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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20221109BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20221109BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20221109BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B60C9/00 D
B60C9/08 N
B60C9/20 L
B60C15/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018133528
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020011548
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 資輝
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-264616(JP,A)
【文献】特開2006-168549(JP,A)
【文献】特開2004-182021(JP,A)
【文献】特開2017-121886(JP,A)
【文献】特開平01-240305(JP,A)
【文献】特開2016-159840(JP,A)
【文献】特開平06-219111(JP,A)
【文献】特開2011-105076(JP,A)
【文献】特開平06-191240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00-9/20,15/00,15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏平率が75%以下である重荷重用空気入りタイヤであって、
トレッド及び前記トレッドの端から径方向内向きに延びる一対のサイドウォールの内側において、一方のビードから他方のビードに向かって延びるカーカスと、
前記トレッドと前記カーカスとの間に位置するベルトと、
前記ベルトの端と前記カーカスとの間に位置する一対のクッション層とを備え、
前記カーカスが少なくとも1枚のカーカスプライを備え、当該カーカスプライが並列した多数のカーカスコードを含み、それぞれのカーカスコードがアラミド繊維からなり、
前記ビードが、コアと、前記コアの径方向外側に位置するエイペックスとを備え、
径方向において、前記クッション層の内端から前記エイペックスの外端までのゾーンがフレキシブルゾーンであり、
前記ベルトの断面高さに対する前記フレキシブルゾーンの径方向長さの比が0.32以上0.45以下であり、
前記ベルトの断面高さに対する、タイヤ最大幅位置から前記エイペックスの外端までの径方向距離の比が、0.13以上0.20以下である、重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カーカスプライが、一方のコアと他方のコアとを架け渡す本体部と、前記本体部に連なり前記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部と、を備え、
ビードベースラインから前記折り返し部の端までの径方向距離が24mm以上30mm以下である、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビードの径方向内側に位置する一対のスチール補強層を備え、
前記スチール補強層が、前記カーカスプライに沿って、前記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返され、
ビードベースラインから軸方向において外側に位置するスチール補強層の外端までの径方向距離が14mm以上20mm以下である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記スチール補強層の外端が前記折り返し部の端よりも径方向内側に位置し、
前記スチール補強層の外端から前記折り返し部の端までの径方向距離が10mm以上である、請求項3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記折り返し部の端における前記エイペックスの厚さが7.5mm以上9.0mm以下である、請求項2から4のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバス等の車両(小型トラック、小型バス等を含む。)に装着されるタイヤ、すなわち重荷重用空気入りタイヤには、大きな荷重が作用する。このため、剛性確保の観点から、このタイヤのカーカスには、スチールコードをカーカスコードとするカーカスプライ、すなわちスチールプライが一般的に用いられる。
【0003】
タイヤのビードの部分には、カーカスプライ等の部材の端が存在する。ビードの部分が動くと、この端に歪が集中し、損傷が生じる恐れがある。このタイヤでは、耐久性の向上の観点から、ビードの部分を補強してその動きを抑制することが検討される(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
特許文献1では、例えば、カーカスプライの折り返し端におけるサイドウォールが所定の厚さを有するようにコントロールする技術が検討されている。
【0005】
特許文献2では、例えば、折り返し部の高さを所定の高さに設定するとともに、この折り返し部の端における、スティフナ(エイペックスとも称される。)と、このスティフナの外側に配置される緩衝ゴムとの厚さをコントロールする技術が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-219111号公報
