(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】画像形成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20221109BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/08 310
(21)【出願番号】P 2018138959
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 博文
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114718(JP,A)
【文献】特開2017-111393(JP,A)
【文献】特開2016-061879(JP,A)
【文献】特開2012-226369(JP,A)
【文献】特開2012-255832(JP,A)
【文献】特開2016-212302(JP,A)
【文献】特開2012-155210(JP,A)
【文献】特開昭60-107662(JP,A)
【文献】特開2006-047651(JP,A)
【文献】特開2016-075812(JP,A)
【文献】特開2017-215380(JP,A)
【文献】特開2012-226127(JP,A)
【文献】特開2009-223320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/08
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 15/01
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に転写するトナー画像を担持する像担持体と、
前記像担持体の表面にトナー画像を現像する現像部と、
前記現像部にトナーを供給する供給部と、
前記現像部の内部のトナーを排出させるとともに、前記供給部によって前記現像部にトナーを供給させるリフレッシュモードを
、トナー画像の画像面積率における印字枚数ごとに設定されるトナー年齢の分布を表すトナー年齢分布を用いて実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、用紙表面の粗さ情報と、
所定の枚数の印字後の前記現像部内
における前記トナー年齢分布の各年齢のトナーの平均値であるトナー年齢を含むトナーの劣化状態を表す劣化情報と、に基づいて、前記リフレッシュモードにおける前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記リフレッシュモードにおいて、
前記現像部は、用紙に形成するパッチを現像し、
前記制御部は、前記供給量に相当する排出量となるように前記パッチの画像面積を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記リフレッシュモードにおいて、
前記制御部は、前記現像部による前記パッチの現像条件が、画像形成時における現像条件に比べ、単位時間当たりのトナー現像量が多くなるように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像部には、交流電圧が印加され、
前記リフレッシュモードにおいて、
前記制御部は、前記現像部による前記パッチの現像条件が、画像形成時における現像条件に比べ、逆帯電したトナーが現像されやすいデューティ比となるように制御する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記リフレッシュモードにおいて、
前記制御部は、前記現像部の内部のトナー量が画像形成時に必要な最小量を下回るまで排出させた後に、前記供給部によるトナーの供給を行うように制御する
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、さらに、前記リフレッシュモードの実施後に形成する画像の画像面積率に基づいて、
前記リフレッシュモードの実施後における前記供給部
から前記現像部に供給するトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、さらに、前記リフレッシュモードの実施後に形成する画像の各色のトナーの画像面積率に基づいて、前記供給部による各色のトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、さらに、前記リフレッシュモードの実施後に形成する画像濃度に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、さらに、前回の画像形成からの経過時間に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする請求項2から8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、さらに、画像形成装置の内部の温湿度に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする請求項2から9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御部は、ユーザーにより表面に凹凸形状を有する用紙に対する画像形成を指定された場合に、当該画像形成前に前記リフレッシュモードを実行する
ことを特徴とする請求項2から10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
画像形成装置の内部のトナーの噴煙を除去するトナー噴煙除去部を備え、
前記制御部は、前記リフレッシュモードにおいて、前記トナー噴煙除去部による除去力が高くなるように制御する
ことを特徴とする請求項2から11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記パッチの用紙搬送方向における幅が所定の値以上となる場合に、前記パッチを用紙搬送方向に分割して印字する
ことを特徴とする請求項2から12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御部は、直前までに形成した画像のカバレッジの履歴に基づいて、前記現像部におけるトナーの劣化情報を特定する
