(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221109BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/175 121
B41J2/01 401
B41J2/01 301
B41J2/175 133
B41J2/175 151
(21)【出願番号】P 2018162586
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】矢島 康司
(72)【発明者】
【氏名】古林 広之
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-039708(JP,A)
【文献】特開2003-312000(JP,A)
【文献】特開2007-083718(JP,A)
【文献】特開2017-132179(JP,A)
【文献】特開2017-030323(JP,A)
【文献】特開2016-068510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0278556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが吐出されるノズルを有するヘッドと、前記ヘッドに供給される前記インクを貯
留するインク貯留部と、が搭載され、ガイド部材に沿って移動するキャリッジを備え、
前記キャリッジは、前記インク貯留部の中と前記インク貯留部の外とを連通する供給口
に対して、前記キャリッジが移動する方向のうち第1方向側に位置する第1壁部を、有し
、
前記インク貯留部は鉛直方向上方の面に凹部を有し、当該凹部に前記供給口が設けられ
、
前記供給口に挿入され、少なくとも一部が前記凹部から突出するキャップ部材をさらに
備え、
前記キャリッジが移動する方向から見て、前記供給口と前記第1壁部とが重な
り、前記
キャップ部材のうち前記凹部から突出する部分と前記第1壁部とが重なることを特徴とす
るインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記インクが吐出される媒体を搬送する搬送部と、前記キャリッジの移動を制御する制
御部とを備え、
前記供給口から前記インク貯留部に前記インクが供給されるとき、前記制御部は、イン
ク供給位置に前記キャリッジを移動させ、
前記インク供給位置に前記キャリッジが位置する状態において、ノズル面に対して前記
第1方向側に、前記搬送部により搬送される前記媒体が通過可能な領域が位置することを
特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項3】
前記インクが吐出される媒体を搬送する搬送部と、前記キャリッジの移動を制御する制
御部とを備え、
前記供給口から前記インク貯留部に前記インクが供給されるとき、前記制御部は、イン
ク供給位置に前記キャリッジを移動させ、
前記インク供給位置に前記キャリッジが位置する状態において、前記搬送部により搬送
される前記媒体が通過可能な領域に対して前記第1方向側にノズル面が位置することを特
徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項4】
前記キャリッジは、前記キャリッジが移動する方向のうち前記第1方向と逆の第2方向
側に位置する第2壁部を有し、
前記キャリッジが移動する方向から見て、前記供給口と前記第2壁部とが重なることを
特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンター。
【請求項5】
前記キャリッジは、前記供給口に対して鉛直上方を覆う蓋部材を有することを特徴とす
る請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンター。
【請求項6】
インクが吐出されるノズルを有するヘッドと、前記ヘッドに供給される前記インクを貯
留するインク貯留部と、が搭載され、ガイド部材に沿って移動するキャリッジを備え、
前記キャリッジは、前記インク貯留部の中と前記インク貯留部の外とを連通する供給口
に対して、前記キャリッジが移動する方向のうち第1方向側に位置する第1壁部を、有し
、
前記供給口から前記インク貯留部に前記インクが供給されるとき、前記キャリッジをイ
ンク供給位置に移動させる制御部と、
前記インク供給位置に位置する前記キャリッジの鉛直上方に開口部を有するプリンター
ケースと、
前記プリンターケースに設けられ、前記開口部を覆うカバー位置と、前記カバー位置と
異なる開放位置とに移動可能なプリンターカバーと、
をさらに備え、
前記キャリッジは、前記供給口に対して鉛直上方に位置する蓋部材を有し、
前記キャリッジが移動する方向から見て、前記供給口と前記第1壁部とが重なり、
前記プリンターカバーが前記開放位置にあるとき、前記蓋部材の状態にかかわらず、ユ
ーザーが前記供給口にアクセス可能であることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項7】
前記インク貯留部は鉛直方向上方の面に凹部を有し、当該凹部に前記供給口が設けられ
ることを特徴とする
請求項6に記載のインクジェットプリンター。
【請求項8】
前記供給口に挿入され、少なくとも一部が前記凹部から突出するキャップ部材を備え、
前記キャリッジが移動する方向から見て、前記キャップ部材のうち前記凹部から突出す
る部分と前記第1壁部とが重なることを特徴とする
請求項7に記載のインクジェットプリ
ンター。
【請求項9】
前記キャリッジは、鉛直方向および前記キャリッジが移動する方向と交差する方向にお
いて、前記インク貯留部より一方側に位置する第3壁部を有し、
前記第3壁部の鉛直方向上方端は、前記第1壁部の鉛直方向上方端より低い位置にある
ことを特徴とする
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液滴(インク)を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出装置(インクジェットプリンター)が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載のインクジェットプリンターは、移動可能な液滴吐出部と、インクが貯留される貯留部とを備え、液滴吐出部の移動方向が変わるときに液滴吐出部と貯留部とが接し、貯留部から液滴吐出部にインクが直接供給されるようになっている。
詳しくは、液体吐出部は、キャリッジと、インクを吐出する記録ヘッドと、インクを記録ヘッドに供給するサブタンクとを備え、移動可能である。貯留部は、サブタンクにインクを供給するインク注入部を備えている。液滴吐出部がホームポジションに移動すると、液滴吐出部のサブタンクと貯留部のインク注入部とが接続して、インク注入部からサブタンクにインクが直接供給(注入)される。液滴吐出部がホームポジションから移動すると、液滴吐出部のサブタンクと貯留部のインク注入部とが離間し、インク注入部からサブタンクにインクが注入されなくなる。
かかる構成によって、貯留部と液滴吐出部とをインクチューブ等で接続する必要がなくなり、インクジェットプリンターを小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のインクジェットプリンターでは、接続(接触)と非接続(離間)とを繰り返し、インク注入部からサブタンクにインクが断続的に注入され、不要なインクが、サブタンクのインク注入口に付着する場合がある。さらに、インク注入口は、サブタンクの側面に設けられているので、インク注入口に付着した不要なインクは、落下し、ロール紙(用紙)を汚染するおそれがあった。
すなわち、特許文献1に記載のインクジェットプリンターは、記録ヘッドとサブタンクとがキャリッジに搭載される構成を有し、インク注入部からサブタンクにインクが注入される場合に、サブタンクのインク注入口に付着したインクが、落下し、用紙を汚染するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願のインクジェットプリンターは、インクが吐出されるノズルを有するヘッドと、前記ヘッドに供給される前記インクを貯留するインク貯留部と、が搭載され、ガイド部材に沿って移動するキャリッジを備え、前記キャリッジは、前記インク貯留部の中と前記インク貯留部の外とを連通する供給口に対して、前記キャリッジが移動する方向のうち第1方向側に位置する第1壁部を、有し、前記キャリッジが移動する方向から見て、前記供給口と前記第1壁部とが重なることを特徴とする。
【0006】