【文献】特開2002-120521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のスチールプライでカーカスを構成すると、チェーファーにクリースが生じる恐れがある。このクリースチェーファーの発生を防止するには、折り返し部の高さ、そしてビードのエイペックスの高さを確保する必要がある。高さを有するエイペックスを採用すれば、ビードの動きを抑制できるので、耐久性の向上も図れる見込みがある。
【0008】
タイヤの径方向において、ベルトの端部とカーカスとの間に設けられるクッション層の内端からエイペックスの外端までの領域は、フレキシブルゾーンとも称される。このフレキシブルゾーンは、軟質であり、タイヤの撓みに寄与する。
【0009】
偏平率が75%以下であるタイヤでは、サイド部の長さは短い。このため、高さを有するエイペックスを採用すると、フレキシブルゾーンが狭くなる。この場合、サイド部が高い剛性を有するので、タイヤのリムへの組み込みやすさ、すなわちリム組性が低下することが懸念される。局所的に歪振幅が大きい箇所(バットレス付近)には、クラックが発生する恐れもある。
【0010】
環境規制やラベリング制度の導入により、タイヤにおいては、軽量化が求められている。低い高さを有するエイペックスを採用すれば、軽量化を図れる見込みがある。しかし前述したように、耐久性、そしてクリースチェーファーの発生防止の観点から、エイペックスの高さを確保する必要があり、タイヤの質量を十分に低減させることができない状況にある。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、リム組性と耐久性とを確保しながら、軽量化が達成された、重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る好ましい重荷重用空気入りタイヤは、
偏平率が75%以下である重荷重用空気入りタイヤであって、
トレッド及び前記トレッドの端から径方向内向きに延びる一対のサイドウォールの内側において、一方のビードから他方のビードに向かって延びるカーカスと、
前記トレッドと前記カーカスとの間に位置するベルトと、
前記ベルトの端と前記カーカスとの間に位置する一対のクッション層とを備える。
前記カーカスは少なくとも1枚のカーカスプライを備え、当該カーカスプライは並列した多数のカーカスコードを含み、それぞれのカーカスコードはアラミド繊維からなる。
前記ビードは、コアと、前記コアの径方向外側に位置するエイペックスとを備える。
径方向において、前記クッション層の内端から前記エイペックスの外端までのゾーンがフレキシブルゾーンであり、
前記ベルトの断面高さに対する前記フレキシブルゾーンの径方向長さの比は0.32以上0.45以下である。
【0013】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ベルトの断面高さに対する、タイヤ最大幅位置から前記エイペックスの外端までの径方向距離の比は、0.13以上0.20以下である。
【0014】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記カーカスプライは、一方のコアと他方のコアとを架け渡す本体部と、前記本体部に連なり前記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部と、を備える。ビードベースラインから前記折り返し部の端までの径方向距離は、24mm以上30mm以下である。
【0015】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤは、前記ビードの径方向内側に位置する一対のスチール補強層を備える。前記スチール補強層は、前記カーカスプライに沿って、前記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返され、ビードベースラインから軸方向において外側に位置するスチール補強層の外端までの径方向距離は14mm以上20mm以下である。
【0016】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記スチール補強層の外端は前記折り返し部の端よりも径方向内側に位置する。前記スチール補強層の外端から前記折り返し部の端までの径方向距離は10mm以上である。
【0017】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記折り返し部の端における前記エイペックスの厚さは7.5mm以上9.0mm以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の重荷重用空気入りタイヤでは、カーカスコードにアラミド繊維からなるコード(以下、アラミドコードと称される。)が用いられる。これは、発明者が鋭意検討し、カーカスコードにアラミドコードを用いれば、スチールプライと同程度の剛性が確保される上に、エイペックスの高さを従来よりも低い高さに設定してもチェーファークリースの発生が抑えられるという知見を得たことによる。このタイヤでは、エイペックスの外端位置の設定に、スチールプライを採用した、従来のタイヤのような制限はない。
【0019】
このタイヤは、従来のエイペックスに比べて低い高さを有するエイペックスを採用できる。カーカスプライをコアの周りにて折り返して構成される折り返し部の端も、従来の折り返し部の端の位置よりも低い位置に設定できる。その上、アラミドコードはスチールコードに比して軽い。アラミドコードはスチールコードのように錆びることがないので、カーカスの内側に設けられるインナーライナー及びインスレーションを薄くできる。このタイヤでは、十分な軽量化と、転がり抵抗の低減とが図れる。
