(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】物理量検出回路、物理量検出装置、電子機器及び移動体
(51)【国際特許分類】
G01P 21/00 20060101AFI20221109BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20221109BHJP
G01P 15/125 20060101ALI20221109BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01P21/00
G01P15/18
G01P15/125 V
G01P15/125 Z
G01P15/08 101A
G01P15/08 101B
(21)【出願番号】P 2018121512
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 潤
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-75097(JP,A)
【文献】特開2004-132886(JP,A)
【文献】実開平3-45084(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0164778(US,A1)
【文献】特開2015-184209(JP,A)
【文献】特開2000-81449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-21/02
B81B 1/00- 7/04
B81C 1/00-99/00
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量検出素子の第1電極と電気的に接続される第1端子と、
前記物理量検出素子と電気的に接続される駆動回路と、
診断電圧を発生する診断電圧発生回路及び前記診断電圧が入力される電流制限回路を含む診断電圧出力回路と、
前記第1端子及び前記電流制限回路に電気的に接続されているスイッチと、
を含
み、
前記電流制限回路は、
ツェナーダイオードと、
バイポーラトランジスターである第1トランジスターと、
バイポーラトランジスターである第2トランジスターと、
第1抵抗と、
第2抵抗と、
第3抵抗と、
前記診断電圧が供給される第1ノードと、
基準電圧が供給される第2ノードと、
前記スイッチと電気的に接続されている第3ノードと、
前記物理量検出素子の第2電極と電気的に接続されている第4ノードと、
第5ノードと、
を含み、
前記第1トランジスターのコレクター、前記第1抵抗の一端、及び前記第2抵抗の一端は、前記第1ノードと電気的に接続され、
前記ツェナーダイオードのアノード、前記第2トランジスターのエミッター、及び前記第3抵抗の一端は、前記第2ノードと電気的に接続され、
前記第1トランジスターのエミッターは、前記第3ノードと電気的に接続され、
前記第2トランジスターのベース及び前記第3抵抗の他端は、前記第4ノードと電気的に接続され、
前記ツェナーダイオードのカソード、前記第2トランジスターのベース、前記第1抵抗の他端、及び前記第2抵抗の他端は、前記第5ノードと電気的に接続されている、物理量
検出回路。
【請求項2】
請求項
1において、
前記駆動回路は前記物理量検出素子を周期的に駆動し、
前記スイッチは、周期的に前記第1端子と前記電流制限回路とを電気的に接続し、
前記第1端子と前記電流制限回路とが電気的に接続される各期間の長さは、前記物理量検出素子が駆動される各期間の長さ以下である、物理量検出回路。
【請求項3】
請求項1
又は2において、
前記物理量検出素子の第2電極と電気的に接続される第2端子と、
前記物理量検出素子の第3電極と電気的に接続される第3端子と、
前記第1端子及び前記第3端子から入力される信号を電圧に変換して出力する変換回路と、
を含み、
前記スイッチは、前記第1端子を前記電流制限回路及び前記変換回路の何れかと電気的に接続し、
前記駆動回路は、前記第2端子と電気的に接続されている、
物理量検出回路。
【請求項4】
請求項1
又は2において、
前記物理量検出素子の第2電極と電気的に接続される第2端子と、
前記物理量検出素子の第3電極と電気的に接続される第3端子と、
前記第2端子から入力される信号を電圧に変換して出力する変換回路と、
を含み、
前記スイッチは、前記第1端子を前記電流制限回路及び前記駆動回路の何れかと電気的に接続し、
前記駆動回路は、前記第3端子と電気的に接続されている、
物理量検出回路。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか一項に記載の物理量検出回路と、
前記物理量検出素子と、
を含む、
物理量検出装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の物理量検出装置と、
前記物理量検出装置から出力された物理量信号に基づいて演算処理を行う演算処理装置と、
を含む、電子機器。
【請求項7】
請求項
5に記載の物理量検出装置と、
前記物理量検出装置から出力された物理量信号に基づいて姿勢の制御を行う姿勢制御部と、
を含む、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出回路、物理量検出装置、電子機器及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物理量検出素子に設けられている複数の電極間に生じる静電容量の容量値が加速度や角速度等の物理量の大きさ及び向きに応じて変化することを利用して物理量を検出する静電容量型の物理量検出装置が開発されている。例えば、シリコンMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いた静電容量型の加速度検出装置や角速度検出装置が広く知られている。ここで、特許文献1には自己診断機能を備えた静電容量型の加速度センサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、物理量検出素子への突入電流が大きいと、大きな静電気力が物理量検出素子に作用するので、物理量検出素子の電極指同士が接触してしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することが可能である。
【0006】
本発明に係る物理量検出回路の一態様は、
物理量検出素子の第1電極と電気的に接続される第1端子と、
前記物理量検出素子と電気的に接続される駆動回路と、
診断電圧を発生する診断電圧発生回路及び前記診断電圧が入力される電流制限回路を含む診断電圧出力回路と、
前記第1端子及び前記電流制限回路に電気的に接続されているスイッチと、
を含む。
【0007】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記電流制限回路は抵抗であってもよい。
【0008】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記電流制限回路は過電流制御回路であってもよい。
【0009】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記電流制限回路は、
ツェナーダイオードと、
バイポーラトランジスターである第1トランジスターと、
バイポーラトランジスターである第2トランジスターと、
第1抵抗と、
第2抵抗と、
第3抵抗と、
前記診断電圧が供給される第1ノードと、
基準電圧が供給される第2ノードと、
前記スイッチと電気的に接続されている第3ノードと、
前記物理量検出素子の第2電極と電気的に接続されている第4ノードと、
第5ノードと、
を含み、
前記第1トランジスターのコレクター、前記第1抵抗の一端、及び前記第2抵抗の一端は、前記第1ノードと電気的に接続され、
前記ツェナーダイオードのアノード、前記第2トランジスターのエミッター、及び前記第3抵抗の一端は、前記第2ノードと電気的に接続され、
前記第1トランジスターのエミッターは、前記第3ノードと電気的に接続され、
前記第2トランジスターのベース及び前記第3抵抗の他端は、前記第4ノードと電気的に接続され、
前記ツェナーダイオードのカソード、前記第2トランジスターのベース、前記第1抵抗の他端、及び前記第2抵抗の他端は、前記第5ノードと電気的に接続されていてもよい。
【0010】
前記物理量検出回路の一態様において、
前記駆動回路は前記物理量検出素子を周期的に駆動し、
前記スイッチは、周期的に前記第1端子と前記電流制限回路とを電気的に接続し、
前記第1端子と前記電流制限回路とが電気的に接続される各期間の長さは、前記物理量検出素子が駆動される各期間の長さ以下であってもよい。
【0011】
前記物理量検出回路の一態様は、
前記物理量検出素子の第2電極と電気的に接続される第2端子と、
前記物理量検出素子の第3電極と電気的に接続される第3端子と、
前記第1端子及び前記第3端子から入力される信号を電圧に変換して出力する変換回路と、
を含み、
前記スイッチは、前記第1端子を前記電流制限回路及び前記変換回路の何れかと電気的に接続し、
前記駆動回路は、前記第2端子と電気的に接続されていてもよい。
【0012】
前記物理量検出回路の一態様は、
前記物理量検出素子の第2電極と電気的に接続される第2端子と、
前記物理量検出素子の第3電極と電気的に接続される第3端子と、
前記第2端子から入力される信号を電圧に変換して出力する変換回路と、
を含み、
前記スイッチは、前記第1端子を前記電流制限回路及び前記駆動回路の何れかと電気的に接続し、
前記駆動回路は、前記第3端子と電気的に接続されていてもよい。
【0013】
本発明に係る物理量検出装置の一態様は、
前記物理量検出回路の一態様と、
前記物理量検出素子と、
を含む。
【0014】
本発明に係る電子機器の一態様は、
前記物理量検出装置の一態様と、
前記物理量検出装置から出力された物理量信号に基づいて演算処理を行う演算処理装置と、
を含む。
【0015】
本発明に係る移動体の一態様は、
前記物理量検出装置の一態様と、
前記物理量検出装置から出力された物理量信号に基づいて姿勢の制御を行う姿勢制御部と、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る物理量センサーの概略構成を示す斜視図。
【
図3】物理量検出素子の取り付け状態を示す平面図。
【
図9】第1実施形態の物理量検出装置の機能ブロック図。
【
図10】第1実施形態における診断電圧出力回路の構成例を示す図。
【
図11】第1実施形態における信号波形の一例を示す図。
【
図12】第1実施形態における診断出力電圧の波形の一例を示す図。
【
図13】第2実施形態における診断電圧出力回路の構成例を示す図。
【
図14】第2実施形態における診断出力電圧の波形の一例を示す図。
【
図15】第3実施形態の物理量検出装置の機能ブロック図。
【
図16】第3実施形態における信号波形の一例を示す図。
【
図17】電子機器の一例である本実施形態の慣性計測装置の構成例を示す図。
【
図18】電子機器の一例である本実施形態の移動体測位装置の構成例を示す図。
【
図20】電子機器の一例であるスマートフォンの外観の一例を示す図。
【
図21】電子機器の一例である腕装着型の携帯機器の外観の一例を示す図。
【
図22】電子機器の一例であるリスト機器の外観の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0018】
以下では、物理量として加速度を検出する物理量検出装置である加速度検出装置を例にとり説明する。
【0019】
1.物理量検出装置
1-1.第1実施形態
[物理量検出装置の構造]
第1実施形態に係る物理量検出装置を、
図1、
図2、
図3、
図4を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る物理量検出装置の概略構成を示す斜視図である。
図2は、物理量検出装置の概略構成を示す断面図である。
図3は、物理量検出装置に用いられている物理量検出素子の取り付け状態を示す平面図である。
図4は、物理量検出素子の配置例を示す平面図である。なお、説明の便宜上、
図4では蓋体を省略した状態を示している。
【0020】
なお、以下では、各図面に記載されているように、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸及びZ軸として説明する。また、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」とも言う。また、X軸とY軸とを含む面を「XY面」とも言う。また、Z軸方向は、パッケージを構成するベース基板と蓋体の積層方向に沿った方向、換言すれば物理量検出素子とベース基板との取り付け方向に沿った方向をZ軸方向とする。さらに、説明の便宜上、Z軸方向から視たときの平面視において、蓋体側である+Z軸方向側の面を上面、これと反対側となる-Z軸方向側の面を下面として説明することがある。
【0021】
図1及び
図2に示す物理量検出装置1は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれの加速度を独立して検知することのできる3軸加速度センサーとして利用可能である。このような物理量検出装置1は、パッケージ7と、パッケージ7内に収容された構造体5と、を有している。なお、構造体5は、物理量として3軸方向の加速度を検出する物理量検出素子20と、物理量検出素子20上に配置され、IC(Integrated Circuit)として構成される物理量検出回路40と、を含み、接合材としての樹脂接着材18によって、物理量検出素子20の下面20rがパッケージ7の内側に接続されている。
【0022】
図1、
図2及び
図3に示すように、パッケージ7は、第1の基材11、第2の基材12及び第3の基材13で構成されているベース部10と、封止部材14を介して第3の基材13に接続されている蓋体15と、を含む。なお、第1の基材11、第2の基材12及び第3の基材13は、この順で積層されてベース部10が構成される。第1の基材11は、平板状であり、第2の基材12及び第3の基材13は、中央部が除去された環状体であり、第3の基材13の上面の周縁にシールリングや低融点ガラス等の封止部材14が形成されている。
【0023】
パッケージ7は、中央部が除去された環状体である第2の基材12と第3の基材13とにより、構造体5を収容する凹部であるキャビティーが形成される。そして、パッケージ7は、キャビティーの開口が蓋体15によって塞がれることによって密閉空間である収容空間17が設けられ、この収容空間17に構造体5を収容することができる。このように、パッケージ7と蓋体15との間に設けられている収容空間17に、物理量検出素子20及び物理量検出回路40で構成される構造体5が収納されていることにより、コンパクトで高性能な物理量検出装置1とすることができる。なお、第1の基材11や第2の基材12を含むベース部10に形成された配線パターンや電極パッドの一部は図示を省略してある。
【0024】
第1の基材11、第2の基材12及び第3の基材13の構成材料には、セラミックなどが好適に用いられる。なお、第1の基材11、第2の基材12及び第3の基材13の構成材料は、セラミック以外に、ガラス、樹脂、金属等を用いてもよい。また、蓋体15の構成材料には、例えば、コバールなどの金属材料、ガラス材料、シリコン材料、セラミック材料、樹脂材料などを用いることができる。
【0025】
また、第2の基材12の上面には複数の内部端子19が配置されており、第1の基材11の下面であるパッケージ7の外底面10rには複数の外部端子16が配置されている。また、各内部端子19は、ベース部10に形成された図示しない内部配線などを介して対応する外部端子16に電気的に接続されている。
【0026】
物理量検出回路40は、接着層41を介して、物理量検出素子20の、パッケージ7を構成する第1の基材11の側の面である下面20rとは反対側の面に取り付けられている。このように、パッケージ7と物理量検出素子20と物理量検出回路40とを積層することにより、平面方向の配置効率を高め、物理量検出装置1の平面視における面積を小さく
することができる。
【0027】
構造体5は、
図2及び
図3に示すように、接合材としての樹脂接着材18によって、第1の基材11の上面に、物理量検出素子20の下面20rが接続され、パッケージ7の収容空間17に収納されている。パッケージ7の収容空間17は、大気圧よりも低い減圧雰囲気、または窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性気体雰囲気に気密封止されている。
【0028】
図4に示すように、物理量検出素子20は、ベース基板22、及びキャップ部である蓋部23を有する容器25と、容器25内に収容され、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれの加速度を独立して検知することのできるX軸センサー部21x、Y軸センサー部21y及び2つのZ軸センサー部21zと、を含む。X軸センサー部21x及びY軸センサー部21yは、X-Y平面方向の2軸であるX軸方向及びY軸方向の加速度を検知し、2つのZ軸センサー部21zの各々は、X-Y平面に直交するZ軸方向の加速度を検知し、静電容量の変化データを示す信号を出力する。2つのZ軸センサー部21zは、X軸方向の加速度及びY軸方向の加速度もわずかに検知してしまうため、これらの加速度の検出信号が互いに打ち消し合うように、X軸と平行な仮想軸XLに対して線対称となるように配置されている。2つのZ軸センサー部21zの出力信号が合わさって物理量検出回路40に送信される。物理量検出回路40は、物理量検出素子20から送られた静電容量の変化を示す信号を、ユーザーの使い易い形式、例えばバイアス方式に変換処理し、加速度データとして出力する。
【0029】
物理量検出素子20及び物理量検出回路40は、ボンディングワイヤー43によって電気的に接続されている。また、物理量検出回路40は、ボンディングワイヤー42によってパッケージ7において第2の基材12の上面に設けられている内部端子19に電気的に接続されている。なお、内部端子19及び外部端子16は、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)等の金属配線材料を、所定の位置にスクリーン印刷して焼成し、その上にニッケル(Ni)、金(Au)等のめっきを施す方法などによって形成することができる。
【0030】
