(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20221109BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221109BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20221109BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20221109BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221109BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08L9/06
C08K3/36
C08K5/548
C08L45/00
C08L101/00
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2018117171
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 顕哉
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003274(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076048(WO,A1)
【文献】特開2008-101158(JP,A)
【文献】特開2014-185343(JP,A)
【文献】特開平01-314605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴムを50~95質量%およびブタジエンゴムを5~50質量%含むジエン系ゴム100質量部に対し、
重量平均分子量が500~4000のテルペン系樹脂を5~20質量部、
重量平均分子量が100~4000の液状ゴムおよび/または液状樹脂を5~30質量部、
並びにシリカを95~160質量部含有し、
JIS K 6258に準拠して測定した40℃のトルエンに24時間浸漬した前後の体積変化率が220~270%であるゴム組成物。
【請求項2】
硫黄含有量の異なる2種以上のシランカップリング剤を含有する、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
チオエステル基を有するシランカップリング剤を含有する、請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、硫黄を1~3質量部含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、オイルを5~20質量部含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物および当該ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤに求められる重要な性能として、ウェットグリップ性能や耐摩耗性能がある。また近年、省資源の観点から、タイヤの転がり抵抗改善による低燃費性能の向上が求められている。低燃費性能向上にはヒステリシスロスが小さいこと、ウェットグリップ性能向上にはウェットスキッド抵抗性が高いことが要求される。しかしながら、低ヒステリシスロスと高いウェットスキッド抵抗性とは相反するものであり、低燃費性能およびウェットグリップ性能をバランス良く改善することは困難である。
【0003】
耐摩耗性能の改善にはゴム組成物にカーボンブラックを添加する手法が知られているが、低燃費性能とウェットグリップ性能とのバランスが低下する傾向がある。また、耐摩耗性能に有利なブタジエンゴムはヒステリシスロスが小さく低燃費性能は良好であるが、ウェットグリップ性能には不利となる。
【0004】
特許文献1には、特定の液状樹脂およびシリカを配合することで、低燃費性能、ウェットグリップ性能、および耐摩耗性能を改善したタイヤ用ゴム組成物が開示されている。しかしながら、シリカは自己凝集性が強く、分散が困難であるという点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低燃費性能、ウェットグリップ性能、および耐摩耗性能がバランスよく優れたゴム組成物、および該ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、ジエン系ゴムに、テルペン系樹脂と、液状ゴムおよび/または液状樹脂と、シリカとを配合し、かつゴム組成物の架橋密度(トルエン膨潤前後の体積変化率)を所定の範囲とすることで上記課題を解決できること見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕ジエン系ゴム100質量部に対し、重量平均分子量が500~4000のテルペン系樹脂を5~20質量部、重量平均分子量が100~4000の液状ゴムおよび/または液状樹脂を5~30質量部、並びにシリカを95~160質量部含有し、JIS K 6258に準拠して測定した40℃のトルエンに24時間浸漬した前後の体積変化率が220~270%であるゴム組成物、
〔2〕硫黄含有量の異なる2種以上のシランカップリング剤を含有する、〔1〕記載のゴム組成物、
〔3〕チオエステル基を有するシランカップリング剤を含有する、〔1〕または〔2〕記載のゴム組成物、
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤ、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低燃費性能、ウェットグリップ性能、および耐摩耗性能がバランスよく優れたゴム組成物、および当該ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態であるタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムと、テルペン系樹脂と、液状ゴムおよび/または液状樹脂と、シリカとを含有し、かつ架橋密度(トルエン膨潤前後の体積変化率)を所定の範囲とすることを特徴とする。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0011】
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムと相溶性の高い所定のテルペン系樹脂を配合し、ゴム組成物中にテルペン系樹脂を微分散させることで、ウェットグリップ領域のような高周波数帯の刺激応答下では高いロス性能を発揮し、一方、タイヤ転動時のような低周波数帯の刺激応答下ではヒステリシスロスが抑えられていると考えられる。また、テルペン系樹脂がゴム組成物中に微分散することで、耐摩耗性能の低下が抑制されていると考えられる。
【0012】
さらに、テルペン系樹脂と液状ゴムおよび/または液状樹脂とを同時にかつバランスよく配合することで、上記の樹脂分散性を制御し、低燃費性能や耐摩耗性能の低下を抑え、高いウェットグリップ性能が発揮される。
【0013】
また、架橋密度を制御することにより、材料内での応力集中を抑えて耐摩耗性能を確保しつつ、ゴムの分子運動によるエネルギーロスを抑制して低燃費性能を確保することができる。
【0014】
以上のことから、本発明によれば、高い次元でゴム組成物の低燃費性能、ウェットグリップ性能、および耐摩耗性能をバランス良く向上させることができる。
【0015】
<架橋密度>
本実施形態においては、ゴム組成物の架橋密度を反映する尺度として、トルエン膨潤前後の体積変化率を使用する。本明細書において、トルエン膨潤前後の体積変化率は、JIS K 6258:2016「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-耐液性の求め方」に準拠し、加硫後の各試験用ゴム組成物を40℃のトルエンに24時間浸漬した前後の体積変化率(%)を測定することにより求めることができる。
【0016】
