(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/04 20060101AFI20221109BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221109BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20221109BHJP
B60W 50/02 20120101ALI20221109BHJP
【FI】
B60W50/04
G08G1/16 C
B60W50/14
B60W50/02
(21)【出願番号】P 2018104331
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2017163038
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦部 洋
(72)【発明者】
【氏名】山根 龍一
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-197131(JP,A)
【文献】特開2003-072414(JP,A)
【文献】特開2005-219660(JP,A)
【文献】特表2011-504848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員による運転操作の少なくとも一部を自動で制御して自車両の走行を自動で制御する運転支援機能を制御する運転支援制御部と、
前記運転支援機能の作動状態に応じて前記運転支援機能の作動状態情報を報知する報知部と、を備え、
前記運転支援制御部は、前記報知部によって報知されている前記作動状態情報と前記運転支援機能の作動状態とが異なっている場合、前記運転支援機能の作動状態を維持するまたは準備状態にする運転支援装置。
【請求項2】
前記運転支援機能の作動状態として、少なくとも前記自車両の走行を自動で制御する運転支援実行状態と、前記運転支援実行状態に遷移可能な運転支援可能状態とを含み、
前記運転支援制御部は、前記運転支援機能の作動状態が前記運転支援実行状態であり、且つ前記報知部によって報知されている前記作動状態情報と前記運転支援機能の実際の作動状態とが異なっている場合、前記運転支援機能の作動状態
を準備状態にし、前記運転支援機能の作動状態が前記運転支援可能状態であり、且つ前記報知部によって報知されている前記作動状態情報と前記運転支援機能の実際の作動状態とが異なっている場合、前記運転支援機能の前記運転支援可能状態を継続して前記運転支援実行状態への遷移を禁止する請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転支援制御部は、前記報知部によって報知されている前記作動状態情報と前記運転支援機能の実際の作動状態とが異なっているため前記運転支援機能の作動を準備状態にした場合、前記運転支援機能の作動状態情報として前記運転支援機能が準備状態であることを報知するように前記報知部に指令する請求項1または請求項2に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、車線逸脱防止装置の制御状態を表示手段に表示することが知られている。
【0003】
ところで、車両の操舵を自動で制御するシステムの作動状態を表示する場合、操舵機構を制御するコントローラと表示装置を制御するコントローラとが通信し、操舵機構を制御するコントローラからの指令にしたがって表示装置を制御するコントローラが表示制御を行なう構成がある。
【0004】
このような構成の場合、表示装置や表示装置を制御するコントローラの不具合等が原因で、操舵機構の作動状態と表示装置の表示内容が乖離する可能性がある。自動で操舵する制御が操舵機構に介入しているか否かによって、車両の挙動が変わる。このため、このような制御の作動状態を運転者が正しく把握できないと、運転者が違和感を覚えたり、車両の走行に影響を与えたりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の表示手段では、実際に表示手段に表示されている内容が車線逸脱防止装置の作動状態と乖離していたとしても、その乖離を修正することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、運転支援機能の作動状態を正しく運転者に報知することができる運転支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、乗員による運転操作の少なくとも一部を自動で制御して自車両の走行を自動で制御する運転支援機能を制御する運転支援制御部と、前記運転支援機能の作動状態に応じて前記運転支援機能の作動状態情報を報知する報知部と、を備え、前記運転支援制御部は、前記報知部によって報知されている前記作動状態情報と前記運転支援機能の作動状態とが異なっている場合、前記運転支援機能の作動状態を維持するまたは準備状態にするものである。