また、ベース基板22には、不図示のX軸センサー部21x用の配線、Y軸センサー部21y用の配線及びZ軸センサー部21z用の配線が配置されている。また、これら各配線の端部は、容器25の外部に露出しており、露出した部分が接続端子29となっている。そして、この各接続端子29がボンディングワイヤー43を介して物理量検出回路40の不図示の電極パッドと電気的に接続されている。
【0031】
このようなベース基板22は、例えば、アルカリ金属イオンを含むガラス材料から形成されている。これにより、シリコン基板から形成されているX軸センサー部21x、Y軸センサー部21y及びZ軸センサー部21zをベース基板22に対して陽極接合により強固に接合することができる。また、ベース基板22に光透過性を付与することができるため、ベース基板22を介して容器25の内部を観察することができる。ただし、ベース基板22の構成材料としては、ガラス材料に限定されず、例えば、高抵抗なシリコン材料を用いることができる。この場合、X軸センサー部21x、Y軸センサー部21y及びZ軸センサー部21zとの接合は、例えば、直接接合、シロキサン結合、樹脂系接着材、ガラスペースト、金属層、等を介して行うことができる。
【0032】
物理量検出回路40は、接着層41を介して物理量検出素子20の上面である蓋部23上に配置されている。なお、接着層41としては、物理量検出素子20上に物理量検出回路40を固定することができれば、特に限定されず、例えば、半田、銀ペースト、樹脂系接着材等を用いることができる。
【0033】
また、物理量検出回路40は、上面に不図示の複数の電極パッドを有し、各電極パッドがボンディングワイヤー42を介して第2の基材12の内部端子19に電気的に接続され、各電極パッドがボンディングワイヤー43を介して物理量検出素子20の接続端子29に電気的に接続されている。これにより、物理量検出回路40は、物理量検出素子20を制御することができる。
【0034】
[X軸センサー部及びY軸センサー部の構造及び動作]
図5は、X軸センサー部21xの一例を示す平面図である。
図6は、
図5中のA-A線断面図である。なお、Y軸センサー部21yは、X軸センサー部21xと同じ構造であり、
図5においてX軸センサー部21xを反時計回りに90°回転させたものに相当し、その図示及び説明を省略する。以下では、説明の便宜上、
図5中の紙面手前側及び
図6中の上側を「上」とも言い、
図5中の紙面奥側及び
図6中の下側を「下」とも言う。また、各軸の矢印方向先端側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。
【0035】
図5に示すX軸センサー部21xは、ベース基板22上に配置された素子部210を含む。
【0036】
ベース基板22は上面側に開放する凹部201を有しており、Z軸方向からの平面視で、凹部201は、素子部210を内側に内包するように、素子部210よりも大きく形成されている。この凹部201は、素子部210とベース基板22との接触を防止するための逃げ部として機能する。
【0037】
また、
図6に示すように、ベース基板22は、凹部201の底面に設けられた3つの突起状のマウント部202,203,204を有している。マウント部202には第1固定電極部221が接合され、マウント部203には第2固定電極部231が接合され、マウント部204には可動部支持部250が接合されている。
【0038】
また、
図5に示すように、ベース基板22は、上面側に開放する溝部205,206,207を有している。溝部205,206,207の一端部は、それぞれ、
図4の互いに異なる接続端子29まで延伸しており、他端部は、それぞれ、凹部201に接続されている。
【0039】
図5に示すように、溝部205,206,207には配線301,302,303が設けられている。溝部205内の配線301の一端部は、
図4の接続端子29と電気的に接続されている。
図6に示すように、配線301の他端部は、凹部201を介してマウント部202まで引き回されている。そして、配線301は、マウント部202上で第1固定電極部221と電気的に接続されている。
【0040】
溝部206内の配線302の一端部は、
図4の接続端子29と電気的に接続されている。
図6に示すように、配線302の他端部は、凹部201を介してマウント部203まで引き回されている。そして、配線302は、マウント部203上で第2固定電極部231と電気的に接続されている。
【0041】
溝部207内の配線303の一端部は、
図4の接続端子29と電気的に接続されている。
図6に示すように、配線303の他端部は、凹部201を介してマウント部204まで引き回されている。そして、配線303は、マウント部204上で可動部支持部250と電気的に接続されている。
【0042】
配線301,302,303の構成材料としては、特に限定されず、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)
、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、Ti(チタン)、タングステン(W)等の金属材料、これら金属材料を含む合金、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO、IGZO等の酸化物系の透明導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
図5に示すように、素子部210は、ベース基板22に固定されている固定電極部220と、ベース基板22に固定されている可動部支持部250と、可動部支持部250に対してX軸方向に変位可能な可動部260と、可動部支持部250と可動部260とを連結するバネ部270,274と、可動部260に設けられている可動電極部280と、を有している。このうち、可動部支持部250、可動部260、バネ部270,274及び可動電極部280は、一体的に形成されている。このような素子部210は、例えば、リン(P)、ボロン(B)等の不純物がドープされたシリコン基板をパターニングすることで形成することができる。また、素子部210は、陽極接合によってベース基板22のマウント部202,203,204に接合されている。ただし、素子部210の材料や、素子部210のベース基板22への接合方法は、特に限定されない。
【0044】
図5に示すように、可動部支持部250は、X軸方向に延在する長手形状をなしている。そして、可動部支持部250は、X軸方向のマイナス側の端部にマウント部204と接合している接合部251を有している。なお、本実施形態では、可動部支持部250は、X軸方向に延在する長手形状となっているが、可動部支持部250の形状としては、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。また、以下では、Z軸方向から見た平面視で、可動部支持部250をY軸方向に二等分する仮想軸を中心軸Lとする。
【0045】
可動部支持部250は、第1固定電極部221及び第2固定電極部231の間に位置している。これにより、可動部支持部250を、可動部260の中心部に配置することができ、可動部260をより安定して支持することができる。
【0046】
図5に示すように、可動部260は、Z軸方向から見た平面視で、枠状をなしており、可動部支持部250、バネ部270、バネ部274、第1固定電極部221及び第2固定電極部231を囲んでいる。すなわち、可動部260は、固定電極部220を囲む枠状をなしている。これにより、可動部260の質量をより大きくすることができる。そのため、より感度を向上させ、X軸方向の加速度Axを精度よく検出することができる。
【0047】
また、可動部260は、内側に第1固定電極部221が配置された第1開口部268と、内側に第2固定電極部231が配置された第2開口部269と、を有している。また、第1開口部268及び第2開口部269は、Y軸方向に並んで配置されている。このような可動部260は、中心軸Lに対して対称である。
【0048】
可動部260の形状をより具体的に説明すると、可動部260は、可動部支持部250、バネ部270、バネ部274、第1固定電極部221及び第2固定電極部231を囲む枠部261と、第1開口部268のX軸方向プラス側に位置し、枠部261からY軸方向マイナス側へ延出する第1Y軸延在部262と、第1Y軸延在部262の先端部からX軸方向マイナス側へ延出する第1X軸延在部263と、第2開口部269のX軸方向プラス側に位置し、枠部261からY軸方向プラス側へ延出する第2Y軸延在部264と、第2Y軸延在部264の先端部からX軸方向マイナス側へ延出する第2X軸延在部265と、を有している。また、第1Y軸延在部262及び第2Y軸延在部264は、それぞれ、バネ部270の近くに設けられ、バネ部270のY軸方向、すなわちバネ片271の延在方向に沿うように配置されており、第1X軸延在部263及び第2X軸延在部265は、それぞれ、可動部支持部250の近くに設けられ、可動部支持部250に沿って配置されている。
【0049】
このような構成において、第1Y軸延在部262及び第1X軸延在部263は、第1可動電極指282を支持する支持部として機能し、第2Y軸延在部264及び第2X軸延在部265は、第2可動電極指292を支持する支持部として機能する。
【0050】
また、可動部260は、第1開口部268の余ったスペースを埋めるように、枠部261から第1開口部268内へ突出する第1突出部266と、第2開口部269の余ったスペースを埋めるように、枠部261から第2開口部269内へ突出する第2突出部267と、を有している。このように、第1突出部266及び第2突出部267を設けることで、可動部260の大型化を招くことなく、可動部260の質量をより大きくすることができる。そのため、より感度を向上させ、感度の高いX軸センサー部21xとなる。
【0051】
また、バネ部270、274は、弾性変形可能であり、バネ部270、274が弾性変形することで、可動部260が可動部支持部250に対してX軸方向に変位することができる。
図5に示すように、バネ部270は、可動部260のX軸方向プラス側の端部と可動部支持部250のX軸方向プラス側の端部とを連結し、バネ部274は、可動部260のX軸方向マイナス側の端部と可動部支持部250のX軸方向マイナス側の端部とを連結している。これにより、可動部260をX軸方向の両側で支持することができるため、可動部260の姿勢及び挙動が安定する。そのため、不要な振動を低減させ、より高い精度で、加速度Axを検出することができる。
【0052】
また、バネ部270は、Y軸方向に並んで配置された一対のバネ片271,272を有している。また、一対のバネ片271,272は、それぞれ、Y軸方向に蛇行した形状をなし、中心軸Lに対して対称的に形成されている。このようなバネ部270は、Y軸方向に長く延在した部分270yと、X軸方向に短く延在した部分270xと、を有している。なお、バネ部274の構成は、バネ部270の構成と同様である。
【0053】
このように、バネ部270,274を、検出軸であるX軸よりも、X軸に直交するY軸方向に長い形状とすることで、加速度Axが加わった際の、可動部260のX軸方向、すなわち検出軸方向以外への変位、特にZ軸まわりの回転変位を抑制することができる。そのため、不要な振動を低減させ、より高い精度で加速度Axを検出することができる。ただし、バネ部270,274の構成としては、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。
【0054】
また、
図5に示すように、固定電極部220は、第1開口部268内に位置する第1固定電極部221と、第2開口部269に位置する第2固定電極部231と、を有している。第1固定電極部221及び第2固定電極部231は、Y軸方向に並んで配置されている。
【0055】
第1固定電極部221は、ベース基板22に固定された第1幹部支持部224と、第1幹部支持部224に支持された第1幹部222と、第1幹部222からY軸方向両側に延出した複数の第1固定電極指223と、を有している。なお、第1幹部支持部224、第1幹部222及び各第1固定電極指223は、一体形成されている。
【0056】
第1幹部支持部224は、マウント部202と接合された接合部224aを有している。なお、接合部224aは、第1幹部支持部224のX軸方向マイナス側に偏って配置されている。
【0057】
第1幹部222は、棒状の長手形状をなし、その一端が第1幹部支持部224に接続されており、これにより、第1幹部支持部224に支持されている。また、第1幹部222
は、Z軸方向から見た平面視で、X軸及びY軸のそれぞれに対して傾斜した方向に延在している。より具体的には、第1幹部222は、その先端側に向けて中心軸Lとの離間距離が大きくなるように傾斜している。このような配置とすることで、第1幹部支持部224を可動部支持部250の近くに配置し易くなる。
【0058】
なお、X軸に対する第1幹部222の軸L222の傾きとしては、特に限定されないが、10°以上、45°以下であること好ましく、10°以上、30°以下であることがより好ましい。これにより、第1固定電極部221のY軸方向への広がりを抑制することができ、素子部210の小型化を図ることができる。
【0059】
第1固定電極指223は、第1幹部222からY軸方向両側に延出している。すなわち、第1固定電極指223は、第1幹部222のY軸方向プラス側に位置する第1固定電極指223’と、Y軸方向マイナス側に位置する第1固定電極指223”と、を有している。第1固定電極指223’、223”は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。
【0060】
複数の第1固定電極指223’のY軸方向の長さは、X軸方向プラス側に向けて漸減している。複数の第1固定電極指223’の先端は、それぞれ、X軸方向に沿う同一直線上に位置している。一方、複数の第1固定電極指223”のY軸方向の長さは、X軸方向プラス側に向けて漸増している。複数の第1固定電極指223”の先端は、それぞれ、X軸方向に沿う同一直線上に位置している。Y軸方向に並ぶ第1固定電極指223’と第1固定電極指223”の総長さは、それぞれ、ほぼ同じである。
【0061】
第2固定電極部231は、ベース基板22に固定された第2幹部支持部234と、第2幹部支持部234に支持された第2幹部232と、第2幹部232からY軸方向両側に延出した複数の第2固定電極指233と、を有している。なお、第2幹部支持部234、第2幹部232及び各第2固定電極指233は、一体形成されている。
【0062】
第2幹部支持部234は、マウント部203の上面と接合された接合部234aを有している。なお、接合部234aは、第2幹部支持部234のX軸方向マイナス側に偏って配置されている。
【0063】
第2幹部232は、棒状の長手形状をなし、その一端が第2幹部支持部234に接続されており、これにより、第2幹部支持部234に支持されている。また、第2幹部232は、Z軸方向から見た平面視で、X軸及びY軸のそれぞれに対して傾斜した方向に延在している。より具体的には、第2幹部232は、その先端側に向けて中心軸Lとの離間距離が大きくなるように傾斜している。このような配置とすることで、第2幹部支持部234を可動部支持部250の近くに配置し易くなる。
【0064】
なお、X軸に対する第2幹部232の軸L232の傾きとしては、特に限定されないが、10°以上、45°以下であること好ましく、10°以上、30°以下であることがより好ましい。これにより、第2固定電極部231のY軸方向への広がりを抑制することができ、素子部210の小型化を図ることができる。
【0065】
第2固定電極指233は、第2幹部232からY軸方向両側に延出している。すなわち、第2固定電極指233は、第2幹部232のY軸方向プラス側に位置する第2固定電極指233’と、Y軸方向マイナス側に位置する第2固定電極指233”と、を有している。第2固定電極指233’、233”は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。
【0066】
複数の第2固定電極指233’のY軸方向の長さは、X軸方向プラス側に向けて漸増している。複数の第2固定電極指233’の先端は、それぞれ、X軸方向に沿う同一直線上に位置している。一方、複数の第2固定電極指233”のY軸方向の長さは、X軸方向プラス側に向けて漸減している。複数の第2固定電極指233”の先端は、それぞれ、X軸方向に沿う同一直線上に位置している。Y軸方向に並ぶ第2固定電極指233’と第2固定電極指233”の総長さは、それぞれ、ほぼ同じである。
【0067】
このような第1固定電極部221及び第2固定電極部231の形状及び配置は、第1固定電極指223及び第2固定電極指233がX軸方向にずれていることを除いて、中心軸Lに対して線対称である。特に、本実施形態では、第1幹部222及び第2幹部232は、それぞれ、中心軸Lとの離間距離が先端側へ向けて漸増するようにX軸に対して傾斜した方向に延在している。このような配置とすることで、第1幹部支持部224の接合部224a及び第2幹部支持部234の接合部234aを、可動部支持部250の接合部251のより近くに配置することができる。そのため、熱や残留応力等に起因してベース基板22に反りや撓みが生じた際の可動部260と固定電極部220とのZ軸方向のずれの差、具体的には、第1可動電極指282と第1固定電極指223とのZ軸方向のずれの差、第2可動電極指292と第2固定電極指233とのZ軸方向のずれの差をより効果的に抑制することができる。
【0068】
特に、本実施形態では、第1幹部支持部224の接合部224a、第2幹部支持部234の接合部234a及び可動部支持部250の接合部251が、Y軸方向に並んで配置されている。これにより、接合部224a、234aを、接合部251のさらに近くに配置することができ、上述した効果がより顕著となる。
【0069】
図5に示すように、可動電極部280は、第1開口部268内に位置する第1可動電極部281と、第2開口部269内に位置する第2可動電極部291と、を有している。第1可動電極部281及び第2可動電極部291は、Y軸方向に並んで配置されている。
【0070】
第1可動電極部281は、第1幹部222のY軸方向両側に位置し、Y軸方向に延在する複数の第1可動電極指282を有している。すなわち、第1可動電極指282は、第1幹部222のY軸方向プラス側に位置する第1可動電極指282’と、Y軸方向マイナス側に位置する第1可動電極指282”と、を有している。第1可動電極指282’、282”は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。第1可動電極指282’は、枠部261からY軸方向マイナス側に向けて延出し、第1可動電極指282”は、第1X軸延在部263からY軸方向プラス側に向けて延出している。
