(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B66C 13/40 20060101AFI20221109BHJP
B66C 13/46 20060101ALI20221109BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20221109BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B66C13/40 D
B66C13/46 F
B66F9/24 T
B66F11/04
(21)【出願番号】P 2018143018
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 洋幸
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095449(JP,A)
【文献】国際公開第2017/032922(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00;13/40;13/46
B66F 9/00-11/04
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と、
前記車両に支持される作業装置と、を備え、
音声入力可能な操作端末によって前記作業装置を操作自在とした作業車両において、
前記作業装置に支持されるカメラと、
前記カメラが撮影した画像を表示する表示装置と、
方位センサと、を具備し、
前記操作端末は、
前記方位センサが検出した方位に基づいて設定された前記画像上の方向又は位置を操作基準とする音声入力に基づいて前記作業装置を作動させ
、音声入力される方位の方向へ操作対象が移動するように前記作業装置を作動させる、ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記表示装置が頭部装着型表示装置である、ことを特徴とする請求項
1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。詳しくは、音声により直感的かつ簡単な操作を実現できる作業車両に関する。
【0002】
従来より、代表的な作業車両であるクレーンが知られている(特許文献1参照)。クレーンは、主に車両とクレーン装置で構成されている。車両は、複数の車輪を備え、走行自在に構成されている。クレーン装置は、ブームのほかにワイヤロープやフックを備え、荷物を運搬自在に構成されている。
【0003】
ところで、音声入力可能な操作端末によってクレーン装置を操作自在としたクレーンが提案されている(特許文献2参照)。かかるクレーンは、ブームの先端部分に荷物を撮影するカメラが取り付けられている。オペレータは、カメラが撮影した画像から荷物や荷物周辺の状況を把握して操作を行うことができる。しかし、オペレータが画像を見ながら操作を行う場合、ブームの旋回方向やそれに伴う荷物の移動方向を連想して音声入力をしなければならず、慣れないオペレータにとっては困難を伴うものであった。これは、クレーン装置に相当する作業装置を備えた他の作業車両においても同様であると考えられる。そこで、音声により直感的かつ簡単な操作を実現できる作業車両が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-122003号公報
【文献】特開2017-088385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
音声により直感的かつ簡単な操作を実現できる作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、
車両と、
前記車両に支持される作業装置と、を備え、
音声入力可能な操作端末によって前記作業装置を操作自在とした作業車両において、
前記作業装置に支持されるカメラと、
前記カメラが撮影した画像を表示する表示装置と、
方位センサと、を具備し、
前記操作端末は、前記方位センサが検出した方位に基づいて設定された前記画像上の方向又は位置を操作基準とする音声入力に基づいて前記作業装置を作動させ、音声入力される方位の方向へ操作対象が移動するように前記作業装置を作動させる、ものである。
【0010】
第二の発明は、第一の発明に係る作業車両において、
前記表示装置が頭部装着型表示装置である、ものである。
【発明の効果】
【0011】
第一の発明に係る作業車両は、作業装置に支持されるカメラと、カメラが撮影した画像を表示する表示装置と、を具備している。そして、操作端末は、画像上の方向又は位置を操作基準とする音声入力に基づいて作業装置を作動させる。かかる作業車両によれば、オペレータが画像を見ながら操作を行う場合であっても、作業装置の旋回方向等を連想して音声入力をする必要がなく、画像上の方向又は位置を操作基準として音声入力をすることができる。従って、音声により直感的かつ簡単な操作を実現できる。
