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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20221109BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20221109BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20221109BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20221109BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221109BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20221109BHJP
   H04N 13/302 20180101ALI20221109BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G02B30/56
G02F1/13 505
G02F1/1335 520
G02F1/1333
G02B5/08 A
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/14 Z
H04N13/302
G09F9/00 359
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018117917
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019219560
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】代工 康宏
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-242729(JP,A)
【文献】特開2017-228848(JP,A)
【文献】特開2016-101805(JP,A)
【文献】特開2017-181555(JP,A)
【文献】特開2017-181678(JP,A)
【文献】特開2006-115266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0273983(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56,5/08
G02F 1/13
G09F 9/00
H01L 27/32,51/50
H04N 13/302
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画像を表示する表示面を有し、前記表示面から表示光を出射する第1表示素子と、
前記第1表示素子の前記表示面に対して斜めに配置され、前記第1表示素子から出射された前記表示光を反射し、前記第1表示素子と面対称な位置に空中像を結像するミラーデバイスと、
前記ミラーデバイスと前記空中像との間に前記ミラーデバイスとは別体で、前記ミラーデバイスの主面に対して前記第1表示素子の前記表示面と前記ミラーデバイスの主面とのなす角度と同じ角度で配置され、前記ミラーデバイスで反射された前記表示光を透過すると共に、第2画像を表示する第2表示素子と、
を具備し、
前記空中像は、前記ミラーデバイスよりも観察者の側で、前記観察者から見て前記第2画像の手前に結像される
空中表示装置。
【請求項2】
前記ミラーデバイスは、直角に配置された2つの反射面をそれぞれが含む複数の光学要素を有する請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記複数の光学要素の各々は、立方体または直方体からなる請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記ミラーデバイスの主面と、前記第1表示素子の前記表示面とがなす角度は、30度以上60度以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記ミラーデバイスの主面と、前記第1表示素子の前記表示面とがなす角度は、45度である請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記第2表示素子は、前記ミラーデバイスにより反射された前記表示光を透過する透過型の表示素子である請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記第2表示素子は、透明EL表示素子である請求項6に記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像や動画などを空中映像として表示可能な空中表示装置が研究され、新しいヒューマン・マシン・インターフェースとして期待されている。