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特許7172266アウトリガ装置、及びアウトリガ装置を備えた作業車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】アウトリガ装置、及びアウトリガ装置を備えた作業車
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/78 20060101AFI20221109BHJP
   B60S 9/12 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B66C23/78 H
B66C23/78 C
B60S9/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018147928
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020023374
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】小田原 実夏
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】実公昭41-019526(JP,Y1)
【文献】特開平11-217191(JP,A)
【文献】特開平11-263588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0348341(US,A1)
【文献】特開2014-210625(JP,A)
【文献】特開平07-081885(JP,A)
【文献】特開平07-291589(JP,A)
【文献】特開平08-324998(JP,A)
【文献】特開2004-359421(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00-23/94
B60S 9/00-13/02
B66F 9/00-11/04
E02F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1貫通孔が設けられた側壁を有する外筒と、
第2貫通孔が設けられ且つ上記外筒の側壁と対向する側壁を有し、上記外筒に内挿された格納位置、上記外筒から張り出した張出位置及び当該張出位置と当該格納位置との間の中間位置に変位し、当該中間位置において上記第2貫通孔が上記第1貫通孔と位置合わせされる内筒と、
上記内筒を上記格納位置と上記張出位置との間で変位させる第1駆動装置と、
上記第1貫通孔と上記第2貫通孔とが位置合わせされた状態を検出するセンサと、
上記外筒及び上記内筒の少なくとも一方に設けられており、位置合わせされた上記第1貫通孔及び上記第2貫通孔に挿通された固定位置と、上記第1貫通孔及び上記第2貫通孔の少なくとも一方から抜脱された非固定位置との間で変位可能な固定部材と、
当該固定部材を変位させる第2駆動装置と、を備え
上記センサは、
上記内筒及び上記外筒のいずれか一方に設けられた発光素子と、
上記内筒及び上記外筒のいずれか他方に設けられ、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔とが位置合わせされた状態で上記発光素子が発した光を反射する反射部材と、
上記発光素子とともに上記内筒及び上記外筒とのいずれか一方に設けられ、上記反射部材が反射した光を受光する受光素子と、を有するアウトリガ装置。
【請求項2】
上記第1駆動装置を駆動させて上記内筒を変位させる内筒駆動処理と、
上記センサが上記第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態を検出したことに基づいて上記第2駆動装置を駆動させて上記固定部材を上記固定位置に変位させる固定処理と、を実行するコントローラをさらに備えた請求項に記載のアウトリガ装置。
【請求項3】
上記第1駆動装置を駆動させる指示を上記コントローラに入力する第1入力部と、
上記第2駆動装置を駆動させる指示を上記コントローラに入力する第2入力部と、
上記センサが上記第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態を検出したことを報知する報知部と、をさらに備えた請求項に記載のアウトリガ装置。
【請求項4】
上記報知部は、上記第2入力部を光らせるランプを有し、
上記コントローラは、上記センサが上記第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態を検出したことに基づいて上記ランプを点灯させる、請求項に記載のアウトリガ装置。
【請求項5】
上記コントローラは、
上記第2駆動装置を駆動させて上記固定部材を上記非固定位置に変位させる固定解除処理の後、上記固定部材が上記非固定位置にあるか否かを判断する判断処理と、
当該判断処理で上記固定部材が上記非固定位置にないと判断したことに基づいて上記第1駆動装置を駆動させて上記内筒を所定量だけ移動させる移動処理と、をさらに実行する請求項からのいずれかに記載のアウトリガ装置。
【請求項6】
上記コントローラは、
上記第1貫通孔及び第2貫通孔が近接したときに上記第1駆動装置の作動を減速させ、
上記第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態が検出されたときに上記第1駆動装置の作動を停止させる処理を実行する、請求項からのいずれかに記載のアウトリガ装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載のアウトリガ装置を搭載した車体を有する作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として作業車に搭載されるアウトリガ装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クレーン車など、アウトリガ装置を備えた作業車が提供されている。アウトリガ装置には、例えば、外筒と、外筒内に配置された内筒とを有するものがある。外筒と内筒とは、テレスコピックを構成し、内筒は、外筒から張り出されて使用される。
【0003】
特許文献1には、ピンを用いて内筒を外筒に固定するアウトリガ装置が開示されている。内筒は、オペレータによって、外筒に格納された格納位置から張り出され、最大限に張り出した最大張出位置や、最大張出位置と格納位置との間の中間位置に、段階的に張り出される。内筒及び外筒には、格納位置や中間位置や最大張出位置にそれぞれ対応する複数の保持穴がそれぞれ設けられている。オペレータは、位置合わせされた一対の保持穴にピンを挿入し、格納位置、中間位置、及び最大張出位置のそれぞれにおいて、内筒を外筒に固定する。
【0004】
一方、特許文献2には、油圧シリンダによって駆動される内筒と、油圧シリンダで駆動されるピンとを備えたアウトリガ装置が開示されている。このアウトリガ装置では、遠隔操作により、内筒が格納位置に移動されたときにピンが駆動され、内筒が格納位置で固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-105616号公報
