(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】表示装置、及び、表示装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20221109BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20221109BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20221109BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 670K
G09G3/20 680C
G09G3/20 631V
G02F1/133 525
G02F1/133 580
H04N5/74 Z
(21)【出願番号】P 2018118191
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古見 芳幸
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-049373(JP,A)
【文献】特開2011-053442(JP,A)
【文献】特開2000-330539(JP,A)
【文献】特開平09-322101(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0041266(KR,A)
【文献】特開2017-090689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0061325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/36
G09G 3/20
G02F 1/133
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの操作を受け付ける操作部と、
電気光学装置を有し、前記電気光学装置により画像を表示する表示部と、
前記表示部が前記画像を表示している第1の時間を計時する計時部と、
前記電気光学装置の焼き付きを解消する解消機能を実行する第2の時間を、前記第1の時間から決定する決定部と、
前記解消機能を実行する処理部と、を備え、
前記表示部は、前記決定部が決定した前記第2の時間を示す第2の時間情報を含む前記画像を表示し、
前記処理部は、
前記表示部が前記第2の時間情報を含む前記画像を表示した後に前記操作部が前記解消機能の実行を示す操作を受け付けたか否かを判別し、
前記操作部が前記解消機能の実行を示す操作を受け付けたと判別した場合に、前記決定部が決定した前記第2の時間で前記解消機能を実行し、前記操作部が前記解消機能の実行を示す操作を受け付けていないと判別した場合に、前記決定部が決定した前記第2の時間で前記解消機能を実行しない、
表示装置。
【請求項2】
表示装置であって、
ユーザーの操作を受け付ける操作部と、
電気光学装置を有し、前記電気光学装置により画像を表示する表示部と、
前記表示部が前記画像を表示している第1の時間を計時する計時部と、
前記電気光学装置の焼き付きを解消する解消機能を実行する第2の時間を、前記第1の時間から決定する決定部と、
前記解消機能を実行する処理部と、を備え、
前記表示装置は、前記電気光学装置の焼き付きを解消するための動作を実行する第1動作モードと、
画像供給装置から入力される画像データに基づいて画像を表示する第2動作モードと、有し、
前記決定部は、前記表示装置の動作モードが前記第2動作モードから前記第1動作モードに移行すると、前記第2の時間を決定し、
前記表示部は、前記決定部が決定した前記第2の時間を示す第3の時間情報と、予め定められた前記第2の時間を示す第4の時間情報とを含む選択画像を表示し、
前記操作部は、前記表示部が前記選択画像を表示した状態で、前記第3の時間情報と前記第4の時間情報のいずれかを選択する前記操作である選択操作を受け付け、
前記処理部は、前記操作部が前記選択操作を受け付けた場合、選択された前記第3の時間情報または前記第4の時間情報が示す前記第2の時間で前記解消機能を実行する、
表示装置。
【請求項3】
前記第1の時間を示す第1の時間情報と、前記第2の時間を示す第2の時間情報とが対応付けられた対応情報を記憶する記憶部を、備え、
前記決定部は、前記対応情報に基づいて前記第2の時間を決定する、
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記画像は、第1の画像と、前記第1の画像に重畳する第2の画像とを含み、
前記第1の時間は、前記第2の画像を表示している時間である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
電気光学装置を有し、前記電気光学装置により画像を表示する表示部を備える表示装置の制御方法であって、
前記表示部が前記画像を表示している第1の時間を計時し、
