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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】リティニングリング
(51)【国際特許分類】
   F16B 21/18 20060101AFI20221109BHJP
   F16L 37/33 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
F16B21/18 F
F16L37/33
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018115990
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019218990
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】高野 哲郎
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0405452(KR,Y1)
【文献】特開2012-159175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0159864(US,A1)
【文献】実開昭50-113745(JP,U)
【文献】特開平08-170624(JP,A)
【文献】実開昭51-129947(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167720(US,A1)
【文献】実開昭56-007193(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/00-21/20
F16L 37/00-39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環板状に延在しその外周部が被装着部材の孔の内周面の環状溝に装着された状態でその内周部が前記内周面の半径方向内側に位置する本体板部と、前記本体板部の前記内周部の長手方向の端部に設けられ前記本体板部の前記外周部が前記環状溝に装着された状態で前記内周面の半径方向内側において前記内周面との間に隙間が確保される外周縁を有する細幅板部とを備え、前記本体板部と前記細幅板部の境の箇所は前記本体板部の長手方向に対して交差する方向に延在し前記本体板部の前記外周部の外周縁と前記細幅板部の前記外周縁とを接続する接続縁で接続されたリティニングリングであって、
前記細幅板部は前記内周面の径方向に沿った幅を有し、前記本体板部の前記外周部が前記環状溝に装着された状態で、前記細幅板部の外周縁の長手方向の中間部は、前記内周面との間に前記隙間を確保しつつ前記内周面にほぼ平行して前記内周面の周方向に前記細幅板部の幅よりも大きい寸法の長さで延在しており、
前記本体板部から離れた前記細幅板部の外周縁の長手方向の先部は、前記本体板部から離れるにつれて次第に前記細幅板部の内周縁に近づき前記内周縁に接続され、前記本体板部の前記外周部が前記環状溝に装着された状態で、前記細幅板部の外周縁の長手方向の先部と前記内周面との間に前記隙間を前記内周面の周方向に開放させる開口部が設けられ、
前記接続縁は、前記リティニングリングの軸心方向から見て前記接続縁と前記内周面との交点を通り前記交点における前記内周面の接線と直交する法線に対する角度が±30度の範囲内で延在している、
ことを特徴とするリティニングリング。
【請求項2】
前記接続縁は、前記法線上を延在している、
ことを特徴とする請求項1記載のリティニングリング。
【請求項3】
前記被装着部材は、管継手を構成する互いに係脱可能な一対のカップリングのカップリングボディであり、
前記内周面は、前記カップリングボディに形成された貫通孔の内周面であり、
前記環状溝は前記貫通孔の内周面に形成され、
前記貫通孔の軸心方向の中間部から端部に向けて弁座、前記弁座に当接することで前記貫通孔を閉塞する弁、前記弁を前記弁座に係合する方向に付勢するコイルスプリング、前記弁と反対に位置する前記コイルスプリングの端部に当接するスプリング受けが設けられ、
前記リティニングリングは前記環状溝に装着され前記スプリング受けの前記コイルスプリングから離れる方向の移動を阻止する、
ことを特徴とする請求項1または2記載のリティニングリング。
【請求項4】