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御部は、さらに、用紙の坪量情報に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記制御部は、さらに、用紙の抵抗情報に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記粗さ情報は、用紙が表面に凹凸形状を有する用紙であるか否かを表す情報である
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
用紙に転写するトナー画像を担持する像担持体と、前記像担持体の表面にトナー画像を現像する現像部と、前記現像部にトナーを供給する供給部と、を備えた画像形成装置のコンピューターを、
前記現像部の内部のトナーを排出させるとともに、前記供給部によって前記現像部にトナーを供給させるリフレッシュモードを
、トナー画像の画像面積率における印字枚数ごとに設定されるトナー年齢の分布を表すトナー年齢分布を用いて実行する制御部として機能させるためのプログラムであって、
前記制御部は、用紙表面の粗さ情報と、
所定の枚数の印字後の前記現像部内
における前記トナー年齢分布の各年齢のトナーの平均値であるトナー年齢を含むトナーの劣化状態を表す劣化情報と、に基づいて、前記リフレッシュモードにおける前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トナーとキャリアーを含む二成分現像剤を現像剤担持体に担持させて、感光体に形成された静電像を現像する画像形成装置が広く用いられている。
このような画像形成装置においては、感光体に現像した静電像を転写部において用紙に転写するが、エンボス紙のような表面に凹凸のある用紙の場合、用紙への転写時において、凹部において転写電界が小さくなることで白抜けが発生しやすくなるため、表面が滑らかな普通紙などに比べて転写ムラが生じやすい。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1においては、用紙表面の凹部において転写不良の生じやすいエンボス紙への転写性を向上させるため、エンボス紙が利用される際に現像装置内のトナーの帯電量を調整する技術が開示されている。具体的には、エンボス紙に画像形成する前に用紙にパッチ形成をして、帯電量が高くなったトナーを排出させて新しいトナーを補給することで、現像装置内のトナーの帯電量を下げる処理により、濃度ムラや色抜け等の画像不良を抑制することができる。
【0004】
ところで、二成分現像剤を用いる現像装置では、使用された分のトナーを補給装置から補給する一方で、現像装置内でトナーとキャリアーを攪拌しつつ循環させて、トナーとキャリアーを逆極性に摩擦帯電させている。このため、トナー消費量が少ない画像形成が連続すると、現像装置内のトナーの滞在時間が伸びて攪拌を受ける時間が長くなり、トナーが機械的なストレスを受ける。トナーがストレスを受けると、トナーに添加されている外添剤がトナーに埋没・遊離し、トナーの帯電量が低下して現像に必要な帯電量を下回ることがある。この状態をトナー劣化という。トナーが劣化すると、転写不良、かぶり画像等の問題が発生し易くなる。
そこで、劣化したトナーを現像装置から排出させ、新たなトナーを供給するリフレッシュモードが実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現像装置内で長時間撹拌されたトナーは現像されにくいため、トナーの入れ替えに時間を要してしまい、転写性を回復させるのに十分な程度に劣化トナーを排出させるまで、ユーザーを長時間待機させることになる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、現像装置内の劣化したトナーを適切な量除去し、転写性を回復させることが可能な画像形成装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の画像形成装置は、
用紙に転写するトナー画像を担持する像担持体と、
前記像担持体の表面にトナー画像を現像する現像部と、
前記現像部にトナーを供給する供給部と、
前記現像部の内部のトナーを排出させるとともに、前記供給部によって前記現像部にトナーを供給させるリフレッシュモードを、トナー画像の画像面積率における印字枚数ごとに設定されるトナー年齢の分布を表すトナー年齢分布を用いて実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、用紙表面の粗さ情報と、所定の枚数の印字後の前記現像部内における前記トナー年齢分布の各年齢のトナーの平均値であるトナー年齢を含むトナーの劣化状態を表す劣化情報と、に基づいて、前記リフレッシュモードにおける前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記リフレッシュモードにおいて、
前記現像部は、用紙に形成するパッチを現像し、
前記制御部は、前記供給量に相当する排出量となるように前記パッチの画像面積を決定する
ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置において、
前記リフレッシュモードにおいて、
前記制御部は、前記現像部による前記パッチの現像条件が、画像形成時における現像条件に比べ、単位時間当たりのトナー現像量が多くなるように制御する
ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の画像形成装置において、
前記現像部には、交流電圧が印加され、
前記リフレッシュモードにおいて、
前記制御部は、前記現像部による前記パッチの現像条件が、画像形成時における現像条件に比べ、逆帯電したトナーが現像されやすいデューティ比となるように制御する
ことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記リフレッシュモードにおいて、
前記制御部は、前記現像部の内部のトナー量が画像形成時に必要な最小量を下回るまで排出させた後に、前記供給部によるトナーの供給を行うように制御する
ことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、さらに、前記リフレッシュモードの実施後に形成する画像の画像面積率に基づいて、前記リフレッシュモードの実施後における前記供給部から前記現像部に供給するトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項2から6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、さらに、前記リフレッシュモードの実施後に形成する画像の各色のトナーの画像面積率に基づいて、前記供給部による各色のトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項2から7のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、さらに、前記リフレッシュモードの実施後に形成する画像濃度に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項2から8のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、さらに、前回の画像形成からの経過時間に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項2から9のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、さらに、画像形成装置の内部の温湿度に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項2から10のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、ユーザーにより表面に凹凸形状を有する用紙に対する画像形成を指定された場合に、当該画像形成前に前記リフレッシュモードを実行する
ことを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項2から11のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
画像形成装置の内部のトナーの噴煙を除去するトナー噴煙除去部を備え、
前記制御部は、前記リフレッシュモードにおいて、前記トナー噴煙除去部による除去力が高くなるように制御する
ことを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項2から12のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記パッチの用紙搬送方向における幅が所定の値以上となる場合に、前記パッチを用紙搬送方向に分割して印字する
ことを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項1から13のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、直前までに形成した画像のカバレッジの履歴に基づいて、前記現像部におけるトナーの劣化情報を特定する
ことを特徴とする。
【0022】
請求項15に記載の発明は、請求項1から14のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、さらに、用紙の坪量情報に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする。
【0023】
請求項16に記載の発明は、請求項1から15のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、さらに、用紙の抵抗情報に基づいて、前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする。
【0024】
請求項17に記載の発明は、請求項1から16のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記粗さ情報は、用紙が表面に凹凸形状を有する用紙であるか否かを表す情報である
ことを特徴とする。
【0025】
請求項18に記載のプログラムは、
用紙に転写するトナー画像を担持する像担持体と、前記像担持体の表面にトナー画像を現像する現像部と、前記現像部にトナーを供給する供給部と、を備えた画像形成装置のコンピューターを、
前記現像部の内部のトナーを排出させるとともに、前記供給部によって前記現像部にトナーを供給させるリフレッシュモードを、トナー画像の画像面積率における印字枚数ごとに設定されるトナー年齢の分布を表すトナー年齢分布を用いて実行する制御部として機能させるためのプログラムであって、
前記制御部は、用紙表面の粗さ情報と、所定の枚数の印字後の前記現像部内における前記トナー年齢分布の各年齢のトナーの平均値であるトナー年齢を含むトナーの劣化状態を表す劣化情報と、に基づいて、前記リフレッシュモードにおける前記供給部によるトナーの供給量を決定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、現像装置内の劣化したトナーを除去し、高効率で転写性を回復させることが可能な画像形成装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明に係る画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】チャート連続印字時における、転写性の推移を示すグラフである。
【
図5】リフレッシュモード実行時における、転写性の推移を示すグラフである。
【
図6】用紙の種類と転写性との関係を示すグラフである。
【
図7】エンボス紙の凹凸高さと転写性の回復効率との関係を示すグラフである。
【
図8】チャート連続印字時における、トナー年齢分布の変化を説明する図である。
【
図9】リフレッシュモード実行時におけるトナー年齢分布の変化を説明する図である。
【
図10】チャート連続印字時におけるトナー年齢の推移を示すグラフである。
【
図11】エンボス紙の凹凸高さごとの、トナー年齢と転写性との関係を示すグラフである。
【
図12】リフレッシュモード実行時における画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、実施形態に係る画像形成装置1の主要な機能的構成を示すブロック図である。
図1、2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー画像を中間転写ベルト421に転写(一次転写)し、中間転写ベルト421上で4色のトナー画像を重ね合わせた後、用紙Sに転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
【0030】
