(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/032 20160101AFI20221109BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20221109BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20221109BHJP
【FI】
H02P29/032
B62D5/04
H02P29/024
(21)【出願番号】P 2018164639
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 智宏
(72)【発明者】
【氏名】三鴨 悟
(72)【発明者】
【氏名】藤 公志
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-154422(JP,A)
【文献】特開2008-059516(JP,A)
【文献】特開2006-022662(JP,A)
【文献】特開2006-217694(JP,A)
【文献】特開2006-262586(JP,A)
【文献】特開2018-137944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/08-31/00
H02P 6/00-6/34
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに対して電源電圧に基づく駆動電力を供給する駆動回路と、
前記駆動回路に対して並列に接続された電源安定化用のコンデンサと、
前記駆動回路の動作を制御する制御回路と、
前記制御回路と電源とを接続する第1の電源経路を開閉する電源スイッチと、
前記駆動回路と電源とを接続する第2の電源経路を開閉する電源リレーと、
前記駆動回路と電源とを接続する第3の電源経路を開閉するプリチャージ回路と、を備え、
前記制御回路は、前記電源スイッチがオンされたことを契機として前記第1の電源経路を通じて供給される電圧が動作電圧範囲内の値に至った場合、第1の設定時間だけ経過した後、前記プリチャージ回路をオンすることにより前記コンデンサの充電を開始するとともに、前記コンデンサの充電が完了したとき、前記電源リレーをオンする
ように構成され、
前記第1の設定時間は、前記電源スイッチがオフされた状態において前記第1の電源経路に生じる電圧が前記動作電圧範囲の上限電圧から前記動作電圧範囲を下回る値に低下するまでの時間を基準として設定される車両制御装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両制御装置において、
前記制御回路は、前記第1の電源経路に生じる電圧が、前記動作電圧範囲を下回る値に設定される第1の電圧判定しきい値を下回ってから第2の設定時間だけ経過したとき、前記電源スイッチがオフされたことを認識するものであって、
前記第1の設定時間は、前記第2の設定時間が経過するタイミングで経過するように設定される車両制御装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の車両制御装置において、
前記制御回路は、前記電源
リレーの両端間の電圧の差が、前記電源リレーをオンした場合に前記コンデンサに対する突入電流が生じない程度の値を基準として設定される第2の電圧判定しきい値以下であるとき、前記コンデンサの充電が完了した旨判定する車両制御装置。
【請求項4】
請求項1~請求項
3のうちいずれか一項に記載の車両制御装置において、
前記制御回路は、前記モータに対する給電開始前の点検であるイニシャルチェックの一環として、前記コンデンサの充電が完了した場合、前記電源リレーの診断を行い、当該診断の結果が異常を示すものではないとき、前記電源リレーをオンする車両制御装置。
【請求項5】
請求項1~請求項
4のうちいずれか一項に記載の車両制御装置において、
前記モータは、車両の操舵機構に付与されるトルクを発生するものである車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の操舵機構に付与されるアシストトルクの発生源であるモータを制御する制御装置が知られている。たとえば特許文献1の制御装置は、駆動回路、電源リレーおよび制御回路を有している。駆動回路は、バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換し、この変換される交流電力をモータへ供給する。電源リレーは、バッテリと駆動回路との間の電源経路を開閉する。制御回路は、駆動回路および電源リレーの動作を制御する。駆動回路には、電源安定化用のコンデンサが設けられている。
【0003】
制御回路は、イグニッションスイッチなどの電源スイッチがオンされたことを契機として、電源リレーをオフからオンへ切り替える。このとき、コンデンサの蓄電量が少ないことに起因して、バッテリからコンデンサへ向けて突入電流が流れるおそれがある。この突入電流が発生することを抑制するために、制御装置にはプリチャージ回路が設けられている。プリチャージ回路は、電源リレーをオフからオンへ切り替える前にコンデンサを充電するための回路である。制御回路は、プリチャージ回路を通じてコンデンサを前もって充電(プリチャージ)した後、電源リレーをオフからオンへ切り替える。