本実施形態に係るゴム組成物のトルエン膨潤前後の体積変化率は、220%以上であり、225%以上が好ましく、230%以上が好ましく、235%以上がさらに好ましい。体積変化率が220未満であると、耐摩耗性能が低下する傾向がある。また、該体積変化率は、270%以下であり、265%以下が好ましく、260%以下がより好ましく、255%以下がさらに好ましい。体積変化率が270%を超えると、低燃費性能が低下する傾向がある。
【0017】
<ゴム成分>
本実施形態において使用されるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、グリップ性能および耐摩耗性能がバランスよく得られるという理由から、SBRおよびBRが好ましい。これらのゴム成分は、前記のうち1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
(SBR)
SBRとしては、特に限定されず、例えば未変性の乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)や溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、これらを変性した変性乳化重合スチレンブタジエンゴム(変性E-SBR)や変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S-SBR)等の変性SBRが挙げられる。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、伸展油を加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。これらのSBRは、前記のうち1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本実施形態において使用可能なS-SBRとしては、JSR(株)、住友化学(株)、宇部興産(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等によって製造販売されるS-SBRが挙げられる。
【0020】
SBRのスチレン含量は、グリップ性能および耐摩耗性能の観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上より好ましい。また、グリップ性能の温度依存性および耐摩耗性能の観点からは、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。なお、該スチレン含有量は、1H-NMR測定により算出される値である。
【0021】
SBRのビニル含量は、グリップ性能の観点から、15%以上が好ましく、18%以上がより好ましい。また、グリップ性能の温度依存性の観点からは、65%以下が好ましく、63%以下が好ましい。なお、該ビニル含有量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される値である。
【0022】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、グリップ性能等の観点から、10万以上が好ましく、15万以上がより好ましく、25万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましく、120万以下がさらに好ましい。
【0023】
ジエン系ゴム100質量%中のSBRの含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好い。また、耐摩耗性能および低燃費性能の観点からは、95質量%以下か好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。なお、SBRとして油展タイプのSBRを用いる場合は、当該油展タイプのSBR中に含まれる固形分としてのSBR自体の含有量をゴム成分中の含有量とする。
【0024】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス1,4結合含有率が50%未満のBR(ローシスBR)、シス1,4結合含有率が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等ゴム工業において一般的なものを使用することができる。これらのBRのなかでも、耐摩耗性能に優れるという理由から、ハイシスBRが好ましい。
【0025】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、BR150L、JSR(株)製のBR730等が挙げられる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス(株)製のBUNA-CB25等が挙げられる。
【0026】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)製のVCR-303、VCR-412、VCR-617等が挙げられる。
【0027】
変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。このような変性BRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1250H(スズ変性)、住友化学工業(株)製のS変性ポリマー(シリカ用変性)等が挙げられる。
【0028】
BRのシス1,4結合含有率(シス含量)は、耐久性や耐摩耗性能の観点から、90質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましい。シス含量が高い方が、ポリマー鎖が規則正しく配列されることから、ポリマー同士の相互作用が強くなりゴム強度が向上し、悪路走行時の耐摩耗性能が向上すると考えられる。
【0029】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能およびグリップ性能等の観点から40万以上が好ましく、45万以上がより好ましく、50万以上がさらに好ましい。また、Mwは、架橋均一性等の観点から、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。
【0030】
ジエン系ゴム100質量%中のBRの含有量は、耐摩耗性能の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、ウェットグリップ性能の観点からは、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
(テルペン系樹脂)
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン原料から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂(水素添加されていないテルペン系樹脂)、並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。ここで、芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられ、また、テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0032】
テルペン系樹脂の軟化点は、ウェットグリップ性能の観点から、100℃以上が好ましく、105℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましい。また、低燃費性能および耐摩耗性能の観点からは、150℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。
【0033】
テルペン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、500以上が好ましく、600以上が好ましい。また、加工性の観点からは、4000以下が好ましく、3500以下がより好ましく、3000以下がさらに好ましい。
【0034】
