(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】面材、建装材、及び建装材の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/07 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
E04F13/07 C
(21)【出願番号】P 2018176114
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 優
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真次
(72)【発明者】
【氏名】柴野 志穂
(72)【発明者】
【氏名】新田 義人
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204991(JP,A)
【文献】実開昭62-186777(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/07
D21H 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組の建装材を構成する複数の面材であって、
前記複数の面材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有しており、前記長方形形状が伸びる方向に直交する幅方向に並列配置されて前記建装材を構成するものであり、
前記複数の面材はそれぞれ、他の面材と異なる装飾が施されており、かつ、前記建装材において前記幅方向に隣接する他の面材との境目を跨って連続する装飾を有して
おり、
他の面材と異なる装飾が施されている前記複数の面材はそれぞれ、前記長方形形状が伸びる方向に、一定の間隔で同一の装飾を有している、
複数の面材。
【請求項2】
前記複数の面材はそれぞれ、他の面材と異なる木目模様を模した装飾が施されており、 前記複数の面材が有するそれぞれの、前記境目を跨って連続する装飾が、前記幅方向に隣接する他の面材が有する前記境目を跨って連続する装飾と連続するようにつながり、木目模様の年輪線を構成する、請求項1に記載の複数の面材。
【請求項3】
前記複数の面材はそれぞれ、他の面材と異なる漆喰模様を模した装飾が施されており、 前記複数の面材が有するそれぞれの、前記境目を跨って連続する装飾が、前記幅方向に隣接する他の面材が有する前記境目を跨って連続する装飾と連続するようにつながり、鏝跡凹凸模様を構成する、請求項1に記載の複数の面材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の複数の面材から構成される1組の建装材であって、
前記複数の面材が有するそれぞれの、前記境目を跨って連続する装飾が、前記幅方向に隣接する他の面材が有する前記境目を跨って連続する装飾と連続するように、前記複数の面材を並列配置して構成される、建装材。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の複数の面材から構成される1組の建装材の施工方法であって
、
前記複数の面材が有するそれぞれの、前記境目を跨って連続する装飾が、
前記幅方向に隣接する他の面材が有する前記境目を跨って連続する装飾と連続するように、前記複数の面材を並列配置する、建装材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材、建装材、及び建装材の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁紙に代表される、家屋の壁面等に用いられる建装材は、一般に複数枚の面材から構成されており、例えば、円周方向に連続した装飾が形成されたエンドレス版と呼ばれる輪転印刷版を用いて帯状に製造された1種の面材を、長方形形状に切断して複数枚とし、壁面等の水平方向に該長方形形状の面材の短辺方向即ち幅方向が合致するように複数枚並列配置するようにして、一組の建装材を構成することが多く行われてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような面材の装飾は、輪転印刷版を用いて付与されるため、その長辺方向(帯状の流れ方向)において、原則、輪転印刷版の版胴周長に相当する一定の間隔(例えば930mm~1890mm程度)で繰り返されることになる。ただし、この長辺方向の繰り返しのつなぎ目は、目立たないように工夫されていた(例えば、特許文献2、3)。