前記電気光学装置の焼き付きを解消する解消機能を実行する第2の時間を、前記第1の時間から決定し、
前記表示部が、決定した前記第2の時間を示す第2の時間情報を含む前記画像を表示し、
前記表示部が前記第2の時間情報を含む前記画像を表示した後に、前記解消機能の実行を示す操作をユーザーから受け付けたか否かを判別し、
前記解消機能の実行を示す操作を受け付けたと判別した場合に、決定した前記第2の時間で前記解消機能を実行し、
前記解消機能の実行を示す操作を受け付けていないと判別した場合に、決定した前記第2の時間で前記解消機能を実行しない、
表示装置の制御方法。
【請求項6】
電気光学装置を有し、前記電気光学装置により画像を表示する表示部を備える表示装置の制御方法であって、
前記表示装置は、前記電気光学装置の焼き付きを解消するための動作を実行する第1動作モードと、
画像供給装置から入力される画像データに基づいて画像を表示する第2動作モードと、有し、
前記表示部が前記画像を表示している第1の時間を計時し、
前記表示装置の動作モードが前記第2動作モードから前記第1動作モードに移行すると、前記電気光学装置の焼き付きを解消する解消機能を実行する第2の時間を、前記第1の時間から決定し、
前記表示部が、決定した前記第2の時間を示す第3の時間情報と、予め定められた前記第2の時間を示す第4の時間情報とを含む選択画像を表示し、
前記表示部が前記選択画像を表示した状態で、前記第3の時間情報と前記第4の時間情報のいずれかを選択する操作である選択操作をユーザーから受け付け、
前記選択操作を受け付けた場合、選択された前記第3の時間情報または前記第4の時間情報が示す前記第2の時間で前記解消機能を実行する、
表示装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、及び、表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を表示する装置に生じる焼き付きを解消する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、液晶モニターが表示する画像に所定期間変化がない場合、それまで表示していた画像の階調値を反転させた画像を表示することで、液晶モニターの焼き付きを解消する装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、焼き付きの解消機能を実行する時間は必要十分であることが望ましく、不必要に長く解消機能を実行することも、実行時間の不足により焼き付きが十分に解消しないことも、好ましくない。
本発明は、表示の焼き付きを解消する機能の実行時間を適切に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の表示装置は、電気光学装置を有し、前記電気光学装置により画像を表示する表示部と、前記表示部が前記画像を表示している第1の時間を計時する計時部と、前記電気光学装置の焼き付きを解消する解消機能を実行する第2の時間を、前記第1の時間から決定する決定部と、前記解消機能を実行する処理部と、を備える。
【0006】
また、本発明は、前記第1の時間を示す第1の時間情報と、前記第2の時間を示す第2の時間情報とが対応付いた対応情報を記憶する記憶部を、備え、前記決定部は、前記対応情報に基づいて前記第2の時間を決定する構成でもよい。
【0007】
また、本発明は、ユーザーの操作を受け付ける操作部を備え、前記表示部は、前記決定部が決定した前記第2の時間を示す第2の時間情報を含む前記画像を表示し、前記処理部は、前記操作部が前記解消機能の実行を示す操作を受け付けた場合に、前記決定部が決定した前記第2の時間で前記解消機能を実行する構成でもよい。
【0008】
また、本発明は、ユーザーの操作を受け付ける操作部を備え、前記表示部は、前記決定部が決定した前記第2の時間を示す第3の時間情報と、予め定められた前記第2の時間を示す第4の時間情報とを含む選択画像を表示し、前記操作部は、前記表示部が前記選択画像を表示した状態で、前記第3の時間情報と前記第4の時間情報のいずれかを選択する前記操作である選択操作を受け付け、前記処理部は、前記操作部が前記選択操作を受け付けた場合、選択された前記第3の時間情報または前記第4の時間情報が示す前記第2の時間で前記解消機能を実行する構成でもよい。
【0009】
また、本発明は、前記画像は、第1の画像と、前記第1の画像に重畳する第2の画像とを含み、前記第1の時間は、前記第2の画像を表示している時間であってもよい。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、電気光学装置を有し、前記電気光学装置により画像を表示する表示部を備える表示装置の制御方法であって、前記表示部が前記画像を表示している第1の時間を計時し、前記電気光学装置の焼き付きを解消する解消機能を実行する第2の時間を、前記第1の時間から決定し、前記解消機能を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】プロジェクターの動作を示すフローチャート。