空中表示装置は、例えば、2面コーナーリフレクタがアレイ状に配列された2面コーナーリフレクタアレイを用いて、表示素子から出射される光を反射し、空中に実像(以下、空中像)を結像している(例えば、特許文献1参照)。2面コーナーリフレクタアレイによる表示法は、収差が無く、面対称位置に実像が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-67933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示素子の画像表示面の上方に空中像を表示でき、画像表示面の画像と空中像の表示品質を向上させることが可能な空中表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の空中表示装置は、第1画像を表示する表示面を有し、前記表示面から表示光を出射する第1表示素子と、前記第1表示素子の前記表示面に対して斜めに配置され、前記第1表示素子から出射された前記表示光を反射し、前記第1表示素子と面対称な位置に空中像を結像するミラーデバイスと、前記ミラーデバイスと前記空中像との間に前記ミラーデバイスとは別体で、前記ミラーデバイスの主面に対して前記第1表示素子の前記表示面と前記ミラーデバイスの主面とのなす角度と同じ角度で配置され、前記ミラーデバイスで反射された前記表示光を透過すると共に、第2画像を表示する第2表示素子とを具備し、前記空中像は、前記ミラーデバイスよりも観察者の側で、前記観察者から見て前記第2画像の手前に結像される
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、ミラーデバイスの斜視図である。
図2図2は、空中表示装置の原理を示す模式図である。
図3図3は、ミラーデバイスの1つの光学要素で2回反射される光の様子を示す模式図である。
図4図4は、図3に示した光学要素をz方向から見た場合の光路を示す図である。
図5図5は、図3に示した光学要素をy方向から見た場合の光路を示す図である。
図6図6は、図3に示した光学要素をx方向から見た場合の光路を示す図である。
図7図7は、空中表示装置によって表示されるゴーストを示す模式図である。
図8図8は、1つの光学要素で1回反射される光の様子を示す模式図である。
図9図9は、図8に示した光学要素をz方向から見た場合の光路を示す図である。
図10図10は、図8に示した光学要素をy方向から見た場合の光路を示す図である。
図11図11は、図8に示した光学要素をx方向から見た場合の光路を示す図である。
図12図12は、空中表示装置の不要光を示す模式図である。
図13図13は、1つの光学要素で1回も反射されない光の様子を示す模式図である。
図14図14は、図13に示した光学要素をz方向から見た場合の光路を示す図である。
図15図15は、図13に示した光学要素をy方向から見た場合の光路を示す図である。
図16図16は、図13に示した光学要素をx方向から見た場合の光路を示す図である。
図17図17は、実施形態の空中表示装置の構成を示すブロック図である。
図18図18は、実施形態の空中表示装置の光学的な構成を示す斜視図である。
図19図19は、実施形態の空中表示装置の光学的な構成を示す側面図である。
図20図20は、空中表示装置内のミラーデバイスにおける光学要素のレイアウト図である。
図21図21は、図20に示した光学要素をz方向から見た場合の光路を示す図である。
図22図22は、空中表示装置内の表示ユニットの構成を示す斜視図である。
図23図23は、表示ユニット内の表示素子としての液晶表示素子の平面図である。
図24図24は、図23に示した液晶表示素子の断面図である。
図25図25は、表示ユニットとしての透明有機EL表示素子の断面図である。
図26図26は、車載用としての空中表示装置に表示される表示例を示す図である。
図27図27は、比較例の空中表示装置の光学的な構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
本実施形態の空中表示装置について説明する前に、空中表示装置の原理を説明する。
【0009】
[1]空中表示装置の原理
空中表示装置は、例えば液晶ディスプレイの表示面から出射される光を、2面コーナーリフレクタ等の空中結像素子(ミラーデバイス)を用いて空間中に結像させるものである。
【0010】
まず、空中表示装置に用いられるミラーデバイス10の構成について説明する。図1は、ミラーデバイス10の斜視図である。
【0011】
ミラーデバイス10は、平面状の基材11と、基材11上に設けられた複数の光学要素12とを備える。複数の光学要素12は、互いに直交するx方向及びy方向に広がるように、例えばマトリクス状に配列される。複数の光学要素12の各々は、直角に配置された2つの反射面を有する。光学要素12は、立方体、又は直方体からなる。基材11及び光学要素12は、透明な樹脂で構成される。