【0004】
また、特許文献2に記載されるように、電源スイッチの操作を通じて電源が投入されたとき、いわゆるイニシャルチェックを実行する制御回路も存在する。イニシャルチェクとは、モータに対する給電を開始する前の点検であって、モータを駆動させるための部分、たとえばモータの巻線および駆動回路などの異常を検査することをいう。制御回路は、モータを駆動させるための部分に異常が検出されない場合、駆動回路を通じてモータへの給電を実行する。これに対し、制御回路は、モータを駆動させるための部分に異常が検出される場合、異常の内容によるものの、たとえば異常箇所を使用しないようにしたり電源を遮断したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-276706号公報
【文献】登録特許第6109332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御回路には、動作電圧範囲が設定されているものがある。動作電圧範囲とは、仕様で動作することが保証された電圧の範囲をいう。制御回路は、電源電圧が動作電圧範囲外の値から動作電圧範囲内の値に至ったことを契機として動作を開始して、たとえばイニシャルチェックを実行する。
【0007】
また、たとえばエンジン車両において、バッテリの電圧低下に起因して、エンジンを始動させるスタータなどの電気負荷に対して必要とされる電力を供給することが困難となることがある。この場合、いわゆるジャンプスタートが行われることがある。ジャンプスタートとは、たとえば救援車両のバッテリと自車両のバッテリとをブースタケーブルにより接続し、救援車両のバッテリから自車両のスタータへ電力を救援補給することにより、エンジンを始動することをいう。このジャンプスタートによりエンジンを始動させた後、電源スイッチがオフ操作された場合、つぎのようなことが懸念される。すなわち、ジャンプスタートを行う場合、自車両のバッテリに他車両のバッテリが接続されることにより、制御回路の電源電圧が動作電圧範囲を超える過電圧状態に維持されることがある。この過電圧状態において、電源スイッチがオフ操作されたとき、バッテリと制御回路との間の電源経路が遮断されることにより、制御回路の電源電圧は徐々に低下し、やがて動作電圧範囲を下回る値に至る。この過程において、電源電圧はわずかな期間ではあるものの、イニシャルチェックの開始条件である動作電圧範囲内の値となる。
【0008】
ここで、電源スイッチがオフ操作されてから制御回路が電源スイッチのオフを実際に認識するまでには若干のタイムラグが生じる。このため制御回路は、電源スイッチがオフされたことを認識する前に電源電圧が動作電圧範囲内の値である旨認識することにより、イニシャルチェックを実行開始する。制御回路は、イニシャルチェクを実行するに際して、プリチャージ回路をオンさせるとともに、コンデンサの充電完了を契機として電源リレーをオンする。これにより、電源リレーの後段の回路へバッテリからの電力が供給される。このとき、バッテリには救援車両の電源が接続されていることにより過電圧状態に維持されているため、プリチャージ回路に耐電力を超える電圧が印加されるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、プリチャージ回路を保護することができる車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成し得る車両制御装置は、モータに対して電源電圧に基づく駆動電力を供給する駆動回路と、前記駆動回路に対して並列に接続された電源安定化用のコンデンサと、前記駆動回路の動作を制御する制御回路と、前記制御回路と電源とを接続する第1の電源経路を開閉する電源スイッチと、前記駆動回路と電源とを接続する第2の電源経路を開閉する電源リレーと、前記駆動回路と電源とを接続する第3の電源経路を開閉するプリチャージ回路と、を備えている。前記制御回路は、前記電源スイッチがオンされたことを契機として前記第1の電源経路を通じて供給される電圧が動作電圧範囲内の値に至った場合、第1の設定時間だけ経過した後、前記プリチャージ回路をオンすることにより前記コンデンサの充電を開始するとともに、前記コンデンサの充電が完了したとき、前記電源リレーをオンする。
【0011】
たとえば自車両の電源と救援車両の電源とが接続されることにより、制御回路の電源電圧が動作電圧範囲を超える過電圧状態となることがある。この過電圧状態において、電源スイッチがオフされたとき、電源と制御回路とを接続する第1の電源経路が遮断されることにより、制御回路の電源電圧は徐々に低下し、やがて動作電圧範囲内の値となる。ここで、電源スイッチがオフされてから制御回路が電源スイッチのオフを実際に認識するまでには若干のタイムラグが生じる。このため、制御回路は、電源スイッチがオフされたことを認識する前に電源電圧が動作電圧範囲内の値に至ったことを認識することによって、プリチャージ回路をオンさせるとともに、コンデンサの充電完了を契機として電源リレーをオンするおそれがある。このとき、自車両の電源には救援車両の電源が接続されていることにより過電圧状態に維持されているため、プリチャージ回路に耐電力を超える電圧が印加されるおそれがある。
【0012】