【
図3】プロジェクターの動作を示すフローチャート。
【
図5】第1の変形例におけるプロジェクターの動作を示すフローチャート。
【
図6】第2の変形例におけるプロジェクターの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の表示装置の一態様であるプロジェクター1の構成を示すブロック図である。
プロジェクター1には、外部装置として画像供給装置2が接続される。画像供給装置2は、プロジェクター1に画像データを出力する。プロジェクター1は、画像供給装置2から入力される画像データに基づき、投射面としてのスクリーンSCに投射画像を投射する。プロジェクター1による投射画像の投射は、表示装置による画像の表示の一例である。
【0013】
画像供給装置2から入力される画像データは、所定規格に準拠した画像データである。この画像データは、静止画像データであっても動画像データであってもよく、音声データを伴ってもよい。
【0014】
画像供給装置2は、プロジェクター1に画像データを出力する、いわゆる画像ソースである。画像供給装置2の具体的な構成は制限されず、プロジェクター1に接続可能であって、プロジェクター1に画像データを出力できる機器であればよい。例えば、ディスク型記録メディア再生装置、テレビチューナー装置、パーソナルコンピューターを用いてもよい。
【0015】
スクリーンSCは、幕状のスクリーンであってもよいし、建造物の壁面や設置物の平面をスクリーンSCとして利用してもよい。スクリーンSCは平面に限らず、曲面や、凹凸を有する面であってもよい。
【0016】
プロジェクター1は、プロジェクター1の各部を制御する制御部3と、投射画像を投射する投射部10とを備える。投射部10は、本発明の表示部に相当する。制御部3は、CPU30、及び、記憶部31等により構成される。記憶部31は、CPU30が実行する制御プログラム311やデータを不揮発的に記憶する記憶装置であり、フラッシュROM等の半導体記憶素子等で構成される。記憶部31は、CPU30のワークエリアを構成するRAMを含んでもよい。
【0017】
CPU30は、記憶部31に記憶されたプロジェクター1の制御プログラム311を実行することによって、投射制御部301、処理部302、計時部303、及び、決定部304として機能する。これらの機能ブロックは、CPU30が、制御プログラム311を実行することにより、ソフトウェアとハードウェアの協働により実現される。
【0018】
記憶部31は、制御プログラム311のほか、設定データ312、対応テーブル313を記憶する。対応テーブル313は、本発明の対応情報に相当する。設定データ312は、プロジェクター1の動作に関する設定値を含む。設定データ312に含まれる設定値は、例えば、画像処理部25が実行する処理内容、画像処理部25の処理に用いるパラメーター等である。対応テーブル313については、後述する。記憶部31は、その他のプログラムやデータを記憶してもよい。
【0019】
投射部10は、光源11、光変調装置12、及び、投射光学系13を備える。光変調装置12は、本発明の電気光学装置に相当する。
【0020】
光源11は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ等のランプ、或いは、LEDやレーザー光源等の固体光源で構成される。光源11は、光源駆動部21から供給される電力により点灯し、光変調装置12に向けて光を発する。
【0021】
光源駆動部21は、制御部3の制御に従って光源11に駆動電流やパルスを供給し、光源11を発光させる。
【0022】
光変調装置12は、RGBの三原色に対応した3枚の液晶パネル121を備える。光源11が発した光は、ダイクロイックミラーや、反射ミラー、リレーレンズ等によってRGBの3色の色光に分離され、対応する色の液晶パネル121に入射される。各液晶パネル121は、一対の透明基板間に液晶が封入された構成を有する。各液晶パネル121は、複数の画素がマトリックス状に配列された矩形状の画素領域を有しており、液晶に対して画素毎に光変調装置駆動部22によって駆動電圧が印加される。
【0023】
光変調装置駆動部22は、後述する画像処理部25からR、G、Bの3原色に分離された画像データが入力される。光変調装置駆動部22は、入力される各色の画像データを、対応する液晶パネル121の動作に適したデータ信号に変換する。光変調装置駆動部22は、変換したデータ信号に対応した駆動電圧を液晶パネル121の各画素に印加して、各液晶パネル121にフレーム単位で画像を描画する。これにより、光源11から射出される光が光変調装置12により画像光に変調される。
【0024】
投射光学系13は、レンズやミラー等の光学素子を備え、光変調装置12で変調された光をスクリーンSC上に結像させ、投射画像を投射する。
【0025】
