(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20221109BHJP
B60Q 1/38 20060101ALI20221109BHJP
B60Q 1/28 20060101ALI20221109BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
B60Q1/38 B
B60Q1/28
B60Q1/00 C
(21)【出願番号】P 2018104573
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】石井 智
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-056231(JP,A)
【文献】特開2009-154748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
B60Q 1/38
B60Q 1/28
B60Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光源部と、
前記第1の光源部と直列に接続されている第2の光源部と、
前記第1の光源部及び前記第2の光源部を
複数の点灯モードに応じて駆動させる駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、
前記第1の光源部及び前記第2の光源部に出力電力を供給する電力変換回路と、
当該駆動回路に実装され、周囲温度を検出する温度検出素子と、
前記温度検出素子により検出される前記周囲温度に基づき、前記電力変換回路の消費電力を抑制する抑制制御を開始する点灯制御回路と、
を備え、
前記点灯制御回路は、
前記周囲温度
と複数の点灯モードのうち現在の点灯モードに対応する正のオフセット値とを加算した値が設定狙い値に到達した場合、前記抑制制御を開始する
と共に、
前記設定狙い値は、複数の点灯モードそれぞれに応じた異なる設定とされ、
複数の点灯モードの各設定狙い値は、複数の点灯モードのうち前記周囲温度が同一温度のときの消費電力が大きいものとなるほど、高い温度に設定されている
車両用灯具。
【請求項2】
前記抑制制御は、
前記周囲温度に応じて前記消費電力を抑制させる制御関数に従うものであり、
前記制御関数は、
前記周囲温度と前記消費電力との一次関数の関係となっており、且つ前記消費電力が大
きくなるにつれ、前記周囲温度が低くなる関係となっている、
請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単一の点灯モードにおいて、駆動回路側にある1つの温度検出素子の検出結果により駆動回路の自己発熱を検出し、光源側の出力を抑制する制御が行われている。これにより、駆動回路は、自己発熱からの保護と負荷側となる光源側の保護との両方の保護を実現している。しかし、このような制御である場合、複数の点灯モードが実装されていても、駆動回路は、駆動回路側にある1つの温度検出素子の検出結果に応じて同一の閾値温度に基づき光源側の出力を抑制する制御を行うため、実際には車両用灯具の使用可能環境下であっても、光源側の出力を抑制する制御が行われ、減光されることで性能が低下している。
【0003】
そこで、温度検出素子が1つであっても、電力変換回路を複数設けることで、車両用灯具の使用可能環境下であっても、減光されずに性能を維持させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のような従来技術は、点灯モードごとに電力変換回路が必要となるため、部品点数が増加する。よって、特許文献1に記載のような従来技術では、複数の点灯モードが実装されていても、性能を維持させつつ、部品コストを低下させることができない。
【0006】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、複数の点灯モードが実装されていても、性能を維持させつつ、部品コストを低下させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面である車両用灯具は、第1の光源部と、前記第1の光源部と直列に接続されている第2の光源部と、前記第1の光源部及び前記第2の光源部を複数の点灯モードに応じて駆動させる駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記第1の光源部及び前記第2の光源部に出力電力を供給する電力変換回路と、当該駆動回路に実装され、周囲温度を検出する温度検出素子と、前記温度検出素子により検出される前記周囲温度に基づき、前記電力変換回路の消費電力を抑制する抑制制御を開始する点灯制御回路と、を備え、前記点灯制御回路は、前記周囲温度と複数の点灯モードのうち現在の点灯モードに対応する正のオフセット値とを加算した値が設定狙い値に到達した場合、前記抑制制御を開始すると共に、前記設定狙い値は、複数の点灯モードそれぞれに応じた異なる設定とされ、複数の点灯モードの各設定狙い値は、複数の点灯モードのうち前記周囲温度が同一温度のときの消費電力が大きいものとなるほど、高い温度に設定されている。