【0071】
各第1可動電極指282は、対応する第1固定電極指223に対してX軸方向プラス側に位置し、この第1固定電極指223とギャップを介して対向している。
【0072】
複数の第1可動電極指282’のY軸方向の長さは、X軸方向プラス側に向けて漸減している。複数の第1可動電極指282’の先端は、それぞれ、第1幹部222の延在方向に沿う同一直線上に位置している。一方、複数の第1可動電極指282”のY軸方向の長さは、X軸方向プラス側に向けて漸増している。複数の第1可動電極指282”の先端は、それぞれ、第1幹部222の延在方向に沿う同一直線上に位置している。Y軸方向に並ぶ第1可動電極指282’と第1可動電極指282”の総長さは、それぞれ、ほぼ同じである。
【0073】
第2可動電極部291は、第2幹部232のY軸方向両側に位置し、Y軸方向に延在する複数の第2可動電極指292を有している。すなわち、第2可動電極指292は、第2幹部232のY軸方向プラス側に位置する第2可動電極指292’と、Y軸方向マイナス
側に位置する第2可動電極指292”と、を有している。第2可動電極指292’、292”は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。第2可動電極指292’は、第2X軸延在部265からY軸方向マイナス側に向けて延出し、第2可動電極指292”は、枠部261からY軸方向プラス側に向けて延出している。
【0074】
各第2可動電極指292は、対応する第2固定電極指233に対してX軸方向マイナス側に位置し、この第2固定電極指233とギャップを介して対向している。
【0075】
複数の第2可動電極指292’のY軸方向の長さは、X軸方向プラス側に向けて漸増している。複数の第2可動電極指292’の先端は、それぞれ、第2幹部232の延在方向に沿う同一直線上に位置している。一方、複数の第2可動電極指292”のY軸方向の長さは、X軸方向プラス側に向けて漸減している。複数の第2可動電極指292”の先端は、それぞれ、第2幹部232の延在方向に沿う同一直線上に位置している。Y軸方向に並ぶ第2可動電極指292’と第2可動電極指292”の総長さは、それぞれ、ほぼ同じである。
【0076】
このような第1可動電極部281及び第2可動電極部291の形状及び配置は、第1可動電極指282及び第2可動電極指292がX軸方向にずれていることを除いて、中心軸Lに対して線対称である。
【0077】
このような構成のX軸センサー部21xにX軸方向の加速度Axが加わると、その加速度Axの大きさに基づいて、可動部260がバネ部270,274を弾性変形させながらX軸方向に変位する。このような変位に伴って、第1可動電極指282と第1固定電極指223とのギャップ及び第2可動電極指292と第2固定電極指233とのギャップがそれぞれ変化し、この変位に伴って、第1可動電極指282と第1固定電極指223との間の静電容量及び第2可動電極指292と第2固定電極指233との間の静電容量の大きさがそれぞれ変化する。そのため、これら静電容量の変化に基づいて加速度Axを検出することができる。
【0078】
ここで、上述したように、各第1可動電極指282は、対応する第1固定電極指223に対してX軸方向プラス側に位置し、逆に、各第2可動電極指292は、対応する第2固定電極指233に対してX軸方向マイナス側に位置している。すなわち、各第1可動電極指282は、対をなす第1固定電極指223に対してX軸方向の一方側に位置し、各第2可動電極指292は、対をなす第2固定電極指233に対してX軸方向の他方側に位置している。そのため、X軸方向の加速度Axが加わると、第1可動電極指282と第1固定電極指223とのギャップが縮まり、第2可動電極指292と第2固定電極指233とのギャップが広がるか、逆に、第1可動電極指282と第1固定電極指223とのギャップが広がり、第2可動電極指292と第2固定電極指233とのギャップが縮まる。よって、第1固定電極指223及び第1可動電極指282の間から得られる第1検出信号と、第2固定電極指233及び第2可動電極指292の間から得られる第2検出信号と、を差動演算することで、ノイズをキャンセルすることができ、より精度よく、加速度Axを検出することができる。
【0079】
[Z軸センサー部の構造及び動作]
図7は、
図4において上側のZ軸センサー部21zの一例を示す平面図である。
図8は、
図7中のI-I線断面図である。なお、
図4において下側のZ軸センサー部21zは、
図7においてZ軸センサー部21zを上下反対にしたものに相当し、その図示及び説明を省略する。
【0080】
図7及び
図8に示すように、Z軸センサー部21zは、可動体330と、第1固定電極
部360と、第2固定電極部362と、第3固定電極部364と、を含む。
【0081】
ベース基板22には、凹部316が形成されており、凹部316の上方に、すなわち+Z軸方向側に可動体330が配置されている。凹部316の底面、すなわち凹部316を規定するベース基板22の面には、ポスト部318が設けられている。図示の例では、ポスト部318は、ベース基板22と一体に設けられている。ポスト部318は、凹部316の底面よりも上方に突出している。ポスト部318は、可動体330を支持している。
【0082】
第1固定電極部360、第2固定電極部362及び第3固定電極部364は、ベース基板22の凹部316に設けられている。可動体330、第1固定電極部360、第2固定電極部362及び第3固定電極部364は、例えば、陽極接合や直接接合によって、ベース基板22に接合されている。
【0083】
可動体330は、第1連結部340と、第2連結部342と、支持部350と、を有している。
【0084】
可動体330は、凹部316の上方に設けられ、ベース基板22と離間している。可動体330の厚さ、すなわちZ軸方向の大きさは、例えば、20μm以上35μm以下程度である。
【0085】
可動体330は、支持軸Qまわりに変位可能である。具体的には、可動体330は、Z軸方向の加速度が加わると、第1連結部340及び第2連結部342によって決定される支持軸Qを回転軸としてシーソー揺動する。
【0086】
可動体330は、Z軸方向からみた平面視において、支持軸Qによって区画される第1シーソー片330aと第2シーソー片330bとを有している。支持軸Qは可動体330の中心から外れた位置に配置されており、第1シーソー片330aと第2シーソー片330bとは互いに異なる質量を有している。図示の例では、支持軸Qから第1シーソー片330aの端面333までの距離は、支持軸Qから第2シーソー片330bの端面334までの距離よりも長い。そのため、第1シーソー片330aの質量は、第2シーソー片330bの質量よりも大きい。このように、第1シーソー片330aと第2シーソー片330bとが互いに異なる質量を有することにより、鉛直方向、すなわちZ軸方向の加速度が加わったときに、第1シーソー片330aの回転モーメントと、第2シーソー片330bの回転モーメントと、が均衡しない。したがって、Z軸方向の加速度が加わったときに、可動体330に所定の傾きが生じる。
【0087】
可動体330は、導電性を有しており、第1シーソー片330aの一部は第1可動電極部331として機能し、第2シーソー片330bの一部は第2可動電極部332として機能する。第1可動電極部331は、第1シーソー片330aのうち、平面視において第1固定電極部360と重なる部分である。第1可動電極部331は、第1固定電極部360との間に静電容量C1を形成する。第2可動電極部332は、第2シーソー片330bのうち、平面視において第2固定電極部362と重なる部分である。第2可動電極部332は、第2固定電極部362との間に静電容量C2を形成する。平面視において、第1可動電極部331の面積と第2可動電極部332の面積とは、例えば、等しい。第1可動電極部331及び第2可動電極部332は、例えば、支持軸Qに関して対称である。
【0088】
静電容量C1及び静電容量C2は、例えば、
図7に示す可動体330が水平な状態で、互いに等しくなるように構成されている。第1可動電極部331及び第2可動電極部332は、可動体330の動きに応じて位置が変化する。第1可動電極部331及び第2可動電極部332の位置に応じて、静電容量C1,C2が変化する。可動体330には、第1
連結部340、第2連結部342及び支持部350を介して、所定の電位が与えられる。支持部350は、図示せぬ配線と接続されている。
【0089】
可動体330には、可動体330を貫通する貫通孔335が設けられている。これにより、可動体330が揺動する際の空気の影響を低減することができる。貫通孔335は、例えば、複数形成されている。図示の例では、可動体330には、Z軸方向からみた平面形状、すなわちZ軸方向からみた形状が長方形の貫通孔335と、平面形状が正方形の貫通孔335とが設けられている。
【0090】
第1連結部340は、第1シーソー片330aと支持部350とを連結し、第2連結部342は、第2シーソー片330bと支持部350とを連結している。第1連結部340及び第2連結部342は、トーションバネとして機能する。これにより、第1連結部340及び第2連結部342は、第1シーソー片330a及び第2シーソー片330bがシーソー揺動することにより第1連結部340及び第2連結部342に生じるねじり変形に対して強い復元力を有することができる。
【0091】
第1連結部340及び第2連結部342は、平面視において、支持軸Q上に配置されている。第1連結部340及び第2連結部342は、支持軸Qに沿って延出している。第1連結部340は、支持部350から+X軸方向に延出している。第2連結部342は、支持部350から-X軸方向に延出している。
【0092】
支持部350の一部は、ポスト部318に例えば陽極接合されている。図示の例では、支持部350は、略H字状の平面形状を有しているが、その形状は特に限定されない。
【0093】
可動体330の材料は、例えば、リン、ボロン等の不純物がドープされることにより導電性が付与されたシリコンである。可動体330は、シリコン基板を加工して形成されたシリコンMEMSを構成している。
【0094】
第1固定電極部360、第2固定電極部362及び第3固定電極部364は、ベース基板22の凹部316の底面に設けられている。第1固定電極部360は、可動体330の第1可動電極部331と離間し、第1可動電極部331に対向して設けられている。第2固定電極部362は、可動体330の第2可動電極部332と離間し、第2可動電極部332に対向して設けられている。第3固定電極部364は、第2固定電極部362よりも第2可動電極部332よりも可動体330の端側、すなわち端面333側において可動体330の第1シーソー片330aと離間し、第1シーソー片330aに対向して設けられている。
【0095】
第1固定電極部360、第2固定電極部362及び第3固定電極部364の材料は、例えば、アルミニウム、金、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)、白金(プラチナ、PT)、等である。
【0096】
このような構造のZ軸センサー部21zでは、加速度に応じて、可動体330が支持軸Qまわりに揺動する。この可動体330の動きに伴って、第1可動電極部331と第1固定電極部360との間の距離、及び第2可動電極部332と第2固定電極部362との間の距離が変化する。具体的には、+Z軸方向の加速度がZ軸センサー部21zに加わると、可動体330は反時計回りに回転し、第1可動電極部331と第1固定電極部360との間の距離が小さくなり、第2可動電極部332と第2固定電極部362との間の距離が大きくなる。この結果、静電容量C1が大きくなり、静電容量C2が小さくなる。また、-Z軸方向の加速度がZ軸センサー部21zに加わると、可動体330は時計回りに回転し、第1可動電極部331と第1固定電極部360との間の距離が大きくなり、第2可動
電極部332と第2固定電極部362との間の距離が小さくなる。この結果、静電容量C1が小さくなり、静電容量C2が大きくなる。
【0097】
物理量検出回路40は、可動体330に駆動信号を供給し、静電容量C1と静電容量C2との差に応じて変化する電荷量に基づいて、Z軸方向の加速度の向きや大きさを検出することができる。
【0098】
これに対して、第3固定電極部364は、加速度の検出に必要な電荷を出力する電極ではなく、いわゆるダミー電極である。第3固定電極部364により、第1シーソー片330aとベース基板22とが直接対向しないようになっている。これにより、可動体330とベース基板22との接合時に第1シーソー片330aのベース基板22への貼り付きのおそれが低減される。さらに、可動体330がベース基板22の帯電の影響を受けにくくなるため、加速度の検出精度が低下するおそれも低減される。ただし、可動体330と第3固定電極部364との間に電位差が生じると、Z軸方向の加速度が加わらなくても、可動体330と第3固定電極部364との間の静電引力によって可動体330が傾いてしまい、Z軸方向の加速度に応じて物理量検出回路40によって生成される物理量信号に初期オフセット、すなわち静止状態におけるオフセットが生じる原因になる。そのため、可動体330と第3固定電極部364とは同電位であることが好ましい。
【0099】
[物理量検出回路の構成及び動作]
図9は、第1実施形態の物理量検出装置1の機能ブロック図である。前述の通り、本実施形態の物理量検出装置1は、物理量検出素子20と物理量検出回路40とを含む。
【0100】
図9に示すように、物理量検出素子20のX軸センサー部21xは、
図5に示した第1固定電極部221と第1可動電極部281とによって構成される第1容量形成部2Xと、第2固定電極部231と第2可動電極部291とによって第2容量形成部3Xと、を含む。第1容量形成部2Xの一端を形成する第1固定電極部221は、
図4に示した接続端子29を介して物理量検出回路40の端子XPと電気的に接続され、第2容量形成部3Xの一端を形成する第2固定電極部231は、
図4に示した接続端子29を介して物理量検出回路40の端子XNと電気的に接続されている。また、第1容量形成部2Xの他端を形成する第1可動電極部281及び第2容量形成部3Xの他端を形成する第2可動電極部291は、
図4に示した接続端子29を介して物理量検出回路40の端子COMと電気的に接続されている。
【0101】
物理量検出素子20のY軸センサー部21yは、
図5に示したX軸センサー部21xを反時計回りに90°回転させた状態における、第1固定電極部221と第1可動電極部281とによって構成される第1容量形成部2Yと、第2固定電極部231と第2可動電極部291とによって第2容量形成部3Yと、を含む。第1容量形成部2Yの一端を形成する第1固定電極部221は、
図4に示した接続端子29を介して物理量検出回路40の端子YPと電気的に接続され、第2容量形成部3Yの一端を形成する第2固定電極部231は、
図4に示した接続端子29を介して物理量検出回路40の端子YNと電気的に接続されている。また、第1容量形成部2Yの他端を形成する第1可動電極部281及び第2容量形成部3Yの他端を形成する第2可動電極部291は、
図4に示した接続端子29を介して物理量検出回路40の端子COMと電気的に接続されている。
【0102】
物理量検出素子20のZ軸センサー部21zは、
図7及び
図8に示した第1固定電極部360と第1可動電極部331とによって構成される第1容量形成部2Zと、第2固定電極部362と第2可動電極部332とによって構成される第2容量形成部3Zと、を含む。第1容量形成部2Zの一端を形成する第1固定電極部360は、
図4に示した接続端子29を介して物理量検出回路40の端子ZPと電気的に接続され、第2容量形成部3Zの
一端を形成する第2固定電極部362は、
図4に示した接続端子29を介して物理量検出回路40の端子ZNと電気的に接続されている。また、第1容量形成部2Zの他端を形成する第1可動電極部331及び第2容量形成部3Zの他端を形成する第2可動電極部332は、
図4に示した接続端子29を介して物理量検出回路40の端子COMと電気的に接続されている。
【0103】
図9に示すように、本実施形態では、物理量検出回路40は、スイッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Z、制御回路110、マルチプレクサー111、Q/Vアンプ(QVA)112、プログラマブルゲインアンプ(PGA)113、スイッチトキャパシターフィルター回路(SCF)114X,114Y,114Z、マルチプレクサー115、A/D変換回路(ADC)116、デジタルフィルター117、発振回路118、駆動回路119、インターフェース回路120、記憶部130及び診断電圧出力回路140を含む。ただし、物理量検出回路40は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。なお、本実施形態では、物理量検出回路40は、1つのICとして実現されているが、複数のICで実現されていてもよいし、一部がディスクリート部品で構成されていてもよい。
【0104】
物理量検出回路40は、不図示の電源端子から供給される高位側の電源電圧VDDと不図示の他の電源端子から供給される低位側の電源電圧VSSとに基づいて動作する。電源電圧VDDは例えば3Vであり、電源電圧VSSは例えば0Vである。
【0105】
発振回路118は、クロック信号MCLKを出力する。例えば、CR発振器やリングオシレーター等であってもよい。
【0106】
制御回路110は、クロック信号MCLKに基づいて、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Z,SCFCLK_X,SCFCLK_Y,SCFCLK_Z,SMPCLK、及び制御信号EN_OUT_X,EN_OUT_Y,EN_OUT_Z,SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Zを生成する。
【0107】
駆動回路119は、端子COMと電気的に接続されており、端子COMを介して、物理量検出素子20と電気的に接続されている。そして、駆動回路119は、クロック信号MCLK及びクロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Zに基づいて、X軸センサー部21x、Y軸センサー部21y及びZ軸センサー部21zを駆動する駆動信号DRVを生成し、駆動信号DRVを物理量検出回路40の端子COMに出力する。駆動信号DRVは、物理量検出回路40の端子COMを介して、第1容量形成部2X,2Y,2Z及び第2容量形成部3X,3Y,3Zに共通に印加される。