【文献】特開2011-98813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、上記格納位置のみならず、最大張出位置及び中間位置においても、遠隔操作で内筒を外筒に固定することを考えた。しかしながら、油圧シリンダで内筒を駆動させると、ストロークエンドである格納位置及び最大張出位置では、内筒の一部を外筒に当接させて内筒を位置決めすることができるが、中間位置では、内筒の一部を外筒に当接させて位置決めすることは困難である。そうすると、操縦者は、内筒を中間位置で固定しようとすると、作業車から降車して、上記一対の保持穴の位置が一致しているか否かを確認しなければならないという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、遠隔操作によって、外筒に対して任意の位置に内筒を位置決めできるアウトリガ装置、及びこれを備えた作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係るアウトリガ装置は、第1貫通孔が設けられた側壁を有する外筒と、第2貫通孔が設けられ且つ上記外筒の側壁と対向する側壁を有し、上記外筒に内挿された格納位置、上記外筒から張り出した張出位置及び当該張出位置と当該格納位置との間の中間位置に変位し、当該中間位置において上記第2貫通孔が上記第1貫通孔と位置合わせされる内筒と、上記内筒を上記格納位置と上記張出位置との間で変位させる第1駆動装置と、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔とが位置合わせされた状態を検出するセンサと、上記外筒及び上記内筒の少なくとも一方に設けられており、位置合わせされた上記第1貫通孔及び上記第2貫通孔に挿通された固定位置と、上記第1貫通孔及び上記第2貫通孔の少なくとも一方から抜脱された非固定位置との間で変位可能な固定部材と、当該固定部材を変位させる第2駆動装置と、を備える。上記センサは、上記内筒及び上記外筒のいずれか一方に設けられた発光素子と、上記内筒及び上記外筒のいずれか他方に設けられ、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔とが位置合わせされた状態で上記発光素子が発した光を反射する反射部材と、上記発光素子とともに上記内筒及び上記外筒とのいずれか一方に設けられ、上記反射部材が反射した光を受光する受光素子と、を有する。
【0009】
第1駆動装置が内筒を変位させると、センサが第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態を検出し、これに基づいて第2駆動装置が固定部材を駆動して固定位置に変位させる。このように、上記センサによって第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態が検出されるので、内筒が外筒に対して所定の中間位置にあることが検知され、遠隔操作によって内筒を当該中間位置に固定することができる。
【0010】
反射部材を用いることにより、電気的な接続が必要な発光素子及び受光素子を並んで配置することができる。したがって、センサの構成及び配線を簡単にすることができる。
【0011】
(2) 本発明に係るアウトリガ装置は、上記第1駆動装置を駆動させて上記内筒を変位させる内筒駆動処理と、上記センサが上記第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態を検出したことに基づいて上記第2駆動装置を駆動させて上記固定部材を上記固定位置に変位させる固定処理と、を実行するコントローラをさらに備えていてもよい。
【0012】
コントローラは、センサが第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態を検出したことに応じて、固定部材を非固定位置から固定位置に変位させるので、第1貫通孔及び第2貫通孔が重なっていないときに誤って固定部材が非固定位置から固定位置に移動されて固定部材が破損することが防止される。
【0013】
(3) 本発明に係るアウトリガ装置は、上記第1駆動装置を駆動させる指示を上記コントローラに入力する第1入力部と、上記第2駆動装置を駆動させる指示を上記コントローラに入力する第2入力部と、上記センサが上記第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態を検出したことを報知する報知部と、をさらに備えていてもよい。
【0014】
報知部は、例えば、ランプや、スピーカや、ディスプレイである。報知部は、センサが第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態を検出したことに応じて報知を行うので、操縦者は、報知部が報知を行った後、第2入力部を用いてコントローラに指示を入力すればよい。すなわち、第2入力部に指示を入力するタイミングを操縦者に容易に認識させることができる。
【0015】
(4) 上記報知部は、上記第2入力部を光らせるランプを有していてもよい。上記コントローラは、上記センサが上記第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態を検出したことに基づいて上記ランプを点灯させる。
【0016】
操縦者は、第2入力部が光った後、第2入力部に入力を行う。すなわち、第2入力部に入力を行うタイミングを操縦者に容易に認識させることができる。
【0017】
(5) 上記コントローラは、上記第2駆動装置を駆動させて上記固定部材を上記非固定位置に変位させる固定解除処理の後、上記固定部材が上記非固定位置にあるか否かを判断する判断処理と、当該判断処理で上記固定部材が上記非固定位置にないと判断したことに基づいて上記第1駆動装置を駆動させて上記内筒を所定量だけ移動させる移動処理と、をさらに実行してもよい。
【0018】
上記構成によれば、例えば、固定部材にせん断力が作用していることで固定部材が非固定位置に変位していないことが判る。しかも、内筒を移動させて上記せん断力を解消して、固定部材を非固定位置に変位させることができる。
【0019】
(6) 上記コントローラは、上記第1貫通孔及び第2貫通孔が近接したときに上記第1駆動装置の作動を減速させ、上記第1貫通孔及び第2貫通孔の重なり状態が検出されたときに上記第1駆動装置の作動を停止させる処理を実行してもよい。
【0020】
上記構成によれば、第1貫通孔と第2貫通孔とが重なる所定の中間位置で内筒を自動で停止させることができる。その結果、所定の中間位置で内筒を停止させる操縦者の手間を省くことができる。
【0021】
(7) 本発明に係る作業車は、上述のアウトリガ装置を搭載した車体を有する。
【0022】
本発明は、アウトリガ装置を搭載した車体を有する作業車として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、遠隔操作によって、外筒に対して任意の位置に内筒を位置決めできるアウトリガ装置、及びこれを備えた作業車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態に係るクレーン車10の斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るクレーン車10の機能ブロック図である。