この点、上記の構成によれば、制御回路は、第1の電源経路を通じて供給される電圧が動作電圧範囲内の値に至った場合、第1の設定時間だけ経過した後、プリチャージ回路をオンすることによりコンデンサの充電を開始して、コンデンサの充電が完了したとき、前記電源リレーをオンする。これにより、制御回路の電源電圧が動作電圧範囲を超える過電圧状態で電源スイッチがオフされた場合、制御回路の電源電圧が動作電圧範囲内の値に至ったとき、即時にプリチャージ回路がオンされることがない。制御回路の電源電圧が動作電圧範囲内の値に至ってから第1の設定時間だけ経過するまでの間に、制御回路の電源電圧が動作電圧範囲内を下回る値に低下すれば、制御回路はプリチャージ回路をオンすることはない。ひいては、コンデンサの充電が行われることがないので、電源リレーがオンされることもない。すなわち、過電圧がプリチャージ回路へ供給されることがないため、プリチャージ回路を過電圧から保護することができる。
【0013】
上記の車両制御装置において、前記第1の設定時間は、前記電源スイッチがオフされた状態において前記第1の電源経路に生じる電圧が前記動作電圧範囲の上限電圧から前記動作電圧範囲を下回る値に低下するまでの時間を基準として設定されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1の電源経路に生じる電圧が動作電圧範囲を超える過電圧状態で電源スイッチがオフされた場合、第1の電源経路に生じる電圧が動作電圧範囲内の値に至ってから第1の設定時間だけ経過するまでの間に、第1の電源経路に生じる電圧が動作電圧範囲を下回る値に低下する蓋然性をより高くすることができる。
【0015】
上記の車両制御装置において、前記制御回路は、前記第1の電源経路に生じる電圧が、前記動作電圧範囲を下回る値に設定される第1の電圧判定しきい値を下回ってから第2の設定時間だけ経過したとき、前記電源スイッチがオフされたことを認識するものであってもよい。この場合、前記第1の設定時間は、前記第2の設定時間が経過するタイミングで経過するように設定されることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第1の設定時間が経過したとき、制御回路は第1の電源経路に生じる電圧が動作電圧範囲を下回っていることのみならず、電源スイッチがオフされていることを認識することもできる。
【0017】
上記の車両制御装置において、前記制御回路は、前記電源リレーの両端間の電圧の差が、前記電源リレーをオンした場合に前記コンデンサに対する突入電流が生じない程度の値を基準として設定される第2の電圧判定しきい値以下であるとき、前記コンデンサの充電が完了した旨判定することが好ましい。
【0018】
上記の車両制御装置において、前記制御回路は、前記モータに対する給電開始前の点検であるイニシャルチェックの一環として、前記コンデンサの充電が完了した場合、前記電源リレーの診断を行い、当該診断の結果が異常を示すものではないとき、前記電源リレーをオンするようにしてもよい。
【0019】
上記の車両制御装置において、前記モータは、車両の操舵機構に付与されるトルクを発生するものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両制御装置によれば、プリチャージ回路を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】車両制御装置(ECU)の第1の実施の形態が搭載される電動パワーステアリング装置の概略を示す構成図。
【
図4】第1の実施の形態のプリチャージ回路のブロック図。
【
図5】第1の実施の形態のマイクロコンピュータの動作電圧範囲を示すグラフ。
【
図6】第1の実施の形態のマイクロコンピュータの処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施の形態>
以下、車両制御装置を、電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)の制御装置に具体化した第1の実施の形態を説明する。
【0023】
図1に示すように、EPS10は、運転者のステアリング操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構20、運転者のステアリング操作を補助する操舵補助機構30、および操舵補助機構30の作動を制御するECU40を備えている。
【0024】
操舵機構20は、運転者により操作されるステアリングホイール21、およびステアリングホイール21と一体回転するステアリングシャフト22を備えている。ステアリングシャフト22は、ステアリングホイール21に連結されたコラムシャフト22a、コラムシャフト22aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト22b、およびインターミディエイトシャフト22bの下端部に連結されたピニオンシャフト22cからなる。ピニオンシャフト22cの下端部は、ピニオンシャフト22cに交わる方向へ延びるラック軸23(正確には、ラック歯が形成された部分23a)に噛合されている。したがって、ステアリングシャフト22の回転運動は、ピニオンシャフト22cとラック軸23との噛合を通じてラック軸23の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラック軸23の両端にそれぞれ連結されたタイロッド25を介して左右の転舵輪26,26にそれぞれ伝達されることにより、これら転舵輪26,26の転舵角θwが変更される。
