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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】磁性体検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/82 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
G01N27/82
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018098763
(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公開番号】P2019203782
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】飯島 健二
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】実公平01-025347(JP,Y2)
【文献】特開昭62-032382(JP,A)
【文献】実公昭58-041507(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0039102(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
G01V 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に延びる磁性体を検査する磁性体検査装置であって、
異常判定コイルと、
前記所定の方向に沿って前記異常判定コイルに並んで配置されるとともに、前記磁性体を囲むように巻回され、前記磁性体の磁界の変化および前記異常判定コイルによる磁界を検知して検知信号を送信する検知コイルと、
前記異常判定コイルに所定の電流を入力するとともに、前記検知信号に基づいて前記磁性体検査装置の異常の有無を判定する制御部と、を備える、磁性体検査装置。
【請求項2】
前記磁性体の磁化の状態を励振するための励振コイルをさらに備え、
前記制御部は、前記異常判定コイルに対して、前記励振コイルと同期した交流電力を供給する制御、または、直流電力を供給する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の磁性体検査装置。
【請求項3】
前記検知コイルは、一対の受信コイルを有し、差動信号を送信する差動コイルを含み、
前記異常判定コイルは、一対の前記受信コイルの各々に対して、磁界を入力させるように構成されている、請求項1または2に記載の磁性体検査装置。
【請求項4】
前記異常判定コイルは、一対の前記受信コイルの各々に対して、互いに異なる距離だけ離間して配置されている、請求項3に記載の磁性体検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記異常判定コイルによる前記検知コイルに対する磁界の変化と、前記検知信号の変化量とに基づいて、前記磁性体検査装置の異常の有無を判定するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁性体検査装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記異常判定コイルによる前記検知コイルに対する磁界の変化に基づく前記検知信号の変化量の正常な範囲を予め取得しておき、実際の前記検知信号の変化と比較することにより、前記磁性体検査装置の異常の有無を判定するように構成されている、請求項5に記載の磁性体検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体検査装置に関し、特に、コイルを備える磁性体検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルを備える装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、コイルを含み差動信号を出力する差動変圧器と、差動変圧器の1次側に励磁電圧を与える発信器と、差動変圧器の差動信号を増幅して出力する差動増幅器と、を備える差動変圧器の故障検出装置が開示されている。この特許文献1の差動変圧器の故障検出装置は、差動増幅器の出力の基準点を調整することにより、差動変圧器が断線した場合の差動増幅器の出力と、差動変圧器が断線していない場合の差動増幅器の出力とを異ならせている。そして、差動増幅器の出力により、差動変圧器の断線による故障を検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭53-42727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の差動変圧器の故障検出装置では、差動変圧器の断線を検出することができるものの、断線以外の差動変圧器の異常を検出することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、磁性体検査装置の断線異常に加えて断線以外の異常も検出することが可能な磁性体検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による磁性体検査装置は、所定の方向に延びる磁性体を検査する磁性体検査装置であって、異常判定コイルと、所定の方向に沿って異常判定コイルに並んで配置されるとともに、磁性体を囲むように巻回され、磁性体の磁界の変化および異常判定コイルによる磁界を検知して検知信号を送信する検知コイルと、異常判定コイルに所定の電流を入力するとともに、検知信号に基づいて磁性体検査装置の異常の有無を判定する制御部と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面による磁性体検査装置では、上記のように構成することによって、異常判定コイルに所定の電流を入力することにより、検知コイルに対して磁界の変化を与えることができるので、磁界の変化に基づく検知信号の変化の正常な状態を予め取得しておき、実際の検知信号の変化と比較することにより、磁性体検査装置の異常を検出することができる。