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、運転支援機能の作動状態を正しく運転者に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る運転支援装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る運転支援装置の運転支援機能の状態遷移図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る運転支援装置の作動状態修正処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る運転支援装置の作動状態修正処理による処理内容を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例の他の態様に係る運転支援装置の作動状態修正処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例の他の態様に係る運転支援装置の作動状態修正処理による処理内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る運転支援装置は、乗員による運転操作の少なくとも一部を自動で制御して自車両の走行を自動で制御する運転支援機能を制御する運転支援制御部と、運転支援機能の作動状態に応じて運転支援機能に関する情報を報知する報知部と、を備え、運転支援制御部は、報知部によって報知されている内容と運転支援機能の作動状態とが異なっている場合、運転支援機能の作動を制御するよう構成されている。これにより、運転支援機能の作動状態を正しく運転者に報知することができる。
【実施例】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る運転支援装置について詳細に説明する。
図1において、本発明の一実施例に係る運転支援装置を搭載した車両1は、ブレーキ2と、モータ3と、エンジン4と、ステアリング5と、車両制御部6と、報知部7と、運転支援制御部8と、を含んで構成される。
【0013】
ブレーキ2は、不図示のブレーキペダルに入力された運転者の操作圧力(ペダル踏力)により不図示の車輪に機械的な制動力を働かせる。ブレーキ2は、車両制御部6の制御により車輪に機械的な制動力を働かせられるようになっている。
【0014】
モータ3は、例えば、複数の永久磁石が埋め込まれたロータと、ステータコイルが巻きつけられたステータと、を備えた同期型モータで構成される。モータ3は、ステータコイルに三相交流電圧が印加されることでステータに回転磁界が形成され、この回転磁界によりロータが回転して駆動力を生成する。
【0015】
また、モータ3は、発電時における回転抵抗を車両1の制動に利用するように駆動され
る。これにより、モータ3は、回生によって発電できる機能を有する。
【0016】
エンジン4には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン4は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。本実施例においては、モータ3とエンジン4の少なくとも一方の駆動力によって車両1を走行させるようになっている。
【0017】
ステアリング5は、不図示のハンドルに入力された運転者の操作により不図示の操舵輪の向きを変えて車両1の進行する向きを変える。ステアリング5は、車両制御部6の制御により操舵輪の向きを変えられるようになっている。
【0018】
車両制御部6は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0019】
車両制御部6のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを車両制御部6として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、車両制御部6として機能する。
【0020】
車両制御部6の出力ポートには、ブレーキ2と、モータ3と、エンジン4と、ステアリング5と、を含む各種制御対象類が接続されている。
【0021】
車両制御部6は、運転支援制御部8などの要求により各種制御対象類を制御して車両1の走行を制御する。
【0022】
報知部7は、例えば、モニタ装置、スピーカ、ランプ、メータなどで構成され、視覚、聴覚などを通じて各種情報を運転者に報知する。
【0023】
報知部7は、報知制御部71を備えている。報知制御部71は、運転支援制御部8などと通信して、運転支援制御部8などの指令に応じて各種報知を行なう。また、報知制御部71は、運転支援制御部8からの要求により報知部7での報知内容を運転支援制御部8に送信する。
【0024】
運転支援制御部8は、CPUと、RAMと、ROMと、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0025】
運転支援制御部8のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを運転支援制御部8として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、運転支援制御部8として機能する。
【0026】
運転支援制御部8の入力ポートには、カメラ81と、ミリ波レーダ82と、車速センサ83と、操舵角センサ84とを含む各種センサ類が接続されている。