【0020】
このタイヤでは、フレキシブルゾーンの径方向長さが、ベルトの断面高さの0.32倍から0.45倍までの範囲に設定される。このタイヤでは、偏平率が75%以下であるが、フレキシブルゾーンがサイド部に十分に確保される。サイド部がしなやかに撓むので、このタイヤはリムに組み込みやすい。しかもサイド部、具体的にはバットレス付近の歪が抑えられるので、クラックは生じにくい。さらに折り返し部の端を軸方向においてより内側に配置できるので、折り返し部の端への歪の集中が抑えられる。このタイヤでは、折り返し部の端を起点とする損傷も生じにくい。このタイヤでは、必要なリム組性と耐久性とが確保される。
【0021】
本発明によれば、リム組性と耐久性とを確保しながら、軽量化が達成された、重荷重用空気入りタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、図1のタイヤのサイド部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、例えば、トラック、バス等の重荷重車両(小型トラック、小型バス等を含む。)に装着される。
【0025】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。この図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0026】
図1において、タイヤ2はリムRに組み込まれている。このリムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が正規内圧に調整されている。このタイヤ2には、荷重はかけられていない。
【0027】
本発明においては、タイヤ2をリムR(正規リム)に組み込み、タイヤ2の内圧が正規内圧に調整され、このタイヤ2に荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ2及びタイヤ2の各部の寸法並びに角度は、正規状態で測定される。
【0028】
本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0029】
本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0030】
本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0031】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムR(正規リム)のリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0032】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、ベルト14、一対のクッション層16、インナーライナー18及び一対のスチール補強層20を備える。
【0033】
トレッド4は、その外面22において路面と接触する。トレッド4の外面22はトレッド面である。このタイヤ2では、トレッド4は、ベース部24と、このベース部24の径方向外側に位置するキャップ部26とを備える。ベース部24は、接着性が考慮された架橋ゴムからなる。キャップ部26は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
【0034】
このタイヤ2では、少なくとも3本の周方向溝28がトレッド4に刻まれる。図1に示されたタイヤ2では、4本の周方向溝28がトレッド4に刻まれる。これにより、このトレッド4には5本の陸部30が構成される。これら周方向溝28は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。これら周方向溝28のうち、赤道面の近くに位置する周方向溝28cがセンター周方向溝28cである。軸方向において外側に位置する周方向溝28sが、ショルダー周方向溝28sである。
【0035】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、センター周方向溝28c及びショルダー周方向溝28sの幅は、トレッド面22の一方の端32から他方の端32までの長さで表されるトレッド幅の1.5~5%程度が好ましい。センター周方向溝28c及びショルダー周方向溝28sの深さは、10~20mmが好ましい。
【0036】
図1において、符号PEはこのタイヤ2の赤道である。この赤道は、トレッド面22と赤道面との交点である。両矢印HSは、ビードベースラインからこの赤道PEまでの径方向距離である。この径方向距離HSは、このタイヤ2の断面高さ(JATMA等参照)である。
【0037】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6の外面34は、タイヤ2の側面の一部をなす。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0038】
図1において、符号PWはこのタイヤ2の軸方向外端である。この外端PWは、このタイヤ2の側面34に、模様や文字等の装飾がないと仮定して得られる仮想側面に基づいて特定される。図1において、両矢印WSで示される、一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離は、このタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。この外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置である。