【0009】
また、本開示の一側面である車両用灯具においては、前記抑制制御は、前記周囲温度に応じて前記消費電力を抑制させる制御関数に従うものであり、前記制御関数は、前記周囲温度と前記消費電力との一次関数の関係となっており、且つ前記消費電力が大きくなるにつれ、前記周囲温度が低くなる関係となっている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一側面によれば、複数の点灯モードが実装されていても、性能を維持させつつ、部品コストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示を適用した実施形態に係る車両用灯具の構造例を示す図である。
【
図2】本開示を適用した実施形態に係る光源アッシー5を上面から見た図である。
【
図3】本開示を適用した実施形態に係る光源部5c及び光源部5dの制御目標特性を示す図である。
【
図4】本開示を適用した実施形態に係る複数の点灯モードを実現する駆動回路4の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】本開示を適用した実施形態に係る点灯モードごとに対応する駆動回路4の入力と出力と設定狙い値とオフセット値との対応関係が特定されている制御テーブル4b1を示す図である。
【
図6】本開示を適用した実施形態に係る周囲温度と駆動回路4の消費電力との関係を示す図である。
【
図7】本開示を適用した実施形態に係る点灯モードごとの光源部5c及び光源部5dの制御目標特性を示す図である。
【
図8】従来の単一の点灯モードを実現する駆動回路40の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】従来の単一の点灯モードを担う光源部5cの制御目標特性を示す図である。
【
図10】従来の複数の点灯モードを実現する駆動回路400の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】従来の複数の点灯モードを担う光源部5c及び光源部5dの制御目標特性を示す図である。
【
図12】従来の複数の点灯モードを担う周囲温度と駆動回路400の消費電力との関係を示す図である。
【
図13】従来の複数の点灯モードを実現する駆動回路4000の機能構成の他の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を適用した車両用灯具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0013】
(概略構成)
図1は、本開示を適用した実施形態に係る車両用灯具の構造例を示す図である。車両用灯具は、例えば前照灯(ヘッドランプ)であって、ヘッドランプユニットが車両の前部の左右両端部に搭載されている。車両用灯具は、灯具ハウジング1、灯具レンズ2、駆動回路4、光源アッシー5、光学部6及び放熱器7を備えている。灯具ハウジング1の縁に沿って灯具レンズ2がはめ込まれ、浸水防止シール3により、灯具ハウジング1と灯具レンズ2との隙間が埋められている。灯具ハウジング1の内部には駆動回路4、光源アッシー5、光学部6及び放熱器7が設けられている。駆動回路4は、詳細については
図4を用いて後述するが、灯具ハウジング1内の下部に設けられ、光源アッシー5に電力を供給する。駆動回路4の上方には放熱器7が設けられている。放熱器7の上面側には光源アッシー5が設けられ、放熱器7により光源アッシー5が放熱される。光源アッシー5の上部を覆うように光学部6が取り付けられ、光源アッシー5から放出される光が光学部6に伝達される。
【0014】
図2は、本開示を適用した実施形態に係る光源アッシー5を上面から見た図である。光源アッシー5は、基板5b上に光源部5c及び光源部5dが設けられ、不図示の金具により放熱器7に取り付けられる。光源部5c及び光源部5dは、それぞれ複数の発光素子51からなり、複数の発光素子51は直列に接続されている。複数の発光素子51のそれぞれは、例えば、LED(Light Emitting Diode)から構成されている。なお、図示は省略するが、光源部5c及び光源部5dから出力された光は、光学部6の内部で反射され、光学部6の光軸に沿って出力される。また、光源部5c及び光源部5dのうち、一方が本発明における第1の光源部に相当し、他方が本発明における第2の光源部に相当する。