【0027】
カメラ81は、車両1の前方を撮像するように配置されている。運転支援制御部8は、カメラ81で撮像した画像から、車両1の前方に存在する物体や路面の状態を検出する。
【0028】
ミリ波レーダ82は、ミリ波を送受信して車両1の前方に存在する物体や、その物体との距離を検出する。
【0029】
車速センサ83は、車両1の速度を検出する。操舵角センサ84は、不図示のハンドルの操舵角を検出する。
【0030】
車両制御部6と運転支援制御部8は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行なう。
【0031】
運転支援制御部8は、各種センサ類の検出結果に基づいて、例えば、車線逸脱防止支援機能のような運転支援機能を制御する。
【0032】
運転支援制御部8は、運転支援機能の作動状態を
図2に示すような状態遷移図に従って制御する。
【0033】
図2において、車両1のイグニッションスイッチがオンにされると、「IG ON」状態になり、初期状態は「非作動中」状態となる。
【0034】
「非作動中」状態で運転支援機能のスイッチがオンにされると、「作動中」状態になり、初期状態は「スタンバイ」状態となる。運転支援機能のスイッチは、例えば、ハンドル近傍に設置されており、運転者が操作可能な位置に設置されている。
【0035】
「スタンバイ」状態で運転支援機能の作動条件が充たされると、「アクティブ」状態になり、初期状態は「運転支援可能」状態となる。
【0036】
「運転支援可能」状態で運転支援機能の実行条件が充たされると、「運転支援実行」状態となる。
【0037】
「非作動中」状態または「作動中」状態で各種センサ類の故障などで運転支援機能を実行できなくなると、「Fail」状態になる。「Fail」状態で運転支援機能を実行できるようになると、「非作動中」状態となる。
【0038】
「スタンバイ」状態は、運転支援機能の作動条件が充たされるかを判定している状態、または運転支援機能の作動条件が充たされていないと判定されている状態であり、例えば、車線逸脱防止支援機能では、車線検知などの必要情報の取得や車速上昇待ちの状態である。「運転支援可能」状態は、実行条件を充たせば、いつでも「運転支援実行」状態に遷移可能であるが、実際に車両制御は行なわれていない状態であり、「運転支援実行」状態は、実際に車両制御が行なわれている状態である。なお、この「スタンバイ」状態は、本発明における準備状態に相当する。
【0039】
車線逸脱防止支援機能での運転支援機能の作動条件とは、車速や操舵角の条件や車線を検出できていることなどである。車線逸脱防止支援機能での運転支援機能の実行条件とは、車線の逸脱を検出していることなどである。ここで車線の逸脱とは、具体的には車両1が車線を逸脱しそうになっている状態、または車線を逸脱した状態を示す。
【0040】
車線逸脱防止支援機能での「運転支援可能」状態は、車速や操舵角や表示状態の条件を充たし、かつ車線を検出できている状態であり、「運転支援実行」状態は、操舵制御が行なわれステアリングトルクが付与されている状態である。
【0041】
自動レーンチェンジ機能での運転支援機能の作動条件とは、車線を検出できていること、車線変更操作(ウィンカーの操作)が行なわれていることなどである。自動レーンチェンジ機能での運転支援機能の実行条件とは、変更先の車線に車両がいないことなどである。
【0042】
自動レーンチェンジ機能での「運転支援可能」状態は、ウィンカーが操作されて周辺検知されているが、周辺に車両があるため自動車線変更制御(駆動力や制動力、操舵の制御)が実行されていない状態であり、「運転支援実行」状態は、駆動力や制動力や操舵が自動制御され車両1が車線変更するよう走行が制御されている状態である。
【0043】
自動駐車機能での運転支援機能の作動条件とは、駐車枠を検知していること、目標駐車位置の設定がされていることなどである。自動駐車機能での運転支援機能の実行条件とは、自動駐車開始の操作が行なわれたことなどである。
【0044】
自動駐車機能での「運転支援可能」状態は、駐車枠の検知や目標駐車位置の設定がされているが、操舵や駆動力と制動力の制御が実行されていない状態であり、「運転支援実行」状態は、駆動力や制動力や操舵が自動制御され車両1が目標駐車位置に駐車するよう走行が制御されている状態である。
【0045】
ACC(Adaptive Cruise Control)では、運転支援機能の作動条件も運転支援機能の実行条件も車速が所定速度以上であることなどであり、「スタンバイ」状態から「運転支援可能」状態を経ずに「運転支援実行」状態となる。
【0046】
ACCでの「スタンバイ」状態は、ACCの機能スイッチがオンだが、車速が所定速度以上等の条件を充たしていない状態であり、「運転支援実行」状態は、先行車追従制御や定速走行制御が実行中の状態である。
【0047】
運転支援制御部8は、このような運転支援機能の作動状態に応じた報知指令を報知制御部71に送信して報知部7に運転支援機能の作動状態を報知させる。
【0048】
運転支援制御部8は、報知制御部71から報知部7の報知内容を読み込み、報知部7の報知内容が運転支援機能の作動状態と一致していない場合、運転支援機能の作動状態を維持するまたは「スタンバイ」状態にする。
