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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20221109BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20221109BHJP
   B41J 3/60 20060101ALI20221109BHJP
   B65H 29/58 20060101ALI20221109BHJP
   B65H 85/00 20060101ALI20221109BHJP
   B65H 29/52 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G03G15/00 463
G03G21/16 195
G03G21/16 147
B41J3/60
B65H29/58 B
B65H85/00
B65H29/52
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018099410
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019012264
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2017117836
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017132167
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】塩川 康夫
(72)【発明者】
【氏名】川上 嘉輝
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴弘
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-314282(JP,A)
【文献】登録実用新案第3141739(JP,U)
【文献】米国特許第07760216(US,B2)
【文献】特開2003-104612(JP,A)
【文献】特開2006-298605(JP,A)
【文献】特開平08-108952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/52-29/70
B65H 83/00-85/00
G03G 15/00
G03G 21/16
B41J 3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺紙にトナー画像を形成する画像形成部と、
前記長尺紙に形成された前記トナー画像を定着させる定着部と、
前記長尺紙を前記画像形成部および前記定着部に搬送する主搬送路と、
前記主搬送路における前記定着部の搬送方向下流側から分岐し、前記長尺紙の搬送方向をスイッチバックポイントで逆行させることにより当該長尺紙の表裏を反転させて前記画像形成部の上流側に搬送する両面搬送路と、
前記両面搬送路におけるスイッチバック前の搬送方向の下流側において、前記主搬送路における前記画像形成部の上流側に繋がる合流経路と、
前記長尺紙の前記搬送方向における先端を前記合流経路に導入する第1の導入部と、
を備え、
前記両面搬送路は、上下方向で互いに対向する第1用紙ガイド及び第2用紙ガイドを有する一対の用紙ガイドを含み、前記第1用紙ガイド及び前記第2用紙ガイドのうちの一方が装置本体に出し入れできるユニットに配置され、前記第1用紙ガイド及び前記第2用紙ガイドのうちの他方が装置本体に固定され、
前記第1用紙ガイドの側で前記第1用紙ガイドに接するように前記第2用紙ガイドの側で前記第2用紙ガイドによって支持される状態で前記一対の用紙ガイドの間に介在するように配置され、該用紙ガイド同士の隙間を搬送される前記長尺紙の幅の外側における端部側に、当該隙間を保持する隙間保持部を備える、
画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の導入部は、前記長尺紙の前記搬送方向における先端を前記合流経路の用紙ガイドで受けさせるように、該用紙ガイドに対して段差を形成する段差形成部材である、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記段差形成部材は、装置本体に固定されている、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1用紙ガイドが前記ユニットに配置され、前記第2用紙ガイドが前記装置本体に固定され、
前記隙間保持部は、前記第1用紙ガイドの一方に軸支されて前記第2用紙ガイドに接触し、前記出し入れに伴って回転するコロである、
請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記隙間保持部は、前記搬送方向に直交する方向で前記装置本体から前記ユニットを引き出す手前方向における前記端部側に配置されている、
請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記長尺紙の前記搬送方向における先端を前記主搬送路に導入する第2の導入部を備える、
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2の導入部は、前記長尺紙の前記搬送方向における先端を受けるように、前記合流経路の内側の用紙ガイドに対して段差を形成している、
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記両面搬送路は、前記長尺紙がスイッチバックされる前の搬送方向において折り返すように湾曲する湾曲搬送路を有し、
前記湾曲搬送路には、前記長尺紙を搬送する搬送ローラーを備える、
