(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221109BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20221109BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/16
G03G15/00 455
(21)【出願番号】P 2018174872
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳佑
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-214569(JP,A)
【文献】特開2017-165577(JP,A)
【文献】特開2017-138545(JP,A)
【文献】特開2014-178673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を記録媒体に転写する転写部と、前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着部とを備える画像形成装置において、前記転写部から前記定着部へ前記記録媒体を搬送する搬送装置であって、
前記記録媒体の搬送方向における前記定着部の上流に配置され、前記記録媒体を前記定着部へ案内する第一のガイドと、
前記搬送方向における前記転写部と前記第一のガイドとの間に配置され、前記転写部から前記第一のガイドへ前記記録媒体を案内する第二のガイドとを備え、
前記第一のガイドは、前記第一のガイドを通過する前記記録媒体を支持する第一の支持面を有し、
前記第一の支持面は、前記搬送方向と直交する幅方向において平坦な形状を有し、
前記第二のガイドは、前記第二のガイドを通過する前記記録媒体を支持する第二の支持面を有し、
前記第二の支持面は、前記幅方向における中央部が相対的に凹となり両端部が相対的に凸となる凹凸形状を有
し、
前記第二のガイドは、前記中央部に、前記第二のガイドを通過する前記記録媒体の幅方向のループ状態を検出するループセンサを有し、
前記ループセンサは、前記ループセンサに前記記録媒体が接触していないとき、前記中央部から、前記両端部よりも大きく突出している、搬送装置。
【請求項2】
前記凹凸形状の段差は2mm以上である、請求項
1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記両端部は、前記中央部に対して突出する1つの連続した凸形状を有する、請求項1
または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記両端部は、前記中央部に対して突出する複数のリブを有する、請求項1
または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
トナー像を記録媒体に転写する転写部と、
前記記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着部と、
前記転写部から前記定着部へ前記記録媒体を搬送する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の搬送装置とを備える、画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置は、前記定着部の動作を制御するコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、前記ループセンサの検出結果に基づいて、前記定着部における前記記録媒体の搬送速度を変更する、請求項
5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送装置および画像形成装置に関し、特に、記録媒体を搬送する搬送装置と、その搬送装置を備える画像形成装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に関し、特開2003-195660号公報(特許文献1)には、転写ニップ部から定着ニップ部までの記録紙のガイド面の中央部および両端部にリブを、記録紙の搬送方向に沿って設けて、中央部のリブを両端部のリブより高く設定し、記録紙を幅方向に湾曲させた状態で定着ニップ部に搬送することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載の技術は、中央部のリブを両端部よりも高くして用紙を湾曲させることで、用紙の搬送性を向上させることを目的としている。しかし、湾曲した用紙の両端部がガイド面に接触しない状態で用紙が搬送される場合があり、このとき搬送される用紙の姿勢が安定しないため、用紙にねじれが発生したり、ねじれが大きくなって用紙が逆向きに湾曲したりする可能性がある。