【0049】
以上のように構成された本実施例に係る運転支援装置による作動状態修正処理について、
図3を参照して説明する。なお、以下に説明する作動状態修正処理は、車線逸脱防止支援機能の作動状態をモニタ装置などに「スタンバイ」状態と「アクティブ」状態と「非作動中」状態との3種類のうちいずれかの作動状態である旨を表示させる場合を示しており、運転支援制御部8は、報知指令として表示指令を送信する。また、以下に説明する作動状態修正処理は、運転支援制御部8が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0050】
ステップS1において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動状態を読み込む。
【0051】
ステップS2において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動状態に応じた表示指令を報知制御部71に送信して報知部7に車線逸脱防止支援機能の作動状態を表示させる。
【0052】
ステップS3において、運転支援制御部8は、報知部7での表示内容を報知制御部71から読み込む。
【0053】
ステップS4において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知部7での表示内容が一致しているか否かを判定する。車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知部7での表示内容が一致していると判定された場合、運転支援制御部8は、処理を終了する。
【0054】
ステップS4において車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知部7での表示内容が一致していないと判定された場合、ステップS5において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「非作動中」状態であるか否かを判定する。
【0055】
ステップS5において車線逸脱防止支援機能の作動状態が「非作動中」状態であると判定されると、ステップS6において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動停止を継続する。
【0056】
ステップS7において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能が「非作動中」状態である旨を表示するよう表示指令を報知制御部71に送信して、処理を終了する。上述の通り、ステップS6及びステップS7の処理は、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「非作動中」状態であり、かつ報知部7での表示内容が作動状態と一致していない場合に実行される。すなわち、ステップS7の処理が実行されるまでは、報知部7での表示内容は「スタンバイ」状態または「アクティブ」状態である旨を表示しており、ステップS7ではその表示を変更して「非作動中」状態である旨を表示するよう表示指令を送信する。
【0057】
ステップS5において、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「非作動中」状態でないと判定されると、ステップS8において運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動状態を「スタンバイ」状態にする。
【0058】
ステップS9において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能が「スタンバイ」状態である旨を表示するよう表示指令を報知制御部71に送信して、処理を終了する。上述の通り、ステップS8及びステップS9の処理は、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「作動中」状態、すなわち「スタンバイ」状態または「アクティブ」状態であり、かつ報知部7での表示内容が作動状態と一致していない場合に実行される。報知部7での表示内容が「非作動中」状態を示すものである場合の他、作動状態が「スタンバイ」状態であるにもかかわらず報知部7での表示内容が「アクティブ」状態を示す内容である場合や、作動状態が「アクティブ」状態であるにもかかわらず報知部7での表示内容が「スタンバイ」状態である場合も含まれる。すなわち、ステップS9の処理が実行されるまでは、報知部7での表示内容は「スタンバイ」状態と「アクティブ」状態と「非作動中」状態との3種類のいずれかが表示されていることになる。「アクティブ」状態または「非作動中」状態のいずれかである旨が表示されている場合、ステップS9ではその表示を変更して「スタンバイ」状態である旨を表示するよう表示指令を送信する。「スタンバイ」状態を示す旨が表示されている場合、ステップS9では「スタンバイ」状態を示す旨の表示を継続するよう表示指令を送信する。
【0059】
このような作動状態修正処理による車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知制御部71から送信される表示内容での運転支援制御部8の処理内容を