【0039】
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード8は、コア36と、エイペックス38とを備える。コア36は、周方向に延びる。コア36は、スチール製のワイヤーを含む。このタイヤ2では、コア36は略六角形の断面形状を有する。このコア36が、略矩形の断面形状を有するように構成されてもよい。エイペックス38は、コア36の径方向外側に位置する。エイペックス38は、コア36から径方向外向きに延びる。図1において、符号PAはエイペックス38の外端である。
【0040】
エイペックス38は、内側エイペックス38uと外側エイペックス38sとを備える。内側エイペックス38uは、コア36よりも径方向外側に位置する。外側エイペックス38sは、内側エイペックス38uよりも径方向外側に位置する。
【0041】
内側エイペックス38uは、コア36から径方向外向きに延びる。図1に示されたタイヤ2の断面において、内側エイペックス38uは径方向外向きに先細りである。
【0042】
内側エイペックス38uは架橋ゴムからなる。内側エイペックス38uは、外側エイペックス38sよりも硬質である。内側エイペックス38uは、ビード8の部分BD(以下、ビード部BD)の剛性に寄与する。
【0043】
外側エイペックス38sは、内側エイペックス38uから径方向外向きに延びる。このタイヤ2では、外側エイペックス38sは、その中央部分において大きな厚さを有する。図1に示されたタイヤ2の断面において、外側エイペックス38sは中央部分から径方向内向きに先細りであり、この中央部分から径方向外向きに先細りである。
【0044】
外側エイペックス38sは架橋ゴムからなる。外側エイペックス38sは、内側エイペックス38uよりも軟質である。この外側エイペックス38sはビード部BDのしなやかな変形に貢献する。
【0045】
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。このチェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リムRのシートS及びフランジFと接触する。チェーファー10は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0046】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のチェーファー10の内側において、一方のビード8から他方のビード8に向かって延びる。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ40を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ40からなる。
【0047】
図示されないが、カーカスプライ40は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。このタイヤ2のカーカス12は、ラジアル構造を有する。
【0048】
このタイヤ2では、カーカスコードはアラミド繊維からなる。このタイヤ2では、アラミド繊維からなるコード(以下、アラミドコードとも称される。)をカーカスコードとするカーカスプライ40により、カーカス12は構成される。
【0049】
このタイヤ2では、カーカスプライ40はそれぞれのコア36の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このカーカスプライ40は、一方のコア36と他方のコア36とを架け渡す本体部42と、この本体部42に連なりそれぞれのコア36の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部44とを備える。このタイヤ2では、折り返し部44の端44aに歪みが集中することを抑えるために、この折り返し部44の端44aは、径方向において、エイペックス38の外端PAよりも内側に配置される。さらにこの折り返し部44の端44aは、中間層46とストリップ48とで挟まれる。
【0050】
ベルト14は、トレッド4とカーカス12との間に位置する。ベルト14は、カーカス12に積層される。トレッド4は、このベルト14を覆う。
【0051】
このタイヤ2では、ベルト14は3枚のベルトプライ50からなる。このタイヤ2では、ベルト14を構成するベルトプライ50の枚数に特に制限はない。このベルト14の構成は、タイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
【0052】
図示されないが、それぞれのベルトプライ50は並列された多数のベルトコードを含む。これらベルトコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは、赤道面に対して傾斜する。このタイヤ2では、径方向において最も内側に位置するベルトプライ50Aでは、ベルトコードが赤道面に対してなす角度は50°以上70°以下の範囲で設定される。このベルトプライ50Aの径方向外側に位置する、ベルトプライ50B及びベルトプライ50Cでは、ベルトコードが赤道面に対してなす角度は15°以上35°以下の範囲で設定される。
【0053】
このタイヤ2では、3枚のベルトプライ50のうち、ベルトプライ50Aとベルトプライ50Cとの間に位置するベルトプライ50Bが最大の軸方向幅を有する。径方向において最も内側に位置するベルトプライ50Aが、最小の軸方向幅を有する。このタイヤ2では、ベルトコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードが、ベルトコードとして用いられてもよい。
【0054】