また、第一の発明に係る作業車両は、方位センサを具備しており、方位センサが検出した方位に基づいて操作基準を設定する。そして、操作端末は、音声入力される方位の方向へ操作対象が移動するように作業装置を作動させる。かかる作業車両によれば、オペレータと操作対象の位置関係に関わらず操作基準が一定となるため、オペレータが音声入力をする際の方向について混乱が生じにくくなる。
【0015】
第二の発明に係る作業車両は、表示装置が頭部装着型表示装置である。かかる作業車両によれば、操作対象から視線を外さずに操作を行えるため、作業性の向上を実現することができる。また、操作端末と頭部装着型表示装置を一体化すればオペレータの手が空くので、より作業性の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】第一実施形態に係る遠隔操作システムの構成を示す図。
【
図5】音声入力によって画像が回転する状況を示す図。
【
図7】音声入力によって荷物の移動を開始する状況を示す図。
【
図8】音声入力によって荷物の移動を停止する状況を示す図。
【
図9】第二実施形態に係る遠隔操作システムの構成を示す図。
【
図10】音声入力によって荷物の移動を開始する状況を示す図。
【
図12】音声入力によって荷物の移動を開始する状況を示す図。
【
図13】音声入力によって荷物の移動を開始する状況を示す図。
【
図14】第三実施形態に係る遠隔操作システムの構成を示す図。
【
図15】頭部装着型表示装置を用いて遠隔操作を行うオペレータを示す図。
【0017】
本願においては、代表的な作業車両であるクレーンを用いて説明する。本願に開示する技術的思想は、以下に説明するクレーン1のほか、他のクレーンにも適用できる。
【0018】
【0019】
クレーン1は、主に車両2とクレーン装置3で構成されている。
【0020】
車両2は、左右一対の前輪4と後輪5を備えている。また、車両2は、荷物Wの運搬作業を行なう際に接地させて安定を図るアウトリガ6を備えている。なお、車両2は、アクチュエータによって、その上部に支持するクレーン装置3を旋回自在としている。
【0021】
クレーン装置3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム7を備えている。そのため、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在となっている(矢印A参照)。また、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(矢印B参照)。更に、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在となっている(矢印C参照)。加えて、ブーム7には、ワイヤロープ8が架け渡されている。ブーム7の基端側には、ワイヤロープ8を巻き付けたウインチ9が配置され、ブーム7の先端側には、ワイヤロープ8によってフック10が垂下されている。ウインチ9は、アクチュエータと一体的に構成されており、ワイヤロープ8の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。そのため、フック10は、アクチュエータによって昇降自在となっている(矢印D参照)。なお、クレーン装置3は、ブーム7の側方にキャビン11を備えている。キャビン11の内部には、後述する旋回操作具21や伸縮操作具22、起伏操作具23、巻回操作具24が設けられている。また、後述する車両側表示装置53が設けられている。
【0022】
次に、
図2から
図4を用いて、第一実施形態に係る遠隔操作システム12について説明する。以下では、クレーン1に乗車して操作を行うオペレータを「オペレータX1」とし、クレーン1に乗車せずに遠隔操作を行うオペレータを「オペレータX2」として説明する。なお、オペレータX2による操作対象は、フック10或いはフック10に吊り下げられた荷物Wである。本願においては、操作対象が荷物Wであるとして説明する。
【0023】
遠隔操作システム12は、主に制御装置20で構成されている。制御装置20には、各種操作具21~24が接続されている。また、制御装置20には、各種バルブ31~34が接続されている。
【0024】
前述したように、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在となっている(
