(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】集塵機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20221109BHJP
A47L 9/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A47L9/28 U
A47L9/00 Z
(21)【出願番号】P 2018104798
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】掛川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】羽山 芳雅
(72)【発明者】
【氏名】佐川 幸治
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0062618(US,A1)
【文献】特開2014-147904(JP,A)
【文献】特開平10-328082(JP,A)
【文献】特開2004-016425(JP,A)
【文献】実公昭49-014023(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00
A47L 9/28
A47L 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる駆動軸を有するモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリパックと、
前記モータを収容するヘッド部と、
前記ヘッド部の下方に設けられ、吸込口と、前記ヘッド部によって閉塞されるタンク開口と、前記吸込口から吸引された塵埃を収容する塵埃収容室と、を有するタンク部と、
前記タンク部の前記塵埃収容室内に設けられ、上方側にフィルタ開口が形成されるフィルタ内空間を内部に形成するフィルタ部と、
前記ヘッド部に設けられ、前記モータを収容するモータケーシングと、
前記ヘッド部における前記モータケーシングの周囲に設けられ、
前記バッテリパックを収容するバッテリ収容室と、を備え、
前記バッテリ収容室及び前記バッテリ収容室の内外を隔てる壁部の少なくとも一方は、
前記上下方向において前記フィルタ開口よりも下側に延在し、かつ、前記駆動軸の径方向において前記フィルタ開口内部に位置し、
前記バッテリパックの外縁は、前記駆動軸の径方向において前記フィルタ開口内部に収められる、集塵機。
【請求項2】
前記バッテリパックは、第1バッテリパックと、第2バッテリパックと、を含み、
前記ヘッド部は、
前記第1バッテリパックとの接続用の第1端子と、
前記第2バッテリパックとの接続用の第2端子と、を有し、
前記第1及び第2端子は、前記駆動軸と垂直な第1方向に並び、前記第1方向において前記モータケーシングの両側に分かれて配置され、前記駆動軸及び前記第1方向と垂直な第2方向において前記モータケーシングと少なくとも部分的に重なるように配置される、
請求項1に記載の集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックの電力で動作する集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、着脱可能に装着したバッテリパックの電力で動作するコードレスタイプの集塵機を開示する。バッテリパックを電源とすることで、電源コードによる制約を受けることなく集塵機を駆動することができ、作業時の移動操作性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集塵機の駆動時間を長く確保するためには、容量の大きなバッテリパックを用いる必要がある。大容量のバッテリパックは、重量及び体積が大きいことから、集塵機の重心及びサイズに及ぼす影響が大きい。バッテリパックにより集塵機の重心が高くなったりサイズが大きくなったりすると、集塵機の移動操作性が悪化する。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、バッテリパックからの供給電力で動作する構成において移動操作性の悪化を抑制することの可能な集塵機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、集塵機である。この集塵機は、
上下方向に延びる駆動軸を有するモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリパックと、
前記モータを収容するヘッド部と、
前記ヘッド部の下方に設けられ、吸込口と、前記ヘッド部によって閉塞されるタンク開口と、前記吸込口から吸引された塵埃を収容する塵埃収容室と、を有するタンク部と、
前記タンク部の前記塵埃収容室内に設けられ、上方側にフィルタ開口が形成されるフィルタ内空間を内部に形成するフィルタ部と、
前記ヘッド部に設けられ、前記モータを収容するモータケーシングと、
前記ヘッド部における前記モータケーシングの周囲に設けられ、前記バッテリパックを収容するバッテリ収容室と、を備え、