このような装飾としては、例えば、木目模様、石目模様のような自然物を模した装飾や、各種の人為的な装飾がある。
【0004】
このような面材においては、その長辺方向に直交する短辺方向即ち幅方向の長さ(幅)は、輪転印刷版の版胴の幅方向の長さ(版胴軸長)によって制約を受け、その長さ(幅)は例えば930mm~2100mm程度である。
【0005】
一方、このような帯状の面材の長手方向の長さについては、特に制限は無く、例えば、製造工場では3000m程度の長さの単位で生産され、然る後、50m程度の長さの巻取に小巻されて、施工現場等に搬送される。
そして、施工現場では、この小巻された帯状の面材を、壁面の高さ等に合わせて必要な長さの長方形形状に切断し、幅方向に複数枚並列配置して、一組の建装材を形成していた。
【0006】
図4に従来の面材の一例を示す。
図4に示す面材100Aは、一方向(図中Y方向)が長辺となるように伸びる長方形形状を有しており、その短辺方向(図中X方向)である幅はW100である。
面材100Aの装飾101は、上記のように、輪転印刷版を用いて付与される。それゆえ、
図4に示すように、面材100Aの長辺方向、すなわち、長方形形状が伸びる方向(図中Y方向)において、輪転印刷版の版胴周長に相当する一定の間隔(P100)で、装飾101が繰り返し現れることになる。
【0007】
なお、
図4に示す面材100A内において破線で示すつなぎ目131は、理解を容易にするために、上記の長辺方向の繰り返しのつなぎ目となる箇所を視覚化したものであり、実際の面材100Aにおいては、このような破線は存在しない。
また、
図4に示す面材100Aは、その長辺方向、すなわち、長方形形状が伸びる方向(図中Y方向)において、つなぎ目131で装飾が繰り返しとなる。それゆえ、煩雑となるのを避けるため、その上手方向および下手方向の記載は省略している。
【0008】
図5は従来の建装材の一例を示す図である。より詳しくは、
図5は、
図4に示す面材100Aを3枚用いて構成された建装材100について示す図である。
図5に示すように、建装材100は、長方形形状をなす面材100Aの長辺方向を上下方向(図中Y方向)にして、且つ長方形形状をなす面材の短辺方向である幅方向(図中X方向)に面材100Aが3枚並列配置された構成を有する。それゆえ、
図5に示す建装材100において、装飾101は、建装材100の長辺方向(図中Y方向)において一定の間隔P100で繰り返されるのみならず、幅方向(図中X方向)においても、一定の間隔W100(面材100Aの幅に相当)で繰り返されることになる。
【0009】
なお、
図5における建装材100中の長辺方向(図中Y方向)の破線(境目141)は、理解を容易にするために、隣接する面材100A間の境目を強調して示すものであり、実際の建装材100においては、この境目141は目立たないようになっている。
また、
図5に示す建装材100においては、面材100Aの長辺方向、すなわち、建装材100の長辺方向(図中Y方向)については、
図4と同様に、その上手方向および下手方向の記載を省略している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実公平5-19360号公報
【文献】特公昭43-2065号公報
【文献】特開平10-151721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、建装材が、輪転印刷版を用いて製造された1種の面材から構成される場合、建装材が有する装飾は、建装材の長辺方向のみならず、幅方向においても一定の間隔で繰り返し現れることになる。
ただし、このような建装材を家屋の壁面等に用いる場合は、その壁面の大きさが例えば高さ2.5m×幅3m程度であることから、幅方向に並列配置する面材は2~3枚程度で済み、かつ、家屋では観察者と壁面の距離が近いため、観察者は幅方向の装飾の繰り返しに気付き難かった。
【0012】
しかしながら、このような建装材を広い商業空間の壁面(例えば、高さ4m×幅10m)等に用いる場合は、幅方向に並列配置する面材は10枚程度になる。それゆえ、この枚数に応じて幅方向の装飾の繰り返しの頻度も多くなり、かつ、広い商業空間では観察者と壁面の距離が遠いため、観察者は装飾の繰り返しに気付き易くなってしまい、建装材の装飾の繰り返しを目立たなくすることが困難になっていた。
【0013】
また、人間のもつ感知能力の性質として、幅方向における装飾の繰り返しや不自然な途切れについては、敏感に感知できてしまうという特徴がある。人間の両目は、顔の左右(幅方向)に配されているからである。