テルペン系樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部以上であり、8質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。5質量部未満の場合は、ウェットグリップ性能向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、テルペン系樹脂の含有量は、20質量部以下であり、18質量部以下が好ましく、16質量部以下がより好ましい。20質量部を超える場合は、低燃費性能が低下する傾向、混練り工程で樹脂の溶け残りが発生して分散不良を起こし、耐摩耗性能が低下する傾向がある。
【0035】
(液状ゴムおよび液状樹脂)
液状ゴムとしては、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)等が挙げられる。液状樹脂としては、例えば、液状クマロンインデン樹脂、液状C5-C9系石油樹脂等が挙げられる。これらの液状ゴムおよび液状樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性能とグリップ性能の両立の理由から、液状SBRもしくは液状C5-C9系石油樹脂が好ましい。具体的な液状樹脂および液状ゴムとしては、CRAY VALLEY社製のRICONシリーズ等が好適に用いられる。
【0036】
液状ゴムおよび液状樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、100以上が好ましく、200以上がより好ましい。また、加工性の観点からは、4000以下が好ましく、3500以下がより好ましく、3000以下がさらに好ましい。
【0037】
液状ゴムおよび/または液状樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部以上であり、8質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。5質量部未満の場合は、充分なウェットグリップ性能が得られない傾向がある。また、液状ゴムおよび/または液状樹脂の含有量は30質量部以下であり、28質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。30質量部を超える場合は、低燃費性能や耐摩耗性能が低下する傾向がある。
【0038】
液状ゴムおよび/または液状樹脂の含有量に対するテルペン系樹脂の含有量(テルペン系樹脂の含有量/液状ゴムおよび/または液状樹脂の含有量)は、ウェットグリップ性能の観点から、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。また、低燃費性能および耐摩耗性能の観点からは、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0039】
なお、本明細書における上記の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計)を用い、標準ポリスチレンにより換算して測定される値である。
【0040】
<フィラー>
本実施形態において使用されるフィラーは、シリカを必須成分として含むことを特徴とする。また、シリカはシランカップリング剤と併用されることが好ましい。
【0041】
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、ゴム工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
シリカのBET比表面積は、耐久性や破断時伸びの観点から、80m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるシリカのBET比表面積は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0043】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、95質量部以上であり、100質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましい。95質量部未満の場合は、ウェットグリップ性能向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、160質量部以下であり、150質量部以下が好ましく、140質量部以下がより好ましい。160質量部を超える場合は、ムーニー粘度が大幅に上昇し、成形加工性が悪化する傾向がある。
【0044】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤の具体例としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシドキシ基を有するシランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン等のニトロ基を有するシランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、チオエステル基を有するシランカップリング剤は、高温までジエン系ゴムとの反応性が少なく、混練中のジエン系ゴムとシランカップリング剤とシリカとの強固な結合を抑制することができ、シリカを適度に分散させることができる点から好ましく、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランがより好ましい。
【0045】
さらに、本実施形態においては、硫黄含有量が異なる2種以上のシランカップリング剤を併用することがより好ましい。硫黄含有量が異なる2種以上のシランカップリング剤を併用することにより、シリカとシランカップリング剤との反応温度が高い場合でも、混練中にジエン系ゴムとシランカップリング剤とシリカとが強固に結合するのを抑制し、良好なシリカ分散が得られ、耐摩耗性能の悪化を抑制することができる傾向がある。また、シリカとシランカップリング剤との反応温度が低い場合でも、混練中にシリカの分散性が十分になされ、低燃費性能や耐摩耗性能の悪化を抑制することができる傾向がある。このような2種以上のシランカップリング剤の組み合わせとしては、特に限定されるものではないが、例えば、スルフィド基を有するシランカップリング剤と、メルカプト基もしくはチオエステル基を有するシランカップリング剤との組み合わせが挙げられ、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドと3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランとの組み合わせが好ましい。
【0046】
本実施形態において、シランカップリング剤の硫黄含有量とは、シランカップリング剤単位質量あたりの硫黄含有率を意味する。例えば、硫黄含有量が異なる2種のシランカップリング剤を併用する場合、硫黄含有量の高いシランカップリング剤の硫黄含有量は、0.35質量%以上が好ましく、0.4質量%以上がより好ましい。また、硫黄含有量の高いシランカップリング剤の硫黄含有量は、0.8質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましい。硫黄含有量の低いシランカップリング剤の硫黄含有量は、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。硫黄含有量の低いシランカップリング剤の硫黄含有量は、0.35質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。ただし、硫黄含有量の高いシランカップリング剤と硫黄含有量の低いシランカップリング剤との硫黄含有量は異なるものであるため、共に同じ硫黄含有量とすることはなく、好ましい範囲であっても共に0.35質量%とするものではない。各シランカップリング剤の硫黄含有量が上記範囲内の場合は、低燃費性能と耐摩耗性能のバランスが良好となる傾向がある。
【0047】
シランカップリング剤を含有する場合の、シランカップリング剤の総含有量は、シリカ100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、シランカップリング剤の総含有量は、シリカ100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。シランカップリング剤の総含有量が上記範囲内の場合は、より良好な加工性、ゴム強度、低燃費性能、および耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0048】