図4に示す。図中、一番上の行は報知部7の状態(表示状態)を示す見出し、一番左の列は車線逸脱防止支援機能の作動状態を示す見出しであり、それ以外の4つの枠が処理内容を示している。
【0060】
図4に示すように、車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知制御部71から送信される表示内容が一致している場合(図の処理内容の1-(a)と、1-(d)の枠)、車線逸脱防止支援機能の作動も報知部7の表示も継続される。
【0061】
車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知制御部71から送信される表示内容が一致していない場合(図の処理内容の1-(b)と、1-(c)の枠)の制御について以下に示す。車線逸脱防止支援機能が「非作動中」状態である場合(図の処理内容の1-(c)の枠)は「非作動中」状態を継続し、報知部7の表示は「非作動中」状態である旨を示す表示内容にされる。車線逸脱防止機能が「作動中」状態である場合(図の処理内容の1-(b)の枠)は、作動状態が「スタンバイ」状態にされ、報知部7の表示は「スタンバイ」状態である旨を示す表示内容にされる。
【0062】
このように、上述の実施例では、報知部7の報知内容に応じて運転支援機能の作動を制御するため、報知部7に不具合が生じている場合であっても報知内容と運転支援機能の作動状態とに乖離が生じることを抑制して、運転者が運転支援機能の作動状態を正しく把握することができる。このため、運転者が車両1の走行制御に関わる操作を適切に行なうことができる。
【0063】
また、報知部7での報知内容と運転支援機能の作動状態とに乖離が生じている場合は運転支援機能の作動状態を維持するまたはスタンバイ状態にするため、運転支援機能が作動していない、特にアクティブ状態でないにもかかわらず運転者がそのことを把握できなかったり、運転支援機能が作動して車両1の走行が自動で制御されているにもかかわらず運転者がそのことを認識できずに違和感を覚えたりすることを抑制することができる。
【0064】
運転支援機能が作動しているにもかかわらず「非作動中」状態または「スタンバイ」状態として報知されると、運転者は、自動制御が実行されていないと認識するが、実際には車両1の走行が自動制御によって運転者による操作以外のふるまいをすることがあり、運転者が違和感を覚える。本実施例は、このような不都合を解消することができる。
【0065】
本実施例の他の態様としては、運転支援機能の作動状態と報知部7での報知内容が一致していない場合、
図2の「作動中」状態の中の状態により運転支援機能の作動を制御する。
【0066】
本実施例の他の態様に係る運転支援装置による作動状態修正処理について、
図5を参照して説明する。なお、以下に説明する作動状態修正処理は、車線逸脱防止支援機能の作動状態をモニタ装置などに「スタンバイ」状態と「アクティブ」状態と「非作動中」状態との3種類のうちいずれかを表示させる場合を示しており、運転支援制御部8は、報知指令として表示指令を送信する。また、以下に説明する作動状態修正処理は、運転支援制御部8が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0067】
ステップS11からステップS14において、運転支援制御部8は、上述の実施例のステップS1からステップS4までと同様に、車線逸脱防止支援機能の作動状態を読み込み、車線逸脱防止支援機能の作動状態に応じた表示指令を報知制御部71に送信し、報知部7での表示内容を報知制御部71から読み込み、車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知部7での表示内容が一致しているか否かを判定し、車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知部7での表示内容が一致していると判定した場合、処理を終了する。
【0068】
ステップS14において車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知部7での表示内容が一致していないと判定された場合、ステップS15において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「運転支援可能」状態または「スタンバイ」状態であるか否かを判定する。車線逸脱防止支援機能の作動状態が「運転支援可能」状態または「スタンバイ」状態でないと判定された場合、ステップS16からステップS20において、運転支援制御部8は、上述の実施例のステップS5からステップS9までと同様の流れで制御を実行する。ここで、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「非作動中」状態でないと判定されることは、ステップS11でNOと判定された後のことであるため、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「運転支援実行」状態であると判定されることと同義である。
【0069】