そして、このような装飾の繰り返しや不自然な途切れが目立ってしまうと、一般に高級感が失われてしまいがちであり、例えば、自然物を模した装飾においては、自然感が損なわれてしまうという問題があった。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、広い商業空間の壁面等に用いても、建装材の装飾の繰り返しを目立たなくすることができ、かつ、幅方向に並列配置された複数の面材の装飾が自然につながることを可能とする、面材、建装材、及び建装材の施工方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の面材は、1組の建装材を構成する複数の面材であって、前記複数の面材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有しており、前記長方形形状が伸びる方向に直交する幅方向に並列配置されて前記建装材を構成するものであり、前記複数の面材はそれぞれ、他の面材と異なる装飾が施されており、かつ、前記建装材において前記幅方向に隣接する他の面材との境目を跨って連続する装飾を有している、面材である。
【0016】
また、本発明の建装材は、複数の面材から構成される1組の建装材であって、前記複数の面材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有しており、前記長方形形状が伸びる方向に直交する幅方向に並列配置されて前記建装材を構成しており、前記複数の面材はそれぞれ、他の面材と異なる装飾が施されており、かつ、前記幅方向に隣接する他の面材との境目を跨って連続する装飾を有している、建装材である。
【0017】
また、本発明の建装材の施工方法は、複数の面材から構成される1組の建装材の施工方法であって、前記複数の面材はいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有しており、前記長方形形状が伸びる方向に直交する幅方向に並列配置されて前記建装材を構成し、前記複数の面材はそれぞれ、他の面材と異なる装飾が施されており、かつ、前記幅方向に隣接する他の面材との境目を跨って連続する装飾を有しており、前記複数の面材が有するそれぞれの、前記境目を跨って連続する装飾が、前記幅方向で連続するように、前記複数の面材を並列配置する、建装材の施工方法である。
【0018】
前記面材は、前記長方形形状が伸びる方向に、一定の間隔で同一の装飾を有する形態であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、広い商業空間の壁面等に用いても、建装材の装飾の繰り返し、特に幅方向の装飾の繰り返しを目立たなくすることができ、かつ、幅方向に並列配置された複数の面材の装飾が自然につながることを可能とする、面材、建装材、及び建装材の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】本発明に係る建装材の施工例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る面材、建装材、及び建装材の施工方法について、
図1~
図5を用いて説明する。なお、各図は発明を模式的に示す図であり、各部の大きさ、形状、装飾などは理解を容易にするため、適宜誇張や単純化を施している。また、説明に直接関係しない構成等については、適宜省略している。
【0022】
(面材および建装材)
まず、本発明に係る面材および建装材について説明する。
図1は本発明に係る面材の一例を示す図である。また、
図2は本発明に係る建装材の一例を示す図である。
より詳しくは、
図1は、
図2に示す建装材1を構成する平面視形状が長方形形状の3種の面材1A、1B、1Cを示す図である。
尚、本発明における「長方形」は、幾何学上の長方形の定義に厳密に合致する形状のみに限定されるものでは無い。本発明の他の構成要件を充足した上で本発明の作用効果を奏する限りに於いて、各種の長方形に近似する形状も本発明の「長方形」に包含される。かかる長方形に近似する形状とは、例えば、長辺と短辺の長さが等しくなった長方形である正方形、各頂角が概ね90度、例えば、80度以上100度以下、の範囲内となる菱形、台形、或いは平行四辺形である。更に、これらの長方形、正方形、菱形、台形、或いは平行四辺形の各辺の一部又は全部を曲線や折線に置換した形状も、本発明の他の構成要件を充足した上で本発明の作用効果を奏する限りにおいては、本発明の「長方形」に包含される。
また
図2は、
図1に示す3種の面材1A、1B、1Cから構成される建装材1について示す図である。