【0025】
操舵補助機構30は、操舵補助力(アシストトルク)の発生源であるモータ31を備えている。モータ31としては、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。モータ31は、減速機構32を介してコラムシャフト22aに連結されている。減速機構32はモータ31の回転を減速し、当該減速した回転力をコラムシャフト22aに伝達する。すなわち、ステアリングシャフト22にモータ31のトルクが操舵補助力として付与されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
【0026】
ECU40は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果を運転者の要求、走行状態および操舵状態を示す情報(状態量)として取得し、これら取得される各種の情報に応じてモータ31を制御する。各種のセンサとしては、たとえば車速センサ41、トルクセンサ42、および回転角センサ43が挙げられる。車速センサ41は車速(車両の走行速度)Vを検出する。トルクセンサ42は、コラムシャフト22aに設けられている。トルクセンサ42はステアリングシャフト22に付与される操舵トルクτを検出する。回転角センサ43は、モータ31に設けられている。回転角センサ43は、モータ31の回転角θmを検出する。
【0027】
ECU40は、回転角センサ43を通じて検出されるモータ31の回転角θmを使用してモータ31をベクトル制御する。また、ECU40は操舵トルクτ、および車速Vに基づき目標アシストトルクを演算し、当該演算される目標アシストトルクを操舵補助機構30に発生させるための駆動電力をモータ31に供給するアシスト制御を実行する。
【0028】
つぎに、ECU40について詳細に説明する。
図2に示すように、ECU40は、駆動回路51、プリチャージ回路52、電源リレー53、およびマイクロコンピュータ54を有している。
【0029】
マイクロコンピュータ54には、車両に搭載されるバッテリ61から電力が供給される。バッテリ61とマイクロコンピュータ54との間は、電源線62を介して接続されている。電源線62には、イグニッションスイッチなどの車両の電源スイッチ63が設けられている。電源スイッチ63の操作を通じて電源線62の導通がオンとオフとの間で切り替えられる。電源スイッチ63は、車両の走行用駆動源(エンジンなど)を作動させる際に操作される。電源スイッチ63がオンされたとき、バッテリ61の電力は、電源線62を介してマイクロコンピュータ54に供給される。
【0030】
駆動回路51にもバッテリ61から電力が供給される。バッテリ61と駆動回路51との間は、電源線64を介して接続されている。電源線64には電源リレー53が設けられている。電源リレー53は、マイクロコンピュータ54からの指令に基づき電源線64の導通をオンとオフとの間で切り替える。電源リレー53がオンしたとき、バッテリ61の電力は電源線64を介して駆動回路51に供給される。
【0031】
電源線64において、バッテリ61と電源リレー53との間には接続点P1が、電源リレー53と駆動回路51との間には接続点P2が設定されている。これら接続点P1と接続点P2との間は電源線65を介して接続されている。この電源線65にはプリチャージ回路52が設けられている。プリチャージ回路52は、マイクロコンピュータ54からの指令に基づき電源線65の導通をオンとオフとの間で切り替える。プリチャージ回路52がオンしたとき、バッテリ61の電力は電源線65を介して駆動回路51に供給される。駆動回路51とモータ31との間は三相の給電経路66を介して接続されている。給電経路66は、バスバーあるいはケーブルなどからなる。
【0032】
電源線62には、電圧センサ71が設けられている。電圧センサ71は、電源線62に生じる電圧Vig(IG電圧)をマイクロコンピュータ54の電源電圧として検出する。電源線64には、2つの電圧センサ72,73が設けられている。電圧センサ72は、電源線64におけるバッテリ61と電源リレー53との間に設けられている。電圧センサ72は、電源線64における電源リレー53と駆動回路51との間に設けられている。電圧センサ72は、電源線64におけるバッテリ61と電源リレー53との間に生じる電圧Vpig1(第1のPIG電圧)を検出する。電圧センサ73は、電源線64における電源リレー53と駆動回路51との間に生じる電圧Vpig2(第2のPIG電圧)を検出する。給電経路66には、電流センサ74が設けられている。電流センサ74は、駆動回路51からモータ31へ供給される各相の電流Imを検出する。
【0033】
図3に示すように、駆動回路51は、直列に接続された2つのFET(電界効果型トランジスタ)などのスイッチング素子を基本単位であるレグとして、三相(U,V,W)の各相に対応する3つのレグ81
u,81
v,81
wが並列接続されてなるPWMインバータである。駆動回路51は、マイクロコンピュータ54により生成される指令信号S
cに基づいて三相各相のスイッチング素子(FET)がスイッチングすることにより、バッテリ61から供給される直流電力を三相交流電力に変換する。駆動回路51により生成される三相交流電力は、三相各相の給電経路66(