図3図3は、格納位置におけるアウトリガ31、32の断面図である。
図4図4は、アウトリガ操作盤74の模式図である。
図5図5は、張出/格納処理を示すフローチャートである。
図6図6は、固定解除処理を示すフローチャートである。
図7図7は、中間位置におけるアウトリガ31、32の断面図である。
図8図8は、張出位置におけるアウトリガ31、32の断面図である。
図9図9は、変形例における張出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0026】
図1は、本実施形態に係るクレーン車10を示す。クレーン車10は、本発明の「作業車」の一例である。ただし、作業車は、クレーン車10に限られない。作業車は、後述のアウトリガ31、32を備えたものであればよい。
【0027】
クレーン車10は、走行体11と、走行体11に搭載されたクレーン装置12及びキャビン13と、を主に備える。
【0028】
走行体11は、車体20と、車体20に設けられた車軸及び車輪21と、車輪21を駆動するエンジンと、を備える。また、走行体11に油圧装置22(図2)が搭載され、この油圧装置22は、エンジンによって駆動される油圧ポンプを有する。油圧ポンプは所定圧力の作動油を吐出し、後述のように旋回モータ23、起伏シリンダ47及び伸縮シリンダ48その他のアクチュエーターを駆動する。
【0029】
クレーン装置12は、車体20に旋回可能に支持された旋回台41と、旋回台41に支持されたブーム43と、を備える。ブーム43は、基端ブーム44、単一又は複数の中間ブーム45、及び先端ブーム46を有する。基端ブーム44、中間ブーム45、及び先端ブーム46は、入れ子状に配置されており、伸縮可能である。基端ブーム44は、旋回台41に起伏可能に支持されている。すなわち、ブーム43は、起伏可能、かつ、伸縮可能である。
【0030】
図2が示すように、クレーン装置12は、上記旋回モータ23と、ブーム43を起伏させる起伏シリンダ47と、ブーム43を伸縮させる伸縮シリンダ48と、をさらに備える。
【0031】
旋回モータ23は、車体20に設けられている。前述のように、旋回モータ23は、油圧装置22から作動油を供給されて回転し、既知のギアを介して旋回台41を旋回させる。
【0032】
起伏シリンダ47は、旋回台41に設けられている。伸縮シリンダ48はブーム43に設けられている。起伏シリンダ47及び伸縮シリンダ48は、油圧装置22から作動油を供給され、伸縮する。伸縮する起伏シリンダ47は、ブーム43を起伏させる。伸縮する伸縮シリンダ48は、ブーム43を伸縮させる。なお、車体20と旋回台41との間に、不図示のスイベルが設けられている。車体20に設けられた油圧装置22は、スイベルを通じて起伏シリンダ47及び伸縮シリンダ48に作動油を供給する。
【0033】
クレーン装置12は、ウインチ49及びフック50を備える。ウインチ49は、油圧装置22から上記スイベルを介して作動油を供給され、回転する。回転するウインチ49は、フック50と接続された不図示のロープを巻き取り、或いは、当該ロープを繰り出す。フック50は、先端ブーム46の先端からロープによって吊下される。ウインチ49が回転することにより、フック50が昇降する。
【0034】
図1に示されるように、キャビン13は、旋回台41に搭載されている。キャビン13は、クレーン車10の運転を行う不図示の運転装置と、クレーン装置12の操縦を行う操縦装置14(図2)と、を有する。すなわち、クレーン車10はラフテレーンクレーンであって、クレーン車10の運転及びクレーン装置12の操縦が1つのキャビン13で行われる。但し、クレーン車10は、運転装置を有するキャビンと、操縦装置14を有するキャビンとの2つのキャビンを備えたオールテレーンクレーンであってもよい。
【0035】
操縦装置14は、ブーム43等を操作する操作レバーや操作ボタン等を有する。操縦装置14は、操作レバーの操作の向きや操作量を示す操作信号や、操作ボタンの操作の有無を示す操作信号を出力する。
【0036】
キャビン13には、不図示の制御ボックスが設置されている。制御ボックスは、制御基板を収容する。制御基板は、マイクロコンピュータや、抵抗やコンデンサやダイオードや種々のICを実装されており、コントローラ60(図2)を構成している。操縦装置14が出力した操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60については後述される。
【0037】
車体20に前アウトリガ31及び後アウトリガ32が設けられている。これらは、旋回台41やブーム43の駆動において車体20の姿勢を安定させる。前アウトリガ31及び後アウトリガ32は、本発明の「アウトリガ装置」の一例である。
【0038】
前アウトリガ31は、車体20の前部に設けられている。図3が示すように、前アウトリガ31は、車体20の左右方向に沿って延びる外筒34と、外筒34に内挿された内筒35と、アウトリガシリンダ36(図2)とを有する。内筒35は、外筒34に対して左右方向にスライド可能である。なお、同図では図示されていないが、内筒35は、外筒34に対して左右対象に配置されており、アウトリガシリンダ36によって一対の内筒35が左右にスライドされる。
【0039】
アウトリガシリンダ36は、一対の内筒35に対してそれぞれ1つずつ設けられていてもよいし、一対の内筒35に対して1つだけ設けられていてもよい。すなわち、一対の内筒35は、それぞれ独立してスライドされてもよいし、連動してスライドされてもよい。以下では、2つのアウトリガシリンダ36が設けられ、前アウトリガ31の左右一対の内筒35がそれぞれ独立してスライド可能である例を説明する。アウトリガシリンダ36は、本発明の「第1駆動装置」の一例である。なお、図2では、複数の内筒35及び複数のアウトリガシリンダ36のうち、一の内筒35及びアウトリガシリンダ36のみが示されている。
【0040】
アウトリガシリンダ36は、油圧装置22によって駆動される。このアウトリガシリンダ36が作動することによって、内筒35は、外筒34に格納された格納位置(図3)と、外筒34から張り出された張出位置(図8)との間でスライド(変位)する。
【0041】
各内筒35の先端にジャッキ37がそれぞれ設けられている。ジャッキ37は、油圧装置22によって駆動され、地面から離間する離間位置(図3)と、地面または地面に敷設された鉄板等に当接する接地位置(図8)との間で伸縮する。
【0042】
後アウトリガ32は、車体20の後部に設けられている。後アウトリガ32は、前アウトリガ31と同様の構成であり、外筒34、左右一対の内筒35、左右一対のジャッキ37、及び2つのアウトリガシリンダ36を備える。
【0043】
前アウトリガ31及び後アウトリガ32の4つのジャッキ37の下端がそれぞれ接地することにより、クレーン車10は、安定して支持される。以下では、前アウトリガ31及び後アウトリガ32を、アウトリガ31、32と記載して説明することがある。
【0044】
アウトリガ31、32は、固定装置51をそれぞれ備えている。一の内筒35に対して一の固定装置51が設けられている。すなわち、前アウトリガ31には、2つの固定装置51が設けられており、後アウトリガ32には、2つの固定装置51が設けられている。固定装置51は、外筒34に対して内筒35を、格納位置、張出位置、その間の中間位置に固定する。以下、詳しく説明する。