【0023】
ここで、
図1においては、面材1A、1B、1Cとも、長辺方向、すなわち、長方形形状が伸びる方向(図中Y方向)については、装飾が各面材中の破線(つなぎ目31A、31B、31C)で繰り返しとなるため、その上手方向(各図の+Y軸方向)および下手方向(各図の-Y軸方向)の図示を省略して示している。
なお、
図1における各面材中の破線(つなぎ目31A、31B、31C)は、理解を容易にするために、長辺方向の繰り返しのつなぎ目となる箇所を視覚化したものであり、実際の面材1A、1B、1Cにおいては、このような破線は存在しない。
【0024】
また、
図2に示す建装材1においても、面材1A、1B、1Cの長辺方向、すなわち、面材1A、1B、1Cの長方形形状が伸びる方向(図中Y方向)については、
図1と同様に、その上手方向および下手方向の記載を省略している。
なお、
図2における建装材1の中の破線(境目41、42)は、理解を容易にするために、隣接する面材1A、1B、1C間の境目を強調して示すものであり、実際の建装材においては、この境目41、42は目立たないようになっている。
【0025】
図1、2に示すように、建装材1は3種の面材1A、1B、1Cから構成され、面材1A、1B、1Cはいずれも、一方向に伸びる長方形形状を有しており、長方形形状が伸びる方向即ち長辺方向と直交する幅方向(図中X方向)に向かって、間に間隙や目地溝、レール、スペーサ等の部材を介する事無く、互いに隣接して、並列配置されて建装材1を構成している。尚、本発明において、「隣接」の語はかかる意味で用いる。
【0026】
ここで、本発明において「長方形形状が伸びる方向即ち長辺方向と直交する」とは、長方形形状が伸びる方向即ち長辺方向に対して厳密に直角に交わる状態のみならず、壁紙の施工において並列配置とする際に許容される角度の方向も含むものである。その角度は、建装材を構成する面材(長方形形状に切断された面材)の長辺方向の長さにもよるが、例えば、長方形形状が伸びる方向に対して87度以上93度以下の範囲とすることができる。
【0027】
そして、面材1A、1B、1Cはそれぞれ、他の面材と異なる装飾が施されており、かつ、幅方向に隣接する他の面材との境目を跨って連続する装飾を有している。
【0028】
例えば、
図1に示す面材1Aは、他の面材1B、1Cと異なる装飾である装飾11を有している。同様に、面材1Bは、他の面材1A、1Cと異なる装飾である装飾12を有しており、面材1Cは、他の面材1A、1Bと異なる装飾である装飾13を有している。
【0029】
一方、
図1に示す面材1A、1Bは、それぞれ装飾22L、22Rを有しており、この装飾22L、22Rは、
図2に示す建装材1において、境目41を跨って連続し、装飾22を構成している。同様に、
図1に示す面材1B、1Cは、それぞれ装飾23L、23Rを有しており、この装飾23L、23Rは、
図2に示す建装材1において、境目42を跨って連続し、装飾23を構成している。
【0030】
ここで、本発明において「境目を跨って連続する装飾」とは、建装材を構成した際に、隣接する面材間の境目を跨って連続することになる装飾のことであり、換言すれば、各面材1A、1B、及び1Cを互に隣接して配置した際に、装飾22Lと22R及び装飾23Lと23Rとの間の関係が以下の2要件を満たし、建装材を構成した際に、隣接する面材間の境目を跨って連続的につながっている装飾を構成することになる各面材における装飾のことである。
(要件1)各面材の境目41、42を間に挟んでその両側で接する各装飾、例えば22Lと22Rの色(色相、明度、及び彩度)、光沢度等の視覚に影響する特性値の差が、境目41及び42の近傍に於いて、違和感のない範囲内、好ましくは視覚の弁別閾値以下となる。
図1の例では、22Lと22Rとで色及び光沢度は同一とされている。
(要件2)各面材の境目41、42を間に挟んでその両側で接する装飾、例えば22Lと22Rとで構成される領域が、全体として一まとまりの、一体となった模様を構成する。
図1の例では、22Lと22Rとが境目41で接続され、一体化されて、
図2に図示の如く、22L及び22R単独よりも長辺長が延長された長方形の模様からなる装飾22が構成される。
【0031】
即ち、
図1に示す面材1Aの装飾22L、面材1Bの装飾22Rは、
図2に示す建装材1を構成する前においては、それぞれ独立した装飾であるが、
図2に示すように、面材1Aに隣接して面材1Bを並列配置して建装材1を構成した際には、境目41を跨って連続的につながっている装飾22を構成することになる。
同様に、
図1に示す面材1Bの装飾23L、面材1Cの装飾23Rは、