図3では図示略)を介してモータ31に供給される。
【0034】
また、駆動回路51には、電源安定化用のコンデンサ82が設けられている。コンデンサ82は、並列接続された3つのレグ81u,81v,81w群に対して並列に接続されている。コンデンサ82は電荷を蓄える。コンデンサ82は、バッテリ61から駆動回路51へ供給される電力が不足するとき、その不足した電力を補うべく蓄積した電荷を放出する。
【0035】
図4に示すように、プリチャージ回路52は、FET駆動回路83、FET84、および突入電流抑制用の抵抗85を有している。FET84および抵抗85は電源線65上に設けられている。FET84は駆動回路51(負荷)側に、抵抗85はバッテリ61(電源)側に位置している。FET駆動回路83は、マイクロコンピュータ54からの指令に基づきFET84を駆動する。FET84がオンオフすることにより電源線65の導通がオンとオフとの間で切り替えられる。
【0036】
図3に一点鎖線で示すように、電源リレー53がオフされた状態でプリチャージ回路52(FET84)がオンされたとき、バッテリ61の電力はプリチャージ回路52(抵抗85およびFET84)を含む経路L1を通じて駆動回路51に供給される。駆動回路51の各スイッチング素子がオフされているとき、バッテリ61の電力はコンデンサ82へ供給される。これにより、コンデンサ82が充電される。また、
図3に破線で示されるように、プリチャージ回路52(FET84)がオフされた状態で電源リレー53がオンされたとき、バッテリ61の電力は電源リレー53を含む経路L2を通じて駆動回路51に供給される。
【0037】
マイクロコンピュータ54は、トルクセンサ42を通じて検出される操舵トルクτおよび車速センサ41を通じて検出される車速Vに基づきモータ31に発生させるべき目標アシストトルクを演算し、この演算される目標アシストトルクの値に応じて電流指令値を演算する。電流指令値は、操舵トルクτおよび車速Vに応じた適切な大きさの目標アシストトルクを発生させるために、モータ31に対して供給すべき電流の目標値である。マイクロコンピュータ54は、操舵トルクτの絶対値が大きいほど、また車速Vが遅いほどより大きな値(絶対値)の電流指令値を演算する。
【0038】
マイクロコンピュータ54は、モータ31へ供給される実際の電流の値を電流指令値に追従させる電流フィードバック制御を実行することにより、駆動回路51に対する指令信号Sc(PWM信号)を生成する。指令信号Scは、駆動回路51の各スイッチング素子のデューティ比を規定する。デューティ比とは、パルス周期に占めるスイッチング素子のオン時間の割合をいう。マイクロコンピュータ54は、回転角センサ43を通じて検出されるモータ31の回転角θmを使用してモータ31に対する給電を制御する。駆動回路51を通じて指令信号Scに応じた電流がモータ31に供給されることにより、モータ31は電流指令値に応じたトルクを発生する。
【0039】
図5のグラフに示すように、マイクロコンピュータ54には、動作電圧範囲δVが設定されている。動作電圧範囲δVとは、仕様で動作することが保証された電圧の範囲をいう。マイクロコンピュータ54は、電圧センサ71を通じて検出される電圧V
ig(電源電圧)が動作電圧範囲δV内の値に至ったとき、動作を開始する。マイクロコンピュータ54は、電圧センサ71を通じて検出される電圧V
igが動作電圧範囲δVを超えるときには動作しない。
【0040】
動作電圧範囲δVは、下限電圧VLL以上、上限電圧VUL以下の範囲に設定されている。下限電圧VLLは、第1の電圧判定しきい値Vth1よりも大きな値に設定されている。第1の電圧判定しきい値Vth1とは、マイクロコンピュータ54が、電源スイッチ63がオフされたことを認識する際の基準となる電圧をいう。第1の電圧判定しきい値Vth1は、0(零)または0の近傍値に設定される。
【0041】
マイクロコンピュータ54は、電圧センサ71を通じて検出される電圧Vigが第1の電圧判定しきい値Vth1を下回る状態が設定時間T1だけ継続したとき、電源スイッチ63がオフされたことを認識する。これは、電圧Vigが第1の電圧判定しきい値Vth1を瞬間的に下回るような場合、これをもって電源スイッチ63がオフされたとマイクロコンピュータ54が誤って判定することを抑制するためである。
【0042】
マイクロコンピュータ54は、電源が投入されたとき、すなわち電圧センサ71を通じて検出される電圧Vigが動作電圧範囲δV内の値に達したことを契機として動作して、いわゆるイニシャルチェックを実行開始する。イニシャルチェクとは、モータ31に対する給電を開始する前の点検(検査)であって、モータ31を駆動させるための部分、たとえば電源リレー53、モータ31の巻線および駆動回路51などの異常を検査することをいう。
【0043】
<マイクロコンピュータの動作>
つぎに、電源投入時におけるマイクロコンピュータ54の処理手順について説明する。プリチャージ回路52、電源リレー53および駆動回路51(各スイッチング素子)はいずれもオフされた状態である。
【0044】
図6のフローチャートに示すように、マイクロコンピュータ54は、電圧センサ71を通じて検出される電圧V
ig(IG電圧)が動作電圧範囲δV外の値から動作電圧範囲δV内の値に至ったとき(ステップS101)、電圧V
igが動作電圧範囲δV内の値に至ったときから設定時間T