【0005】
本開示では、記録媒体の搬送性を向上できる搬送装置と、その搬送装置を備える画像形成装置とが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、トナー像を記録媒体に転写する転写部と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着部とを備える画像形成装置において、転写部から定着部へ記録媒体を搬送する搬送装置が提供される。搬送装置は、記録媒体の搬送方向における定着部の上流に配置され、記録媒体を定着部へ案内する第一のガイドと、搬送方向における転写部と第一のガイドとの間に配置され、転写部から第一のガイドへ記録媒体を案内する第二のガイドとを備えている。第一のガイドは、第一のガイドを通過する記録媒体を支持する第一の支持面を有している。第一の支持面は、搬送方向と直交する幅方向において平坦な形状を有している。第二のガイドは、第二のガイドを通過する記録媒体を支持する第二の支持面を有している。第二の支持面は、幅方向における中央部が相対的に凹となり両端部が相対的に凸となる凹凸形状を有している。
【0007】
上記の搬送装置において、第二のガイドは、幅方向の中央部に、第二のガイドを通過する記録媒体のループ状態を検出するループセンサを有している。
【0008】
上記の搬送装置において、ループセンサは、ループセンサに記録媒体が接触していないとき、第二のガイドの幅方向の中央部から、幅方向の両端部よりも大きく突出している。
【0009】
上記の搬送装置において、凹凸形状の段差は2mm以上である。
上記の搬送装置において、第二のガイドの幅方向の両端部は、幅方向の中央部に対して突出する1つの連続した凸形状を有している。
【0010】
上記の搬送装置において、第二のガイドの幅方向の両端部は、幅方向の中央部に対して突出する複数のリブを有している。
【0011】
本開示に従うと、トナー像を記録媒体に転写する転写部と、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着部と、転写部から定着部へ記録媒体を搬送する、上記のいずれかの局面の搬送装置とを備える、画像形成装置が提供される。
【0012】
上記の画像形成装置において、第二のガイドは、幅方向の中央部に、第二のガイドを通過する記録媒体のループ状態を検出するループセンサを有している。画像形成装置は、定着部の動作を制御するコントローラをさらに備えている。コントローラは、ループセンサの検出結果に基づいて、定着部における記録媒体の搬送速度を変更する。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る搬送装置および画像形成装置によれば、記録媒体の搬送性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図4】用紙が接触していないときのループセンサの配置を示す模式図である。
【
図5】薄紙が接触しているときのループセンサの配置を示す模式図である。
【
図6】厚紙が接触しているときのループセンサの配置を示す模式図である。
【
図7】搬送ガイドの凹凸形状の段差の閾値を説明するためのグラフである。
【
図8】画像形成装置の駆動システムの一部構成を示すブロック図である。
【
図9】画像形成装置の動作の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に係る搬送装置および画像形成装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。この画像形成装置は、電子写真方式によってタンデム式でカラー画像を形成するもので、概略、装置本体1と、画像読取りユニット2とを含んで構成されている。
【0017】
画像読取りユニット2は、周知のもので、図示しない原稿台ガラス上に載置された原稿の画像、または、図示しない原稿搬送機構で搬送される原稿の画像を光学的に読み取り、RGBの三原色に分解して電気信号に変換する。この電気信号は制御部3に転送されて各種のデータ処理を受けるとともに、YMCK(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の各再現色に変換される。また、制御部3にはパソコンなどから画像データが転送される。
【0018】
装置本体1は、イメージングユニット30(30Y,30M,30C,30K)を備えている。各イメージングユニット30は、感光体ドラム31、レーザ走査光学ユニット32、現像ユニット33、図示しない帯電器、残留トナーおよび残留電荷のクリーニング器などを含んでいる。各イメージングユニット30においては、レーザ走査光学ユニット32が制御部3から画像データの転送を受け、感光体ドラム31上に潜像を形成し、現像ユニット33によって各色のトナー画像を形成する。このような画像形成プロセスは周知であり、その説明は省略する。