本願のインクジェットプリンターでは、前記インクが吐出される媒体を搬送する搬送部と、前記キャリッジの移動を制御する制御部とを備え、前記供給口から前記インク貯留部に前記インクが供給されるとき、前記制御部は、インク供給位置に前記キャリッジを移動させ、前記インク供給位置に前記キャリッジが位置する状態において、ノズル面に対して前記第1方向側に、前記搬送部により搬送される前記媒体が通過可能な領域が位置することが好ましい。
【0007】
本願のインクジェットプリンターでは、前記インクが吐出される媒体を搬送する搬送部と、前記キャリッジの移動を制御する制御部とを備え、前記供給口から前記インク貯留部に前記インクが供給されるとき、前記制御部は、インク供給位置に前記キャリッジを移動させ、前記インク供給位置に前記キャリッジが位置する状態において、前記搬送部により搬送される前記媒体が通過可能な領域に対して前記第1方向側にノズル面が位置することが好ましい。
【0008】
本願のインクジェットプリンターでは、前記キャリッジは、前記キャリッジが移動する方向のうち前記第1方向と逆の第2方向側に位置する第2壁部を有し、前記キャリッジが移動する方向から見て、前記供給口と前記第2壁部とが重なることが好ましい。
【0009】
本願のインクジェットプリンターでは、前記キャリッジは、前記供給口に対して鉛直上方を覆う蓋部材を有することが好ましい。
【0010】
本願のインクジェットプリンターでは、前記供給口から前記インク貯留部に前記インクが供給されるとき、前記キャリッジをインク供給位置に移動させる制御部と、前記インク供給位置に位置する前記キャリッジの鉛直上方に開口部を有するプリンターケースと、前記プリンターケースに設けられ、前記開口部を覆うカバー位置と、前記カバー位置と異なる開放位置とに移動可能なプリンターカバーと、を備え、前記キャリッジは、前記供給口に対して鉛直上方に位置する蓋部材を有し、前記プリンターカバーが前記開放位置にあるとき、前記蓋部材の状態にかかわらず、ユーザーが前記供給口にアクセス可能であることが好ましい。
【0011】
本願のインクジェットプリンターでは、前記インク貯留部は鉛直方向上方の面に凸部を有し、当該凸部に前記供給口が設けられ、前記キャリッジが移動する方向から見て、前記凸部と前記第1壁部とが重なり、かつ前記凸部と前記第2壁部とが重なることが好ましい。
【0012】
本願のインクジェットプリンターでは、前記インク貯留部は鉛直方向上方の面に凹部を有し、当該凹部に前記供給口が設けられることが好ましい。
【0013】
本願のインクジェットプリンターでは、前記供給口に挿入され、少なくとも一部が前記凹部から突出するキャップ部材を備え、前記キャリッジが移動する方向から見て、前記キャップ部材のうち前記凹部から突出する部分と前記第1壁部とが重なることが好ましい。
【0014】
本願のインクジェットプリンターでは、前記キャリッジは、鉛直方向および前記キャリッジが移動する方向と交差する方向において、前記インク貯留部より一方側に位置する第3壁部を有し、前記第3壁部の鉛直方向上方端は、前記第1壁部の鉛直方向上方端より低い位置にあることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係るインクジェットプリンターの斜視図。
【
図2】変形例に係るインクジェットプリンターの斜視図。
【
図3】実施形態1に係るインクジェットプリンターの断面図。
【
図4】実施形態1に係るインクジェットプリンターの斜視図。
【
図5】実施形態1に係るキャリッジの状態を示す斜視図。
【
図6】実施形態1に係るインクジェットプリンターの断面図。
【
図7】実施形態2に係るインクジェットプリンターの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならせている。
【0017】
(実施形態1)
図1及び
図4は、実施形態1に係るインクジェットプリンターとしてのプリンター1の斜視図である。
図2は、変形例に係るインクジェットプリンターとしてのプリンター1Aの斜視図である。
図3は、実施形態1に係るインクジェットプリンターの断面図である。
図5は、キャリッジ30の状態を示す斜視図である。
図1~
図4では、プリンター1が水平面上に置かれているものとして図示されている。
図3は、
図1におけるA-A断面図であり、プリンター1の本体部2の状態が模式的に図示されている。また、
図1~
図3では、メンテナンスカバー14が閉じられた状態、すなわちメンテナンスカバー14がカバー位置P1にある場合の状態が図示されている。
図4では、メンテナンスカバー14が開かれた状態、すなわちメンテナンスカバー14が開放位置P2にある場合の状態が図示されている。
図5では、前壁部33及び上壁部35に対して網掛けが施され、他の壁部31,32,34,36に対して網掛けが施されていない。さらに、
図5では、キャリッジ30に加えて、キャリッジ30に搭載されるヘッド26及びインクタンク71が図示されている。
図6は、
図4のB-Bに沿った断面図であり、本実施形態に係るインクジェットプリンターの状態を示す模式図である。
【0018】
さらに、以降の説明では、プリンター1の幅方向をX軸方向とし、プリンター1の奥行方向をY軸方向とし、プリンター1の高さ方向をZ軸方向とする。X軸方向及びY軸方向は水平面に沿う方向であり、Z軸方向は水平面に直交する鉛直方向である。
また、X軸方向のうち、一方に向かう方向が+X方向であり、他方に向かう方向が-X方向である。Y軸方向のうち、一方に向かう方向が+Y方向であり、他方に向かう方向が-Y方向である。Z軸方向のうち、一方に向かう方向が+Z方向であり、他方に向かう方向が-Z方向である。本実施形態では+X方向は左(Left)方向であり、-X方向は右(Right)方向であり、+Y方向は前(Front)方向であり、-Y方向は後(Rear)方向であり、+Z方向は上(Top)方向であり、-Z方向は下(Bottom)方向である。図面においては、+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向、+Z方向、及び-Z方向は、X(+)、X(-)、Y(+)、Y(-)、Z(+)、及びZ(-)として表記する。
なお、本実施形態において、X軸方向は後述するキャリッジ30が移動する方向である。また、本実施形態において+X方向は、キャリッジ30が移動する方向に沿う方向のうちの第1方向及び第2方向の一方であり、-X方向は第1方向及び第2方向の他方である。また、Y軸方向は、鉛直方向およびキャリッジの移動する方向と交差する方向であり、Y軸方向の一方側が+Y方向側である。上述の通り、Z軸方向は鉛直方向であり、+Z方向は鉛直方向上方である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るプリンター1は、媒体としての用紙Sに画像形成が可能なプリンターである。プリンター1は用紙Sとして、例えば、JIS規格のA0判やB1判といった比較的大きなサイズの媒体に画像形成が可能なプリンターである。さらに、プリンター1は、用紙Sとして、A4サイズ等の単票紙にも画像形成が可能に構成される。
プリンター1は、本体部2と、排紙受け部3とを備える。本体部2はベース9に立設された支柱8の+Z方向側の部分である上部に設けられる。排紙受け部3は用紙捕集部4を有する。用紙捕集部4は本体部2の下方に設けられ、本体部2側から排出される用紙Sを受け止める。
【0020】
なお、本実施形態に係るインクジェットプリンターは、
図2に示すように、排紙受け部3を有さず、本体部2だけで構成されるプリンター1Aであってよい。すなわち、本実施形態に係るインクジェットプリンターは、机などに設置可能な卓上型のプリンター1Aであってもよい。
【0021】
図1に示すように、本体部2は、略直方体状のプリンターケース12を備える。プリンターケース12の+Z方向側の面である上面には、-Y方向側に位置する給紙カバー13と+Y方向側に位置するプリンターカバーとしてのメンテナンスカバー14とが開閉可能に設けられる。プリンターケース12の上面におけるメンテナンスカバー14の+X方向側には、ユーザーがプリンター1の各種の操作を行うための操作パネル15が設けられる。そして、プリンターケース12の+Y方向側の側面である前面には、プリンターケース12内で画像が記録された用紙Sを+Y方向側に向けて排出可能とする排紙口16が設けられる。排紙口16の-Z方向側には、排紙口16から排紙される用紙Sを支持する排紙部100が設けられる。
【0022】
図3に示すように、プリンターケース12の中には、用紙Sがロール状に巻き重ねられたロール体Rが配置される。ロール体Rは、用紙Sの幅方向としてのX軸方向に延びる軸18によって回転可能に支持される。本実施形態では、軸18が
図3における反時計回り方向に回転することによって、ロール体Rから用紙Sが巻き解かれる。巻き解かれた用紙Sは、搬送部40により搬送され、プリンターケース12の前面に開口する排紙口16を通じて、プリンターケース12の外に排出される。巻き解かれた用紙Sが搬送部40によって排紙口16に搬送される経路が搬送経路であり、