プロジェクター1は、インターフェース23、フレームメモリー24、画像処理部25、操作部51、及び、無線通信部52を備える。これらの各部は、バス26を介して制御部3とデータ通信可能に接続される。
【0026】
インターフェース23は、データ通信用の有線インターフェースであり、所定の通信規格に準拠したコネクター及びインターフェース回路等を備える。
図1では、コネクター及びインターフェース回路についての図示を省略している。インターフェース23は、ケーブルを介して画像供給装置2に接続され、制御部3の制御に従って、外部の装置との間で画像データや制御データ等を送受信する。インターフェース23には、各種の通信インターフェースや画像入力用のインターフェースを採用することができる。
【0027】
フレームメモリー24は、複数のバンクを備える。各バンクは、画像データの1フレームを書き込み可能な記憶容量を有する。フレームメモリー24は、例えば、SDRAMにより構成される。なお、SDRAMは、Synchronous Dynamic Random Access Memoryの略である。
【0028】
画像処理部25は、フレームメモリー24に展開された画像データに対して、例えば、解像度変換処理又はリサイズ処理、歪曲収差の補正、形状補正処理、デジタルズーム処理、画像の色合いや輝度の調整等の画像処理を行う。画像処理部25は、制御部3により指定された処理を実行し、必要に応じて、制御部3から入力されるパラメーターを使用して処理を行う。また、画像処理部25は、上記のうち複数の画像処理を組み合わせて実行することも勿論可能である。
画像処理部25は、処理の終了した画像データをフレームメモリー24から読み出して光変調装置駆動部22に出力する。
【0029】
操作部51は、操作パネル511、リモコン受光部512、及び入力処理部513を備える。
【0030】
操作パネル511は、プロジェクター1の筐体に設けられ、ユーザーが操作可能な各種スイッチを備える。入力処理部513は、操作パネル511の各スイッチの操作を検出する。
リモコン受光部512は、リモコン50が送信する赤外線信号を受光する。入力処理部513は、リモコン受光部512が受光した信号をデコードして、操作データを生成し、制御部3に出力する。
入力処理部513は、操作パネル511、及びリモコン受光部512に接続される。入力処理部513は、操作パネル511またはリモコン受光部512でユーザーの操作を受け付けた場合に、受け付けた操作に対応する操作データを生成して制御部3に出力する。
【0031】
無線通信部52は、図示せぬアンテナやRF回路等を備え、制御部3の制御に従って外部装置との間で無線データ通信を実行する。無線通信部52は、例えば、無線LAN、Bluetooth等の無線通信を実行する。Bluetoothは、登録商標である。
【0032】
次に、CPU30の機能ブロックについて説明する。
投射制御部301は、光源駆動部21、及び光変調装置駆動部22を制御して、光源11を点灯させ、光変調装置駆動部22により光変調装置12を駆動させ、投射部10により投射画像を投射させる。また、投射制御部301は、画像処理部25を制御して、インターフェース23に入力される画像データに対する画像処理を実行させ、光変調装置駆動部22に画像処理後の画像データを出力させる。
【0033】
処理部302は、各液晶パネル121の焼き付きを解消する解消機能を実行する。液晶パネル121の焼き付きは、液晶内の液晶分子が部分的に偏在したり、液晶分子の移動によって液晶内のイオン不純物が部分的に偏在したりすることで生じる残像現象であり、液晶パネル121の画素ごとに生じる。液晶パネル121の焼き付きは、長時間同じ投射画像を投射した場合に生じ易く、投射時間が長ければ長いほど偏在度合が高まって顕著に生じる。液晶パネル121に焼き付きが生じると、焼き付きが生じている箇所では印加された駆動電圧に対応する変調とならず、投射画像には、焼き付きが生じている箇所に対応した箇所にむらが生じることとなる。処理部302は、解消機能を実行することで、投射制御部301に、全域が黒色の投射画像や、全域が白色の投射画像、スクリーンセイバーのような時間経過と共に変化する投射画像等を投射させる。これにより、処理部302は、液晶分子やイオン不純物の部分的な偏在を解消して、液晶パネル121の焼き付きを解消する。
なお、以後の説明では、液晶パネル121に発生する焼き付きを、光変調装置12の焼き付きという。
【0034】
計時部303は、例えばタイマーを備え、投射部10が投射画像を投射している投射時間を計時する。投射時間は、本発明の第1の時間に相当し、表示時間と呼ぶこともできる。計時部303は、処理部302が解消機能を実行してから次に解消機能を実行するまでの期間において、投射時間を計時する。