2だけ経過したかどうかを判定する(ステップS102)。マイクロコンピュータ54は、カウンタ54aを通じて、電圧V
igが動作電圧範囲δV内の値に至ってからの経過時間を計測する。設定時間T
2は、実験あるいはシミュレーションにより求められる。設定時間T
2は、電源スイッチ63がオフされた状態において、電圧V
igの値が動作電圧範囲δVの上限電圧V
ULから動作電圧範囲δVを下回る値(たとえば0V、あるいは0Vの近傍値)に低下するまでの時間を基準として設定される。本実施の形態では、先の
図5のグラフに示すように、設定時間T
2は、電源スイッチ63のオフを判定するための設定時間T
1が経過するタイミング(時刻t5)で経過するように設定されている。マイクロコンピュータ54は、カウンタ54aを通じて設定時間T
2が計測されたとき、カウンタ54aをクリア(リセット)する。
【0045】
マイクロコンピュータ54は、電圧Vigが動作電圧範囲δV内の値に至ってから設定時間T2だけ経過した旨判定されないとき(ステップS102でNO)、イニシャルチェックを行うことなく処理を終了する。これに対し、マイクロコンピュータ54は、電圧Vigが動作電圧範囲δV内の値に至ってから設定時間T2だけ経過した旨判定されるとき(ステップS102でYES)、イニシャルチェックを実行開始する(ステップS103)。
【0046】
マイクロコンピュータ54は、イニシャルチェックの実行開始に際して、次式(A1)に示すように、電圧センサ72を通じて検出される電圧Vpig1と、電圧センサ73を通じて検出される電圧Vpig2との差が第2の電圧判定しきい値Vth2を超えているとき、プリチャージ回路52をオンする。これにより、バッテリ61の直流電力がプリチャージ回路52を介して駆動回路51へ供給される。いま駆動回路51の各スイッチング素子はオフの状態に維持されているため、バッテリ61からの直流電力はコンデンサ82へ供給される。このバッテリ61からの直流電力が供給されることにより、コンデンサ82は充電される。
【0047】
ちなみに、第2の電圧判定しきい値Vth2は、電源リレー53をオンした場合にバッテリ61からコンデンサ82へ向けて突入電流が生じない程度の電源リレー53の両端電圧の差(=│Vpig1-Vpig2│)を基準として設定されている。
【0048】
│Vpig1-Vpig2│>Vth2 …(A1)
マイクロコンピュータ54は、次式(A2)に示すように、電圧センサ72を通じて検出される電圧Vpig1と、電圧センサ73を通じて検出される電圧Vpig2との差が第2の電圧判定しきい値Vth2以下になったとき、コンデンサ82の充電が完了したとして、プリチャージ回路52をオフし、今度は電源リレー53をオンする。これにより、バッテリ61の電力が駆動回路51へ供給される。このとき、コンデンサ82は充電が完了した状態であるため、バッテリ61からコンデンサ82へ向けて突入電流が流れることはない。
【0049】
│Vpig1-電圧Vpig2│≦Vth2 …(A2)
ちなみに、マイクロコンピュータ54は、電源リレー53をオンする前に、イニシャルチェックの一環として、電源リレー53の溶着有無などの診断を行うようにしてもよい。たとえば電源リレー53が溶着している場合、電源リレー53の負荷側の電圧Vpig2は、電源リレー53を介してバッテリ61の電圧(電源電圧)と等しくなる。このため、電源リレー53の負荷側の電圧Vpig2に基づき電源リレー53の溶着の有無を検出することができる。マイクロコンピュータ54は、電源リレー53の異常が検出されないとき、電源リレー53をオンする。
【0050】
マイクロコンピュータ54は、電源リレー53をオンした後、電源リレー53以外の他の箇所(駆動回路51など)の診断を実行し、処理を終了する。マイクロコンピュータ54は、イニシャルチェックが正常に終了した後、操舵状態に応じてモータ31への給電を行うアシスト制御を実行する。
【0051】
<第1の実施の形態の作用>
つぎに、電源投入時において、マイクロコンピュータ54が先の
図6のフローチャートに示される処理を実行することによる作用を説明する。
【0052】
たとえばバッテリ61の電圧低下に起因して、エンジンを始動させるスタータなどの電気負荷に対して、必要とされる電力の供給が困難となることがある。このような状況下においては、救援車両に搭載されたバッテリから電力供給を補うことによりエンジンを始動する、いわゆるジャンプスタートが行われることがある。
【0053】
図5のグラフにポイントP
v1で示すように、ジャンプスタートを行う場合、自車両のバッテリ61に他車両のバッテリが接続されることにより、電圧センサ71を通じて検出される電圧V
ig、すなわちマイクロコンピュータ54の電源電圧が動作電圧範囲δVを超える過電圧状態に維持されることがある(時刻t1)。そして、たとえばジャンプスタートによりエンジンを始動させた後、ポイントP
v1で示される過電圧状態において、電源スイッチ63がオフ操作された場合、電圧V
igの値はつぎのように変化する。
【0054】
すなわち、電源スイッチ63のオフ操作を通じてバッテリ61とマイクロコンピュータ54との間の電源線62の導通が遮断されることにより、
図5のグラフに特性線L
vで示すように、電圧V
ig(電源電圧)は徐々に下降し、動作電圧範囲δVの上限電圧V
ULに至る(時刻t2)。その後、電圧V