画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に各色トナー画像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0031】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、記憶部70、通信部80、温湿度検出部90及び制御部100を備えている。
【0032】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して
図2に示す画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。例えば、制御部100は、所定の条件下でリフレッシュモードを実行し、現像装置412内の劣化したトナーを新しいトナーに入れ替えるため、パッチの形成を行って現像装置412内のトナー排出を行う。
【0033】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0034】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0035】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0036】
画像処理部30は、入力されたジョブの画像データ(入力画像データ)に対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データに基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0037】
画像形成部40は、画像処理済みの入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0038】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。
図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0039】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、ドラムクリーニング装置415、トナー供給部416等を備える。
【0040】
感光体ドラム413は、例えばドラム径が80[mm]のアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
なお、感光体ドラム413は、像担持体として機能する。
【0041】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0042】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0043】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー画像を形成する。詳細は後述する。
なお、現像装置412は、現像部として機能する。
【0044】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0045】
トナー供給部416(
図2参照)は、各色のトナーを現像装置412に供給する。なお、トナー供給部416は、制御部100の制御下でその供給量が制御される。
なお、トナー供給部416は、供給部として機能する。
【0046】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0047】
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0048】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー画像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0049】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー画像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0050】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー画像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0051】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー画像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー画像は用紙Sに静電的に転写される。トナー画像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0052】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用しても良い。
【0053】
定着部60は、トナー画像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー画像を定着させる。
【0054】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)があらかじめ設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
【0055】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー画像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において用紙に定着される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0056】
なお、用紙Sは、長尺紙やロール紙であってもよい。この場合、用紙Sは、画像形成装置1と接続された給紙装置(図示せず)に収容されており、給紙装置が保有する用紙Sは、当該給紙装置から用紙給紙口54を介して画像形成装置1へと供給され、搬送経路部53へと送り出される。
【0057】
記憶部70は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブ等により構成される。記憶部70には、画像形成装置1に係る各種設定情報を始めとする各種データが記憶されている。
例えば、記憶部70には、トナー年齢算出のためのトナー年齢分布テーブル71が記憶されている。