計時部303が計時を行う間、計時された投射時間は、記憶部31に記憶される。計時部303は、投射時間のカウントが増す毎に、記憶部31に記憶させた投射時間を更新する。記憶部31は、投射時間を不揮発的に記憶するので、プロジェクター1の電源がオンオフされても、計時された投射時間が維持される。つまり、記憶部31が記憶する投射時間は、プロジェクター1の投射時間を積算した値であり、投射時間の累積値といえる。また、記憶部31に記憶された投射時間は、制御部3の処理によりリセットされるまで積算される。処理部302が、上述した解消機能を実行すると、計時部303が計時した投射時間はリセットされる。計時部303は、投射時間を計時する間は、記憶部31の揮発性の記憶領域に投射時間を一時的に記憶し、プロジェクター1が投射を終了したときに、投射時間を記憶部31に不揮発的に記憶させてもよい。
【0035】
決定部304は、計時部303が計時した投射時間から、処理部302が解消機能を実行する解消実行時間を決定する。解消実行時間は、本発明の第2の時間に相当する。解消実行時間の決定方法については、後述する。
【0036】
次に、プロジェクター1の動作について説明する。
プロジェクター1は、動作モードとして、通常モードと焼き付き解消モードとを有する。通常モードは、焼き付き解消モードにおける動作以外の動作を実行する動作モードであって、例えば画像供給装置2から入力される画像データに基づいて投射画像を投射する動作モードである。焼き付き解消モードは、光変調装置12の焼き付きを解消するための動作を実行する動作モードである。
【0037】
プロジェクター1は、動作モードが通常モードである場合、
図2に示す動作を実行する。
図2は、通常モードにおけるプロジェクター1の動作を示すフローチャートである。
【0038】
制御部3の計時部303は、投射部10が投射画像の投射を開始したことを検出すると(ステップSA1)、計時部303による計時を開始させる(ステップSA2)。ステップSA2で、計時部303は、既に記憶部31に記憶されている投射時間を取得し、この投射時間に積算するように計時を開始する。
【0039】
計時部303は、投射時間の計時を行い、記憶部31が記憶する投射時間を更新する(ステップSA3)。ここで、制御部3は、投射部10による投射が終了したか否かを判定し(ステップSA4)、投射を終了しないと判定した場合(ステップSA4:NO)、ステップSA3で投射時間の計時および更新を継続する。また、制御部3は、投射部10による投射が終了したと判定した場合(ステップSA4:YES)、投射時間の計時を終了する(ステップSA5)。
【0040】
プロジェクター1は、動作モードが通常モードから焼き付き解消モードに移行すると、
図3に示す動作を実行する。
図3は、焼き付き解消モードにおけるプロジェクター1の動作を示すフローチャートである。
【0041】
プロジェクター1は、移行のトリガーが発生すると、動作モードを通常モードから焼き付き解消モードに移行させる(ステップSB1)。移行のトリガーとしては、例えば、リモコン50又は操作パネル511に対するユーザーの操作で移行指示を操作部51が受け付けたことや、電源が投入されてから所定の期間が経過したこと等が例として挙げられる。
【0042】
プロジェクター1の動作モードが通常モードから焼き付き解消モードに移行すると、制御部3の決定部304は、計時部303が計時した投射時間を、記憶部31から取得する(ステップSB2)。
【0043】
次いで、決定部304は、計時部303が計時した投射時間から、解消実行時間を決定する(ステップSB3)。
ここで、ステップSB3の処理について詳述する。
決定部304は、ステップSB3において、記憶部31が記憶する対応テーブル313を参照して解消実行時間を決定する。
【0044】
図4は、対応テーブル313の一例を示す図である。
図4に示すように、対応テーブル313が格納する1件のレコードには、フィールドF1とフィールドF2とが対応付けられる。
【0045】
フィールドF1は、投射時間の範囲を示す情報を格納する。フィールドF1には、フィールドF11とフィールドF12とが対応付けられている。
フィールドF11とフィールドF12とは、投射時間を示す投射時間情報を格納し、レコードごとに、フィールドF1が示す投射時間の範囲を設定している。投射時間情報は、本発明の第1の時間情報に相当する。フィールドF1が示す投射時間の範囲は、フィールドF11が示す投射時間以上フィールドF12が示す投射時間未満の範囲である。例えば、レコードR1は、フィールドF11に「0h」を示す投射時間情報を格納し、フィールドF12に「12h」を示す投射時間情報を格納している。なお、
図4において、「h」は、時間を示す単位である。したがって、レコードR1のフィールドF1が示す投射時間の範囲は、0h以上12h未満の範囲である。
【0046】
フィールドF2は、解消実行時間を示す解消実行時間情報を格納する。解消実行時間情報は、本発明の第2の時間情報に相当する。
【0047】