前記バッテリ収容室及び前記バッテリ収容室の内外を隔てる壁部の少なくとも一方は、
前記上下方向において前記フィルタ開口よりも下側に延在し、かつ、前記駆動軸の径方向において前記フィルタ開口内部に位置し、
前記バッテリパックの外縁は、前記駆動軸の径方向において前記フィルタ開口内部に収められる。
【0007】
前記バッテリパックは、第1バッテリパックと、第2バッテリパックと、を含み、
前記ヘッド部は、前記第1バッテリパックとの接続用の第1端子と、前記第2バッテリパックとの接続用の第2端子と、を有し、
前記第1及び第2端子は、前記駆動軸と垂直な第1方向に並び、前記第1方向において前記モータケーシングの両側に分かれて配置され、前記駆動軸及び前記第1方向と垂直な第2方向において前記モータケーシングと少なくとも部分的に重なるように配置されてもよい。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリパックからの供給電力で動作する構成において移動操作性の悪化を抑制することの可能な集塵機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る集塵機1の右側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1及び
図3により、集塵機1における互いに直交する前後、上下、左右方向を定義する。集塵機1は、電動集塵機であって、タンク部10と、本体としてのヘッド部20と、を備える。タンク部10及びヘッド部20は、相互に分離可能である。
【0013】
タンク部10は、上部が開放された底付の筒状で、水平断面が
図3に示すように略四角形(図示の例では丸みを帯びた正方形ないし長方形)となっている。タンク部10は、前側の側面に吸込口11を有し、吸込口11に図示しないホースを着脱可能に接続できる。タンク部10内には、吸込口11から吸い込まれた空気が通過する際に塵埃(粉塵)を分離する(吸引した塵埃をろ過する)筒状のフィルタ装置15が設けられる。
【0014】
フィルタ部としてのフィルタ装置15は、ゴム等の環状の弾性体16と、外周面に細かい網目を有する布等で形成されるフィルタ17と、を含む。弾性体16の下部に、フィルタ17の上部が一周に渡って縫い付けられて一体化される。弾性体16は、タンク部10とヘッド部20とに挟持され、タンク部10とヘッド部20との間を気密に塞ぐ。フィルタ装置15は、軸が上下方向と略平行な略円錐台側面形状であって、集塵ファン25を囲む。
【0015】
空気はフィルタ17の外周面を通過することでフィルタ装置15内部のフィルタ内空間14に進入可能であるが、空気に含まれる塵埃はフィルタ17の網目を通過できず、フィルタ17の外周面でろ過され、フィルタ17の外周面上に付着するか下方へ落下する。タンク部10内の空間は、塵埃収容室13であり、塵埃収容室13のうちフィルタ装置15の外側の空間に、フィルタ装置15により分離された塵埃を収容する。
【0016】
ヘッド部20は、タンク部10の上部に、例えば図示しないクランプ機構によって着脱可能に固定される。ヘッド部20により、タンク部10の上部開口、すなわちタンク開口が閉塞される。ヘッド部20の上面には、集塵機1の持ち運び用のハンドル27が設けられる。ヘッド部20は、ヘッドハウジング21の内部に、モータ23と、モータ冷却用ファン24と、集塵ファン25と、を有する。
【0017】
モータ23は、その駆動軸が上下方向に延びるようにヘッド部20内に配設される。モータ23はここではブラシレスモータであり、モータ23の上部には、モータ23に駆動電流を供給するためのスイッチング素子を搭載したスイッチング素子基板26が上下方向と略垂直に設けられる。モータ冷却用ファン24と集塵ファン25は、モータ23の駆動軸に取り付けられ、モータ23によって回転駆動される。モータ冷却用ファン24は、モータ23の直下に位置する軸流ファンであり、下方に向かう気流を発生する。集塵ファン25は、モータ冷却用ファン24の下方に設けられた遠心ファンである。
【0018】
図3に示すように、ヘッド部20の前面には、集塵機1の動作を使用者が切り替えるための操作パネル30が設けられる。操作パネル30は、メイン電源スイッチ31と、強弱切替スイッチ32と、単動/連動切替スイッチ33と、電池残量表示スイッチ34と、電池残量表示部35と、を有する。なお、単動とは、集塵機1が単体で動作するモードであり、連動とは、集塵機1に図示しない丸のこ等の他の電動工具を電源ケーブルで接続して電源供給を可能にしておき、他の電動工具への電源供給を検出すると、すなわち他の電動工具が駆動されると集塵機1が駆動するモード(機能)である。
図3に示すように、集塵機1は、着脱可能に装着した2つのバッテリパック40を電源とするコードレスタイプであり、電池残量表示スイッチ34を押すと、電池残量表示部35に各バッテリパック40の残量がLED等により複数段階で表示される。
【0019】
図1及び
図3に示すように、ヘッド部20内には、モータ23を収容するモータケーシング29が設けられる。