【0045】
固定装置51は、外筒34に設けられている。図3では、固定装置51は、外筒34の先端部の上面に設けられている。ただし、固定装置51は、外筒34の先端部の上面以外の位置に設けられていてもよい。
【0046】
固定装置51は、固定シリンダ52(図2)と、固定ピン53とを備える。固定シリンダ52は、油圧装置22から供給される作動油によって伸縮される。固定ピン53は、固定シリンダ52の伸縮により、上下に移動される。
【0047】
アウトリガ31、32の外筒34は、固定ピン53が挿通される第1貫通孔54を有する。第1貫通孔54は、外筒34の上壁85及び下壁86にそれぞれ設けられている。上壁85に設けられた第1貫通孔54と、下壁86に設けられた第1貫通孔54とは、上下方向において対向する。すなわち、上下一対の第1貫通孔54が外筒34に設けられている。固定ピン53は、固定シリンダ52によって、一対の第1貫通孔54に挿通された固定位置(図7)と、第1貫通孔54から外れた非固定位置(図3)との間で移動される。上壁85及び下壁86は、本発明の「側壁」の一例である。固定ピン53は、本発明の「固定部材」の一例である。固定シリンダ52は、本発明の「第2駆動装置」の一例である。
【0048】
アウトリガ31、32の内筒35は、固定ピン53が挿通される第2貫通孔55、第3貫通孔56、及び第4貫通孔57を有する。
【0049】
第2貫通孔55は、内筒35の上壁87及び下壁88にそれぞれ設けられている。上壁87に設けられた第2貫通孔55と、下壁88に設けられた第2貫通孔55とは、上下方向において対向する。すなわち、上下一対の第2貫通孔55が内筒35に設けられている。上壁87及び下壁88は、本発明の「側壁」の一例である。
【0050】
第2貫通孔55は、上述の第1貫通孔54とほぼ同じ直径であり、固定ピン53の直径よりも僅かに大きい。第2貫通孔55は、内筒35が所定の中間位置にある場合に、第1貫通孔54と上下方向において重なる位置に設けられている。具体的には、第2貫通孔55は、内筒35の移動方向(図3における左右方向)における内筒35の中間部に設けられている。すなわち、所定の中間位置とは、第1貫通孔54と第2貫通孔55とが上下方向において重なる位置である。
【0051】
第3貫通孔56は、内筒35の上壁87及び下壁88にそれぞれ設けられている。上壁87に設けられた第3貫通孔56と、下壁88に設けられた第3貫通孔56とは、上下方向において対向する。すなわち、上下一対の第3貫通孔56が内筒35に設けられている。
【0052】
第3貫通孔56は、上述の第1貫通孔54とほぼ同じ直径であり、固定ピン53の直径よりも僅かに大きい。第3貫通孔56は、内筒35が格納位置にある場合に、第1貫通孔54と上下方向において重なる位置に設けられている。具体的には、第3貫通孔56は、内筒35の移動方向(図3における左右方向)における内筒35の先端部に設けられている。
【0053】
第4貫通孔57は、内筒35の上壁87及び下壁88にそれぞれ設けられている。上壁87に設けられた第4貫通孔57と、下壁88に設けられた第4貫通孔57とは、上下方向において対向する。すなわち、上下一対の第4貫通孔57が内筒35に設けられている。
【0054】
第4貫通孔57は、上述の第1貫通孔54とほぼ同じ直径であり、固定ピン53の直径よりも僅かに大きい。第4貫通孔57は、内筒35が張出位置にある場合に、第1貫通孔54と上下方向において重なる位置に設けられている。具体的には、第4貫通孔57は、内筒35の移動方向(図3における左右方向)における内筒35の基端部に設けられている。
【0055】
図には示されていないが、外筒34は、張出位置から格納位置に移動された内筒35が格納位置において当接する位置決め部材を有している。また、外筒34は、格納位置から張出位置に移動された内筒35が張出位置において当接する位置決め部材を有している。第3貫通孔56は、張出位置から格納位置に移動された内筒35が格納位置において位置決め部材に当接したときに、外筒34の第1貫通孔54と上下方向において重なる。また、第4貫通孔57は、格納位置から張出位置に移動された内筒35が張出位置において位置決め部材に当接したときに、外筒34の第1貫通孔54と上下方向において重なる。
【0056】
固定装置51の固定ピン53は、内筒35が格納位置にあって、第1貫通孔54と第3貫通孔56とが重なった状態において、第1貫通孔54から外れた非固定位置から、第1貫通孔54及び第3貫通孔56に挿通された固定位置に移動される。固定位置にある固定ピン53は、内筒35を格納位置に固定する。
【0057】
また、固定装置51の固定ピン53は、内筒35が張出位置にあって、第1貫通孔54と第4貫通孔57とが重なった状態において、第1貫通孔54から外れた非固定位置から、第1貫通孔54及び第4貫通孔57に挿通された固定位置に移動される。固定位置にある固定ピン53は、内筒35を張出位置に固定する。
【0058】
また、固定装置51の固定ピン53は、内筒35が中間位置にあって、第1貫通孔54と第2貫通孔55とが重なった状態において、第1貫通孔54から外れた非固定位置から、第1貫通孔54及び第2貫通孔55に挿通された固定位置に移動される。固定位置にある固定ピン53は、内筒35を中間位置に固定する。
【0059】
固定装置51は、図2に示されるように、第1センサ91と、第2センサ92と、第3センサ93と、第4センサ94と、をさらに備える。
【0060】
第1センサ91は、内筒35が中間位置にあることを検出するセンサである。詳しく説明すると、第1センサ91は、図7の拡大図に示されるように、フォトインタラプタ70と、ミラー73とを備える。フォトインタラプタ70は、発光ダイオード71と、フォトダイオード72とを有する。第1センサ91は、本発明の「センサ」の一例である。発光ダイオード71は、本発明の「発光素子」の一例である。フォトダイオード72は、本発明の「受光素子」の一例である。ミラー73は、本発明の「反射部材」の一例である。
【0061】
発光ダイオード71は、外筒34の上面に配置されており、下向きに光を照射する。外筒34の上壁85には、発光ダイオード71の光が通過する検出窓84が開口されている。発光ダイオード71が照射する光は、検出窓84を通過する。
【0062】
ミラー73は、内筒35の上壁87の上面に配置されている。具体的には、ミラー73は、内筒35が中間位置にあるときに、発光ダイオード71が照射した光が入射する位置に配置されている。すなわち、ミラー73は、内筒35が中間位置にあって外筒34の第1貫通孔54と内筒35の第2貫通孔55とが上下に重なったときに、発光ダイオード71が照射した光を反射する。
【0063】
フォトダイオード72は、ミラー73が反射した光を受光する位置に設けられている。具体的には、フォトダイオード72は、発光ダイオード71と水平方向に並んで配置され、外筒34に固定されている。
【0064】
フォトダイオード72は、内筒35が中間位置にあってミラー73が反射した光を受光したときと、内筒35が中間位置になくミラー73が反射した光を受光しないときとで、異なる電圧値の検出信号を出力する。すなわち、第1センサ91は、内筒35が中間位置にあることを検出する。