図1における矢印A参照)。本願においては、かかるアクチュエータを旋回用油圧モータ41と定義する。旋回用油圧モータ41は、方向制御弁である旋回用バルブ31によって適宜に稼動される。つまり、旋回用油圧モータ41は、旋回用バルブ31が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。なお、旋回用バルブ31は、オペレータX1による旋回操作具21の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の旋回角度は、図示しないセンサによって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の旋回角度を認識することができる。
【0025】
また、前述したように、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(
図1における矢印B参照)。本願においては、かかるアクチュエータを伸縮用油圧シリンダ42と定義する。伸縮用油圧シリンダ42は、方向制御弁である伸縮用バルブ32によって適宜に稼動される。つまり、伸縮用油圧シリンダ42は、伸縮用バルブ32が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。なお、伸縮用バルブ32は、オペレータX1による伸縮操作具22の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の伸縮長さは、図示しないセンサによって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の伸縮長さを認識することができる。
【0026】
更に、前述したように、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在となっている(
図1における矢印C参照)。本願においては、かかるアクチュエータを起伏用油圧シリンダ43と定義する。起伏用油圧シリンダ43は、方向制御弁である起伏用バルブ33によって適宜に稼動される。つまり、起伏用油圧シリンダ43は、起伏用バルブ33が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。なお、起伏用バルブ33は、オペレータX1による起伏操作具23の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の起伏角度は、図示しないセンサによって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の起伏角度を認識することができる。
【0027】
加えて、前述したように、フック10は、アクチュエータによって昇降自在となっている(
図1における矢印D参照)。本願においては、かかるアクチュエータを巻回用油圧モータ44と定義する。巻回用油圧モータ44は、方向制御弁である巻回用バルブ34によって適宜に稼動される。つまり、巻回用油圧モータ44は、巻回用バルブ34が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。なお、巻回用バルブ34は、オペレータX1による巻回操作具24の操作に基づいて稼動される。また、フック10の吊下長さは、図示しないセンサによって検出される。そのため、制御装置20は、フック10の吊下長さを認識することができる。
【0028】
更に、本遠隔操作システム12は、カメラ51と通信機52と車両側表示装置53を有している。
【0029】
カメラ51は、画像を撮影するものである。カメラ51は、作業現場を上方から撮影すべく、ブーム7の先端部分に取り付けられている(
図1参照)。なお、カメラ51は、通信機52に接続されている。
【0030】
通信機52は、電波信号に変換された情報を送受信するものである。通信機52は、地物等による電波への影響を低減すべく、少なくともアンテナがブーム7の先端部分に取り付けられている。なお、通信機52は、制御装置20のほか、後述する遠隔操作端末13の端末側制御装置60に接続されている。そのため、通信機52は、制御装置20から端末側制御装置60へ情報を伝達することができる。また、通信機52は、端末側制御装置60から制御装置20へ情報を伝達することもできる。更に、カメラ51が撮影した画像を制御装置20と端末側制御装置60へ伝達することもできる。
【0031】
車両側表示装置53は、画像を表示するものである。車両側表示装置53は、オペレータX1が各種操作具21~24を操作しながら視認できるよう、キャビン11の内部における前方側に取り付けられている。なお、車両側表示装置53は、制御装置20に接続されている。そのため、制御装置20は、車両側表示装置53を通じ、オペレータX1へ情報を提供することができる。
【0032】