【0012】
なお、図1では、36(=6×6)個の光学要素12を例示しているが、実際には、これより多くの光学要素12が配列される。光学要素12の数及びサイズは、空中表示装置の仕様に応じて、任意に設定可能である。また、2個の光学要素12の間隔は、空中表示装置の仕様に応じて、任意に設定可能である。
【0013】
図2は、空中表示装置の原理を示す模式図である。空中表示装置は、表示面に画像を表示する表示素子22と、ミラーデバイス10とを備える。図2では、図面の理解が容易になるように、ミラーデバイス10のうち基材11の図示を省略し、複数の光学要素12のみを抽出して示している。複数の光学要素12は、x-y平面に配列される。z方向は、x方向及びy方向に直交する方向であり、光学要素12の高さ方向である。
【0014】
表示素子22から出射された光(表示光)は、複数の光学要素12の各々の2つの側面で反射される。図2では、ハッチングを付した光学要素12で反射される光の光路を抽出して示している。表示素子22から出射された光は、ミラーデバイス10に対して表示素子22と面対称の位置に結像し、当該位置(以下、表示位置)に空中像30が結像される。観察者は、この空中像30を視認することができる。
【0015】
図3は、1つの光学要素12で2回反射される光の様子を示す模式図である。図4は、光学要素12をz方向から見た場合の光路を示す図である。図5は、光学要素12をy方向から見た場合の光路を示す図である。図6は、光学要素12をx方向から見た場合の光路を示す図である。
【0016】
光学要素12の底面から入射した光は、第1側面で反射され、第1側面と直角な第2側面でさらに反射され、上面から出射する。
【0017】
なお、光学要素12の任意の側面に入射した光は、当該側面で全光成分が反射されるわけではなく、反射成分と透過成分とに分けられる。反射成分とは、当該側面で入射角に応じた反射角で反射する光の成分であり、透過成分とは、当該側面をそのまま直線的に透過する光の成分である。
【0018】
(ゴーストについて)
次に、意図しない位置で結像するゴーストについて説明する。ゴーストとは、空中像30の近傍に現れる二重画像である。図7は、空中表示装置によって表示されるゴースト31を示す模式図である。
【0019】
ゴースト31は、ミラーデバイス10によって1回のみ反射された光(すなわち、2回反射されなかった光)により結像する画像である。ゴースト31は、ミラーデバイス10に対して表示素子22と面対称でない位置に結像する。
【0020】
図8は、1つの光学要素12で1回反射される光の様子を示す模式図である。図9は、光学要素12をz方向から見た場合の光路を示す図である。図10は、光学要素12をy方向から見た場合の光路を示す図である。図11は、光学要素12をx方向から見た場合の光路を示す図である。
【0021】
光学要素12の底面から入射した光は、第1側面で反射され、第1側面と直角な第2側面を透過する。この経路で進む光は、ミラーデバイス10に対して表示素子22と面対称でない位置に結像し、ゴースト31を表示させる。
【0022】
(不要光について)
次に、不要光について説明する。不要光とは、実像を結像するのに寄与しない光成分である。図12は、空中表示装置の不要光32を示す模式図である。
【0023】
不要光32は、ミラーデバイス10によって1回も反射されない光である。不要光32は、直線的にミラーデバイス10を透過する。
【0024】
図13は、1つの光学要素12で1回も反射されない光の様子を示す模式図である。図14は、光学要素12をz方向から見た場合の光路を示す図である。図15は、光学要素12をy方向から見た場合の光路を示す図である。図16は、光学要素12をx方向から見た場合の光路を示す図である。
【0025】
光学要素12の底面から入射した光は、第1側面で反射されず、第1側面を直線的に透過する。
【0026】
不要光32は、空中像30の周囲を明るくしてしまう。よって、不要光32に起因して、空中像30のコントラストが低下してしまう。
【0027】
[2]実施形態の空中表示装置
次に、前述した原理を用いた実施形態の空中表示装置について説明する。
【0028】
[2-1]空中表示装置の構成
図17及び図18を用いて、実施形態の空中表示装置1の構成について説明する。図17は、実施形態の空中表示装置1の構成を示すブロック図である。図18は、空中表示装置1の光学的な構成を示す斜視図である。図19は、前記光学的な構成を示す側面図である。
【0029】
図17図19に示すように、空中表示装置1は、表示ユニット20、ミラーデバイス10、表示ユニット40、表示駆動部50,60、電圧供給回路70、及び制御回路80を備える。
【0030】