請求項1から7のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トナーを用いて用紙に画像を形成する画像形成装置が知られている。かかる画像形成装置では、用紙の表裏を反転させて両面に画像を形成できるようにするため、用紙の搬送方向の前後をスイッチバック反転(すなわち逆行)させて用紙の表裏を反転させる搬送経路を構成する反転搬送路を備えるものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来の画像形成装置では、給紙トレイユニットに収納可能な大きさの用紙については、反転搬送路を通してスイッチバック反転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-124100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、給紙トレイユニットに収納可能な大きさを超える長尺紙と呼ばれる枚葉紙についても、両面に画像を形成できるようにする需要が高まっている。他方、長尺紙の両面印刷を実現するためには、反転搬送路の経路長を従来よりも長くすることが必要になる。そして、反転搬送路の経路長を従来よりも長くする場合、装置の大型化や、定型紙と比較して発生し易くなるジャムへの対策などが課題となる。
【0006】
両面印刷時に用紙がジャムした場合のジャム処理を容易にするための構成として、例えば、上記の反転搬送路や搬送ローラーなどの両面印刷用の部材を一つのユニットとして構成し、かかるユニットを装置本体に対して出し入れできるように構成したものがある。このユニットは、例えば自動両面反転搬送ユニット(ADU:Auto Duplex Unit)と呼ばれる。
【0007】
他方、反転搬送路を装置本体に対して出し入れできるようにした場合、装置本体側に固定されている搬送路との位置合わせの精度が悪いと、用紙が引っかかってジャムしやすくなる問題がある。特に、反転搬送路を、従来よりも長い経路に伸ばして且つ装置本体に対して出し入れできるようにした場合、当該搬送路を形成する隙間、すなわち用紙が搬送されるガイド部材間の隙間(クリアランス)を、経路全長に亘って精度良く保つことが重要な課題となる。
【0008】
本発明の目的は、長尺紙の両面に画像を形成する際に、安定して長尺紙を搬送することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、
長尺紙にトナー画像を形成する画像形成部と、
前記長尺紙に形成された前記トナー画像を定着させる定着部と、
前記長尺紙を前記画像形成部および前記定着部に搬送する主搬送路と、
前記主搬送路における前記定着部の搬送方向下流側から分岐し、前記長尺紙の搬送方向をスイッチバックポイントで逆行させることにより当該長尺紙の表裏を反転させて前記画像形成部の上流側に搬送する両面搬送路と、
前記両面搬送路におけるスイッチバック前の搬送方向の下流側において、前記主搬送路における前記画像形成部の上流側に繋がる合流経路と、
前記長尺紙の前記搬送方向における先端を前記合流経路に導入する第1の導入部と、
を備え、
前記両面搬送路は、上下方向で互いに対向する第1用紙ガイド及び第2用紙ガイドを有する一対の用紙ガイドを含み、前記第1用紙ガイド及び前記第2用紙ガイドのうちの一方が装置本体に出し入れできるユニットに配置され、前記第1用紙ガイド及び前記第2用紙ガイドのうちの他方が装置本体に固定され、
前記第1用紙ガイドの側で前記第1用紙ガイドに接するように前記第2用紙ガイドの側で前記第2用紙ガイドによって支持される状態で前記一対の用紙ガイドの間に介在するように配置され、該用紙ガイド同士の隙間を搬送される前記長尺紙の幅の外側における端部側に、当該隙間を保持する隙間保持部を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長尺紙の両面に画像を形成する際に、安定して長尺紙を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態における画像形成装置の一例を示す構成図である。
図2図1の画像形成装置における制御系の主要部を示す図である。
図3】両面印刷用の搬送経路を抽出して示す図である。
図4】合流経路を拡大して示す図である。
図5】ガイド板の構成を示す斜視図である。
図6】合流経路の入口側を拡大して示す図である。
図7】合流経路の入口側を図6の下側から見た図である。
図8】長尺紙を両面印刷する場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。また、図3は、画像形成装置1における両面印刷用の搬送経路を抽出して示す。
【0014】
本実施の形態の画像形成装置1は、長尺紙LSまたは用紙S(非長尺用紙)を記録媒体として使用し、これら長尺紙LSまたは用紙S上に画像を形成する装置である。
【0015】
本実施の形態において、長尺紙LSは、一般に良く用いられるA4サイズ、A3サイズ等の用紙よりも搬送方向の長さが長い枚葉紙であり、機内の給紙トレイユニット51a~51cに収容できない長さを有する。かかる長尺紙LSのサイズすなわち搬送方向の長さ等の寸法は、本システムのメモリ等に定義データとして格納されている。以下、単に「用紙」という場合、長尺紙LSおよび用紙Sの両方が含まれ得る。
【0016】
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、トナー像を形成する。
【0017】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0018】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部100等を備える。