図3における右から左に向かう方向、すなわち-Y方向側から+Y方向側に向かう方向が搬送部40により搬送される用紙Sの搬送方向となる。
【0023】
プリンターケース12の中には、記録部20が設けられる。記録部20は、例えばインク等の液体を用紙Sに向けて吐出するインクジェットヘッドとしてのヘッド26と、インクタンク71と、ガイド部材としてのガイド軸17と、キャリッジ30とを有する。
さらに、
図4に示すように、記録部20は、キャリッジ30を移動可能とする駆動力を付与するモーター23と、キャリッジ30の位置を検出するエンコーダー24と、一対のプーリー25と、一対のプーリー25に巻き掛けられその一部がキャリッジ30に固定されるタイミングベルト29とを有する。モーター23が正逆転駆動されることで、キャリッジ30はX軸方向に往復移動し、エンコーダー24から出力されるパルス信号に基づいてキャリッジ30の速度制御及び位置制御がなされる。
図3に示すように、ガイド軸17は、用紙Sの幅方向としてのX軸方向に延在する直線形状である。ガイド軸17は、プリンターケース12内に設けられるフレーム19によって支持される。
キャリッジ30は、ガイド軸17によって支持され、ガイド軸17に沿って移動可能である。キャリッジ30には、ヘッド26とインクタンク71とが搭載され。そして、ヘッド26とインクタンク71とは、キャリッジ30と共にX軸方向に移動可能である。
【0024】
ヘッド26は、インクタンク71に対して-Z方向側に位置する。ヘッド26は、インクが吐出されるノズル27が形成されたノズル面28を含む。ノズル面28は、ヘッド26の-Z方向側の面であり、キャリッジ30の-Z方向側の壁部である下壁部36から-Z方向側に突出するように配置される。ヘッド26は、不図示の圧力発生室と不図示の圧電素子とノズル27とを有する。ノズル27は、ヘッド26に設けられた不図示の流路を経由して、インクタンク71に連通される。圧電素子は、撓み振動モードの圧電アクチュエーター、または縦振動モードの圧電アクチュエーターである。圧電素子が圧力発生室の一部を形成する振動板を振動させ、圧力発生室に圧力変動を生じさせ、この圧力変動を利用することで、ノズル27から用紙Sに対してインクが吐出される。
【0025】
インクタンク71は、ヘッド26に対して+Z方向側に位置する。インクタンク71はキャリッジ30の中に収容される。
図5に示すように、本実施形態では、キャリッジ30の中に四つのインクタンク71が収容される。四つのインクタンク71には、シアン(C)のインク、マゼンタ(M)のインク、イエロー(Y)のインク、及びブラック(K)のインクからなる4色のインクのうちいずれかが貯留されている。すなわち、キャリッジ30の中には、シアン(C)のインクが貯留されるインクタンク71Cと、マゼンタ(M)のインクが貯留されるインクタンク71Mと、イエロー(Y)のインクが貯留されるインクタンク71Yと、ブラック(K)のインクが貯留されるインクタンク71Kとが収容されている。
なお、キャリッジ30の中に収容されるインクタンク71の数は四つ限定されず、四つよりも少なくてよいし、四つよりも多くてもよい。また、インクの色の数は4色に限定されず、4色よりも少なくてよいし、4色よりも多くてもよい。
さらに、以降の説明では、インクタンク71に貯留されるインクを、インクEと称す。
【0026】
図3に示すように、インクタンク71は、インク貯留部としてのタンク本体部72と、キャップ部材75とを有する。
タンク本体部72は、インクを貯留可能な中空の容器であり、インクEを貯留する。タンク本体部72の+Z方向側の面72aには凹部73が設けられる。凹部73には面72aを貫通する供給口74が設けられている。すなわち、タンク本体部72は、+Z方向側の面72aに凹部73を有し、凹部73に供給口74が設けられている。供給口74は、タンク本体部72の中とタンク本体部72の外とを連通する。
換言すれば、本実施形態のプリンター1は、インクEが吐出されるノズル27を有するヘッド26と、ヘッド26に供給されるインクEを貯留するタンク本体部72と、が搭載され、ガイド軸17に沿って移動するキャリッジ30を備える。さらに、タンク本体部72には、タンク本体部72の中とタンク本体部72の外とを連通する供給口74が設けられる。
加えて、本実施形態において、タンク本体部72は+Z方向側の面72aに凹部73を有し、凹部73に供給口74が設けられる。
【0027】
キャップ部材75は、供給口74に挿入され、タンク本体部72の中に貯留されるインクEへの異物侵入やインクEの乾燥を防止する。さらに、タンク本体部72には不図示の大気連通孔が設けられ、タンク本体部72の中は大気圧に維持される。
供給口74にキャップ部材75が挿入された状態において、キャップ部材75の+Z方向側の面は、凹部73から+Z方向側に突出している。すなわち、インクタンク71は、供給口74に挿入され、少なくとも一部が凹部73から+Z方向側に突出するキャップ部材75を備える。
【0028】
詳細は後述するが、キャリッジ30は、蓋部材として、+Z方向側に配置される上壁部35を有する。上壁部35は、+Y方向側の端を支点として、少なくともZ軸方向に回動可能である。
図3では、カバー位置P1にあるメンテナンスカバー14が図中に実線で示され、開放位置P2にあるメンテナンスカバー14が図中に二点鎖線で示され、カバー位置P3にある上壁部35が図中に実線で示され、開放位置P4にある上壁部35が図中に二点鎖線で示される。
そして、ユーザーがメンテナンスカバー14を閉じると、メンテナンスカバー14はカバー位置P1に配置され、メンテナンスカバー14を開くと、メンテナンスカバー14は開放位置P2に配置される。さらに、ユーザーが上壁部35を閉じると、上壁部35はカバー位置P3に配置され、上壁部35を開くと、上壁部35は開放位置P4に配置される。
また、メンテナンスカバー14が開放位置P2に配置されると、ユーザーは本体部2の内部を観察できる。さらに、メンテナンスカバー14が開放位置P2に配置され、且つ、上壁部35が開放位置P4に配置されると、すなわち、メンテナンスカバー14及び上壁部35が開かれると、ユーザーは、インクタンク71にアクセスでき、タンク本体部72の中にインクEを供給することができる。なお、本実施形態においてユーザーは、タンク本体部72の中にインクEが残留している状態であっても、タンク本体部72の中にインクEを供給することができる。
【0029】
タンク本体部72は透明であり、ユーザーは、タンク本体部72に貯留されるインクEの状態を観察することができる。
プリンター1が用紙Sに対する画像の記録を繰り返すと、タンク本体部72に貯留されるインクEが消費され、タンク本体部72に貯留されるインクEが少なくなる。ユーザーは、タンク本体部72に貯留されるインクEの状態を観察し、タンク本体部72に貯留されるインクEが少なくなると、メンテナンスカバー14をカバー位置P1から開放位置P2に変更し、加えて、上壁部35をカバー位置P3から開放位置P4に変更し、キャップ部材75及び供給口74を露出させる。ユーザーはキャップ部材75及び供給口74を露出させた状態で、キャップ部材75を取り外し、供給口74を介してタンク本体部72の中にインクEを供給する。
さらに、タンク本体部72へのインクEの供給が終了すると、ユーザーは、上壁部35を開放位置P4からカバー位置P3に変更し、メンテナンスカバー14を開放位置P2からカバー位置P1に変更する。
【0030】
タンク本体部72に貯留されるインクEは、色材が水系媒体に分散された、または溶解された水性インクである。本実施形態では、色材として顔料が使用されている。なお、色材は染料であってもよい。
溶剤は、例えば水系媒体であり、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を使用することができる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加などによって滅菌された水を用いると、インクEを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。なお、溶剤は、例えばエチレングリコールやプロピレングリコールなどの揮発性の水溶性有機溶剤を含んでいてもよい。
さらに、タンク本体部72に貯留されるインクEは、上述した色材や溶剤の他に、塩基性触媒、界面活性剤、第三級アミン、樹脂類、pH調整剤、緩衝液、定着剤、防腐剤、酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などを含んでいてもよい。
【0031】