また、検知コイルの断線以外の異常を検出することができる。これにより、磁性体検査装置の断線以外の異常を検出することができる。また、検知信号の変化の程度から磁性体検査装置の断線異常も検出することができる。これらの結果、磁性体検査装置の断線異常に加えて断線以外の異常も検出することができる。
【0009】
上記一の局面による磁性体検査装置において、好ましくは、磁性体の磁化の状態を励振するための励振コイルをさらに備え、制御部は、異常判定コイルに対して、励振コイルと同期した交流電力を供給する制御、または、直流電力を供給する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、異常判定コイルによる磁界の変化に起因する検知信号の変化を単純な波形にすることができるので、異常の検出処理を容易に行うことができる。
【0010】
上記一の局面による磁性体検査装置において、好ましくは、検知コイルは、一対の受信コイルを有し、差動信号を送信する差動コイルを含み、異常判定コイルは、一対の受信コイルの各々に対して、磁界を入力させるように構成されている。このように構成すれば、差動コイルにより、異常判定コイルによる磁界の変化を差動信号として出力することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、異常判定コイルは、一対の受信コイルの各々に対して、互いに異なる距離だけ離間して配置されている。このように構成すれば、差動コイルの各受信コイルに対して入力させる磁界の大きさを互いに異ならせることができる。
【0012】
上記一の局面による磁性体検査装置において、好ましくは、制御部は、異常判定コイルによる検知コイルに対する磁界の変化と、検知信号の変化量とに基づいて、磁性体検査装置の異常の有無を判定するように構成されている。このように構成すれば、検知信号の変化量に基づいて、定量的に異常を判定することができるので、磁性体検査装置の異常の有無を容易に判定することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御部は、異常判定コイルによる検知コイルに対する磁界の変化に基づく検知信号の変化量の正常な範囲を予め取得しておき、実際の検知信号の変化と比較することにより、磁性体検査装置の異常の有無を判定するように構成されている。このように構成すれば、異常判定コイルによる磁界の変化に起因する検知信号の変化が正常な範囲内か否かを判定することにより、磁性体検査装置の異常の有無を容易に判定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、磁性体検査装置の断線異常に加えて断線以外の異常も検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態による磁性体検査装置の構成を示す概略図である。
図2】一実施形態による磁性体検査装置の制御的な構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態による磁性体検査装置の磁界印加部および検出部の構成を説明するための図である。
図4】一実施形態による磁性体検査装置の異常判定の際の検知信号の一例を示した図である。
図5】一実施形態の変形例による磁性体検査装置の磁界印加部および検出部の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図4を参照して、本実施形態による磁性体検査装置100の構成について説明する。
【0018】
(磁性体検査装置の構成)
図1に示すように、磁性体検査装置100は、検査対象物であるワイヤロープWを検査するように構成されている。ワイヤロープWは、クレーン、エレベータ、吊り橋、ロボットなどに使用されている。磁性体検査装置100は、ワイヤロープWを定期的に検査するように構成されている。磁性体検査装置100は、ワイヤロープWの傷みを検査するように構成されている。磁性体検査装置100は、検査対象物であるワイヤロープWの表面に沿って相対移動させながら、ワイヤロープWを検査する。たとえば、クレーンやエレベータなどのようにワイヤロープWが移動する場合は、磁性体検査装置100を固定した状態で、ワイヤロープWの移動に伴って、検査が行われる。また、吊り橋のようにワイヤロープWが移動しない場合は、ワイヤロープWに沿って磁性体検査装置100を移動させながら検査が行われる。ワイヤロープWは、磁性体検査装置100の位置において、X方向に延びるように配置されている。なお、ワイヤロープWは、特許請求の範囲の「磁性体」の一例である。
【0019】