前記スプリング受けは、前記コイルスプリングの中心部に挿入される円柱部と、前記円柱部と同軸上を延在する円柱基部と、前記円柱基部の周方向に間隔をおいた箇所からそれぞれ円柱基部の半径方向外方に延在し前記円柱基部の周方向でそれらの間に流路が形成される複数のフランジ部とを有し、
前記リティニングリングの前記内周部に前記複数のフランジ部が当接される、
ことを特徴とする請求項3記載のリティニングリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリティニングリングに関し、より詳細には、繰り返して大きなスラスト荷重を受ける場合であっても環状溝から外れにくいリティニングリングに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、油圧回路の圧力源側と油圧ジャッキとの接続を行なうため互いに係脱可能な一対のカップリングとして雌カップリングと雄カップリングを備える管継手が用いられている。
雌カップリングと雄カップリングは、それぞれカップリングボディと、カップリングボディの貫通孔に移動可能に設けられた弁と、弁を貫通孔の軸心方向で弁座側に付勢するコイルスプリングと、貫通孔に設けられたスプリング受けと、スプリング受けの後退を阻止するリティニングリングとを備えている。
そして、雌カップリングと雄カップリングとが結合されない状態では、コイルスプリングにより弁が閉弁位置に付勢されることで、それら雌カップリング、雄カップリングから油が流出することが防止される。
また、雌カップリングと雄カップリングとが結合されると、各弁は弁座から離れ、開弁位置となることで雌カップリングと雄カップリングとの間での油の流通が許容される。
そして、雌カップリングと雄カップリングとの間での油の流通が許容されると、油圧ジャッキ側のカップリングのリティニングリングには、油圧ジャッキの動作毎に大きなスラスト荷重が作用する。
【0003】
一方、リティニングリングの長手方向の端部には、内周面の環状溝に装着された状態で孔の内周面の半径方向内側において孔の内周面との間に隙間が確保される細幅板部を備え、メンテナンス時に工具の尖った先部をこの隙間に挿入し、リティニングリングを環状溝から取り外し、カップリングを分解できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-25277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、大きなスラスト荷重をリティニングリングが繰り返して受ける場合、環状溝に装着されるリティニングリングの本体板部と、孔の内周面との間に隙間を確保する細幅板部との境の箇所に、環状溝を構成する壁面に乗り上げようとする力が繰り返して作用し、リティニングリングの本体板部と細幅板部との境の箇所を変形させることが考えられ、リティニングリングが環状溝から外れやすくなることが考えられる。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、大きなスラスト荷重を繰り返して受ける場合であっても、本体板部と細幅板部との境の箇所の変形を抑制でき、環状溝からの外れを阻止する上で有利なリティニングリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため本発明は、環板状に延在しその外周部が被装着部材の孔の内周面の環状溝に装着された状態でその内周部が前記内周面の半径方向内側に位置する本体板部と、前記本体板部の前記内周部の長手方向の端部に設けられ前記本体板部の前記外周部が前記環状溝に装着された状態で前記内周面の半径方向内側において前記内周面との間に隙間が確保される外周縁を有する細幅板部とを備え、前記本体板部と前記細幅板部の境の箇所は前記本体板部の長手方向に対して交差する方向に延在し前記本体板部の前記外周部の外周縁と前記細幅板部の前記外周縁とを接続する接続縁で接続されたリティニングリングであって、前記細幅板部は前記内周面の径方向に沿った幅を有し、前記本体板部の前記外周部が前記環状溝に装着された状態で、前記細幅板部の外周縁の長手方向の中間部は、前記内周面との間に前記隙間を確保しつつ前記内周面にほぼ平行して前記内周面の周方向に前記細幅板部の幅よりも大きい寸法の長さで延在しており、前記本体板部から離れた前記細幅板部の外周縁の長手方向の先部は、前記本体板部から離れるにつれて次第に前記細幅板部の内周縁に近づき前記内周縁に接続され、前記本体板部の前記外周部が前記環状溝に装着された状態で、前記細幅板部の外周縁の長手方向の先部と前記内周面との間に前記隙間を前記内周面の周方向に開放させる開口部が設けられ、前記接続縁は、前記リティニングリングの軸心方向から見て前記接続縁と前記内周面との交点を通り前記交点における前記内周面の接線と直交する法線に対する角度が±30度の範囲内で延在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リティニングリングがスラスト荷重を受けた場合、本体板部と細幅板部との境の箇所に、環状溝を構成する壁面に乗り上げようとする力が作用しにくくなる。