【0015】
図3は、本開示を適用した実施形態に係る光源部5c及び光源部5dの制御目標特性を示す図である。モード(A)は、例えば、点灯モードがロービームモードである。モード(B)は、例えば、点灯モードがハイビームモードである。何れの点灯モードにおいても、制御開始温度Ta1から光源部5c及び光源部5dの駆動電力の抑制が開始される。つまり、制御開始温度Ta1は光源部5c及び光源部5dの駆動電力の抑制を開始させるときの温度が設定される。なお、光源部5c及び光源部5dの駆動電力と、駆動回路4の消費電力とは相関関係がある。よって、光源部5c及び光源部5dの駆動電力の抑制を、駆動回路4の消費電力を抑制することにより実現させることができる。
【0016】
(回路構成)
図4は、本開示を適用した実施形態に係る複数の点灯モードを実現する駆動回路4の機能構成の一例を示すブロック図である。駆動回路4は、電力変換回路4a、点灯制御回路4b、温度検出素子4c及び出力切替素子4dを備え、光源部5c及び光源部5dを駆動させる。電力変換回路4aは、光源部5c及び光源部5dに出力電力を供給する。電力変換回路4aは、DC-DCコンバータであり、例えば、スイッチングレギュレーターから構成される。出力切替素子4dは、光源部5dと並列に設けられ、オン状態のときには駆動回路4から入力される入力電流を光源部5dを迂回して光源部5cに流し、オフ状態のときには駆動回路4から入力される入力電流を光源部5dに流すバイパス回路である。出力切替素子4dは、例えば、MOSFET又はトランジスタのような半導体スイッチング素子から構成され、点灯制御回路4bからの出力切替信号に応じて、オン状態及びオフ状態の何れか一方に制御される。なお、半導体スイッチング素子は、SiC(Silicon Carbide)から構成されるパワー半導体であってもよい。
【0017】
温度検出素子4cは、駆動回路4に実装され、駆動回路4の周囲温度を検出するものであり、例えば、サーミスタから構成される。点灯制御回路4bは、温度検出素子4cにより検出される周囲温度に基づき、制御テーブル4b1を参照し、電力変換回路4aの消費電力を抑制する抑制制御を開始する。抑制制御は、周囲温度に応じて、電力変換回路4aの消費電力を抑制させる制御関数に従うものであって、周囲温度が設定狙い値に到達したときから開始されるものである。設定狙い値は、複数の点灯モードのそれぞれに応じた異なる値が設定されるものである。点灯制御回路4bは、周囲温度に正のオフセット値を加えた値が設定狙い値に到達した場合、抑制制御を開始する。設定狙い値については
図5~
図7を用いて後述する。制御関数は、温度検出素子4cにより検出される周囲温度と電力変換回路4aの消費電力との一次関数の関係となっており、且つ電力変換回路4aの消費電力が大きくなるにつれ、周囲温度が低くなる関係となっている。つまり、周囲温度が高ければ、電力変換回路4aの消費電力はより抑制される制御となる。なお、点灯モードがロービームモードであれば、入力(A)に応じて、出力切替素子4dがオン状態となり、出力(A)である光源部5cが点灯状態となる。また、点灯モードがハイビームモードであれば、入力(A)及び入力(B)に応じて、出力切替素子4dがオフ状態となり、出力(A)である光源部5cと、出力(B)である光源部5dとが点灯状態となる。
【0018】
図5は、本開示を適用した実施形態に係る点灯モードごとに対応する駆動回路4の入力と出力と設定狙い値とオフセット値との対応関係が特定されている制御テーブル4b1を示す図である。入力(A)がオンすなわち点灯入力信号(A)がオン状態であり、且つ入力(B)がオフすなわち点灯入力信号(B)がオフ状態である場合、出力(A)のみがオン状態すなわち光源部5cのみが点灯状態に制御されるのが、点灯モードがモード(A)の場合である。点灯モードがモード(A)の場合、ロービームモードが該当し、設定狙い値が例えば100℃に設定され、α1のオフセット値が設定される。一方、入力(A)がオンすなわち点灯入力信号(A)がオン状態であり、且つ入力(B)がオンすなわち点灯入力信号(B)がオン状態である場合、出力(A)及び出力(B)の両方がオン状態すなわち光源部5c及び光源部5dの両方が点灯状態に制御されるのが、点灯モードがモード(B)の場合である。点灯モードがモード(B)の場合、ハイビームモードが該当し、設定狙い値が例えば120℃に設定され、α2のオフセット値が設定される。
【0019】