また、記憶部70には、リフレッシュモード時のパッチ画像面積テーブル72が記憶されている。
また、記憶部70には、印字履歴(形成した画像の画像面積率、印字枚数など)が逐次記憶される。
また、記憶部70には、紙種情報として、エンボス紙や普通紙などの用紙の種類に基づく用紙表面の粗さ情報、用紙の坪量情報、用紙の抵抗情報、用紙の水分量情報などが記憶されている。
また、記憶部70には、劣化情報として、後述する現像装置412内のトナー年齢が記憶される。
【0058】
通信部80は、例えばLAN(Local Area Network)カード等の通信制御カードで構成され、LAN、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。
【0059】
温湿度検出部90は、画像形成装置1の内部の温度及び湿度を検出し、検出結果を制御部100に出力する。
【0060】
次に、
図3を参照し、現像装置412の構成について詳細に説明する。
図3に示すように、現像装置412は、トナーとキャリアーとを含む現像剤を用いて、感光体ドラム413上に形成された静電潜像を現像することにより、感光体ドラム413上にトナー画像を形成する。現像装置412は、現像ローラー110、供給ローラー120、搬送ガイド部130、攪拌ローラー140及び搬送ローラー150を備える。
【0061】
攪拌ローラー140および搬送ローラー150は、螺旋形状のスクリュー部材である。攪拌ローラー140は、第1の現像剤供給室145に収納されている。搬送ローラー150は、第2の現像剤供給室155に収納されている。攪拌ローラー140および搬送ローラー150は、現像剤を攪拌しながら供給ローラー120へ搬送する。
【0062】
供給ローラー120は、回転可能な供給スリーブと、供給スリーブの内部に配置された供給マグネットロールと、を備え、搬送ローラー150に対向して配置されている。供給マグネットロール内には、磁界を発生させる複数の磁極が配置されている。この磁極が発生する磁界によって、現像剤は、供給スリーブの外周面に担持され、供給スリーブが図中反時計回りに回転することにより、搬送ガイド部130まで搬送される。
【0063】
搬送ガイド部130は、現像ローラー110と供給ローラー120との間に架設され、供給ローラー120から搬送された現像剤を現像ローラー110に供給する。搬送ガイド部130の鉛直上方の面は、平坦面であって、かつ、供給ローラー120から現像ローラー110へ向けて降り斜面をなしている。搬送ガイド部130における供給ローラー120側の端部と供給ローラー120との間には間隙が形成されている。
【0064】
現像ローラー110は、回転可能な現像スリーブ110Aと、現像スリーブ110Aの内部に配置された現像マグネットロール110Bと、を備える。現像ローラー110は、感光体ドラム413に近接して配置され、感光体ドラム413に近接する現像領域115へ現像剤を搬送する。現像スリーブ110Aは、図中反時計回りで回転する。現像スリーブ110Aには、例えば、帯電装置414の帯電極性と同極性、即ちマイナス極性の直流電圧に、交流電圧が重畳された現像バイアスが印加され、これにより、感光体ドラム413に形成された静電潜像上に現像剤を供給し、感光体ドラム413に各色のトナー像を形成する。
現像マグネットロール110B内には、磁界を発生させる複数の磁極が配置されている。搬送ガイド部130における現像ローラー110側の端部と現像スリーブ110Aとの間には、所定の間隙が形成されている。
【0065】
現像スリーブ110Aの近傍には、規制ブレード180が配置されている。規制ブレード180の端部は、現像スリーブ110Aの回転方向において、搬送ガイド部130との近接部よりも下流であって、かつ、現像領域115よりも上流に位置している。規制ブレード180は、図示しない規制ホルダにより支持されている。
【0066】
現像ローラー110の一部、供給ローラー120、搬送ガイド部130、攪拌ローラー140、搬送ローラー150および規制ブレード180は、現像ケーシング190の中に収納されている。現像ケーシング190内には、第1の現像剤供給室145および第2の現像剤供給室155が形成されている。第1の現像剤供給室145と第2の現像剤供給室155とは、隔壁部200により仕切られている。
なお、第1の現像剤供給室145には、トナー供給部416(
図2参照)からトナーが供給される。
【0067】
攪拌ローラー140は、回転することにより第1の現像剤供給室145へ供給されたトナーとキャリアーとを混合攪拌し摩擦帯電する。攪拌ローラー140は、摩擦帯電した現像剤を第2の現像剤供給室155へ搬送する。搬送ローラー150は、回転することにより、攪拌ローラー140から搬送された現像剤を供給ローラー120へ搬送する。
【0068】
供給ローラー120の供給マグネットロールが発生する磁界によって、供給スリーブの外周面上にキャリアーの磁気ブラシが発生して、磁気ブラシに担持されたトナーを含む現像剤の層が供給スリーブの外周面上に形成される。供給スリーブは、図中反時計回りに回転することによって、現像剤を磁界によって当該供給スリーブの外周面に担持しながら、搬送ガイド部130まで搬送する。
【0069】
搬送ガイド部130上の現像剤は、現像ローラー110まで導かれる。現像マグネットロール110Bが発生する磁界によって、現像スリーブ110Aの外周面上に磁気ブラシが発生して、現像剤の層が現像スリーブ110Aの外周面上に形成される。そして、現像スリーブ110Aは、図中反時計回りに回転することにより、現像剤を磁界によって現像スリーブ110Aの外周面に担持しながら、感光体ドラム413に最も接近する現像領域115まで搬送する。その途中で、規制ブレード180が現像剤の層の厚さを規制することにより、一定量の現像剤が現像領域115へ搬送される。現像領域115において、現像剤の層は感光体ドラム413の表面に接触する。現像領域115において、トナーは、現像スリーブ110Aから感光体ドラム413の表面に形成された静電潜像へ静電的に移行する。このようにして、現像装置412は、感光体ドラム413にトナーを供給して静電潜像をトナーによって顕像化する。
【0070】
また、現像装置412は、感光体ドラム413と現像ローラー110の間に発生する飛散トナーを吸引する吸引部210を備えている。