シランカップリング剤中には、チオエステル基を有するシランカップリング剤を1質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましく、20質量%以上含有することがさらに好ましい。また、シランカップリング剤中の硫黄含有量の高いシランカップリング剤と硫黄含有量の低いシランカップリング剤の含有量の比は特に限定されないが、例えば、1:99~99:1、10:90~90:10、20:80~80:20の範囲とすることができる。
【0049】
(その他のフィラー)
フィラーとしては、シリカ以外に、さらにその他のフィラーを用いてもよい。そのようなフィラーとしては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルク、クレー等、ゴム工業において一般的に使用されるフィラーをいずれも用いることができる。これらのフィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。フィラーとして、シリカ以外のものを用いる場合、ゴム強度の観点から、カーボンブラックが好ましい。すなわちフィラーとしては、シリカおよびカーボンブラックを含むものであることが好ましく、シリカおよびカーボンブラックのみからなるものであることがより好ましい。
【0050】
カーボンブラックとしては、ゴム工業において一般的なものを適宜利用することができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられ、具体的にはN110,N115,N120,N125,N134,N135,N219,N220,N231,N234,N293,N299,N326,N330,N339,N343,N347,N351,N356,N358,N375,N539,N550,N582,N630,N642,N650,N660,N683,N754,N762,N765,N772,N774,N787,N907,N908,N990,N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、110m2/g以上が好ましく、115m2/g以上が好ましく、120m2/g以上がより好ましい。カーボンブラックのN2SAを110m2/g以上とすることで、BRおよびSBRの各相の境界近傍にカーボンブラックが分散され、SBRとカーボンブラックとの接触面積が増加する。このことから、BRおよびSBRの各相間の結びつきが強化されるので、ゴム組成物に対する補強効果がより向上し、耐摩耗性能に優れたゴム組成物とすることができる。また、カーボンブラックのN2SAの上限は特に限定されないが、加工性の観点から180m2/g以下が好ましく、160m2/g以下がより好ましく、150m2/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217-2「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に準じて測定された値である。
【0052】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐摩耗性能の観点から1質量部以上が好ましく、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、カーボンブラックの含有量の上限は特に限定されないが、低燃費性能や加工性の観点から、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。
【0053】
フィラー全体のゴム成分100質量部に対する含有量は、補強性およびウェットグリップ性能の観点から、95質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましく、105質量部以上がさらに好ましい。また、シリカの分散性の観点や加工性の観点からは、160質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、140質量部以下がさらに好ましい。
【0054】
フィラー中におけるシリカの含有量は、低燃費性能およびウェットグリップ性能の観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0055】
<その他の成分>
本実施形態に係るゴム組成物は、前記のゴム成分、テルペン系樹脂、液状ゴム、液状樹脂、フィラー以外にも、従来からゴム工業において使用される配合剤や添加剤、例えば、前記のテルペン系樹脂、液状ゴム、および液状樹脂以外の軟化剤、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等を、必要に応じて適宜含有することができる。
【0056】
テルペン系樹脂、液状ゴム、および液状樹脂以外の軟化剤としては、従来、ゴム工業において一般的なものであれば特に限定されず、例えば、テルペン系樹脂および液状ゴム以外の液状ポリマーや、アロマチックオイル、プロセスオイル、パラフィンオイル等の鉱物油を含むオイル等が挙げられ、適宜選択することができる。
【0057】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐摩耗性能の低下を防ぐという観点から、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましい。また、加工性の観点からは、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。
【0058】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの劣化を抑制するという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ワックスのタイヤ表面へのブルームによるタイヤの白色化を防ぐという観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0059】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの劣化を抑制するという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、老化防止剤のタイヤ表面へのブルームによるタイヤの変色を防ぐという観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0060】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの加硫速度を上げ、タイヤの生産性を上げるという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防ぐという観点からは、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0061】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの加硫速度を上げ、タイヤの生産性を上げるという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性の低下を防ぐという観点からは、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0062】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保し、良好なグリップ性能および耐摩耗性能を得るという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルーミングによる、グリップ性能および耐摩耗性能の低下を抑制するという理由から、3質量部以下が好ましい。