前述した通り、光変調装置12の焼き付きは、投射時間が長ければ長いほど液晶分子やイオン不純物の偏在具合が高まって顕著に生じる。そのため、対応テーブル313は、投射時間が長ければ長いほど解消実行時間が長くなるように、解消時間情報を格納する。対応テーブル313が格納する各情報は、事前のテストやシミュレーション等によって定められ、光変調装置12の焼き付きを解消するために適した対応関係となるように対応テーブル313に格納される。
【0048】
例えば、ステップSB2において、決定部304が、計時部303から「14h」の投射時間を取得したとする。この場合、決定部304は、「14h」の投射時間を含む投射時間範囲を示すフィールドF1が対応付くレコードR2を、対応テーブル313が格納するレコードR1、R2、R3、R4から特定する。そして、特定したレコードR2のフィールドF2に格納される解消実行時間情報を取得し、決定部304は、解消実行時間を「3h」と決定する。
【0049】
このように、決定部304は、計時部303が計時した投射時間から解消実行時間を決定するため、ステップSB4において処理部302が、不必要に長く解消機能を実行してしまったり十分な解消を得られず解消機能を終了してしまったりすることを抑制できる。したがって、決定部304は、投射時間に応じた適切な解消実行時間を決定できる。また、決定部304は、対応テーブル313に基づいて解消実行時間を決定することで、複雑な処理を行うことなく一意に解消実行時間を決定できる。
【0050】
なお、ステップSB3において、決定部304は、対応テーブル313を参照せずに、所定のアルゴリズムによってステップSB2で取得した投射時間から解消実行時間を算出して決定してもよい。この場合、記憶部31が対応テーブル313を記憶していなくても、決定部304は、投射時間に応じた適切な解消実行時間を決定できる。また、決定部304は、対応テーブル313と比較し、投射時間に応じて細かく解消実行時間を決定できる。
【0051】
図3に戻り、決定部304が解消実行時間を決定すると、処理部302は、決定した解消実行時間で解消機能を実行する(ステップSB4)。
【0052】
次いで、処理部302が解消機能を実行すると、計時部303は、記憶部31に記憶されている投射時間をリセットする(ステップSB5)。これにより、焼き付き解消モードの移行前に計時されていた投射時間がクリアされ、計時部303が解消機能の実行の前後に跨がって投射時間を積算することがない。ステップSB5の後、計時部303が投射時間の計時を開始する際には、投射時間「0」から計時される。そのため、決定部304は、不必要に長い解消実行時間を決定することなく、解消機能の実行間の投射時間に応じた適切な解消実行時間を決定できる。
【0053】
次に、本実施形態の変形例を複数説明する。
[第1の変形例]
上述した実施形態では、決定部304が解消実行時間を決定すると、決定した解消実行時間で処理部302が解消機能を実行する構成を例示した。第1の変形例では、操作部51が解消機能の実行を示す操作を受け付けた場合に、決定部304が決定した解消実行時間で処理部302が解消機能を実行する。
【0054】
図5は、第1の変形例におけるプロジェクター1の動作を示すフローチャートである。
図5のフローチャートにおいて、上記実施形態と共通する処理には同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0055】
ステップSB3で決定部304が解消実行時間を決定した後、投射制御部301は、決定部304が決定した解消実行時間を示す解消実行時間情報を含む投射画像を投射部10に投射させる(ステップSB11)。これにより、ユーザーは、光変調装置12の焼き付きの解消に要する時間を認識できる。
処理部302は、操作部51が解消機能の実行を指示する操作を受け付けたか否かを判別する(ステップSB12)。処理部302は、操作部51が解消機能の実行を指示する操作を受け付けたと判別した場合(ステップSB12:YES)、ステップSB4に移行して、決定部304が決定した解消実行時間で解消機能を実行する(ステップSB4)。
【0056】
一方、操作部51が解消機能の実行を指示する操作を受け付けていないと判別した場合(ステップSB12:NO)、処理部302は、ステップSB4、SB5を実行せず、本処理を終了する。ステップSB12で、処理部302は、予め設定された待機時間だけ操作の受付を待機し、待機時間内に解消機能の実行を指示する操作を受け付けない場合に、否定判定してもよい。
この第1の変形例によれば、ユーザーの意図しないタイミングで解消機能が開始することがないため、ユーザーの利便性が向上する。例えば、ユーザーは、ステップSB11で表示された解消実行時間が、意図していた時間より長い場合に、解消機能を実行させずにプロジェクター1の投射を継続させ、或いは、プロジェクター1の電源をオフにすることができる。
【0057】