吸引部210は、現像ケーシング190の上蓋の外面に沿って配されるダクト210aと、図示しないファンとを有する。ダクト210aの先端部である吸引口210bは、感光体ドラム413表面の現像ローラー110が近接する位置に設置されている。ダクト210a内の空気はファンにより吸引され、感光体ドラム413と現像ローラー110の間に発生した飛散トナーは、吸引口210bからダクト210a内に取り込まれ、ダクト210aを搬送された後、図示しない回収槽に回収される。
なお、吸引部210のファンは、その回転の開始、停止、及び回転速度の変更などが制御部100によって制御される。
また、吸引部210は、トナー噴煙除去部として機能する。
【0071】
[リフレッシュモード]
続いて、本実施形態に係るリフレッシュモードについて説明する。
リフレッシュモードは、現像装置412内のトナーを強制的に排出させ、新しいトナーを現像装置412に補充することで、現像装置412内の劣化したトナーを新しいトナーに入れ替える動作を行うモードである。
【0072】
(1)画像面積率と転写性の関係
図4は、図中に示す各画像面積率の同一画像を連続印字した場合における、転写性の推移を示す図である。横軸に連続印字枚数を示し、縦軸にエンボス紙に対する転写の精度を0~6の7段階で評価した転写性ランクを示す。なお、転写性ランクは数値が大きい程、転写の精度が高く、数値が小さい程、転写の精度が低く、白抜け等の画像不良が発生していることを示す。
図4から明らかなように、画像面積率が低いと(画像面積率0.5%)、連続印字に伴って転写性が低下するのに対し、画像面積率が高いと(画像面積率10%)、転写性の低下はほとんどみられない。転写性の低下は、現像装置412内でトナーが長期間撹拌され、トナーに添加されている外添剤がトナーに埋没・遊離し、トナーの帯電量が低下したことによるが、画像面積率が高い場合には現像装置412内のトナーの入れ替わりが多いため転写性の低下が抑えられる。
【0073】
図5は、
図4における各画像面積率の画像を8000枚連続印字時後にリフレッシュモードを実行した場合の、転写性の推移を示す図である。横軸に、用紙の搬送方向におけるパッチの長さを表し、縦軸にエンボス紙への転写性ランクを示す。
図5に示すように、転写性の低下が比較的小さい画像面積率5%の画像の印字後のリフレッシュモードに比べて、画像面積率0.5%の画像の印字後のリフレッシュモードにおいては、転写性の回復に必要なパッチの用紙の搬送方向長さが長い。
したがって、転写性の低下が大きい場合には、パッチの画像面積を大きくする必要がある。
【0074】
また、画像形成装置1の内部の温湿度によっても、転写性の回復効率は異なる。温湿度が高いほど転写性が低くなるため、リフレッシュモード時には、温湿度検出部90により高温又は高湿であることが検出された場合には、パッチの画像面積を大きくすることが望ましい。
また、前回の画像形成時からの経過時間が長いほどトナーの劣化が進むため、転写性が低下する。したがって、前回の画像形成時からの経過時間が長いほど、パッチの画像面積を大きくすることが望ましい。
【0075】
(2)紙種と転写性の関係
図6は、紙種毎の同一画像の連続印字時における転写性の推移を示す図である。具体的には、用紙表面に凹凸のない普通紙と、凹凸の溝高さが比較的低い浅溝のエンボス紙と、凹凸の溝高さが比較的高い深溝のエンボス紙のそれぞれに、画像面積率1%の画像を印字したときの転写性ランクを示している。
図6から明らかなように、凹凸の溝高さが高い程、転写性が大きく低下する。これは、二次転写時において二次転写ローラー424に二次転写バイアスが印加されるが、電界は距離に比例するため、溝の高さが高く二次転写ローラー424と用紙の表面との距離のバラつきが大きい深溝の用紙程、用紙に付与される電荷のバラつきが大きくなることにより、転写不良が発生するためである。
【0076】
図7は、リフレッシュモードの実行時の転写性の推移を示す図である。横軸に、用紙の搬送方向におけるパッチの長さを表し、縦軸にエンボス紙への転写性ランクを示す。
図7に示すように、深溝のエンボス紙に対する印字後のリフレッシュモードにおいては、転写性に必要なパッチの用紙の搬送方向長さが長い。したがって、パッチの用紙幅方向の画像面積率を高くして回復効率を向上させる必要がある。
【0077】
なお、紙の凹凸の他、坪量、用紙の電気抵抗、用紙の水分量などによっても、転写性の回復必要なパッチ量が異なる。具体的には、紙種によっても多少異なるが、一般的には坪量が大きい程、電気抵抗が大きい程、水分量が多い程、もともとの転写効率が低いため、転写性を回復の必要性が高い。したがって、このような場合には、リフレッシュモードにおけるパッチ量を多くして回復させることが望ましい。
【0078】
また、エンボス紙に出力する画像の画像面積率や濃度によっても、凹部の転写不良の見えやすさが異なる。例えば、画像面積率については、カバレッジが高い程、濃度については、ベタ画像や低濃度の画像に比べてハーフトーン画像の方が、転写不良が目立ちやすい。したがって、リフレッシュモードの実行後にこのような画像を印字する場合には、リフレッシュモードにおけるパッチ量を多くすることが好ましい。
なお、この場合、トナー各色の画像面積率に基づいて別々に制御することが好ましい。
【0079】
(3)トナー年齢
リフレッシュモードにおいては、現像装置412内のトナー年齢に基づいて、パッチの画像面積率を決定する。ここで、トナー年齢は、ここでは現像装置412内のトナーがどの程度撹拌されているかを指す。
図8は、画像面積率1%のチャートを連続印字した場合の、現像装置412内のトナー年齢分布を示す。1000枚(1Kp)印字する間、現像装置412内で撹拌されたトナーを1Kp才と表記すると、
図8(A)に示すように、印字前に現像装置412内に存在するトナーは全て0Kp才である。
図8(B)に示すように、4000枚印字時の現像装置412内のトナーは、印字前から現像装置412内に存在し、4000枚印字する間撹拌され続けた4Kp才に加え、順次トナーが供給されることによって、3Kp才、2Kp才、1Kp才及び0Kp才が混在している。
図8(C)に示すように、32000枚(32Kp)印字時の現像装置412内には、32Kp才~0Kp才が混在している。
【0080】
一方、リフレッシュモードによって、現像装置412内のトナーの年齢分布は、
図9のように推移する。
図9(A)は、用紙の搬送方向におけるパッチの幅が10000mmに達したときのトナー年齢分布を示し、
図9(B)は、25000mmに達したときのトナー年齢分布を示す。
図9に示すように、リフレッシュモードによって、現像装置412内のトナーは、徐々に撹拌されていないリフレッシュトナーと入れ替わる。
【0081】