磁性体検査装置100は、図2に示すように、検出部1と、電子回路部2とを備えている。検出部1は、一対の受信コイル11および12を有する差動コイル10と、励振コイル13と、異常判定コイル14とを含んでいる。電子回路部2は、制御部21と、受信I/F22と、励振I/F23と、異常判定I/F24と、電源回路25と、通信部26とを含んでいる。また、磁性体検査装置100は、磁界印加部3(図3参照)を備えている。なお、差動コイル10は、特許請求の範囲の「検知コイル」の一例である。
【0020】
磁性体検査装置100には、通信部26を介して外部装置200が接続されている。外部装置200は、通信部201と、解析部202と、表示部203とを備えている。外部装置200は、通信部201を介して、磁性体検査装置100によるワイヤロープWの計測データを受信するように構成されている。また、外部装置200は、受信したワイヤロープWの計測データに基づいて、解析部202により、素線断線、断面積変化などの傷みの種類を解析するように構成されている。また、外部装置200は、解析結果を、表示部203に表示するように構成されている。
【0021】
具体的には、外部装置200は、パーソナルコンピュータにより構成されている。また、外部装置200は、磁性体検査装置100の異常判定コイル14による異常判定信号の発生を指示するように構成されている。また、外部装置200は、異常判定信号に基づく差動信号を受信し、受信した差動信号の大きさに応じて動作状態を判定するように構成されている。また、外部装置200は、判定結果を出力し、表示部203に結果を表示するように構成されている。
【0022】
ワイヤロープWは、磁性を有する素線材料が編みこまれる(たとえば、ストランド編みされる)ことにより形成されている。また、ワイヤロープWは、複数のストランドがより合わされて形成されている。ワイヤロープWは、X方向に延びる長尺材からなる磁性体である。ワイヤロープWは、劣化による切断が起こるのを防ぐために、状態(傷等の有無)を監視されている。そして、劣化が所定量より進行したワイヤロープWは、交換される。
【0023】
図3に示すように、磁性体検査装置100は、ワイヤロープWの磁界(磁束)の変化を検知するように構成されている。
【0024】
磁界印加部3は、検査対象物であるワイヤロープWに対して予めY方向に磁界を印加し磁性体の磁化の大きさおよび方向を整えるように構成されている。また、磁界印加部3は、磁石31および32を含む第1磁界印加部と、磁石33および34を含む第2磁界印加部とを含んでいる。第1磁界印加部(磁石31および32)は、検出部1に対して、ワイヤロープWの延びる方向の一方側(X1方向側)に配置されている。また、第2磁界印加部(磁石33および34)は、検出部1に対して、ワイヤロープWの延びる方向の他方側(X2方向側)に配置されている。
【0025】
差動コイル10(受信コイル11および12)と、励振コイル13と、異常判定コイル14とは、図3に示すように、長尺材からなる磁性体であるワイヤロープWの延びる方向を中心軸として、長手方向に沿うようにそれぞれ複数回巻回されている。また、差動コイル10、励振コイル13および異常判定コイル14は、ワイヤロープWの延びるX方向(長手方向)に沿って円筒形となるように形成される導線部分を含むコイルである。したがって、差動コイル10、励振コイル13および異常判定コイル14の巻回される導線部分の形成する面は、長手方向に略直交している。ワイヤロープWは、差動コイル10、励振コイル13および異常判定コイル14の内部を通過する。また、差動コイル10は、励振コイル13の内側に設けられている。また、異常判定コイル14は、励振コイル13の内側に設けられている。なお、差動コイル10、励振コイル13および異常判定コイル14の配置はこれに限られない。差動コイル10の受信コイル11は、X1方向側に配置されている。また、差動コイル10の受信コイル12は、X2方向側に配置されている。
【0026】
異常判定コイル14は、一対の受信コイル11および12の各々に対して、互いに異なる距離だけ離間して配置されている。具体的には、異常判定コイル14は、受信コイル11のX1方向側に配置されている。つまり、異常判定コイル14は、受信コイル11および12のうち、受信コイル11の方に近い位置に配置されている。異常判定コイル14および受信コイル11は、距離D1だけ離間して配置されている。また、異常判定コイル14および受信コイル12は、距離D2だけ離間して配置されている。ただし、D1<D2である。また、異常判定コイル14は、X方向に磁界を発生させるように配置されている。つまり、異常判定コイル14の中心軸線は、受信コイル11および12の中心軸線と、同じ方向になるように配置されている。
【0027】
励振コイル13は、ワイヤロープWの磁化の状態を励振する。具体的には、励振コイル13に励振交流電流が流されることにより、励振コイル13の内部において、励振交流電流に基づいて発生する磁界がX方向に沿って印加されるように構成されている。
【0028】
差動コイル10は、一対の受信コイル11および12の差動信号(検知信号)を送信するように構成されている。具体的には、差動コイル10は、ワイヤロープWの磁界の変化を検知して差動信号を送信するように構成されている。差動コイル10は、検査対象物であるワイヤロープWのX方向の磁界の変化を検知して検知信号(電圧)を出力するように構成されている。また、差動コイル10は、検知したワイヤロープWのX方向の磁界の変化に基づく差動信号(電圧)を出力するように構成されている。また、差動コイル10は、励振コイル13によって発生する磁界の略全てが検知可能に(入力される様に)配置されている。また、差動コイル10は、異常判定コイル14による磁界を検知して差動信号(検知信号)を送信するように構成されている。