なお、処理部302は、決定部304が決定した解消実行時間を示す解消実行時間情報を含む投射画像を投射部10が投射してから所定期間経過した場合、或いは、操作部51が解消機能を実行しないことを示す操作を受け付けた場合、解消機能を実行しない。この場合、プロジェクター1は、動作モードを焼き付き解消モードから通常モードに移行する。また、計時部303は、計時した投射時間をリセットしない。これにより、ユーザーの意図しないタイミングで動作モードが焼き付き解消モードに移行した場合でも、ユーザーは、プロジェクター1が解消機能を実行することなく動作モードを通常モードに移行させることができる。また、計時部303が投射時間をリセットしないため、次回の解消機能を実行する際に、決定部304は、適切な解消実行時間を決定できる。
【0058】
[第2の変形例]
第1の変形例は、決定部304が解消実行時間を決定すると、決定部304が決定した解消実行時間を示す解消実行時間情報を含む投射画像を投射部10に投射する構成であった。
第2の変形例は、決定部304が決定した解消実行時間を示す解消実行時間情報と、予め定められている解消実行時間を示す解消実行時間情報とを含む投射画像を投射部10が投射する。
【0059】
図6は、第2の変形例におけるプロジェクター1の動作を示すフローチャートである。
図6のフローチャートにおいて、上記実施形態と共通する処理には同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0060】
ステップSB3で、決定部304が解消実行時間を決定した後、投射制御部301は、決定部304が決定した解消実行時間を示す解消実行時間情報と、予め定められている解消実行時間を示す解消実行時間情報とを含む選択画像を投射部10に投射させる(ステップSB21)。ステップSB21で投射される投射画像には、ステップSB3で決定された解消実行時間、及び、予め設定された時間が、選択可能な候補として配置される。なお、決定部304が決定した解消実行時間を示す解消実行時間情報は、本発明の第3の時間情報に相当し、予め定められている解消実行時間を示す解消実行時間情報は、本発明の第4の時間情報に相当する。
【0061】
例えば、ステップSB3で決定部304が対応テーブル313に基づき解消実行時間を「3h」と決定した場合、ステップSB21では、決定された「3h」と、フィールドF2に格納されている他の「0h」、「6h」、「12h」とが配置された投射画像が投射される。この例では、予め定められた解消実行時間は、対応テーブル313に設定された他の解消実行時間である。
【0062】
ステップSB21で解消実行時間情報を含む投射画像が投射部10により表示された状態で、操作部51は、投射画像に配置された複数の解消実行時間情報から1の解消実行時間情報を選択する操作を受け付ける(ステップSB22)。処理部302は、操作部51が受け付けた選択操作によって選択された解消実行時間情報が示す解消実行時間を、実際に使用する実行時間として設定する(ステップSB23)。処理部302は、ステップSB4に移行して、ステップSB23で設定された解消実行時間に従って解消機能を実行する(ステップSB4)。これにより、ユーザーは、自動で決定された解消実行時間以外の解消実行時間を選択してプロジェクター1に解消機能を実行させることができる。
【0063】
[第3の変形例]
上述した実施形態、第1の変形例、及び第2の変形例では、投射部10が投射画像を投射している投射時間を計時部303が計時する場合を説明した。第3の変形例では、計時部303は、フィルター画像を投射している投射時間を計時する。フィルター画像とは、画像供給装置2から入力された画像データに基づく画像(以下、「元画像」という)に重畳する画像である。プロジェクター1は、元画像にフィルター画像を重畳して投射することにより、元画像に所定の視覚効果を付与できる。元画像は、本発明の第1の画像に相当する。また、フィルター画像は、本発明の第2の画像に相当する。
【0064】
プロジェクター1は、同じ視覚効果を付与して種々の元画像を投射する場合がある。この場合、プロジェクター1は、同じフィルター画像を種々の元画像に重畳するため、元画像より長い時間、同じフィルター画像を投射する。そのため、液晶パネル121では、フィルター画像に対応する画素に同じ駆動電圧が長期間印加される。したがって、フィルター画像を含む場合、液晶パネル121では、フィルター画像が描画される領域に焼き付きが生じ易い。そこで、計時部303は、フィルター画像を投射している投射時間を計時する。これにより、決定部304は、フィルター画像の投射時間に応じて適切な解消実行時間を決定できる。そのため、処理部302は、フィルター画像を投射により液晶パネル121に焼き付きが生じた場合でも、適切な時間で焼き付きを解消できる。
【0065】
以上、説明したように、プロジェクター1は、光変調装置12を有し、光変調装置12により投射画像を投射する投射部10と、投射部10が投射画像を投射している投射時間を計時する計時部303と、光変調装置12の焼き付きを解消する解消機能を実行する解消実行時間を、投射時間から決定する決定部304と、解消機能を実行する処理部302と、を備える。
【0066】
