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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】積層フィルムおよび包装容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20221109BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20221109BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221109BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B7/02
B65D65/40 D
B65D81/34 U
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018152324
(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公開番号】P2020026095
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】黒飛 みずほ
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068416(JP,A)
【文献】特開2015-013441(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061651(WO,A1)
【文献】特開2015-209215(JP,A)
【文献】特開2011-031439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B65D 81/32- 81/36
B65D 65/00- 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着可能な内層と、
前記内層に積層された外層と、
前記内層と前記外層との間に設けられた中間層と、
前記外層と前記中間層との間において、インキにより形成されたインキ層と、
前記インキ層の範囲内に形成され、前記中間層の厚さ方向における中間部に達する深さを有する脆弱加工部と、
を備え、
前記中間層と前記内層との間のラミネート強度が1.5N/15mmよりも大きく、
前記中間層は、基材層として比較的剛性の高い材料から形成されている、
層フィルム。
【請求項2】
熱融着可能な内層と、
前記内層に積層された外層と、
前記内層と前記外層との間に設けられた中間層と、
前記外層と前記中間層との間において、インキにより形成されたインキ層と、
前記インキ層の範囲内に形成され、前記中間層の厚さ方向における中間部に達する深さを有する脆弱加工部と、
を備え、
前記中間層と前記内層との間のラミネート強度が1.5N/15mmよりも大きく、
前記中間層は、基材層としてレーザー照射により少なくとも一部を除去できる樹脂材料から構成されている、
積層フィルム。
【請求項3】
前記脆弱加工部は、前記中間層の前記厚さ方向において、前記中間層を貫通する深さを有する請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記インキ層は、少なくとも380nmから700nmまでの波長を有する光を反射し発色することができる前記インキによって形成される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記中間層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ナイロン(ONy)の群から選ばれるいずれかの樹脂材料から構成されている、請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の前記積層フィルムを少なくとも一部に備え、電子レンジによる加熱時に、前記脆弱加工部に開口が形成される、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、より詳しくは、包装容器に用いることで内容物を電子レンジにより好適に加熱できる積層フィルム、およびこの積層フィルムを用いた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済みまたは半調理状態の食品を常温、低温、あるいは冷凍保存可能に包装袋やカップ容器等の包装容器に収容し、開封せずに電子レンジで加熱して、食用可能な状態にする技術が知られている。
【0003】
包装容器を開封せずに電子レンジで加熱すると、包装容器内の水分が水蒸気になり、体積が増加する。したがって、水蒸気が逃げられる隙間がないと包装容器の破裂等の恐れがある。一方、内容物が半調理状態等の場合は、単に加熱するだけではなく、発生した水蒸気による蒸らし等が必要となる場合がある。この場合、蒸気が逃げる孔等が過度に大きいと、蒸らしが十分行われず、風味が落ちる等の課題がある。
【0004】
上記用途に対応し、電子レンジによる加熱時に蒸らしも可能な包装袋としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この包装袋では、外層および内層を有する積層フィルムの一部に、外層に対するレーザー照射により形成され、少なくとも外層の内部に達し、かつ、内層を貫通しない程度の深さを有する脆弱加工部を形成する構成が開示されている。この包装袋を電子レンジで加熱すると、内層が裂けて小さな孔が形成される。したがって、過度に水蒸気が逃げず、破裂を防ぎつつ蒸らしを行うことができる。
また、特許文献1に記載の包装袋は、脆弱加工部およびその周囲において、インキを印刷することにより形成されたインキ層を有していない。すなわち、特許文献1に記載の包装袋における脆弱加工部およびその周囲は、ほぼ透明に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6167702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された包装袋を形成するための積層フィルムに対して、図6に示された検査装置を用いて検査を行うことがある。具体的に、例えば、ローラー200に積層フィルム10を巻き付けて回転させながら、検査用カメラ300から発する可視光によって積層フィルム10を照射し、反射光を用いて、脆弱加工部とその周囲との色差を検出することにより、脆弱加工部が確実に形成されているか否かを検査する方法がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された包装袋を形成する積層フィルムは、脆弱加工部およびその周囲がほぼ透明に形成されている。このため、可視光が積層フィルムの脆弱加工部およびその周囲に照射されるとき、検査用の反射光を十分に確保できない。その結果、脆弱加工部を正確に検出できない場合がある。
【0008】
他の観点として、包装容器の遮光性を確保し、包装容器内に収容された内容物の鮮度を保つことや、包装容器の絵柄に制限を設けないこと等を考慮し、包装容器を形成する積層フィルムにおける脆弱加工部およびその周囲にインキ層を設けることも求められている。
【0009】
上記の事情を踏まえ、本発明は、形成された脆弱加工部の検査が容易であり、かつ、包装容器に適用することで電子レンジによる加熱時に破裂を防ぐことができる積層フィルムを提供することを目的とする。