【0019】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0020】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0021】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0022】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0023】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0024】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0025】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0026】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0027】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0028】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0029】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0030】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
【0031】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0032】
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0033】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニング部材等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニング部材によって除去する。
【0034】
中間転写ユニット42は、像担持体としての中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0035】
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0036】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0037】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0038】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0039】
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
【0040】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用してもよい。
【0041】
定着部60は、用紙の定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙の裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0042】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。また、定着器Fには、エアを吹き付けることにより、定着面側部材から用紙Sを分離させるエア分離ユニット60Dが配置されている。
【0043】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー、用紙の両面に画像形成するための両面搬送経路等を有する。なお、搬送経路部53の詳細については後述する。
【0044】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0045】
次に、搬送経路部53について詳述する。
【0046】
搬送経路部53は、用紙が片面(上面)に画像を形成される際に搬送される経路であって、画像形成部40でトナー像が形成される用紙が搬送される主搬送路530を備える。主搬送路530は、レジストローラー53aと画像形成部40の二次転写ニップと定着部60とを経由して用紙を搬送する経路である。また、搬送経路部53は、用紙の表裏を反転させる反転搬送路533を備える。
【0047】
搬送経路部53は、外部給紙口2aから給紙された長尺紙LS等の用紙を主搬送路530に搬送する外部給紙搬送路531と、給紙トレイユニット51a~51cから給紙された用紙Sを主搬送路530に搬送する給紙搬送路532を備える。
【0048】
主搬送路530は、装置本体2の内部で給紙トレイユニット51a~51cの上方に設けられ、装置本体2の一方の側部から他方の側部へ延在する。主搬送路530は、一方の端部が外部給紙搬送路531及び給紙搬送路532と繋がる。また、主搬送路530は、他方の端部が、装置本体2の他方の側部に設けられた排出部52の排出口と繋がる。
【0049】
外部給紙搬送路531は、一方の端部が外部給紙口2aと繋がり、他方の端部が主搬送路530と繋がる。給紙搬送路532は、装置本体2内の一方の側部の近傍に設けられ、給紙トレイユニット51a~51cから主搬送路530へ上下方向に延在する。給紙搬送路532は、装置本体2の一方の側部に設けられた不図示の開閉扉が開かれることで、給紙搬送路532の経路の一部が外方に露出され、ジャム処理等が可能になる。給紙搬送路532は、上方の端部が主搬送路530と繋がり、下方の端部が給紙トレイユニット51a~51cと繋がる。
【0050】
反転搬送路533は、装置本体2の内部で給紙トレイユニット51a~51cと主搬送路530の間に設けられ、装置本体2の他方の側部から一方の側部へ延在する。反転搬送路533は、主搬送路530を搬送される用紙の搬送方向において、定着部60より下流側で主搬送路530から下方へ分岐する第1の還流搬送路533aと、画像形成部40の二次転写ニップより上流側で主搬送路530と合流する第2の還流搬送路533bを備える。
【0051】