図1において、符号PVはビードベースラインからベルト14の外面までの径方向距離が最大になる位置である。この位置PVは、ベルト14の径方向外端である。このタイヤ2では、この位置PVは赤道面上に位置する。この図1において、両矢印Vはビードベースラインから位置PVまでの径方向距離である。本発明においては、この径方向距離Vがベルト14の断面高さである。
【0055】
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端52の部分において、このベルト14とカーカス12との間に位置する。言い換えれば、このクッション層16は、ベルト14の端52とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、架橋ゴムからなる。
【0056】
図1に示されるように、このタイヤ2では、クッション層16は、ベルト14の端52、詳細にはベルトプライ50Bの端52において最大の厚さを有する。このクッション層16は、その最大の厚さを有する部分から軸方向内向きに先細りである。このクッション層16は、その最大の厚さを有する部分から径方向内向きに先細りである。
【0057】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。このタイヤ2では、インナーライナー18はインスレーション54によってカーカス12に接合される。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0058】
それぞれのスチール補強層20は、ビード部BDに位置する。スチール補強層20は、ビード8の径方向内側に位置する。スチール補強層20は、カーカスプライ40に沿って、コア36の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。スチール補強層20の少なくとも一部はカーカスプライ40と接する。スチール補強層20とビード8との間に、カーカスプライ40が位置する。
【0059】
軸方向において内側に位置するスチール補強層20の端56(以下、スチール補強層20の内端56ともいう。)は、径方向において、カーカスプライ40の折り返し部44の端44aの近くに位置する。この図1に示された断面において、スチール補強層20の内端56の位置は径方向において折り返し部44の端44aの位置と一致する。軸方向において外側に位置するスチール補強層20の端58(以下、スチール補強層20の外端58ともいう。)は、径方向において、このカーカスプライ40の折り返し部44の端44aよりも内側に位置する。
【0060】
図示されないが、スチール補強層20は並列した多数のスチールコードを含む。これらスチールコードは、トッピングゴムで覆われる。スチール補強層20は、ビード部BDの曲げ剛性の向上に寄与する。
【0061】
図1において、符号PKはクッション層16の径方向内端である。このタイヤ2では、径方向において、クッション層16の内端PKからエイペックス38の外端PAまでのゾーンは、フレキシブルゾーンである。両矢印Fは、このフレキシブルゾーンの径方向長さである。
【0062】
図1に示されるように、フレキシブルゾーンには、クッション層16及びエイペックス38が存在しない。このフレキシブルゾーンの剛性は、その径方向外側部分の剛性よりも低い。このフレキシブルゾーンの剛性は、その径方向内側部分の剛性よりも低い。
【0063】
タイヤ2の偏平率は、正規状態において得られる、タイヤ2の断面幅WSに対する断面高さHSの比率により表わされる。このタイヤ2では、偏平率は75%以下である。このタイヤ2では、75%を超える偏平率を有するタイヤに比べて、サイドウォール6からチェーファー10までの部分、すなわちサイド部SDの長さに制限がある。偏平率が75%以下であるタイヤ2においては、フレキシブルゾーンの大きさはサイド部SDの剛性に影響する。
【0064】
このタイヤ2では、ベルト14の断面高さVに対するフレキシブルゾーンの径方向長さFの比は0.32以上0.45以下である。この比が0.32以上に設定されることにより、フレキシブルゾーンがサイド部SDに適度な柔軟性を付与する。この比が0.45以下に設定されることにより、タイヤ2を構成する各部材を適切な形状で形成できるとともに、サイド部SDが過度に軟質になることが防止される。このタイヤ2では、サイド部SDの剛性が適切に維持される。
【0065】
前述したように、このタイヤ2では、カーカスコードにアラミドコードが用いられる。これは、発明者が鋭意検討し、アラミドコードによれば、エイペックス38の高さを従来よりも低い高さに設定してもチェーファークリースの発生が抑えられるという知見を得たことによる。このタイヤ2では、エイペックス38の外端PAの位置の設定に、スチールプライを採用した、従来のタイヤのような制限はない。
【0066】
このタイヤ2は、従来のエイペックスに比べて低い高さを有するエイペックス38を採用できる。カーカスプライ40をコア36の周りにて折り返して構成される折り返し部44の端44aも、従来の折り返し部の端の位置よりも低い位置に設定できる。その上、アラミドコードはスチールコードに比して軽い。アラミドコードはスチールコードのように錆びることがないので、カーカス12の内側に設けられるインナーライナー18及びインスレーション54を薄くできる。このタイヤ2では、十分な軽量化と、転がり抵抗の低減とが図れる。
【0067】
このタイヤ2では、フレキシブルゾーンの径方向長さFが、ベルト14の断面高さVの0.32倍から0.45倍までの範囲に設定される。このタイヤ2では、偏平率が75%以下であるが、フレキシブルゾーンがサイド部SDに十分に確保される。サイド部SDがしなやかに撓むので、このタイヤ2はリムRに組み込みやすい。しかもサイド部SD、具体的にはバットレス60付近の歪が抑えられるので、クラックは生じにくい。さらに折り返し部44の端44aを軸方向においてより内側に配置できるので、折り返し部44の端44aへの歪の集中が抑えられる。このタイヤ2では、折り返し部44の端44aを起点とする損傷も生じにくい。このタイヤ2では、必要なリム組性と耐久性とが確保される。