本発明のその他の目的は、この積層フィルムを用いて形成され、電子レンジによる加熱時に破裂を防ぐことができる包装容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様によれば、積層フィルムは、熱融着可能な内層と、前記内層に積層された外層と、前記内層と前記外層との間に設けられた中間層と、前記外層と前記中間層との間において、インキにより形成されたインキ層と、前記インキ層の範囲内に形成され、前記中間層の厚さ方向における中間部に達する深さを有する脆弱加工部と、を備え、前記中間層と前記内層との間のラミネート強度が1.5N/15mmよりも大きく、前記中間層は、基材層として比較的剛性の高い材料から形成されている。
あるいは、本発明の第一の態様によれば、積層フィルムは、熱融着可能な内層と、前記内層に積層された外層と、前記内層と前記外層との間に設けられた中間層と、前記外層と前記中間層との間において、インキにより形成されたインキ層と、前記インキ層の範囲内に形成され、前記中間層の厚さ方向における中間部に達する深さを有する脆弱加工部と、を備え、前記中間層と前記内層との間のラミネート強度が1.5N/15mmよりも大きく、前記中間層は、基材層としてレーザー照射により少なくとも一部を除去できる樹脂材料から構成されている。
【0011】
上記積層フィルムにおいて、前記脆弱加工部は、前記中間層の前記厚さ方向において、前記中間層を貫通する深さを有してもよい。
上記積層フィルムにおいて、前記インキ層は、少なくとも380nmから700nmまでの波長を有する光を反射し発色することができる前記インキによって形成されていてもよい
記積層フィルムにおいて、前記中間層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ナイロン(ONy)の群から選ばれるいずれかの樹脂材料から構成されていてもよい。
【0012】
本発明の第二の態様によれば、包装容器は、上記各態様に係る積層フィルムを少なくとも一部に備え、電子レンジによる加熱時に、前記脆弱加工部に開口が形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の積層フィルムによれば、形成された脆弱加工部の検査が容易であり、かつ、包装容器に適用することで電子レンジによる加熱時に破裂を防ぐことができる。また、本発明の包装容器によれば、電子レンジによる加熱時に破裂を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)および(b)は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを用いて形成されたカップ容器を模式的に示す斜視図および断面図である。
図2】(a)および(b)は、図1のA-A線における断面図であり、本実施形態に係る積層フィルムの構成を模式的に示す断面図である。
図3】(a)および(b)は、電子レンジで加熱されたときの脆弱加工部に形成された開口を示す図である。
図4】本実施形態に係る積層フィルムを用いて形成された包装袋を模式的に示す斜視図である。
図5】比較例の積層フィルムの構成を模式的に示す断面図である。
図6】本実施形態に係る積層フィルムを検査するための検査装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(積層フィルム10の構成)
以下、本発明の一実施形態に係る積層フィルムについて、図1から図4を参照して説明する。
図1の(a)および(b)は、本実施形態に係る積層フィルム10を用いて形成されたカップ容器(包装容器)1を示す斜視図および断面図である。図1の(a)および(b)に示すように、積層フィルム10は、プラスチックなどで形成されたカップ容器1の本体部100に蓋材110として取り付けられている。
本実施形態において、積層フィルム10を用いて蓋材110を形成する手順や方法は特に制限されない。例えば、熱シールにより積層フィルム10と本体部100の縁部とを接合することにより、蓋材110と本体部100とを一体化して構成してもよい。
【0016】
図2の(a)および(b)は、図1の(a)のA-A線における積層フィルム10の断面図である。積層フィルム10は、蓋材110の外面を形成する外層20と、蓋材110の内面を形成し、熱融着可能な内層40と、外層20および内層40との間に形成された中間層30と、外層20と中間層30との間に形成されたインキ層50とを有している。後述するように、図2の(a)において、外層20に対してレーザー光を照射することにより形成された脆弱加工部60は、外層20およびインキ層50を貫通し、かつ、厚さ方向における中間層30の中間部に達する深さを有している。これに対し、図2の(b)において、外層20に対してレーザー光を照射することにより形成された脆弱加工部60は、外層20およびインキ層50と、中間層30との両方を貫通する深さを有している。
本実施形態において、外層20、中間層30、および内層40は、いずれも樹脂材料からなる構成である。
【0017】
外層20は、外部環境に直接接する層であり、樹脂材料から構成された基材層である。カップ容器1に収容された内容物を保護する観点から、外層20は、比較的剛性の高い材料で形成されることが好ましい。外層20は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する。)、二軸延伸ポリプロピレン(以下、OPPと称する。)、二軸延伸ナイロン(以下、ONyと称する。)などで形成されてもよいが、これらに限らない。
【0018】
内層40は、いわゆるシーラント層として機能する。内層40を形成する樹脂材料としては、例えば、熱融着可能な熱可塑性樹脂材料である低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができるが、これらに限らない。本実施形態において、積層フィルム10の内層40は、例えば、未延伸ポリプロピレン(CPP)や、シールされた後に被着体から容易に剥離が可能なイージーピールフィルムなどを用いて形成しても良い。具体的には、熱接着性のある樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂)と、この樹脂に非相溶もしくは難相溶の樹脂とが混合され海島構造を形成したポリマーアロイからなる樹脂フィルムや、このような樹脂層を含む多層フィルムがイージーピールフィルムとして市販されており、適宜使用できる。
【0019】
外層20と内層40との間に、インキ層50が形成されている。インキ層50は、包装容器の意匠性を高めたり、内容物に関する各種表示等を設けたりするための構成であり、公知の各種インキを用いて形成することができる。本実施形態において、包装容器内に収容された内容物の品質を保つために、インキ層50は、公知の各種インキを用いて形成され、遮光性を有してもよい。また、本実施形態において、後述する脆弱加工部60が確実に形成されているかどうかを確認するために、例えば、インキ層50は、少なくとも380nmから700nmまでの波長を有する光を反射し発色することができるインキを用いて形成してもよい。
【0020】
本実施形態において、例えば、外層20における内層40に対向する内側の内面において、印刷や、スプレーや、塗布などの方法でインキ層50を形成してもよい。すなわち、本実施形態において、外層20とインキ層50とを一体に形成してもよい。ただし、インキ層50の構成は、これに限らない。例えば、インキ層50は、後述する中間層30における外層20に対向する外側の面に形成されてもよい。