igはさらに下限電圧V
LLまで下降する(時刻t3)。この後も電圧V
igは下降し続け、やがて第1の電圧判定しきい値V
th1に至る(時刻t4)。
【0055】
このように、過電圧状態で電源スイッチ63がオフ操作されたとき、電圧Vigは、わずかな期間(時刻t2から時刻t3までの期間)ではあるものの、イニシャルチェックの開始条件である動作電圧範囲δV内の値となる。
【0056】
マイクロコンピュータ54は、電圧Vigが第1の電圧判定しきい値Vth1を下回ってから設定時間T1だけ経過したとき(時刻t5)、電源スイッチ63がオフされたことを認識する。すなわち、電源スイッチ63が時刻t1で実際にオフ操作されてからマイクロコンピュータ54が時刻t5で電源スイッチ63のオフを実際に認識するまでにはタイムラグが生じる。このため、マイクロコンピュータ54は、電源スイッチ63がオフされたことを認識する前に電圧Vigが動作電圧範囲δV内の値に至った旨認識することによって、即時にイニシャルチェックを実行開始しようとする。しかしこの場合、つぎのようなことが懸念される。
【0057】
すなわち、マイクロコンピュータ54は、イニシャルチェクを実行するに際して、プリチャージ回路52をオンさせるとともに、コンデンサ82の充電完了を契機として電源リレー53をオンさせる。これにより、電源リレー53の後段の回路へバッテリ61からの電力が供給される。このとき、バッテリ61には救援車両のバッテリが接続されていることにより過電圧状態に維持されているため、プリチャージ回路52、具体的にはそのFET84に対して耐電力を超える電圧が印加されるおそれがある。
【0058】
この点、本実施の形態によれば、マイクロコンピュータ54は、電圧V
igが動作電圧範囲δV外の値から動作電圧範囲δV内の値に至ったときから設定時間T
2だけ経過したとき(
図6:ステップS102でYES)、イニシャルチェックを実行開始する。
【0059】
ここで設定時間T
2は、電源スイッチ63がオフされた状態において、電圧V
igの値が動作電圧範囲δVの上限電圧V
ULから動作電圧範囲δVを下回る値に低下するまでの時間を基準として設定されている。このため、
図5のグラフに特性線L
vで示されるように、電圧V
igの値が動作電圧範囲δVを超える過電圧状態で電源スイッチ63がオフ操作された場合、電圧V
igの値が動作電圧範囲δVの上限電圧V
ULまで下降したとき(時刻t2)を起点として設定時間T
2だけ経過したとき(時刻t5)、電圧V
igは動作電圧範囲δVを下回る値まで低下している。ちなみに、本実施の形態では、電圧V
igの値が動作電圧範囲δVの上限電圧V
ULまで下降したときを起点として設定時間T
2だけ経過するタイミングは、マイクロコンピュータ54が電源スイッチ63のオフを認識するタイミングでもある。
【0060】
このため、マイクロコンピュータ54は、電圧Vigが動作電圧範囲δV内の値に至った旨判定することがないため、イニシャルチェックを実行することはない。しかも本実施の形態では、マイクロコンピュータ54は、電源スイッチ63がオフされていることまでも認識する。このことによっても、マイクロコンピュータ54がイニシャルチェックを実行することはない。したがって、プリチャージ回路52のFET84がオンされないため、動作電圧範囲δVを超える過電圧がプリチャージ回路52のFET84に供給されることもない。これにより、FET84、ひいてはプリチャージ回路52を保護することができる。
【0061】
ちなみに、通常の電源投入時においても、マイクロコンピュータ54は先の
図6のフローチャートに示される手順で処理を実行する。すなわち、マイクロコンピュータ54は、電圧V
igが動作電圧範囲δV外の値(ここでは、動作電圧範囲δVを下回る値)から動作電圧範囲δV内の値に至った場合(ステップS101)、設定時間T
2だけ経過したとき(ステップS102でYES)、イニシャルチェックを実行開始する。通常の電源投入時であれば、電圧V
igが動作電圧範囲δV内の値に至ったときから設定時間T
2だけ経過した後であれ、電圧V
igは基本的には動作電圧範囲δV内の値に維持されている。
【0062】
<第1の実施の形態の効果>
したがって、第1の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)マイクロコンピュータ54は、電圧センサ71を通じて検出される電圧Vigが動作電圧範囲δV内の値に至ってから設定時間T2だけ経過した後にイニシャルチェックを実行開始する。これにより、たとえばジャンプスタートが行われた場合など、電圧Vigが動作電圧範囲δVを超える過電圧状態において電源スイッチ63がオフ操作されることによって電圧Vigが一時的(瞬間的)に動作電圧範囲δV内の値に至ったとしても、マイクロコンピュータ54は即時にイニシャルチェックを実行開始することがない。過電圧がプリチャージ回路52へ供給されることがないため、プリチャージ回路52、具体的にはその構成要素であるFET84に異常が発生することを抑制することができる。したがって、プリチャージ回路52を過電圧から保護することができる。
【0063】