【0065】
第2センサ92は、例えば、押し操作される操作部を有するモーメンタリ型の機械スイッチである。操作部は、格納位置から張出位置に移動された内筒35によって押し操作される。すなわち、第2センサ92は、内筒35が張出位置にある場合と張出位置にない場合とで異なる電圧値の検出信号を出力する。すなわち、第2センサ92は、内筒35が張出位置にあることを検出するセンサである。
【0066】
第3センサ93は、例えば、押し操作される操作部を有するモーメンタリ型の機械スイッチである。操作部は、張出位置から格納位置に移動された内筒35によって押し操作される。すなわち、第3センサ93は、内筒35が格納位置にある場合と格納位置にない場合とで異なる電圧値の検出信号を出力する。すなわち、第3センサ93は、内筒35が格納位置にあることを検出するセンサである。図3は、第3センサ93の操作部が、格納位置にある内筒35の基端によって押し操作される例を示している。ただし、第3センサ93の操作部は、内筒35に設けられた突片など、格納位置にある内筒35の一部によって押し操作される操作部を備えていてもよい。また、第3センサは93は、格納位置にある内筒35の一部が光路上に位置するように設けられたフォトインタラプタなどであってもよい。
【0067】
第4センサ94は、例えば、押し操作される操作部を有するモーメンタリ型の機械スイッチである。操作部は、固定位置から非固定位置に移動された固定ピン53、或いは、非固定位置から固定位置に移動された固定ピン53によって押し操作される。すなわち、第4センサ94は、固定ピン53が固定位置にある場合と、非固定位置にある場合とで、異なる電圧値の検出信号を出力する。すなわち、第4センサ94は、固定ピン53の位置を検出するセンサである。
【0068】
なお、第2センサ92、第3センサ93、及び第4センサ94は、内筒35が張出位置にあること、内筒35が格納位置にあること、及び固定ピン53が非固定位置にあることを検出可能であれば、磁気センサなど、他の種類のセンサが用いられてもよい。
【0069】
第1センサ91、第2センサ92、第3センサ93、及び第4センサ94が出力した検出信号は、図2に示されるコントローラ60に入力される。
【0070】
コントローラ60は、中央演算処理装置であるCPU61と、ROM62と、RAM63と、メモリ64と、を備える。
【0071】
ROM62は、オペレーションシステムであるOS65と、制御プログラム66とを記憶する。制御プログラム66は、アドレスに記述された命令をCPU61が実行することにより、実行される。詳しくは後述するが、制御プログラム66は、油圧装置22等の駆動を制御してクレーン装置12やアウトリガ31、32を動作させるプログラムである。
【0072】
RAM63は、制御プログラム66の実行に用いられる。メモリ64は、制御プログラム66の実行に必要な設定値や閾値を記憶する。
【0073】
コントローラ60には、操縦装置14、第1センサ91~第4センサ94、アウトリガ操作盤74、点灯回路83、ディスプレイ16、及び油圧装置22が備える電磁弁等と接続されている。
【0074】
操縦装置14は、ブーム43を動作させる操作レバー等の他、4つの張出ボタン68及び4つの格納ボタン69を有する。一の張出ボタン68は、一のアウトリガシリンダ36を駆動させて一の内筒35を張り出させるボタンである。一の格納ボタン69は、一のアウトリガシリンダ36を駆動させて一の内筒35を格納させるボタンである。張出ボタン68及び格納ボタン69が出力する操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60は、張出ボタン68及び格納ボタン69から入力された操作信号に基づいて、4つのアウトリガシリンダ36を駆動し、アウトリガ31、32の4つの内筒35を張り出し、又は、格納する。なお、4つの張出ボタン68及び4つの格納ボタン69は、後述のアウトリガ操作盤74に設けられていてもよい。張出ボタン68及び格納ボタン69は、本発明の「第1入力部」の一例である。
【0075】
ディスプレイ16は、コントローラ60から入力された画像信号に応じた画像を表示する。例えば、ディスプレイ16は、クレーン装置12の操作状況等を表示する。
【0076】
コントローラ60は、油圧装置22の電磁弁等に駆動信号を入力し、旋回モータ23、起伏シリンダ47、伸縮シリンダ48、ウインチ49、アウトリガシリンダ36、ジャッキ37、及び固定シリンダ52への作動油の供給の有無及び供給量を制御する。すなわち、コントローラ60は、旋回モータ23、起伏シリンダ47、伸縮シリンダ48、ウインチ49、アウトリガシリンダ36、ジャッキ37、及び固定シリンダ52の駆動を制御する。コントローラ60は、旋回モータ23、起伏シリンダ47、伸縮シリンダ48、ウインチ49、アウトリガシリンダ36、ジャッキ37、及び固定シリンダ52を介して、旋回台41、ブーム43、フック50、内筒35、及び固定ピン53を動作させる。
【0077】
アウトリガ操作盤74は、図4に示すように、図形75と、4つの操作ボタン76~79と、固定解除ボタン80と、を有する。図形75は、クレーン車10の模式的な形状を示す。
【0078】
操作ボタン76~79は、図形75におけるクレーン車10のアウトリガ31、32を示す部分に重ねて配置されている。操作ボタン76は、前アウトリガ31の左の内筒35の固定シリンダ52を駆動させて固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させるボタンである。操作ボタン77は、前アウトリガ31の右の内筒35の固定シリンダ52を駆動させて固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させるボタンである。操作ボタン78は、後アウトリガ32の左の内筒35の固定シリンダ52を駆動させて固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させるボタンである。操作ボタン79は、後アウトリガ32の右の内筒35の固定シリンダ52を駆動させて固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させるボタンである。操作ボタン76~79は、本発明の「第2入力部」の一例である。操作ボタン76~79は、同一の構成であるので、以下では、操作ボタン76についてのみ説明する。
【0079】
操作ボタン76は、例えば、押し操作されたときに閉じる接点を有するスイッチである。操作ボタン76が出力する操作信号は、コントローラ60に入力される。詳しくは後述するが、コントローラ60は、操作ボタン76から操作信号が入力されたことに応じて、前アウトリガ31の左の外筒34に設けられた固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させる。
【0080】
操作ボタン76には、ランプ82が設けられている。ランプ82は、例えば、発光ダイオードである。ランプ82は、点灯回路83によって点灯される。点灯回路83は、例えば、定電圧回路や定電流回路である。点灯回路83は、コントローラ60と接続されている。すなわち、コントローラ60によって、ランプ82が点灯され、点灯されたランプ82は、操作ボタン76を照明する。詳しくは後述するが、コントローラ60は、内筒35が中間位置に有る場合に、点灯回路83を駆動させてランプ82を点灯させる。ランプ82は、本発明の「報知部」の一例である。