本実施形態において、インキ層50が設けられる範囲は、特に制限されない。例えば、図1の(a)に示すように、蓋材110の平面視において、インキ層50が形成された範囲内においては、後述する脆弱加工部60が形成されればよい。本実施形態において、インキ層50は、外層20の内面の全面に亘って形成されてもよい。
【0021】
一般的に、外層20と内層40との間にインキ層50が介在すると、外層20と内層40とのラミネート強度は低下する。一方、脆弱加工部に開口を形成させるためには、内層40と、内層40に積層される層とのラミネート強度が高い必要がある。本実施形態において、外層20と内層40との間に中間層30を設けることにより、全体として積層フィルム10の各層間のラミネート強度の低下を防ぐことができる。本実施形態において、インキ層50は、外層20と中間層30との間に設けられている。
【0022】
中間層30は、外層20と内層40との間において、樹脂材料から構成された層である。本実施形態において、中間層30は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ナイロン(ONy)などの樹脂材料から構成されてもよい。すなわち、本実施形態において、外層20と中間層30とは、いわゆる基材層として形成されている。
【0023】
本実施形態において、積層フィルム10は、自身の厚さ方向において、外層20と、中間層30と、内層40とを接着剤を用いて接合するドライラミネーション法で形成されることができるが、これに限らない。例えば、外層20および中間層30の間において、ポリエチレン系樹脂(例えば、LLDPE)から構成されたサンドイッチフィルム層(S-PE層)を設けることができる。具体的に、本実施形態に係る積層フィルム10は、サンドイッチフィルム層を構成するポリエチレン系樹脂を溶融し、外層20および中間層30の間に溶融したポリエチレン系樹脂を挟み込んで積層するサンドイッチラミネート法で形成されてもよい。
また、本実施形態において、積層フィルム10における中間層30と内層40との間のラミネート強度は、1.5N/15mmよりも大きい。
【0024】
(脆弱加工部60の構成)
図1の(a)および(b)と、図2の(a)および(b)とに示すように、カップ容器1の蓋材110として用いられる積層フィルム10の外側から、少なくとも一部が除去された脆弱加工部60が設けられている。本実施形態において、積層フィルム10は、例えば幅W1が約150マイクロメートル(μm)、長さL1が約30ミリメートル(mm)の領域が除去され、溝60aが形成されている。本実施形態において、脆弱加工部60は、積層フィルム10のうち溝60a内に位置する、他の部位よりも薄くなった部分である。
【0025】
本実施形態において、溝60aは、積層フィルム10の厚さ方向において、外層20を貫通し、かつ、少なくとも中間層30の中間部に達する深さを有して形成されている。なお、本実施形態において、脆弱加工部60は、厚さ方向において、外層20および中間層30の両方とも貫通する深さを有して形成されてもよい。積層フィルム10は、脆弱加工部60が設けられた領域の厚さ方向において、外層20と、インキ層50と、中間層30の少なくとも一部とが除去されて、異なる深さを有する溝60aが複数形成されていてもよい。
【0026】
脆弱加工部60を形成する位置については、蓋材110の縁部、すなわち、蓋材110と本体部100とが連結するために熱融着される部位を避ければどこでもよく、内容物の種類や充填工程等を考慮して任意の位置に形成することが可能である。本実施形態において、脆弱加工部60は、蓋材110の平面視において、インキ層50が形成されている範囲内に設けられている。
【0027】
脆弱加工部60を形成する手段としては、例えば、レーザー照射によるレーザー加工が好適である。レーザー加工を用いると、レーザーヘッドの出力と走査速度を調整することで、脆弱加工部の形状や加工深さを比較的容易に調節することができる。ただし、形成手段はレーザー加工には限られず、他の方法を用いることも可能である。
【0028】
レーザー加工を用いて、中間層30を貫通する深さを有する溝60aを形成するとき、中間層30は、ほぼ除去される。一方、本実施形態に係る積層フィルム10の内層40は、レーザー光を吸収しない性質を有する熱可塑性樹脂材料で形成されているため、レーザー加工によって内層40が除去されることはほぼない。このとき、レーザー加工のときに発生する熱によって、内層40における中間層30に接する外側の表面におけるわずかな部分が溶融される場合があるが、内層40が貫通されることはない。このため、本実施形態に係る積層フィルム10を用いて形成された蓋材110は、上述の構成を有することで、カップ容器1内に収容された内容物の漏れや変質を好適に防ぐことができる。
【0029】
(脆弱加工部60の確認)
本実施形態において、積層フィルム10に脆弱加工部60が確実に形成されたかどうかを確認するために、図6で示されたいわゆる反射型の検査装置を用いて脆弱加工部60を検知することが知られている。具体的に、積層フィルム10をローラー200の表面の一部に密着させるように巻き付けて、外層20がローラー200の径方向外側へ向かった状態でローラー200を回転させ、検査用カメラ300からの検知光(例えば、少なくとも380から700ナノメートルの波長範囲の可視光)で回転するローラーに巻き付けた積層フィルム10を照射することができる。そして、検査装置が有するセンサーが積層フィルム10による検知光の反射光を検出することにより、積層フィルム10の脆弱加工部60を検出することができる。
【0030】
本実施形態において、外層20と中間層30との間において、インキ層50が設けられている。前述したように、インキ層50は、公知の各種インキを用いて形成され、遮光性を有している。本実施形態において、インキ層50を形成する各種インキの色については、包装容器の意匠や、内容物に関する各種表示などに合わせて適宜設定すればよく、特に制限されない。インキ層50を形成するインキは、例えば、白、黒(墨)、青、赤、黄などの色から、いずれか一つの色、あるいは複数の色を調合した色を有するインキで形成されてもよい。インキ層50は、グラビア印刷のように、複数の色のインキを重ね合わせた絵柄層であってもよい。
インキ層50は、透明ではなく、上述の各種の色を有するインキで形成されることにより、検査用カメラ300からの波長が380から700ナノメートルの入射光に対して、光線透過率が60%以下である。
【0031】
このため、検査用カメラ300からの検知光は、積層フィルム10を透過してローラー200に到達し、ローラー200により反射されることが抑制できる。その結果、この反射型の検査装置を用いて積層フィルム10に形成された脆弱加工部60を検知する場合、ローラー200表面の凹凸、ローラー200の表面に付着されたゴミや油性汚れなどを誤って検出することを防ぐことができる。
本実施形態において、レーザー加工で形成された脆弱加工部60を有する積層フィルム10を反射型の検査装置によって、レーザー加工で形成された脆弱加工部60のみが検出され、ローラー200表面の凹凸、ローラー200の表面に付着されたゴミや油性汚れなどが検出されないことを確認できた。
【0032】