反転搬送路533は、一方の端部が第1の還流搬送路533a及び第2の還流搬送路533bと繋がる。ここで、第1の還流搬送路533a及び第2の還流搬送路533bと繋がる反転搬送路533の一方の端部は、両面印刷時において用紙の進行方向(搬送方向)の正逆が切り替わるスイッチバックポイントSBPとなる。以下、反転搬送路533において、第1の還流搬送路533aから用紙が搬送される矢印aで示す搬送方向を正方向と称し、第2の還流搬送路533bへ用紙が搬送される矢印bで示す搬送方向を逆方向と称する。
【0052】
また、反転搬送路533は、スイッチバックポイントSBPに対して、正方向の搬送方向における下流側に、スイッチバックローラーとしての搬送ローラー53bを備える。搬送ローラー53bは、図示しないモーターの駆動力が伝達され、正方向と逆方向の双方に用紙を搬送する。
【0053】
さらに、反転搬送路533の正方向の搬送方向における搬送ローラー53bの下流側には、主搬送路530に合流され反転搬送路533と主搬送路530とを繋ぐ両面経路としての合流搬送路533cが設けられている。図4に、合流搬送路533cの部分を拡大して示す。この合流搬送路533cは、スイッチバックされる前の用紙の搬送方向において、上方に折り返すように湾曲した形状を有する湾曲搬送路である。
【0054】
合流搬送路533cは、用紙(主として長尺紙LS)を両面印刷するために使用される両面経路であり、正方向に搬送される用紙の搬送方向におけるレジストローラー53aの上流側で主搬送路530と合流する。本例では、合流搬送路533cは、主搬送路530と第2の還流搬送路533bとの合流箇所より上流側で合流する。また、合流搬送路533cは、用紙が主搬送路530の図中左方向に搬送される向きで主搬送路530と合流する。
【0055】
このように、反転搬送路533を主搬送路530に合流させることで、装置本体2および画像形成装置1全体の大型化を防止しつつ、長尺紙LSの両面印刷を実現することができる。すなわち、本実施の形態では、スイッチバックされる前の搬送方向における搬送経路の下流側を装置本体2内に折り返すように設けることで、画像形成装置1(装置本体2等)の大型化を防止しながら、反転搬送路533の経路長を従来よりも長くすることができる。また、反転搬送路533の合流搬送路533cを主搬送路530における画像形成部40の上流側に繋げる構成とすることで、搬送方向のサイズがより長い長尺紙LSを両面印刷できるようになる。
【0056】
合流搬送路533cは、図示のように、搬送される用紙を折り返すように上方に延びて湾曲している。このため、長尺紙LSの長さによっては、当該長尺紙LSは、両面印刷時のスイッチバック前に、トナー像が形成された1面目の先端が合流搬送路533cを登る方向に搬送される。このとき、長尺紙LSの種類(剛度、長さ、等)にもよるが、搬送ローラー53bの搬送力が不足する場合が発生し得る。スイッチバック前における搬送ローラー53bの搬送力が不足すると、長尺紙LSの1面目の先端が合流搬送路533cを登り切れずに、該長尺紙LSの後端がスイッチバックポイントSBPを通過できなくなる等のケースが発生し得る。
【0057】
そこで、本実施の形態では、長尺紙LSを搬送する搬送ローラー53cを合流搬送路533cに追加的に設ける構成とした。ここで、搬送ローラー53cは、互いに対向する一対のローラーであり、この内の一方のローラーは、図4に示すように、合流搬送路533cを構成する内側の用紙ガイド537の開口に設けられ、搬送ローラー53bとは別個の駆動源であるモーター540によって駆動される。搬送ローラー53cの内の他方のローラーは、合流搬送路533cを構成する外側の用紙ガイド536の開口に設けられ、上記一方のローラーの回転に伴って従動回転する。具体的には、搬送ローラー53bおよび53cは、制御部100の制御の下、同期して回転し、互いに搬送方向および周速度(用紙搬送速度)が同じになるように回転駆動される。
【0058】
このように、搬送ローラー53cの駆動源を搬送ローラー53bの駆動源とは別に設けることにより、長尺紙LSの先端が搬送ローラー53cに突入した後の搬送ローラー53b用の駆動源(モーター)の負荷を軽減することができる。
【0059】
なお、スイッチバック前と比較して、スイッチバック後に長尺紙LSを逆方向に搬送する際には、搬送路を下る方向の搬送となるため、搬送ローラー53bによる搬送力だけで間に合う。他方、この際に長尺紙LSが搬送ローラー53cで挟み込まれていると、搬送ローラー53bの負担が大きくなり、搬送力が不足する虞がある。そこで、本実施の形態では、搬送ローラー53cに不図示のアクチュエーター等を接続して搬送ローラー53cを合流搬送路533cから退避できるようにした。そして、制御部100は、スイッチバック後の逆方向の搬送時に、搬送ローラー53cを長尺紙LSから離間するように、かかるアクチュエーターに制御信号を出力する。
【0060】
また、本実施の形態では、主搬送路530に配置される搬送ローラー53e(図3参照)にも不図示のアクチュエーター等を接続して、搬送ローラー53eを主搬送路530から退避できるようにした。ここで、搬送ローラー53eは、元々は用紙の片面(第1面)印刷用のローラーであり、モーターの種類などが逆転可能な構成になっていない。このため、制御部100は、スイッチバック前の正方向の搬送で長尺紙LSの先端が搬送ローラー53eに入る場合、スイッチバック後の逆方向の搬送時に搬送ローラー53eを長尺紙LSから離間するように、搬送ローラー53eのアクチュエーターに制御信号を出力する。
【0061】
図3を参照すると、搬送ローラー53bと搬送ローラー53cとの距離は、用紙S(定型用紙)の搬送方向サイズよりも長い距離、例えば400mm程度の距離に設定されている。したがって、本実施の形態では、非長尺紙である用紙Sを両面印刷する場合、制御部100は、搬送ローラー53c用のモーター540の駆動制御を行わない。このため、非長尺紙の両面印刷時において、省電力化および制御の簡素化が図られる。