そのため、リティニングリングに大きなスラスト荷重が繰り返して作用した場合であっても、本体板部と細幅板部との境の箇所の変形を抑制でき、リティニングリングの環状溝からの外れを阻止する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】管継手の一対のカップリングの結合が解除された状態を示す断面図である。
図2】管継手の一対のカップリングが結合された状態を示す断面図である。
図3】(A)は弁移動部材の平面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図4】(A)はコイルスプリング受けの平面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図5】内周面の環状溝にリティニングリングが装着された状態の説明図である。
図6】(A)、(B)はリティニングリングの本体板部、細幅板部、境の箇所、接続縁の説明図である。
図7】外周面の環状溝にリティニングリングが装着された状態の説明図である。
図8】(A)、(B)はリティニングリングの本体板部、細幅板部、境の箇所、接続縁の説明図である。
図9】内周面の環状溝に装着されたリティニングリングの試験装置の説明図である。
図10】外周面の環状溝に装着されたリティニングリングの試験装置の説明図である。
図11】内周面の環状溝に装着されたリティニングリングと外周面の環状溝に装着されたリティニングリングの試験条件および試験結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
まず、リティニングリングが用いられる管継手から説明する。
図1図2に示すように、管継手10は、互いに係脱可能な一対のカップリングとして雌型のカップリング12と雄型のカップリング14とを備えている。
雌型のカップリング12は油圧ジャッキに接続され、雄型のカップリング14は油圧圧力源に接続され、図1図2においてA矢印は、油圧ジャッキの動作時、繰り返して作用するスラスト荷重の方向を示している。
雌型のカップリング12と雄型のカップリング14は、細部の寸法や形状が若干異なるものの同様な形状のカップリングボディ20、弁移動部材22、弁座39、弁24、コイルスプリング26、スプリング受け28、リティニングリング30とを備えている。
雌型のカップリング12と雄型のカップリング14のカップリングボディ20A、20Bは、筒状を呈しその中心に軸心方向にそって貫通孔32が貫通形成されている。
貫通孔32の軸心方向の一端におけるカップリングボディ20A、20Bの箇所が互いに係脱可能に結合されるカップリング用結合部2010とされ、貫通孔32の軸心方向の他端が管体などの流体通路に結合される通路用結合部2012とされる。
【0010】
雌型のカップリング12のカップリングボディ20Aの貫通孔32には、カップリング用結合部2010から通路用結合部2012に向けてカップリング連結用孔34、弁移動部材用孔36、弁用孔38、環状溝40がそれらの順に並べられて設けられている。
【0011】
カップリング連結用孔34には溝を介してOリング42が装着されている。
また、カップリング連結用孔34側の弁移動部材用孔36の端部には、径方向内側に膨出し弁移動部材22の弁移動部材用孔36からの抜けを阻止する膨出部44が形成されている。
弁用孔38側の弁移動部材用孔36の端部は、弁24が当接することで貫通孔32を閉塞する弁座39を構成している。
【0012】
また、カップリングボディ20Aの外周部には、カップリング用結合部2010から通路用結合部2012に向けてカップリング連結用雄ねじ46、六角形状のナット部48、連結用雄ねじ49がそれらの順に並べられて形成されている。
通路用結合部2012の端部、すなわち、環状溝40が設けられた側のカップリングボディ12の端部は、貫通孔32の軸心と直交する平坦面2002Aで形成されている。
【0013】
雄型のカップリング14のカップリングボディ20Bの貫通孔32には、カップリング用結合部2010から通路用結合部2012に向けて弁移動部材用孔36、弁用孔38、環状溝40がそれらの順に並べられて設けられている。