具体的には、ステップS16で車線逸脱防止支援機能の作動状態が「非作動中」状態であるか否かを判定する。ステップS16において車線逸脱防止支援機能が「非作動中」状態であると判定されると、ステップS17において運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動を停止状態に保つ。ステップS18において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能が「非作動中」状態である旨を表示するよう表示指令を報知制御部71に送信して、処理を終了する。上述の通り、ステップS17及びステップS18の処理は、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「非作動中」状態であり、かつ報知部7での表示内容が作動状態と一致していない場合に実行される。すなわち、ステップS18の処理が実行されるまでは、報知部7での表示内容は「スタンバイ」状態または「アクティブ」状態である旨を表示しており、ステップS18ではその表示を変更して「非作動中」状態である旨を表示するよう表示指令を送信する。
【0070】
ステップS16において、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「非作動中」状態でないと判定されると、ステップS19において運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動状態を「スタンバイ」状態にする。ステップS20において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能が「スタンバイ」状態である旨を表示するよう表示指令を報知制御部71に送信して、処理を終了する。上述の通り、ステップS19及びステップS20の処理は、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「運転支援実行」状態であり、かつ報知部7での表示内容が作動状態と一致していない場合に実行される。報知部7での表示内容が「非作動中」状態または「スタンバイ」状態を示すものである場合に実行される。すなわち、ステップS20の処理が実行されるまでは、報知部7での表示内容は「スタンバイ」状態と「非作動中」状態との2種類のいずれかが表示されていることになる。「非作動中」状態である旨が表示されている場合、ステップS20ではその表示を変更して「スタンバイ」状態である旨を表示するよう表示指令を送信する。「スタンバイ」状態を示す旨が表示されている場合、ステップS20では「スタンバイ」状態を示す旨の表示を継続するよう表示指令を送信する。
【0071】
ステップS15において車線逸脱防止支援機能の作動状態が「運転支援可能」状態または「スタンバイ」状態であると判定された場合、ステップS21において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動状態を維持する。
【0072】
ステップS22において、運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「運転支援実行」状態に遷移することを禁止し、ステップS23において、車線逸脱防止支援機能が、ステップS21で運転支援制御部8によって維持された「現在の状態」である旨を表示するよう表示指令を報知制御部71に送信して、処理を終了する。ここで、「現在の状態」とは、「運転支援可能」状態を維持した場合は表示内容が「アクティブ」状態である旨を示すよう、「スタンバイ」状態を維持した場合は表示内容が「スタンバイ」状態である旨を示すよう表示指令を送信する。すなわち、本フローを実行した際の表示内容が「非作動中」状態、「スタンバイ」状態、「アクティブ」状態のいずれの旨を示すものであっても、ステップS23ではステップS21にて維持された作動状態である旨を表示するよう表示指令を送信する。
【0073】
このような作動状態修正処理による車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知制御部71から送信される表示内容での運転支援制御部8の処理内容を
図6に示す。図中、一番上の行は報知部7の状態(表示状態)を示す見出し、一番左の列は車線逸脱防止支援機能の作動状態を示す見出しであり、2-(a)から2-(j)までの10個の枠が処理内容を示している。
【0074】
図6に示すように、本実施例の他の態様では、車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知制御部71から送信される表示内容が一致していない場合、作動状態に応じて運転支援をスタンバイ状態に遷移させるか、現在の作動状態を維持しつつ他の作動状態への遷移を禁止する。
【0075】
車線逸脱防止支援機能の作動状態と表示内容とが一致しておらず、かつ作動状態が支援可能状態またはスタンバイ状態である場合(ステップS15:YESの場合)の、作動状態及び表示内容の制御の具体例を以下に記す。車線逸脱防止支援機能の作動状態が「スタンバイ」状態の場合(図の処理内容の2-(b)の枠)、車線逸脱防止支援機能の作動状態を「スタンバイ」状態で継続し、報知部7の表示も「スタンバイ」状態である旨を示す表示となるよう表示指令信号を送信する。このとき、車線逸脱防止支援機能の作動状態が「運転支援実行」状態に遷移することが禁止される。車線逸脱防止支援機能の作動状態が「運転支援可能」状態の場合(図の処理内容の2-(c)と2-(e)の枠)、車線逸脱防止支援機能の作動状態を「運転支援可能」状態で継続し、報知部7の表示は「アクティブ」状態である旨を示す表示となるよう表示指令信号を送信する。このとき、車線逸脱防止支援機能の「運転支援実行」状態への遷移が禁止される。