【0019】
各イメージングユニット30は、中間転写ベルト10の直下に並んで配置されている。中間転写ベルト10は、駆動ローラ11および従動ローラ12に無端状に張り渡されている。中間転写ベルト10は、駆動ローラ11がモータ14によって回転駆動されることにより、矢印E方向に回転する。
【0020】
装置本体1の下段には、複数枚の用紙を積層して収容する給紙カセット20が設置されている。用紙は、この給紙カセット20から給紙ローラ21と捌きローラ22によって1枚ずつ上方に給紙され、タイミングローラ23によって2次転写部18に搬送される。用紙は、実施形態における記録媒体に相当する。2次転写部18は、実施形態における転写部に相当する。
【0021】
各感光体ドラム31上に形成されたトナー画像は、1次転写ローラ13から付与される電界によって、中間転写ベルト10上に順次1次転写されて合成される。合成されたトナー画像は、2次転写部18において、2次転写ローラ19から付与される電界によって用紙上に2次転写される。用紙は、定着部25に搬送される。定着部25において、トナーが加熱され、トナー像を用紙へ定着させる処理が施される。その後用紙は、排出ローラ29から装置本体1の上面である排紙部4に排出される。このように、第1面に画像を形成された用紙は、搬送経路Aを搬送される。
【0022】
定着部25は、加熱パッド26aと加圧ローラ27とを含んで構成されている。加熱パッド26aと加熱ローラ26bとの間に、加熱ベルト26cが張り渡されている。加熱ローラ26b、加熱ベルト26cおよび加圧ローラ27は、それぞれ用紙を上方へ搬送する方向に回転する。周知の温度調節手段により、加熱ベルト26cおよび加圧ローラ27の表面温度が、それぞれ適切に温度調節されている。
【0023】
第1面に画像を記録された用紙の第2面に画像を形成する場合(両面コピー)、搬送経路Aを搬送された用紙は、排出ローラ29でスイッチバックされ、定着部25の背後を通じて循環搬送経路Bに送り込まれ、表裏反転された状態で前記タイミングローラ23へ搬送され、2次転写部18へ再度送り込まれる。2次転写部18で、用紙の第2面にトナー画像が転写される。その後用紙は、定着部25に搬送されて、排出ローラ29から排紙部4に排出される。両面コピーのための循環搬送経路Bの構成は従来周知である。
【0024】
(用紙搬送装置の構成)
図2は、用紙搬送装置の構成を示す概略図である。
図2には、2次転写部18と定着部25との周辺を拡大した図が示されており、2次転写部18から定着部25へ用紙を搬送する搬送装置の概略構成が示されている。
図2に示されるように、2次転写部18から定着部25へ用紙を搬送する搬送装置は、定着前ガイド53と、搬送ガイド55とを備えている。定着前ガイド53は、実施形態における第一のガイドに相当する。搬送ガイド55は、実施形態における第二のガイドに相当する。
【0025】
定着前ガイド53は、
図1中に一点鎖線で示される用紙の搬送方向(以下、単に搬送方向とも称する)において、定着部25の上流に配置されている。定着前ガイド53は、定着部25に用紙を案内する。定着前ガイド53は、搬送方向と直交する方向(
図2においては紙面垂直方向。以下、幅方向と称する)において、凹凸形状のない平坦な形状を有している。定着前ガイド53は、定着前ガイド53を通過する用紙を支持する支持面を有し、当該支持面は幅方向において平坦な形状を有している。
【0026】
搬送ガイド55は、搬送方向における2次転写部18の下流に配置されている。搬送ガイド55は、搬送方向における2次転写部18と定着前ガイド53との間に配置されている。搬送ガイド55は、定着前ガイド53よりも搬送方向の上流に配置されている。搬送ガイド55は、2次転写部18から定着前ガイド53へ用紙を案内する。定着前ガイド53は、搬送方向における搬送ガイド55と定着部25との間に配置されている。
【0027】
図3は、搬送ガイド55の斜視図である。
図3に示されるように、搬送ガイド55は、幅方向において、凹凸形状を有している。搬送ガイド55は、搬送ガイド55を通過する用紙を支持する支持面を有し、当該支持面は、幅方向における中央部が相対的に凹となり両端部が相対的に凸となる凹凸形状を有している。搬送ガイド55の支持面は、幅方向の中央部に凹部57を有し、幅方向の両端に凸部58を有している。
図3に示す両端部の凸部58は、中央部の凹部57に対して突出しており、各々が1つの連続した凸形状を有している。搬送ガイド55は、幅方向の一方の端部に1つの凸部58を有し、幅方向の他方の端部に1つの凸部58を有している。凹部57と凸部58とは、滑らかな面で繋がっている。