図6は、本開示を適用した実施形態に係る周囲温度と駆動回路4の消費電力との関係を示す図である。
図6に示すように、点灯モードがロービームモードであれば、設定狙い値は100℃となる。一方、点灯モードがハイビームモードであれば、設定狙い値は120℃となる。このように、点灯モードに応じて設定狙い値を変えることで、周囲温度と、駆動回路4の消費電力とにおける駆動回路4の放熱性能が同一になる。設定狙い値は、複数の点灯モードのうち、周囲温度が同一温度のときの消費電力が大きいものであるにつれ、高い温度に設定される。具体的には、設定狙い値は、複数の点灯モードのうち、ロービームモードである場合よりもハイビームモードである場合の方がより高い温度に設定される
。すなわち、点灯モードがロービームモードである場合、制御開始温度Ta1にα1のオフセット値を加えたものが、
ロービームモード用の設定狙い値とな
り、点灯モードがハイビームモードである場合、制御開始温度Ta1にα2
(>α1)のオフセット値を加えたものが、
ハイビームモード用の設定狙い値となる。なお、駆動回路4の消費電力を抑制させるには、光源部5c及び光源部5dの駆動電力を抑制させる。光源部5c及び光源部5dの駆動電力を抑制させるには、電力変換回路4aの消費電力を抑制させる。また、電力変換回路4aは、駆動回路4の回路構成の中で最も電力を消費する部位である。よって、駆動回路4の消費電力を抑制させるには、電力変換回路4aの消費電力を抑制させる。
【0020】
(回路動作)
図7は、本開示を適用した実施形態に係る点灯モードごとの光源部5c及び光源部5dの制御目標特性を示す図である。点灯モードがロービームモードである場合、制御テーブル4b1から100℃の設定狙い値とα1のオフセット値とを読み込む。駆動回路4の駆動により光源部5cが駆動され、電力変換回路4aの駆動に伴い周囲温度が上昇し始める。温度検出素子4cにより検出される周囲温度が制御開始温度Ta1に到達した場合、制御開始温度Ta1にα1のオフセット値を加えたものが設定狙い値となるので、点灯制御回路4bは電力変換回路4aの消費電力の抑制を開始する。一方、点灯モードがハイビームモードである場合、制御テーブル4b1から120℃の設定狙い値とα2のオフセット値とを読み込む。駆動回路4の駆動により光源部5cに加えて光源部5dが駆動され、電力変換回路4aの駆動に伴い周囲温度が上昇し始める。温度検出素子4cにより検出される周囲温度が制御開始温度Ta1に到達した場合、制御開始温度Ta1にα2のオフセット値のを加えたものが設定狙い値となるので、点灯制御回路4bは電力変換回路4aの消費電力の抑制を開始する
。
【0021】
(作用効果)
次に、従来例と比較しながら本実施形態の作用効果について説明する。
図8は、従来の単一の点灯モードを実現する駆動回路40の機能構成の一例を示すブロック図である。
図9は、従来の単一の点灯モードを担う光源部5cの制御目標特性を示す図である。
図8及び
図9に示すように、従来においては、1つの温度検出素子40cの検知結果に基づき、電力変換回路40aの消費電力が点灯制御回路40bにより抑制される。このような前提において、複数の点灯モードにつき、従来例を検討する。
図10は、従来の複数の点灯モードを実現する駆動回路400の機能構成の一例を示すブロック図である。
図11は、従来の複数の点灯モードを担う光源部5c及び光源部5dの制御目標特性を示す図である。
図12は、従来の複数の点灯モードを担う周囲温度と駆動回路400の消費電力との関係を示す図である。
【0022】
点灯モードに関係なく、制御テーブル400b1に設定されている温度検出素子400cの設定狙い値は同一である。しかし、点灯モードがモード(A)の場合には、出力切替素子400dにより光源部5cが点灯され、点灯モードがモード(B)の場合には、出力切替素子400dにより光源部5cに加えて光源部5dが点灯されるため、モード(A)の場合とモード(B)の場合とでは、光源部5c及び光源部5dを駆動させる駆動電力すなわち駆動回路400の出力電力が異なる。よって、モード(A)の場合とモード(B)の場合とでは、駆動回路400の消費電力も異なるため、電力変換回路400aの自己発熱も光源部5c及び光源部5dを駆動させる駆動電力に応じて相対的に変化する。点灯モードごとの光源部5c及び光源部5dの駆動電力の差により、制御開始温度Ta1と制御開始温度Ta2とが異なるため、モード(A)の場合に制御開始温度Ta1に到達するときの温度検出素子400cにより検出される周囲温度と、モード(B)の場合に制御開始温度Ta2に到達するときの温度検出素子400cにより検出される周囲温度とが異なる温度となる。