図18及び図19に示すように、表示ユニット20の表示面は、例えばx-y平面に平行に配置される。ミラーデバイス10の光学要素12が配列された主面は、図19に示すように、x-y平面に直交するz方向に対して斜めに、例えば45度で配置される。言い換えると、ミラーデバイス10の主面は、表示ユニット20の表示面に対して斜めに、例えば45度で配置される。すなわち、表示ユニット20の表示面とミラーデバイス10の主面とがなす角度θは、例えば45度である。なお、角度θは、45度に限定されず、30度以上60度以下の範囲で設定可能である。
【0031】
ミラーデバイス10の主面と表示ユニット40の表示面とがなす角度も、例えば角度θに設定される。図18の例では、表示ユニット40は、例えば、x方向に直交するy-z平面に平行に配置される。表示ユニット40は、ミラーデバイス10から出射される光の光路上に配置される。
【0032】
表示ユニット20から出射された光は、ミラーデバイス10により反射される。ミラーデバイス10により反射された光は、表示ユニット40の画像表示面を透過し、表示ユニット40と観察者90との間の空中に実像(空中像)30を結像する。すなわち、表示ユニット40はミラーデバイス10と空中像30との間に配置されており、空中像30は表示ユニット40の画像表示面の上方かつ観察者90側に結像される。
【0033】
表示ユニット20は、光源部21及び表示素子22を有する。光源部21は、面状に光を出射する面光源を有し、表示素子22に面状の光を照射する。表示素子22は、光源部21から出射された光を透過すると共に、所望の情報を示す画像あるいは動画等を表示する。すなわち、表示素子22は、光源部21から出射された光を用いて、画像あるいは動画等を空中像として表示するための光(以下、表示光)を出射する。表示ユニット20の詳細については後述する。
【0034】
ミラーデバイス10は、前述したように、基材11上に設けられた複数の光学要素12を備える。図20は、基材11上の複数の光学要素12のレイアウトを示し、z方向から基材11を透過して光学要素12を見た図である。1つの光学要素12はx方向及びy方向に対角の頂点を有する立方体又は直方体からなり、複数の光学要素12はx方向及びy方向に配列される。言い換えると、図1図6に示した複数の光学要素12の各々がx方向に対して45度回転されて、図20のミラーデバイス10が得られる。図20に示すように、各光学要素12の反射面12A,12Bは、x方向に対して角度45度を有する状態で配置される。
【0035】
図21は、図20に示した光学要素12をz方向から見た場合の光路を示す図である。光学要素12の底面から入射した表示光は、反射面12Aで反射され、反射面12Aと直角な反射面12Bでさらに反射され、上面から出射する。
【0036】
表示ユニット40は、背面に入射した光を透過する透過型の表示素子である。表示ユニット40は、画像あるいは動画等を表示する画像表示面を備えると共に、ミラーデバイス10から出射された表示光を透過する。すなわち、表示ユニット40は、表示ユニット20の画像に、自身の画像を重畳させる。表示ユニット40の詳細については後述する。
【0037】
表示駆動部50は、表示素子22を駆動し、表示素子22に画像あるいは動画等を表示させる。表示駆動部60は、表示ユニット40を駆動し、表示ユニット40の画像表示面に画像あるいは動画等を表示させる。電圧供給回路70は、光源部21及び表示駆動部50,60を動作させるのに必要な電圧を発生し、それらの電圧を光源部21、表示駆動部50,60に供給する。制御回路80は、空中表示装置1全体の動作を制御する。すなわち、制御回路80は、光源部21、表示駆動部50,60及び電圧供給回路70を制御し、表示ユニット40に画像あるいは動画を表示させると共に、表示ユニット40と観察者90との間の表示位置に空中像30を表示させる。
【0038】
[2-1-1]表示ユニット20
次に、図22を用いて、空中表示装置1における表示ユニット20について説明する。図22は、表示ユニット20の構成を示す斜視図である。表示ユニット20は、前述したように、光源部21及び表示素子22を備える。
【0039】
光源部21は、サイドライト型(エッジライト型)のバックライトで構成される。光源部21は、1個または複数個の発光素子211、導光板212、反射シート213、及び拡散シート214を有する。光源部21は、発光素子211、導光板212、反射シート213、及び拡散シート214により面光源を構成し、この面光源は、表示素子22へ面状の光を出射する。
【0040】
発光素子211としては、例えば発光ダイオード(LED)が用いられる。発光ダイオードは、例えば白色の光を発光する。発光素子211は、導光板212の側面(あるいは入射面)に向き合うように配置される。導光板212の底面には、反射シート213が設けられる。導光板212の上面には、拡散シート214が設けられる。拡散シート214から出射される光の光路上には表示素子22が配置される。
【0041】