【0063】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤が挙げられる。これらの加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、加硫特性に優れ、加硫後のゴムの物性において、低燃費性能に優れるという理由からスルフェンアミド系加硫促進剤が好ましく、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)等が挙げられる。
【0064】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加硫促進の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、加工性の観点からは、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましい。
【0065】
本実施形態に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機等のゴム混練装置を用いて混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0066】
本発明の他の実施形態は、前記ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤである。前記ゴム組成物により構成されるタイヤ部材としては、トレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード等の各タイヤ部材が挙げられる。なかでも、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および低燃費性能に優れることからトレッドが好ましい。
【0067】
本実施形態に係るタイヤは、前記ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造することができる。すなわち、前記の各成分を混練して得られた未加硫ゴム組成物をトレッド等のタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工した部材をタイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成形することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより製造することができる。
【実施例】
【0068】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
SBR:Trinseo社製のSLR6430(S-SBR、スチレン含量:40質量%、ビニル含量:20%、Mw:100万)
BR:宇部興産(株)製のBR150L(ハイシスBR、シス1,4結合含量:98質量%、Mw:60万)
テルペン系樹脂:アリゾナケミカル社製のSYLVATRAXX4150(軟化点115℃、Mw:2500、水添なし)
液状樹脂:CRAY VALLEY社製のRICON340(液状C5-C9樹脂、Mw:2400)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N2SA:125m2/g)
シリカ:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤1:モメンティブ社製のNXT(3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン)(硫黄含有量:0.3質量%)
シランカップリング剤2:エボニックデグサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)(硫黄含有量:0.7質量%)
オイル:出光興産(株)製のミネラルオイルPW-380
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックスN
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’-ジフェニルグアニジン)
【0070】
実施例および比較例
表1に示す配合処方にしたがい、神戸製鋼所(株)製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤を除く配合成分を充填率が58%になるように充填し、回転数80rpmで140℃に到達するまで3分間混練りした。ついで、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を加えた後、オープンロールを用いて、80℃で5分間混練りし、各実施例および各比較例に係る配合の未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、各試験用ゴム組成物を得た。
【0071】
得られた未加硫ゴム組成物および試験用ゴム組成物について下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0072】
<ムーニー粘度指数>
JIS K 6300-1「未加硫ゴム-物理特性-第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準拠し、130℃で各未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)を測定し、ムーニー粘度(ML1+4)の逆数の値を、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
【0073】
<体積変化率>
JIS K 6258:2016「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-耐液性の求め方」に準拠し、加硫後の各試験用ゴム組成物を40℃のトルエンに24時間浸漬した前後の体積変化率(%)を測定した。体積変化率の値が小さいほど架橋密度が高いことを示す。
【0074】
<低燃費性能指数>
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃で各試験用ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定し、tanδの逆数の値を、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性能に優れる。
(低燃費性能指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0075】
<ウェットグリップ性能指数>
(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いて、各試験用ゴム組成物のウェットグリップ性能を評価した。各試験用ゴム組成物からなる幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片をサンプルとして用い、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0~70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。そして、下記計算式により測定結果を指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れる。
(ウェットグリップ性能指数)=(各配合の摩擦係数の最大値)/(比較例1の摩擦係数の最大値)×100
【0076】
<耐摩耗性能指数>
ランボーン型摩耗試験機を用いて、各試験用ゴム組成物の室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件における摩耗量を測定した。結果は、摩耗量の逆数の値を、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性能に優れる。
(耐摩耗性能指数)=(比較例1の摩耗量)/(各配合の摩耗量)×100
【0077】
【0078】
表1の結果より、ジエン系ゴムと、テルペン系樹脂と、液状ゴムおよび/または液状樹脂と、シリカとを含有し、かつ架橋密度(トルエン膨潤前後の体積変化率)を所定の範囲とした本発明のゴム組成物は、低燃費性能、ウェットグリップ性能、および耐摩耗性能がバランスよく優れることがわかる。