弁用孔38と反対側の弁移動部材用孔36の端部には、径方向内側に膨出し弁移動部材22の小径孔からの抜けを阻止する膨出部44が形成されている。
また、弁用孔38と反対側の弁移動部材用孔36の端部は、弁24が当接することで貫通孔32を閉塞する弁座39を構成している。
【0014】
また、カップリングボディ20Bの外周部には、カップリング用結合部2010から通路用結合部2012に向けて結合用小径部52、カップリングナット用大径部54、連結用雄ねじ56がそれらの順に並べられて形成されている。
結合用小径部52は、雄型のカップリング14のカップリング連結用孔34に挿脱できる外径で形成されている。
結合用小径部52側のカップリングナット用大径部54の端部には、径方向外側に膨出する環状のストッパ5402が設けられている。
【0015】
カップリングナット用大径部54には筒状のカップリングナット58が回転可能に設けられている。
カップリングナット58には、カップリングナット用大径部54に移動可能かつ回転可能に結合される基部5802と、雄型のカップリング14のカップリング連結用雄ねじ46に螺合可能なカップリング連結用雌ねじ5804とが形成されている。
基部5802がストッパ5402に当接することでカップリングナット58の結合用小径部52方向への移動が阻止される。
カップリングナット58の外周部は、ローレット加工が施された外周面として形成されている。
通路用結合部2012の端部、すなわち、環状溝40が設けられた側のカップリングボディ20Bの端部は、貫通孔32の軸心と直交する平坦面2002Bで形成されている。
【0016】
弁移動部材22は、雌型と雄型のカップリングボディ20A、20Bの弁移動部材用孔36に移動可能に挿入されている。
弁移動部材22は、弁用孔38側に位置する箇所が移動案内部2202として形成され、弁用孔38と反対に位置する箇所は突出部2204として形成されている。
弁移動部材22は、図3(A)、(B)に示すように、弁移動部材用孔36の軸心方向に延在する中心軸部2210と、中心軸部2210の周囲に120度の間隔をおいて中心軸部2210の径方向外側に突出しつつ軸方向に延在する3つの凸条2212で構成されている。
移動案内部2202は、3つの凸条2212の外周部が弁移動部材用孔36に移動可能な曲面で形成され、移動案内部2202では、3つの凸条2212の間の空間がそれぞれ流路となっている。
弁用孔38側の移動案内部2202の端部には、球状の弁24に係合可能な曲面が形成され、弁用孔38側の移動案内部2202の端部は弁係合部2220として形成されている。
突出部2204は、移動案内部2202が膨出部44に当接した状態で弁移動部材用孔36から突出する箇所であり、突出部2204では、3つの凸条2212の外周部は移動案内部2202から離れるにつれて径方向外方に突出する寸法が小さく形成され、突出部2204の先端面は平坦な当接面2222として形成されている。
【0017】
図1図2に示すように、弁24は、本実施の形態では剛球で形成され、弁用孔38に挿入されている。
コイルスプリング26は、弁移動部材22と反対に位置する弁24の箇所に配置され、弁用孔38に挿入されている。
【0018】
スプリング受け28は、弁24と反対に位置するコイルスプリング26の箇所に配置され、弁用孔38に挿入されている。
また、環状溝40にリティニングリング30が装着され、図5に示すように、リティニングリング30は環状溝40に装着された状態で、環状溝40内に位置する外周部3002と、弁用孔38の内周面3802の半径方向内側に位置する内周部3004とを有している。
図4に示すように、スプリング受け28は、コイルスプリング26の内側に挿入される円柱部2802と、円柱部2802と同軸上を延在する円柱基部2804と、円柱基部2804の周方向に間隔をおいた箇所からそれぞれ円柱基部2804の半径方向外方に延在し円柱記基部の周方向でそれらの間に流路2805が形成される複数の(3つの)フランジ部2806とを有している。
そして、スプリング受け28の複数のフランジ部2806が、リティニングリング30の内周部3004に当接され、リティニングリング30は、スプリング受け28のコイルスプリング26から離れる方向への移動限界位置を決定する。
【0019】
本実施の形態では、円柱基部2804の軸方向で円柱部2802と反対の複数のフランジ部2806の外周部の端部に、円柱基部2804の半径方向外方および円柱基部2804の軸方向で円柱部2802と反対の方向に開放状の凹部41が設けられている。