【0068】
このタイヤ2では、リム組性と耐久性とを確保しながら、軽量化が図れる。
【0069】
図1において、両矢印Hはタイヤ2の最大幅位置PWからエイペックス38の外端PAまでの径方向距離である。両矢印HWは、ビードベースラインから最大幅位置PWまでの径方向距離である。
【0070】
このタイヤ2では、ベルト14の断面高さVに対する、タイヤ2の最大幅位置PWからエイペックス38の外端PAまでの径方向距離Hの比は0.13以上が好ましく、0.20以下が好ましい。この比が0.13以上に設定されることにより、エイペックス38の高さが適切に維持される。フレキシブルゾーンがサイド部SDに十分に確保されるので、このタイヤ2はリムRに組み込みやすい。この比が0.20以下に設定されることにより、エイペックス38がビード部BDの剛性に寄与する。このタイヤ2では、良好なビード耐久性が維持される。
【0071】
このタイヤ2では、フレキシブルゾーンは径方向において最大幅位置PWを跨ぐように配置される。このタイヤ2では、ビードベースラインから最大幅位置PWまでの径方向距離HWはベルト14の断面高さVの0.5倍から0.6倍の範囲に設定される。このタイヤ2では、最大幅位置PWよりも径方向外側部分における撓みと、最大幅位置PWよりも径方向内側部分における撓みとがバランスよく整えられる。フレキシブルゾーンがサイド部SDのしなやかな撓みに効果的に寄与するので、このタイヤ2はリムRに組み込みやすい。バットレス60付近の歪が抑えられるので、クラックも生じにくい。このタイヤ2では、必要なリム組性と耐久性とが確保される。この観点から、このタイヤ2では、ベルト14の断面高さVに対する、ビードベースラインから最大幅位置PWまでの径方向距離HWの比は、0.5以上が好ましく、0.6以下が好ましい。
【0072】
図2には、図1のタイヤ2のビード部BDが示される。この図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0073】
図2において、両矢印Cは、ビードベースラインから折り返し部44の端44aまでの径方向距離である。両矢印Eは、ビードベースラインからスチール補強層20の外端58までの径方向距離である。
【0074】
このタイヤ2では、ビードベースラインから折り返し部44の端44aまでの径方向距離Cは24mm以上が好ましく、30mm以下が好ましい。この距離Cが24mm以上に設定されることにより、折り返し部44の長さが十分に確保される。本体部42に生じる張力によって折り返し部44が引き抜かれることが防止される。このタイヤ2では、ビード部BDの損傷が効果的に防止される。前述したように、このタイヤ2では、折り返し部44の端44aに歪みが集中することを抑えるために、この折り返し部44の端44aは、径方向において、エイペックス38の外端PAよりも内側に配置される。そこで、この距離Cが30mm以下に設定されることにより、フレキシブルゾーンの確保を考慮して、エイペックス38の外端PAが適正な位置に配置される。このタイヤ2は、必要なリム組性を確保しつつ、耐久性の向上を図ることができる。
【0075】
このタイヤ2では、ビードベースラインからスチール補強層20の外端58までの径方向距離Eは14mm以上が好ましく、20mm以下が好ましい。この距離Eが14mm以上に設定されることにより、スチール補強層20がビード部BDの剛性向上に貢献できる。このタイヤ2では、良好なビード耐久性が維持される。この距離Eが20mm以下に設定されることにより、スチール補強層20による質量への影響が抑えられる。そしてスチール補強層20の外端58への歪みの集中が抑えられるので、この場合においても、良好なビード耐久性が維持される。
【0076】
前述したように、このタイヤ2では、スチール補強層20の外端58は、径方向において、カーカスプライ40の折り返し部44の端44aよりも内側に位置する。このタイヤ2では、スチール補強層20の外端58は、折り返し部44の端44aから離して配置される。このタイヤ2では、ビード部BDに生じる歪みが効果的に分散される。この観点から、このタイヤ2では、スチール補強層20の外端58は、カーカスプライ40の折り返し部44の端44aよりも径方向内側に位置し、このスチール補強層20の外端58から折り返し部44の端44aまでの径方向距離は10mm以上が好ましい。歪みの分散の観点から、この径方向距離は大きいほど好ましいが、タイヤ2の構造上の制約から、この径方向距離の上限は20mmである。なお、このスチール補強層20の外端58から折り返し部44の端44aまでの径方向距離は、前述の、径方向距離Cと径方向距離Eとの差(C-E)により表わされる。
【0077】
図2において、両矢印taは、折り返し部44の端44aにおけるエイペックス38の厚さである。この厚さtaは、折り返し部44の端44aから本体部42までの長さで表される。このタイヤ2では、この厚さtaには、ストリップ48の厚さも含まれる。この厚さtaは、本体部42の法線に沿って計測される。
【0078】
このタイヤ2では、折り返し部44の端44aにおけるエイペックス38の厚さtaは7.5mm以上が好ましく、9.0mm以下が好ましい。この厚さtaが7.5mm以上に設定されることにより、エイペックス38がビード部BDの剛性向上に寄与する。このタイヤ2では、良好なビード耐久性が得られる。この厚さtaが9.0mm以下に設定されることにより、折り返し部44の端44aが軸方向においてより内側に配置される。このタイヤ2では、折り返し部44の端44aへの歪みの集中が抑えられるので、この折り返し部44の端44aを起点とする損傷の発生が防止される。この場合においても、このタイヤ2は、ビード耐久性の向上を図ることができる。エイペックス38のボリュームが低減されるので、このタイヤ2は、軽量化と転がり抵抗の低減とを図ることができる。