第1支持部材21及び第2支持部材22は、板状の部材で構成される。第1支持部材21は、搬送方向において第2支持部材22よりも上流側に配置され、ロール体Rから巻き解かれた用紙Sを記録部20に向けて案内する。第2支持部材22は、記録部20のヘッド26と対向するように配置される。
【0032】
搬送部40は、ロール体Rから巻き解かれた用紙Sを第1支持部材21及び第2支持部材22に沿うように、プリンターケース12内から排紙口16に向けて搬送する。搬送部40は、搬送方向の上流側から下流側に向かって順に配置された第1搬送ローラー対41と、第2搬送ローラー対42と、第3搬送ローラー対43と、第4搬送ローラー対44とを有する。第1搬送ローラー対41は、ヘッド26よりも搬送方向の上流側に位置し、第1支持部材21と第2支持部材22との間となる位置に配置される。他の搬送ローラー対42,43,44は、ヘッド26よりも搬送方向の下流側に配置される。
【0033】
搬送ローラー対41,42,43,44は、不図示のモーターにより駆動回転が可能な駆動ローラー45と、駆動ローラー45の回転に対して従動回転が可能な従動ローラー46とを有している。搬送ローラー対41,42,43,44は、駆動ローラー45と従動ローラー46とで用紙Sを挟み込んだ状態で回転することによって、用紙Sを搬送する。駆動ローラー45は、用紙Sに対して-Z方向側から接触するように配置される。従動ローラー46は、用紙Sに対して+Z方向側から接触する。すなわち、搬送ローラー対42,43,44における従動ローラー46は、用紙Sを搬送する際に、用紙Sに対して液体が吐出された面に接触する。このため、搬送ローラー対42,43,44における従動ローラー46は、用紙Sに記録された画像の品質の劣化を低減させるため、用紙Sに対して接触面積の小さいスターホイール等で構成される。搬送ローラー対41,42,43,44は、X軸方向において、所定の間隔を空けてそれぞれ複数配置される。
【0034】
第3搬送ローラー対43と第4搬送ローラー対44との間には、切断機構50が配置される。切断機構50により切断された用紙Sは、第4搬送ローラー対44によって搬送されることで排紙口16から排出される。第4搬送ローラー対44は、切断機構50に対して搬送方向の下流側に位置し、排紙口16の近傍に配置されている。第4搬送ローラー対44を排紙口16の近傍に配置することにより、用紙Sを排紙口16に向けて円滑に搬送し、紙ジャムの発生を防止することができる。
また、本実施形態では、ユーザーが手指を排紙口16からプリンターケース12内に挿し入れることができない程度に、排紙口16のZ軸方向の寸法が設定される。
【0035】
切断機構50は、用紙Sを切断するための切断刃51と、切断刃51を保持する保持体55とを有する。切断刃51は、円板状の駆動刃52と従動刃53とで構成される。駆動刃52及び従動刃53は、保持体55に対して回転可能な状態で、保持体55に取り付けられる。駆動刃52及び従動刃53は、鉛直方向において並ぶように設けられる。保持体55は、X軸方向に沿って往復移動することが可能である。切断機構50は、保持体55がX軸方向に沿って移動することによって、切断刃51により用紙Sを切断する。すなわち、切断刃51を含む切断機構50を、用紙Sの搬送方向に交差するX軸方向に走査することにより用紙Sを切断する。
【0036】
なお、切断機構50は、モーター等の駆動源を備え、モーターによる駆動力によって切断機構50をX軸方向に沿って往復移動させる構成でもよいし、切断機構50とキャリッジ30とを連結させ、キャリッジ30を移動させるモーターの駆動力によって切断機構50をX方向に沿って往復移動させる構成でもよい。
【0037】
さらに、プリンターケース12の中には、キャリッジ30の移動を制御する制御部60が設けられる。
制御部60は、不図示のCPUや不図示のメモリーなどを備える。CPUは、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリーは、CPUが動作するプログラムを格納する領域や動作する作業領域などを確保する記憶媒体であり、RAM、EPROMなどの記憶素子によって構成される。
制御部60は、キャリッジ30をX軸方向に移動させながらノズル27から用紙Sに対してインクEが吐出される動作と、用紙Sを搬送方向に移動させる動作とを交互に繰り返し、用紙Sに画像が記録されるように、記録部20と搬送部40とを制御する。
【0038】
次に、
図4及び
図5を参照し、プリンター1の本体部2及びプリンター1のキャリッジ30の状態を、さらに詳しく説明する。
図5に示すように、キャリッジ30は、+X方向側に配置される左壁部31と、-X方向側に配置される右壁部32と、+Y方向側に配置される前壁部33と、-Y方向側に配置される後壁部34と、+Z方向側に配置される上壁部35と、-Z方向側に配置される下壁部36とを有する。
【0039】
キャリッジ30は、左壁部31と右壁部32と前壁部33と後壁部34と上壁部35と下壁部36とで構成される中空部材であり、内部にヘッド26とインクタンク71とが配置される。すなわち、第1壁部としての左壁部31は、インクタンク71のタンク本体部72に設けられる供給口74に対して、+X方向側に位置する。また、第2壁部としての右壁部32は、供給口74に対して-X方向側に位置する。さらに、第3壁部としての前壁部33は、供給口74に対して+Y方向側に位置する。そして、上壁部35は供給口74に対して、+Z方向側に位置する。また、特に左壁部31、右壁部32、及び上壁部35はいずれも、飛散するインクを捕集可能な形状である。
キャリッジ30では、上壁部35と下壁部36との間に、左壁部31と、右壁部32と、前壁部33と、後壁部34とが配置される。左壁部31のZ軸方向寸法と、右壁部32のZ軸方向寸法と、後壁部34のZ軸方向寸法とは同じである。前壁部33のZ軸方向寸法は、左壁部31、右壁部32、後壁部34のいずれのZ軸方向寸法よりも短い。その結果、前壁部33の+Z方向側の端33aは、左壁部31の+Z方向側の端31aより-Z方向側に位置する。
【0040】
前壁部33のZ軸方向寸法が左壁部31、右壁部32、後壁部34のいずれのZ軸方向寸法よりも短く、前壁部33の+Z方向側の端33aが左壁部31の+Z方向側の端31aより低い位置にあると、キャリッジ30の+Y方向側において、前壁部33と上壁部35との間に隙間が形成される。
ユーザーは、当該隙間を介して、キャリッジ30に収容されるインクタンク71の状態及びタンク本体部72に貯留されるインクEの状態を観察することができる。
【0041】
下壁部36には、不図示の開口が設けられる。ヘッド26は、下壁部36の開口に嵌め込まれた状態で、下壁部36に固定される。ヘッド26が下壁部36の開口に嵌め込まれると、ヘッド26の-Z方向側の面、すなわちノズル27が形成されたノズル面28は、下壁部36から-Z方向側に突出し、第2支持部材22に支持される用紙Sに対向配置される。
【0042】
上壁部35は、供給口74に対して+Z方向を覆うように配置される。すなわち、+Z方向側から見た平面視において、上壁部35は、タンク本体部72の供給口74に重なる。換言すれば、キャリッジ30は、供給口74に対して+Z方向を覆う上壁部35を有する。
すると、インクタンク71は、+Z方向において、上壁部35によって保護され、供給口74に対して+Z方向から、キャップ部材75に余分な力が作用しにくくなる。
【0043】
+Y方向側において、上壁部35は、左壁部31及び右壁部32によって支持される。詳しくは、+Y方向側において、上壁部35は、左壁部31及び右壁部32に接触する一対の湾曲部を有する。上壁部35は、当該一対の湾曲部によって左壁部31及び右壁部32に支持され、当該一対の湾曲部を支点として、少なくともZ軸方向に回動可能である。すなわち、上壁部35は、+Y方向側の端を支点として、少なくともZ軸方向に回動可能であり、ユーザーは上壁部35を回動させて、カバー位置P3または開放位置P4に配置することができる。
さらに、上壁部35は、+Y方向側に開口部35aを有する。ユーザーは、開口部35aを介して、キャリッジ30に収容されるインクタンク71の状態、及びタンク本体部72に貯留されるインクEの状態を観察することができる。
【0044】
X軸方向から見た平面視において、タンク本体部72の供給口74と、左壁部31とは重なる。すなわち、本実施形態に係るプリンター1において、キャリッジ30の移動する方向としてのX軸方向から見て、タンク本体部72の供給口74と左壁部31とが重なる。
インクタンク71は、供給口74に挿入され、少なくとも一部が凹部73から突出するキャップ部材75を備える。X軸方向から見た平面視において、キャップ部材75のうち凹部73から突出する部分は、左壁部31と重なる。すなわち、本実施形態に係るプリンター1において、キャリッジ30が移動する方向としてのX軸方向から見た場合、キャップ部材75のうち凹部73から突出する部分と、左壁部31とが重なる。