図22に示すように、発光素子211から出射された光は、導光板212の側面に入射する。導光板212の底面は、光を反射する面として機能する。導光板212の底面は、水平方向(x-y面)に対して斜めに配置された複数の反射面212Aを有し、すなわち階段形状(波形)を有する。導光板212内を透過する光は、複数の反射面212Aによって拡散シート214側に反射される。反射シート213は、導光板212の底面を透過した光を反射し、導光板212へ光を戻す。導光板212の上面から出射され、拡散シート214に入射した光は、拡散シート214により拡散されて、拡散シートの上面から表示素子22へ出射される。
【0042】
表示素子22は、画像あるいは動画等を表示する。表示素子22は、光源部21から受けた光を透過して、画像あるいは動画等を空中の表示位置に表示するための表示光20Aを出射する。すなわち、表示素子22は、光源部21からの光を変調して、画像あるいは動画等の表示光20Aを出射する。
【0043】
表示素子22には、例えば液晶表示素子を用いる。以下に、液晶表示素子の一例を述べる。図23は、表示素子22としての液晶表示素子の平面図、図24は液晶表示素子の断面図である。
【0044】
表示素子22は、TFT(Thin Film Transistor)及び画素電極等が形成されるTFT基板221と、カラーフィルタ及び共通電極等が形成され、かつTFT基板221に対向配置されるカラーフィルタ基板(CF(Color Filter)基板)222と、TFT基板221及びCF基板222間に挟持された液晶層223とを備える。
【0045】
TFT基板221及びCF基板222の各々は、透明基板(例えば、ガラス基板)から構成される。TFT基板221の液晶層223が存在する面と反対側の面には偏光板224が配置される。さらに、CF基板222の液晶層223が存在する面と反対側の面には偏光板225が配置される。
【0046】
TFT基板221は、光源部21に対向配置される。光源部21から照射された照明光は、TFT基板221側から液晶表示素子に入射する。CF基板222の光源部21が配置された面と反対側の面が液晶表示素子の表示面あるいは光出射面である。
【0047】
TFT基板221とCF基板222は、空間を保ってシール材226により貼り合わせられている。TFT基板221、CF基板222、及びシール材226によって囲まれた空間には、液晶材料が封入され、液晶層223を形成している。
【0048】
液晶層223が含む液晶材料は、TFT基板221及びCF基板222間に印加された電界に応じて、液晶分子の配向が操作されて光学特性が変化する。また、液晶層23は、誘電異方性を有する液晶分子を備えた液晶層から構成され、例えば、ネマティック液晶から構成される。ネマティック液晶の液晶分子は、外部電界に応じて電気分極が生じる。液晶モードとしては、例えばVA(Vertical Alignment)モードが用いられるが、勿論、TN(Twisted Nematic)モードやホモジニアスモードなど他の液晶モードであってもよい。
【0049】
TFT基板221の液晶層223側には、複数のスイッチング素子、例えば前述したTFT(Thin Film Transistor)227が設けられる。TFT227は、走査線に電気的に接続されたゲート電極と、ゲート電極上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられた半導体層(例えばアモルファスシリコン層)と、半導体層上に離間して設けられたソース電極及びドレイン電極とを備える。ソース電極は、信号線に電気的に接続される。TFT227上には、絶縁層(図示せず)が設けられる。絶縁層上には、複数の画素電極228が設けられる。
【0050】
CF基板222の液晶層223側には、カラーフィルタ229が設けられる。カラーフィルタ229は、複数の着色フィルタ(着色部材)を備える。具体的には、複数の赤フィルタ229R、複数の緑フィルタ229G、及び複数の青フィルタ229Bを備える。一般的なカラーフィルタは、光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)で構成される。隣接したR、G、Bの三色のセットが表示の単位(画素)となっており、1つの画素中のR、G、Bのいずれか単色の部分はサブピクセル(サブ画素)と呼ばれる最小駆動単位である。TFT227及び画素電極228は、サブピクセルごとに設けられる。以下の説明では、画素とサブ画素との区別が特に必要な場合を除き、サブ画素を画素と呼ぶものとする。
【0051】
赤フィルタ229R、緑フィルタ229G、及び青フィルタ229Bの境界部分、及び画素(サブピクセル)の境界部分には、遮光用のブラックマトリクス(遮光膜)(図示せず)が設けられる。すなわち、ブラックマトリクスは、網目状に形成される。ブラックマトリクスは、例えば、着色部材間の不要な光を遮蔽し、コントラストを向上させるために設けられる。