【0108】
診断電圧出力回路140は、診断電圧VDを発生する診断電圧発生回路141と、診断電圧VDが入力され、診断出力電圧VOを出力する電流制限回路142と、を含む。
図10は、診断電圧出力回路140の構成例を示す図であり、本実施形態では、電流制限回路142は抵抗150である。また、診断電圧発生回路141は、電源電圧VDDを昇圧して診断電圧VDを発生してもよい。
【0109】
図9に示すように、スイッチ101Xは、端子XPと電流制限回路142とに電気的に接続されている。スイッチ101Yは、端子YPと電流制限回路142とに電気的に接続されている。スイッチ101Zは、端子ZPと電流制限回路142とに電気的に接続されている。スイッチ102Xは、端子XNと電流制限回路142とに電気的に接続されている。スイッチ102Yは、端子YNと電流制限回路142とに電気的に接続されている。スイッチ102Zは、端子ZNと電流制限回路142とに電気的に接続されている。スイ
ッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Zは、さらにマルチプレクサー111を介してQ/Vアンプ112と電気的に接続されている。
【0110】
そして、スイッチ101Xは、制御信号SP_Xに応じて、端子XPを電流制限回路142及びQ/Vアンプ112の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ101Yは、制御信号SP_Yに応じて、端子YPを電流制限回路142及びQ/Vアンプ112の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ101Zは、制御信号SP_Zに応じて、端子ZPを電流制限回路142及びQ/Vアンプ112の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ102Xは、制御信号SN_Xに応じて、端子XNを電流制限回路142及びQ/Vアンプ112の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ102Yは、制御信号SN_Yに応じて、端子YNを電流制限回路142及びQ/Vアンプ112の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ102Zは、制御信号SN_Zに応じて、端子ZNを電流制限回路142及びQ/Vアンプ112の何れかと電気的に接続する。
【0111】
例えば、スイッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Zは、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Zがそれぞれローレベルのときに、端子XP,YP,ZP,XN,YN,ZNをそれぞれQ/Vアンプ112と電気的に接続する。また、スイッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Zは、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Zがそれぞれハイレベルのときに、端子XP,YP,ZP,XN,YN,ZNをそれぞれ電流制限回路142と電気的に接続する。
【0112】
本実施形態では、例えば、制御信号SN_X,SN_Y,SN_Zは常にローレベルであり、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Zは互いに排他的にハイレベルとなる。この場合、任意の時点において、端子XN,YN,ZNは、いずれも電流制限回路142と電気的に接続されず、端子XP,YP,ZPは、いずれも電流制限回路142と電気的に接続されないか、いずれか1つのみが電流制限回路142と電気的に接続される。端子XPが電流制限回路142と電気的に接続された場合、X軸センサー部21xの第1容量形成部2Xの一端を形成する第1固定電極部221に診断出力電圧VOが印加される。先に示した
図10はこの状態を示している。このとき、端子XNは電流制限回路142と電気的に接続されていないので、X軸センサー部21xの第2容量形成部3Xの一端を形成する第2固定電極部231には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Xの他端及び第2容量形成部3Xの他端を形成するX軸センサー部21xの可動部260が変位して第1容量形成部2X及び第2容量形成部3Xの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってX軸センサー部21xが正常であるか否かを診断することができる。また、端子YPが電流制限回路142と電気的に接続された場合、Y軸センサー部21yの第1容量形成部2Yの一端を形成する第1固定電極部221に診断出力電圧VOが印加される。このとき、端子YNは電流制限回路142と電気的に接続されていないので、Y軸センサー部21yの第2容量形成部3Yの一端を形成する第2固定電極部231には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Yの他端及び第2容量形成部3Yの他端を形成するY軸センサー部21yの可動部260が変位して第1容量形成部2Y及び第2容量形成部3Yの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってY軸センサー部21yが正常であるか否かを診断することができる。また、端子ZPが電流制限回路142と電気的に接続された場合、Z軸センサー部21zの第1容量形成部2Zの一端を形成する第1固定電極部360に診断出力電圧VOが印加される。このとき、端子ZNは電流制限回路142と電気的に接続されていないので、Z軸センサー部21zの第2容量形成部3Zの一端を形成する第2固定電極部362には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Zの他端及び第2容量形成部3Zの他端を形成するZ軸センサー部21zの可動体330が変位して第1容量形成部2Z及び第2容量形成部3Zの静電容量が変化するので、この
変化量が所望の範囲にあるか否かによってZ軸センサー部21zが正常であるか否かを診断することができる。
【0113】
なお、この場合、端子XP,YP,ZPがそれぞれ本発明の「第1端子」に相当する。また、端子COMが本発明の「第2端子」に相当する。また、端子XN,YN,ZNがそれぞれ本発明の「第3端子」に相当する。また、X軸センサー部21xの第1固定電極部221、Y軸センサー部21yの第1固定電極部221及びZ軸センサー部21zの第1固定電極部360が、それぞれ本発明の「第1電極」に相当する。また、X軸センサー部21xの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、Y軸センサー部21yの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、並びにZ軸センサー部21zの第1可動電極部331及び第2可動電極部332が、それぞれ本発明の「第2電極」に相当する。また、X軸センサー部21xの第2固定電極部231、Y軸センサー部21yの第2固定電極部231及びZ軸センサー部21zの第2固定電極部362が、それぞれ本発明の「第3電極」に相当する。
【0114】
また、本実施形態では、例えば、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Zは常にローレベルであり、制御信号SN_X,SN_Y,SN_Zは互いに排他的にハイレベルとなってもよい。この場合、任意の時点において、端子XP,YP,ZPは、いずれも電流制限回路142と電気的に接続されず、端子XN,YN,ZNは、いずれも電流制限回路142と電気的に接続されないか、いずれか1つのみが電流制限回路142と電気的に接続される。端子XNが電流制限回路142と電気的に接続された場合、第2容量形成部3Xの一端に診断出力電圧VOが印加される。このとき、端子XPは電流制限回路142と電気的に接続されていないので、第1容量形成部2Xの一端には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2X及び第2容量形成部3Xの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってX軸センサー部21xが正常であるか否かを診断することができる。また、端子YNが電流制限回路142と電気的に接続された場合、第2容量形成部3Yの一端に診断出力電圧VOが印加される。このとき、端子YPは電流制限回路142と電気的に接続されていないので、第1容量形成部2Yの一端には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Y及び第2容量形成部3Yの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってY軸センサー部21yが正常であるか否かを診断することができる。また、端子ZNが電流制限回路142と電気的に接続された場合、第2容量形成部3Zの一端に診断出力電圧VOが印加される。このとき、端子ZPは電流制限回路142と電気的に接続されていないので、第1容量形成部2Zの一端には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Z及び第2容量形成部3Zの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってZ軸センサー部21zが正常であるか否かを診断することができる。
【0115】
なお、この場合、端子XN,YN,ZNがそれぞれ本発明の「第1端子」に相当する。また、端子COMが本発明の「第2端子」に相当する。また、端子XP,YP,ZPがそれぞれ本発明の「第3端子」に相当する。また、X軸センサー部21xの第2固定電極部231、Y軸センサー部21yの第2固定電極部231及びZ軸センサー部21zの第2固定電極部362が、それぞれ本発明の「第1電極」に相当する。また、X軸センサー部21xの第1固定電極部221、Y軸センサー部21yの第1固定電極部221及びZ軸センサー部21zの第1固定電極部360が、それぞれ本発明の「第3電極」に相当する。また、X軸センサー部21xの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、Y軸センサー部21yの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、並びにZ軸センサー部21zの第1可動電極部331及び第2可動電極部332が、それぞれ本発明の「第2電極」に相当する。
【0116】
マルチプレクサー111は、互いに排他的にハイレベルとなるクロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Zに基づいて、端子XP,XNからスイッチ101X,102Xを介して入力される差動の電荷、端子YP,YNからスイッチ101Y,102Yを介して入力される差動の電荷及び端子ZP,ZNからスイッチ101Z,102Zを介して入力される差動の電荷のいずれかを選択して差動信号対PIN,NINとして出力する。具体的には、マルチプレクサー111は、クロック信号DRVCLK_Xがハイレベルのときは、端子XP,XNからスイッチ101X,102Xを介して入力される差動の電荷を選択し、差動信号対PIN,NINとして出力する。また、マルチプレクサー111は、クロック信号DRVCLK_Yがハイレベルのときは、端子YP,YNからスイッチ101Y,102Yを介して入力される差動の電荷を選択し、差動信号対PIN,NINとして出力する。また、マルチプレクサー111は、クロック信号DRVCLK_Zがハイレベルのときは、端子ZP,ZNからスイッチ101Z,102Zを介して入力される差動の電荷を選択し、差動信号対PIN,NINとして出力する。また、マルチプレクサー111は、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Zがいずれもローレベルのときは、ともにゼロの差動信号対PIN,NINを出力する。
【0117】
図11に、本実施形態における駆動信号DRV、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Z、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Z及び差動信号対PIN,NINの波形の一例を示す。例えば、期間T1~T7は、それぞれ、クロック信号MCLKのN周期分の期間である。また、期間T2,T4,T6では、駆動信号DRVの電圧は基準電圧VCOM、電源電圧VDD、電源電圧VSS、基準電圧VCOMの順に変化する。基準電圧VCOMは、例えば電源電圧VDDの1/2の電圧である。駆動信号DRVの電圧が基準電圧VCOMから変化して基準電圧VCOMへと戻るまでの時間は、クロック信号MCLKの1周期の時間と同じであってもよい。
【0118】
期間T1では、クロック信号DRVCLK_Xがハイレベルであり、制御信号SP_Xがハイレベルからローレベルへと変化する。制御信号SP_Xがハイレベルである期間Tonにおいて、端子XPが電流制限回路142と電気的に接続され、第1容量形成部2Xの一端に診断出力電圧VOが印加される。このとき、制御信号SN_Xはローレベルであるので、端子XNは電流制限回路142と電気的に接続されず、第2容量形成部3Xの一端には診断出力電圧VOが印加されない。その結果、期間T1では、第1容量形成部2Xの静電容量が変化し、かつ、第2容量形成部3Xの静電容量が変化せず、クロック信号DRVCLK_Xがハイレベルであるため、X軸センサー部21xから出力される差動の電荷が差動信号対PIN,NINとして選択される。そのため、制御信号SP_Xがローレベルになると、第1容量形成部2Xの静電容量の変化量に応じて信号PINが変化し、かつ、信号NINはゼロとなる。
【0119】
期間T3では、クロック信号DRVCLK_Yがハイレベルであり、制御信号SP_Yがハイレベルからローレベルへと変化する。制御信号SP_Yがハイレベルである期間Tonにおいて、端子YPが電流制限回路142と電気的に接続され、第1容量形成部2Yの一端に診断出力電圧VOが印加される。このとき、制御信号SN_Yはローレベルであるので、端子YNは電流制限回路142と電気的に接続されず、第2容量形成部3Yの一端には診断出力電圧VOが印加されない。その結果、期間T3では、第1容量形成部2Yの静電容量が変化し、かつ、第2容量形成部3Yの静電容量が変化せず、クロック信号DRVCLK_Yがハイレベルであるため、Y軸センサー部21yから出力される差動の電荷が差動信号対PIN,NINとして選択される。そのため、制御信号SP_Yがローレベルになると、第1容量形成部2Yの静電容量の変化量に応じて信号PINが変化し、かつ、信号NINはゼロとなる。
【0120】
期間T5では、クロック信号DRVCLK_Zがハイレベルであり、制御信号SP_Zがハイレベルからローレベルへと変化する。制御信号SP_Zがハイレベルである期間Tonにおいて、端子ZPが電流制限回路142と電気的に接続され、第1容量形成部2Zの一端に診断出力電圧VOが印加される。このとき、制御信号SN_Zはローレベルであるので、端子ZNは電流制限回路142と電気的に接続されず、第2容量形成部3Zの一端には診断出力電圧VOが印加されない。その結果、期間T5では、第1容量形成部2Zが変化し、かつ、第2容量形成部3Zの静電容量が変化せず、クロック信号DRVCLK_Zがハイレベルであるため、Z軸センサー部21zから出力される差動の電荷が差動信号対PIN,NINとして選択される。そのため、制御信号SP_Zがローレベルになると、第1容量形成部2Zの静電容量の変化量に応じて信号PINが変化し、かつ、信号NINはゼロとなる。
【0121】
期間T2,T4,T6では、駆動信号DRVによりX軸センサー部21x、Y軸センサー部21y及びZ軸センサー部21zが共通に駆動される。そして、期間T2では、クロック信号DRVCLK_Xがハイレベルであり、制御信号SP_X,SN_Xがいずれもローレベルであるので、X軸方向の加速度に応じてX軸センサー部21xから出力される差動の電荷が端子XP,XNに入力され、差動信号対PIN,NINとして選択される。また、期間T4では、クロック信号DRVCLK_Yがハイレベルであり、制御信号SP_Y,SN_Yがいずれもローレベルであるので、Y軸方向の加速度に応じてY軸センサー部21yから出力される差動の電荷が端子YP,YNに入力され、差動信号対PIN,NINとして選択される。また、期間T6では、クロック信号DRVCLK_Zがハイレベルであり、制御信号SP_Z,SN_Zがいずれもローレベルであるので、Z軸方向の加速度に応じてZ軸センサー部21zから出力される差動の電荷が端子ZP,ZNに入力され、差動信号対PIN,NINとして選択される。
【0122】
期間T7では、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Zがいずれもローレベルであるため、差動信号対PIN,NINは共にゼロとなる。
【0123】
図9の説明に戻り、Q/Vアンプ112はマルチプレクサー111から出力される電荷の差動信号対PIN,NINを電圧の差動信号対に変換して出力する。したがって、Q/Vアンプ112は、
図11の期間T1,T2では、X軸センサー部21xから出力されて端子XP,XNから入力される信号である差動の電荷を差動の電圧信号に変換する。また、Q/Vアンプ112は、
図11の期間T3、T4では、Y軸センサー部21yから出力されて端子YP,YNから入力される信号である差動の電荷を差動の電圧信号に変換する。また、Q/Vアンプ112は、
図11の期間T5,T6では、Z軸センサー部21zから出力されて端子ZP,ZNから入力される信号である差動の電荷を差動の電圧信号に変換する。また、Q/Vアンプ112は、期間T7では、共にゼロの差動信号対を共に基準電圧VCOMの電圧信号に変換する。なお、Q/Vアンプ112は、本発明の「変換回路」の一例である。
【0124】
プログラマブルゲインアンプ113は、Q/Vアンプ112から出力される差動信号対が入力され、当該差動信号対を増幅した差動信号対POP,PONを出力する。
【0125】