図3に示すように、モータケーシング29の左右両側には、それぞれ端子保持板56及び所定数の端子57が設けられる。モータケーシング29から見て左右一方の端子保持板56及び所定数の端子57が第1端子保持板及び第1端子であり、他方の端子保持板56及び所定数の端子57が第2端子保持板及び第2端子である。左右の端子保持板56は、互いに平行である。端子57は、バッテリパック40の端子との電気的接続用の端子であって、端子保持板56に保持される。バッテリパック40は、自身のレール部41と、ヘッド部20に設けられたレール受け部55と、の係合により、上方からスライド装着され、これにより集塵機1側の端子57とバッテリパック40の端子とが互いに接触して互いに電気的に接続される。バッテリパック40は、ラッチ操作部42を操作しながら上方に引き上げて取り外すことができる。
【0020】
バッテリパック40は、ヘッド部20に設けられたバッテリ収容室50に収容保持される。2つのバッテリパック40は、左右方向に並び、互いに前後及び上下方向位置が等しくかつ平行となるように装着される。バッテリ収容室50は、壁部51と蓋体52とによって外部と隔てられた空間である。蓋体52は、ヘッドハウジング21に揺動可能に支持され、バッテリ収容室50を開閉可能である。蓋体52は、係止部材としてのフック53によって閉鎖状態に係止可能である。
【0021】
バッテリ収容室50は、上下方向においてフィルタ装置15の上部開口(以下「フィルタ開口」とも表記)よりも下側に延在し、かつ、モータ23の駆動軸の径方向においてフィルタ開口内部に位置する。
図3においてフィルタ装置15を示す二点鎖線は、弾性体16の上面の内縁、すなわちフィルタ開口の内縁を示す。本実施の形態では、バッテリ収容室50の内外を隔てる壁部51の外面及び内面が共に上下方向においてフィルタ開口よりも下側に延在する。
図3に示すように、モータケーシング29から見て左右一方の端子保持板56及び所定数の端子57と、他方の端子保持板56及び所定数の端子57とは、第1方向としての左右方向に並び、第2方向としての前後方向においてモータケーシング29と少なくとも部分的に重なるように配置される。また、バッテリパック40の前後方向位置と、モータケーシング29の前後方向位置と、が互いに部分的に重なる。
【0022】
集塵機1においてモータ23を駆動すると、モータ冷却用ファン24及び集塵ファン25が回転駆動される。集塵ファン25の回転により、タンク部10内が負圧になり、吸込口11に吸込み力が発生する。すると、塵埃が空気と共に吸込口11からタンク部10内に吸い込まれる。その後、フィルタ17によって塵埃と空気は分離され、塵埃は塵埃収容室13のうちフィルタ17の外側の空間に溜められる。一方、空気は、フィルタ17の外周面を通過してフィルタ内空間14に入り、ヘッドハウジング21の一部を構成するファンカバー28の下面の図示しない開口部を通って集塵ファン25に下方から吸い込まれ、モータ23と隔てられた空間を抜けて外部に排気される。塵埃はフィルタ17の外周面で捕集されて塵埃収容室13内に溜められる。
【0023】
本実施の形態によれば、下記の作用効果を奏することができる。
【0024】
(1) バッテリパック40及びバッテリ収容室50がフィルタ開口よりも下側に延在するため、バッテリパック40により集塵機1の重心が高くなること及び集塵機1のサイズが高さ方向に大きくなることを抑制でき、集塵機1の移動操作性の悪化を抑制できる。
【0025】
(2) バッテリパック40及びバッテリ収容室50がモータ23の駆動軸の径方向においてフィルタ開口内部に位置するため、バッテリパック40により集塵機1のサイズが前記径方向に大きくなることを抑制でき、集塵機1の移動操作性の悪化を抑制できる。
【0026】
(3) 端子保持板56及び所定数の端子57の組が、左右方向に並び、左右方向においてモータケーシング29の両側に分かれて配置され、前後方向においてモータケーシング29と少なくとも部分的に重なるように配置されるため、端子保持板56及び所定数の端子57の組が前後方向においてモータケーシング29と重ならない場合と比較して、集塵機1の前後方向のサイズアップを抑制でき、また左右のバッテリパック40の左右方向の距離が広がりラッチ操作部42への指入れがしやすい。
【0027】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0028】
1 集塵機、
10 タンク部、11 吸込口(ホース取付口)、13 塵埃収容室、14 フィルタ内空間、15 フィルタ装置、16 弾性体、17 フィルタ、
20 ヘッド部(本体)、21 ヘッドハウジング、23 モータ(ブラシレスモータ)、24 モータ冷却用ファン、25 集塵ファン、26 スイッチング素子基板、27 ハンドル、28 ファンカバー、29 モータケーシング、
30 操作パネル、31 メイン電源スイッチ、32 強弱切替スイッチ(タクタイルスイッチ)、33 単動/連動切替スイッチ、34 電池残量表示スイッチ、35 電池残量表示部、
40 バッテリパック、41 レール部、42 ラッチ操作部、
50 バッテリ収容室、51 壁部、52 蓋体、53 フック、55 レール受け部、56 端子保持板、57 端子