図10は、画像面積率1%のチャート印字時における、トナー年齢の推移を示した図である。
ここでのトナー年齢は、トナー年齢分布における各年齢のトナーの平均値である。例えば、現像装置412内のトナーの総量が100gであり、うち4Kp才のトナーが75g、3Kp才、2Kp才及び1Kp才のトナーがそれぞれ5g、0Kp才のトナーが10gとすると、4Kp印字時のトナー年齢は、以下の式(1)のように算出される。
(4[Kp才]*75[g]+3[Kp才]*5[g]+2[Kp才]*5[g]+1[Kp才]*5[g]+0[Kp才]*10[g])/100=3.3Kp才 ・・・(1)
【0082】
したがってトナー年齢は、
図10(A)に示すように、印字に伴って上昇する。一方で、リフレッシュモードを実行すると、
図10(B)に示すように、パッチの用紙搬送方向の幅が長くなるにつれて、トナー年齢は下降する。
【0083】
さらに、トナー年齢とエンボス紙の転写性ランクには
図11に示すような相関がある。
図11に示すように、深溝のエンボス紙は、浅溝のエンボス紙に比べてトナー年齢の上昇に伴う転写性ランクの低下が顕著である。これは、上述したように深溝のエンボス紙の場合は二次転写電位のムラによる転写ムラが発生しやすく、転写性が低下するためである。
【0084】
以上を踏まえ、リフレッシュモードにおいては、直前までの画像の画像面積率及び枚数などの印字履歴に基づいてトナー年齢を算出する。
なお、各画像面積率における、所定の枚数の印字後の現像装置412内のトナー年齢分布は、予め設定されたトナー年齢分布テーブル71として記憶部70に記憶されている。したがって、トナー年齢分布テーブル71を参照して、上記式(1)のようにトナー年齢を算出することができる。
【0085】
さらに、劣化情報としてのトナー年齢と紙種情報とに基づいてパッチの画像面積(用紙の幅方向におけるパッチの画像面積率と、パッチの用紙搬送方向における長さとによって算出される面積)を決定する。具体的には、記憶部70にはトナー年齢及び紙種情報と、パッチの画像面積と、を対応付けたパッチ画像面積テーブル72を保持しており、制御部100は当該テーブルを参照してパッチの画像面積を決定する。また、パッチ画像面積テーブル72は前回の画像形成からの経過時間や、画像形成装置1の内部の温湿度と、パッチの画像面積と、を対応付けたものであってもよい。
【0086】
図12は、本実施形態に係る画像形成装置1の動作を示すフローチャートである。なお、
図12の処理は、制御部100と記憶部70に記憶されているプログラムとの協働により実現される。
【0087】
まず、制御部100は、リフレッシュモードの実行タイミングであるか否かを判断する(ステップS101)。リフレッシュモードの実行タイミングとは、例えば前回の実行から所定の時間が経過したときなど、現像装置412内のトナー年齢が高くなったと想定される時点である。制御部100は、実行タイミングであると判断すると(ステップS101:YES)、ステップS102へと移行するが、実行タイミングではないと判断すると(ステップS101:NO)、ステップS101の処理を繰り返す。
【0088】
ステップS101では、制御部100は、記憶部70に記憶されている印字履歴と紙種情報を取得する(ステップS102)。
なお、印字履歴とは、上述したように直前までの画像の画像面積率及び印字枚数などを指し、紙種情報とは、エンボス紙あるいは普通紙などの用紙の種類、用紙の坪量、用紙の電気抵抗及び用紙の水分量などを指す。
【0089】
続いて、制御部100は、用紙がリフレッシュモードの実施が必要であるか否かを判断する(ステップS103)。この判断は、ステップS102において取得した印字履歴と紙種情報に基づいて行う。制御部100は、リフレッシュモードの実施が必要であると判断すると(ステップS103:YES)、ステップS104へと移行し、必要でないと判断すると(ステップS103:NO)、リフレッシュモードを実行することなく制御を終了する。
【0090】
続いて、制御部100は、トナー年齢を算出する(ステップS104)。トナー年齢は、上記したように、トナー年齢分布テーブル71を参照して算出することができる。
【0091】
次いで、制御部100は、パッチの画像面積を決定する(ステップS105)。
パッチの画像面積は、パッチ画像面積テーブル72に基づいて決定する。即ち、ステップS102で取得した印字履歴及び用紙情報に基づいて、用紙に形成するパッチの用紙幅方向における画像面積率と、パッチの用紙搬送方向の長さを決定する。
【0092】
続いて、制御部100は、現像条件を変更する(ステップS106)。
現像装置412内には、撹拌され転写性が低下した古いトナーと、新しく供給されたトナーとが混在している。リフレッシュモードの効率を上げるには、古いトナーを効率よく排出することが望ましい。しかしながら、新しいトナーに比べて古いトナーは現像性が低下しているため、新しいトナーの方が排出されやすい。
したがって、現像効率が通常の画像形成時よりも高くなるように、現像条件を変更して現像させる。具体的には、現像スリーブ110Aに印加される現像バイアスを、直流電圧を高くする、若しくは交流電圧をOFFにして直流電圧による現像とする、などが有効である。
あるいは、長時間撹拌されることで外添剤がトナーに埋没するなどして逆帯電したトナーを効率的に現像するため、現像バイアスのうち交流電圧の、逆帯電トナーを現像する側の電圧印加時間が長くなるようにデューティ比を変更することで、効率的に劣化した古いトナーを排出することができる。
【0093】
また、制御部100は、現像装置412へのトナーの供給を停止させる(ステップS107)。画像形成時には、現像装置412には図示しないトナー供給部からトナーが供給されているが、リフレッシュモード時にはトナーの供給を停止し、限界まで現像装置412内のトナーを排出させることで、効率的にトナーを入れ替えることができる。
【0094】
また、制御部100は、吸引部210のファンの回転速度を上昇させる(ステップS108)。トナーの一度に大量に入れ替えることで、現像装置412からのトナーの噴煙が発生し、画像形成装置1の内部に汚れが発生しやすくなる。したがって、リフレッシュモード時には、吸引部210のファンの回転速度を上げて、トナー噴煙を効率的に除去させることが効果的である。
なお、ステップS106~108の処理は順不同であり、順序は特に限定されない。
【0095】