スイッチトキャパシターフィルター回路114X,114Y,114Zは、プログラマブルゲインアンプ113から出力される差動信号対POP,PONが共通に入力される。そして、スイッチトキャパシターフィルター回路114Xは、クロック信号SCFCLK_Xに基づいて、差動信号対POP,PONに含まれる信号のうち、X軸センサー部21xから端子XP,XNを介して入力された差動の電荷が変換された電圧信号をサンプリングしてホールドするとともにフィルタリング処理を行う。また、スイッチトキャパシター
フィルター回路114Yは、クロック信号SCFCLK_Yに基づいて、差動信号対POP,PONに含まれる信号のうち、Y軸センサー部21yから端子YP,YNを介して入力された差動の電荷が変換された電圧信号をサンプリングしてホールドするとともにフィルタリング処理を行う。また、スイッチトキャパシターフィルター回路114Zは、クロック信号SCFCLK_Zに基づいて、差動信号対POP,PONに含まれる信号のうち、Z軸センサー部21zから端子ZP,ZNを介して入力された差動の電荷が変換された電圧信号をサンプリングしてホールドするとともにフィルタリング処理を行う。スイッチトキャパシターフィルター回路114X,114Y,114Zは、同じ回路構成であってもよい。
【0126】
マルチプレクサー115は、互いに排他的にハイレベルとなる制御信号EN_OUT_X,EN_OUT_Y,EN_OUT_Zに基づいて、スイッチトキャパシターフィルター回路114Xが出力する差動信号対、スイッチトキャパシターフィルター回路114Yが出力する差動信号対、スイッチトキャパシターフィルター回路114Zが出力する差動信号対のいずれかを選択して出力する。具体的には、マルチプレクサー115は、制御信号EN_OUT_Xがハイレベルのときは、スイッチトキャパシターフィルター回路114Xが出力する差動信号対を選択して出力する。また、マルチプレクサー115は、制御信号EN_OUT_Yがハイレベルのときは、スイッチトキャパシターフィルター回路114Yが出力する差動信号対を選択して出力する。また、マルチプレクサー115は、制御信号EN_OUT_Zがハイレベルのときは、スイッチトキャパシターフィルター回路114Zが出力する差動信号対を選択して出力する。
【0127】
A/D変換回路116は、クロック信号SMPCLKに基づいて、マルチプレクサー115が出力する差動信号対をサンプリングし、当該差動信号対の電位差をデジタル信号に変換する。クロック信号SMPCLKは、制御信号EN_OUT_X,EN_OUT_Y,EN_OUT_Zがそれぞれハイレベルの期間に1つずつハイパルスを含むクロック信号である。そして、A/D変換回路116は、制御信号EN_OUT_Xがハイレベルの期間のクロック信号SMPCLKの立ち上がりで、マルチプレクサー115から出力される差動信号対、すなわちスイッチトキャパシターフィルター回路114Xが出力する差動信号対をサンプリングしてデジタル信号に変換する。また、A/D変換回路116は、制御信号EN_OUT_Yがハイレベルの期間のクロック信号SMPCLKの立ち上がりで、マルチプレクサー115から出力される差動信号対、すなわちスイッチトキャパシターフィルター回路114Yが出力する差動信号対をサンプリングしてデジタル信号に変換する。また、A/D変換回路116は、制御信号EN_OUT_Zがハイレベルの期間のクロック信号SMPCLKの立ち上がりで、マルチプレクサー115から出力される差動信号対、すなわちスイッチトキャパシターフィルター回路114Zが出力する差動信号対をサンプリングしてデジタル信号に変換する。このように、A/D変換回路116は、
図11の期間T1~T7において、マルチプレクサー115から出力される差動信号対を6回サンプリングして時分割にA/D変換する。
【0128】
なお、サンプリング定理に基づき、スイッチトキャパシターフィルター回路114X,114Y,114Zの出力信号において、A/D変換回路116のサンプリング周波数fsの1/2よりも高い信号成分は、A/D変換回路116におけるサンプリングにより、DC近傍の周波数帯に折り返されてノイズ成分となる。そのため、スイッチトキャパシターフィルター回路114X,114Y,114Zは、A/D変換回路116のサンプリングにより生ずるノイズ成分を低減させるためのアンチエイリアスフィルターとしても機能するように、そのカットオフ周波数はサンプリング周波数fsの1/2以下に設定される。
【0129】
デジタルフィルター117は、クロック信号MCLKに基づいて、A/D変換回路11
6から出力されるデジタル信号に対してフィルタリング処理を行う。A/D変換回路116から出力されるデジタル信号には、A/D変換回路116のA/D変換処理により発生した高周波ノイズが重畳されているため、デジタルフィルター117は、この高周波ノイズを低減させるローパスフィルターとして機能する。このデジタルフィルター117から出力されるデジタル信号は、X軸センサー部21xからの診断出力信号であるX軸診断信号、X軸方向の加速度の大きさ及び向きに応じたデジタル値を有するX軸加速度信号、Y軸センサー部21yからの診断出力信号であるY軸診断信号、Y軸方向の加速度の大きさ及び向きに応じたデジタル値を有するY軸加速度信号、Z軸センサー部21zからの診断出力信号であるZ軸診断信号及びZ軸方向の加速度の大きさ及び向きに応じたデジタル値を有するZ軸加速度信号が時分割に含まれている。
【0130】
インターフェース回路120は、物理量検出装置1の外部装置と通信するための回路である。当該外部装置は、インターフェース回路120を介して、記憶部130に対するデータの書き込みや読み出し、デジタルフィルター117から出力されるデジタル信号であるX軸診断信号、X軸加速度信号、Y軸診断信号、Y軸加速度信号、Z軸診断信号及びZ軸加速度信号の読み出し等を行うことができる。インターフェース回路120は、例えば、3端子や4端子のSPI(Serial Peripheral Interface)インターフェース回路であってもよいし、2端子のI2C(Inter-Integrated Circuit)インターフェース回路であってもよい。
【0131】
記憶部130は、レジスター131及び不揮発性メモリー132を有している。不揮発性メモリー132には、物理量検出回路40に含まれる各回路に対する各種のデータ、例えば、プログラマブルゲインアンプ113の利得調整データ、デジタルフィルター117のフィルター係数等の各種の情報が記憶されている。不揮発性メモリー132は、例えば、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型メモリーやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)として構成することができる。また、物理量検出回路40の電源投入時に、不揮発性メモリー132に記憶されている各種のデータがレジスター131に転送されて保持され、レジスター131に保持された各種のデータが各回路に供給される。
【0132】
このように構成されている物理量検出回路40は、インターフェース回路120を介して、物理量信号であるX軸加速度信号、Y軸加速度信号及びZ軸加速度信号を出力することができる。さらに、物理量検出回路40は、インターフェース回路120を介して、X軸診断信号、Y軸診断信号及びZ軸診断信号を出力することができる。例えば、外部装置は、X軸診断信号の値が所望の範囲にあるか否かによってX軸センサー部21xが正常であるか否かを診断し、正常の場合はその直後のX軸加速度信号を有効とし、異常の場合はその直後のX軸加速度信号を無効としてもよい。同様に、外部装置は、Y軸診断信号の値が所望の範囲にあるか否かによってY軸センサー部21yが正常であるか否かを診断し、正常の場合はその直後のY軸加速度信号を有効とし、異常の場合はその直後のY軸加速度信号を無効としてもよい。同様に、外部装置は、Z軸診断信号の値が所望の範囲にあるか否かによってZ軸センサー部21zが正常であるか否かを診断し、正常の場合はその直後のZ軸加速度信号を有効とし、異常の場合はその直後のZ軸加速度信号を無効としてもよい。
【0133】
[第1実施形態の作用効果]
以上に説明した第1実施形態の物理量検出装置1では、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Zのいずれかがハイレベルのとき、診断電圧発生回路141が発生させる診断電圧VDは、電流制限回路142である抵抗150を介して診断出力電圧VOとなって、X軸センサー部21x、Y軸センサー部21y及びZ軸センサー部21zのいずれかに印加される。
図12は、
図11の期間T1における診断出力電
圧VOの波形の一例を示す図である。期間T1において、制御信号SP_Xがローレベルからハイレベルに変化すると、
図10に示すように、スイッチ101Xを介して抵抗150と第1容量形成部2Xとが電気的に接続され、診断電圧発生回路141から抵抗150を介して第1容量形成部2Xへと電流が流れ込む。このとき、抵抗150により第1容量形成部2Xに流れ込む電流が制限され、抵抗150と第1容量形成部2XによるRC回路の時定数に応じて診断出力電圧VOが基準電圧VCOMから緩やかに診断電圧VDまで立ち上がる。そのため、診断時において、物理量検出素子20のX軸センサー部21x及びY軸センサー部21yへの突入電流が低減され、X軸センサー部21x及びY軸センサー部21yに発生する静電気力によって、可動部260の第1可動電極指282及び第2可動電極指292がそれぞれ第1固定電極部221の第1固定電極指223及び第2固定電極部231の第2固定電極指233と接触するおそれが低減される。同様に、診断時に物理量検出素子20のZ軸センサー部21zへの突入電流が低減され、Z軸センサー部21zに発生する静電気力によって、可動体330が第1固定電極部360、第2固定電極部362あるいは蓋部23に貼り付いたり衝突したりするおそれが低減される。したがって、第1実施形態の物理量検出装置1によれば、診断時に物理量検出素子20が破損するおそれを低減させることができる。
【0134】
また、第1実施形態の物理量検出装置1において、
図11に示したように、駆動回路119は物理量検出素子20を周期的に駆動し、スイッチ101X,101Y,101Zは、周期的に端子XP,YP,ZPと電流制限回路142とを電気的に接続し、端子XP,YP,ZPと電流制限回路142とが電気的に接続される各期間Tonの長さは、物理量検出素子が駆動される各期間T2,T4,T6の長さ以下であるようにしてもよい。これにより、診断期間である期間T1,T3,T5の長さを期間T2,T4,T6の長さと一致させることが可能となり、制御回路110による時分割処理の制御が容易になる。
【0135】
1-2.第2実施形態
第2実施形態の物理量検出装置1は、診断電圧出力回路140に含まれる電流制限回路142の構成を除いて、第1実施形態の物理量検出装置1と同様である。以下、第2実施形態の物理量検出装置1について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号が付されているものとし、主として第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0136】
第1実施形態の物理量検出装置1における電流制限回路142は抵抗であったのに対して、第2実施形態の物理量検出装置1における電流制限回路142は、診断時に物理量検出素子20に過電流が供給されないように制御する過電流制御回路である。
【0137】
図13は、第2実施形態の物理量検出装置1における診断電圧出力回路140の構成例を示す図である。また、
図14は、
図11の期間T1における診断出力電圧VOの波形の一例を示す図である。
【0138】
図13に示すように、電流制限回路142は、ツェナーダイオード160と、第1トランジスター161と、第2トランジスター162と、第1抵抗163と、第2抵抗164と、第3抵抗165と、第1ノードN1と、第2ノードN2と、第3ノードN3と、第4ノードN4と、第5ノードN5と、を含む、過電流制御回路である。
【0139】
第1トランジスター161及び第2トランジスター162は、バイポーラトランジスターであり、例えば、NPN型のバイポーラトランジスターである。第1トランジスター161のコレクター、第1抵抗163の一端及び第2抵抗164の一端は、第1ノードN1と電気的に接続されている。ツェナーダイオード160のアノード、第2トランジスター162のエミッター及び第3抵抗165の一端は、第2ノードN2と電気的に接続されている。第1トランジスター161のエミッターは、第3ノードN3と電気的に接続されて
いる。第2トランジスター162のベース及び第3抵抗165の他端は、第4ノードN4と電気的に接続されている。ツェナーダイオード160のカソード、第2トランジスター162のベース、第1抵抗163の他端及び第2抵抗164の他端は、第5ノードN5と電気的に接続されている。
【0140】
第1ノードN1には診断電圧VDが供給され、第2ノードN2には基準電圧VCOMが供給される。第3ノードN3はスイッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Zと電気的に接続されている。なお、
図13では、スイッチ101Xのみが代表して図示されている。第4ノードN4は、X軸センサー部21xの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、Y軸センサー部21yの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、並びにZ軸センサー部21zの第1可動電極部331及び第2可動電極部332と電気的に接続されている。
【0141】
スイッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Zがすべて非導通のとき、第5ノードN5の電圧値はツェナーダイオード160によって決まり、第1トランジスター161がオンし、診断出力電圧VOは診断電圧VDに基づく所定の電圧値V1になっている。この状態で、例えば、X軸センサー部21xの診断のために、制御信号SP_Xがローレベルからハイレベルに変化すると、スイッチ101Xが導通して端子XPが電流制限回路142と電気的に接続され、第1容量形成部2Xの一端を形成する第1固定電極部221に診断出力電圧VOが印加される。
図13はこの状態を示している。
【0142】
スイッチ101Xが導通した瞬間に診断出力電圧VOは基準電圧VCOMまで下がるとともに、診断電圧発生回路141から電流制限回路142を介して第1容量形成部2Xへと電流が流れ込む。この電流により、第3抵抗165に電流が流れて第2トランジスター162のベースとエミッターとの間に電位差が生じて第2トランジスター162がオンする。これにより、診断電圧発生回路141から第2抵抗164を介して第2トランジスター162のコレクターとエミッターとの間に電流が流れ、第1トランジスター161のベースの電圧が低下する。その結果、第1トランジスター161のコレクターとエミッターとの間に流れる電流、すなわち、第1容量形成部2Xへと電流が流れ込む電流が制限される。この第1容量形成部2Xへと電流が流れ込む電流、すなわち、第3抵抗165に流れる電流は徐々に小さくなっていき、これにより、第2トランジスター162のベースとエミッターとの間の電圧が徐々に小さくなっていく。そのため、第2トランジスター162のコレクターとエミッターとの間に流れる電流が徐々に低下し、第1トランジスター161のベースの電圧が徐々に上昇する。これにより、
図14に示すように、診断出力電圧VOは、基準電圧VCOMから診断電圧VDに基づく所定の電圧値V1まで緩やかに立ち上がる。そのため、第2実施形態の物理量検出装置1によれば、第1実施形態の物理量検出装置1と同様、診断時において、物理量検出素子20のX軸センサー部21x、Y軸センサー部21y及びZ軸センサー部21zへの突入電流が低減され、物理量検出素子20が破損するおそれを低減させることができる。
【0143】
その他、第2実施形態の物理量検出装置1によれば、第1実施形態の物理量検出装置1と同様の効果を奏することができる。
【0144】
1-3.第3実施形態
以下、第3実施形態の物理量検出装置1について、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成要素には同じ符号が付されているものとし、主として第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容について説明する。
【0145】
図15は、第3実施形態の物理量検出装置1の機能ブロック図である。第1実施形態と同様、第3実施形態の物理量検出装置1は、物理量検出素子20と物理量検出回路40と
を含む。物理量検出素子20の構成は第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0146】
図15に示すように、物理量検出回路40は、スイッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Z、制御回路110、Q/Vアンプ(QVA)112、プログラマブルゲインアンプ(PGA)113、スイッチトキャパシターフィルター回路(SCF)114X,114Y,114Z、マルチプレクサー115、A/D変換回路(ADC)116、デジタルフィルター117、発振回路118、駆動回路119、インターフェース回路120、記憶部130及び診断電圧出力回路140を含む。ただし、物理量検出回路40は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。なお、本実施形態では、物理量検出回路40は、1つのICとして実現されているが、複数のICで実現されていてもよいし、一部がディスクリート部品で構成されていてもよい。
【0147】
制御回路110、発振回路118、駆動回路119の構成及び機能は第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0148】
駆動回路119は、クロック信号MCLK及びクロック信号DRVCLK_Xに基づいて、X軸センサー部21xを駆動する互いに逆極性の駆動信号DRVXP,DRVXNを生成し、スイッチ101X,102Xにそれぞれ出力する。同様に、駆動回路119は、クロック信号MCLK及びクロック信号DRVCLK_Yに基づいて、Y軸センサー部21yを駆動する互いに逆極性の駆動信号DRVYP,DRVYNを生成し、スイッチ101Y,102Yにそれぞれ出力する。同様に、駆動回路119は、クロック信号MCLK及びクロック信号DRVCLK_Zに基づいて、Z軸センサー部21zを駆動する互いに逆極性の駆動信号DRVZP,DRVZNを生成し、スイッチ101Z,102Zにそれぞれ出力する。