【0028】
搬送ガイド55は、中央部に、ループセンサ54を有している(
図2も併せて参照)。ループセンサ54は、搬送ガイド55の中央部の凹部57に対して相対移動可能に設けられている。ループセンサ54の移動によって、搬送ガイド55を通過する用紙のループ量が検出される。
【0029】
図4は、用紙が接触していないときのループセンサ54の配置を示す模式図である。
図4に示されるように、搬送ガイド55の中央部の凹部57には、溝60が形成されている。溝60は、搬送方向(
図4においては紙面垂直方向)に延びている。ループセンサ54は、溝60内に収容されている。ループセンサ54は、溝60に出没可能に構成されている。用紙がループセンサ54に接触していない
図4に示される配置において、ループセンサ54は、中央部の凹部57から、両端部の凸部58よりも大きく突出している。凹部57に対する凸部58の高さは、用紙が接触していないループセンサ54の位置よりも低くされている。
【0030】
図5は、薄紙PTNが接触しているときのループセンサ54の配置を示す模式図である。薄紙PTNは一般にこわさが低く、たわみ変形しやすい。
図5に示されるように、薄紙PTNを湾曲させることによって、変形に対する抵抗性を増大させて、搬送される薄紙PTNの姿勢を安定させることができる。用紙の搬送を安定させることにより、定着部25へ突入するときに薄紙PTNにねじれまたは紙しわなどが発生することを、抑制できる。湾曲している薄紙PTNの両端部が搬送ガイド55の凸部58によって支持されていることにより、薄紙PTNの姿勢をより安定させることが可能であり、薄紙PTNのねじれの発生がより確実に抑制されている。
【0031】
湾曲している薄紙PTNが、ループセンサ54に接触しており、ループセンサ54を押圧して溝60内に移動させている。ループセンサ54の配置を検出することで、薄紙PTNが湾曲して変形している量(この変形量をループ量と称する)を検出することができる。ループセンサ54は、ループ量の値を計測できる仕様であってもよい。またはループセンサ54は、検出結果をON/OFF出力して所定量のループ量があるのか否かを検出する仕様であってもよい。
【0032】
たとえばループセンサ54は、溝60の両側面の相対向する位置に配置された光源と受光部とを含んで構成されていてもよい。ループセンサ54に用紙が接触していないか、または用紙が接触していてもループ量が小さいときには、ループセンサ54の溝60内への移動量が小さく、ループセンサ54はその大部分が溝60の外部に配置される。この場合、光源が発生した光がループセンサ54によって遮られることがなく、受光部が光を受光することが可能とされる。したがって、用紙のループ量が所定量以上であるか否かを、ループセンサ54によって検出することができる。
【0033】
図6は、厚紙PTKが接触しているときのループセンサ54の配置を示す模式図である。
図6に示される厚紙PTKは、上述した薄紙PTNと同様に、両端部が凸部58によって支持されている。厚紙PTKは一般的にこわさが高く、薄紙PTNよりも変形しにくい。
図6に示される厚紙PTKは、薄紙PTNと異なり、幅方向(図中の左右方向)には湾曲していない。
【0034】
図6に示される厚紙PTKは、搬送方向に湾曲、すなわち
図6中の奥行方向(紙面垂直方向)に湾曲しており、この湾曲によって
図6に示す両端部が凸部58に支持された配置とされている。厚紙PTKが湾曲しておらず平坦な形状である場合、厚紙PTKは搬送ガイド55から離れた位置(
図6においては、搬送ガイド55の上方の位置)を通過し、搬送ガイド55には接触しない。ループセンサ54は、湾曲している用紙が搬送ガイド55を通過するときにその用紙のループ量を検出できるが、湾曲していない用紙が搬送ガイド55を通過するときにその用紙を検出できるようには構成されていない。
【0035】
薄紙PTNとは異なり、厚紙PTKは、凸部58の高さ以上には凹部57の近くに配置されていない。しかしながら、
図4を参照して説明した通り、ループセンサ54が凸部58よりも大きく凹部57から突出しているので、厚紙PTKがループセンサ54に接触して厚紙PTKがループセンサ54を押圧することで、ループセンサ54が溝60内に移動している。したがって、ループセンサ54を用いて、厚紙PTKのループ量を確実に検出することができる。
【0036】
図7は、搬送ガイド55の凹凸形状の段差の閾値を説明するためのグラフである。
図7に示すグラフの横軸は、用紙のループ量を示し、縦軸は、凹凸形状の段差の大きさを示す。薄紙PTNなどのこわさの低い用紙の変形に対する抵抗性を十分に増大させるためには、一定量以上のループ量が必要とされる。