【0079】
図2において、両矢印tsは外側エイペックス38sの厚さである。この厚さtsは、前述の厚さtaの計測のための法線に沿って計測される。この厚さtsは、折り返し部44の端44aにおける外側エイペックス38sの厚さである。
【0080】
このタイヤ2では、折り返し部44の端44aにおけるエイペックス38の大半は内側エイペックス38uよりも軟質な外側エイペックス38sで構成される。このタイヤ2では、エイペックス38は折り返し部44の端44aへの歪みの集中を効果的に抑える。このタイヤ2では、折り返し部44の端44aを起点とする損傷の発生が防止される。この観点から、この折り返し部44の端44aにおける、エイペックス38の厚さtaに対する外側エイペックス38sの厚さtsの比は、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。エイペックス38の剛性が確保される観点から、この比は0.9以下が好ましい。
【0081】
図2において、両矢印tcは、折り返し部44の端44aにおけるこの折り返し部44から外側部分の厚さである。この厚さtcは、折り返し部44の端44aから側面までの長さで表される。この厚さtcは、側面34の法線に沿って計測される。
【0082】
このタイヤ2では、本体部42と折り返し部44との間の間隔が径方向外側ほど狭まるように折り返し部44は配置される。このため、このタイヤ2では、折り返し部44の端44aにおいて、エイペックス38は折り返し部44から外側部分よりも薄い。このタイヤ2では、折り返し部44の端44aが軸方向においてより内側に配置されるので、折り返し部44の端44aへの歪みの集中が抑えられる。折り返し部44の端44aを起点とする損傷の発生が防止されるので、このタイヤ2はビード耐久性の向上を図ることができる。この観点から、折り返し部44から外側部分の厚さtcに対する、エイペックス38の厚さtaの比は、0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。この比は、0.8以下が好ましく、0.7以下がより好ましい。
【0083】
前述したように、このタイヤ2では、カーカスコードはアラミドコードからなる。このタイヤ2では、このカーカスコードのコード径は0.8mm以上が好ましく、0.9mm以下が好ましい。このコード径が0.8mm以上に設定されることにより、カーカスコードが適度な強度を有するので、カーカスコードの切断が防止される。このタイヤ2では、必要な耐久性が確保される。このコード径が0.9mm以下に設定されることにより、カーカス12の剛性が適切に維持される。このタイヤ2では、カーカス12によるリム組性への影響が抑えられる。
【0084】
このタイヤ2では、カーカスプライ40の50mm幅に含まれるカーカスコードの本数は20本以上が好ましく、40本以下が好ましい。この本数が20本以上に設定されることにより、カーカスコードに作用する荷重が適切に維持される。カーカスコードの切断が防止されるので、このタイヤ2では、必要な耐久性が確保される。この本数が40本以下に設定されることにより、カーカス12の剛性が適切に維持される。このタイヤ2では、カーカス12によるリム組性への影響が抑えられる。
【0085】
図1において、両矢印tiは赤道面におけるインナーライナー18及びインスレーション54の合計厚さである。
【0086】
前述したように、アラミドコードはスチールコードのように錆びることがないので、このタイヤ2はカーカス12の内側に設けられるインナーライナー18及びインスレーション54を薄くできる。このタイヤ2では、軽量化及び転がり抵抗の低減の観点から、合計厚さtiは2.5mm以下が好ましい。タイヤ2の内圧保持の観点から、この合計厚さtiは1.5mm以上が好ましい。なお、このタイヤ2では、合計厚さtiに対する、インナーライナー18の厚さの比は、0.3倍から0.7倍の範囲で適宜設定される。
【0087】
本発明によれば、リム組性と耐久性とを確保しながら、軽量化が達成された、重荷重用空気入りタイヤ2が得られる。特に、本発明は、偏平率が75%以下で、断面幅WSが225mm以下で、ロードインデックスが129以下のチューブレスタイプの重荷重用空気入りタイヤ2において、顕著な効果を奏する。
【0088】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【実施例
【0089】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0090】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=215/75R17.5)を得た。
【0091】
この実施例1の偏平率は75%であった。カーカスコードには、アラミド繊維からなるコードが用いられた。このことが、表の「カーカスコード」の欄に「A」で表されている。このカーカスコードのコード径は0.87mmであった。ベルトの断面高さVに対するフレキシブルゾーンの径方向長さFの比(F/V)は0.35であった。
【0092】
この実施例1では、ベルトの断面高さVに対する、タイヤ最大幅位置PWからエイペックスの外端PAまでの径方向距離Hの比(H/V)は0.17であった。ビードベースラインから折り返し部の端までの径方向距離Cは28mmであった。ビードベースラインからスチール補強層の外端までの径方向距離Eは18mmであった。したがって径方向距離Cと径方向距離Eとの差(C-E)は10mmであった。インナーライナーとインスレーションの合計厚さtiは2.5mmであった。折り返し部の端におけるエイペックスの厚さtaは7.5mmであった。