図2に示す建装材1を構成する前においては、それぞれ独立した装飾であるが、
図2に示すように、面材1Bに隣接して面材1Cを並列配置して建装材1を構成した際には、境目42を跨って連続的につながっている装飾23を構成することになる。
【0032】
ここで、上記のように、面材1Aの装飾22Lと面材1Bの装飾22Rから、建装材1において連続的につながっている装飾22を構成するためには、面材1A、1Bの長方形形状の長辺方向(図中Y方向)に対して、面材1Aの装飾22Lと面材1Bの装飾22Rが、同じ一定の間隔(P1)で設けられている必要がある。それゆえ、面材1A、1Bは、同じ版胴周長を有する輪転印刷版を用いて製造される。
【0033】
同様に、面材1Bの装飾23Lと面材1Cの装飾23Rから、建装材1において連続的につながっている装飾23を構成するためには、面材1B、1Cの長方形形状の長辺方向(図中Y方向)に対して、面材1Bの装飾23Lと面材1Cの装飾23Rが、同じ一定の間隔(P1)で設けられている必要がある。それゆえ、面材1B、1Cは、同じ版胴周長を有する輪転印刷版を用いて製造される。
【0034】
すなわち、面材1A、1B、1Cは、同じ版胴周長を有する輪転印刷版を用いて製造されることになる。
【0035】
一方、面材1A、1B、1Cの幅WA、WB、WCに関しては、特に制約は無く、それぞれ自由な大きさとすることができる。尚、
図1の実施形態に於いては、3つの面材の幅は全て同一(WA=WB=WC)とされている。
【0036】
このように、面材1A、1B、1Cは、それぞれ、幅方向に隣接する他の面材との境目を跨って連続する装飾を有しているため、建装材1においては、幅方向の装飾が不自然に途切れるようなことはなく、自然に連続的につながることになる。
【0037】
また、建装材1においては、異なる装飾が施された3種の面材1A、1B、1Cが幅方向に並列配置されて建装材1を構成しているため、建装材1の幅方向において、一定間隔で同じ装飾が繰り返し現れることを防止できる。すなわち、建装材の装飾の繰り返しを目立たなくすることができる。
【0038】
より詳しく説明すると、上記のように、建装材1においては、幅方向(図中X方向)に対して、異なる装飾が施された面材が並ぶことになるため、3種の面材1A、1B、1Cを
図2の如くこの順に隣接配置した範囲内では、原則、同じ装飾が繰り返されるようなことは生じない。それゆえ、観察者と建装材1を施工した壁面との距離にかかわらず、観察者が幅方向に装飾の繰り返しを感じることはない。
尚、壁面等の施工対象の幅W
totalが広く(乃至寸法が大きく)3つの面材の合計幅よりも大の場合、即ち、
W
total>WA+WB+WC
となる場合は、3つの面材1A、1B、及び1Cを並列配置して構成した建装材では施工対象を被覆(施工)しきれない。その場合は、以下の3形態の何れかとすることが出来る。何れの形態でも、
図5に図示した従来の面材からなる建装材100に比べて、装飾の繰返し周期は目立ち難いが、それぞれ一長一短が有る。施工対象に付与される装飾の連続性及び装飾の繰返し周期は目立ち難さの点では、形態3が最も好ましい。
(形態1)
図2の如き3種の面材を隣接して並列配置した建装材1の左右の両方又は一方に生じた余白には1A、1B、及び1Cの何れとも異なる別種の装飾を有する面材を隣接配置するよう施工(貼り合せ)する。尚、図示は省略する。
但し、装飾は図の建装材1とその左右の何れか片方又は両方に隣接する面材(図示は省略)との間で連続はしない。
(形態2)
図2の如き3種の面材を隣接して並列配置した建装材1の左右の両方又は一方に生じた余白にも、現状
図2に図示しているものと同樣の建装材1を隣接配置する。尚、図示は省略する。
この形態の場合、幅方向(図中X方向)にはWA+WB+WCの周期で装飾の繰返しを生じるが、
図5に図示した従来の面材からなる建装材100に比べて、装飾の繰返し周期は増大する。例えば、W100=WA=WB=WCだとすると、
図5に図示した従来の面材からなる建装材100に比べて、装飾の繰返し周期は3倍となる。よって、装飾の繰返し周期は大分目立ち難くなる。
(形態3)後述のように、本発明における建装材1を構成する面材の数nは4以上の任意の数とすることも出来る為、施工対象の幅W
totalよりも建装材の繰返し周期が大となるように面材1
1、1
2、1
3、・・・、1
nの種類nを選択し、建装材1の装飾の繰返し周期W
1+W
2+W
3+・・・+W
nが施工対象の幅W
totalがよりも大、即ち、
W
total<W
1+W
2+W
3+・・・+W
n
となるように各面材1