凹部41は、円柱基部2804の中心を中心とした内周面4102と、内周面4102に接続され円柱基部2804の軸方向と直交する平面上を延在する環状の底面4104とを有している。
そして、スプリング受け28の複数のフランジ部2806の底面4104が、リティニングリング30の内周部3004に当接され、リティニングリング30の内周部3004が、その周方向において確実に環状の底面4104に当接するように図られている。
したがって、本実施の形態ではリティニングリング30が装着される被装着部材は、管継手10を構成する互いに係脱可能な一対のカップリング12,14のカップリングボディ20A、20Bである。
また、環状溝40が形成される内周面3802は、カップリングボディ20A、20Bに形成された貫通孔32の内周面3802であり、貫通孔32の軸心方向の中間部から端部に向けて弁座39、弁座39に当接することで貫通孔32を閉塞する弁24、弁24を弁座39に係合する方向に付勢するコイルスプリング26、弁24と反対に位置するコイルスプリング26の端部に当接するスプリング受け28が設けられ、リティニングリング30は環状溝40に装着されスプリング受け28のコイルスプリング26から離れる方向の移動を阻止する。
【0020】
図1に示すように、雌型と雄型のカップリングボディ20A、20Bが離れた状態では、コイルスプリング26により付勢された弁24が弁座39に係合し、弁24により弁用孔38を閉塞し、カップリング12、14からの流体漏れを阻止する。
また、雌型と雄型のカップリングボディ20A、20Bが離れた状態では、弁移動部材22の突出部2204は弁移動部材用孔36から突出する。
図2に示すように、雌型と雄型のカップリングボディ20A、20Bを結合する場合には、それらを同軸上に位置させてカップリングナット58を回転させてカップリング連結用雌ねじ5804をカップリング連結用雄ねじ46に螺合させる。
これによりカップリング連結用孔34に結合用小径部52が挿入され、Oリング42が結合用小径部52の外周面に弾接することで、カップリング連結用孔34と結合用小径部52とが液密に結合される。
また、弁移動部材22はそれらの突出部2204の当接面2222が当接することでコイルスプリング26の弾性力に抗して後退し、コイルスプリング26を圧縮して弁24を後退させ、突出部2204と反対に位置する弁移動部材22の移動案内部2202の端部が弁用孔38内に突出し、弁移動部材22の流路、弁用孔38、スプリング受け28の流路2805を介して雌型と雄型のカップリングボディ20A、20Bの内部の流路が連通する。
【0021】
図5図6(A)、(B)で示すように、リティニングリング30は、本体板部30Aと細幅板部30Bとを備え、均一の厚さで環板状に延在している。
本体板部30Aは、環状溝40内に位置する外周部3002と、弁用孔38の内周面3802の半径方向内側に位置する内周部3004とを有している。
図6(A)、(B)で示すように、細幅板部30Bは、本体板部30Aの内周部3004の長手方向の端部に設けられ、本体板部30Aの外周部3002が環状溝40に装着された状態で、内周面3802の半径方向内側において内周面3802との間に隙間Sが確保される外周縁3006を有している。
本体板部30Aと細幅板部30Bの境の箇所30Cは、本体板部30Aの長手方向に対して交差する方向に延在し本体板部30Aの外周部3002の外周縁3008と細幅板部30Bの外周縁3006とを接続する接続縁3010で接続されている。
そして、接続縁3010は、リティニングリング30の軸心方向から見て接続縁3010と内周面3802との交点O1を通り交点O1における内周面3802の接線L1と直交する法線L2に対する角度θが、±30度の範囲内で延在している。
【0022】
本実施の形態によれば、接続縁3010は、リティニングリング30の軸心方向から見て接続縁3010と内周面3802との交点O1を通り交点O1における内周面3802の接線L1と直交する法線L2に対する角度θが±30度の範囲内で延在しているので、リティニングリング30がスラスト荷重を受けた場合、本体板部30Aと細幅板部30Bとの境の箇所30Cに、環状溝40を構成する壁面に乗り上げようとする力が作用しにくくなる。
そのため、油圧ジャッキの使用時、リティニングリング30に大きなスラスト荷重が繰り返して作用した場合であっても、本体板部30Aと細幅板部30Bとの境の箇所30Cの変形を抑制でき、リティニングリング30の環状溝40からの外れを阻止する上で有利となる。