積層フィルム10の脆弱加工部60が確実に形成されたかどうかを確認する他の方法としては、積層フィルム10の引張破断強度を測定する方法が考えられる。積層フィルム10において、例えば、溝60aが外層20のみを貫通し、中間層30に達しない深さを有する場合と、溝60aが中間層30の中間部に達する深さを有する場合と、溝60aが中間層30を貫通する深さを有する場合とでは、積層フィルム10の引張破断強度が明らかに異なる。このため、予め溝60aの深さと積層フィルム10の引張破断強度との対応関係を確認し、脆弱加工部60が形成された積層フィルム10の引張破断強度を測定することにより、脆弱加工部60が確実に形成されたかどうかと、脆弱加工部60の態様(溝60aの深さ)とを確認することができる。
【0033】
(積層フィルム10を有するカップ容器1の構成)
本実施形態において、任意の位置に脆弱加工部60を形成した積層フィルム10を用いて、内容物が充填されたカップ容器1の本体部100の開口を覆い、熱シールにより積層フィルム10と本体部100の縁部とを接合することにより、内容物が充填された密閉状態のカップ容器1が完成する。
内容物が充填されたカップ容器1を電子レンジに入れて加熱すると、内容物に含まれる水分が水蒸気となって膨張し、カップ容器1の内圧が上昇する。カップ容器1の内圧の上昇により、脆弱加工部60に裂け目が生じて、積層フィルム10を厚さ方向に貫通する開口61が形成される。図3の(a)および(b)は、積層フィルム10の外側、すなわち、外層20側から積層フィルム10の表面を観察する図である。本実施形態において、電子レンジによる加熱時にカップ容器1の内圧が上昇したとき、脆弱加工部60は、図3の(a)に示すように、互いに離間した複数の開口61が形成されてもよいし、図3の(b)に示すように、長手方向に沿った連続した開口61が形成されてもよい。なお、本実施形態において、図3の(a)に示すように、互いに離間した複数の開口61は、それぞれのサイズが異なってもよい。
本実施形態において、図3の(a)に示された複数の開口61と、図3の(b)に示された連続した開口61とは、脆弱加工部60の範囲内に形成されている。言い換えれば、図3の(a)に示された複数の開口61と、図3の(b)に示された連続した開口61とは、脆弱加工部60が形成された範囲以外の部位に形成されていないし、脆弱加工部60が形成された範囲以外の部位まで伸びることもない。
【0034】
本実施形態に係る積層フィルム10の内層40を形成するLLDPEは、柔軟性に富み伸びやすく、衝撃強度も高いため、開口61が形成された後も積層フィルム10に作用する内圧によく耐え、開口61が脆弱加工部60の範囲以外の部位まで伸びることを防止できる。
【0035】
脆弱加工部60に開口61が形成されるため、カップ容器1の内部に発生した水蒸気は、一気にカップ容器1の外部に逃げず、内圧の上昇に応じて随時破裂を防ぐ程度に逃げ続ける。これにより、電子レンジによる加熱時も破裂等を起こさず、かつ、カップ容器1内に残留する水蒸気による蒸らしも好適に行われる。
【0036】
上述のように、積層フィルム10の内層40がLLDPEによって形成された例を説明したが、本発明の積層フィルム10の構成は、これに限らない。例えば、積層フィルム10の内層40は、容器の蓋の開封性を良くするために、イージーピールフィルムを用いて形成されてもよい。積層フィルム10の内層40は、用途に合わせて異なる構成を有するイージーピールフィルムを適宜選択し、なめらかな剥離性や、優れた保護性や、優れたラミネート適性などを実現することができる。
【0037】
(積層フィルム10を有する包装袋1Aの構成)
以上説明したように、本実施形態に係る積層フィルム10は、カップ容器1の蓋材110を形成することができる。本実施形態に係る積層フィルム10は、図4に示すように、例えば、包装袋(包装容器)1Aを形成することもできる。
包装袋1Aは、少なくとも一方の面が熱融着可能な本発明の積層フィルム10を用いて袋状に形成されている。
【0038】
包装袋1Aは、一枚の積層フィルム10の端部10aと端部10bとを熱融着して略筒状に形成した後、筒状形状の管腔が延びる方向の両端部10cおよび10dを熱融着により接合することで袋状に形成されている。
包装袋1Aにおいて、積層フィルム10を袋状に形成する手順や方法には特に制限はない。例えば、2枚の積層フィルム10を対向配置し、それぞれの周縁部を熱融着により接合することで包装袋1Aが形成されてもいいし、他の方法がとられても構わない。
【0039】
包装袋1Aにおいて、積層フィルム10は、後述する内層40を除いて、ほぼ上述のカップ容器1の積層フィルム10と同じ構成で形成されてもよい。
包装袋1Aにおいて、積層フィルム10の内層40は、シーラント層として機能する。内層40を形成する樹脂材料としては、例えば、熱融着可能な熱可塑性樹脂材料である低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができるが、これらに限らない。本実施形態において、積層フィルム10の内層40は、例えば、未延伸ポリプロピレン(CPP)を用いて形成されてもよい。
包装袋1Aは、上述したカップ容器1における蓋材110の開封性を考慮する必要がないことが多く、内層40において、必ずしもイージーピールフィルムを用いて形成する必要がないからである。
【0040】
図4に示すように、包装袋1Aの外面の一部には、少なくとも一部が除去された脆弱加工部60が設けられている。包装袋1Aの外面に設けられた脆弱加工部60は、上述のカップ容器1の蓋材110に設けられた脆弱加工部60と同じ構成を有してもよい。
脆弱加工部60を形成する位置については、端部10aないし10d等の、積層フィルム10を袋状に形成するために熱融着される部位を避け、インキ層50が形成された範囲内であればどこでもよく、内容物の種類や充填工程等を考慮して任意の位置に形成することが可能である。
包装袋1Aにおいて、インキ層50が形成された範囲内には、後述する脆弱加工部60が形成されればよい。包装袋1Aにおいて、インキ層50は、積層フィルム10の外層20の内面の全面に亘って形成されてもよい。
【0041】
包装袋1Aにおいて、脆弱加工部60が形成された積層フィルム10を用いて形成されたため、電子レンジによる加熱時に、上述のカップ容器1の蓋材110同様に、脆弱加工部60に開口61が形成される。その結果、包装袋1Aの内圧上昇による破裂等を好適に防ぐことができる。
【0042】
(積層フィルム10の作用)
以上説明したように、本実施形態において、積層フィルム10は、インキ層50を有する外層20と内層40との間に中間層30を備えることにより、インキ層50による積層フィルム10の各層間のラミネート強度の低下を防ぐことができる。さらに、中間層30と内層40との間のラミネート強度が1.5N/15mmよりも大きい。このため、脆弱加工部60が形成された積層フィルム10を用いてカップ容器1の蓋材110、あるいは包装袋1Aを形成する場合、電子レンジによる加熱時に、脆弱加工部60に必要な開口を形成することができる。その結果、内圧の上昇に応じて包装容器(例えば、カップ容器1あるいは包装袋1A)の破裂を防ぐことができる。
【0043】
本実施形態に係る積層フィルム10は、インキ層50を有して構成されている。このため、レーザー加工で積層フィルム10に脆弱加工部60が形成された場合、インキ層50が検査用カメラ300からの検知光を反射することにより、脆弱加工部60およびその周囲の色差を検出することができる。その結果、反射型の検査装置を用いて、積層フィルム10において、脆弱加工部60が確実に形成されたかどうかを検知することができる。