本発明の表示装置、及び、表示装置の制御方法を適用したプロジェクター1によれば、決定部304は、計時部303が計時した投射時間から解消実行時間を決定するため、投射時間に応じた適切な解消実行時間を決定できる。
【0067】
また、プロジェクター1は、投射時間を示す投射時間情報と、解消実行時間を示す解消実行時間情報とが対応付いた対応テーブル313を記憶する記憶部31を、備える。決定部304は、対応テーブル313に基づいて解消実行時間を決定する。
【0068】
この構成によれば、決定部304は、対応テーブル313に基づいて解消実行時間を決定することで、複雑な処理を行うことなく一意に解消実行時間を決定できる。
【0069】
また、プロジェクター1は、ユーザーの操作を受け付ける操作部51を備える。投射部10は、制御部3が決定した解消実行時間を示す解消実行時間情報を含む投射画像を投射する。処理部302は、操作部51が解消機能の実行を示す操作を受け付けた場合に、決定部304が決定した解消実行時間で解消機能を実行する。
【0070】
この構成によれば、ユーザーは、焼き付きの解消に要する時間を認識できる。また、ユーザーの意図しないタイミングで解消機能が開始することがないため、光変調装置12の焼き付きの解消についてユーザーの利便性が向上する。
【0071】
また、投射部10は、決定部304が決定した解消実行時間を示す解消実行時間情報と、予め定められた解消実行時間を示す解消実行時間情報とを含む選択画像を投射する。操作部51は、投射部10が投射した選択画像から1の解消実行時間情報を選択する選択操作を受け付ける。処理部302は、操作部51が選択操作を受け付けた場合、選択された解消実行時間情報が示す解消実行時間で解消機能を実行する。
【0072】
この構成によれば、ユーザーは、自動で決定された解消実行時間以外の解消実行時間を選択してプロジェクター1に解消機能を実行させることができる。
【0073】
また、投射画像は、元画像と、元画像に重畳するフィルター画像とを含む。計時部303が計時した投射時間は、フィルター画像を投射している時間である。
【0074】
この構成によれば、決定部304は、フィルター画像の投射時間に応じた適切な解消実行時間を決定できる。そのため、処理部302は、フィルター画像を投射で液晶パネル121に焼き付きが生じた場合でも、適切な時間で焼き付きを解消できる。
【0075】
上述した実施形態及び各変形例は、本発明の好適な実施の形態である。ただし、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形実施が可能である。
【0076】
例えば、上述したプロジェクター1の制御方法が、プロジェクター1が備えるコンピューター、又は、プロジェクター1に接続される外部装置を用いて実現される場合、本発明を、当該方法を実現するためにコンピューターが実行するプログラム、このプログラムをコンピューターで読み取り可能に記録した記録媒体、或いは、このプログラムを伝送する伝送媒体の態様で構成することも可能である。プロジェクター1の制御方法は、本発明の表示装置の制御方法に相当する。
【0077】
また、
図2、及び
図3に示すフローチャートの処理単位は、プロジェクター1の制御部3の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。
図2、及び
図3のフローチャートに示す処理単位の分割の仕方や名称によって本発明が制限されることはない。また、制御部3の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0078】
また、
図1に示すプロジェクター1の各機能部とは、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。従って、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0079】
また、本発明の表示装置は、スクリーンSCに画像を投射するプロジェクターに限定されない。例えば、表示装置は、液晶表示パネルに画像を表示する液晶表示装置や、有機ELパネルに画像を表示する表示装置など、自発光型の表示装置を含む。また、その他の各種の表示装置も本発明の表示装置に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1…プロジェクター(表示装置)、2…画像供給装置、3…制御部、10…投射部(表示部)、11…光源、12…光変調装置(電気光学装置)、13…投射光学系、21…光源駆動部、22…光変調装置駆動部、23…インターフェース、24…フレームメモリー、25…画像処理部、26…バス、30…CPU、31…記憶部、50…リモコン、51…操作部、52…無線通信部、121…液晶パネル、301…投射制御部、302…処理部、303…計時部、304…決定部、311…制御プログラム、312…設定データ、313…対応テーブル(対応情報)、511…操作パネル、512…リモコン受光部、513…入力処理部、SC…スクリーン。