【0029】
異常判定コイル14は、差動コイル10に対する磁界を変化させるように構成されている。具体的には、異常判定コイル14は、異常判定を行う際に、電力が供給されて、差動コイル10に入力される磁界を変化させるように構成されている。また、異常判定コイル14は、一対の受信コイル11および12の各々に対して、互いに大きさが異なる磁界を入力させるように構成されている。
【0030】
ワイヤロープWに欠陥(傷等)が存在する場合は、欠陥(傷等)のある部分でワイヤロープWの全磁束(磁界に透磁率と面積とを掛けた値)が小さくなる。その結果、たとえば、受信コイル11が、欠陥(傷等)のある場所に位置する場合、受信コイル12を通る磁束量が受信コイル11と比較して変化するため、差動コイル10による検知電圧の差の絶対値(差動信号)が大きくなる。一方、欠陥(傷等)のない部分での差動信号は略ゼロとなる。このように、差動コイル10において、欠陥(傷等)の存在をあらわす明確な信号(S/N比の良い信号)が検知される。これにより、電子回路部2は、差動信号の値に基づいてワイヤロープWの欠陥(傷等)の存在を検出することが可能である。
【0031】
電子回路部2の制御部21は、磁性体検査装置100の各部を制御するように構成されている。具体的には、制御部21は、CPU(中央処理装置)などのプロセッサ、メモリ、AD変換器などを含んでいる。制御部21は、差動コイル10の差動信号を受信して、ワイヤロープWの状態を検知するように構成されている。また、制御部21は、励振コイル13を励振させる制御を行うように構成されている。また、制御部21は、異常判定コイル14に電力を供給して、磁界を発生させるように構成されている。また、制御部21は、通信部26を介して、ワイヤロープWの状態の検知結果を外部装置200に送信するように構成されている。また、制御部21は、差動信号を受信I/F22を介して受信し、A/D変換を行い、同期検波または同期検波方式により信号を取得するように構成されている。
【0032】
受信I/F22は、差動コイル10からの差動信号を受信して、制御部21に送信するように構成されている。具体的には、受信I/F22は、増幅器を含んでいる。また、受信I/F22は、差動コイル10の差動信号を増幅して、制御部21に送信するように構成されている。
【0033】
励振I/F23は、制御部21からの信号を受信して、励振コイル13に対する電力の供給を制御するように構成されている。具体的には、励振I/F23は、制御部21からの制御信号に基づいて、電源回路25から励振コイル13への電力の供給を制御する。
【0034】
異常判定I/F24は、制御部21からの信号を受信して、異常判定コイル14に対する電力の供給を制御するように構成されている。具体的には、異常判定I/F24は、制御部21からの制御信号に基づいて、電源回路25から異常判定コイル14への電力の供給を制御する。
【0035】
ここで、本実施形態では、制御部21は、異常判定コイル14による差動コイル10に対する磁界の変化と、検知信号とに基づいて、磁性体検査装置100の異常の有無を判定するように構成されている。具体的には、制御部21は、異常判定コイル14に所定の電流を入力するとともに、検知信号に基づいて磁性体検査装置100の異常の有無を判定するように構成されている。制御部21は、異常判定コイル14による差動コイル10に対する磁界の変化と、検知信号の変化量とに基づいて、磁性体検査装置100の異常の有無を判定するように構成されている。また、制御部21は、検知信号の変化量が所定の範囲内か否かに基づいて、磁性体検査装置100の異常の有無を判定するように構成されている。具体的には、制御部21は、異常判定コイル14による差動コイル10に対する磁界の変化に基づく検知信号の変化量の正常な範囲を予め取得しておき、実際の検知信号の変化と比較することにより、磁性体検査装置100の異常の有無を判定するように構成されている。
【0036】
図4に示すように、制御部21は、異常判定を実施する場合に、異常判定コイル14に通電する電力(電流)を時間t1において、I0からI1に変化させる。これにより、差動コイル10の受信コイル11と受信コイル12とに入力される磁界が変化する。その結果、時間t1において、差動信号がB0からB1に変化する。異常判定コイル14に電力が供給された場合に、差動信号がB11以上B12以下となれば、正常状態であると判断される。B11およびB12は、ノイズを考慮して、所定の幅の値が設定されたしきい値である。異常判定コイル14に電力が供給された場合に、差動信号がB11未満またはB12より大きければ、異常状態であると判断される。異常としては、差動コイル10の断線、ショート、励振コイル13の断線、ショートなどの回路系の故障がある。また、差動コイル10などの断線以外の異常が検出される。たとえば、差動コイル10の差動信号の精度を含めた異常が検出される。また、電子回路の故障が検出される。また、制御部21は、差動信号の変化量の大きさから、磁性体検査装置100が正常に動作しているか否かの判断を行うように構成されている。
【0037】