図7のグラフに示されるように、ループ量を閾値THよりも大きくするためには、凹凸形状の段差を2mm以上にする必要がある。つまり、凸部58の高さを、凹部57よりも2mm以上高くする必要がある。
【0037】
(システム構成、動作)
図8は、画像形成装置の駆動システムの一部構成、より具体的には定着部25の駆動システムの一部構成を示すブロック図である。
図8に示されるように、駆動システムは、コントローラ90と、ローラ駆動部94と、上述したループセンサ54とを備えている。
【0038】
コントローラ90は、定着部25の動作を制御する。コントローラ90は、メモリ91を有している。メモリ91は、定着部25におけるトナー像の定着処理に係る各種の動作を実行するためのプログラムを実行するとともに、必要なデータを記憶する領域として設けられている。コントローラ90は、メモリ91に格納されているプログラムに基づいて、定着部25における定着処理を制御するための各種処理を実行する。
【0039】
ループセンサ54で検出される用紙のループ量の検出結果が、コントローラ90に入力される。コントローラ90は、ループセンサ54による用紙のループ量の検出結果に基づいて、定着部25を制御する。具体的には、コントローラ90は、ローラ駆動部94に対して、加熱ローラ26bの回転速度を増減させる制御信号を出力する。加熱ローラ26bの回転によって加熱ベルト26cが回転駆動され、加圧ローラ27は加熱ベルト26cに従動する。定着部25を通過する用紙は、加熱ベルト26cと加圧ローラ27との間に形成される定着ニップを通って搬送される。加熱ローラ26bの回転速度を制御することで、定着部25における用紙の搬送速度が変更される。
【0040】
図9は、画像形成装置の動作の一部、より具体的には定着部25の動作の一部を示すフローチャートである。定着部25は、
図9のフローチャートに従って、用紙搬送速度を変更する。具体的には、
図9に示されるように、まずステップS1において、ループセンサ54が用紙のループを検出するか否かの判断が行なわれる。コントローラ90は、ループセンサ54の検出結果を受けて、搬送ガイド55を通過する用紙に所定量のループが発生しているか否かを判断する。
【0041】
用紙のループ量が所定量以上であると判断された場合(ステップS1においてYES)、ステップS2に進み、用紙の搬送速度を増大させる。コントローラ90は、ローラ駆動部94に対し、加熱ローラ26bの回転速度を増大させる制御信号を出力する。加熱ローラ26bの回転速度が増大するにつれて、加熱ベルト26cの回転速度が増大する。これにより、加熱ベルト26cと加圧ローラ27との間の定着ニップを通過する用紙の搬送速度が増大する。
【0042】
用紙の搬送速度が増大すると、加熱ベルト26cと加圧ローラ27との間の定着ニップが定着部25へ搬送される用紙を引っ張る作用が強くなり、これにより、搬送方向における用紙のループ量が減少することになる(ステップS3)。
【0043】
ステップS1の判断において、用紙のループ量が所定量未満であると判断された場合(ステップS1においてNO)、ステップS4に進み、用紙の搬送速度を減少させる。コントローラ90は、ローラ駆動部94に対し、加熱ローラ26bの回転速度を減少させる制御信号を出力する。加熱ローラ26bの回転速度が減少するにつれて、加熱ベルト26cの回転速度が減少する。これにより、加熱ベルト26cと加圧ローラ27との間の定着ニップを通過する用紙の搬送速度が減少する。
【0044】
用紙の搬送速度が減少すると、加熱ベルト26cと加圧ローラ27との間の定着ニップが定着ニップへ搬送される用紙を引っ張る作用が弱くなり、これにより、搬送方向における用紙のループ量が増大することになる(ステップS5)。
【0045】
そして、処理を終了する(エンド)。
(変形例)
図10は、変形例の搬送ガイド55の斜視図である。
図10に示される搬送ガイド55の支持面は、幅方向の両端部に複数のリブ59を有している。リブ59は、凹部57に対して突出している。各々のリブ59は、用紙の搬送方向に沿って延びている。複数のリブ59は、所定の間隔を空けて、平行に配置されている。搬送ガイド55の支持面は、幅方向の中央部に凹部57を有し、幅方向の両端に複数のリブ59を有する、凹凸形状を有している。
【0046】
このように、
図3に示される凸部58に替えて、複数のリブ59を搬送ガイド55の両端に設けることによっても、用紙を支持する搬送ガイド55の支持面を凹凸形状に形成することができる。
【0047】
(作用および効果)
上述した説明と一部重複する部分もあるが、本実施形態の特徴的な構成、ならびにその作用および効果を列挙すると、以下のようになる。
【0048】
実施形態の搬送装置は、