また、積層フィルム10の全面においてインキ層50を形成することができるため、包装容器の意匠性を高めたり、内容物に関する各種表示等を自由に設けたりする要望に応えることができる。
【0044】
本実施形態に係る積層フィルム10は、外層20および中間層30の両方とも、基材層として、比較的剛性の高い材料で形成されている。このため、積層フィルム10を用いてカップ容器1の蓋材110あるいは包装袋1Aを形成する場合、耐熱性、耐寒性、および耐衝撃性を付与することができる。
特に、積層フィルム10を用いて自立袋の形状を有する包装袋1Aを形成する場合、包装袋1Aのコシを向上させることができる。すなわち、積層フィルム10を用いて自立袋の形状を有する包装袋1Aを形成する場合、出来上がった包装袋1Aがスタンド性に優れ、しっかり自立することができる。
【0045】
さらに、積層フィルム10を用いてカップ容器1の蓋材110を形成する場合、蓋材110の強度を向上させることができる。その結果、例えばカップ容器1を2段以上積み重ねた場合においても、蓋材110が予期せず破断することを防ぐことができる。
【0046】
積層フィルム10において、脆弱加工部60を設けるにあたり、内層40をスリットで切離してから再融着する等の工程が必要ないため、製造工程を簡略化できる。したがって、積層フィルム10を用いてカップ容器1の蓋材110および包装袋1Aを容易に製造することができる。
さらに、積層フィルム10を用いて包装袋1Aを形成する場合、脆弱加工部60は、内層40同士が熱融着される端部を除いて積層フィルム10に形成する部位に制限がないため、包装袋1A設計の自由度が高い。したがって、内容物の種類等に応じて脆弱加工部60の形成位置が異なる複数種類の包装袋1Aを製造する場合でも、例えばレーザー光の照射位置を変更する等により容易に対応することができる。
【0047】
以下、本発明の上述実施形態に係る積層フィルム10と、積層フィルム10を用いて形成されるカップ容器1および包装袋1Aとについて、実施例1から実施例8を用いてさらに説明する。なお、比較のために、比較例1および比較例3の積層フィルム10Aの構成も説明する。
【0048】
(実施例1)
実施例1に係る積層フィルム10は、外層20として12μmのPETフィルムを、中間層30として12μmのPETフィルムを、内層40として40μmのLLDPEフィルムをそれぞれ用いて形成されている。また、外層20と中間層30との間において、2μm程度のインキ層50が設けられている。実施例1において、外層20とインキ層50とが一体化して構成されている。
【0049】
実施例1に係る積層フィルム10は、外層20およびインキ層50と、中間層30と、内層40とを順に積層して構成されている。具体的に、積層フィルム10は、外層20およびインキ層50と中間層30との間、および中間層30と内層40との間において、公知のドライラミネート用接着剤を用いたドライラミネーション法により接合し、レーザー加工により脆弱加工部60を形成して製造された。また、実施例1に係る積層フィルム10は、脆弱加工部60の溝60aは、中間層30を貫通する深さを有している。
【0050】
積層フィルム10の各層を形成するフィルムとしては、以下の製品を使用した。具体的に、PETフィルムとしては、東洋紡エステル(登録商標)フィルムE5100(商品名;東洋紡株式会社製)を使用した。Nyフィルムとしては、ボニール-RX(商品名;興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)を使用した。LLDPEフィルムとしては、LL-XMTN(商品名;フタムラ化学株式会社製)を使用した。イージーピールフィルムとしては、アシスト(登録商標)EX02(商品名;住化プラステック株式会社製)を使用した。LDPEフィルムとしては、V-1(商品名;タマポリ株式会社製)を使用した。CPPフィルムとしては、FHK2(商品名;フタムラ化学株式会社製)を使用した。以下の各実施例の説明において、特別に説明しない限り、積層フィルム10の各層を形成するフィルムは、同じである。
【0051】
ドライラミネート用接着剤としては、例えば、ポリウレタン接着剤を用いることができる。具体的に、タケラック(登録商標)A(商品名;三井化学株式会社製)およびタケネート(登録商標)A(商品名;三井化学株式会社製)のような、積層フィルムのラミネート加工用のポリウレタン接着剤を使用した。なお、以下の各実施例の説明において、特別に説明しない限り、積層フィルム10の各層を接合するためのドライラミネート用接着剤は、同じである。
【0052】
以下、実施例1に係る積層フィルム10の構成を、「PET12/PET12/LLDPE40」で表す。なお、「PET12/PET12/LLDPE40」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の12μmのPETフィルムと、中間層30の12μmのPETフィルムと、内層40の40μmのLLDPEフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10の構造を示す。
【0053】
(実施例2)
実施例2に係る積層フィルム10は、外層20として16μmのPETフィルムを、中間層30として15μmのナイロンフィルムを、内層40として40μmのLDPEフィルムをそれぞれ用いて形成されている。また、外層20と中間層30との間において、2μm程度のインキ層50が設けられている。実施例2において、外層20とインキ層50とが一体化して構成されている。
さらに、実施例2に係る積層フィルム10は、レーザー加工により脆弱加工部60が形成されている。実施例2に係る積層フィルム10は、脆弱加工部60の溝60aは、中間層30を貫通する深さを有している。
【0054】
以下、実施例2に係る積層フィルム10の構成を、「PET16/NY15/LDPE40」で表す。具体的に、「PET16/NY15/LDPE40」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の16μmのPETフィルムと、中間層30の15μmのナイロンフィルムと、内層40の40μmのLDPEフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10の構造を示す。
【0055】
(実施例3)
実施例3に係る積層フィルム10は、外層20として12μmのPETフィルムを、中間層30として12μmのPETフィルムを、内層40として30μmのLDPEフィルムをそれぞれ用いて形成されている。また、外層20と中間層30との間において、2μm程度のインキ層50が設けられている。実施例3において、外層20とインキ層50とが一体化して構成されている。
実施例3に係る積層フィルム10は、レーザー加工により脆弱加工部60が形成されている。実施例3に係る積層フィルム10は、脆弱加工部60の溝60aは、中間層30を貫通する深さを有している。
【0056】
以下、実施例3に係る積層フィルム10の構成を、「PET12/PET12/LDPE30」で表す。具体的に、「PET12/PET12/LDPE30」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の12μmのPETフィルムと、中間層30の12μmのPETフィルムと、内層40の30μmのLDPEフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10の構造を示す。