さらに、X軸方向から見た平面視において、タンク本体部72の供給口74と、右壁部32とは重なる。すなわち、本実施形態に係るプリンター1において、キャリッジ30の移動するX軸方向から見て、タンク本体部72の供給口74と右壁部32とが重なる。
さらに、X軸方向から見た平面視において、キャップ部材75のうち凹部73から突出する部分は、右壁部32と重なる。すなわち、本実施形態に係るプリンター1において、キャリッジ30の移動するX軸方向から見て、キャップ部材75のうち凹部73から突出する部分と、右壁部32とが重なる。
なお、本実施形態において、軸方向から見ることは、ある軸方向に沿う方向のいずれかから見ることである。
【0045】
図4には、用紙Sに記録を行わないプリンター1の待機状態が図示されている。
図4に示すように、プリンター1が用紙Sに記録を行わない場合、キャリッジ30は、用紙Sが通過可能な領域SAに対して、-X方向側のホーム位置HPにおいて待機状態になる。すなわち、プリンター1が用紙Sに記録を行わない場合のキャリッジ30の待機位置が、ホーム位置HPである。
上述したように、プリンター1は、キャリッジ30をX方向に移動させながらノズル27から用紙Sに対してインクEが吐出される動作と、用紙Sを搬送方向に移動させる動作とを交互に繰り返し、用紙Sに画像を記録する。
プリンター1が用紙Sに画像を記録する場合、プリンター1は、ホーム位置HPにあるキャリッジ30を+X方向に移動させ、続いて用紙Sを+Y方向に移動させる。これらの、キャリッジ30の移動と用紙Sの移動とを交互に繰り返し、用紙Sに画像を記録する。
【0046】
キャリッジ30がホーム位置HPに配置されたときに、キャリッジ30の-Z方向側の位置には、メンテナンス装置56が配置される。メンテナンス装置56は、キャップ57を備える。キャップ57は、ホーム位置HPにあるキャリッジ30のヘッド26に対して、対向配置される。キャップ57は、Z軸方向に移動可能である。キャリッジ30がホーム位置HPで待機する場合、キャップ57は、+Z方向側に移動し、ノズル面28に接触する。キャップ57がノズル面28に接触し、キャップ57の縁部がノズル27を囲うことが、キャップ57によるヘッド26のキャッピング処理である。キャッピング処理によりヘッド26におけるインクEの増粘が抑制される。また、プリンター1が用紙Sに画像を記録する場合、キャップ57は、-Z方向側に移動する。
さらに、メンテナンス装置56は、増粘したインクEや気泡が混入したインクEをヘッド26から強制的に排出させるフラッシング処理、及びヘッド26のノズル面28に付着した汚れを取り除くワイピング処理などの、ヘッド26を正常な状態に回復させるメンテナンス処理を実施する。
このように、メンテナンス装置56は、キャッピング処理や、ヘッド26を正常な状態に回復させるメンテナンス処理を実施する。さらに、キャップ57は、キャッピング処理やフラッシング処理において、Z軸方向に移動する。
【0047】
図6は、
図4のB-Bに沿った断面図であり、本実施形態に係るインクジェットプリンターの状態を示す模式図である。
図6には、タンク本体部72へインクEが供給される際に零れたインクEが図示されている。
なお、
図6では、第2支持部材22と用紙Sとキャリッジ30とヘッド26とインクタンク71とキャップ57とが模式的に図示され、他の構成要素の図示が省略されている。キャリッジ30とヘッド26とインクタンク71とは、インク供給位置RPに配置される場合に実線で図示され、ホーム位置HPに配置される場合に二点鎖線で図示されている。
【0048】
図6に示すように、X軸方向において、ホーム位置HPにあるキャリッジ30のノズル面28は、第2支持部材22と異なる位置にある。上述の通り、第2支持部材22は、搬送部40により搬送される用紙Sを支持可能であるため、用紙Sを支持可能な第2支持部材22が存在する用紙配置領域SAは、搬送部40により搬送される用紙Sが通過可能な領域である。すなわち、ホーム位置HPにキャリッジ30が位置する状態において、ノズル面28は、領域SAの外に対向する。
【0049】
タンク体部72に貯留されるインクEが少なくなり、供給口74からタンク本体部72の中にインクEが供給されるとき、制御部60は、キャリッジ30をインク供給位置RPに移動させる。ユーザーは、インク供給位置RPにキャリッジ30が位置する状態で、キャリッジ30に搭載されるインクタンク71のタンク本体部72の中にインクを供給する。
図6に示すように、インク供給位置RPにキャリッジ30が位置する状態において、ノズル面28は、領域SAの外に対向する。また、インク供給位置RPにキャリッジ30が位置する状態におけるノズル面28は、X軸方向において、領域SAとホーム位置HPにキャリッジ30が位置する状態におけるノズル面28との間に位置する。すなわち、インク供給位置RPにキャリッジ30が位置する状態において、ノズル面28より+X方向側に領域SAが位置する。したがって、キャリッジ30が移動する方向において、供給口74から第1壁部としての左壁部31へ向かう方向と、インク供給位置RPに位置するキャリッジ30のノズル面28から領域SAへ向かう方向と、は同一である。
【0050】
詳しくは、ユーザーは、タンク本体部72の中にインクEを供給する場合、
図4に示す操作パネル15におけるインク供給のボタンを選択し、その後、
図4に示すメンテナンスカバー14を開放位置P2に配置する。制御部60は、操作パネル15におけるインク供給のボタンが選択された状態で、不図示のセンサーにより、メンテナンスカバー14が開放位置P2に配置されたことを検出すると、キャリッジ30をインク供給位置RPに移動させる。続いて、ユーザーは、上壁部35を開放位置P4に配置し、キャップ部材75を供給口74から取り外す。そして、ユーザーは、インクEが充填された供給容器を使用し、供給口74からタンク本体部72の中にインクEを供給する。
【0051】
ユーザーは、タンク本体部72へのインクEの供給を終了すると、キャップ部材75を供給口74に取付け、上壁部35をカバー位置P3に配置し、メンテナンスカバー14をカバー位置P1に配置し、操作パネル15における供給完了のボタンを選択する。不図示のセンサーによりメンテナンスカバー14がカバー位置P1に配置されたことが検出された状態で、操作パネル15における供給完了のボタンが選択されると、制御部60は、キャリッジ30をインク供給位置RPからホーム位置HPに移動させ、キャリッジ30(ヘッド26、インクタンク71)がホーム位置HPに配置された状態で、用紙Sへの記録を再開する。
【0052】
なお、本実施形態においては、制御部60は、操作パネル15における所定のボタンが選択された状態で、メンテナンスカバー14が開放位置P2に配置されたことを検出すると、キャリッジ30をインク供給位置RPに移動させるが、これに限られず、タンク本体部72の中にインクEが供給されることに伴う何らかの動作があった場合に、制御部60がキャリッジ30をインク供給位置RPに移動させればよい。例えば、操作パネル15における所定のボタンが選択された場合に、制御部60がキャリッジ30をインク供給位置RPに移動させる構成であってもよい。また、制御部60が、メンテナンスカバー14が開放位置P2に配置されたことを検出した場合に、キャリッジ30をインク供給位置RPに移動させる構成あってもよい。さらに、タンク本体部72の中のインクEが所定の閾値を下回った場合に、制御部60がキャリッジ30をインク供給位置RPに移動させる構成であってもよい。
【0053】
上述の通り、キャリッジ30がインク供給位置RPに位置するときのノズル面28は、キャリッジ30の移動方向としてのX軸方向において、用紙Sが通過可能な領域SAと、ホーム位置HPに位置するキャリッジ30のノズル面28との間に位置する。また、キャリッジ30がインク供給位置RPに位置するときに、ユーザーにより、供給口74からタンク本体部72へインクEが供給される。より具体的には、ユーザーは、インクEが充填された供給容器を使用し、当該供給容器の先端を供給口74の中に差し込み、タンク本体部72へインクEを供給する。すなわち、キャリッジ30の移動方向において、用紙Sが通過可能な領域SAとも、キャップ57とも異なる位置にノズル面28が位置する状態で、ユーザーによりインクEの供給が実施される。
【0054】
タンク本体部72にインクEが供給されるとき、ノズル27からインクEが漏れ出す虞がある。仮に、ノズル面28が領域SAに対向する状態で、ノズル27から漏れ出たインクEが落下すると、用紙Sが通過する第2支持部材22の部分、もしくは第2支持部材に支持される用紙SにインクEが付着し、用紙Sが汚れる。本実施形態においては、ノズル面28が領域SAに対向しない状態で、タンク本体部72へのインクEの供給が行われるため、用紙Sが汚れる虞が低減する。