【0052】
カラーフィルタ229及びブラックマトリクス上には、共通電極230が設けられる。共通電極230は、液晶表示素子の表示領域全体に平面状に形成される。
【0053】
偏光板224、225は、TFT基板221及びCF基板222を挟むように設けられる。偏光板224、225は、それぞれ直線偏光子と1/4波長板とから構成される。
【0054】
画素電極228及び共通電極230は、透明電極から構成され、例えばITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。
【0055】
[2-1-2]表示ユニット40
表示ユニット40は、自発光型かつ透過型の表示素子から構成される。表示ユニット40は、自ら発光する光を用いて、画像あるいは動画等を表示すると共に、ミラーデバイス10からの表示光を透過する。表示ユニット40には、様々な透過型表示素子、例えば、透明有機エレクトロルミネセンス(EL)表示素子、あるいは透明無機EL表示素子、サイドライト型のバックライトを備えた透過型液晶表示素子を用いることができる。ここでは、自発光型かつ透過型の表示素子の一例として、透明有機EL表示素子について説明する。
【0056】
図25は、表示ユニット40としての透明有機EL表示素子の断面図である。透明有機EL表示素子は、基板41,42、基板41及び基板42間に設けられた複数のスイッチング素子、例えばTFT43、絶縁層44、画素電極45、有機層46、共通電極47、及びカラーフィルタ48を備える。
【0057】
基板41及び基板42の各々は、透明基板(例えば、ガラス基板、プラスチック)または透明フィルムから構成される。基板41上には、複数のTFT43が設けられる。TFT43は、走査線に電気的に接続されたゲート電極43Aと、ゲート電極43A上に設けられたゲート絶縁膜43Bと、ゲート絶縁膜43B上に設けられた半導体層(例えばアモルファスシリコン層)43Cと、半導体層43C上に離間して設けられたソース電極43D及びドレイン電極43Eとを備える。ソース電極43Dは、信号線に電気的に接続される。
【0058】
TFT43上には、絶縁層44が設けられる。絶縁層44上には、複数の画素電極45が設けられる。画素電極45は、コンタクトプラグを介して、TFT43のドレイン電極43Eとそれぞれ電気的に接続される。画素電極45上には、有機層46がそれぞれ設けられる。複数の有機層46上には、共通電極47が設けられる。共通電極47の上方には、各々の有機層46に対応するように、カラーフィルタ48がそれぞれ設けられる。カラーフィルタ48上には、基板42が設けられる。共通電極47と基板42との間には、封止された空気層が設けられる。
【0059】
透明有機EL表示素子は、光40Aを発光する発光領域40Bと、表示光20Aを透過する透過領域40Cとを有する。発光領域40Bには、基板41と基板42間にTFT43、画素電極45、有機層46、共通電極47、及びカラーフィルタ48が配置され、有機層46から光40Aが発光可能である。透過領域40Cには、共通電極47が配置されている。共通電極47は透明電極(例えば、ITO)から構成されているため、透過領域40Cの基板41に入射した表示光20Aは共通電極47を透過し、基板42から出射される。
【0060】
表示ユニット40では、制御回路80により表示駆動部60を介して複数のTFT43がオン状態あるいはオフ状態に制御される。TFT43がオン状態になると、画素電極45に電圧が印加され、画素電極45と共通電極47との間に電位差が生じ、有機層46から光が発光される。TFT43がオフ状態になると、画素電極45に電圧が印加されず、有機層46から光が発光されない。
【0061】
発光領域40B間に設けられた透過領域40Cは、ミラーデバイス10から出射された表示光20Aを透過する。透過領域40Cを透過した表示光20Aは、表示位置に空中像30として結像される。
【0062】
[2-2]空中表示装置1の表示動作
次に、図19及び図26を用いて、実施形態の空中表示装置の表示動作について説明する。図19は、前述したように、空中表示装置1の光学的な構成を示す図である。図26は、車載用として用いられる空中表示装置1に表示される表示例を示す図である。
【0063】
図19に示すように、表示ユニット20から表示光20Aがミラーデバイス10に出射される。ミラーデバイス10に入射した表示光20Aは、ミラーデバイス10が備える光学要素12により、図21で説明したように反射される。光学要素12にて反射された光は、表示ユニット40の画像表示面を透過し、表示ユニット40と観察者90との間の表示位置に空中像30として結像される。すなわち、表示ユニット20から出射された表示光20Aは、ミラーデバイス10に対して表示ユニット20に表示された画像と面対称の表示位置に結像し、図26に示すように、表示位置に空中像30として表示される。さらに、表示ユニット40の画像表示面には、画像40Dが表示される。