【0062】
このような構成を有する本実施の形態によれば、長尺紙LSの両面印刷を行う場合、スイッチバック前の長尺紙LSを主搬送路530に向けて登らせる際に、搬送力を十分に確保することができる。
【0063】
また、長尺紙LSのスイッチバック後の搬送では、搬送ローラー53cを長尺紙LSから離間して、搬送ローラー53cのモーター540を動作させないので、スイッチバック後の搬送時の省電力化が図られる。
【0064】
ところで、合流搬送路533cは、搬送される用紙を折り返すように湾曲していることから、トナー像が形成された長尺紙LSの第1面に、対向するガイド(図4中の右側の用紙ガイド)が擦れる場合がある。この場合、長尺紙LSの剛度(コシの強さ)等によっては、長尺紙LSの第1面にスクラッチ傷が発生する虞がある。
【0065】
より具体的には、一般に、本例のように搬送ローラー53bから合流搬送路533cまでの距離が離れている場合には、搬送ローラー53bからの長尺紙LSの自由長が確保できるので、対向する用紙ガイドと擦れても長尺紙LSにはスクラッチ傷が発生しにくい。他方、本実施の形態では、合流搬送路533c中に搬送ローラー53cを設けたため、正方向の搬送において搬送ローラー53cの下流に抜けた長尺紙LSの部位は、自由長が短い状態で合流搬送路533cの用紙ガイドに押し付けられる。すなわち、自由長が短い状態で用紙ガイドに押し付けられた長尺紙LSの部位は、見かけ上のコシすなわち用紙ガイドへの押し付け力が高くなり、この結果、スクラッチ傷が発生しやすくなる。
【0066】
かかる問題に鑑みて、本実施の形態では、上述したスクラッチ傷等の発生の虞のある合流搬送路533cの領域に、長尺紙LSの画像形成面に当接して回転するコロ53dを設けている。かかる構成により、長尺紙LSの第1面が搬送ガイドに対して擦れることが防止され、この結果、スクラッチ傷等の発生が防止される。
【0067】
図3および図4に示すように、コロ53dは、正方向の搬送方向における搬送ローラー53cの下流側に位置する。コロ53dは、合流搬送路533cにおける搬送ローラー53cの近傍に位置し、コロ53dの軸は搬送ローラー53cの軸と平行である。コロ53dは、合流搬送路533cを形成し長尺紙LSの第1面と対向する外側の用紙ガイド536に設けられた開口から、合流搬送路533c(長尺紙LSの第1面)を臨むように配置されている。コロ53dは、ADUの一部をなすことから、装置本体2から出し入れ可能である。
【0068】
なお、合流搬送路533c中、正方向の搬送方向における搬送ローラー53cの上流側は、長尺紙LSの搬送方向の先端が直線的に突き当たる領域であり、言い換えると長尺紙LSと搬送ガイドとの擦れが生じやすい領域である。したがって、コロ53dをかかる領域に代替的あるいは付加的に設けることも考えられる。他方、本発明者らの実験結果では、この領域にコロを設けた場合、長尺紙LSがひっかかってジャムが発生しやすくなることが分かった。このため、本実施の形態では、上述のように、合流搬送路533c中、正方向の搬送方向における搬送ローラー53cの下流側近傍にコロ53dを配置している。
【0069】
本実施の形態では、合流搬送路533cにおけるスイッチバック前の搬送方向の始端に対向し、長尺紙LSの搬送方向における先端を合流搬送路533cに導入する第1の導入部としての用紙ガイド部材535が設けられる。用紙ガイド部材535は、合流搬送路533cのガイド板536の下側の端部に近接して設けられ、両面印刷時における長尺紙LSの搬送を補助ないし支援する機能を有する。用紙ガイド部材535は、長尺紙LSの搬送方向における先端を、ガイド板536で受けさせるように、対向するガイド板536の下端に対して段差を形成する段差形成部材である。すなわち、用紙ガイド部材535における正の搬送方向に沿った下流側の端部は、ガイド板536の下側の端部よりも上側に位置する。なお、ガイド板536の構成は後述する。
【0070】
また、本実施の形態では、合流搬送路533cにおけるスイッチバック前の搬送方向の終端に対向し、長尺紙LSの搬送方向における先端を受けて主搬送路530に導入する第2の導入部としての開口部530aが、主搬送路530の下側の用紙ガイドに設けられている。かかる開口部530aは、主搬送路530の下側の用紙ガイドの一部が上側ガイド部材537の上端よりも下方の位置まで張り出すように屈曲することで、図4に示すように、かかる用紙ガイドの屈曲部分が上側ガイド部材537の上端に対して段差を形成している。このように、用紙の1面目の経路を構成する主搬送路530の下側の用紙ガイドの同面および下方の位置に合流搬送路533cとの合流経路を構成することにより、1面目の通紙時に用紙が開口部530aで引っかかることを防止し、合流搬送路533cおよび主搬送路530間での長尺紙LSの出し入れを円滑に行うことができる。
【0071】
図5に、合流搬送路533cにおける用紙ガイド部材の一部をなすガイド板536を示す。図示のように、ガイド板536は、曲率を有するように湾曲しており、搬送ローラー53cにおける一方(図1および図4中の右側)のローラーが挿入される開口536aが複数(この例では3つ)設けられている。用紙に対向する側となるガイド板536の内側は、図示のように、下側の領域が平面であり、上側の領域には複数のリブ536bが搬送方向に延びるように隆起している。
【0072】
図1中に点線で示すように、反転搬送路533および反転搬送路533に配置されたローラー等は、自動両面反転搬送ユニット(Auto Duplex Unit:ADU)の構成部分として、装置本体2に対して手前側に引き出し可能となっている。
【0073】
より詳しくは、例えばジャム処理時にADUの操作レバー(図示せず)を引き出すことで、図3に示す装置奥側の板状のフレーム533f、および該フレーム533fに取り付けられた合流搬送路533cを含む反転搬送路533を構成する大部分の用紙ガイド部材およびローラー等が引き出される。他方、反転搬送路533を構成する用紙ガイド部材のうち、底面となる一部のガイド部材534は、装置本体2側に固定されている。以下、装置本体2側に固定されているガイド部材534を本体側下ガイドと称する。また、上述した用紙ガイド部材535は、本体側下ガイド534に取り付けられており、ADUが引き出される際にも装置本体2側に残る。