加えて、本遠隔操作システム12は、遠隔操作端末13を有している。遠隔操作端末13は、端末側制御装置60を備えている。また、遠隔操作端末13は、図示しない端末側通信機を備えている。なお、本願における遠隔操作端末13は、遠隔操作端末の一例であり、これに限定するものではない。
【0033】
遠隔操作端末13には、方向指示部61が設けられている。方向指示部61は、音声入力装置であって、オペレータX2の音声を電気信号に変換することができる。なお、方向指示部61は、端末側制御装置60に接続されている。そのため、端末側制御装置60は、オペレータX2の音声による指示(以降、「音声データ」という)を認識することができる。
【0034】
更に、遠隔操作端末13には、端末側表示装置63が設けられている。端末側表示装置63は、端末側制御装置60に接続されている。そして、端末側制御装置60は、電波信号を介して前述した制御装置20に接続されている。そのため、制御装置20は、端末側表示装置63を通じ、オペレータX2へ情報を提供することができる。また、端末側表示装置63には、カメラ51によって撮影された画像が表示される(
図5参照)。なお、端末側表示装置63は、オペレータX2が視認しながら音声入力を行えるよう、遠隔操作端末13の正面に取り付けられている。
【0035】
端末側制御装置60は、音声データに対応する制御内容をデータベースに格納している(
図4参照)。具体的に説明すると、端末側制御装置60は、音声データである「奥」、「手前」、「左」、「右」、「巻上」、「巻下」に対応する制御内容として「荷物Wを画像上の奥行方向へ移動させる」、「荷物Wを画像上の手前方向へ移動させる」、「荷物Wを画像上の左方向へ移動させる」、「荷物Wを画像上の右方向へ移動させる」、「荷物Wを巻き上げる」、「荷物Wを巻き下げる」をデータベースに格納している。また、端末側制御装置60は、音声データである「左回転」、「右回転」に対応する制御内容として「画像を左回転させる」、「画像を右回転させる」をデータベースに格納している。更に、端末側制御装置60は、音声データである「ゆっくり」、「停止」に対応する制御内容として「荷物Wの移動速度を一段階下げる」、「荷物Wの移動や画像の回転を停止させる」をデータベースに格納している。なお、音声データに対応する制御内容は、オペレータがデータベースへの登録、削除、変更等を行って、カスタマイズすることができる。また、英語等の音声データから制御内容を認識できるようにしてもよい。更に、人工知能を用いて、音声データから制御内容を認識できるようにしてもよい。
【0036】
次に、
図5から
図8を用いて、オペレータX2による遠隔操作端末13の操作態様について説明する。ここで、画像領域Rは、カメラ51が撮影する領域を表している。画像領域Rは、その中央に荷物Wが位置している。また、画像領域Rは、ブーム7が旋回すると、ブーム7と共にカメラ51も旋回するため、逆方向へ回転することでオペレータX2に対する向きを保っている。
【0037】
まず、操作基準を設定する方法について説明する。以下では、オペレータX2がブーム7の延長上に位置している状況を想定する(
図5参照)。また、画像上で荷物Wの右側に地面に置かれた荷物Wpが表示されているとする(
図6における(A)参照)。オペレータX2が「左回転」と音声入力を行うと、画像が左回転する(
図5における矢印E参照)。オペレータX2が「右回転」と音声入力を行うと、画像が右回転する。そして、オペレータX2が「停止」と音声入力を行うと、画像の回転が停止する。こうして、オペレータX2の視界に合わせて、画像上で荷物Wの左側に荷物Wpを表示することができる(
図6における(B)参照)。なお、方向指示部61として設けられた画像回転操作具62により画像を回転させてもよい(
図3参照)。オペレータX2が画像回転操作具62を左回転又は右回転させると、その回転角度に応じて画像が左回転又は右回転することとなる(
図3における矢印G参照)。また、角度を含む音声入力(例えば「左回転30°」)を行うことで、音声入力された方向に音声入力された角度だけ画像を回転させるとしてもよい。
【0038】
次に、荷物Wを目標位置P1に移動させる方法について説明する(
図7及び
図8参照)。目標位置P1は、画像上で荷物Wの右側にあるものとする。オペレータX2が「右」と音声入力を行うと、適宜に旋回用油圧モータ41や伸縮用油圧シリンダ42、起伏用油圧シリンダ43が連関しつつ稼働することによってブーム7が作動し、荷物Wが画像上の方向である右方向に移動される(
図7における矢印H参照)。このように、荷物Wの搬送方向を基準とする操作(荷物基準操作系)で、音声入力による荷物Wを移動させる操作を行うことができる。そして、オペレータX2が「停止」と音声入力を行うと、荷物Wの移動が停止する(