【0081】
固定解除ボタン80は、固定シリンダ52を駆動させて固定ピン53を固定位置から非固定位置に移動させるボタンである。4つの固定ピン53に対して4つの固定解除ボタン80がアウトリガ操作盤74に設けられていてもよいし、図4に示す例のように、1つの固定解除ボタン80のみがアウトリガ操作盤74に設けられていてもよい。
【0082】
[張出/格納処理]
【0083】
以下、アウトリガ31、32を張り出し、又は格納する際にコントローラ60の制御プログラム66が実行する張出/格納処理について、図5を参照して説明する。なお、以下では、制御プログラム66が実行する処理を、コントローラ60が実行する処理として記載する。
【0084】
張出/格納処理は、操縦装置14において所定の動作が実行されたことをトリガに実行される。所定の動作とは、例えば、操縦装置14の電源がオンにされたことや、操縦装置14において所定の操作がされたことなどである。
【0085】
コントローラ60は、張出ボタン68又は格納ボタン69が操縦者によって押し操作されたか否かを判断する(S10)。具体的には、コントローラ60は、張出ボタン68又は格納ボタン69から操作信号が入力されたか否かを判断する。
【0086】
コントローラ60は、張出ボタン68又は格納ボタン69が押し操作されていないと判断すると(S10:No)、アウトリガシリンダ36を駆動させず、或いはアウトリガシリンダ36の駆動を停止させる。すなわち、内筒35の移動を停止させる(S11)。
【0087】
コントローラ60は、張出ボタン68又は格納ボタン69が押し操作されていると判断すると(S10:Yes)、押し操作されている張出ボタン68又は格納ボタン69に対応するアウトリガシリンダ36を駆動させ、内筒35を張出位置に向かって、又は格納位置に向かって移動させる(S12)。ステップS12の処理は、本発明の「内筒駆動処理」の一例である。
【0088】
コントローラ60は、内筒35を移動させている間、第1センサ91から入力された検出信号に基づいて、内筒35の第2貫通孔55と外筒34の第1貫通孔54とが重なる位置である所定の中間位置に内筒35が到達したか否かを判断する(S13)。
【0089】
コントローラ60は、内筒35が所定の中間位置に到達していないと判断すると(S13:No)、ステップS10~S12の処理を繰り返し実行する。すなわち、張出ボタン68又は格納ボタン69が押し操作されている間、内筒35の移動が継続される。
【0090】
コントローラ60は、内筒35が所定の中間位置に到達したと判断すると(S13:Yes)、中間位置に到達した内筒35に対応する操作ボタン76~79のランプ82を点灯させる。ランプ82が点灯することにより、内筒35が中間位置に到達したことを操縦者に認識させる。操縦者は、内筒35を中間位置で固定する場合、ランプ82が点灯したことに応じて張出ボタン68又は格納ボタン69から指を離し、内筒35の移動を停止させる。操縦者は、内筒35を張出位置で固定する場合や、内筒35を格納位置で固定する場合、ランプ82が点灯したか否かに拘わらず、張出ボタン68又は格納ボタン69の押し操作を継続する。
【0091】
コントローラ60は、内筒35が中間位置から外れたか否かを判断する(S15)。具体的には、コントローラ60は、第1センサ91から入力された検出信号に基づいて、内筒35が中間位置から外れたか否かを判断する。
【0092】
コントローラ60は、内筒35が中間位置から外れたと判断すると(S15:Yes)、点灯回路83の駆動を停止し、ランプ82を消灯させる(S16)。一方、コントローラ60は、内筒35が中間位置から外れていないと判断すると(S15:No)、ランプ82の点灯を継続する。
【0093】
次に、コントローラ60は、操作ボタン76~79が押し操作されたか否かを判断する(S17)。コントローラ60は、操作ボタン76~79が押し操作されたと判断すると(S17:Yes)、押し操作された操作ボタン76~79のランプ82を点灯させているか否かを判断する(S18)。すなわち、コントローラ60は、押し操作された操作ボタン76~79に対応する内筒35が中間位置にあるか否かを判断する。
【0094】
コントローラ60は、押し操作された操作ボタン76~79のランプ82が点灯していると判断すると(S18:Yes)、押し操作された操作ボタン76~79に対応する固定シリンダ52を駆動させ、押し操作された操作ボタン76~79に対応する固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させる(S20)。すなわち、コントローラ60は、押し操作された操作ボタン76~79に対応する内筒35を、所定の中間位置において外筒34に固定する。ステップS20の処理は、本発明の「固定処理」の一例である。
【0095】
一方、コントローラ60は、押し操作された操作ボタン76~79のランプ82が点灯していないと判断すると(S18:No)、内筒35が格納位置或いは張出位置にあるか否かを判断する。具体的には、コントローラ60は、第2センサ92及び第3センサ93から入力する検出信号に基づいて、内筒35が格納位置にあるか否か、或いは内筒35が張出位置にあるか否かを判断する(S19)。
【0096】
コントローラ60は、内筒35が格納位置或いは張出位置にあると判断すると(S19:Yes)、押し操作された操作ボタン76~79に対応する固定シリンダ52を駆動させ、押し操作された操作ボタン76~79に対応する固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させる(S20)。すなわち、コントローラ60は、押し操作された操作ボタン76~79に対応する内筒35を、格納位置或いは張出位置において外筒34に固定する。
【0097】
コントローラ60は、内筒35が中間位置にも格納位置にも張出位置にもないと判断すると(S18:No、S19:No)、固定ピン53を移動させることなく、張出ボタン68及び格納ボタン69の押し操作を継続して受け付ける(S10)。
【0098】
[固定解除処理]
【0099】
次に、固定位置にある固定ピン53を移動させて非固定位置に移動させ、内筒35の固定を解除する固定解除処理について、図6を参照して説明する。
【0100】
コントローラ60は、固定解除ボタン80が操縦者によって押し操作されたか否かを判断する(S21)。コントローラ60は、固定解除ボタン80が押し操作されたと判断すると(S21:Yes)、固定位置にある固定ピン53が非固定位置に移動するように固定シリンダ52を駆動させる(S22)。ここにおいて、固定位置にある固定ピン53は、外筒34の第1貫通孔54と内筒35の貫通孔55~57との位置がずれている場合、第1貫通孔54の内周面と内筒35の貫通孔55~57の内周面とに挟まれる。すなわち、固定ピン53は、内筒35及び外筒34からせん断力を受ける。したがって、外筒34に対する内筒35の位置によっては、固定シリンダ52を駆動しても固定ピン53が非固定位置に移動しないことがある。
【0101】