【0093】
[比較例1]
コード径、比(F/V)、比(H/V)、距離C、距離E、厚さti及び厚さtaを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。この比較例1は、従来のタイヤにおいて、カーカスコードにアラミドコード(コード径=0.76mm)を採用したタイヤである。
【0094】
[比較例2]
カーカスコードにスチールコード(コード径=0.85mm)を用いた他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。カーカスコードにスチールコードを用いたことが、表の「カーカスコード」の欄に「S」で表されている。
【0095】
[実施例2-6]
比(F/V)及び比(H/V)を下記の表1及び2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-6のタイヤを得た。
【0096】
[実施例7]
距離C、距離E、差(C-E)、厚さti及び厚さtaを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7のタイヤを得た。
【0097】
[実施例8]
距離E、差(C-E)、厚さti及び厚さtaを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8のタイヤを得た。
【0098】
[実施例9]
厚さti及び厚さtaを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例9のタイヤを得た。
【0099】
[実施例10]
厚さtaを下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例10のタイヤを得た。
【0100】
[質量]
試作タイヤの質量を計測した。その結果が、下記の表1及び2に指数で示されている。数値が小さいほど軽量である。
【0101】
[ビード耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=17.5×6.0)に組み込み空気を充填しタイヤの内圧を700kPaに調整した。このタイヤをドラム試験機に装着して、正規荷重の200%の荷重を付与して、時速20km/hの速度でドラム(ドラム径=1707mm)上を走行させた。ビード部に損傷が生じるまでの走行時間を測定した。この結果が下記の表1及び2に指数で表されている。数値が大きいほど走行時間が長く、ビード耐久性に優れる。なお、このビード耐久性では、指数値で60以上であることが合格基準に設定された。
【0102】
[リム組性]
試作タイヤをリム(サイズ=17.5×6.0)に機械組みする際の、タイヤのリムへの組み込みやすさを評価した。この結果が、下記の表1及び2に指数で表されている。数値が大きいほどタイヤをリムに組み込みやすい。
【0103】
[サイドウォールクラック(SWクラック)]
試作タイヤをリム(サイズ=17.5×6.0)に組み込み空気を充填しタイヤの内圧を700kPaに調整した。このタイヤをドラム試験機に装着して、正規荷重の200%の荷重を付与して、時速20km/hの速度でドラム(ドラム径=1707mm)上を600時間走行させた。走行後、タイヤ側面を観察して、サイドウォールクラックの発生状況を確認した。この結果が下記の表1及び2に指数で表されている。数値が大きいほどサイドウォールクラックの発生が抑えられ、耐久性に優れる。
【0104】
[転がり抵抗計数(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件にて転がり抵抗係数を測定した。この結果が下記の表1及び2に指数で表されている。数字が大きいほど、転がり抵抗係数が小さい。
使用リム:17.5×6.0
内圧:700kPa
荷重:14.17kN
走行速度:80km/h
【0105】
[耐クリースチェーファー]
試作タイヤの外観及び試作タイヤの断面を観察し、クリースチェーファーの発生状況を確認した。この結果が下記の表1及び2に指数で表されている。数値が大きいほどクリースチェーファーの発生が抑えられ、耐クリースチェーファーに優れる。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】

【0108】
表1及び2に示されるように、実施例では、リム組性と耐久性とを確保しながら、軽量化が図られていることが確認される。実施例は、比較例に比して評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上説明された、カーカスコードとしてアラミドコードを適用してフレキシブルゾーンを確保する技術は、種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0110】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・チェーファー
12・・・カーカス
14・・・ベルト
16・・・クッション層
18・・・インナーライナー
20・・・スチール補強層
22・・・トレッド面
28・・・周方向溝
30・・・陸部
34・・・側面
36・・・コア
38・・・エイペックス
38u・・・内側エイペックス
38s・・・外側エイペックス
40・・・カーカスプライ
42・・・本体部
44・・・折り返し部
44a・・・折り返し部44の端
54・・・インスレーション
58・・・スチール補強層20の外端
60・・・バットレス
図1
図2