【0057】
(実施例4)
実施例4に係る積層フィルム10は、外層20として16μmのPETフィルムを、中間層30として16μmのPETフィルムを、内層40として30μmのLLDPEフィルムをそれぞれ用いて形成されている。また、外層20と中間層30との間において、2μm程度のインキ層50が設けられている。実施例4において、外層20とインキ層50とが一体化して構成されている。
実施例4に係る積層フィルム10は、レーザー加工により脆弱加工部60が形成されている。実施例4に係る積層フィルム10は、脆弱加工部60の溝60aは、積層フィルム10の厚さ方向において、中間層30の中間部に達する深さを有している。
【0058】
以下、実施例4に係る積層フィルム10の構成を、「PET16/PET16/LLDPE30」で表す。具体的に、「PET16/PET16/LLDPE30」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の16μmのPETフィルムと、中間層30の16μmのPETフィルムと、内層40の30μmのLLDPEフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10の構造を示す。
【0059】
(実施例5)
実施例5に係る積層フィルム10は、外層20として15μmのナイロンフィルムを、中間層30として15μmのナイロンフィルムを、内層40として40μmのLDPEフィルムをそれぞれ用いて形成されている。また、外層20と中間層30との間において、2μm程度のインキ層50が設けられている。実施例5において、外層20とインキ層50とが一体化して構成されている。
実施例5に係る積層フィルム10は、レーザー加工により脆弱加工部60が形成されている。実施例5に係る積層フィルム10は、脆弱加工部60の溝60aは、積層フィルム10の厚さ方向において、中間層30の中間部に達する深さを有している。
【0060】
以下、実施例5に係る積層フィルム10の構成を、「NY15/NY15/LDPE40」で表す。具体的に、「NY15/NY15/LDPE40」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の15μmのナイロンフィルムと、中間層30の15μmのナイロンフィルムと、内層40の40μmのLDPEフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10の構造を示す。
【0061】
(実施例6)
実施例6に係る積層フィルム10は、外層20として12μmのPETフィルムを、中間層30として12μmのPETフィルムを、内層40として40μmのCPPフィルムをそれぞれ用いて形成されている。また、外層20と中間層30との間において、2μm程度のインキ層50が設けられている。実施例6において、外層20とインキ層50とが一体化して構成されている。
実施例6に係る積層フィルム10は、レーザー加工により脆弱加工部60が形成されている。実施例6に係る積層フィルム10は、脆弱加工部60の溝60aは、積層フィルム10の厚さ方向において、中間層30の中間部に達する深さを有している。
【0062】
以下、実施例6に係る積層フィルム10の構成を、「PET12/PET12/CPP40」で表す。具体的に、「PET12/PET12/CPP40」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の12μmのPETフィルムと、中間層30の12μmのPETフィルムと、内層40の40μmのCPPフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10の構造を示す。
【0063】
(実施例7)
実施例7に係る積層フィルム10は、外層20として12μmのPETフィルムを、中間層30として12μmのPETフィルムを、内層40として30μmのイージーピールフィルムをそれぞれ用いて形成されている。また、外層20と中間層30との間において、2μm程度のインキ層50が設けられている。実施例7において、外層20とインキ層50とが一体化して構成されている。
実施例7に係る積層フィルム10は、レーザー加工により脆弱加工部60が形成されている。実施例7に係る積層フィルム10は、脆弱加工部60の溝60aは、積層フィルム10の厚さ方向において、中間層30の中間部に達する深さを有している。
【0064】
以下、実施例7に係る積層フィルム10の構成を、「PET12/PET12/イージーピール30」で表す。具体的に、「PET12/PET12/イージーピール30」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の12μmのPETフィルムと、中間層30の12μmのPETフィルムと、内層40の30μmのイージーピールフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10の構造を示す。
【0065】
(実施例8)
実施例8に係る積層フィルム10は、外層20として12μmのPETフィルムを、中間層30として12μmのPETフィルムを、内層40として50μmのイージーピールフィルムをそれぞれ用いて形成されている。また、外層20と中間層30との間において、2μm程度のインキ層50が設けられている。実施例8において、外層20とインキ層50とが一体化して構成されている。
実施例8に係る積層フィルム10は、レーザー加工により脆弱加工部60が形成されている。実施例8に係る積層フィルム10は、脆弱加工部60の溝60aは、積層フィルム10の厚さ方向において、中間層30の中間部に達する深さを有している。
【0066】
以下、実施例8に係る積層フィルム10の構成を、「PET12/PET12/イージーピール50」で表す。具体的に、「PET12/PET12/イージーピール50」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の12μmのPETフィルムと、中間層30の12μmのPETフィルムと、内層40の50μmのイージーピールフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10の構造を示す。
【0067】
(比較例)
以下、図5を用いて、比較例の積層フィルム10Aの積層構造を説明する。
図5に示すように、比較例の積層フィルム10Aは、本実施形態に係る積層フィルム10に比べ、中間層30を有していない。具体的に、比較例の積層フィルム10Aは、外層20と内層40とを接着剤で貼り合わせて形成されている。なお、比較例の積層フィルム10Aは、外層20において、内層40に対向する内側の内面において、インキ層50が形成されている。比較例の積層フィルム10Aにおけるインキ層50および脆弱加工部60を形成する方法は、上述の積層フィルム10のインキ層50および脆弱加工部60の形成方法と同一とした。
【0068】
(比較例1)
以下、比較例1に係る積層フィルム10Aの構成を、「PET12/LDPE30」で表す。具体的に、「PET12/LDPE30」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の12μmのPETフィルムと、内層40の30μmのLDPEフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10Aの構造を示す。