【0074】
本実施の形態では、このように両面搬送経路を構成するガイド部材の一部を装置本体2側に固定する(残す)ように構成することで、ADUが引き出された際のジャム処理性を向上させるとともに、ADUや画像形成装置1全体の大型化を防止している。
【0075】
本実施の形態の画像形成装置1では、スイッチバック動作の前後で長尺紙LSを合流搬送路533cに通すことにより、搬送方向のサイズがより長い長尺紙LSの両面印刷を行うことができる。また、本実施の形態によれば、両面搬送の経路が略環状になっていることから、ジャム処理時にフレーム533f等を引き出した際に長尺紙LSが内側のガイド部材に巻き付くように保持される。したがって、本実施の形態によれば、かかるジャム紙の除去作業時に、用紙破損(ギロチン等)を防ぎつつ用紙を取り出し易いメリットがある。
【0076】
ところで、上述のように、用紙搬送用のガイド部材(以下、用紙ガイドという。)をADUと装置本体2側とに振り分け、かかる用紙ガイド間のクリアランス(隙間)に用紙搬送路が形成される場合、以下のような問題により、用紙搬送路のクリアランスを正確に保持することが難い領域が発生する。
【0077】
すなわち、ADUの奥側は、例えば装置本体2側にフレーム533fの端部を嵌めこむ等により、装置本体2との位置合わせを正確に行うことができる。他方、このような位置合わせの機構をADUの手前側に設けることは容易ではない。具体的には、ADUの手前側は、装置本体2の開閉扉(図示せず)を開けて用紙搬送路等を露出させる側になる。このため、ADUの手前側にフレーム533fのような用紙搬送路を塞ぐ部材を設けると、ジャム処理時に用紙の状態を視認しにくくなり、用紙の取り出し作業が煩雑になる。加えて、装置本体2の開閉扉は可動の部材であり剛性が高くないことから、ADUの手前側の部位を装置本体2の開閉扉と位置合わせする機構を設けた場合でも、装置本体2に対する位置合わせの正確性を担保することは難しい。
【0078】
総じて、画像形成装置1の前後方向(手前側と奥側)にADUを出し入れする構成では、装置本体2側に固定された用紙ガイドと、かかる用紙ガイドに対向ないし接続され、装置本体2に出し入れされるADU側の用紙ガイドと、の隙間の精度を、装置手前側で確保することが容易ではない。具体的には、ADUの重量によって、装置手前側における本体側下ガイド534および用紙ガイド部材535と、これら部材に対向するADU側の上側ガイド部材537との間隔が狭まる傾向がある。同様に、装置手前側における主搬送路530とADUの合流搬送路533cとの接続部分も、クリアランスを常に正確に維持することは容易でない。このように、ADUを装置本体2に出し入れする構成では、長尺紙LSの搬送経路の隙間を適正に保つことが難しい問題があった。
【0079】
かかる問題に鑑みて、本実施の形態では、図6および図7に示すように、一対の用紙ガイドである本体側下ガイド534と上側ガイド部材537との間に、用紙搬送空間(隙間)を保持する隙間保持部としてのコロ533gを設けている。ここで、図7は、合流搬送路533cの入口側を図6の下側から見た図であり、図7の右側が装置奥側、左側が装置手前側を示す。
【0080】
コロ533gは、本体側下ガイド534および上側ガイド部材537の隙間を搬送される長尺紙LSの幅よりも外側の位置に配置されている。この例では、コロ533gは、上側ガイド部材537の下面における装置手前側すなわち、装置本体2の手前方向における端部側に、回転可能に軸支されている。
【0081】
コロ533gは、用紙ガイド部材535の近傍に設けられ、用紙ガイド部材535と干渉しない位置に配置されている。また、コロ533gは、本体側下ガイド534の上に乗るように接触し、上側ガイド部材537には接触しないように、コロ533gの軸が上側ガイド部材537によって支持されている。ここで、コロ533gの軸は、用紙搬送方向と平行であり、用紙を搬送するローラー(例えば搬送ローラー53b,53cなど)の軸と直交する向きにある。
【0082】
かかる構成によれば、装置本体2内に収容されているADUを装置手前側(図5の左側)に引き出す動作時に、上側ガイド部材537が本体側下ガイド534に対して移動する。かかる移動時に、上側ガイド部材537に軸支され本体側下ガイド534に当接しているコロ533gは、上側ガイド部材537と本体側下ガイド534との相対移動に伴って本体側下ガイド534上で従動回転する車輪としての機能を奏する。このため、本実施の形態によれば、かかるコロ533gの回転により、ADUの引き出しの際に装置本体2側との摩擦抵抗を少なくして、ADUを円滑に引き出すことができる。
【0083】
また、このようにして引き出されたADUを装置本体2内に戻す動作において、本体側下ガイド534上にコロ533gが乗ると、コロ533gは、同様に車輪としての機能を奏し、ADUの奥側(フレーム533f)の位置決めが完了するまで本体側下ガイド534上で回転する。そして、ADUが装置本体2内に完全に戻されると、コロ533gは、用紙ガイド部材535の手前の位置で停止し(図4参照)、上側ガイド部材537を下方から支持ないし押圧することで、本体側下ガイド534および上側ガイド部材537間の隙間(クリアランス)を一定に保持する。
【0084】
このように、コロ533gを一対の用紙ガイドの隙間を保持する隙間保持部材として利用した本実施の形態によれば、簡素かつ低コストな構成によって、用紙搬送路の隙間を一定に保ち、かかるクリアランスの精度を向上させることができる。この結果、両面印刷時における長尺紙LSの搬送性を安定ないし向上させることができる。
【0085】