また、本実施形態では、制御部21は、異常判定コイル14に対して、励振コイル13と同期した交流電力を供給する制御、または、直流電力を供給する制御を行うように構成されている。制御部21は、励振コイル13と同期した交流電力を供給する場合、励振コイル13と交流電力の周期を同期させて、異常判定コイル14に電力を供給する。
【0038】
また、異常判定は、磁性体検査装置100の起動時や、検査前や、所定の時間毎に定期的に行われる。
【0039】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0040】
本実施形態では、上記のように、異常判定コイル14により、差動コイル10に対して磁界の変化を与えることができるので、磁界の変化に基づく検知信号の変化の正常な状態を予め取得しておき、実際の検知信号の変化と比較することにより、磁性体検査装置100の異常を検出することができる。また、差動コイル10の断線以外の異常を検出することができる。これにより、磁性体検査装置100の断線以外の異常を検出することができる。また、検知信号の変化の程度から磁性体検査装置100の断線異常も検出することができる。これらの結果、磁性体検査装置100の断線異常に加えて断線以外の異常も検出することができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、異常判定コイル14を、一対の受信コイル11および12の各々に対して、磁界を入力させるように構成する。これにより、差動コイル10により、異常判定コイル14による磁界の変化を差動信号として出力することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、制御部21を、異常判定コイル14に対して、励振コイル13と同期した交流電力を供給する制御、または、直流電力を供給する制御を行うように構成する。これにより、異常判定コイル14による磁界の変化に起因する検知信号の変化を単純な波形にすることができるので、異常の判定処理を容易に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、制御部21を、異常判定コイル14による差動コイル10に対する磁界の変化と、検知信号の変化量とに基づいて、磁性体検査装置100の異常の有無を判定するように構成する。これにより、検知信号の変化量に基づいて、定量的に異常を判定することができるので、磁性体検査装置100の異常の有無を容易に判定することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、制御部21を、異常判定コイル14による差動コイル10に対する磁界の変化に基づく検知信号の変化量の正常な範囲を予め取得しておき、実際の検知信号の変化と比較することにより、磁性体検査装置100の異常の有無を判定するように構成する。これにより、異常判定コイル14による磁界の変化に起因する検知信号の変化が正常な範囲内か否かを判定することにより、磁性体検査装置100の異常の有無を容易に判定することができる。
【0045】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0046】
たとえば、上記一実施形態では、磁性体検査装置により検査される磁性体がワイヤロープである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁性体検査装置により検査される磁性体は、ワイヤロープ以外の磁性体でもよい。
【0047】
また、上記一実施形態では、検査対象のワイヤロープは、クレーン、エレベータ、吊り橋、ロボットなどに使用される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検査対象のワイヤロープ(磁性体)は、クレーン、エレベータ、吊り橋、ロボット以外に用いられていてもよい。
【0048】
また、上記一実施形態では、異常判定コイルが一対の受信コイルの一方の外側に配置されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図5に示す実施形態の変形例のように、異常判定コイルが一対の受信コイルの間に設けられていてもよい。
【0049】
また、上記一実施形態では、磁性体検査装置が励振コイルを備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁性体検査装置は励振コイルを備えていなくてもよい。
【0050】
また、上記一実施形態では、磁性体検査装置が磁界印加部を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁性体検査装置は磁界印加部を備えていなくてもよい。
【0051】
また、上記一実施形態では、磁性体検査装置は外部装置に接続されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁性体検査装置は、外部装置に接続されずに、独立して用いられてもよい。
【0052】
また、上記一実施形態では、検知コイルを、差動コイルにより構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検知コイルは、差動コイル以外でもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 差動コイル(検知コイル)
11、12 受信コイル
13 励振コイル
14 異常判定コイル
21 制御部
100 磁性体検査装置
W ワイヤロープ(磁性体)
図1
図2
図3
図4
図5