【0055】
また、タンク本体部72にインクEが供給されるとき、ユーザーが使用する供給容器によりタンク本体部72が-Z方向側に押圧され、ノズル面28を含むキャリッジ30全体が-Z方向側に押圧される虞がある。仮に、キャリッジ30がホーム位置HPに位置するとき、換言すれば、ノズル面28に対してキャップ57が対向するときに、タンク本体部72へのインクEの供給が行われると、-Z方向側に押圧されるノズル面28がキャップ57に接触し、キャップ57に過度な負荷がかかる虞がある。本実施形態においては、ノズル面28がキャップ57に対向しない状態、すなわち、キャリッジ30がホーム位置HPに位置しない状態で、タンク本体部72へのインクEの供給が行われるため、キャップ57に過度な負荷がかかる虞が低減する。
【0056】
タンク本体部72の中にインクEを供給する場合、すなわち、インク供給位置RPにキャリッジ30が位置する場合、左壁部31はタンク本体部72の供給口74に対して+X方向側に配置され、右壁部32はタンク本体部72の供給口74に対して-X方向側に配置される。すなわち、キャリッジ30の移動方向において、そして、左壁部31は、用紙Sと本体部72との間に配置される。
【0057】
タンク本体部72へのインクEの供給が終了し、用紙Sに対する記録を再開する場合、すなわち、キャリッジ30がホーム位置HPに位置する場合、左壁部31はタンク本体部72の供給口74に対して+X方向側に配置され、右壁部32はタンク本体部72の供給口74に対して-X方向側に配置される。このため、ホーム位置HPから1回目の走査を行う場合、右壁部32はタンク本体部72の供給口74に対して、当該走査におけるキャリッジ30の移動方向と逆方向側に配置される。
【0058】
タンク本体部72の中にインクEを供給する場合、供給容器の先端が本体部72の供給口74に適正に差し込まれないと、インクEが供給口74から零れる場合がある。本実施形態では、本体部72の+Z方向側の面72aに凹部73が設けられているので、供給口74から零れるインクEは、凹部73によって受け止められ、凹部73の内側に貯留され、凹部73の外側に広がりにくい。したがって、プリンターケース12の中に収容されている各種部材が、インクEによって汚染され、故障するという不具合が生じにくくなる。
【0059】
さらに、ユーザーがタンク本体部72の中にインクEを供給する場合、供給容器の先端がタンク本体部72の供給口74に適正に差し込まれないことや、タンク本体部72へのインク供給が終了した後に、供給容器の先端が供給口74から抜かれることにより、供給口74の近傍からインクEが飛散するおそれがある。
本実施形態では、キャリッジ30の移動する方向としてのX軸方向のうち、供給口74に対して+X方向側には左壁部31が設けられ、供給口74に対して-X方向側には右壁部32が設けられる。そして、左壁部31及び右壁部32は、X軸方向から見て供給口74に重なる。したがって、供給口74に対して、キャリッジ30の移動する方向に沿う方向のいずれかには、左壁部31もしくは右壁部32が設けられるので、キャリッジ30の移動する方向に沿う方向のいずれかへのインクEの飛散が低減できる。
【0060】
また、本実施形態では、キャリッジ30がインク供給位置RPに位置するとき、キャリッジ30が移動する方向において、タンク本体部72が連通するノズル27を有するノズル面28から領域SAへ向かう方向と、供給口74から左壁部31へ向かう方向とが同一である。したがって、タンク本体部72の中にインクEを供給する場合、用紙Sとタンク本体部72との間に左壁部31が配置されるので、供給口74の近傍から飛散するインクEは、左壁部31によって受け止められ、用紙Sが汚れにくくなる。すなわち、供給口74に対して+X方向側に位置し、X軸方向から見て供給口74と重なる左壁部31を設けると、ユーザーがタンク本体部72の中にインクEを供給する際にインクEが飛散する場合であっても、用紙SがインクEによって汚染されにくくなる。
【0061】
タンク本体部72へのインクEの供給が終了し、用紙Sに対する記録が再開される場合、1回目のキャリッジ30の走査としてホーム位置HPにあるキャリッジ30が、領域SA側に移動される。
インクEが凹部73の内側に貯留された状態で、キャリッジ30を領域SA側としての+X方向に移動させる1回目の走査が実施されると、凹部73の中に貯留されたインクEは、当該1回目の走査におけるキャリッジ30の移動方向としての+X方向と逆の-X方向側、換言すれば、キャリッジ30が移動する方向において領域SAからインク供給位置RPに位置するキャリッジ30のノズル面28へ向かう方向に飛散しやすくなる。
本実施形態では、キャリッジ30がインク供給位置RPに位置するとき、キャリッジ30が移動する方向において、領域SAからタンク本体部72が連通するノズル27を有するノズル面28へ向かう方向と、供給口74から右壁部32へ向かう方向とが同一である。キャリッジ30が移動する方向としてのX軸方向から見て、供給口74と右壁部32とが重なる。したがって、供給口74に対して1回目の走査におけるキャリッジ30の移動方向と逆側に位置し、さらに、キャリッジ30が移動する方向としてのX軸方向から見た平面視において、供給口74と重なる右壁部32が設けられるので、1回目のキャリッジ30の走査において凹部73の中に貯留されたインクEが飛散する場合であっても、飛散するインクEは、供給口74に対して特にインクEが飛散しやすい方向に設けられる右壁部32によって受け止められる。その結果、インクEによる汚染が抑制され、プリンターケース12の中に収容されている各種部材の汚染、及び用紙Sの汚染が生じにくくなる。
【0062】
さらに、本実施形態では、上述の通り、キャリッジ30の移動する方向としてのX軸方向のうち、供給口74に対して+X方向側には左壁部31が設けられ、供給口74に対して-X方向側には右壁部32が設けられる。したがって、キャリッジ30の移動する方向において、供給口74に対して、供給口74から左壁部31へ向かう方向と逆方向側に右壁部32を有する。換言すれば、キャリッジ30の移動する方向において、供給口74に対して、供給口74から右壁部32へ向かう方向と逆方向側に左壁部31を有する。これによれば、インクEの飛散により用紙Sが汚れる虞、及び、記録再開後の1回目のキャリッジ30の走査の際に凹部73内のインクEが飛散することによりプリンターケース12内が汚れる虞が低減する。
【0063】
(実施形態2)
図7は、
図3に対応する図であり、実施形態2に係るインクジェットプリンターの構成を示す模式図である。
本実施形態に係るプリンター1Cと実施形態1に係るプリンター1とでは、上壁部35に設けられる開口部35aの位置が異なる。詳しくは、本実施形態に係るプリンター1Cでは、実施形態1に係るプリンター1と比べて、開口部35aは上壁部35の-Y方向側に設けられている。この点が本実施形態と実施形態1との主な相違点である。
以下、
図7を参照し、本実施形態に係るプリンター1Cの概要を、実施形態1との相違点を中心に説明する。また、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明を省略する。
【0064】
図7に示すように、キャリッジ30において、上壁部35の-Y方向側には、開口部35aが設けられる。さらに、キャリッジ30がインク供給位置RPに位置する場合、本実施形態に係るプリンター1Cは、インク供給位置RPに位置するキャリッジ30の+Z方向に位置するケース開口部14aを備える。
さらに、メンテナンスカバー14は、ケース開口部14aを覆うカバー位置P1と、カバー位置P1と異なる開放位置P2とに移動可能である。加えて、本実施形態に係るプリンター1Cは、実施形態1に係るプリンター1と同様に、インクEが吐出される用紙Sを搬送する搬送部40と、キャリッジ30の移動を制御する制御部60とを備える。制御部60は、供給口74からタンク本体部72にインクが供給されるとき、キャリッジ30をインク供給位置RPに移動させる。
【0065】
上壁部35がカバー位置P3にある場合、+Z方向から見た平面視において、タンク本体部72のキャップ部材75及び供給口74と、上壁部35の開口部35aとは重なる。すなわち、上壁部35がカバー位置P3にある場合、タンク本体部72のキャップ部材75及び供給口74は、開口部35aによって露出される。換言すれば、キャリッジ30が、ユーザーにとって+Z方向からアクセス可能な状態であれば、上壁部35がカバー位置P3にある状態でも、ユーザーは、キャップ部材75及び供給口74をアクセスできる。このため、メンテナンスカバー14が開放位置P2に位置すると、すなわち、メンテナンスカバー14が開かれると、ケース開口部14aを介して、タンク本体部72のキャップ部材75及び供給口74が露出され、ユーザーは、上壁部35がカバー位置P3にあるか開放位置P4にあるかに関わらず、タンク本体部72のキャップ部材75及び供給口74にアクセスできるようになる。