(2)ここで、プリチャージ回路52のFET84として、より高い耐電力を有するものを採用することが考えられる。しかし、そのような高耐電力を有するFETは、概して高価であって、またFETの体格もより大きくなる。この点、本実施の形態によれば、ECU40としての構成を変更したり新たな構成を追加したりすることなく、プリチャージ回路52をオンする条件を工夫することによってプリチャージ回路52を保護することができる。このため、ECU40の製品コスト、および体格の大型化を抑制することができる。
【0064】
<第2の実施の形態>
つぎに、車両制御装置の第2の実施の形態を説明する。
図7に示すように、ECU90は、2系統の巻線を有するモータ91に対する給電を制御する。モータ91は、ロータ91a、図示しないステータに巻回された第1の巻線群91bおよび第2の巻線群91cを有している。第1の巻線群91bは、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを有している。第2の巻線群91cも、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを有している。
【0065】
また、車載センサとして、モータ91には、2つの回転角センサ43a,43bが設けられている。これら回転角センサ43a,43bは、モータ31の回転角θm1,θm2を検出する。また、車載センサとして、たとえばコラムシャフト22aには、2つのトルクセンサ42a,42bが設けられている。これらトルクセンサ42a,42bは、ステアリングシャフト22に付与される操舵トルクτ1,τ2を検出する。
【0066】
ECU90は、第1の巻線群91bおよび第2の巻線群91cに対する給電を系統ごとに個別に制御する。ECU90は、第1の巻線群91bに対する給電を制御する第1の制御部40a、および第2の巻線群91cに対する給電を制御する第2の制御部40bを有している。第1の制御部40aおよび第2の制御部40bは、それぞれ先の
図2に示されるECU40と同様の構成を有している。第1の制御部40aは、操舵トルクτ
1、車速V、およびモータ31の回転角θ
m1に基づき第1の巻線群91bに対する給電を制御する。第2の制御部40bは、操舵トルクτ
2、車速V、およびモータ31の回転角θ
m2に基づき第2の巻線群91cに対する給電を制御する。
【0067】
また、ECU90は、電源が投入されたとき、イニシャルチェックを系統ごとに個別に実行する。第1の制御部40aは、電源が投入されたとき、先の
図6のフローチャートに示される処理の実行を通じて、自己の属する第1の系統のイニシャルチェックの実行を開始する。第2の制御部40bも、電源が投入されたとき、先の
図6のフローチャートに示される処理の実行を通じて、自己の属する第2の系統のイニシャルチェックの実行を開始する。
【0068】
ちなみに、ECU90の制御対象は、3系統以上の巻線群を有するモータであってもよい。この場合であれ、ECU90は、3系統以上の巻線群に対する給電を独立して制御する。また、この場合、ECU90として、系統数と同数の個別の制御部を有する構成を採用する。
【0069】
したがって、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態における(1),(2)の効果に加え、つぎの効果を得ることができる。
(3)2系統のいずれか一方に異常が発生した場合であれ、正常系統の巻線群に対する給電を通じてモータ31の駆動を継続することができる。
【0070】
<他の実施の形態>
なお、第1および第2の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・第1および第2の実施の形態において、バッテリ61としては、12V、24V、36Vのものなど、車両の仕様に応じて適宜の電圧を有するものが採用される。
【0071】
・第1および第2の実施の形態では、EPS10として、モータ31のトルクをステアリングシャフト22(コラムシャフト22a)に伝達するタイプを例に挙げたが、モータ31のトルクをラック軸23に伝達するタイプであってもよい。
【0072】
・第1および第2の実施の形態では、車両制御装置をEPS10のモータ31を制御するECU40に具体化したが、ステアリングホイール21と転舵輪26,26との間の動力伝達を分離したバイワイヤ方式の操舵装置の制御装置として具体化してもよい。このバイワイヤ方式の操舵装置は、ステアリングシャフトに付与される操舵反力の発生源である反力モータ、および転舵輪を転舵させる転舵力の発生源である転舵モータを有している。バイワイヤ方式の操舵装置の制御装置は、反力モータおよび転舵モータをそれぞれ制御する。
【0073】
・第1および第2の実施の形態では、車両制御装置をEPS10のモータ31を制御するECU40に具体化したが、EPS10などの操舵装置以外の他の車載機器に使用されるモータの制御装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0074】
20…操舵機構、31,91…モータ、40,90…ECU(車両制御装置)、51…駆動回路、52…プリチャージ回路、53…電源リレー、54…マイクロコンピュータ(制御回路)、62…電源線(第1の電源経路)、63…電源スイッチ、64…電源線(第2の電源経路)、65…電源線(第3の電源経路)、82…コンデンサ、T1…設定時間(第2の設定時間)、T2…設定時間(第1の設定時間)、Vth1…第1の電圧判定しきい値、Vth2…第2の電圧判定しきい値、VUL…上限電圧、δV…動作電圧範囲。