また、本実施の形態では、上述したように、合流搬送路533cを形成するガイド板536の端部と、本体側下ガイド534および主搬送路530のガイド部材との接続箇所に、各々段差を設けている。すなわち、本実施の形態では、各ガイド間のクリアランスに誤差が発生する虞のある箇所で且つコロ533gを配置するスペース的な余裕がない領域には、各々のガイド間に段差を設けることによって、両ガイド間のクリアランスの誤差を吸収する構成としている。この結果、両面印刷時における長尺紙LSの搬送性を安定させることができる。
【0086】
次に、両面印刷時における搬送動作について説明する。
【0087】
まず、給紙トレイユニット51a~51cから給紙された用紙Sに両面印刷を行う場合を説明する。画像形成装置1では、主搬送路530を正方向(図1の左方向)に搬送されて画像形成部40および定着部60を通過した用紙Sは、上側を向いた面(第1面)にトナー画像が転写および定着される。続いて、用紙Sは、主搬送路530から第1の還流搬送路533aを経由して反転搬送路533に搬送されるように、制御部100によって搬送制御される。さらに、制御部100は、用紙Sの搬送方向後端がスイッチバックポイントSBPを通過すると、搬送ローラー53bの回転方向を切り替えて搬送方向を反転させ、用紙Sを反転搬送路533から第2の還流搬送路533bを経由して主搬送路530に搬送するように搬送制御する。
【0088】
かかる搬送制御により、非長尺用紙である用紙Sは、矢印aで示す正方向への搬送において、かかる用紙Sの先端が合流搬送路533cに入る手前で、用紙Sの後端がスイッチバックポイントSBPを通過する。続いて、用紙Sは、第2の還流搬送路533bを経て、画像形成面である第1面が下側を向いて主搬送路530に搬送され、上側を向いた第2面に画像形成される。両面にトナー画像が形成された用紙Sは、主搬送路530から排紙部52に排紙されるように、制御部100によって搬送制御される。したがって、非長尺用紙である用紙Sが両面印刷される場合には、用紙Sは、合流搬送路533cには搬送されない。
【0089】
次に、合流搬送路533cを用いて長尺紙LSの両面印刷を行う場合を説明する。以下は、反転搬送路533での正方向への搬送において、合流搬送路533cを通って主搬送路530まで搬送される長さを有する長尺紙LSを搬送する場合の例である。
【0090】
長尺紙LSは、装置本体2の外部給紙口2aから外部給紙搬送路531を経由して、主搬送路530を正方向(図1の左方向)に搬送される。この後、上述と同様に、画像形成部40および定着部60を通過した長尺紙LSは、上側の第1面にトナー画像が転写および定着され、主搬送路530から第1の還流搬送路533aを経由して反転搬送路533に搬送される。長尺紙LSは、反転搬送路533を矢印aで示す正方向に搬送されると、搬送方向の先端が合流搬送路533cに入るように、制御部100によって搬送ローラー53bが駆動制御される。
【0091】
このとき、図4に示すように、長尺紙LSは、用紙ガイド部材535(段差形成部材)の上を滑り、用紙ガイド部材535の傾斜によって長尺紙LSの先端側が上昇するように搬送される。続いて、長尺紙LSの先端は、ガイド板536の下側の平面領域(図5参照)に当接した後、ガイド板536の湾曲形状に沿って移動(上昇)し、搬送ローラー53cに突入する。このとき、ガイド板536の平面部分で長尺紙LSの先端が受けられ、ガイド板536に突き当てられる長尺紙LSの応力がかかる平面によって均等に分散される。このため、湾曲する合流搬送路533c内で長尺紙LSが座屈すること等が抑制される。
【0092】
また、制御部100は、長尺紙LSの先端が搬送ローラー53cに突入する際に搬送ローラー53cの回転を開始するように駆動源(モーター540)に駆動信号を出力し、搬送ローラー53bおよび53cの両方によって長尺紙LSを正方向に搬送する。ここで、制御部100は、搬送ローラー53bおよび搬送ローラー53cの周速度が同一になるように各々の駆動源に駆動信号を出力する。
【0093】
続いて、長尺紙LSは、ガイド板536のリブ536bに当接しながら搬送ローラー53bおよび53cの両方により搬送され、長尺紙LSの進行方向の先端側が上述した開口部530aを通って主搬送路530に入る。ここで、合流搬送路533cを形成する外側の用紙ガイドから合流搬送路533cを臨むコロ53dが設けられていることから、長尺紙LSの第1面の先端は、搬送ローラー53cを抜けた後、用紙ガイドと接触せずにコロ53dに接触する。この後、コロ53dは、当接した長尺紙LSの第1面の移動に伴って、図4中の時計方向に従動回転する。本実施の形態によれば、かかるコロ53dの機能により、長尺紙LSの第1面が用紙ガイドに擦れることによるスクラッチ傷の発生を、効果的に防止することができる。また、合流搬送路533cを形成する上側ガイド部材537の上端と主搬送路530の下側の用紙ガイド(開口部530a)との間で段差が設けられていることから、長尺紙LSは、開口部530aの段差部分から円滑に主搬送路530内に導入される(図8参照)。
【0094】
そして、制御部100は、長尺紙LSの搬送方向の後端がスイッチバックポイントSBPを通過すると、搬送ローラー53bおよび53cの回転方向を切り替えて搬送方向を反転させるスイッチバックの動作を実行する。ここで、制御部100は、スイッチバック後の逆方向の搬送時に、搬送ローラー53cを搬送ローラー53bと略同一の周速度で逆回転させるようにモーター540に駆動信号を出力する。かかる動作において、長尺紙LSは、反転搬送路533から第2の還流搬送路533bを経由して主搬送路530に搬送するように、制御部100によって搬送制御される。
【0095】
なお、スイッチバック動作の他の例として、以下のような動作としてもよい。すなわち、制御部100は、長尺紙LSの搬送方向の後端がスイッチバックポイントSBPを通過すると、搬送ローラー53cを長尺紙LSから離間(退避)させるとともに、搬送ローラー53bの回転方向を切り替えて搬送方向を反転させる動作を実行する。
【0096】