【0069】
(比較例2)
以下、比較例2に係る積層フィルム10Aの構成を、「PET12/CPP40」で表す。具体的に、「PET12/CPP40」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の12μmのPETフィルムと、内層40の40μmのCPPフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10Aの構造を示す。
【0070】
(比較例3)
以下、比較例3に係る積層フィルム10Aの構成を、「PET12/イージーピール50」で表す。具体的に、「PET12/イージーピール50」という表示は、ドライラミネーション法により、外層20の12μmのPETフィルムと、内層40の50μmのイージーピールフィルムとを接着剤で接合して得られた積層フィルム10Aの構造を示す。
【0071】
(積層フィルムの性能評価)
次に、上述の実施例1から実施例8に係る積層フィルム10を用いて形成したカップ容器1の蓋材110と、比較例1から比較例3に係る積層フィルム10Aを用いて形成したカップ容器1の蓋材110とのそれぞれの性能評価を行った結果を、表1を参照して説明する。
具体的に、実施例1から実施例8、および比較例1から比較例3に係る積層フィルム10Aを用いて蓋材110を作成し、作成した蓋材110を熱シールにより内容物が収容された本体部100に接合しカップ容器1を作成した。その後、電子レンジにて作成したカップ容器1を指定時間加熱した。指定時間で加熱したカップ容器1に対して、収容された内容物の加熱状態と、カップ容器1の蓋材110の状態と、蓋材110における脆弱加工部60の状態とを確認した。
なお、積層フィルムの性能評価に使用された電子レンジは、NE-1901S(商品型番、パナソニック株式会社2011年製)を用いた。加熱の条件は、ターンテーブル無しの状態でカップ容器1を電子レンジ内に配置し、1600Wの出力条件で2分間加熱することである。また、カップ容器1内に収容された内容物は、200gの炒飯である。
【0072】
【表1】
【0073】
その結果、表1に示すように、実施例1から実施例8に係る積層フィルム10を用いて形成された蓋材110を有するカップ容器1において、「破裂なし」、「シール後退なし」、および「加工部が開口し通蒸」という結果を確認できた。
ここで、「破裂」の定義は、カップ容器1の蓋材110において脆弱加工部60以外の部位が裂ける場合と、脆弱加工部60が裂けるが、脆弱加工部60以外の部位まで裂け目が延びる場合とのいずれかが発生した状態とした。このため、「破裂なし」は、熱シールによるカップ容器1の蓋材110と本体部100との接合部において破裂がない、かつ、脆弱加工部60以外の部位まで裂けることがないことを意味する。「シール後退」の定義は、熱シールによる蓋材110と本体部100の縁部との接合部において、熱シールが部分的に剥がれた状態とした。「シール後退」が発生し、これが進行すると、脆弱加工部60以外、カップ容器1における意図しない部分に水蒸気を逃す開口が形成され、水蒸気によるやけどを引き起こす可能性があるため、防ぐ必要がある。「シール後退なし」は、熱シールによる蓋材110と本体部100との接合部において部分的な剥離が発生していないことを意味する。また、「加工部が開口し通蒸」は、蓋材110の脆弱加工部60において、水蒸気を逃すための開口が形成されたことを意味する。より具体的に、実施例1から実施例5のカップ容器1の蓋材110は、図3の(a)に示すように、脆弱加工部60において、互いに離間した複数の開口61が形成された。また、実施例6から実施例8のカップ容器1の蓋材110は、図3の(b)に示すように、脆弱加工部60において、連続した開口61が形成された。
【0074】
実施例1から実施例8に係る積層フィルム10において、基材樹脂を用いて形成された中間層30を備えるため、外層20の内面においてインキ層50を全面に亘って形成しても、積層フィルム10の各層間のラミネート強度が低下することはない。このため、電子レンジによる加熱時に、カップ容器1の内圧上昇により、蓋材110が破裂することを防ぐことができた。
【0075】
一方、比較例1から比較例3に係る積層フィルム10Aを用いて形成された蓋材110を有するカップ容器1において、「破裂あり」という結果を確認できた。すなわち、比較例1から比較例3に係る積層フィルム10Aを用いて形成された蓋材110において、脆弱加工部60以外の部位に蓋材110の破裂が発生したことを意味する。また、比較例1および比較例2に係る積層フィルム10Aを用いて形成された蓋材110を有するカップ容器1において、「シール後退なし」という結果を確認したが、比較例3に係る積層フィルム10Aにおいて「シール後退あり」という結果を確認した。すなわち、比較例3に係る積層フィルム10Aを用いた蓋材110を有するカップ容器1において、蓋材110と本体部100との接合部において、熱シールが部分的に剥離したことを確認した。また、比較例1から比較例3に係る積層フィルム10Aのいずれかを用いて形成された蓋材110を有するカップ容器1において、「加工部から破裂」という結果を確認できた。すなわち、比較例1から比較例3に係る積層フィルム10Aの場合、カップ容器1の蓋材110において脆弱加工部60以外の部位が裂けることと、脆弱加工部60が裂け、さらに脆弱加工部60以外の部位まで裂け目が延びることとのいずれかが発生したことを確認した。
【0076】
比較例1から比較例3に係る積層フィルム10Aは、外層20および内層40のみを有して形成されている。積層フィルム10Aは、中間層30を有していないため、外層20および内層40の間に形成されたインキ層50により、外層20および内層40の間のラミネート強度が低下する。このため、電子レンジを用いてカップ容器1を加熱するとき、脆弱加工部60における水蒸気を逃すための開口61がうまく形成されない。その結果、加熱によるカップ容器1内の水蒸気が膨張し、カップ容器1の内圧が上昇すると、蓋材110は、脆弱加工部60と、蓋材110と本体部100との接合部とのいずれか一方あるいは両方の部位において、大きな破裂音を伴って突然破裂することがある。
【0077】
また、上述の実施例1から実施例6に係る積層フィルム10を用いて形成した包装袋1Aと、比較例1および比較例2に係る積層フィルム10Aを用いて形成した包装袋1Aとのそれぞれの性能評価を行った結果を、表2を参照して説明する。
具体的に、実施例1から実施例6に係る積層フィルム10を用いて形成した包装袋1Aと、比較例1および比較例2に係る積層フィルム10Aを用いて形成した包装袋1Aとのそれぞれにおいて、内容物を収容してから包装袋1Aの端部を閉じて密閉した。そして、内容物が収容された包装袋1Aを電子レンジにより出力1600ワットで2分間加熱し、破裂の有無および開口61の状態を確認した。なお、ここで使用する電子レンジは、上述のカップ容器1の蓋材110の性能を評価する時に使用した電子レンジと同じである。
【0078】
【表2】
その結果、表2に示すように、実施例1から実施例6に係る積層フィルム10を用いて形成された包装袋1Aにおいて、「破裂なし」、「シール後退なし」、および「加工部が開口し通蒸」という結果を確認できた。一方、比較例1および比較例2に係る積層フィルム10Aを用いて形成された包装袋1Aにおいて、両方とも「破裂あり」、「加工部から破裂」という結果を確認できた。さらに、比較例2に係る積層フィルム10Aの場合、「シール後退」という結果も確認できた。