図2に示されるように、定着前ガイド53と、搬送ガイド55とを備えている。定着前ガイド53の、用紙を支持する支持面は、用紙の搬送方向と直交する幅方向において平坦な形状を有している。
図3に示されるように、搬送ガイド55の、用紙を支持する支持面は、幅方向における中央部が相対的に凹となり両端部が相対的に凸となる凹凸形状を有している。
【0049】
搬送ガイド55の支持面を幅方向に凹凸形状を有する形状として、搬送ガイド55を通過する用紙を凹凸形状に沿わせて湾曲させることで、用紙の変形に対する抵抗性を増大させることができる。搬送される用紙の姿勢を安定させることができるので、用紙の搬送性を向上させることができる。湾曲した用紙の両端部が、支持面の両端部の凸部58に接触しており凸部58によって支持されるので、用紙の幅方向の速度差を低減でき、用紙にねじれが発生することを抑制することができる。
【0050】
用紙が定着部25に投入される前に、平坦な形状の定着前ガイド53によって用紙の姿勢が整えられるので、定着部25への用紙の搬送を安定させることができる。このとき搬送方向における下流側の用紙の縁部分が平坦に整えられる一方、用紙の上流部の縁部分は搬送ガイド55に沿って湾曲しておりこわさの向上した形状とされている。したがって、用紙の姿勢を整えるとともに変形に対する抵抗性との両立を可能とした、搬送装置を実現することができる。
【0051】
図2,3に示されるように、搬送ガイド55は、幅方向の中央部に、搬送ガイド55を通過する用紙のループ状態を検出するループセンサ54を有している。ループセンサ54の検出結果に基づいて、搬送ガイド55を通過する用紙が所定のループ量を有しているか否かを、確実に検出することができる。湾曲している用紙の両端が凸部58によって支持され、用紙の中央は搬送ガイド55によって支持されない構成であるので、用紙の中央の変形でループセンサ54を動作させて、用紙のループ量を検出することができる。
【0052】
図4に示されるように、ループセンサ54は、ループセンサ54に用紙が接触していないとき、搬送ガイド55の凹部57から、凸部58よりも大きく突出している。このようにループセンサ54の初期位置を規定することで、
図5,6に示されるように、紙のこわさの低い薄紙PTNとこわさの高い厚紙PTKとの両方について、そのループ量をループセンサ54で精度よく検出することができる。
【0053】
図7に示されるように、搬送ガイド55の凹凸形状の段差は、2mm以上である。このようにすれば、用紙のループ量を閾値TH以上に維持することができ、変形に対する抵抗性を十分に増大できる程度にまで、用紙を確実に湾曲させることができる。
【0054】
図3に示されるように、搬送ガイド55の幅方向の両端部には、1つの連続した凸部58が形成されていてもよい。または
図10に示されるように、両端部には、複数のリブ59が形成されていてもよい。いずれの形状であっても、搬送ガイド55の幅方向の両端部に中央部の凹部57に対して突出する形状を設けることで、用紙の支持面に凹凸形状を形成して、通過する用紙を湾曲させることが可能である。
図3に示される凹部57と凸部58とが滑らかな面でつながっている構成とすれば、外観において優れ、かつ製造が容易な凹凸形状とすることができる。他方、
図10に示されるリブ59を形成する構成とすれば、搬送ガイド55を通過する用紙の通紙抵抗を低減できる利点がある。
【0055】
図8,9に示されるように、定着部25の動作を制御するコントローラ90は、ループセンサ54の検出結果に基づいて、定着部25における用紙の搬送速度を変更する。用紙のループが検出されないときには、用紙の搬送速度を減少させることにより、用紙のループの発生を促進できる。用紙のループが検出されている場合には、用紙の搬送速度を増大させることによって、一連の画像形成処理の所要時間を短縮することができる。
【0056】
実施形態の搬送装置によって搬送される記録媒体は、普通紙、厚紙、印画紙などの紙製の記録媒体のほか、OHP(オーバーヘッド・プロジェクター)用紙などの樹脂製の記録媒体であってもよい。
【0057】
実施形態の搬送装置を備える画像形成装置は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ、または複合機であってもよい。
【0058】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 装置本体、18 2次転写部、25 定着部、26a 加熱パッド、26b 加熱ローラ、26c 加熱ベルト、27 加圧ローラ、29 排出ローラ、53 定着前ガイド、54 ループセンサ、55 搬送ガイド、57 凹部、58 凸部、59 リブ、60 溝、90 コントローラ、91 メモリ、94 ローラ駆動部、PTK 厚紙、PTN 薄紙。