図8参照)。こうして、荷物Wを目標位置P1まで移動させることができる。なお、例えば画像上で目標位置P1が荷物Wの右側よりもやや奥行方向にある場合、画像をわずかに右回転させることにより、「右」と音声入力を行うだけで移動させることができる。これにより、最小限の音声入力で水平方向に荷物Wを移動させる操作が可能となる。また、角度等を含む音声入力(例えば「右斜め上30°」)を行うことで、移動させるとしてもよい。
【0039】
本実施形態においては、オペレータX2が「右」と音声入力を行った場合を一例として説明したが、他の音声入力を行った場合は、音声データに対応する制御内容で荷物Wが移動される。また、例えばオペレータX2が「右、右、・・・」と繰り返して音声入力を行うと、繰り返すごとに画像上の右方向への移動速度が一段階速くなる。これは、他の音声入力(「奥」、「手前」、「左」、「巻上」、「巻下」)であっても、同様である。なお、オペレータX2が「奥」、「手前」、「右」、「左」のいずれか一つと、「巻上」又は「巻下」を連続して音声入力を行うと、荷物Wが画像上の奥行方向、画像上の手前方向、画像上の右方向、画像上の左方向のいずれか一方向へ移動されると同時に、荷物Wが巻き上げ又は巻き下げられる。
【0040】
以上のように、本クレーン1は、クレーン装置3に支持されるカメラ51と、カメラ51が撮影した画像を表示する表示装置(端末側表示装置63)と、を具備している。そして、遠隔操作端末13は、画像上の方向又は位置を操作基準とする音声入力に基づいてクレーン装置3を作動させる。かかるクレーン1によれば、オペレータX2が画像を見ながら遠隔操作を行う場合であっても、クレーン装置3の旋回方向等を連想して音声入力をする必要がなく、画像上の方向又は位置を操作基準として音声入力をすることができる。従って、音声により直感的かつ簡単な遠隔操作を実現できる。また、荷物Wを見ながら音声により簡単にクレーン1の操作ができるため、クレーン1の運転者が不要になる。
【0041】
具体的に説明すると、本クレーン1は、方向指示部61(画像回転操作具62を含む)を具備しており、方向指示部61(62)が指示した方向に基づいて操作基準を設定する。そして、遠隔操作端末13は、音声入力される方向へ操作対象(荷物W)が移動するようにクレーン装置3を作動させる。かかるクレーン1によれば、オペレータX2と操作対象(W)の位置関係に関わらず操作基準を任意に設定できるため、オペレータX2が音声入力をする際の方向について混乱が生じにくくなる。
【0042】
次に、
図9及び
図10を用いて、第二実施形態に係る遠隔操作システム12について説明する。以下においては、第一実施形態に係る遠隔操作システム12に対して相違する部分を中心に説明する。
【0043】
第二実施形態に係る遠隔操作システム12は、方位センサ54を備えている。方位センサ54は、東西南北の方位を計測するものである。方位センサ54は、ブーム7の先端部分に取り付けられている。なお、方位センサ54は、通信機52に接続されている。そのため、制御装置20及び端末側制御装置60は、東西南北の方位を認識することができる。端末側表示装置63には、北方向を示す方位記号Iが表示されている。
【0044】
端末側制御装置60は、音声データに対応する制御内容をデータベースに格納している。具体的に説明すると、端末側制御装置60は、音声データである「東」、「西」、「南」、「北」に対応する制御内容として「荷物Wを東方向へ移動させる」、「荷物Wを西方向へ移動させる」、「荷物Wを南方向へ移動させる」、「荷物Wを北方向へ移動させる」をデータベースに格納している。
【0045】
荷物Wを目標位置P2に移動させる方法について説明する(
図10参照)。目標位置P2は、荷物Wの東側にあるものとする。オペレータX2が「東」と音声入力を行うと、適宜に旋回用油圧モータ41や伸縮用油圧シリンダ42、起伏用油圧シリンダ43が連関しつつ稼働することによってブーム7が作動し、荷物Wが東方向に移動される(矢印J参照)。そして、オペレータX2が「停止」と音声入力を行うと、荷物Wの移動が停止する。こうして、荷物Wを目標位置P2まで移動させることができる。
【0046】
本実施形態においては、オペレータX2が「東」と音声入力を行った場合を一例として説明したが、他の音声入力を行った場合は、音声データに対応する制御内容で荷物Wが移動される。なお、オペレータX2が詳細な方位の音声入力(例えば「北東」)を行うと、荷物Wが音声入力された方位へ移動される構成でもよい。
【0047】
以上のように、本クレーン1は、方位センサ54を具備しており、方位センサ54が検出した方位に基づいて操作基準を設定する。そして、遠隔操作端末13は、音声入力される方位の方向へ操作対象(荷物W)が移動するようにクレーン装置3を作動させる。かかるクレーン1によれば、オペレータX2と操作対象(W)の位置関係に関わらず操作基準が一定となるため、オペレータX2が音声入力をする際の方向について混乱が生じにくくなる。