【0076】
車線逸脱防止支援機能の作動状態と表示内容とが一致しておらず、かつ作動状態が「運転支援可能」状態または「スタンバイ」状態でない場合(ステップS15:NOの場合)の、作動状態及び表示内容の制御の具体例を以下に記す。車線逸脱防止支援機能が「非作動中」状態である場合(図の処理内容の2-(i)の枠、ステップS16:YESに相当)は「非作動中」状態を継続し、報知部7の表示は「非作動中」状態である旨を示す表示内容になるよう表示指令信号が送信される。車線逸脱防止機能が「作動中」状態での中の「運転支援実行」状態である場合(図の処理内容の2-(f)と2-(h)の枠、ステップS16:NOに相当)は作動状態が「スタンバイ」状態にされ、報知部7の表示は「スタンバイ」状態である旨を示す表示内容になるよう表示指令信号が送信される。
【0077】
車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知制御部71から送信される表示内容が一致している場合(図の処理内容の2-(a)と、2-(d)と2-(g)、2-(j)の枠)、車線逸脱防止支援機能の作動も報知部7の表示も継続される。
【0078】
このように、実際に「運転支援実行」状態である場合は、報知される情報が実際の作動状態と異なっていると運転支援機能の作動状態を「スタンバイ」状態にするため、実際の車両1の挙動と報知とが乖離して運転者が違和感を覚えることを抑制することができる。
【0079】
また、運転支援機能は作動状態であるが、「スタンバイ」状態または「運転支援可能」状態である場合は、報知される情報と実際の作動状態とが異なっていてもそれぞれ「スタンバイ」状態または「運転支援可能」状態を維持しつつ「運転支援実行」状態へ遷移を禁止することで、報知される情報が正しい情報に復帰することを待ちつつ、車両1が自動で制御される状態に遷移して運転者が違和感を覚えることを防止することができる。
【0080】
「運転支援可能」状態である場合はそれを継続することで、「運転支援実行」状態に遷移する条件を充たす前に報知部7が正常な作動に復帰した場合、不都合なく正常な運転支援機能の作動に戻ることができる。
【0081】
運転支援機能が「アクティブ」状態でないにもかかわらず「アクティブ」状態として報知されると、実際には実行されない自動制御による運転支援に頼った運転操作をしてしまう可能性がある。本態様は、このような不都合を解消することができる。
【0082】
また、運転支援機能の作動を停止した場合は、運転支援機能が「非動作中」状態であることを報知するように報知部7に指令し、運転支援機能の作動状態を「スタンバイ」状態にした場合は、運転支援機能が「スタンバイ」状態であることを報知するように報知部7に指令するため、運転者は運転支援機能の作動状態を正しく把握することができる。
【0083】
また、本発明の実施例では、ステップS5において車線逸脱防止支援機能の作動状態が「非作動中」状態でないと判定された場合、運転支援制御部8は車線逸脱防止支援機能の作動状態を「スタンバイ」状態にするが、車線逸脱防止支援機能の作動を停止させてもよい。この場合、その後運転支援制御部8は、車線逸脱防止支援機能が「非作動中」状態である旨を表示するよう表示指令を報知制御部71に送信して、処理を終了する。
【0084】
上述する変形例の場合、車線逸脱防止支援機構の作動状態と報知制御部71から送信される表示内容での運転支援制御部8の処理内容は次のように変化する。
図4において、車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知制御部71から送信される表示内容が一致しておらず、車線逸脱防止機能が作動中である場合(図の処理内容の1-(b)の枠)も、車線逸脱防止支援機能の作動は停止され、報知部7の表示は「非作動中」状態である旨を表示するようにされる。
図6においては、車線逸脱防止支援機能の作動状態と報知制御部71から送信される表示内容とが一致しておらず、車線逸脱防止支援機能が作動中かつ「運転支援実行」状態である場合(図の処理内容の2-(h)の枠)も、車線逸脱防止支援機能の作動は停止され、報知部7の表示は「非作動中」状態である旨を表示するようにされる。
【0085】
また、本発明の実施例では、「運転支援可能」状態と「運転支援実行」状態とを併せて「アクティブ」状態と定義し、表示内容を「アクティブ」状態としてまとめて表示する構成であるが、表示内容を「運転支援可能」状態と「運転支援実行」状態とに対応するよう異なる態様の表示を行ってもよい。この場合、
図6の処理内容2-(e)の枠の処理について、報知部7の表示が「運転支援可能」状態である旨を表示するよう指示信号を送信する構成であればよい。
【0086】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0087】
1 車両
7 報知部
8 運転支援制御部
71 報知制御部