETフィルム/延伸PETフィルム、
ポリプロピレンフィルム/アルミ蒸着延伸ナイロンフィルム/延伸PETフィルム、
ポリプロピレンフィルム/アルミ蒸着延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルム、
ポリプロピレンフィルム/アルミ蒸着延伸PETフィルム/延伸PETフィルム、
等を好適に使用できる。
【0020】
張出加工前における内面フィルム及び外面フィルムの厚みは、これに限定されないが、張出加工部の成形加工性の点から、内面フィルムが50~200μmの範囲にあり、外面フィルムが10~30μmの範囲にあり、内面フィルムが外面フィルムの3~20倍程度の厚みを有することが特に好適である。
更に、内面フィルムと外面フィルムの間には、上記金属蒸着フィルム等、或いは外面フィルムの外側にはトップコート層等、本発明の効果を損なわない範囲でさらに他の層が形成されていてもよい。
積層フィルムに、更に他の層を設ける場合には、積層フィルムの総厚みが70~300μmの範囲にあることが望ましい。
【実施例】
【0021】
[条件]
1.積層フィルム
内面から線状低密度ポリエチレンフィルム(120μm)/ウレタン系接着剤(4μm)/アルミ蒸着延伸PETフィルム(12μm)/ウレタン系接着剤(4μm)/延伸ナイロンフィルム(15μm)。総厚み:155μmの積層フィルム。
2.回転ロール加工装置
(1)加工ロールとアンビルロールの直径:130mm。
(2)成形速度:0.8m/sec(120rpm)。
3.評価
(1)張出加工部の成形高さh
積層フィルムの外面側に張り出し形成された張出加工部の加工ロール回転方向の横断面における成形高さhを表面形状測定器で測定。
(2)しわ、粗面跡の確認
しわ:積層フィルムの外面側に張り出し形成された張出加工部、或いはその近傍のしわを目視で確認。
粗面跡:積層フィルムの外面側に張り出し形成された張出加工部における外面フィルムと内面フィルムの表面の粗面跡を目視で確認。
○:発生なし、△:多少あり、×:多数あり。
【0022】
(実施例1)
加工ロールに装着する成形金型の表面粗度(Ra)を0.04μm、張出加工部の巾(加工ロール幅方向):50mm、長さ(加工ロール回転方向):3mm、アンビルロールの表面粗度(Ra)を2.08μm、加工ロールに装着した成形金型とアンビルロールとの設定クリアランスL:30μmとした。次いで、積層フィルムの内面フィルム(線状低密度ポリエチレンフィルム)を加工ロール側、外面フィルム(延伸ナイロンフィルム)をアンビルロール側として両ロール間に供給して圧縮成形を冷間で行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定した。その結果を表1に示す。
【0023】
(実施例2)
加工ロールに装着する成形金型の表面粗度(Ra)を0.5μmとした以外は、実施例1と同様に圧縮成形を行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定した。その結果を表1に示す。
【0024】
(比較例1)
加工ロールに装着する成形金型の表面粗度(Ra)を2.13μmとした以外は、実施例1と同様に圧縮成形を行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定した。その結果を表1に示す。
【0025】
【0026】
上述した実施例1、2、比較例1、表1から、加工ロールに装着する成形金型の表面粗度(Ra)を0.5μm以下とすることにより、アンビルロールの表面粗度(Ra)と設定クリアランスLを同一とした条件において、外面側に張り出す張出加工部の成形高さhを十分な高さとし、立体感に優れた積層フィルムを得ることができる。
この結果、同じ積層フィルムを用い、且つ同じ成形高さの張出加工部を成形する場合にクリアランスを大きくすることが可能となり、成形荷重が低減され、積層フィルムにダメージを与えることがなく、また、成形設備への負荷を小さくすることが可能になることが判る。
【0027】
(実施例3)
加工ロールに装着する成形金型の表面粗度(Ra)を0.04μm、張出加工部の巾(加工ロール幅方向):50mm、長さ(加工ロール回転方向):3mm、アンビルロールの表面粗度(Ra)を1.0μm、加工ロールに装着した成形金型とアンビルロールとの設定クリアランスL:10、30、50μmにそれぞれ設定した。次いで、積層フィルムの内面フィルム(線状低密度ポリエチレンフィルム)を加工ロール側、外面フィルム(延伸ナイロンフィルム)をアンビルロール側として両ロール間に供給して圧縮成形を冷間で行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定し、しわ、粗面跡の有無を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0028】
(実施例4)
アンビルロールの表面粗度(Ra)を2.1μmとした以外は、実施例3と同様に圧縮成形を行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定し、しわ、粗面跡の有無を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0029】
(実施例5)
アンビルロールの表面粗度(Ra)を4.2μmとした以外は、実施例3と同様に圧縮成形を行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定し、しわ、粗面跡の有無を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0030】
(実施例6)
アンビルロールの表面粗度(Ra)を5.0μmとした以外は、実施例3と同様に圧縮成形を行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定し、しわ、粗面跡の有無を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0031】
(比較例2)
アンビルロールの表面粗度(Ra)を0.15μmとした以外は、実施例3と同様に圧縮成形を行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定し、しわ、粗面跡の有無を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0032】
(比較例3)
アンビルロールの表面粗度(Ra)を0.35μmとした以外は、実施例3と同様に圧縮成形を行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定し、しわ、粗面跡の有無を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0033】
(比較例4)
アンビルロールの表面粗度(Ra)を8.0μmとした以外は、実施例3と同様に圧縮成形を行い、外面側に張り出した張出加工部の成形高さhを測定し、しわ、粗面跡の有無を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0034】
【0035】
上述した実施例3~6、比較例2~4、表2から、各設定クリアランスLにおいて、加工ロールに装着する成形金型の表面粗度(Ra)を0.5μm以下とし、アンビルロールの表面粗度(Ra)を1μm以上とすることにより、外面側に張り出す張出加工部、或いはその近傍のしわが抑制され、また、アンビルロールの表面粗度(Ra)を5μm以下とすることにより、積層フィルムの外面フィルム表面に粗面跡を生じることなく、しわ、粗面跡が防止された外観特性に優れた積層フィルムが得られることが判る。
また、前記したアンビルロールの表面粗度(Ra)は、加工ロールに装着する成形金型の表面粗度(Ra)よりも粗くするのが好ましいことが判る。
【符号の説明】
【0036】
10 積層フィルム、11 成形金型、12 加工ロール、13 アンビルロール、h 張出加工部の成形高さ、L 成形金型とアンビルロールのクリアランス。