特に接続縁3010が法線L2上を延在している場合、スラスト荷重を受けても境の箇所30Cを、環状溝40を構成する壁面に乗り上げようとする力が最も作用しにくくなり、本体板部30Aと細幅板部30Bとの境の箇所30Cの変形をより一層抑制でき、リティニングリング30の環状溝40からの外れを阻止する上でより一層有利となる。
【0023】
管継手においては、オイルの流れの下流側となる油圧ジャッキに接続される雌型のカップリング12のリティニングリング30に大きなスラスト荷重が作用する。
このスラスト荷重は、本実施の形態では、リティニングリング30の延在方向の全長にわたり均等に作用せず、スプリング受け28の3つのフランジ部2806から、リティニングリング30の外周部3002の周方向に間隔をおいた複数箇所(3か所)に作用する。
したがって、例えば、3つのフランジ部2806のうちの1つのフランジ部2806が細幅板部30Bに当接した場合、大きなスラスト荷重により細幅板部30Bをコイルスプリング26や弁24から離れる方向に変形させるように作用するものの、本体板部30Aと細幅板部30Bとの境の箇所30Cでは、接続縁3010がリティニングリング30の軸心方向から見て接続縁3010と内周面3802との交点O1を通り交点O1における内周面3802の接線L1と直交する法線L2に対する角度θが、±30度の範囲内で延在しているので、環状溝40を構成する壁面に乗り上げようとする力が作用しにくくなる。
そのため、油圧ジャッキの使用時、3つのフランジ部2806のうちの1つのフランジ部2806が細幅板部30Bに当接し、細幅板部30Bに大きなスラスト荷重が繰り返して作用した場合であっても、本体板部30Aと細幅板部30Bとの境の箇所30Cの変形を抑制でき、リティニングリング30の環状溝40からの外れを阻止する上で有利となる。
【0024】
スラスト荷重を受けた場合、リティニングリング30の本体板部30Aと細幅板部30Bとの境の箇所30Cに、環状溝40の壁面に乗り上げようとする力を作用しにくくする本実施の形態の構成は、孔の内周面3802の環状溝40に装着されるリティニングリング30に限らず、図7に示すように、軸50の外周面5002の環状溝60に装着されるリティニングリング70にも同様に適用される。
この場合には、リティニングリング70の本体板部70Aは、環板状に延在しその内周部7004が軸50の外周面5002の環状溝60に装着された状態でその外周部7002が外周面5002の半径方向外側に位置している。
また、図8(A)、(B)で示すように、リティニングリング70の細幅板部70Bは、本体板部70Aの外周部7002の長手方向の端部に設けられ、本体板部70Aの内周部7004が環状溝60に装着された状態で外周面5002の半径方向外側において外周面5002との間に隙間Sが確保される内周縁7006を有している。
接続縁7010は、本体板部70Aと細幅板部70Bの境の箇所70Cにおいて、本体板部70Aの長手方向に対して交差する方向に延在し本体板部70Aの内周部7004の内周縁7008と細幅板部70Bの内周縁7006とを接続している。
そして、接続縁7010は、リティニングリング70の軸心方向から見て接続縁7010と外周面5002との交点O2を通り交点O2における外周面5002の接線L3と直交する法線L4に対する角度θが±30度の範囲内で延在している。
リティニングリング70に大きなスラスト荷重が繰り返して作用した場合、本体板部70Aと細幅板部70Bとの境の箇所70Cの変形を抑制でき、リティニングリング70の環状溝60からの外れを阻止する上で有利となる原理は、孔の内周面3802の環状溝40に装着されるリティニングリング30の場合と同様である。
【0025】
図9に示すように、孔38の内周面3802の環状溝40に装着される大きさが異なる第1、第2のリティニングリング30-1,30-2と、図10に示すように、軸50の外周面5002の環状溝60に装着される第3、第4のリティニングリング70-1、70-2について実験を行なった。
図9に示すように、孔38の内周面3802の環状溝40に装着される第1、第2のリティニングリング30-1,30-2の場合には、内周面3802の環状溝40に第1、第2のリティニングリング30-1,30-2が装着された被装着部材80を定盤82上に固定し、リティニングリング30-1,30-2の内周部3004に対して孔38の軸心と同軸上で押し棒84によりスラスト荷重を繰り返して作用させた。