すなわち、本実施形態に係るプリンター1Cでは、メンテナンスカバー14が開放位置P2にあるとき、上壁部35の状態にかかわらず、ユーザーはキャップ部材75及び供給口74にアクセス可能になる。
【0066】
タンク本体部72に貯留されるインクEが少なくなり、供給口74からタンク本体部72の中にインクEが供給されるとき、ユーザーは、操作パネル15におけるインク供給のボタンを選択し、その後、メンテナンスカバー14を開放位置P2に配置する。制御部60は、操作パネル15におけるインク供給のボタンが選択された状態で、不図示のセンサーによりメンテナンスカバー14が開放位置P2に配置されたことを検出すると、キャリッジ30をインク供給位置RPに移動させる。続いて、ユーザーは、キャップ部材75を供給口74から取り外し、インクEが充填された供給容器を使用し、タンク本体部72の中にインクEを供給する。
ユーザーは、タンク本体部72へのインクEの供給を終了すると、キャップ部材75を供給口74に取付け、メンテナンスカバー14をカバー位置P1に配置し、操作パネル15における供給完了のボタンを選択する。不図示のセンサーによりメンテナンスカバー14がカバー位置P1に配置されたことが検出された状態で、操作パネル15における供給完了のボタンが選択されると、制御部60は、キャリッジ30をインク供給位置RPからホーム位置HPに移動させ、用紙Sへの記録を再開する。
本実施形態では、メンテナンスカバー14が開かれると、上壁部35の状態にかかわらず、ユーザーは、タンク本体部72のキャップ部材75及び供給口74にアクセスできる。従って、ユーザーは、メンテナンスカバー14のみを開くだけで、タンク本体部72の中にインクEを供給することができる。さらに、タンク本体部72へのインクEの供給が終了すると、ユーザーはメンテナンスカバー14のみを閉じるだけで良い。
このように、本実施形態では、タンク本体部72の中にインクEを供給する場合にメンテナンスカバー14のみを開くだけよく、タンク本体部72の中へのインクEの供給が終了すると、メンテナンスカバー14のみを閉じるだけでよい。
【0067】
一方、実施形態1では、タンク本体部72の中にインクEを供給する場合、メンテナンスカバー14及び上壁部35の両方を開く必要があり、タンク本体部72へのインクEの供給が終了すると、メンテナンスカバー14及び上壁部35の両方を閉じる必要がある。
従って、タンク本体部72に貯留されるインクEが少なくなり、タンク本体部72の中にインクEを供給する場合、本実施形態では、上壁部35を開閉しなくてよいので、上壁部35を開閉する実施形態1と比べて、タンク本体部72の中にインクEを供給する場合のユーザーの負担が軽減される。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0069】
(変形例1)
上述した実施形態では、インクEを貯留するタンク本体部72の+Z方向側の面72aに凹部73が設けられ、凹部73にインクEを供給する供給口74が設けられていた。
インクEを貯留するタンク本体部72の+Z方向側の面72aに凸部を設け、当該凸部にインクEを供給する供給口74を設けてもよい。凸部に供給口74を設けると、ユーザーにとって凸部が目印になり、ユーザーが供給口74の位置を把握しやすくなり、インクEを供給する供給容器の先端(供給口)をタンク本体部72の供給口74に適正に差し込みやすくなる。従って、凸部に供給口74を設けると、タンク本体部72の中にインクEが適正に供給されないという不具合が生じにくくなる。
【0070】
X軸方向から見た平面視において、供給口74が設けられる凸部と、左壁部31及び右壁部32とが重なるようにすると、仮に、タンク本体部72の中にインクEが適正に供給されないという不具合が生じる場合であっても、供給口74から飛散するインクEは、左壁部31または右壁部32によって受け止められ、インクEの飛散の悪影響(部材の汚染、用紙Sの汚染など)が生じにくくなる。加えて、インクEが供給口74から零れ、当該零れたインクEが主走査によってX軸方向に飛散する場合であっても、X軸方向に飛散するインクEは、左壁部31または右壁部32によって受け止められ、インクEの飛散の悪影響(部材の汚染、用紙Sの汚染など)が生じにくくなる。
【0071】
このように、インクEを貯留するタンク本体部72の+Z方向側の面72aに凸部を設け、当該凸部に供給口74を設け、X軸方向から見た平面視において、供給口74が設けられる凸部と、左壁部31及び右壁部32とが重なる構成であってもよい。
換言すれば、本体部72の+Z方向側の面72aに凸部を有し、当該凸部に供給口74が設けられ、キャリッジ30の移動する方向としてのX軸方向から見て、当該凸部と左壁部31とが重なり、且つ当該凸部と右壁部32とが重なる構成であってもよい。
【0072】
(変形例2)
上述した実施形態では、インクタンク71は、タンク本体部72とキャップ部材75とを有し、キャップ部材75はタンク本体部72の供給口74に挿入されていた。
タンク本体部72の供給口74に、インクEの逆流または外気侵入を防止する弁を設ける構成であってもよい。
さらに、タンク本体部72の供給口74に、キャップ部材75を設けない構成であってもよい。例えば、インクEに水溶性有機溶剤を添加し、インクEから水分を蒸発しにくくすることによって、キャップ部材75を省略することができる。例えば、キャリッジ30の気密性を高めることによって、キャップ部材75を省略することができる。
【0073】
(変形例3)
キャリッジ30は、上述した実施形態と比べて上壁部35が省略され、+X方向側に配置される左壁部31と、-X方向側に配置される右壁部32と、+Y方向側に配置される前壁部33と、-Y方向側に配置される後壁部34と、-Z方向側に配置される下壁部36とを有する構成であってもよい。
上壁部35を省略すると、タンク本体部72の中にインクEを供給する場合、ユーザーは、メンテナンスカバー14だけを開き、キャップ部材75を取り外し、供給口74を介してタンク本体部72の中にインクEを供給することができる。すると、メンテナンスカバー14及び上壁部35の両方を開き、キャップ部材75を取り外し、供給口74を介してタンク本体部72の中にインクEを供給する実施形態1の構成と比べて、タンク本体部72の中にインクEを供給する場合のユーザーの負担を軽減することができる。
【0074】
(変形例4)
上述した実施形態では、ガイド軸17は、用紙Sの幅方向としてのX軸方向に延在する直線形状を有していた。
例えば、ガイド軸17は、X軸方向に延在する直線部と、X軸方向と異なる方向に湾曲する湾曲部とを有する構成であってもよい。例えば、ガイド軸17は、X軸方向に延在する直線状ガイド軸と、X軸方向に円弧状に延びる円弧状ガイド軸とを有する構成であってもよい。さらに、ガイド軸17は、ヘッド26を円周方向に移動させる円形状であってもよい。
【0075】
以下に、上述した実施形態から導き出される内容を記載する。
【0076】
本願のインクジェットプリンターは、インクが吐出されるノズルを有するヘッドと、前記ヘッドに供給される前記インクを貯留するインク貯留部と、が搭載され、ガイド部材に沿って移動するキャリッジを備え、前記キャリッジは、前記インク貯留部の中と前記インク貯留部の外とを連通する供給口に対して、前記キャリッジが移動する方向のうち第1方向側に位置する第1壁部を、有し、前記キャリッジが移動する方向から見て、前記供給口と前記第1壁部とが重なることを特徴とする。
【0077】
インク貯留部の供給口に不要なインクが付着し、インク貯留部がキャリッジと一緒に移動する場合、不要なインクは、キャリッジの移動する方向のうち第1方向に飛散し、媒体を汚染するおそれがある。
キャリッジは、供給口に対して第1方向側に位置する第1壁部を有し、キャリッジの移動する方向から見て、供給口と第1壁部とが重なるので、第1方向に飛散する不要なインクは、第1壁部によって受け止められ、媒体を汚染しにくくなる。
【0078】
本願のインクジェットプリンターでは、前記インクが吐出される媒体を搬送する搬送部と、前記キャリッジの移動を制御する制御部とを備え、前記供給口から前記インク貯留部に前記インクが供給されるとき、前記制御部は、インク供給位置に前記キャリッジを移動させ、前記インク供給位置に前記キャリッジが位置する状態において、ノズル面に対して前記第1方向側に、前記搬送部により搬送される前記媒体が通過可能な領域が位置することが好ましい。
【0079】