総じて、スイッチバックの前後で長尺紙LSが突入される搬送ローラーに関し、当該搬送ローラーの回転を駆動する駆動源(モーター)等の種類により、一方向にのみ回転する搬送ローラーであれば搬送路から離間させ、正逆の両方向に回転できる搬送ローラーであれば搬送路から離間しない構成とすればよい。
【0097】
かかる搬送制御により、長尺紙LSの進行方向が反転して逆方向に搬送され、長尺紙LSの搬送方向の後端は主搬送路530を逆方向(図4における右方向)に移動し、搬送方向の先端は、反転搬送路533から第2の還流搬送路533bを経由して主搬送路530に搬送される。
【0098】
この後は、用紙Sの場合と同様に、長尺紙LSは、第2の還流搬送路533bを経て、画像形成面である第1面が下側を向いて主搬送路530に搬送され、上側を向いた第2面にトナー像が転写および定着される。両面にトナー画像が形成された長尺紙LSは、主搬送路530から排紙部52に排紙されるように、制御部100によって搬送制御される。
【0099】
以上のように、本実施の形態によれば、長尺紙LSを両面印刷する場合の搬送動作において、長尺紙LSを安定して搬送することができ、長尺紙LSの搬送性の向上を図り、ひいては長尺紙LSのジャム発生を防止ないし抑制することができる。
【0100】
上述した実施の形態では、コロ533gは、上側ガイド部材537(すなわちADU側)に取り付けられ、ADUの出し入れの際に相対移動される本体側下ガイド534に従動して回転する構成例とした。他の構成例として、コロ533gは、本体側下ガイド534(すなわち装置本体2側)に取り付けられ、ADUの上側ガイド部材537に対して従動回転する構成としてもよい。
【0101】
[付記]
上述した実施の形態によれば、以下の(1)~(11)に記述するような技術的な思想ないし構成が導き出される。
【0102】
(1)長尺紙LSにトナー画像を形成する画像形成部40と、
長尺紙LSに形成された前記トナー画像を定着させる定着部60と、
長尺紙LSを画像形成部40および定着部60に搬送する主搬送路530と、
主搬送路530における定着部60の搬送方向下流側から分岐し、長尺紙LSの搬送方向をスイッチバックポイントSBPで逆行させることにより当該長尺紙LSの表裏を反転させて画像形成部40の上流側に搬送する両面搬送路533と、
を備え、
両面搬送路533は、長尺紙LSがスイッチバックされる前の搬送方向において折り返すように湾曲する湾曲搬送路533cを有し、
湾曲搬送路533cには、長尺紙LSを搬送する搬送ローラー53cを備える、
画像形成装置。
【0103】
(2) 上記(1)の構成において、
湾曲搬送路533cは、主搬送路530における画像形成部40の上流側に繋がっている。
【0104】
(3) 上記(1)または(2)の構成において、
湾曲搬送路533cに搬送される長尺紙LSの画像形成面に当接して回転するコロ53dを備える。
【0105】
(4) 上記(1)から(3)のいずれかの構成において、
搬送ローラー53cと、長尺紙LSの搬送方向をスイッチバックポイントSBPで逆行させるスイッチバックローラー53bとの距離は、長尺紙LSの搬送方向の長さよりも短く、定型用紙の搬送方向の長さよりも長い。
【0106】
(5) 上記(4)の構成において、
搬送ローラー53cは、長尺紙LSがスイッチバックポイントSBPで逆行される前に、スイッチバックローラー53bと同一の周速度で長尺紙LSを搬送する。
【0107】
(6) 上記(4)または(5)の構成において、
搬送ローラー53cおよびスイッチバックローラー53bは、異なる駆動源により駆動される。
【0108】
(7) 上記(1)から(6)のいずれかの構成において、
搬送ローラー53cは、長尺紙LSがスイッチバックされる際に該長尺紙LSから離間される。
【0109】
(8) 上記(3)の構成において、
コロ53dは、スイッチバックされる前の搬送方向における搬送ローラー53cの下流の湾曲搬送路533cに配置されている。
【0110】
(9) 搬送方向における長さが所定長さ以上の長尺紙LSの両面に画像形成部40で画像形成するために、長尺紙LSがスイッチバックポイントSBPで逆行される前の搬送方向において折り返すように湾曲する湾曲搬送路533cを有する両面搬送路533を備えた画像形成装置1における用紙搬送制御方法であって、
長尺紙LSの両面にトナー画像を形成する場合、当該長尺紙LSがスイッチバックポイントSBPで逆行される前に、湾曲搬送路533cに配置された搬送ローラー53cを駆動して当該長尺紙LSを搬送する、
用紙搬送制御方法。
【0111】
上記実施の形態および変形例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 画像形成装置
2 装置本体
2a 外部給紙口
10 画像読取部
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
50 用紙搬送部
51 給紙部
51a~51c 給紙トレイユニット
52 排紙部
53 搬送経路部
53a レジストローラー対
53b 搬送ローラー(スイッチバックローラー)
53c 搬送ローラー
53d コロ
53e 搬送ローラー
530 主搬送路
530a 開口部(第2の導入部)
531 外部給紙搬送路
532 給紙搬送路
533 反転搬送路(両面搬送路)
533a 第1の還流搬送路
533b 第2の還流搬送路
533c 合流搬送路(合流経路、湾曲搬送路)
533f フレーム
533g コロ(隙間保持部)
534 本体側下ガイド(用紙ガイド)
535 用紙ガイド部材(第1の導入部)
536 ガイド板(用紙ガイド)
536a 開口
536b リブ
537 上側ガイド部材(用紙ガイド)
540 モーター(駆動源)
60 定着部
100 制御部(搬送制御部)
ADU 自動両面反転搬送ユニット
SBP スイッチバックポイント
LS 長尺紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8