コントローラ60は、第4センサ94から入力する検出信号に基づいて、固定ピン53が非固定位置に移動したか否かを判断する(S23)。コントローラ60は、固定ピン53が非固定位置に移動したと判断すると(S23:Yes)、固定解除処理を終了する。ステップS22の処理は、本発明の「固定解除処理」の一例である。ステップS23の処理は、本発明の「判断処理」の一例である。
【0102】
一方、コントローラ60は、固定ピン53が非固定位置に移動していないと判断すると(S23:No)、アウトリガシリンダ36を駆動させ、内筒35を、格納位置から張出位置に向かう向き、或いは、張出位置から格納位置に向かう向きに、僅かに移動させる(S24)。「僅かに移動」とは、例えば、内筒35を張り出し或いは格納する際の内筒35の移動速度よりもはるかに低速で、内筒35を所定時間の間移動させることを意味する。所定時間は、メモリ64に予め記憶される。ステップS24の処理は、本発明の「移動処理」の一例である。
【0103】
そして、コントローラ60は、固定位置にある固定ピン53が非固定位置に移動するように固定シリンダ52を駆動させた後(S25)、第4センサ94から入力する検出信号に基づいて、固定ピン53が非固定位置に移動したか否かを判断する(S26)。コントローラ60は、固定ピン53が非固定位置に移動したと判断すると(S26:Yes)、固定解除処理を終了する。ステップS25の処理は、本発明の「固定解除処理」の一例である。ステップS26の処理は、本発明の「判断処理」の一例である。
【0104】
一方、コントローラ60は、固定ピン53が非固定位置に移動していないと判断すると(S26:No)、アウトリガシリンダ36を駆動させ、内筒35を、ステップS24で内筒35を移動させた向きとは反対向きに僅かに移動させる(S27)。ステップS27の処理は、本発明の「移動処理」の一例である。
【0105】
そして、コントローラ60は、固定位置にある固定ピン53が非固定位置に移動するように固定シリンダ52を駆動させた後(S28)、第4センサ94から入力する検出信号に基づいて、固定ピン53が非固定位置に移動したか否かを判断する(S29)。コントローラ60は、固定ピン53が非固定位置に移動したと判断すると(S29:Yes)、固定解除処理を終了する。ステップS28の処理は、本発明の「固定解除処理」の一例である。
【0106】
一方、コントローラ60は、固定ピン53が非固定位置に移動していないと判断すると(S29:No)、エラー報知を行い(S30)、固定解除処理を終了する。エラー報知は、例えば、「左前のアウトリガのロックを解除できません」の文字をディスプレイ16に表示することによって、或いは、不図示のスピーカから音声を出力することなどによって行われる。操縦者は、例えば、固定ピン53や内筒35を揺すってせん断力を解消した後、固定解除ボタン80を再度押し操作する。
【0107】
[実施形態の作用効果]
【0108】
本実施形態では、第1センサ91は、外筒34の第1貫通孔54と内筒35の第2貫通孔55とが重なった所定の中間位置に内筒35がある場合と、内筒35が中間位置から外れた位置にある場合とで、異なる電圧値の検出信号を出力するので、内筒35が中間位置にあるか否かを第1センサ91によって検出することができる。したがって、内筒35が所定の中間位置にあるときに固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させて、内筒35を外筒34に固定することができる。
【0109】
また、本実施形態では、ミラー73を用いるので、発光ダイオード71とフォトダイオードとを並んで配置することができる。その結果、発光ダイオード71を外筒34に設けフォトダイオード72を内筒35に設ける場合よりも、電気的な配線が容易になる。
【0110】
また、本実施形態では、コントローラ60は、ランプ82が点灯している場合、すなわち、内筒35が所定の中間位置にあって第1貫通孔54と第2貫通孔55とが重なっている場合に、固定ピン53を移動させて内筒35を外筒34に固定する。したがって、内筒35と外筒34とが位置ずれした状態で固定ピン53が移動されて固定ピン53が破損することが防止される。
【0111】
また、本実施形態では、内筒35が中間位置にあって外筒34の第1貫通孔54と内筒35の第2貫通孔55とが上下に重なっている場合に、操作ボタン76~79のランプ82が点灯する。操縦者は、ランプ82が点灯したことにより、内筒35が中間位置にあることを認識する。したがって、内筒35を固定可能な状態であるか否かを操縦者に容易に認識させることができる。
【0112】
また、本実施形態では、固定解除処理を実行することにより、固定位置にある固定ピン53を自動で非固定位置に移動させることができる。その結果、操縦者が内筒35を揺すって固定ピン53に加わるせん断力を解消する手間が省ける。
【0113】
[変形例]
【0114】
上述の実施形態では、操縦者が操作ボタン76~79を押し操作して内筒35を固定する例を説明した。本変形例では、内筒35の張出及び固定をコントローラ60が行う例を説明する。なお、上述の実施形態と同様の構成及び処理には、同一の符号を付して説明を省略する。また、以下で説明する構成及び処理以外の構成及び処理は、上述の実施形態と同様である。
【0115】
クレーン車10は、アウトリガ操作盤74に代えて、アウトリガ31、32の内筒35の位置を指定する不図示の入力部を備える。入力部は、ボタンであってもよいし、タッチパネル等であってもよい。
【0116】
図9を参照して、コントローラ60が実行する張出処理を説明する。張出処理は、格納位置にある内筒35を中間位置或いは張出位置に移動させ、固定ピン53を用いて固定する処理である。
【0117】
コントローラ60は、張出ボタン68が操縦者によって押し操作されたか否かを判断する(S10)。コントローラ60は、張出ボタン68が押し操作されたと判断すると(S10:Yes)、操縦者が指定した内筒35の位置を判断する(S31)。コントローラ60は、操縦者が指定した内筒35の位置が中間位置であると判断すると(S31:中間位置)、アウトリガシリンダ36を駆動させ、第1速度で内筒35を移動させる(S32)。第1速度を決定する所定値が、メモリ64に予め記憶される。
【0118】
次に、コントローラ60は、第1速度での内筒35の移動時間が閾値時間に到達したか否かを判断する(S33)。例えば、コントローラ60は、アウトリガシリンダ36の駆動時間をタイマカウンタでカウントし、タイマカウンタのカウント値が、メモリ64に予め記憶された閾値時間に到達したか否かを判断する。閾値時間は、内筒35が中間位置の手前の位置に到達するまでの時間である。すなわち、コントローラ60は、ステップS33において、内筒35が中間位置の手前の位置まで到達したか否かを判断する。内筒35が中間位置の手前の位置まで到達したときは、本発明の「上記第1貫通孔及び第2貫通孔が近接したとき」の一例である。
【0119】
コントローラ60は、第1速度での内筒35の移動時間が閾値時間に到達していないと判断すると(S33:No)、第1速度での内筒35の移動を継続して行う。一方、コントローラ60は、第1速度での内筒35の移動時間が閾値時間に到達したと判断すると(S33:Yes)、第2速度で内筒35を移動させる(S34)。第2速度は、第1速度よりも遅い速度である。すなわち、コントローラ60は、内筒35を中間位置で停止可能なように、中間位置の手間で内筒35の速度を減速させる。