【0149】
スイッチ101Xは、制御信号SP_Xに応じて、端子XPを電流制限回路142及び駆動回路119の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ101Yは、制御信号SP_Yに応じて、端子YPを電流制限回路142及び駆動回路119の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ101Zは、制御信号SP_Zに応じて、端子ZPを電流制限回路142及び駆動回路119の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ102Xは、制御信号SN_Xに応じて、端子XNを電流制限回路142及び駆動回路119の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ102Yは、制御信号SN_Yに応じて、端子YNを電流制限回路142及び駆動回路119の何れかと電気的に接続する。また、スイッチ102Zは、制御信号SN_Zに応じて、端子ZNを電流制限回路142及び駆動回路119の何れかと電気的に接続する。
【0150】
例えば、スイッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Zは、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Zがそれぞれローレベルのときに、端子XP,YP,ZP,XN,YN,ZNをそれぞれ駆動回路119と電気的に接続する。また、スイッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Zは、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Zがそれぞれハイレベルのときに、端子XP,YP,ZP,XN,YN,ZNをそれぞれ電流制限回路142と電気的に接続する。
【0151】
したがって、制御信号SP_X,SN_Xがともにハイレベルのとき、駆動信号DRVXP,DRVXNは、端子XP,XNを介してX軸センサー部21xの第1容量形成部2Xの一端及び第2容量形成部3Xの一端にそれぞれ印加される。これにより、X軸センサー部21xが駆動される。同様に、制御信号SP_Y,SN_Yがハイレベルのとき、駆
動信号DRVYP,DRVYNは、端子YP,YNを介してY軸センサー部21yの第1容量形成部2Yの一端及び第2容量形成部3Yの一端にそれぞれ印加される。これにより、Y軸センサー部21yが駆動される。同様に、制御信号SP_Z,SN_Zがハイレベルのとき、駆動信号DRVZP,DRVZNは、端子ZP,ZNを介してZ軸センサー部21zの第1容量形成部2Zの一端及び第2容量形成部3Zの一端にそれぞれ印加される。これにより、Z軸センサー部21zが駆動される。
【0152】
本実施形態では、例えば、制御信号SN_X,SN_Y,SN_Zは常にローレベルであり、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Zは互いに排他的にハイレベルとなる。この場合、任意の時点において、端子XN,YN,ZNは、いずれも電流制限回路142と電気的に接続されず、駆動回路119と電気的に接続されている。また、任意の時点において、端子XP,YP,ZPは、いずれも電流制限回路142と電気的に接続されずに駆動回路119と電気的に接続されるか、いずれか1つのみが電流制限回路142と電気的に接続される。端子XPが電流制限回路142と電気的に接続された場合、第1容量形成部2Xの一端に診断出力電圧VOが印加され、第2容量形成部3Xの一端には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Xの他端及び第2容量形成部3Xの他端を形成するX軸センサー部21xの可動部260が変位して第1容量形成部2X及び第2容量形成部3Xの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってX軸センサー部21xが正常であるか否かを診断することができる。また、端子YPが電流制限回路142と電気的に接続された場合、第1容量形成部2Yの一端に診断出力電圧VOが印加され、第2容量形成部3Yの一端には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Yの他端及び第2容量形成部3Yの他端を形成するY軸センサー部21yの可動部260が変位して第1容量形成部2Y及び第2容量形成部3Yの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってY軸センサー部21yが正常であるか否かを診断することができる。また、端子ZPが電流制限回路142と電気的に接続された場合、第1容量形成部2Zの一端に診断出力電圧VOが印加され、第2容量形成部3Zの一端には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Zの他端及び第2容量形成部3Zの他端を形成するZ軸センサー部21zの可動体330が変位して第1容量形成部2Z及び第2容量形成部3Zの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってZ軸センサー部21zが正常であるか否かを診断することができる。
【0153】
なお、この場合、端子XP,YP,ZPがそれぞれ本発明の「第1端子」に相当する。また、端子COMが本発明の「第2端子」に相当する。また、端子XN,YN,ZNがそれぞれ本発明の「第3端子」に相当する。また、X軸センサー部21xの第1固定電極部221、Y軸センサー部21yの第1固定電極部221及びZ軸センサー部21zの第1固定電極部360が、それぞれ本発明の「第1電極」に相当する。また、X軸センサー部21xの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、Y軸センサー部21yの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、並びにZ軸センサー部21zの第1可動電極部331及び第2可動電極部332が、それぞれ本発明の「第2電極」に相当する。また、X軸センサー部21xの第2固定電極部231、Y軸センサー部21yの第2固定電極部231及びZ軸センサー部21zの第2固定電極部362が、それぞれ本発明の「第3電極」に相当する。
【0154】
また、本実施形態では、例えば、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Zは常にローレベルであり、制御信号SN_X,SN_Y,SN_Zは互いに排他的にハイレベルとなってもよい。この場合、任意の時点において、端子XP,YP,ZPは、いずれも電流制限回路142と電気的に接続されず、駆動回路119と電気的に接続されている。また、任意の時点において、端子XN,YN,ZNは、いずれも電流制限回路142と電気的に接続されずに駆動回路119と電気的に接続されるか、いずれか1つのみが電流制限回路1
42と電気的に接続される。端子XNが電流制限回路142と電気的に接続された場合、第2容量形成部3Xの一端に診断出力電圧VOが印加され、第1容量形成部2Xの一端には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2X及び第2容量形成部3Xの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってX軸センサー部21xが正常であるか否かを診断することができる。また、端子YNが電流制限回路142と電気的に接続された場合、第2容量形成部3Yの一端に診断出力電圧VOが印加され、第1容量形成部2Yの一端には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Y及び第2容量形成部3Yの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってY軸センサー部21yが正常であるか否かを診断することができる。また、端子ZNが電流制限回路142と電気的に接続された場合、第2容量形成部3Zの一端に診断出力電圧VOが印加され、第1容量形成部2Zの一端には診断出力電圧VOが印加されない。これにより、第1容量形成部2Z及び第2容量形成部3Zの静電容量が変化するので、この変化量が所望の範囲にあるか否かによってZ軸センサー部21zが正常であるか否かを診断することができる。
【0155】
なお、この場合、端子XN,YN,ZNがそれぞれ本発明の「第1端子」に相当する。また、端子COMが本発明の「第2端子」に相当する。また、端子XP,YP,ZPがそれぞれ本発明の「第3端子」に相当する。また、X軸センサー部21xの第2固定電極部231、Y軸センサー部21yの第2固定電極部231及びZ軸センサー部21zの第2固定電極部362が、それぞれ本発明の「第1電極」に相当する。また、X軸センサー部21xの第1固定電極部221、Y軸センサー部21yの第1固定電極部221及びZ軸センサー部21zの第1固定電極部360が、それぞれ本発明の「第3電極」に相当する。また、X軸センサー部21xの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、Y軸センサー部21yの第1可動電極部281及び第2可動電極部291、並びにZ軸センサー部21zの第1可動電極部331及び第2可動電極部332が、それぞれ本発明の「第2電極」に相当する。
【0156】
本実施形態では、第1容量形成部2X,2Y,2Zの各他端及び第2容量形成部3X,3Y,3Zの各他端は、物理量検出回路40の端子COMと電気的に接続されており、端子COMから、物理量検出素子20が出力する電荷が信号INとして入力される。
【0157】
図16に、本実施形態における駆動信号DRVXP,DRVYP,DRVZP,DRVXN,DRVYN,DRVZN、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Z、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Z及び信号INの波形の一例を示す。例えば、期間T1~T7は、それぞれ、クロック信号MCLKのN周期分の期間である。期間T1,T3,T5,T7では、駆動信号DRVXP,DRVYP,DRVZP,DRVXN,DRVYN,DRVZNの電圧は基準電圧VCOMである。また、期間T2では、駆動信号DRVXPの電圧は基準電圧VCOM、電源電圧VDD、電源電圧VSS、基準電圧VCOMの順に変化し、駆動信号DRVXNの電圧は基準電圧VCOM、電源電圧VSS、電源電圧VDD、基準電圧VCOMの順に変化する。また、期間T4では、駆動信号DRVYPの電圧は基準電圧VCOM、電源電圧VDD、電源電圧VSS、基準電圧VCOMの順に変化し、駆動信号DRVYNの電圧は基準電圧VCOM、電源電圧VSS、電源電圧VDD、基準電圧VCOMの順に変化する。また、期間T6では、駆動信号DRVZPの電圧は基準電圧VCOM、電源電圧VDD、電源電圧VSS、基準電圧VCOMの順に変化し、駆動信号DRVZNの電圧は基準電圧VCOM、電源電圧VSS、電源電圧VDD、基準電圧VCOMの順に変化する。例えば、駆動信号DRVXP,DRVYP,DRVZP,DRVXN,DRVYN,DRVZNの電圧が基準電圧VCOMから変化して基準電圧VCOMへと戻るまでの時間は、クロック信号MCLKの1周期の時間と同じであってもよい。
【0158】
期間T1では、制御信号SP_Xがハイレベルからローレベルへと変化する。制御信号SP_Xがハイレベルである期間Tonにおいて、端子XPが電流制限回路142と電気的に接続され、第1容量形成部2Xの一端に診断出力電圧VOが印加される。このとき、制御信号SN_Xはローレベルであるので、端子XNは電流制限回路142と電気的に接続されず、第2容量形成部3Xの一端には診断出力電圧VOが印加されない。その結果、期間T1では、第1容量形成部2Xの静電容量が変化し、かつ、第2容量形成部3Xの静電容量が変化せず、X軸センサー部21xから出力される電荷が信号INとして端子COMから入力される。
【0159】
期間T2では、クロック信号DRVCLK_Xがハイレベルであり、制御信号SP_X,SN_Xがローレベルであるため、第1容量形成部2Xの一端には端子XPを介して駆動信号DRVXPが印加され、第2容量形成部3Xの一端には端子XNを介して駆動信号DRVXNが印加される。駆動信号DRVXP,DRVXNは互いに逆極性であり、駆動信号DRVXP,DRVXNによってX軸センサー部21xが駆動される。その結果、期間T2では、X軸方向の加速度に応じてX軸センサー部21xから出力される電荷が信号INとして端子COMから入力される。
【0160】
期間T3では、制御信号SP_Yがハイレベルからローレベルへと変化する。制御信号SP_Yがハイレベルである期間Tonにおいて、端子YPが電流制限回路142と電気的に接続され、第1容量形成部2Yの一端に診断出力電圧VOが印加される。このとき、制御信号SN_Yはローレベルであるので、端子YNは電流制限回路142と電気的に接続されず、第2容量形成部3Yの一端には診断出力電圧VOが印加されない。その結果、期間T3では、第1容量形成部2Yの静電容量が変化し、かつ、第2容量形成部3Yの静電容量が変化せず、Y軸センサー部21yから出力される電荷が信号INとして端子COMから入力される。
【0161】
期間T4では、クロック信号DRVCLK_Yがハイレベルであり、制御信号SP_Y,SN_Yがローレベルであるため、第1容量形成部2Yの一端には端子YPを介して駆動信号DRVYPが印加され、第2容量形成部3Yの一端には端子YNを介して駆動信号DRVYNが印加される。駆動信号DRVYP,DRVYNは互いに逆極性であり、駆動信号DRVYP,DRVYNによってY軸センサー部21yが駆動される。その結果、期間T4では、Y軸方向の加速度に応じてY軸センサー部21yから出力される電荷が信号INとして端子COMから入力される。
【0162】
期間T5では、制御信号SP_Zがハイレベルからローレベルへと変化する。制御信号SP_Zがハイレベルである期間Tonにおいて、端子ZPが電流制限回路142と電気的に接続され、第1容量形成部2Zの一端に診断出力電圧VOが印加される。このとき、制御信号SN_Zはローレベルであるので、端子ZNは電流制限回路142と電気的に接続されず、第2容量形成部3Zの一端には診断出力電圧VOが印加されない。その結果、期間T5では、第1容量形成部2Zの静電容量が変化し、かつ、第2容量形成部3Zの静電容量が変化せず、Z軸センサー部21zから出力される電荷が信号INとして端子COMから入力される。
【0163】
期間T6では、クロック信号DRVCLK_Zがハイレベルであり、制御信号SP_Z,SN_Zがローレベルであるため、第1容量形成部2Zの一端には端子ZPを介して駆動信号DRVZPが印加され、第2容量形成部3Zの一端には端子ZNを介して駆動信号DRVZNが印加される。駆動信号DRVZP,DRVZNは互いに逆極性であり、駆動信号DRVZP,DRVZNによってZ軸センサー部21zが駆動される。その結果、期間T6では、Z軸方向の加速度に応じてZ軸センサー部21zから出力される電荷が信号INとして端子COMから入力される。
【0164】
期間T7では、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Z及び制御信号SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Zがいずれもローレベルであるため、信号INはゼロとなる。
【0165】
図15の説明に戻り、Q/Vアンプ112は、電荷の信号INを電圧に変換して出力する。したがって、Q/Vアンプ112は、
図16の期間T1,T2では、X軸センサー部21xから出力されて端子COMから入力される信号である電荷を電圧信号に変換する。また、Q/Vアンプ112は、
図16の期間T3、T4では、Y軸センサー部21yから出力されて端子COMから入力される信号である電荷を電圧信号に変換する。また、Q/Vアンプ112は、
図16の期間T5,T6では、Z軸センサー部21zから出力されて端子COMから入力される信号である電荷を電圧信号に変換する。また、Q/Vアンプ112は、期間T7では、ゼロの電荷を基準電圧VCOMの電圧信号に変換する。なお、Q/Vアンプ112は、本発明の「変換回路」の一例である。
【0166】
プログラマブルゲインアンプ113は、Q/Vアンプ112から出力される電圧信号が入力され、当該電圧信号を増幅した電圧信号POを出力する。
【0167】
スイッチトキャパシターフィルター回路114X,114Y,114Zは、プログラマブルゲインアンプ113から出力される電圧信号POが共通に入力される。そして、スイッチトキャパシターフィルター回路114Xは、クロック信号SCFCLK_Xに基づいて、電圧信号POに含まれる信号のうち、X軸センサー部21xから端子COMを介して入力された電荷が変換された電圧信号をサンプリングしてホールドするとともにフィルタリング処理を行う。また、スイッチトキャパシターフィルター回路114Yは、クロック信号SCFCLK_Yに基づいて、電圧信号POに含まれる信号のうち、Y軸センサー部21yから端子COMを介して入力された電荷が変換された電圧信号をサンプリングしてホールドするとともにフィルタリング処理を行う。また、スイッチトキャパシターフィルター回路114Zは、クロック信号SCFCLK_Zに基づいて、電圧信号POに含まれる信号のうち、Z軸センサー部21zから端子COMを介して入力された電荷が変換された電圧信号をサンプリングしてホールドするとともにフィルタリング処理を行う。スイッチトキャパシターフィルター回路114X,114Y,114Zは、同じ回路構成であってもよい。
【0168】
マルチプレクサー115は、互いに排他的にハイレベルとなる制御信号EN_OUT_X,EN_OUT_Y,EN_OUT_Zに基づいて、スイッチトキャパシターフィルター回路114Xが出力する電圧信号、スイッチトキャパシターフィルター回路114Yが出力する電圧信号、スイッチトキャパシターフィルター回路114Zが出力する電圧信号のいずれかを選択して出力する。具体的には、マルチプレクサー115は、制御信号EN_OUT_Xがハイレベルのときは、スイッチトキャパシターフィルター回路114Xが出力する電圧信号を選択して出力する。また、マルチプレクサー115は、制御信号EN_OUT_Yがハイレベルのときは、スイッチトキャパシターフィルター回路114Yが出力する電圧信号を選択して出力する。また、マルチプレクサー115は、制御信号EN_OUT_Zがハイレベルのときは、スイッチトキャパシターフィルター回路114Zが出力する電圧信号を選択して出力する。