iを隣接して並列配置して建装材1を構成する。
尚、ここで、1
iは建装材1を構成する各面材、W
iは面材1
iの幅、iは2以上n以下の自然数(i=2、3、・・・、n-1、n)である。
この形態の場合、施工対象の全幅にわたって、装飾の繰返し周期は生じ無い。但し、用意すべき面材の数nが多くなり、装飾の意匠デザインの難度と労力が増加するとともに、面材の在庫管理や施工の難度も増加する。
【0039】
一方、建装材1を構成する面材1A、1B、1Cとも、その長方形形状の長辺方向(図中Y方向)に対しては、一定の間隔(P1)で装飾が繰り返されているが、人間のもつ感知能力の性質として、壁面の上下方向(一般的には鉛直方向に合致)の装飾の繰り返しは、幅方向ほどには敏感に感知しない。
それゆえ、建装材1を構成する面材の長辺方向を壁面の上下方向とすることで、建装材1の装飾の繰り返しを目立たなくすることができる。
【0040】
ここで、上記の説明においては、理解を容易にするため、具体的な実施形態として、3種の面材1A、1B、1Cから構成される建装材1の例を示したが、本発明は、これに限定されず、本発明の建装材は、より多くの面材から構成されるものであってもよい。
【0041】
例えば、n種(nは2以上の自然数)の異なる装飾が施されたn枚の面材を、幅方向に並列配置して1組の建装材を構成してもよい。ここで、nは
図1及び
図2に図示した実施形態のような3以外に2、4、5、6、或いは7以上とすることが出来る。n枚の面材は、それぞれ、前記の如く、他の面材と異なる装飾が施されており、かつ、幅方向に隣接する他の面材との境目を跨って連続する装飾を有するものである。
【0042】
このような建装材であれば、壁面の幅方向が長く、多くの面材を要するような、広い商業空間の壁面等にも適用できる。
そして、上記の建装材1と同様に、建装材の装飾の繰り返し性を目立たなくすることができる。さらに、幅方向に並列配置された複数の面材の装飾が、自然につながるようにすることも可能となる。
【0043】
(装飾について)
図1に示す面材1A、1B、1Cが有する装飾については、理解を容易にするため、装飾11を三角形、装飾12を円形、装飾13を星形、装飾21、22L、22R、23L、23R、24を長方形として、それぞれ模式的に表現しているが、本発明の面材の装飾はこれに限らず、建装材の装飾として用いることが出来る各種装飾とすることができる。
また、
図1に示す面材1A等においては、装飾11等が点在する図形(三角形等)で表現されているが、本発明の面材の装飾はこれに限らず、装飾が面材全域にわたって施されている形態であってもよい。
【0044】
例えば、木目模様、石目模様のような自然物を模した装飾や、各種の人為的な装飾とすることができる。また、各装飾は、エンボス処理により凹凸を有する立体形状とすることもできる。本発明においては、漆喰の左官加工表面、例えば鏝痕凹凸模様(鏝跡凹凸模様)等を模した装飾も好適に用いることができる。
例えば、
図1に示す面材1A、1Bに施されている装飾が木目模様を模した装飾の場合、境目を跨って連続する装飾(装飾22L、22R)としては、装飾22Lが有する木目模様の年輪線の右端(
図1に示すX方向)と、これに対応する装飾22Rが有する木目模様の年輪線の左端と、が
図2に示す建装材1の装飾22において、途切れずに一の年輪線として連続する形態を、挙げることが出来る。
また、
図1に示す面材1A、1Bに施されている装飾が漆喰模様を模した装飾の場合、境目を跨って連続する装飾(装飾22L、22R)としては、装飾22Lが有する鏝痕凹凸模様(鏝跡凹凸模様)の右端(
図1に示すX方向)と、これに対応する装飾22Rが有する鏝痕凹凸模様(鏝跡凹凸模様)の左端と、が
図2に示す建装材1の装飾22において、途切れずに一の鏝痕凹凸模様(鏝跡凹凸模様)として連続する形態を、挙げることが出来る。
【0045】
(面材の製造方法について)
本発明の面材は、従来からの建装材を構成する面材と同様に、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷等の印刷方式による輪転印刷版を用いて製造することができる。また、面材を構成する材料も、従来からの建装材を構成する面材と同様の材料を用いることができる。又、小ロット生産の場合は、版を用いないインキジェット印刷等の無版印刷方式を用いて製造することも出来る。
【0046】
(建装材の施工方法)
次に、本発明に係る建装材の施工方法について説明する。
図3は本発明に係る建装材の施工方法の一例を示す図である。より詳しくは、
図3は、
図2に示す建装材1の施工方法として、