【0120】
次に、コントローラ60は、第1センサ91から入力する検出信号に基づいて、内筒35が中間位置に到達したか否かを判断する(S13)。コントローラ60は、内筒35が中間位置に到達していないと判断すると(S13:No)、第2速度での内筒35の移動を継続する。
【0121】
一方、コントローラ60は、内筒35が中間位置に到達したと判断すると(S13:Yes)、アウトリガシリンダ36の駆動を停止させ、内筒35の移動を停止させる(S35)。そして、コントローラ60は、固定シリンダ52を駆動させ、固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させ(S20)、張出処理を終了させる。
【0122】
コントローラ60は、ステップS31において、操縦者が指定した内筒35の位置が張出位置であると判断すると(S31:張出位置)、アウトリガシリンダ36を駆動させて内筒35を張出位置に向かって移動させる。そして、コントローラ60は、第2センサ92から入力する検出信号に基づいて、内筒35が張出位置に到達したか否かを判断する(S36)。コントローラ60は、内筒35が張出位置に到達していないと判断すると(S36:No)、内筒35の移動を継続する。
【0123】
一方、コントローラ60は、内筒35が張出位置に到達したと判断すると(S36:Yes)、内筒35の移動を停止させる(S35)。そして、コントローラ60は、固定シリンダ52を駆動させて固定ピン53を非固定位置から固定位置に移動させ(S20)、張出処理を終了させる。
【0124】
[変形例の作用効果]
【0125】
本変形例によれば、操縦者が内筒35の位置(中間位置又は張出位置)を指定して張出ボタン68を押し操作するだけで、アウトリガ31、32の内筒35が中間位置或いは張出位置で固定される。したがって、内筒35の位置合わせを行って固定ピン53を移動させる操縦者の手間を省くことができる。
【0126】
[その他の変形例]
【0127】
上述の実施形態では、操作ボタン76~79をランプ82で点灯させることにより、内筒35が中間位置にあることを操縦者に認識させる例を説明した。しかしながら、ランプ82以外により、例えば、スピーカが出力する音声や、ディスプレイ16に表示させる文字や図形により、内筒35が中間位置にあることを操縦者に認識させてもよい。
【0128】
また、上述の実施形態では、操作ボタン76~79や固定解除ボタン80や張出ボタン68や格納ボタン69など、ボタンを用いて操縦者の入力を受け付ける例を説明した。しかしながら、ボタン以外、例えば、タッチパネルや音声入力装置を用いて、操縦者の入力を受け付けてもよい。
【0129】
また、上述の実施形態では、固定装置51が外筒34に設けられた例を説明した。しかしながら、固定装置51は、内筒35に設けられていてもよい。
【0130】
また、上述の実施形態では、内筒35を外筒34に固定する固定部材として、直線状の固定ピン53が用いられた例を説明した。しかしながら、内筒35を外筒34に固定可能であれば、ピン以外の部材が固定部材として用いられてもよい。例えば、円弧状の部材が固定部材として用いられてもい。
【0131】
また、上述の実施形態では、フォトインタラプタ70が外筒34に設けられた例を説明した。しかしながら、フォトインタラプタ70は、固定ピン53に設けられていてもよい。
【0132】
また、上述の実施形態では、第2センサ92の発光ダイオード71及びフォトダイオード72が外筒34に設けられ、ミラー73が内筒35に設けられた例を説明した。しかしながら、発光ダイオード71及びフォトダイオード72が内筒35に設けられ、ミラー73が外筒34に設けられていてもよい。
【0133】
また、上述の実施形態では、ミラー73が内筒35の上壁87の上面に設けられた例を説明した。しかしながら、ミラー73は、内筒35の上壁87の下面や、下壁88の上面に設けられていてもよい。内筒35の上壁87の下面や下壁88の上面にミラー73が設けられる場合、発光ダイオード71が照射した光が通過する貫通孔が内筒35の上壁87に設けられる。
【0134】
また、上述の実施形態では、ミラー73を用いて内筒35が中間位置にあるか否かを検出する例を説明した。しかしながら、ミラー73を用いなくてもよい。例えば、発光ダイオード71が外筒34に設けられ、フォトダイオード72が内筒35に設けられていてもよい。或いは、発光ダイオード71が内筒35に設けられ、フォトダイオード72が外筒34に設けられていてもよい。
【0135】
また、上述の実施形態では、フォトインタラプタ70を有する第2センサ92を用いて内筒35が中間位置にあるか否かを検出する例を説明した。しかしながら、フォトインタラプタ70以外のセンサを用いて内筒35が中間位置にあるか否かが検出されてもよい。例えば、中間位置にある内筒35によって押し操作される操作部を備えたモーメンタリ型の機械スイッチが用いられてもよいし、中間位置にある内筒35によって変化される磁界を検出する磁気センサが用いられてもよい。
【0136】
また、上述の実施形態では、内筒35が張出位置にあるか否かを検出する第2センサ92及び内筒35が格納位置にあるか否かを検出する第3センサ93がアウトリガ31、32設けられた例を説明した。しかしながら、第1センサ91を用いて、内筒35が張出位置及び格納位置にあるか否かが検出されてもよい。例えば、第2センサ92及び第3センサ93に代えて、内筒35が張出位置にあるときに発光ダイオード71が照射した光を反射する位置に配置されたミラーと、内筒35が格納位置にあるときに発光ダイオード71が照射した光を反射する位置に配置されたミラーとが内筒35に設けられる。コントローラ60は、アウトリガシリンダ36の駆動時間、及び、第1センサ91から入力する検出信号とに基づいて、内筒35が、張出位置にあるか否か、格納位置にあるか否か、及び中央位置にあるか否かを判断する。
【0137】
また、上述の実施形態では、一の中間位置で内筒35を固定する例を説明した。しかしながら、中間位置は、複数であってもよい。その場合、各中間位置において第1貫通孔54に重なる複数の第2貫通孔55が内筒35にそれぞれ設けられる。また、各中間位置において発光ダイオード71が照射した光をそれぞれ反射する複数のミラー73が内筒35に設けられる。
【符号の説明】
【0138】
10・・・クレーン車
11・・・走行体
12・・・クレーン装置
14・・・操縦装置
22・・・油圧装置
31・・・前アウトリガ
32・・・後アウトリガ
34・・・外筒
35・・・内筒
36・・・アウトリガシリンダ
37・・・ジャッキ
51・・・固定装置
52・・・固定シリンダ
53・・・固定ピン
54・・・第1貫通孔
55・・・第2貫通孔
60・・・コントローラ
68・・・張出ボタン
69・・・格納ボタン
71・・・発光ダイオード
72・・・フォトダイオード
73・・・ミラー
74・・・アウトリガ操作盤
76~79・・・操作ボタン
80・・・固定解除ボタン
82・・・ランプ
91・・・第1センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9