この結果、モード(A)の場合の光源部5c及び光源部5dの駆動電力の抑制率と、モード(B)の場合の光源部5c及び光源部5dの駆動電力の抑制率との相違点が、モード(A)の場合の制御開始温度Ta1と、モード(B)の場合の制御開始温度Ta2との差異となる。具体的には、駆動電力が光源部5c分だけから光源部5c分に光源部5d分が加算された結果、駆動回路400の消費電力の抑制制御の制御開始温度Ta2が制御開始温度Ta1よりも低温側に変化する。これにより、点灯制御回路400bによる電力変換回路400aの消費電力の抑制制御が、駆動回路400又は光源部5c及び光源部5dの自己発熱の保護の領域から外れるため、実際の車両用灯具の使用可能環境下であっても、性能低下につながっている。
【0023】
図13は、従来の複数の点灯モードを実現する駆動回路4000の機能構成の他の一例を示すブロック図である。
図13に示すように、点灯モードがモード(A)に対応する回路構成として、電力変換回路4000a1が設けられ、点灯モードがモード(B)に対応する回路構成として、電力変換回路4000a2が設けられ、温度検出素子4000cの検出結果に基づき、制御テーブル4000b1を参照し、点灯制御回路4000bにより電力変換回路4000a1又は電力変換回路4000a2の出力電力が抑制される。このように、電力変換回路4000a1及び電力変換回路4000a2が設けられているため、部品点数が増えている。
【0024】
そこで、本実施形態においては、温度検出素子4cにより検出される周囲温度にオフセット値を加えた値が設定狙い値に到達した場合、抑制制御が開始される。抑制制御は、周囲温度に応じて電力変換回路4aの消費電力を抑制させる制御関数に従うものであって、温度検出素子4cにより検出される周囲温度が設定狙い値に到達したときから開始されるものである。設定狙い値は、複数の点灯モードのそれぞれに応じて異なる値が設定されるものである。よって、抑制制御により、複数の点灯モードのそれぞれに応じて電力変換回路4aを設ける必要がないため、部品点数を抑制することができる。また、温度検出素子4cにより検出される周囲温度に正のオフセット値を加えるので、低い温度から抑制制御が開始されない。したがって、複数の点灯モードが実装されていても、性能を維持させつつ、部品コストを低下させることができる。
【0025】
また、本実施形態においては、設定狙い値は、温度検出素子4cにより検出される周囲温度が同一温度のときの電力変換回路4aの消費電力が大きいものであるにつれ、高い温度に設定される。よって、温度検出素子4cにより検出される周囲温度が低い温度のときに抑制制御が開始されるのを防ぐことができるため、光源としての性能が低下する状態を回避することができる。
【0026】
また、本実施形態においては、制御関数は、温度検出素子4cにより検出される周囲温度と電力変換回路4aの消費電力との一次関数の関係となっており、且つ電力変換回路4aの消費電力が大きくなるにつれ、温度検出素子4cにより検出される周囲温度が低くなる関係となっている。よって、複数の点灯モードを有する車両用灯具であっても、単純な制御により単一の電力変換回路4aが抑制制御されるので、複数の点灯モードを前提とした回路構成であっても、駆動回路4の低消費電力化を図ることができる。
【0027】
以上、本開示を適用した車両用灯具を実施形態に基づいて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0028】
例えば、点灯モードがロービームモード及びハイビームモードである一例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、点灯モードは、デイタイムランニングモード、ターンランプモード及びクリアランスランプモードであってもよい。
【0029】
また、例えば、出力切替素子4dが半導体スイッチング素子から構成される一例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、出力切替素子4dは電磁リレーから構成されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 灯具ハウジング、2 灯具レンズ、3 浸水防止シール
4,40,400,4000 駆動回路
4a,40a,400a 電力変換回路
4000a1,4000a2 電力変換回路
4b,40b,400b,4000b 点灯制御回路
4b1,400b1,4000b1 制御テーブル
4c,40c,400c,4000c 温度検出素子
4d,400d 出力切替素子
5 光源アッシー、5b 基板、5c 光源部、5d 光源部、51 発光素子
6 光学部、7 放熱器
Ta1,Ta2 制御開始温度