図1に示す面材1A、1Bがそれぞれ有する装飾22Lと装飾22Rとが、境目41を跨って連続する連続的につながっている装飾22を構成するように、面材1Aに隣接して面材1Bを並列配置する様子を示すものである。
【0047】
なお、
図3においては、理解を容易にするため、壁面における面材1A、1Bの長辺方向(図中Y方向、上下方向に対応する)の上端近傍について記載し、それより下端側についての図示は、省略している。また、煩雑となるのを避けるため建装材1乃至各面材1A、1B、1Cの裏面50側に存在し、該裏面と接着される壁面の図示も省略している。
図3において、面材1Bの上端左側は、貼り付けの途中であって、面材1Bの裏面50が見えている状態である。尚、裏面50上には澱粉糊からなる接着剤の層が形成されている。
【0048】
建装材1を壁面に施工するには、例えば
図3に示すように、まず先に面材1Aを壁面に接着剤層を介して貼り付け、次に、面材1Aの装飾22Lと面材1Bの装飾22Rが境目41を跨って幅方向で連続するように位置合わせして、面材1Aと面材1Bが境目41で接するように面材1Bを貼り付ける。
このように施工することで、装飾22Lと装飾22Rとから、境目41を跨って連続的につながって一つの模様(
図3の例では長方形)を構成している装飾22を形成することができる。
【0049】
また、煩雑となるのを避けるため、
図3においては記載していないが、面材1Bを貼り付けた後に、面材1Cも同様に施工することで、面材1A、1B、1Cから構成される建装材1を得ることができる。ここで、面材1Cを貼り付ける際には、面材1Bの装飾23Lと面材1Cの装飾23Rとが、境目42を跨って幅方向で連続するように位置合わせして、面材1Bと面材1Cとが境目42で接するように面材1Cを貼り付ける。
このように施工することで、装飾23Lと装飾23Rとから、境目42を跨って連続的につながって一つの模様を構成している装飾23を形成することができる。
【0050】
なお、上記においては、面材1A、1B、1Cの順に貼り付けていく施工方法を説明したが、本発明の建装材の施工方法は、これに限定されず、面材1C、1B、1Aの順に貼り付けていく施工方法であってもよい。
【0051】
また、より多くの面材から本発明の建装材を構成する場合、例えば、n種(nは2以上の自然数)の異なる装飾が施されたn枚の面材から本発明の建装材を構成する場合は、上記と同様にして、すなわち、各面材が有するそれぞれの装飾であって、幅方向に隣接する他の面材との境目を跨って連続する装飾が、幅方向で連続するように留意して、1枚目の面材を貼り付けた後に2枚目の面材を貼り付け、その後も同様の作業を、n枚目の面材を貼り付けるまで順次行うことで、目的とする建装材を得ることができる。
【0052】
このように施工することで、得られた建装材においては、幅方向の装飾が不自然に途切れるようなことはなく、自然に連続的につながることになる。
【0053】
また、得られた建装材においては、異なる装飾が施されたn種の面材が幅方向に並列配置されて建装材を構成しているため、建装材の幅方向において、一定間隔で同じ装飾が繰り返し現れることを防止できる。すなわち、建装材の装飾の繰り返しを目立たなくすることができる。
【0054】
なお、上記においては、並列配置する各面材を、各面材の幅方向の端で接するように貼り付ける施工方法について例示したが、本発明の施工方法は、これに限定されない。
本発明においては、各面材が有するそれぞれの装飾であって、幅方向に隣接する他の面材との境目を跨って連続する装飾が、それぞれ幅方向で連続するように各面材を並列配置して、幅方向の装飾が連続的につながっている建装材を構成することができる施工方法であれば、各種の施工方法を適用することができる。
【0055】
例えば、特許文献1の第3図のように、先に貼り付けた面材の右端部に、次に貼り付ける面材の左端部を重ねて貼り付け、重なった部分で切断して、その切断した線の左右にある不要な面材部分を除去する施工方法を用いてもよい。
この場合、各面材の右端部及び左端部の装飾は、重ねて貼り付けされた後に除去される部分を含む装飾となる。
【0056】
以上、本発明に係る面材、建装材、及び建装材の施工方法について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
1 建装材
1A、1B、1C 面材
11、12、13 装飾
21、22、23、24 装飾
22L、22R、23L、23R 装飾
31A、31B、31C つなぎ目
41、42 境目
50 裏面
100 建装材
100A 面材
101 装飾
131 つなぎ目
141 境目