ヘッドからインクが吐出され、インクが消費されると、供給口からインク貯留部にインクを供給する必要がある。このインク貯留部へのインクの供給は、媒体が通過可能な領域外のインク供給位置において実施され、インク供給位置には媒体が配置されない。すると、インク供給位置においてインクをインク貯留部に供給する際、インクが供給口から零れ、落下しても、媒体はインク供給位置に配置されないので、供給口から零れたインクは媒体を汚染しにくい。
さらに、インク供給位置にキャリッジが位置する状態において、ノズル面より第1方向側に媒体が通過可能な領域が位置すると、ノズル面(インク貯留部)と第1壁部と媒体とが第1方向に順に配置され、インク貯留部と媒体との間に第1壁部が配置されることになる。すると、供給口からインク貯留部にインクを供給する際に、インクが第1方向に飛散する場合であっても、第1方向に飛散するインクは、第1壁部によって受け止められ、媒体を汚染しにくくなる。
【0080】
本願のインクジェットプリンターでは、前記インクが吐出される媒体を搬送する搬送部と、前記キャリッジの移動を制御する制御部とを備え、前記供給口から前記インク貯留部に前記インクが供給されるとき、前記制御部は、インク供給位置に前記キャリッジを移動させ、前記インク供給位置に前記キャリッジが位置する状態において、前記搬送部により搬送される前記媒体が通過可能な領域に対して前記第1方向側にノズル面が位置することが好ましい。
【0081】
ヘッドからインクが吐出され、インクが消費されると、供給口からインク貯留部にインクを供給する必要がある。このインク貯留部へのインクの供給は、媒体が通過可能な領域外のインク供給位置において実施され、媒体はインク供給位置に配置されない。すると、インク供給位置においてインク貯留部にインクを供給する際、インクが供給口から零れ、落下しても、供給口から零れたインクは媒体を汚染しにくくなる。
さらに、インク供給位置にキャリッジが位置する状態において、媒体が通過可能な領域より第1方向側にノズル面が位置すると、媒体とノズル面(インク貯留部)と第1壁部とが第1方向に順に配置されることになる。すると、インク貯留部の供給口に不要なインクが付着し、インク貯留部がキャリッジと一緒に移動する場合に第1方向に飛散する不要なインクは、第1壁部によって受け止められ、媒体を汚染しにくくなる。
【0082】
本願のインクジェットプリンターでは、前記キャリッジは、前記キャリッジが移動する方向のうち前記第1方向と逆の第2方向側に位置する第2壁部を有し、前記キャリッジが移動する方向から見て、前記供給口と前記第2壁部とが重なることが好ましい。
【0083】
インク貯留部の供給口に不要なインクが付着し、インク貯留部がキャリッジと一緒に移動する場合、不要なインクは、キャリッジの移動する方向のうち第2方向に飛散し、媒体を汚染するおそれがある。
キャリッジは、供給口に対して第1方向と逆の第2方向側に位置する第2壁部を有し、キャリッジの移動する方向から見て、供給口と第2壁部とが重なるので、第2方向に飛散する不要なインクは、第2壁部によって受け止められ、媒体を汚染しにくくなる。
【0084】
本願のインクジェットプリンターでは、前記キャリッジは、前記供給口に対して鉛直上方を覆う蓋部材を有することが好ましい。
【0085】
供給口に対して鉛直上方において、インク貯留部は、蓋部材によって覆われ、蓋部材によって保護されているので、供給口に対して鉛直上方から、インク貯留部に対して不要な力が作用しにくくなり、異物が侵入しにくくなる。
【0086】
本願のインクジェットプリンターでは、前記供給口から前記インク貯留部に前記インクが供給されるとき、前記キャリッジをインク供給位置に移動させる制御部と、前記インク供給位置に位置する前記キャリッジの鉛直上方に開口部を有するプリンターケースと、前記プリンターケースに設けられ、前記開口部を覆うカバー位置と、前記カバー位置と異なる開放位置とに移動可能なプリンターカバーと、を備え、前記キャリッジは、前記供給口に対して鉛直上方に位置する蓋部材を有し、前記プリンターカバーが前記開放位置にあるとき、前記蓋部材の状態にかかわらず、ユーザーが前記供給口にアクセス可能であることが好ましい。
【0087】
プリンターカバーは、カバー位置において、開口部が隠されるように閉じられた状態になる。プリンターカバーは、開放位置において、開口部が露出されるように開かれた状態になる。
さらに、開口部は、キャリッジがインク供給位置に位置する状態において、キャリッジの鉛直上方に設けられている。キャリッジが供給口に対して鉛直上方を覆う蓋部材を有する場合、すなわち、キャリッジが鉛直上方を覆う蓋部材を有する場合、開口部は蓋部材に設けられる。さらに、蓋部材の状態にかかわらず、供給口が露出されるように開口部を設けると、ユーザーは、プリンターカバーを開かれた状態にすると、供給口にアクセス可能になる。
このように、本願では、プリンターカバーが開かれた状態になると、開口部によって、蓋部材の状態にかかわらず、ユーザーは供給口にアクセス可能になる。
【0088】
ヘッドからインクが吐出され、インクが消費されると、供給口からインク貯留部にインクを供給する必要がある。
プリンターカバーが開放位置にあるとき、蓋部材の状態にかかわらず、ユーザーは供給口にアクセス可能になるので、ユーザーは、プリンターカバーを開かれた状態にすると、インク貯留部にインクを供給することができる。
仮に、供給口が露出されるように開口部が設けられず、供給口を覆うように蓋部材が設けられる場合、インク貯留部にインクを供給する場合、ユーザーは、プリンターカバー及び蓋部材の両方を開かれた状態にする必要がある。
インク貯留部にインクを供給する場合、本願はプリンターカバーだけを開かれた状態にすればよく、プリンターカバー及び蓋部材の両方を開かれた状態にする場合と比べて、ユーザーの負担が軽減される。
【0089】
本願のインクジェットプリンターでは、前記インク貯留部は鉛直方向上方の面に凸部を有し、当該凸部に前記供給口が設けられ、前記キャリッジが移動する方向から見て、前記凸部と前記第1壁部とが重なり、かつ前記凸部と前記第2壁部とが重なることが好ましい。
【0090】
インク貯留部の鉛直方向上方面に凸部を設け、当該凸部に供給口を設けると、当該凸部が目印になり、供給口の位置が分かりやすくなる。供給口の位置が分かりやすくなると、インク貯留部にインクを適正に供給しやすくなる。
【0091】
本願のインクジェットプリンターでは、前記インク貯留部は鉛直方向上方の面に凹部を有し、当該凹部に前記供給口が設けられることが好ましい。
【0092】
インク貯留部の鉛直方向上方面に凹部を設け、当該凹部に供給口を設けると、当該凹部は供給口から零れるインクの受け皿になり、供給口から零れたインクが凹部の外側に広がりにくくなる。
【0093】
本願のインクジェットプリンターでは、前記供給口に挿入され、少なくとも一部が前記凹部から突出するキャップ部材を備え、前記キャリッジが移動する方向から見て、前記キャップ部材のうち前記凹部から突出する部分と前記第1壁部とが重なることが好ましい。
【0094】
キャップ部材によって供給口が閉じられると、供給口からインク貯留部の中に異物が侵入しにくくなる。さらに、キャップ部材によって供給口が閉じられると、供給口からインクの溶剤成分が蒸発しにくくなり、インクの乾燥が進行しにくくなる。
さらに、供給口から零れたインクが凹部に貯留され、当該インクが、キャリッジと一緒に移動し第1方向に飛散する場合、第1方向に飛散するインクは、第1壁部によって受け止められ、媒体を汚染しにくくなる。
【0095】
本願のインクジェットプリンターでは、前記キャリッジは、鉛直方向および前記キャリッジが移動する方向と交差する方向において、前記インク貯留部より一方側に位置する第3壁部を有し、前記第3壁部の鉛直方向上方端は、前記第1壁部の鉛直方向上方端より低い位置にあることが好ましい。
【0096】
鉛直方向およびキャリッジの移動する方向と交差する方向の一方側に位置する第3壁部を設けると、一方側において、インク貯留部は第3壁部によって保護された状態になり、一方側から、インク貯留部に対して不要な力が作用しにくくなり、異物が侵入しにくくなる。
さらに、第3壁部の鉛直方向上方端を、第1壁部の鉛直方向上方端より低い位置に配置すると、蓋部材と第3壁部との間に隙間が形成され、ユーザーは当該隙間を介して、キャリッジに搭載されるインク貯留部の状態を観察することができる。
【符号の説明】
【0097】
1…プリンター、2…本体部、4…用紙捕集部、21…第1支持部材、22…第2支持部材、26…ヘッド、27…ノズル、30…キャリッジ、31…左壁部、31a…左壁部の端、32…右壁部、33…前壁部、33a…前壁部の端、34…後壁部、35…上壁部、35a…開口部、36…下壁部、56…メンテナンス装置、57…キャップ、71…インクタンク、72…タンク本体部、72a…Z(+)方向側の面、72b…空間、73…凹部、74…供給口、75…キャップ部材。