【0048】
加えて、荷物Wを目標位置に移動させる他の方法について説明する(
図11及び
図12参照)。一の表示態様として、端末側表示装置63には、1以上の基準点である格子点が表示される(
図11の(A)参照)。また、端末側表示装置63には、格子点の横方向の間隔に対応させて、画像の上側にアルファベットがAから順番に並べて表示される。更に、端末側表示装置63には、格子点の縦方向の間隔に対応させて、画像の左側に数字が1から順番に並べて表示される。そのため、この格子点の位置は、アルファベットと数字の組み合わせで表される。例えば、画像上において、アルファベットの「D」の手前方向で、数字の「2」の右方向にある格子点の位置は、「D2」と表される。
【0049】
端末側制御装置60は、音声データに対応する制御内容をデータベースに格納している。具体的に説明すると、端末側制御装置60は、音声である「A1」、「A2」、「A3」、「A4」、・・・に対応する制御内容として「荷物WをA1の格子点の位置に移動させる」、「荷物WをA2の格子点の位置に移動させる」、「荷物WをA3の格子点の位置に移動させる」、「荷物WをA4の格子点の位置に移動させる」・・・をデータベースに格納している。
【0050】
荷物Wを目標位置P3に移動させる方法について説明する(
図12参照)。目標位置P3は、E3の格子点の位置にあるものとする。オペレータX2が「E3」と音声入力を行うと、適宜に旋回用油圧モータ41や伸縮用油圧シリンダ42、起伏用油圧シリンダ43が連関しつつ稼働することによってブーム7が作動し、荷物WがE3の格子点の位置に移動される(矢印K参照)。こうして、荷物Wを目標位置P3まで移動させることができる。
【0051】
加えて、荷物Wを目標位置に移動させる他の方法について説明する(
図11及び
図13参照)。一の表示態様として、端末側表示装置63には、格子線によって区分されるブロックが表示される(
図11の(B)参照)。また、端末側表示装置63には、縦方向の格子線の間で、画像の上側にアルファベットがAから順番に並べて表示される。更に、端末側表示装置63には、横方向の格子線の間で、画像の左側に数字が1から順番に並べて表示される。そのため、ブロックの位置は、アルファベットと数字の組み合わせによって表される。例えば、画像上において、アルファベットの「D」の手前方向で、数字の「2」の右方向にあるブロックの位置は「D2」と表される。
【0052】
端末側制御装置60は、音声データに対応する制御内容をデータベースに格納している。具体的に説明すると、端末側制御装置60は、音声である「A1」、「A2」、「A3」、「A4」、・・・に対応する制御内容として「荷物WをA1のブロックの位置に移動させる」、「荷物WをA2のブロックの位置に移動させる」、「荷物WをA3のブロックの位置に移動させる」、「荷物WをA4のブロックの位置に移動させる」・・・をデータベースに格納している。
【0053】
荷物Wを目標位置P4に移動させる方法について説明する(
図13参照)。目標位置P4は、F3のブロックの位置にあるものとする。オペレータX2が「F3」と音声入力を行うと、適宜に旋回用油圧モータ41や伸縮用油圧シリンダ42、起伏用油圧シリンダ43が連関しつつ稼働することによってブーム7が作動し、荷物WがF3のブロックの位置に移動される(矢印M参照)。こうして、荷物Wを目標位置P4まで移動させることができる。
【0054】
本実施形態においては、オペレータX2が「E3」、「F3」と音声入力を行った場合を例として説明したが、他の音声入力を行った場合は、音声入力された音声データに対応する制御内容で荷物Wが移動される。
【0055】
なお、荷物Wの移動を開始するまでに、オペレータX2が格子点又はブロックの音声入力により、荷物Wの移動先となる格子点又はブロックを調節できるようにしてもよい。例えば、オペレータX2の音声入力によってE3の格子点が指定された場合、E3の格子点は、他の格子点と区別し易いように特定の表示態様(例えば、格子点の輝度、形状等の変更)で表示される。更に、オペレータX2が「奥」又は「E2」と音声入力を行うと、E3の格子点の表示態様が通常の表示態様に戻るとともに、画像上におけるE3の奥行方向の格子点であるE2の格子点の表示態様が特定の表示態様になる。オペレータX2が荷物Wの移動先の格子点又はブロックを調節する方向は、画像上の奥行方向以外にも画像上の手前方向、画像上の左方向、画像上の右方向でもよい。オペレータX2が「移動」と音声入力を行うと、荷物WがE2の格子点の位置に移動される。オペレータX2が「停止」と音声入力を行うと、荷物Wの移動が停止される。
【0056】