【0169】
A/D変換回路116は、クロック信号SMPCLKに基づいて、マルチプレクサー115が出力する電圧信号をサンプリングし、当該電圧信号をデジタル信号に変換する。クロック信号SMPCLKは、制御信号EN_OUT_X,EN_OUT_Y,EN_OUT_Zがそれぞれハイレベルの期間に1つずつハイパルスを含むクロック信号である。そして、A/D変換回路116は、制御信号EN_OUT_Xがハイレベルの期間のクロッ
ク信号SMPCLKの立ち上がりで、マルチプレクサー115から出力される電圧信号、すなわちスイッチトキャパシターフィルター回路114Xが出力する電圧信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。また、A/D変換回路116は、制御信号EN_OUT_Yがハイレベルの期間のクロック信号SMPCLKの立ち上がりで、マルチプレクサー115から出力される電圧信号、すなわちスイッチトキャパシターフィルター回路114Yが出力する電圧信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。また、A/D変換回路116は、制御信号EN_OUT_Zがハイレベルの期間のクロック信号SMPCLKの立ち上がりで、マルチプレクサー115から出力される電圧信号、すなわちスイッチトキャパシターフィルター回路114Zが出力する電圧信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。このように、A/D変換回路116は、
図16の期間T1~T7において、マルチプレクサー115から出力される差動信号対を6回サンプリングして時分割にA/D変換する。
【0170】
デジタルフィルター117、インターフェース回路120、記憶部130の構成及び機能は第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0171】
以上に説明した第3実施形態の物理量検出装置1によれば、第1実施形態又は第2実施形態の物理量検出装置1と同様の効果を奏することができる。
【0172】
1-4.変形例
上記の各実施形態では、外部装置が、物理量検出回路40から出力されるX軸診断信号、Y軸診断信号及びZ軸診断信号に基づいて、X軸センサー部21x、Y軸センサー部21y及びZ軸センサー部21zが正常であるか否かを診断するが、物理量検出回路40が、X軸診断信号、Y軸診断信号及びZ軸診断信号に基づいて、X軸センサー部21x、Y軸センサー部21y及びZ軸センサー部21zが正常であるか否かを診断する診断回路を含んでもよい。
【0173】
また、上記の各実施形態では、制御信号SN_X,SN_Y,SN_Zは常にローレベルであり、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Zは互いに排他的にハイレベルとなる、あるいは、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Zは常にローレベルであり、制御信号SN_X,SN_Y,SN_Zは互いに排他的にハイレベルとなるが、これに限られない。例えば、制御信号SN_X,SN_Y,SP_Zは常にローレベルであり、制御信号SP_X,SP_Y,SN_Zは互いに排他的にハイレベルとなってもよいし、あるいは、制御信号SP_X,SP_Y,SN_Zは常にローレベルであり、制御信号SN_X,SN_Y,SP_Zは互いに排他的にハイレベルとなってもよい。また、例えば、制御信号SN_X,SP_Y,SN_Zは常にローレベルであり、制御信号SP_X,SN_Y,SP_Zは互いに排他的にハイレベルとなってもよいし、あるいは、制御信号SP_X,SN_Y,SP_Zは常にローレベルであり、制御信号SN_X,SP_Y,SN_Zは互いに排他的にハイレベルとなってもよい。また、例えば、制御信号SP_X,SN_Y,SN_Zは常にローレベルであり、制御信号SN_X,SP_Y,SP_Zは互いに排他的にハイレベルとなってもよいし、あるいは、制御信号SN_X,SP_Y,SP_Zは常にローレベルであり、制御信号SP_X,SN_Y,SN_Zは互いに排他的にハイレベルとなってもよい。また、例えば、制御信号SP_X,SP_Y,SP_Z,SN_X,SN_Y,SN_Zが互いに排他的にハイレベルとなってもよい。
【0174】
また、上記の各実施形態では、物理量検出回路40は、スイッチ101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Zを含むが、スイッチ101X,102Xの一方、スイッチ101Y,102Yの一方及びスイッチ101Z,102Zの一方を含まなくてもよい。第1実施形態又は第2実施形態の物理量検出装置1において、スイッチ101X,102Xの一方がない場合、端子XP,XNの一方はマルチプレクサー111と電気
的に接続され、スイッチ101Y,102Yの一方がない場合、端子YP,YNの一方はマルチプレクサー111と電気的に接続され、スイッチ101Z,102Zの一方がない場合、端子ZP,ZNの一方はマルチプレクサー111と電気的に接続されてもよい。また、第3実施形態の物理量検出装置1において、スイッチ101X,102Xの一方がない場合、端子XP,XNの一方は駆動回路119と電気的に接続され、スイッチ101Y,102Yの一方がない場合、端子YP,YNの一方は駆動回路119と電気的に接続され、スイッチ101Z,102Zの一方がない場合、端子ZP,ZNの一方は駆動回路119と電気的に接続されてもよい。
【0175】
また、上記の各実施形態では、物理量検出装置1が出力する物理量信号はデジタル信号であるが、アナログ信号であってもよい。
【0176】
また、上記の実施形態の物理量検出装置1は、3軸分の物理量を検出するが、1軸、2軸あるいは4軸以上の物理量を検出してもよい。
【0177】
また、上記の実施形態では、物理量として加速度を検出する物理量検出装置1や物理量検出回路40を例に挙げたが、本発明は、角速度、角加速度、圧力等の各種の物理量を検出する物理量検出装置や物理量検出回路にも適用可能である。
【0178】
2.電子機器
以下に、上記の実施形態で説明した本発明に係る物理量検出回路、或いは物理量検出装置を搭載した電子機器の実施例について、それぞれ説明する。
【0179】
2-1.慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)
図17は、電子機器の一例である本実施形態の慣性計測装置の構成例を示す図である。
図17に示されるように、本実施形態の慣性計測装置400は、互いに交差する、理想的には直交する3軸であるx軸、y軸及びz軸の角速度をそれぞれ検出する3つの角速度検出装置411~413、x軸、y軸及びz軸の加速度をそれぞれ検出する3つの加速度検出装置421~423、信号処理回路430、記憶部440及び通信回路450を含んで構成されている。なお、本実施形態の慣性計測装置400は、
図17に示される構成要素の一部を省略または変更してもよいし、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0180】
角速度検出装置411は、x軸回りに生じる角速度を検出し、検出したx軸角速度の大きさ及び向きに応じた角速度信号を出力する。角速度検出装置412は、y軸回りに生じる角速度を検出し、検出したy軸角速度の大きさ及び向きに応じた角速度信号を出力する。角速度検出装置413は、z軸回りに生じる角速度を検出し、検出したz軸角速度の大きさ及び向きに応じた角速度信号を出力する。
【0181】
加速度検出装置421は、x軸回りに生じる加速度を検出し、検出したx軸加速度の大きさ及び向きに応じた加速度信号を出力する。加速度検出装置422は、y軸回りに生じる加速度を検出し、検出したy軸加速度の大きさ及び向きに応じた加速度信号を出力する。加速度検出装置423は、z軸回りに生じる加速度を検出し、検出したz軸加速度の大きさ及び向きに応じた加速度信号を出力する。
【0182】
なお、3つの角速度検出装置411~413は、1つのパッケージに収容されて3軸角速度検出モジュールを構成してもよい。同様に、3つの加速度検出装置421~423は、1つのパッケージに収容されて3軸加速度検出モジュールを構成してもよい。
【0183】
信号処理回路430は、角速度検出装置411~413から出力された3軸角速度信号を取得し、加速度検出装置421~423から出力された3軸加速度信号を取得し、取得
した3軸角速度信号及び3軸加速度信号を処理する。例えば、信号処理回路430は、取得した3軸角速度信号及び3軸加速度信号を順次A/D変換して3軸角速度データ及び3軸加速度データからなる慣性データを生成し、時刻情報を付して慣性データを記憶部440に記憶する処理を行う。また、信号処理回路430は、角速度検出装置411~413及び加速度検出装置421~423の各々の取り付け角誤差、すなわち各検出軸とx軸、y軸及びz軸との誤差に応じてあらかじめ算出された補正パラメーターを用いて、記憶部440に記憶した慣性データをxyz座標系のデータに変換し、記憶部440に記憶する処理を行う。また、信号処理回路430は、xyz座標系のデータに変換して記憶部440に記憶した慣性データを時刻順に読み出し、時刻情報と慣性データとを含むパケットデータを生成し、通信回路450に出力する。
【0184】
また、信号処理回路430は、慣性データに対して、オフセット補正処理や温度補正処理を行ってもよいし、角速度検出装置411~413及び加速度検出装置421~423の各々の検出動作、例えば検出周期等を制御してもよい。
【0185】
通信回路450は、信号処理回路430の処理によって得られたパケットデータ、すなわち時刻情報付きの慣性データを受け取って、当該パケットデータをあらかじめ決められた通信フォーマットに合わせたシリアルデータに変換し、外部に送信する。
【0186】
なお、角速度検出装置411~413が出力する3軸角速度信号及び加速度検出装置421~423が出力する3軸加速度信号は、デジタル信号であってもよい。また、本実施形態の慣性計測装置400は、3つの角速度検出装置411~413と3つの加速度検出装置421~423とを含むが、これらのうちの少なくとも1つを含めばよい。
【0187】
本実施形態の慣性計測装置400において、加速度検出装置421~423の少なくとも何れか又は角速度検出装置411~413の少なくとも何れかとして、上記の各実施形態又は各変形例の物理量検出装置1が適用される。本実施形態の慣性計測装置400によれば、加速度検出装置421~423の少なくとも何れか又は角速度検出装置411~413の少なくとも何れかとして、診断時の物理量検出素子への突入電流を低減させることが可能な物理量検出装置1が適用されるので、高い信頼性を達成することができる。
【0188】
2-2.移動体測位装置
図18は、電子機器の一例である本実施形態の移動体測位装置の構成例を示す図である。
図18に示されるように、本実施形態の移動体測位装置500は、センサーモジュール510、処理部520、操作部530、記憶部540、表示部550、音出力部560及び通信部570を含んで構成されており、各種の移動体に搭載される。なお、本実施形態の移動体測位装置500は、
図18に示される構成要素の一部を省略または変更してもよいし、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0189】
センサーモジュール510は、慣性計測装置511と衛星信号受信部512とを含む。
【0190】
慣性計測装置511は、x軸、y軸及びz軸の3軸回りに生じる角速度をそれぞれ検出する不図示の3つの角速度検出装置と、x軸、y軸及びz軸の3軸回りに生じる加速度をそれぞれ検出不図示の3つの加速度検出装置と、を含む。そして、センサーモジュール510は、3つの角速度検出装置によって検出された3軸角速度信号及び3つの加速度検出装置によって検出された3軸加速度信号に対して、A/D変換処理、取り付け角誤差の補正処理等の所定の処理を行う。さらに、センサーモジュール510は、所定の処理を行って得られた慣性データ、すなわち3軸角速度データ及び3軸加速度データを処理部520に出力する。慣性計測装置511として、上記の実施形態の慣性計測装置400が適用される。
【0191】
衛星信号受信部512は、不図示のアンテナを介して、GPS(Global Positioning System)衛星等の測位用衛星から、測位用情報として、当該測位用衛星の軌道情報や時刻情報等を含む航法メッセージが重畳された衛星信号である電波を受信する。衛星信号受信部512は、例えば3つ以上の測位用衛星からそれぞれ送信された衛星信号を受信し、例えば公知の技術により、受信した各衛星信号に重畳されている航法メッセージを復調し、各航法メッセージを処理部520に出力する。なお、衛星信号受信部512は、GPS以外の全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の測位用衛星やGNSS以外の測位用衛星からの衛星信号を用いてもよいし、WAAS(Wide Area Augmentation System)、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)等の衛星測位システムのうち1つ、あるいは2つ以上のシステムの測位用衛星からの衛星信号を利用してもよい。
【0192】
図18では、慣性計測装置511と衛星信号受信部512とは、センサーモジュール510に含まれているが、センサーモジュール510として一体化されていなくてもよい。すなわち、慣性計測装置511と衛星信号受信部512とは1つのパッケージに収容されていなくてもよい。
【0193】
操作部530は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号を処理部520に出力する。
【0194】
記憶部540は、処理部520が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶するROM(Read Only Memory)や、処理部520の作業領域として用いられ、ROMから読み出されたプログラムやデータ、操作部530から入力されたデータ、処理部520が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)を含む。
【0195】
表示部550は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、電気泳動ディスプレイ等により構成される表示装置であり、処理部520から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
【0196】
音出力部560は、スピーカー等の音を出力する装置である。
【0197】
通信部570は、処理部520と外部装置との間のデータ通信を成立させるための各種制御を行う。
【0198】
処理部520は、記憶部540に記憶されているプログラムに従い、各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、処理部520は、慣性計測装置511から慣性データを取得し、衛星信号受信部512から航法メッセージを取得し、取得したこれらのデータや操作部530からの操作信号に応じた各種の処理、外部装置とデータ通信を行うために通信部570を制御する処理、表示部550に各種の情報を表示させるための表示信号を送信する処理、音出力部560に各種の音を出力させる処理等を行う。
【0199】
特に、本実施形態では、処理部520は、記憶部540に記憶されているプログラムを実行することにより、姿勢算出部521、位置算出部522及び位置補正部523の各部として機能する。
【0200】
姿勢算出部521は、慣性計測装置511から出力される慣性データに基づいて、例えば公知の手法により、移動体測位装置500が搭載される移動体の姿勢を算出する。
【0201】
位置算出部522は、衛星信号受信部512から出力される航法メッセージに基づいて、移動体の位置を算出する。具体的には、位置算出部522は、衛星信号受信部512から出力される3つ以上の航法メッセージに含まれる衛星信号の発信時刻や受信時の電波伝搬遅れ等の情報を用いて、移動体測位装置500が搭載される移動体と3つ以上の測位用衛星との各距離を算出する。そして、位置算出部522は、算出した距離から移動体の位置を算出する。
【0202】
位置補正部523は、姿勢算出部521が算出した移動体の姿勢に基づいて、位置算出部522が算出した移動体の位置を補正する。例えば、位置補正部523は、移動体の姿勢から移動体の水平面に対する傾斜角度を算出し、算出した傾斜角度に基づいて、移動体の水平面上の位置を移動体が移動する面における位置に補正してもよい。
【0203】
処理部520は、移動体の位置や姿勢等の情報を、表示部550に表示させ、あるいは音出力部560から出力させ、あるいは、通信部570を介して外部装置に送信する。
【0204】
なお、衛星信号受信部512が各衛星信号を受信して航法メッセージを復調し、位置算出部522が航法メッセージを用いて移動体と各測位用衛星との距離を算出して移動体の位置を算出しているが、衛星信号受信部512が、移動体と各測位用衛星との距離を算出してもよいし、移動体の位置を算出してもよい。すなわち、衛星信号受信部512が、位置算出部522が行う処理の少なくとも一部を行ってもよい。
【0205】
本実施形態の移動体測位装置500によれば、慣性計測装置511として、高い信頼性を達成することが可能な慣性計測装置400が適用されるので、例えば、高い信頼性で移動体の位置や姿勢等を測定することができる。
【0206】
2-3.様々な電子機器の形態例
図19は、本実施形態の電子機器の機能ブロック図の一例である。
図19に示されるように、本実施形態の電子機器600は、物理量検出装置610、演算処理装置620、操作部630、ROM640、RAM650、通信部660、表示部670、音出力部680を含んで構成されている。なお、本実施形態の電子機器600は、
図19に示される構成要素の一部を省略または変更してもよいし、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0207】
物理量検出装置610は、1軸又は複数軸に生じる物理量をそれぞれ検出し、物理量信号を演算処理装置620に出力する。物理量検出装置610として、上記の各実施形態又は各変形例の物理量検出装置1が適用される。