【0064】
これにより、表示ユニット40の画像40Dの上方に空中像30が表示される。観察者90は、画像40Dと空中像30とが重なった表示を視認することができる。例えば、図26に示したように、観察者90は、画像40Dとして表示されたスピードメータ及びタコメータと、空中像30として表示されたワーニング表示との重畳表示を視認することができる。
【0065】
[3]実施形態の効果
実施形態の効果について詳述する前に、以下に比較例の空中表示装置について説明する。図27は、比較例の空中表示装置の光学的な構成を示す模式図である。比較例では、表示ユニット20から出射される光の光路上に、ハーフミラー100が斜めに配置される。さらに、ハーフミラー100の後方(あるいは背面方向)には表示ユニット200が配置される。表示ユニット20から出射された光は、ハーフミラー100にて観察者90の方向に反射される。観察者90は、ハーフミラー100にて反射された光により、ハーフミラー100の後方に空中像30を視認する。さらに、空中像30の後方に配置された表示ユニット200には画像が表示される。これにより、観察者90は、表示ユニット200の画像と空中像30とが重なった表示を視認することができる。
【0066】
比較例では、表示ユニット20からの光がハーフミラー100で反射され、空中像30として結像される。このため、空中像30は、ハーフミラー100を介して、表示ユニット20と面対称な位置に表示される。これにより、ハーフミラー100の後方に空中像30と表示ユニット200の画像とが配列されることになる。この結果、ハーフミラー100を介して表示ユニット200の画像と空中像30とを視認することになるため、観察者90はこれらの画像を良好に視認できない場合がある。
【0067】
実施形態の空中表示装置は、第1画像を表示する表示面を有し、表示面から表示光を出射する表示ユニット(表示素子)20と、表示ユニット20の表示面に対して斜めに配置され、表示ユニット20から出射された表示光を反射し、表示ユニット20と面対称な位置に空中像30を結像するミラーデバイス10と、ミラーデバイス10と空中像30との間に配置され、ミラーデバイス10で反射された表示光を透過すると共に、第2画像を表示する表示ユニット(表示素子)40とを備える。
【0068】
このような構成により、表示ユニット20から出射された表示光は、ミラーデバイス10にて反射され、表示ユニット40の表示面を透過し、表示ユニット40と観察者90との間に空中像30として結像される。さらに、表示ユニット40には、第2画像が表示される。これにより、表示ユニット40の第2画像の上方に空中像30が表示され、第2画像と空中像30とが重ねて表示される。観察者90は、ハーフミラー等を介することなく、第2画像と空中像30との重畳表示を直接視認することができる。
【0069】
以上により実施形態の空中表示装置1によれば、表示ユニット(表示素子)の画像表示面の上方に空中像を表示でき、画像表示面の画像と空中像の表示品質を向上させることが可能である。言い換えると、実施形態の空中表示装置1は、観察者から見て表示ユニットの画像表示面の手前に空中像を重畳表示でき、画像表示面の画像と空中像の観察者による視認性を向上させることが可能である。
【0070】
以下に、空中表示装置が使用される製品分野の一例を説明する。例えば、自動車の計器盤は、これまでの機械式メーターのものから、様々な情報を表示可能な電子ディスプレイのような画像表示面に置き換えられつつある。この画像表示面の手前に空中表示像を提示することで、新たな表示手段を提案できると考えられる。一例として、自動車を運転する運転者の行動を示す。運転者はフロントガラス越しに、前方及び周囲の状況を確認しながら、適宜、計器盤を確認し、車の状況(車体速度、エンジンあるいはモータ回転数、燃料残量あるいは電力状況等)を把握する。例えば、運転中に速度超過等が発生した場合、計器盤の画像表示面と同一平面上ではなく、その手前(運転者側)の空間に注意喚起の表示を行うことにより、より効果的に運転者に注意を認識させる。その結果、交通事故等の不幸なアクシデントを防止できるという効果が期待できる。
【0071】
[4]その他変形例等
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…空中表示装置、10…ミラーデバイス、11…基材、12…光学要素、12A,12B…反射面、20…表示ユニット、20A…表示光、21…光源部、22…表示素子、30…空中像、40…表示ユニット、40A…光、40B…発光領域、40C…透過領域、40D…画像、50,60…表示駆動部、70…電圧供給回路、80…制御回路、90…観察者、211…発光素子、212…導光板、212A…反射面、213…反射シート、214…拡散シート。
図1
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