更に、画像上の任意の位置に移動させることができるポインタの位置を基準点の位置として、荷物Wの移動先を指定してもよい。ポインタは、遠隔操作端末13に設けられるジョイスティック等の操作具によって位置指定される。或いは、ポインタは、車両側表示装置53をタッチパネルとして、タッチパネルのタッチ操作によって位置指定される。オペレータX2が「移動」と音声入力を行うと、荷物Wがポインタの位置に移動される。オペレータX2が「停止」と音声入力を行うと、荷物Wの移動が停止される。
【0057】
以上のように、本クレーン1は、画像上に1以上の基準点(格子点、ポインタ)、又は格子線によって区分されるブロックを表示し、基準点又はブロックに基づいて操作基準を設定する。そして、遠隔操作端末13は、音声入力される基準点又はブロックの位置に操作対象(荷物W)が移動するようにクレーン装置3を作動させる。かかるクレーン1によれば、オペレータX2と操作対象(W)の位置関係に関わらず基準点又はブロックの位置で目標位置P3・P4を指示できるため、オペレータX2が音声入力をする際の位置について混乱が生じにくくなる。
【0058】
次に、
図14及び
図15を用いて、第三実施形態に係る遠隔操作システム12について説明する。以下においても、第一実施形態に係る遠隔操作システム12に対して相違する部分を中心に説明する。
【0059】
第三実施形態に係る遠隔操作システム12は、頭部装着型表示装置71を備えている。頭部装着型表示装置71は、画像を表示するものである。頭部装着型表示装置71は、いわゆる透過型のヘッドマウントディスプレイであり、オペレータX2は、頭部装着型表示装置71を通して見える光景と表示される画像を同時に視認することができる。但し、頭部装着型表示装置71は、いわゆる非透過型のヘッドマウントディスプレイであってもよい。なお、頭部装着型表示装置71は、電波信号を介して、制御装置20に接続されている。そのため、制御装置20は、頭部装着型表示装置71を通じ、オペレータX2へ情報を提供することができる。また、頭部装着型表示装置71には、カメラ51によって撮影された画像が表示される。
【0060】
頭部装着型表示装置71を用いた遠隔操作について説明する(
図15参照)。頭部装着型表示装置71を用いて遠隔操作を行う場合、オペレータX2は、頭部装着型表示装置71を通して見える荷物Wと画像上の荷物Wを同時に視認して遠隔操作を行うことができる。そのため、オペレータX2は、画像だけでは分かりにくい状況を確認しながら遠隔操作を行うことができる。更に、頭部装着型表示装置71と遠隔操作端末13を一体化すると、オペレータX2は、遠隔操作端末13の保持のために手を使用する必要がなくなる。そのため、オペレータX2は、空いた手で荷物Wを固定する等のその他の作業を同時に行いながら、音声入力によって荷物Wの移動の微調整ができる。なお、施工現場に設けられる現場用表示装置72に画像を表示してもよい。現場用表示装置72と遠隔操作端末13を一体化することも考えられる。
【0061】
以上のように、本クレーン1は、表示装置が頭部装着型表示装置71である。かかるクレーン1によれば、操作対象(荷物W)から視線を外さずに遠隔操作を行えるため、作業性の向上を実現することができる。また、遠隔操作端末13と頭部装着型表示装置71を一体化すればオペレータの手が空くので、より作業性の向上を実現することができる。
【0062】
なお、以上の実施形態において、クレーン装置3は、遠隔操作端末13によって遠隔操作される構成としたが、キャビン11の内部に設けられている車両側操作端末によって操作される構成でもよい。その場合、車両側操作端末の操作は、車両側表示装置53に表示される画像を用いて、オペレータX1の音声入力によって行われる。このように構成することで、キャビン11内の各種操作具21~24の操作に慣れていないオペレータX1であっても、車両側表示装置53に表示された画像上の方向又は位置を操作基準として音声入力をすることができる。従って、音声により直感的かつ簡単な操作を実現できる。
【0063】
最後に、本願に開示する技術的思想は、クレーン装置3に相当する作業装置を備えた作業車両にも適用できる。例えば、高所作業車にも適用できる。高所作業車に適用する場合、画像上において、バケットやデッキが移動する方向や位置を操作基準とすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 クレーン(作業車両)
2 車両
3 クレーン装置(作業装置)
7 ブーム
8 ワイヤロープ
10 フック
12 遠隔操作システム
13 遠隔操作端末(操作端末)
20 制御装置
51 カメラ
54 方位センサ
61 方向指示部
62 画像回転操作具
63 端末側表示装置(表示装置)
71 頭部装着型表示装置(表示装置)
72 現場用表示装置(表示装置)
W 荷物