押し棒84の先部には、押し棒84と同軸上の基部8402と、基部8402の周方向に等間隔をおいて基部8402の半径方向外方に突出する3つのフランジ部8404とが設けられ、各フランジ部8404の外周部に、基部8402と同軸上で半径方向外方および下方に開放状の凹部86が設けられ、凹部86は、基部8402を中心とした外周面8602と、基部8402の軸方向と直交する平面上を延在する底面8604とを有し、この底面8604が第1、第2のリティニングリング30-1,30-2の内周部3004に当接する。
第1、第2のリティニングリング30-1,30-2について、図6(A)、(B)に示すように、角度θが+45度、+30度、0度、-30度、-45度の5種類を3つずつ用意した。
図9に示すように、第1、第2のリティニングリング30-1,30-2が配置される孔38の内周面3802の内径D11、環状溝40の幅W11、環状溝40の底部の内径D12、第1、第2のリティニングリング30-1,30-2の外径D13(環状溝40に装着する前の寸法)、厚さT11、図6(A)、(B)に示すように、細幅板部30Bに続く本体板部30Aの箇所の幅W12、細幅板部30Bの幅W13、図9に示すように、押し棒84のフランジ部8404の外径D14、凹部86の外周面8602の外径D15、押し棒84に掛ける荷重、繰り返し回数を図11に示す。
【0026】
図10に示すように、軸50の外周面5002の環状溝60に装着される第3、第4のリティニングリング70-3,70-4の場合には、軸(被装着部材)50を定盤82上に固定し、第3、第4のリティニングリング70-3,70-4の外周部7002に対して軸50と同軸上で押し棒90によりスラスト荷重を繰り返して作用させた。
押し棒90の先部の外周部には、周方向に間隔をおいて3つのフランジ部9002が突設され、各フランジ部9002の内周面9004は軸50が挿入される内径D24で形成され、内周面9004の下端に、フランジ部9002の半径方向内方で下方に開放状の凹部91が設けられている。
凹部91は、第3、第4のリティニングリング70-3,70-4の外径よりも大きい寸法の内径で形成された内周面9102と、内周面9102に接続され下方にむけられた底面9104とを有し、この底面9104が第3、第4のリティニングリング70-3,70-4の外周部7002に当接する。
第3、第4のリティニングリング70-3,70-4について、角度θが+45度、+30度、0度、-30度、-45度の5種類を3つずつ用意した。
第3、第4のリティニングリング70-3,70-4が配置される軸50の外周面5002の外径D21、環状溝60の幅W21、環状溝60の底部の外径D22、第3、第4のリティニングリング70-3,70-4の内径D23(環状溝40に装着する前の寸法)、厚さT21、図8(A)、(B)に示すように、細幅板部70Bに続く本体板部70Aの箇所の幅W22、細幅板部70Bの幅W23、押し棒90のフランジ部9002の内周面9004の内径D24、凹部91の内周面9102の内径D25、掛ける荷重、繰り返し回数を図11に示す。
【0027】
図11の右欄に示すように、第1~第4のリティニングリング30-1,30-2、70-3,70-4について角度θが+45度の場合は、本体板部70Aと細幅板部70Bの境の箇所70Cに若干の変形が生じたリティニングリングが6つあったが、角度θが+30度、角度θが0度、角度θが-30度の場合には変形が生じたリティニングリングはなかった。
なお、角度θが-30度未満の場合すなわち角度θが-31度、-32度と小さくなるにつれ、千枚通しなどの工具でリティニングリング30(70)を外す際に本体板部30Aと細幅板部30Bとの境の箇所30C(本体板部70Aと細幅板部70Bの境の箇所70C)が邪魔となる不具合があり、また、プレス打ち抜き加工が困難となる不具合がある。
【符号の説明】
【0028】
10 管継手
12 雄型のカップリング
14 雌型のカップリング
20、20A、20B カップリングボディ
28 スプリング受け
2806 フランジ部
30、70 リティニングリング
30A、70A 本体板部
30B、70B 細幅板部
30C、70C 本体板部と細幅板部の境の箇所
3002,7002 外周部
3004,7004 内周部
3006,3008 外周縁
3010 接続縁
7006,7008 内周縁
32 貫通孔
38弁用孔
3802 内周面
40、60 環状溝
41 凹部
50 軸
5002 外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11