【0208】
演算処理装置620は、ROM640等に記憶されているプログラムに従い、各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、演算処理装置620は、物理量検出装置610から出力された物理量信号に基づいて各種の計算処理や制御処理等の演算処理を行う。また、演算処理装置620は、操作部630からの操作信号に応じた各種の処理、外部とデータ通信を行うために通信部660を制御する処理、表示部670に各種の情報を表示させるための表示信号を送信する処理、音出力部680に各種の音を出力させる処理等を行う。
【0209】
操作部630は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号を演算処理装置620に出力する。
【0210】
ROM640は、演算処理装置620が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。
【0211】
RAM650は、演算処理装置620の作業領域として用いられ、ROM640から読み出されたプログラムやデータ、操作部630から入力されたデータ、演算処理装置620が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶する。
【0212】
通信部660は、演算処理装置620と外部装置との間のデータ通信を成立させるための各種制御を行う。
【0213】
表示部670は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、電気泳動ディスプレイ等により構成される表示装置であり、演算処理装置620から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
【0214】
音出力部680は、スピーカー等の音を出力する装置である。
【0215】
本実施形態の電子機器600によれば、物理量検出装置610として、診断時の物理量検出素子への突入電流を低減させることが可能な物理量検出装置1が適用されるので、例えば、物理量の変化に基づく処理、例えば姿勢に応じた制御等を高い信頼性で行うことができる。
【0216】
電子機器600としては種々の電子機器が考えられる。例えば、地震計、作業用ロボット、ヘルスモニタリング装置、無人運転装置、パーソナルコンピューター(例えば、モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター、タブレット型パーソナルコンピューター)、携帯電話機などの移動体端末、ディジタルカメラ、インクジェットプリンター等のインクジェット式吐出装置、ルーターやスイッチ等のストレージエリアネットワーク機器、ローカルエリアネットワーク機器、移動体端末基地局用機器、テレビ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ゲーム用コントローラー、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS(point of sale)端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、ヘッドマウントディスプレイ、モーショントレース、モーショントラッキング、モーションコントローラー、PDR(歩行者位置方位計測)等が挙げられる。
【0217】
図20は、電子機器600の一例であるスマートフォンの外観の一例を示す図であり、
図21は、電子機器600の一例としての腕装着型の携帯機器の外観の一例を示す図である。
図20に示される電子機器600であるスマートフォンは、操作部630としてボタンを、表示部670としてLCD(Liquid Crystal Display)を備えている。
図21に示される電子機器600である腕装着型の携帯機器は、操作部630としてボタン及び竜頭を、表示部670としてLCDを備えている。これらの電子機器600は、物理量検出装置610として、診断時の物理量検出素子への突入電流を低減させることが可能な物理量検出装置1が適用されるので、物理量の変化に基づく処理、例えば姿勢に応じた表示制御などを高い信頼性で行うことができる。
【0218】
更に、電子機器600の一例として携帯型電子機器の1つである腕時計型の活動計(アクティブトラッカー)がある。腕時計型の活動計は、バンド等によって手首等の部位に装
着され、デジタル表示の表示部を備え無線通信が可能である。上記の各実施形態又は各変形例の物理量検出装置1は、腕時計型の活動計に組み込まれている。
【0219】
表示部670を構成する液晶ディスプレイ(LCD)では、種々の検出モードに応じて、例えば、GPSや地磁気センサーを用いた位置情報、移動量や加速度センサーや角速度センサーなどを用いた運動量などの運動情報、脈波センサーなどを用いた脈拍数などの生体情報、もしくは現在時刻などの時刻情報などが表示される。
【0220】
図22は、携帯型の電子機器600の実施形態に係るリスト機器800の平面図である。リスト機器800は、ランニングウォッチ、ランナーズウォッチ、デュアスロンやトライアスロン等マルチスポーツ対応のランナーズウォッチ、アウトドアウォッチ、及び衛星測位システム、例えば、GPSを搭載したGPSウォッチ、等の腕時計型の活動計に広く適用できる。
【0221】
リスト機器800は、ユーザーの所与の部位、例えば手首に装着され、ユーザーの位置情報や運動情報などを検出することができる。リスト機器は、ユーザーに装着されて位置情報や運動情報などを検出する機器本体810と、機器本体810に取り付けられ機器本体810をユーザーに装着するための第1のバンド部821及び第2のバンド部822と、を含む。なお、リスト機器800には、ユーザーの位置情報や運動情報に加えて、例えば脈波情報などの生体情報を検出する機能や時刻情報などを取得する機能を設けることができる。
【0222】
機器本体810は、ユーザーへの装着側にケースとしての不図示のボトムケースが配置され、ユーザーへの装着側と反対側には、表側に開口する開口部を有するケースとしてのトップケース830が配置されている。ここで、ボトムケースとトップケース830とによって、ケースが構成される。機器本体810の表側のトップケース830に位置する開口部の外側には、ベゼル840が設けられるとともに、このベゼル840の内側にベゼル840と並んで配置されて内部構造を保護する天板部分あるいは外壁としての風防板850が設けられている。風防板850は、例えば、ガラス板であり、透光性カバーとして機能し、トップケース830の開口部を塞ぐように配置されている。機器本体810のトップケース830の側面には、複数の操作部871としての操作ボタンが設けられている。なお、ベゼル840には、表側から視認可能な表示を設けることができる。
【0223】
また、機器本体810は、風防板850の直下に配置されている液晶ディスプレイ(LCD)などで構成される表示部874と、風防板850の外縁部分と表示部874との間に配置されている吸湿部材860と、を有しており、表示部874及び吸湿部材860はケースに収容されている。なお、吸湿部材860には、表側から視認可能な表示を設けることができる。機器本体810は、風防板850を介して、表示部874の表示や吸湿部材860の表示をユーザーが閲覧可能な構成としてもよい。つまり本実施形態のリスト機器800では、検出した位置情報や運動情報、或いは時刻情報等の種々の情報を表示部874に表示し、当該表示を機器本体810のトップ側からユーザーに提示するものであってもよい。また、ボトムケースの両側には、第1のバンド部821及び第2のバンド部822との接続部である不図示の一対のバンド装着部が設けられている。
【0224】
図23は、リスト機器800の機能ブロック図の一例である。
図23に示すように、リスト機器800は、処理部870、GPSセンサー880、地磁気センサー881、圧力センサー882、加速度センサー883、角速度センサー884、脈拍センサー885、温度センサー886、操作部871、計時部872、記憶部873、表示部874、音出力部875、通信部876、バッテリー877などを含んで構成されており、これらの各部はケースに収容されている。但し、リスト機器800の構成は、これらの構成要素の一
部を削除又は変更し、あるいは他の構成要素を追加したものであってもよい。
【0225】
通信部876は、リスト機器800と他の情報端末との間の通信を成立させるための各種制御を行う。通信部876は、例えば、Bluetooth(登録商標)(BTLE:Bluetooth Low
Energyを含む)、Wi-Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)、Zigbee(登録商標)、NFC(Near field communication)、ANT+(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応した送受信機や通信部876はUSB(Universal Serial Bus)等の通信バス規格に対応したコネクターを含んで構成される。
【0226】
処理部870は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。処理部870は、記憶部873に格納されたプログラムと、操作部871から入力された信号とに基づき、各種の処理を実行する。処理部870による処理には、GPSセンサー880、地磁気センサー881、圧力センサー882、加速度センサー883、角速度センサー884、脈拍センサー885、温度センサー886、計時部872の各出力信号に対するデータ処理、表示部874に画像を表示させる表示処理、音出力部875に音を出力させる音出力処理、通信部876を介して情報端末と通信を行う通信処理、バッテリー877からの電力を各部へ供給する電力制御処理などが含まれる。
【0227】
処理部870は、高精度のGPS機能により計測開始からのユーザーが移動した合計距離を計測する。また、処理部870は、距離計測の結果から、ユーザーの現在の走行ペースを計測し表示する。また、処理部870は、ユーザーの走行開始から現在までの平均スピードを算出し表示する。また、処理部870は、GPS機能により、標高を計測し表示する。また、処理部870は、GPS電波が届かないトンネル内などでもユーザーの歩幅を計測し表示する。また、処理部870は、ユーザーの1分あたりの歩数、すなわちピッチを計測し表示する。また、処理部870は、脈拍センサーによりユーザーの心拍数を計測し表示する。また、処理部870は、ユーザーの山間部でのトレーニングやトレイルランにおいて、地面の勾配を計測し表示する。また、処理部870は、事前に設定した一定距離や一定時間を走った時に、自動でラップ計測を行う。また、処理部870は、ユーザーの消費カロリーを表示する。また、処理部870は、ユーザーの運動開始からの歩数の合計を表示する。
【0228】
上記の各実施形態又は各変形例の物理量検出装置1を含む加速度センサー883は、互いに交差する、理想的には直交する3軸方向の各々の加速度を検出し、検出した3軸加速度の大きさ及び向きに応じた加速度信号を出力する。あるいは、上記の各実施形態又は各変形例の物理量検出装置1を含む角速度センサー884は、互いに交差する、理想的には直交する3軸方向の各々の角速度を検出し、検出した3軸角速度の大きさ及び向きに応じた角速度信号を出力する。
【0229】
なお、上述したリスト機器800は、衛星測位システムとしてGPS(Global Positioning System)を利用しているが、他の全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用してもよい。例えば、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)、等の衛星測位システムのうち1又は2以上を利用してもよい。また、衛星測位システムの少なくとも1つにWAAS(Wide Area Augmentation System)、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)等の静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS:Satellite-based Augmentation System)を利用してもよい。
【0230】
3.移動体
図24は、本実施形態の移動体の一例である自動車の構成を示す斜視図である。
図24に示すように、自動車1500には上記の各実施形態又は各変形例の物理量検出装置1が搭載されており、例えば、物理量検出装置1によって車体1501の姿勢を検出することができる。物理量検出装置1から出力される物理量信号は、車体の姿勢を制御する姿勢制御部としての車体姿勢制御装置1502に供給され、車体姿勢制御装置1502は、その信号に基づいて車体1501の姿勢を検出し、検出結果に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪1503のブレーキを制御したりすることができる。また、物理量検出装置1は、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、自動運転用慣性航法の制御機器、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。
【0231】
また、移動体に適用される物理量検出装置1は、上記の例示の他にも、例えば、二足歩行ロボットや電車などの姿勢制御、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター、及びドローンなどの遠隔操縦あるいは自律式の飛行体の姿勢制御、農業機械、もしくは建設機械などの姿勢制御において利用することができる。以上のように、各種移動体の姿勢制御の実現にあたって、物理量検出装置1及びそれぞれの制御部が組み込まれる。
【0232】
このような移動体は、診断時の物理量検出素子への突入電流を低減させることが可能な物理量検出装置1を含んでいるので、制御部による物理量の変化に基づく姿勢制御等を高い信頼性で行うことができる。
【0233】
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0234】
上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0235】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0236】
1…物理量検出装置、2X,2Y,2Z…第1容量形成部、3X,3Y,3Z…第2容量形成部、5…構造体、7…パッケージ、10…ベース部、11…第1の基材、12…第2の基材、13…第3の基材、14…封止部材、15…蓋体、16…外部端子、17…収容空間、18…樹脂接着材、19…内部端子、20…物理量検出素子、20r…下面、21x…X軸センサー部、21y…Y軸センサー部、21z…Z軸センサー部、22…ベース基板、22f…上面、23…蓋部、24…ガラスフリット、25…容器、26…溶融金属、27…封止孔、29…接続端子、40…物理量検出回路、41…接着層、42,43…ボンディングワイヤー、45…信号処理部、46…出力部、101X,101Y,101Z,102X,102Y,102Z…スイッチ、110…制御回路、111…マルチプレクサー、112…Q/Vアンプ、113…プログラマブルゲインアンプ、114X,114Y,114Z…スイッチトキャパシターフィルター回路、115…マルチプレクサー
、116…A/D変換回路、117…デジタルフィルター、118…発振回路、119…駆動回路、120…インターフェース回路、130…記憶部、131…レジスター、132…不揮発性メモリー、140…診断電圧出力回路、141…診断電圧発生回路、142…電流制限回路、150…抵抗、160…ツェナーダイオード、161…第1トランジスター、162…第2トランジスター、163…第1抵抗、164…第2抵抗、165…第3抵抗、201…凹部、202,203,204…マウント部、205,206,207…溝部、210…素子部、220…固定電極部、221…第1固定電極部、222…第1幹部、223,223’,223”…第1固定電極指、224…第1幹部支持部、224a…接合部、231…第2固定電極部、232…第2幹部、233,233’,233”…第2固定電極指、234…第2幹部支持部、234a…接合部、250…可動部支持部、251…接合部、260…可動部、261…枠部、262…第1Y軸延在部、263…第1X軸延在部、264…第2Y軸延在部、265…第2X軸延在部、266…第1突出部、267…第2突出部、268…第1開口部、269…第2開口部、270,274…バネ部、270x,270y…部分、271,272…バネ片、280…可動電極部、281…第1可動電極部、282,282’,282”…第1可動電極指、291…第2可動電極部、292,292’,292”…第2可動電極指、301,302,303…配線、316…凹部、318…ポスト部、330…可動体、330a…第1シーソー片、330b…第2シーソー片、331…第1可動電極部、332…第2可動電極部、333,334…端面、335…貫通孔、340…第1連結部、342…第2連結部、350…支持部、360…第1固定電極部、362…第2固定電極部、364…第3固定電極部、400…慣性計測装置、411,412,413…角速度検出装置、421,422,423…加速度検出装置、430…信号処理回路、440…記憶部、450…通信回路、500…移動体測位装置、510…センサーモジュール、520…処理部、521…姿勢算出部、522…位置算出部、523…位置補正部、530…操作部、540…記憶部、550…表示部、560…音出力部、570…通信部、600…電子機器、610…物理量検出装置、620…演算処理装置、630…操作部、640…ROM、650…RAM、660…通信部、670…表示部、680…音出力部、800…リスト機器、810…機器本体、821…第1のバンド部、822…第2のバンド部、830…トップケース、840…ベゼル、850…風防板、860…吸湿部材、870…処理部、880…GPSセンサー、881…地磁気センサー、882…圧力センサー、883…加速度センサー、884…角速度センサー、885…脈拍センサー、886…温度センサー、871…操作部、872…計時部、873…記憶部、874…表示部、875…音出力部、876…通信部、877…バッテリー、1500…自動車、1501…車体、1502…車体姿勢制御装置、1503…車輪