【0079】
すなわち、実施例1から実施例6に係る積層フィルム10の場合、積層フィルム10の脆弱加工部60のみにおいて、開口61が形成されるため、包装袋1Aの内圧上昇により包装袋1Aが破裂することを防ぐことができた。一方、比較例1および比較例2に係る積層フィルム10Aは、脆弱加工部60において開口61がうまく形成されておらず、脆弱加工部60以外の部位において、大きな破裂音を伴って積層フィルム10Aが全体に亘って突然破裂した。
【0080】
次に、上述の実施例7に係る積層フィルム10と、比較例1に係る積層フィルム10Aとに対して、中間層30の有無による積層フィルム10の各層間のラミネート強度の違いを確認した結果を、表3を参照して説明する。
【0081】
【表3】
積層フィルムの積層構造の各層間のラミネート強度の測定は、JIS Z1707に準拠して実施し、測定装置は剥離試験機EZ-SX(島津製作所製)を使用した。ラミネート強度は、試料幅15mm当たりの力(N/15mm)として測定し評価した。
【0082】
表3に示すように、実施例7に係る積層フィルム10において、外層20のPETフィルムと中間層30のPETフィルムとの間のラミネート強度を、インキ層50の有無に分けて測定した。具体的に、外層20と中間層30との間にインキ層50が形成された場合、外層20と中間層30との間のラミネート強度の平均値は、2.80N/15mmである。なお、表3に示す「測定界面状態」は、測定対象となる異なる層の間において、剥離が発生したかどうかを示す指標である。例えば、「測定界面状態」が「剥離」である場合、測定対象となる異なる層の間において、剥離が発生した。また、例えば、「測定界面状態」が「PET切れ」である場合、異なる層の間の剥離が発生しておらず、PETフィルムを引っ張る力量がPETフィルム自身の引張破断強度を超えたため、PETフィルムが破断することを意味する。この場合、積層フィルムにおける異なる層の間のラミネート強度を確実に測定できないが、ラミネート強度がPETフィルムの引張破断強度以上であることを推測できる。
表3に示すように、積層フィルム10において、外層20と中間層30との間にインキ層50が形成されていない場合、「測定界面状態」が「PET切れ」であるため、外層20と中間層30との間のラミネート強度を確実に測定できていないことを示す。ただし、上述のように、この場合において、外層20と中間層30との間のラミネート強度は、PETフィルムの引張破断強度2.93N/15mm以上であることが言える。
さらに、表3に示すように、実施例7に係る積層フィルム10において、中間層30のPETフィルムと内層40のイージーピールフィルムとの間のラミネート強度は、4.67N/15mmである。
【0083】
一方、比較例1に係る積層フィルム10Aにおいて、中間層30を有していないため、外層20のPETフィルムと内層40のLDPEフィルムとの間のラミネート強度を測定した。その結果、比較例1に係る積層フィルム10Aにおいて、外層20と内層40との間にインキ層50が形成された場合、外層20のPETフィルムと内層40のLDPEフィルムとの間のラミネート強度の平均値は、1.37N/15mmである。また、比較例1に係る積層フィルム10Aにおいて、外層20と内層40との間にインキ層50が形成されていない場合、外層20のPETフィルムと内層40のLDPEフィルムとの間のラミネート強度の平均値は、1.70N/15mmである。なお、比較例1に係る積層フィルム10Aの場合、インキ層50が形成されたかどうかにかかわらず、「測定界面状態」が「剥離」であるため、外層20のPETフィルムと内層40のLDPEフィルムとの間のラミネート強度を測定できたと言える。
【0084】
上述の測定結果を踏まえ、中間層30を有していない積層フィルム10Aに比べ、本実施形態に係る積層フィルム10においては、中間層30のPETフィルムと内層40のシーラントフィルム(イージーピールフィルム)との間のラミネート強度が低下していないことを確認できた。すなわち、中間層30を有する積層フィルム10において、外層20の内面においてインキ層50を全面に亘って形成しても、積層フィルム10の各層間のラミネート強度を維持することができる。この結果、積層フィルム10を用いて形成された包装容器(蓋材110を有するカップ容器1と包装袋1Aとの両方)は、電子レンジによる加熱時に、破裂を起こさずに蒸気を包装袋外に逃しつつ、包装容器の膨張状態を保持することができる。
【0085】
以上、本発明の各実施形態および実施例について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したり、各実施形態の構成を組み合わせたりすることが可能である。
【0086】
例えば、上述の実施形態において、インキ層50が積層フィルム10の外層20の内面に形成された例を説明したが、これに限らない。本発明の積層フィルム10において、インキ層50が中間層30における外側の外面、すなわち外層20に対向する面に形成されてもよい。この場合、レーザー加工により、同様に脆弱加工部60を形成することが可能である。
【0087】
上述の実施形態において、積層フィルム10において、外層20および中間層30のそれぞれが単層で形成された例を説明したが、これに限らない。本発明の積層フィルム10において、例えば、外層20および中間層30の少なくとも一方が複数層で形成されてもよい。この場合、外層20および中間層30を構成するフィルムの1つの層は、例えば、PETフィルム、ONyフィルム、OPPフィルムなどの基材層を形成するフィルムで形成されればよい。この場合、積層フィルム10において、例えば、ガスバリア性などをさらに付与することができる。
【0088】
上述の実施形態において、積層フィルム10を形成する際、ドライラミネーション法により、接着剤を用いてフィルムを接合することにより、積層フィルム10の積層構造を形成する例を説明したが、これに限らない。例えば、積層フィルム10は、外層20と中間層30との間において、溶融したポリエチレン系樹脂を挟み込んで積層するサンドイッチラミネート法によって形成されてもよい。
このサンドイッチラミネート法で積層フィルム10を形成する場合、脆弱加工部60を形成するとき、サンドイッチ層のポリエチレン系樹脂(例えば、LLDPE)がレーザー加工できないが、外層20と中間層30とがレーザー加工によって発生する熱により、サンドイッチ層の少なくとも一部が溶融されるため、同様に脆弱加工部60を形成することができる。
【0089】
脆弱加工部の態様は、上記以外にも様々に変更することができる。例えば、ロータリダイカッター等の刃物加工を用いたいわゆるハーフカット加工等により、外層を除去せずに脆弱加工部が形成されてもよい。また、形状も、一方向に延びる線分状に限られず、屈曲や湾曲部分を有したり、複数の線分が接続されたりした線状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 カップ容器
1A 包装袋
10,10A 積層フィルム
20 外層
30 中間層
40 内層
50 インキ層
60 脆弱加工部
60a 溝
61 開口
100 本体部
110 蓋材
200 ローラー
300 検査用カメラ
L1 長さ
W1 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6