続いて、制御部100は、用紙へのパッチ形成を開始する(ステップS109)。制御部100は、ステップS105で決定した所定のパッチ画像面積に達したか否かを判断し(ステップS110)、達していないと判断すると(ステップS110:NO)、ステップS110の処理を繰り返すが、達したと判断すると(ステップS110:YES)、ステップS111へと移行する。
なお、パッチの用紙搬送方向の長さが所定の値以上となる場合には、分割してパッチ形成を行うものとしてもよい。パッチを連続して形成し続けると、ベルトクリーニング装置426による中間転写ベルト421のクリーニングをすることができず、中間転写ベルト421上に残留トナーが蓄積することとなる。したがって、パッチの用紙搬送方向長さがクリーニングに影響を与えない程度となるように、分割してパッチを形成し、合間にクリーニングを実施するための時間を設けることが有効である。
【0096】
続いて、制御部100は、トナー供給部416を制御して現像装置412内にトナーを補給し(ステップS111)、吸引部210のファンの回転速度を画像形成時の回転速度まで下げ(ステップS112)、現像条件を画像形成時の条件に戻す(ステップS113)。
なお、ステップS111~113の処理は順不同であり、順序は特に限定されない。
以上により、リフレッシュモードが終了する。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1は、現像装置412の内部のトナーを排出させるとともに、トナー供給部416によって現像装置412にトナーを供給させるリフレッシュモードを実行する制御部100を備え、制御部100は、用紙表面の粗さ情報を含む紙種情報と、現像装置412のトナーの劣化状態を表す劣化情報と、に基づいて、トナー供給部416によるトナーの供給量を決定する。したがって、転写不良の生じやすい用紙の画像形成前に、トナー年齢に応じたリフレッシュモードを実行するため、現像装置412内の劣化したトナーを除去して転写性を回復させることができる。
【0098】
また、リフレッシュモードにおいて、現像装置412は、用紙に形成するパッチを現像し、制御部100は、用紙の表面の粗さ情報と、劣化情報と、に基づいて、トナー供給部416によるトナーの供給量を決定し、当該供給量に相当する排出量となるようにパッチの画像面積を決定する。したがって、転写性の回復に必要な量だけトナーを入れ替えるため、ユーザーの待機時間を最低限とすることができる。
【0099】
また、リフレッシュモードにおいて、制御部100は、現像装置412によるパッチの現像条件が、画像形成時における現像条件に比べ、単位時間当たりのトナー現像量が多くなるように制御する。あるいは、制御部100は、現像装置412によるパッチの現像条件が、画像形成時における現像条件に比べ、逆帯電したトナーが現像されやすいデューティ比となるように制御する。これにより、劣化したトナーを高効率で排出させることができる。
【0100】
また、リフレッシュモードにおいて、制御部100は、トナー供給部416によるトナーの供給を、現像装置412の内部のトナー量が画像形成時に必要な最小量を下回るまで排出させた後に行うように制御する。これにより、劣化したトナーを確実に排出させることができる。
【0101】
また、制御部100は、さらに、リフレッシュモードの実施後に形成する画像の各色のトナーの画像面積率や画像濃度に基づいて、トナー供給部416によるトナーの供給量を決定する。これにより、転写不良の影響を受けやすい画像の形成前に確実にトナーの入れ替えを行うとともに、転写不良の影響を受けにくい画像の形成前にはリフレッシュモードを省略することができるため、ユーザーの待機時間を削減することができる。
【0102】
また、制御部100は、さらに、前回の画像形成からの経過時間や画像形成装置1の内部の温湿度に基づいて、トナー供給部416によるトナーの供給量を決定する。したがって、劣化トナーを高効率で排出させることができる。
【0103】
また、制御部100は、ユーザーにより表面に凹凸形状を有する用紙に対する画像形成を指定された場合に、当該画像形成前にリフレッシュモードを実行する。即ち、普通紙などの転写不良の影響を受けにくい用紙が指定された場合にはリフレッシュモードを実行しないため、ユーザーの待機時間を削減させることができる。
【0104】
また、制御部100は、リフレッシュモードにおいて、吸引部210による吸引力が高くなるように制御する。したがって、トナーの排出に伴う噴煙を効率的に除去して機内汚れ等を防ぐことができる。
【0105】
制御部100は、パッチの用紙搬送方向における幅が所定の値以上となる場合に、パッチを用紙搬送方向に分割して印字する。これにより、クリーニングのための時間を確保することができる。
【0106】
また、制御部100は、直前までに形成した画像のカバレッジの履歴に基づいて、現像装置412におけるトナーの劣化情報を特定するため、トナーの劣化状態を精度よく予測することができる。
【0107】
なお、上記実施形態においては、前回の実施時から所定の時間が経過したタイミングでリフレッシュモードを実行するものとしたが、これに限定されない。ユーザーが画像出力に白抜けなどを確認した場合に、ユーザーの指示によってリフレッシュモードを実行することも可能である。
【0108】
また、上記実施形態においては、表面に凹凸のある用紙としてエンボス紙を例に挙げたが、その他、和紙やシワ加工がされた用紙等についても、本発明を適用することが可能である。また、表面にざらつきのある再生紙も、普通紙に比べて転写性が低いため、リフレッシュモードを実行することで転写効率を向上させることができる。
【0109】
[他の実施形態]
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、画像処理システムを構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0110】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてHDDや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0111】
1 画像形成装置
100 制御部
10 画像読取部
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
412 現像装置(現像部)
110 現像ローラー
210 吸引部(トナー噴煙除去部)
413 感光体ドラム(像担持体)
416 トナー供給部(供給部)
50 用紙搬送部
60 定着部
70 記憶部
71 トナー年齢分布テーブル
72 パッチ画像面積テーブル
80 通信部